(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024537
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】歪検出装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128717
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 史掘
(72)【発明者】
【氏名】上原 利範
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063DA02
2F063DA05
2F063EC03
2F063EC05
2F063EC13
2F063EC25
(57)【要約】
【課題】実施形態の課題は、検出精度の向上を図ることが可能な歪検出装置を提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る歪検出装置は、フレキシブルな基材と、それぞれ第1方向に一列に並んだ複数の歪ゲージを有し基材に積層配置された第1、第2、第3、第4センサパターンと、複数の歪ゲージを駆動するコントローラと、を備えている。第1センサパターンの第1歪ゲージ、第2センサパターンの第2歪ゲージ、第3センサパターンの第3歪ゲージ、第4センサパターンの第4歪ゲージは、基材の厚さ方向に対向して配置されている。第1歪ゲージおよび第4歪ゲージは、基材の厚さ方向の中心位置に対し対称に配置され、第2歪ゲージおよび第3歪ゲージは、基材の厚さ方向の中心位置に対し対称に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層を含むフレキシブルな基材と、
第1方向に間隔を置いて一列に並んで設けられた複数の第1歪ゲージとそれぞれ第1歪ゲージに接続された複数の配線とを含み、前記基材に設けられた第1センサパターンと、
前記第1方向に間隔を置いて一列に並んで設けられた複数の第2歪ゲージとそれぞれ第2歪ゲージに接続された複数の配線とを含み、前記基材に積層され絶縁層を挟んで前記第1センサパターンに対向する第2センサパターンと、
前記第1方向に間隔を置いて一列に並んで設けられた複数の第3歪ゲージとそれぞれ第3歪ゲージに接続された複数の配線とを含み、前記基材に積層され絶縁層を挟んで前記第2センサパターンに対向する第3センサパターンと、
前記第1方向に間隔を置いて一列に並んで設けられた複数の第4歪ゲージとそれぞれ第4歪ゲージに接続された複数の配線とを含み、前記基材に積層され絶縁層を挟んで前記第3センサパターンに対向する第4センサパターンと、
前記複数の配線を介して前記第1歪ゲージ、第2歪ゲージ、第3歪ゲージ、および第4歪ゲージに電圧を印加し、各歪ゲージの検出値を読取るコントローラと、を備え、
前記第1歪ゲージ、第2歪ゲージ、第3歪ゲージ、第4歪ゲージは前記基材の厚さ方向に対向して配置され、
前記第1歪ゲージおよび前記第4歪ゲージは、前記基材の厚さ方向の中心位置に対し対称に配置され、前記第2歪ゲージおよび前記第3歪ゲージは、前記基材の厚さ方向の中心位置に対し対称に配置されている、歪検出装置。
【請求項2】
前記第1センサパターンの複数の配線は、それぞれ前記第1歪ゲージの一端に接続された複数本の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ前記第1歪ゲージの他端に接続された複数本のグランド線および複数の第2信号線と、を含み、
前記第4センサパターンの複数の配線は、それぞれ前記第4歪ゲージの一端に接続された複数本の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ前記第4歪ゲージの他端に接続された複数本のグランド線および複数の第2信号線と、を含み、
前記第1歪ゲージの各々は、前記第1センサパターンのグランド線および前記第4センサパターンの電源線を介して前記第4歪ゲージに直列に接続されている、請求項1に記載の歪検出装置。
【請求項3】
前記第2センサパターンの複数の配線は、それぞれ前記第2歪ゲージの一端に接続された複数本の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ前記第2歪ゲージの他端に接続された複数本のグランド線および複数の第2信号線と、を含み、
前記第3センサパターンの複数の配線は、それぞれ前記第3歪ゲージの一端に接続された複数本の電源線および複数の第1信号線と、それぞれ前記第3歪ゲージの他端に接続された複数本のグランド線および複数の第2信号線と、を含み、
前記第2歪ゲージの各々は、前記第2センサパターンのグランド線および前記第3センサパターンの電源線を介して前記第3歪ゲージに直列に接続されている、請求項2に記載の歪検出装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1歪ゲージおよび第4歪ゲージの検出値の差分値に基づいて第1測定値を算出し、前記第2歪ゲージおよび第3歪ゲージの検出値の差分値に基づいて第2測定値を算出し、前記第1測定値と前記第2測定値との平均値を算出する、請求項3に記載の歪検出装置。
【請求項5】
前記第2歪ゲージおよび前記第3歪ゲージは、前記第1歪ゲージおよび前記第4歪ゲージに対して、前記基材の厚さ方向の中心の側に配置され、
前記第2歪ゲージおよび前記第3歪ゲージの抵抗は、前記第1歪ゲージおよび第4歪ゲージの抵抗よりも高抵抗である、請求項2に記載の歪検出装置。
【請求項6】
前記第2歪ゲージの抵抗と前記第3歪ゲージの抵抗とは同じであり、前記第1歪ゲージの抵抗と前記第4歪ゲージの抵抗とは同じである、請求項5に記載の歪検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、歪検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歪検出装置の一例として、フレキシブルなフィルム状あるいはシート状の歪ゲージセンサが知られている。歪ゲージセンサは、帯状のフレキシブルなシート基材の表面に並んで設けられた歪ゲージと、これらの歪ゲージに通電するための複数本の信号線と、を有している。また、シートの表裏に複数の歪ゲージが設けられている。表面側の歪ゲージは、裏面側の歪ゲージとそれぞれ対向して配置されている。歪ゲージセンサを湾曲した被検体に巻き付け、各歪ゲージの抵抗変化を検出することにより、被検体の湾曲形状を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-185966号公報
【特許文献2】特開2013-96821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の実施形態の課題は、検出精度の向上を図ることが可能な歪検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る歪検出装置は、 複数の絶縁層を含むフレキシブルな基材と、第1方向に間隔を置いて一列に並んで設けられた複数の第1歪ゲージとそれぞれ第1歪ゲージに接続された複数の配線とを含み、前記基材に設けられた第1センサパターンと、前記第1方向に間隔を置いて一列に並んで設けられた複数の第2歪ゲージとそれぞれ第2歪ゲージに接続された複数の配線とを含み、前記基材に積層され絶縁層を挟んで前記第1センサパターンに対向する第2センサパターンと、前記第1方向に間隔を置いて一列に並んで設けられた複数の第3歪ゲージとそれぞれ第3歪ゲージに接続された複数の配線とを含み、前記基材に積層され絶縁層を挟んで前記第2センサパターンに対向する第3センサパターンと、前記第1方向に間隔を置いて一列に並んで設けられた複数の第4歪ゲージとそれぞれ第4歪ゲージに接続された複数の配線とを含み、前記基材に積層され絶縁層を挟んで前記第3センサパターンに対向する第4センサパターンと、前記複数の配線を介して前記第1歪ゲージ、第2歪ゲージ、第3歪ゲージ、および第4歪ゲージに電圧を印加し、各歪ゲージの検出値を読取るコントローラと、を備えている。前記第1歪ゲージ、第2歪ゲージ、第3歪ゲージ、第4歪ゲージは前記基材の厚さ方向に対向して配置され、前記第1歪ゲージおよび前記第4歪ゲージは、前記基材の厚さ方向の中心位置に対し対称に配置され、前記第2歪ゲージおよび前記第3歪ゲージは、前記基材の厚さ方向の中心位置に対し対称に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る歪ゲージセンサ装置の斜視図。
【
図2】
図2は、前記歪ゲージセンサ装置の縦断面図。
【
図3】
図3は、
図2の線A-Aに沿った前記歪ゲージセンサ装置の断面図。
【
図4】
図4は、変形例に係る歪ゲージセンサ装置の縦断面図。
【
図5】
図5は、実施形態に係る前記歪ゲージセンサ装置の第2センサパターンおよび第3センサパターンの歪ゲージおよび配線を模式的に示す展開図。
【
図6】
図6は、前記歪ゲージセンサ装置における第1センサシートのセンサパターンの積層構造を模式的に示す斜視図。
【
図7】
図7は、前記歪ゲージセンサ装置のコントローラのブロック図。
【
図8】
図8は、検出時のスキャン動作を示す前記歪ゲージセンサ装置の第1ないし第4センサパターンおよびコントローラのアナログフロントエンドを展開して示す平面図。
【
図9】
図9は、前記アナログフロントエンドにおける差分検出回路の回路図。
【
図10】
図10は、前記歪ゲージセンサ装置を被検体の表面に設置した状態を模式的に示す側面図。
【
図11】
図11は、被検体の表面に設置した状態の前記歪ゲージセンサ装置の一部を模式的に示す図。
【
図12】
図12は、検出時のスキャン動作を示す前記歪ゲージセンサ装置の第1ないし第4センサパターンおよびコントローラのアナログフロントエンドを展開して示す平面図。
【
図13A】
図13Aは、
図11に示した歪ゲージセンサ装置の一部のうち、2層目と3層目の歪ゲージにより歪検出を行う例を模式的に示す図。
【
図13B】
図13Bは、
図11に示した歪ゲージセンサ装置の一部のうち、1層目と4層目の歪ゲージにより歪検出を行う例を模式的に示す図。
【
図14】
図14は、前記2層目と3層目の歪ゲージにより歪検出した検出値に基づいて算出した曲率半径をプロットした曲面形態を示す図。
【
図15】
図15は、前記1層目と4層目の歪ゲージにより歪検出した検出値に基づいて算出した曲率半径をプロットした曲面形態を示す図。
【
図16】
図16は、最終データとして算出した曲率半径の平均値をプロットした曲面形態を示す図。
【
図17】
図17は、内側歪ゲージおよび外側歪ゲージのダイナミックレンジを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
(実施形態)
歪検出装置の一例として、実施形態に係る歪ゲージセンサ装置について詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る歪ゲージセンサ装置の斜視図である。
図示のように、歪ゲージセンサ装置10は、両面型の歪ゲージセンサを構成している。歪ゲージセンサ装置10は、基材として機能する細長い帯状のフレキシブルなベース基板44と、ベース基板44の第1主面(前面)に貼付された第1センサシート20Aと、ベース基板44の第2主面(背面)に貼付された第2センサシート20Bと、一対のフレキシブル配線板(FPC)14と、当該一対のフレキシブル配線板14を介して第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bに接続された中継基板(駆動回路基板)12と、を備えている。一例では、ベース基板44は、絶縁層であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等の樹脂で厚さ0.3~0.5mm程度に形成されている。
【0009】
第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの各々は、絶縁層からなる細長い帯状のフレキシブルなシート基材22とシート基材22に設けられた2層の導体パターン(センサパターン)CDA、CDB(CDC、CDD)とを有している。各層のセンサパターンは、複数の歪ゲージG0~Gnを含んでいる。複数の歪ゲージG0~Gnは、シート基材22の長手方向Xの一端から他端に亘り所定の間隔を空けて長手方向Xに一列に並んでいる。
なお、図において、センサシートの長手方向X、幅方向Yは、互いに直交する2方向を示している。これらの方向は、90度以外の角度で交差していてもよい。
【0010】
図2は、歪ゲージセンサ装置10の縦断面図である。
図2に示すように、ベース基板44は前面および前面に対向する背面を有している。一例では、第1センサシート20Aは、透明粘着シート(OCA)などの接着剤層Adによりベース基板44の前面に貼付されている。第2センサシート20Bは、接着剤層Adによりベース基板44の背面に貼付されている。
中継基板12は、一方の面側に設けられた駆動回路40および複数の配線と、他方の面側に設けられた図示しない複数の配線と、を含んでいる。第1センサシート20Aの第1センサパターンCDAおよび第2センサパターンCDBは、FPC14を介して、中継基板12の上面側に設けられる配線に接続されている。同様に、第2センサシート20Bの第3センサパターンCDCおよび第4センサパターンCDDは、FPC14を介して、中継基板12の下面側に設けられる配線に接続されている。
【0011】
図3は、
図2の線A-Aに沿った歪ゲージセンサ装置の横断面図である。図示のように、第1センサシート20Aは、フレキシブルな帯状のシート基材22と、シート基材22の一方の面上に設けられた第1センサパターンCDA(G0~Gn)と、第1センサパターンCDAに重ねてシート基材22上に積層された第1絶縁層IL1と、第1絶縁層IL1上に設けられた第2センサパターンCDB(G0~Gn)と、第2センサパターンCDBに重ねて第1絶縁層IL1上に積層された第2絶縁層IL2と、第2絶縁層IL2上に設けられた保護層(表面保護フィルム)PTLと、を含んでいる。一例では、シート基材22は、ポリイミドで形成され、第1および第2絶縁層IL1、IL2は、窒化シリコン(SiN)で形成されている。一例では、第1センサシート20Aは、保護層TPLの側が接着剤層Adによりベース基板44に接合される。
【0012】
同様に、第2センサシート20Bは、フレキシブルな帯状のシート基材22と、シート基材22の一方の面上に設けられた第4センサパターンCDDと、第4センサパターンCDDに重ねてシート基材22上に積層された第1絶縁層IL1と、第1絶縁層IL1上に設けられた第3センサパターンCDCと、第3センサパターンに重ねて第1絶縁層IL1上に積層された第2絶縁層IL2と、第2絶縁層IL2上に設けられた保護層(表面保護フィルム)PTLと、を含んでいる。一例では、シート基材22は、ポリイミドで形成され、第1および第2絶縁層IL1、IL2は、窒化シリコン(SiN)で形成されている。一例では、第2センサシート20Bは、保護層TPLの側が接着剤層Adによりベース基板44に接合される。
【0013】
ベース基板44、接着剤層Ad、第1センサシート20A、第2センサシート20Bの全体を基材とし、第1センサパターンCDAの歪ゲージを第1歪ゲージGA、第2センサパターンCDBの歪ゲージを第2歪ゲージGB、第3センサパターンCDCの歪ゲージを第3歪ゲージGC、第4センサパターンCDDの歪ゲージを第4歪ゲージGDと称して説明する。
図3に示すように、第1歪ゲージGA、第2歪ゲージGB、第3歪ゲージGC、第4歪ゲージGDは、それぞれ絶縁層を挟んで、基材の厚さ方向Zに対向して配置されている。基材の厚さ方向Zの中心の位置を中心線Cとした場合、外側の第1歪ゲージGAおよび第4歪ゲージGDは、中心線Cに対し対称に配置され、内側の第2歪ゲージGBおよび第3歪ゲージGCは、中心線Cに対し対称に配置されている。すなわち、外側の第1歪ゲージGAと中心線Cとの間隔をd1、外側の第4歪ゲージGDと中心線Cとの間隔をd2、内側の第2歪ゲージGBと中心線Cとの間隔をd3、内側の第3歪ゲージGCと中心線Cとの間隔をd4とした場合、d1=d2、かつ、d3=d4であることが望ましい。d1≠d3、d2≠d4であっても良い。
【0014】
なお、基材において、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、それぞれ保護層PTLの側が接着剤層Adによりベース基板44に接合される構成としても良い。また、
図4に示すように、ベース基板を省略し、第1センサシート20Aと第2センサシート20Bとを透明粘着シート(OCA)などの接着剤層Adにより互いに貼り合わせる構成としてもよい。
【0015】
図5は、第1センサシート20Aの第2センサパターンCDBおよび第2センサシート20Bの第3センサパターンCDCを展開して模式的に示す平面図、
図6は、第1センサシート20Aにおける第1センサパターンCDAおよび第2センサパターンCDBの積層構造を模式的に示す斜視図である。
図5に示すように、本実施形態によれば、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、同一の形状、寸法、およびセンサパターンに構成されている。第1センサシート20Aの第2センサパターンCDBおよび第2センサシート20Bの第3センサパターンCDCを代表してパターン構成を説明する。センサパターンの各々は、複数の歪ゲージG0~Gnを有している。複数の歪ゲージG0~Gnは、シート基材22の長手方向Xの一端(先端)から他端(基端)まで長手方向Xに間隔Lを空けて一列に並んで設けられている。歪ゲージG0~Gnの各々は、幅方向Yに蛇腹状あるいは矩形波状に延在し、幅方向Yの一端および他端を有している。各歪ゲージG0~Gnは、所望の抵抗値を有し、歪に応じた抵抗変化を生じる。
【0016】
各センサパターンは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの列に沿って長手方向Xに延在している複数本の電源線VL0~VLn、複数本のグランド線GNL0~GNLn、複数本の第1信号線Sa0~San、および複数本の第2信号線Sb0~Sbnを有している。
電源線VL0~VLnは、歪ゲージG0~Gnの一端の側に位置している。電源線VL0~VLnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの一端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
第1信号線Sa0~Sanは、歪ゲージG0~Gnの一端と電源線VL0~VLnとの間に位置している。第1信号線Sa0~Sanは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの一端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
【0017】
グランド線GNL0~GNLnは、歪ゲージG0~Gnの他端の側に位置している。グランド線GNL0~GNLnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの他端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
第2信号線Sb0~Sbnは、歪ゲージG0~Gnの他端とグランド線GNL0~GNLnとの間に位置している。第2信号線Sb0~Sbnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnの他端に接続された一端とシート基材22の基端側に位置する他端とを有し、互いにほぼ平行に延びている。
後述するように、本実施形態では、第2センサパターンCDBのグランド線GNL0~GNLnは、それぞれ、中継基板12の位置で、スルーホールSHを介して、第3センサパターンCDCの電源線VL0~VLnに電気的に接続されている。これにより、第2センサパターンCDBの各歪ゲージは第3センサパターンの各歪ゲージに直列に接続されている。
【0018】
図2および
図3で示したように、第1センサシート20Aにおいて、第1センサパターンCDA(G0~Gn)はシート基材22上に形成され、第1センサパターンCDAに重ねてシート基材22上に第1絶縁層IL1が積層されている。第2センサパターンCDBは、第1絶縁層IL1上に形成され、第2センサパターンCDBに重ねて第1絶縁層IL1上に第2絶縁層IL2が積層されている。
図6に示すように、第2センサパターンCDBの歪ゲージG0~Gnは、それぞれ第1センサパターンCDAの歪ゲージG0~Gnと第1センサシート20Aの厚さ方向に対向して位置している。
【0019】
第2センサパターンCDBの電源線VL0~VLn、グランド線GNL0~GNLn、第1信号線Sa0~San、および第2信号線Sb0~Sbnは、それぞれ第1センサパターンCDAの電源線VL0~VLn、グランド線GNL0~GNLn、第1信号線Sa0~San、および第2信号線Sb0~Sbnに対し、幅方向Yに僅かにずれて位置している。
第2センサパターンCDBの電源線VL0~VLn、グランド線GNL0~GNLn、第1信号線Sa0~San、および第2信号線Sb0~Sbnは、それぞれ歪ゲージG0~Gnに繋がる先端側部分DAと、中途部からシート基材22の基端まで延在する基端側部分PAとを有している。各先端側部分DAは、第1絶縁層IL1上に設けられ、基端側部分PAは、シート基材22上に設けられている。各先端側部分DAの端は、第1絶縁層IL1に設けられたコンタクトホールCHを介して基端側部分PAの端に電気的に接続されている。
このように、第2センサパターンCDBの電源線VL0~VLn、グランド線GNL0~GNLn、第1信号線Sa0~San、および第2信号線Sb0~Sbnの基端側部分PAは、第1センサパターンCDAの電源線VL0~VLn、グランド線GNL0~GNLn、第1信号線Sa0~San、および第2信号線Sb0~Sbnと同一平面に位置し、すなわち、シート基材22上に位置し、共通のFPC14の配線に接続される。
【0020】
第2センサシート20Bの第3センサパターンCDCおよび第4センサパターンCDDは、上述した第1センサシート20Aの第1センサパターンCDAおよび第2センサパターンCDBと同一形状、同一寸法、同一構造に形成されている。
【0021】
図2に示したように、上記のように構成された第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bは、ベース基板44の前面および背面に貼付され、ベース基板44を挟んで互いに対向する。すなわち、第1センサシート20Aの2層の歪ゲージG0~Gnは、ベース基板44を挟んで、第2センサシート20Bの2層の歪ゲージG0~Gnにそれぞれ対向している。ここで、第1センサシート20Aの各歪ゲージG0~Gnと第2センサシートの各歪ゲージG0~Gnとは、ベース基板44の表面に垂直な方向から見た平面視で互いに少なくとも一部が重畳していることが好ましい。或いは、これら各センサシート20A、20Bの歪ゲージG0~Gnは、少なくとも、長手方向Xへのずれを許容しつつも幅方向Yにはずれることなく重畳していることが好ましい。或いは、これら各センサシート20A、20Bの歪ゲージG0~Gnは、長手方向Xにも幅方向Yにもずれることなく重畳していることがより好ましい。
【0022】
第1センサシート20Aの第1センサパターンCDAおよび第2センサパターンCDBの配線は、FPC14を介して中継基板12の上面上まで延びている。第2センサシート20Bの第3センサパターンCDCおよび第4センサパターンCDDの配線は、FPC14を介して中継基板12の背面上まで延びている。本実施形態では、第1センサパターンCDAのグランド線GNL0~GNLnは、それぞれ、中継基板12に形成された接続線としてのメッキスルーホールSHにより、第4センサパターンCDDの電源線VL0~VLnに電気的に接続されている。更に、第2センサパターンCDBのグランド線GNL0~GNLnは、それぞれ、中継基板12に形成された接続線としてのメッキスルーホールSHにより、第3センサパターンCDCの電源線VL0~VLnに電気的に接続されている。
【0023】
なお、接続線は、メッキスルーホールSHに限らず、中継基板12上の配線パターン等を用いても良い。また、第2センサシート20Bの側のFPC14も中継基板12の上面側と接続することにより、メッキスルーホールではなく中継基板12上の配線を介してこれら第1センサシート20Aのグランド線GNL0~GNLnを第2センサシート20Bの電源線VL0~VLnにそれぞれ接続する構成を採用することも可能である。更には、第1センサシート20Aの側のFPC14及び第2センサシート20Bの側のFPC14を中継基板12の上面側に設けられる駆動回路40と接続し、当該駆動回路40内でこれら第1センサシート20Aのグランド線GNL0~GNLnを第2センサシート20Bの電源線VL0~VLnにそれぞれ接続する構成を採用することも可能である。
【0024】
次に、上記のように構成された第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bを駆動する駆動回路(コントローラ)について説明する。
図7は、歪ゲージセンサ装置10の駆動回路を模式的に示すブロック図、
図8は、第1~第4センサパターン、コントローラのセレクタおよびアナログフロントエンドを示すブロック図である。なお、
図8において、図面の簡素化を図るため、各センサパターンの電源線VL0~VLnは1本の電源線に纏めて表記し、グランド線GNL0~GNLnは1本の電源線に纏めて表記している。
図7に示すように、中継基板(制御回路基板)12に設けられた駆動回路40は、セレクタSEL、アナログフロントエンド(AFE:信号調整回路)30、タイミングコントローラ34、通信インターフェース36などを有している。
【0025】
通信インターフェース36は、外部のホストコントローラ38に無線あるいは有線接続され、ホストコントローラ38から駆動信号(setting)を受けるとともに、検出データ(Data)をホストコントローラ38に送信する。
タイミングコントローラ34は、駆動信号(setting)に応じて、セレクタSELおよびアナログフロントエンド30に駆動信号を出力する。
セレクタSELは、複数のシフトレジスタ、マルチプレクサ等で構成される。セレクタSELは、タイミングコントローラ34からの駆動信号に応じて、第1センサシート20Aにおける第1および第2センサパターンCDA、CDBの電源線VL0~VLnを順次、電源に接続し、歪ゲージG0~Gnに順次電圧PW0~PWnを印加する。これに同期して、セレクタSELは、第1信号線Sa0~San、第2信号線Sb0~Sbnを介して各歪ゲージG0~Gnの一端側および他端側の検出信号(電圧値)RXa0~RXan、RXb0~RXbnを順次読み取る。
【0026】
第1および第2センサパターンCDA、CDBの電源線VL0~VLnに供給された電圧PW0~PWnは、グランド線GNL0~GNLnおよび接続線SHを介して、第3および第4センサパターンCDC、CDDの電源線VL0~VLnに順次印加される。セレクタSELは、上記読取りに同期して、第2センサシート20Bにおける第3および第4センサパターンCDC、CDDの第1信号線Sa0~San、第2信号線Sb0~Sbnを介して各歪ゲージG0~Gnの一端側および他端側の検出信号(電圧値)RXc0~RXcn、RXd0~RXdnを順次読み取る。
【0027】
図8に示すように、アナログフロントエンド30は、読み出し回路31、差分検出回路30a、30b、AD変換器32、デジタルフィルタ33、メモリ37等を含んでいる。
図9は、アナログフロントエンドにおける差分検出回路の回路図である。図示のように、本実施形態によれば、アナログフロントエンド30は、第1センサシート20Aの検出信号を処理する差分検出回路(減算回路)30a、および第2センサシート20Bの検出信号を処理する差分検出回路(減算回路)30bを含んでいる。アナログフロントエンド30は、駆動信号に応じて、セレクタSELから送られた各歪ゲージG0~Gnの検出信号RXa、RXbおよび検出信号RXc、RXdを信号調整(増幅、AD変換、フィルタリング)し、通信インターフェース36に出力する。この際、曲率半径の算出には各歪ゲージGの電圧降下値が必要となるため、差分検出回路30a、30bによりそれぞれの歪ゲージG0~Gnの検出値Rxa、Rxbの差分、および歪ゲージG0~Gnの検出値Rxc、Rxdの差分、を取って信号出力する。
【0028】
図7に示すように、ホストコントローラ38は、読取り回路38a、メモリ38b、演算処理部38cなどを含んでいる。読取り回路38aは、通信インターフェース36から送られた出力信号(差分データ)を読取り、メモリ38bに格納する。演算処理部38c、例えば、CPU、は、差分データに基づいてデータ成形、曲面計算等の演算処理を行い、第1および第2センサシート20A、20Bにより検出された被検体の歪(曲率半径)、曲面形態(曲面座標)等を算出する。メモリ38bには、差分データ、算出された曲率半径、曲面形態、検出動作プログラムなどが格納される。
【0029】
次に、歪ゲージセンサ装置10の検出動作モードについて説明する。
図10は、歪ゲージセンサ装置10を被検体50の表面に設置した状態を模式的に示す図である。図示のように、一例では、被検体50は、波状あるいはサイン波状に湾曲した表面50aを有している。歪ゲージセンサ装置10は、被検体50の表面50aに密着して設置され、被検体50の曲面形態を検出する。この場合、歪ゲージセンサ装置10は、第2センサシート20Bが被検体50の表面50aに接触した状態で設置される。また、一例では、第1センサシート20Aおよび第2センサシート20Bの各センサパターンは、それぞれ4~8個程度の歪ゲージG0~Gnを備えているものとしている。隣合う歪ゲージ間の間隔Lは、例えば、5~20mm、より好ましくは、10~15mm程度としている。
【0030】
図11は、被検体50の表面50aに設置された歪ゲージセンサ装置10の一部を拡大して模式的に示す図である。図示のように、表面50a上に設置した状態において、ベース基板44の中立面は、曲率半径rで湾曲している。ここで、中立面とは、当該歪ゲージセンサ装置の湾曲前後において伸長(引張り)も収縮(圧縮)も生じない(すなわち湾曲後もひずみがゼロ)面である。本実施形態においては、中立面は、ベース基板44の厚さ方向の中心(厚さ×1/2)となる位置にあるものとしている。
外周側に位置する第1センサシート20Aにおける第1センサパターンCDAの歪ゲージ(第1歪ゲージと称する場合がある)GAと第2センサパターンの歪ゲージ(第2歪ゲージと称する場合がある)GBとは絶縁層を間に挟んで径方向(厚さ方向)に対向している。内周側に位置する第2センサシート20Bにおける第3センサパターンCDCに歪ゲージ(第3歪ゲージと称する場合がある)GCと第4センサパターンCDDの歪ゲージ(第4歪ゲージと称する場合がある)GDとは絶縁層を間に挟んで径方向(厚さ方向)に対向している。すなわち、4層に積層された4つの歪ゲージGA、GB、GC、GDは、径方向に間隔を置いて、互いに対向している。最外周に歪ゲージGA、最内周に歪ゲージGD、これらの間に、2層の歪ゲージGB、GCが位置している。対向する2層の歪ゲージ間の間隔dを一定とすると、歪ゲージセンサ装置の厚さは3dとなっている。
【0031】
最外周の歪ゲージGAと中立面との間隔をd1、最内周の歪ゲージGDと中立面との間隔をd2、中間の歪ゲージGBと中立面との間隔をd3、中間の歪ゲージGCと中立面との間隔をd4とした場合、d1=d2、かつ、d3=d4であることが望ましい。d1≠d3、d2≠d4であっても良い。
【0032】
検出動作モードでは、電源線および信号線をスキャン駆動することにより、歪ゲージG0~Gnを順次駆動し、歪ゲージG0~Gnの検出値を順次読取る。詳細には、検出時、タイミングコントローラ34は、ホストコントローラ38からの指示に応じて、スタート信号、これに同期するクロック信号をセレクタSELに入力し、1フレーム期間において、第1および第2センサシート20A、20Bの歪ゲージG0~Gnを順次駆動(setting)させる。
【0033】
図8に示すように、セレクタSELは、始めに、外側に位置する2つの歪ゲージGA、GDに電圧を印加し、歪検出を行う。セレクタSELは、第1センサパターンCDAの電源線VL0を駆動し、すなわち、電源線VL0に電源電圧を印加し、歪ゲージG0に所望の電圧PW0を印加する。これにより、一定時間、歪ゲージG0に電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第1信号線Sa0および第2信号線Sb0を介して、歪ゲージG0の一端の検出信号(電圧値)RXa0および歪ゲージG0の他端の検出信号(電圧値)RXb0を取得する。
第1センサパターンCDAのグランド線GNL0は、第2センサシート20Bの第4センサパターンCDDの電源線VL0に繋がっている。より具体的には、第1センサパターンCDAの歪ゲージG0(GA)と第4センサパターンCDDの歪ゲージG0(GD)とは、第1センサパターンCDAのグランド線GNL0、接続線(メッキスルーホール)SH及び第4センサパターンCDDの電源線VL0を介して直列に接続されている。そのため、第1センサパターンCDAの歪ゲージG0を駆動すると第4センサパターンCDDの歪ゲージG0が同期して駆動され、当該歪ゲージG0にも電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第4センサパターンCDDの第1信号線Sa0および第2信号線Sb0を介して、歪ゲージG0の一端の検出信号(電圧値)RXc0および歪ゲージG0の他端の検出信号(電圧値)RXd0を取得する。
取得した検出信号RXa0、RXb0、RXc0、RXd0は、アナログフロントエンド30に送られ、差分検出回路30a、30bにより検出値Rxa、Rxbの差分検出、および検出値Rxc、Rxdの差分検出、並びに調整された後、メモリ37に格納される。
【0034】
次いで、セレクタSELは、第1センサパターンCDAの電源線VL1を駆動し、第1センサパターンCDAの歪ゲージG1および第4センサパターンCDDの歪ゲージG1にそれぞれ所望の電圧PW1を印加する。これにより、対向する2つの歪ゲージG1に一定時間、電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第1センサパターンCDAの第1信号線Sa1および第2信号線Sb1を介して、歪ゲージG1の一端の検出信号RXa1および歪ゲージG1の他端の検出信号RXb1を取得する。同時に、セレクタSELは、第4センサパターンCDDの第1信号線Sa1および第2信号線Sb1を介して、歪ゲージG1の一端の検出信号RXc1および歪ゲージG1の他端の検出信号RXd1を取得する。
取得した検出信号RXa1、RXb1、RXc1、RXd1は、アナログフロントエンド30に送られ、差分検出回路30a、30bにより差分検出および調整された後、メモリ37に格納される。
【0035】
以後、セレクタSELは、第1センサパターンCDAの歪ゲージG2~Gnおよび第4センサパターンCDDの歪ゲージG2~Gnを順次駆動し、歪ゲージG2~Gnの検出信号RXa2~RXan、RXb2~RXbn、RXc2~RXcn、RXd2~RXdnを順次取得する。取得した検出信号は、順次、アナログフロントエンド30に送られ、調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0036】
図12に示すように、次いで、セレクタSELは、中間層(内側)に位置する2つの歪ゲージGB、GCに電圧を印加し、歪検出を行う。なお、
図12において、図面の簡素化を図るため、各センサパターンの電源線VL0~VLnは1本の電源線に纏めて表記し、グランド線GNL0~GNLnは1本の電源線に纏めて表記している。
詳細には、セレクタSELは、第1センサシート20Aの第2センサパターンCDBの電源線VL0を駆動し、歪ゲージG0に所望の電圧PW0を印加する。これにより、一定時間、歪ゲージG0に電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第1信号線Sa0および第2信号線Sb0を介して、歪ゲージG0の一端の検出信号(電圧値)RXa0および歪ゲージG0の他端の検出信号(電圧値)RXb0を取得する。
【0037】
第2センサパターンCDBのグランド線GNL0は、第2センサシート20Bの第3センサパターンCDCの電源線VL0に繋がっている。より具体的には、第2センサパターンCDBの歪ゲージG0(GB)と第3センサパターンCDCの歪ゲージG0(GC)とは、第2センサパターンCDBのグランド線GNL0、接続線(メッキスルーホール)SH及び第3センサパターンCDCの電源線VL0を介して直列に接続されている。そのため、第2センサパターンCDBの歪ゲージG0を駆動すると第3センサパターンCDCの歪ゲージG0が同期して駆動され、当該歪ゲージG0にも電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第3センサパターンCDCの第1信号線Sa0および第2信号線Sb0を介して、歪ゲージG0の一端の検出信号(電圧値)RXc0および歪ゲージG0の他端の検出信号(電圧値)RXd0を取得する。
取得した検出信号RXa0、RXb0、RXc0、RXd0は、アナログフロントエンド30に送られ、差分検出回路30a、30bにより検出値Rxa、Rxbの差分検出、および検出値Rxc、Rxdの差分検出、並びに調整された後、メモリ37に格納される。
【0038】
次いで、セレクタSELは、第2センサパターンCDBの電源線VL1を駆動し、第2センサパターンCDBの歪ゲージG1および第3センサパターンCDCの歪ゲージG1にそれぞれ所望の電圧PW1を印加する。これにより、対向する2つの歪ゲージG1に一定時間、電流Iが通電される。同時に、セレクタSELは、第2センサパターンCDBの第1信号線Sa1および第2信号線Sb1を介して、歪ゲージG1の一端の検出信号RXa1および歪ゲージG1の他端の検出信号RXb1を取得する。同時に、セレクタSELは、第3センサパターンCDCの第1信号線Sa1および第2信号線Sb1を介して、歪ゲージG1の一端の検出信号RXc1および歪ゲージG1の他端の検出信号RXd1を取得する。
取得した検出信号RXa1、RXb1、RXc1、RXd1は、アナログフロントエンド30に送られ、差分検出回路30a、30bにより差分検出および調整された後、メモリ37に格納される。
【0039】
以後、セレクタSELは、第2センサパターンCDBの歪ゲージG2~Gnおよび第3センサパターンCDDの歪ゲージG2~Gnを順次駆動し、歪ゲージG2~Gnの検出信号RXa2~RXan、RXb2~RXbn、RXc2~RXcn、RXd2~RXdnを順次取得する。取得した検出信号は、順次、アナログフロントエンド30に送られ、調整および差分検出された後、メモリ37に格納される。
【0040】
上述したように、アナログフロントエンド30は、送られた検出信号RXa1~RXan、RXb1~RXbn、および検出信号RXc1~RXcn、RXd1~RXdnを読み出し回路31により順次、読み出して電圧信号に変換し、更に、AD変換器32およびデジタルフィルタ33によりデジタルデータ(Data)とする。更に、アナログフロントエンド30は、差分検出回路30a、30bにより、検出信号RXa0~RXanとRXb0~RXbnとの差分、および検出信号RXc0~RXcnとRXd0~RXdnとの差分を検出する。検出された差分データは、順次、メモリ37に格納される。アナログフロントエンド30は、1フレーム期間のスキャンが完了した時点で、1フレーム分の差分データをメモリ37から読み出し、ホストコントローラ38に出力する。ホストコントローラ38は、送られたデータに基づいて、被検体50の表面50aの曲面形態を算出する。
【0041】
曲面形態、一例では、曲率半径の算出方法について説明する。
図13Aは、
図11に示した4層の歪ゲージのうち、中間(内側)の2層の歪ゲージGB、GCの検出値を用いて曲率半径を算出する場合を模式的に示す歪ゲージセンサの断面図、
図13Bは、
図11に示した4層の歪ゲージのうち、最外内層(外側)の歪ゲージGA、GDの検出値を用いて曲率半径を算出する場合を模式的に示す歪ゲージセンサの断面図である。外側に位置する歪ゲージGA、GBと内側に位置する歪ゲージGC、GDとは、径方向(基材の厚さ方向)に対向しているとともに、互いに異なる曲率半径で湾曲している。
図13A、13Bおよび以下に示す数式において、3d:基材厚さ、θ:歪ゲージ開き角、r:中立面の曲率半径、k:ゲージ率、R0:歪ゲージ初期抵抗、ΔR0、ΔR0´:歪ゲージ抵抗変化をそれぞれ示している。
【0042】
歪ゲージGB、GCの検出値に基づいて曲率半径を算出する場合について説明する。
図13Aに示すように、ベース基板44の中立面での歪ゲージの長手方向Xの長さを歪ゲージ初期長さとすると、中間外側の歪ゲージGBは、湾曲することにより長さが延びた状態に変形し、中間内側の歪ゲージGCは、湾曲することにより長さが縮んだ状態に変形している。
歪ゲージGB、GCの変形前の初期抵抗値をR0、変形後の歪ゲージGBの測定電圧(歪ゲージの一端の電圧値と他端の電圧値との差)をVB、変形後の歪ゲージGCの測定電圧をVC、歪ゲージの抵抗変化をΔR0、各歪ゲージGB、GCに流れる電流をI、とすると、歪ゲージGBの測定電圧VBおよび歪ゲージGCの測定電圧VCは、
【数1】
となる。歪ゲージ抵抗の変化を用いて各々の歪ゲージ両端の電位差との関係を表すと以下の式となる。
【数2】
上式より、歪ゲージ抵抗の変化率は、以下の式で算出される。
【数3】
【0043】
上記の関係式から中立面の曲率半径rの計算式は、以下の通りとなる。
【数4】
図14は、歪ゲージセンサ装置10の複数の歪ゲージG0~Gnの位置で、歪ゲージGB、GCの検出値に基づいて算出した曲率半径(曲面座標)P0~Pnをプロットした曲面形態を示している。
【0044】
歪ゲージGA、GDの検出値に基づいて曲率半径を算出する場合について説明する。
図13Bに示すように、ベース基板44の中立面での歪ゲージの長手方向Xの長さを歪ゲージの初期長さとすると、最外層の歪ゲージGAは、湾曲することにより長さが延びた状態に変形し、最内層の歪ゲージGDは、湾曲することにより長さが縮んだ状態に変形している。
歪ゲージGA、GDの変形前の初期抵抗値をR0、変形後の歪ゲージGAの測定電圧(ゲージの一端の電圧値と他端の電圧値との差)をVA、変形後の歪ゲージGDの測定電圧をVD、歪ゲージの抵抗変化をΔR0´、各歪ゲージGA、GDに流れる電流をI´、とすると、歪ゲージGAの抵抗値VAおよび歪ゲージGDの抵抗値VDは、
【数5】
となる。歪ゲージ抵抗の変化を用いて各々の歪ゲージ両端の電位差との関係を表すと以下の式となる。
【数6】
上式より、歪ゲージ抵抗の変化率は、以下の式で算出される。
【数7】
【0045】
上記の関係式から中立面の曲率半径r´の計算式は、以下の通りとなる。
【数8】
図15は、歪ゲージセンサ装置10の複数の歪ゲージG0~Gnの位置で、歪ゲージGA、GDの検出値に基づいて算出した曲率半径(曲面座標)P´0~P´nをプロットした曲面形態を示している。
【0046】
ホストコントローラ38は、送られたデータに基づいて、被検体50の表面50aの曲面形態を算出する。歪ゲージGB、GCの検出値に基づいて算出した曲率半径(曲面座標)P0~Pnと歪ゲージGA、GDの検出値に基づいて算出した曲率半径(曲面座標)P´0~P´nとの平均値((P0+P0´)/2、(P1+P1´)/2、(P2+P2´)/2、…)を算出し最終データとして各部の曲率半径(曲面座標)を取得する。
図16は、最終データとして算出した曲率半径P0~Pnをプロットした曲面形態を示している。
以上により、歪ゲージセンサ装置10は、表面50aの複数個所の曲率半径を順次算出することにより、表面50a全体の曲面形態を検出することができる。
【0047】
次に、歪ゲージを含むセンサパターンの形成材料について説明する。
歪ゲージセンサ装置の歪ゲージGBおよび歪ゲージGCと、歪ゲージGAおよび歪ゲージGDとが同じ材料、同じ抵抗値で形成されている場合は、前述した中立面に近い内側の歪ゲージほど出力値のダイナミックレンジは小さくなる。そのため、中立面に近い内側の歪ゲージの抵抗値を外側の歪ゲージの抵抗値よりも大きくすることで、内側の歪ゲージの出力値のダイナミックレンジを大きくする。
一例では、4層の歪ゲージのうち、内側に位置する、すなわち、歪ゲージセンサ装置の厚さ方向の中心(中立面)の側に位置する第2センサパターンCDBの歪ゲージGBおよび第3センサパターンCDCの歪ゲージGCは、同じ材料で形成され、かつ、抵抗値の大きい材料、例えば、チタンで形成されている。4層の歪ゲージのうち、外側に位置する、すなわち、歪ゲージセンサ装置の厚さ方向の中心(中立面)から離間して位置する第1センサパターンCDAの歪ゲージGAおよび第4センサパターンCDDの歪ゲージGDは、同じ材料で形成され、更に、抵抗値の小さい材料、例えば、アルミニウムで形成されている。このように、内側の歪ゲージGB、GCと外側の歪ゲージGA、GDとは異なる材料で形成され、内側の歪ゲージGB、GCは、外側の歪ゲージGA、GDよりも高抵抗に形成されている。
この構成の場合、内側の歪ゲージGB、GCと外側の歪ゲージGA、GDの各々の抵抗値を最適な抵抗値にすることで、
図17に示すように、内側の歪ゲージのダイナミックレンジを大きくし、外側の歪ゲージのダイナミックレンジと同等のレンジに設定することが可能となる。従って、内側の歪ゲージGB、GCのダイナミックレンジを広げることができ、歪検出時の量子化誤差を小さくすることが可能となる。
なお、蛇腹状あるいは矩形波状の歪ゲージの場合、歯数を増加することにより抵抗値が高くなる。そのため、歪ゲージGA、GB、GC、GDを同一の材料で形成し、内側の歪ゲージGB、GCの歯数を外側の歪ゲージGA、GDの歯数よりも多くすることによっても、内側の歪ゲージGB、GCを高抵抗化することが可能である。
【0048】
以上のように構成された本実施形態に係る歪ゲージセンサ装置10によれば、第1センサシート20Aの2層の歪ゲージG0~Gnと第2センサシート20Bの2層の歪ゲージG0~Gnとは、基材の厚さ方向に互いに対向して配置され、更に、第1センサシートの電源線と第2センサシートのグランド線とを接続することにより、第1センサシートの歪ゲージと第2センサシートの歪ゲージとがそれぞれ直列に繋がっている。そのため、第1センサシートの歪ゲージG0~Gnの順次駆動(スキャン)に同期して第2センサシートの歪ゲージG0~Gnを順次駆動(スキャン)することができ、表裏で対向する2つの歪ゲージにより同一部位を同時に歪検出することができる。更に、検出時、対向する2つの歪ゲージに一定の電流Iを通電することができ、両歪ゲージの検出信号の差分を取ることにより、高い精度で曲面形態を検出することが可能となる。
更に、本実施形態によれば、歪ゲージセンサ装置は、厚さ方向に重なって配置された複数層、ここでは、4層の歪ゲージGA、GB、GC、GDを含み、一対ずつ、例えば、歪ゲージGA、GDにより検出した検出値と、歪ゲージGB、GCにより検出した検出値と、の平均値を最終検出データとして取得している。このように、厚さ方向の異なる複数位置で検出した検出値の平均を用いることにより、歪ゲージセンサ装置は、被検体の曲面形態を一層、高い精度で検出することが可能となる。
以上のことから、本実施形態によれば、検出精度の向上を図ることが可能な歪検出装置を得ることができる。
【0049】
なお、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本発明の実施形態として上述した各構成を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての構成も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0050】
例えば、歪ゲージセンサ装置におけるセンサパターンの層数、すなわち、歪ゲージの層数は、4層に限らず、6層、8層、10層、それ以上としても良い。センサシートのセンサパターンにおける歪ゲージの配列数は、上述した実施形態に限らず、任意に選択可能である。センサシートの構成材料、寸法、および形状は、前述した実施形態に限定されることなく、適宜、変更可能である。電源線とグランド線とを繋ぐ接続線は、メッキスルーホールに限らず、セレクタSEL内の配線で構成してもよい。 あみかけ
【符号の説明】
【0051】
10…歪ゲージセンサ装置、12…中継基板、20A…第1センサシート、
20B…第2センサシート、22…シート基材、30a、30b…差分検出回路、
44…ベース基板、G0~Gn、GA、GB、GC、GD…歪ゲージ、VL…電源線、
GNL…グランド線、Sa…第1信号線、Sb…第2信号線、SEL…セレクタ、
CDA…第1センサパターン、CDB…第2センサパターン、
CDC…第3センサパターン、CDD…第4センサパターン