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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024544
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】流体漏れの補修方法、及び補修用器具
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/17 20060101AFI20250213BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
F16L55/17
F16L55/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128730
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小川 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】西垣内 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘治
(72)【発明者】
【氏名】池宗 省三
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB04
3H025EC02
3H025ED01
3H025EE05
(57)【要約】
【課題】より簡易な装置によって、溶接を用いた補修を行いやすくする。
【解決手段】流体の流れを止める弁が無い配管11の流体漏れの補修方法である。内径が配管11の外径と等しい第1のリング1と、内径が配管11の外径と等しく外径が第1のリング1の外径よりも小さい第2のリング2と、内径が第2のリング2の外径に等しく且つ外径が第1のリング1の外径以下である継手用配管3と、を有し、配管11の外周面に、上流側から第1のリング1及び第2のリング2を固定する工程と、第2のリング2を取り付ける位置よりも下流位置で、配管11を切断する工程と、継手用配管3の内径面に固定した第2のリング2の外径面を接触させると共に、継手用配管3の軸方向一端部側を固定した第1のリング1の側面に接触させて固定する継手用配管の取付け工程S40と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修対象の配管における流体の漏出位置よりも上流側に、流体の流れを止める弁が無い当該補修対象の配管に対する、流体漏れの補修方法であって、
内径が補修対象の配管の外径と等しい無端環状の第1のリングと、
内径が補修対象の配管の外径と等しく且つ外径が上記第1のリングの外径よりも小さい無端環状の第2のリングと、
内径が第2のリングの外径に等しく且つ外径が第1のリングの外径以下である継手用配管と、を有し、
上記補修対象の配管における上記漏出位置よりも上流側の配管外周面に、上記第1のリング及び上記第2のリングを、上記第1のリングが上記第2のリングよりも上流側の配置となるようにして、固定する工程と、
上記第2のリングを取り付ける位置よりも下流位置で、上記補修対象の配管を切断する工程と、
上記固定する工程、及び上記切断する工程の後に、上記継手用配管の内径面に上記第2のリングの外径面を接触させると共に、上記継手用配管の軸方向一端部側を上記第1のリングの側面に接触させて固定する継手用配管の取付け工程と、
を備え、
上記継手用配管の軸方向他端部側に、補修対象の配管の下流側を接続する、
流体漏れの補修方法。
【請求項2】
上記補修対象の配管は、低圧流体用配管である、
請求項1に記載した流体漏れの補修方法。
【請求項3】
補修対象の配管における、上記第1のリングと取り付け位置よりも上流側に、強制的に流量を絞るための分岐配管を取り付けてから、上記切断する工程を行う、
請求項1に記載した流体漏れの補修方法。
【請求項4】
上記継手用配管の軸方向他端部側に、取付け用のボルト穴が開口した外向きフランジが設けられていて、
上記取付け工程の際には、上記外向きフランジに、上記継手用配管の軸方向他端部側の開口を閉塞する閉塞板が取り付けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載した流体漏れの補修方法。
【請求項5】
上記継手用配管は、圧抜き弁が設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載した流体漏れの補修方法。
【請求項6】
上記継手用配管は、圧抜き弁が設けられている、
請求項4に記載した流体漏れの補修方法。
【請求項7】
流体の漏出位置よりも補修対象の配管の上流側に、流体の流れを止める弁が無い補修対象の管に対する、流体漏れの補修用器具であって、
内径が補修対象の配管の外径と等しい無端環状の第1のリングと、
内径が補修対象の配管の外径と等しく且つ外径が上記第1のリングの外径よりも小さい無端環状の第2のリングと、
内径が第2のリングの外径に等しく且つ外径が第1のリングの外径以下である継手用配管と、
を備える流体漏れの補修用器具。
【請求項8】
上記継手用配管は、軸方向他端部側に、取付け用のボルト穴が開口した外向きフランジが設けられ、
更に、上記外向きフランジにボルト止めされることで、上記継手用配管の軸方向他端部側の開口を閉塞可能な閉塞板を備える、
請求項7に記載した流体漏れの補修用器具。
【請求項9】
上記継手用配管に、圧抜き弁が設けられている、
請求項7又は請求項8に記載した流体漏れの補修用器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧流体用配管などの補修対象の配管の漏れ補修の技術に関する。本発明は、配管の漏れ補修のうち、漏れ部の上流側(1次側とも記載する)に流れを止める弁が無いために流体の流れを止めずに漏れ補修を行う必要があり、また、より強固な溶接を用いた補修が必要な場合に有効な技術である。
ここで、本明細書において低圧流体用配管とは、例えば、配管内の流体圧が2MPa以下を指す。
【背景技術】
【0002】
従来の配管漏れの補修は、例えば特許文献1に記載のように方法が採用されていた。このような補修方法は、配管径よりもかなり大きな専用機具を配管に装着させ、且つ専門の技術を持った作業者により、不断水にて流体の流れを止める弁や分岐配管を取り付ける方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-181790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような不断水工法では、流体の流れを止める弁や分岐配管を取り付けるために、既設配管の側面に穴あけが必要となる。しかし、この施工は、通常、配管径に対して数倍以上の大きさの穴あけ治具を用意する必要があるため、狭所での施工には不向きである。
また、分岐配管を取り付けるだけであれば比較的安価に行えるが、流体の流れを止める弁を取り付ける施工方法は、非常に高価になりやすい。また、この施工方法は、特殊品を用いるため、在庫不足の懸念がある。更に、この施工方法は、専門の技術を持った作業者が必要なため、早急な漏れ補修対応が難しい場合もある。
ここで、配管補修では、溶接を用いた補修によって長期的な対策とすることが一般的である。しかし、上記のような特殊品を用いて配管内部の流体の断水が出来ない場合、溶接部への流体侵入によって溶接補修が不可能となるおそれもある。
【0005】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、より簡易な装置によって、溶接を用いた補修を行いやすくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題解決のために、本発明の一態様は、補修対象の配管における流体の漏出位置よりも上流側に、流体の流れを止める弁が無い当該補修対象の配管に対する、流体漏れの補修方法であって、内径が補修対象の配管の外径と等しい無端環状の第1のリングと、内径が補修対象の配管の外径と等しく且つ外径が上記第1のリングの外径よりも小さい無端環状の第2のリングと、内径が第2のリングの外径に等しく且つ外径が第1のリングの外径以下である継手用配管と、を有し、上記補修対象の配管における上記漏出位置よりも上流側の配管外周面に、上記第1のリング及び上記第2のリングを、上記第1のリングが上記第2のリングよりも上流側の配置となるようにして、固定する工程と、上記第2のリングを取り付ける位置よりも下流位置で、上記補修対象の配管を切断する工程と、上記固定する工程、及び上記切断する工程の後に、上記継手用配管の内径面に上記第2のリングの外径面を接触させると共に、上記継手用配管の軸方向一端部側を上記第1のリングの側面に接触させて固定する継手用配管の取付け工程と、を備え、上記継手用配管の軸方向他端部側に、補修対象の配管の下流側を接続する。
【0007】
また、本発明の他の態様は、流体の漏出位置よりも補修対象の配管の上流側に、流体の流れを止める弁が無い補修対象の配管に対する、流体漏れの補修用器具であって、内径が補修対象の配管の外径と等しい無端環状の第1のリングと、内径が補修対象の配管の外径と等しく且つ外径が上記第1のリングの外径よりも小さい無端環状の第2のリングと、内径が第2のリングの外径に等しく且つ外径が第1のリングの外径以下である継手用配管と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、補修部分の配管に対し、逆流防止リングとしての第2のリングを取り付ける。これによって、補修対象の配管に継手用配管を取り付けるために、第1のリングに継手用配管の端部を取り付けるための溶接時に、補修対象の配管を流れる流体が、その溶接位置へ移動することを第2のリングによって抑制される。よって、本発明の態様によれば、溶接補修が行いやすくなる。
補修用の材料(補修用器具)は、比較的手に入りやすく安価で一般的な配管材料を用いることで、場所を限定せず、特別な技術を持った作業者に限定せずに、低コストにて漏れ箇所の不断水補修を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に基づく実施形態に係る補修用器具を使用状態で説明する図である。
図2】第1のリングを示す図である。(a)が平面図、(b)は径方向から見た図である。
図3】第2のリングを示す図である。(a)が平面図、(b)は径方向から見た図である。
図4】本発明に基づく実施形態に係る補修の処理工程の構成例を示す図である。
図5】配管構成と漏れの例を示す図である。
図6】減圧工程を説明する図である。
図7】減圧工程を説明する図である。
図8】リング取付け工程を説明する図である。
図9】配管切断工程を説明する図である。
図10】継手用配管の取付け工程S40を説明する図である。
図11】バルブ取付け工程、及び下流配管取付け工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、補修対象の配管として低圧流体用配管を例示して説明する。本発明は、低圧流体用配管に好適であるが、その他の流体を流す配管であっても適用可能である。
(補修用器具)
本実施形態の補修用器具は、図1に示すように、第1のリング1と、第2のリング2と、継手用配管3と、閉塞板4とを備える。閉塞板4は無くても良い。第1のリング1、第2のリング2、及び継手用配管3は、溶接可能な金属製材料からなる。
【0011】
<第1のリング1>
第1のリング1は、図1及び図2に示すように、内径D10が補修対象の配管11の外径D0と等しい無端環状の板材からなる。第1のリング1は、図2に示すように、半割した半円弧状の2つの部材1Aから構成されることで、配管切断工程S30前に、補修対象の配管11の外周面に取付け可能な構成となっている。
【0012】
<第2のリング2>
第2のリング2は、図1図3に示すように、内径D11が補修対象の配管11の外径D0と等しい無端環状の板材からなる。更に、第2のリング2は、外径D21が第1のリング1の外径D20よりも小さい無端環状の板材からなる。第2のリング2は、図3に示すように、半割した半円弧状の2つの部材2Aから構成されることで、配管切断工程S30前に、補修対象の配管11の外周面に取付け可能な構成となっている。
【0013】
<継手用配管3>
継手用配管3は、図1に示すように、内径D30が第2のリング2の外径D21に等しく、且つ外径D31が第1のリング1の外径D20以下の管体からなる。これによって、継手用配管3を、補修対象の配管11の外周側に、同軸若しくは略同軸に配置することができるようになる。なお、継手用配管3の長さは、補修対象の配管11における切断した切断面から、当該補修対象の配管11における第1のリング1の取付け位置までの長さよりも長い。継手用配管3の長さの上限は、特に無い。
【0014】
継手用配管3の側壁には、図1に示すように、圧抜き弁7が接続されている。圧抜き弁7の排出側には、不図示のホースや配管が接続されていてもよい。ホースや配管を接続した場合、継手用配管3から排出される流体を、継手用配管3から離れた位置に誘導することができる。なお、第1のリング1に継手用配管3を固定する際に、圧抜き弁7の位置が最下方位置となるように円周方向位置を調整すると良い。
また、継手用配管3の軸方向他端部側(下流側端部)に、外向きフランジ3Aが設けられている。外向きフランジ3Aには、その周方向に沿って、複数のボルト穴3Aaが開口している。
【0015】
<閉塞板4>
閉塞板4は、継手用配管3の軸方向他端部側の開口を閉塞する板材である。閉塞板4は、外周部が外向きフランジ3Aと対向可能な大きさを有し、該外周部にボルト穴3Aaと対向する位置に貫通穴4aが開口している。そして、閉塞板4は、図1に示すように、ボルト5とナット6を使用したボルト締結によって、継手用配管3の外向きフランジ3Aに固定されて、継手用配管3の軸方向他端部の開口を閉塞しておく。
なお、継手用配管3の軸方向他端部側の開口を閉塞板4で閉塞しておかなくても良い。
【0016】
(配管の流体漏れの補修方法)
本実施形態の流体漏れの補修方法は、図4に示すように、減圧工程S10、リング取付け工程S20、配管切断工程S30、継手用配管の取付け工程S40、バルブ取付け工程S50、及び下流配管取付け工程S60を備える。
ここで、本例では、図5に示すような配管の接続を例に挙げて説明する。また、配管を流れる流体が、水である場合を想定して説明する。本発明は、配管を流れる流体が水以外の液体や気体であっても適用可能である。
【0017】
図5の例では、本管10の途中に分岐管11が接続されて流路が分岐している。そして、その分岐管11において、補修すべき状態、つまり配管11が破断もしくは破欠し内部の流体が外部へ漏れた場合とする。図5中、符号11Aが漏れ部11A(漏出位置)である。すなわち、この例では、分岐管11が、補修対象の配管11となる。
上述の通り、本例では、補修対象の配管11は、漏れ部11Aよりも上流位置に流体の流れを止める弁が無い低圧流体用配管とする。
なお、本管10に閉止弁(不図示)があるかどうかは問わない。分岐管の補修のために、本管10の閉止弁を閉状態とすると、補修対象の配管11とは別の配管や設備への流体の供給が停止してしまうという問題が発生する。
【0018】
<減圧工程S10>
まずは、補修対象の配管11中における漏れ部11Aよりも上流位置で、不断水用の分岐配管を取り付けることのできる場所を探す。そして、図6に示すように、探して特定した位置に不断水用の分岐配管12を接続する。なお、不断水用の分岐配管12は、比較的入手しやすい管体で構成すれば良い。このように、不断水用の分岐配管12を取り付けることで、補修対象の配管11内の流量が絞られ、漏れ部11A及びその近傍での流体圧が減圧される。この処理は、例えばコスモボーラーを用いて施工する。
【0019】
本実施形態では、更に、不断水用の分岐配管12の取付け後に、図7に示すように、分岐配管内部から、補修対象の配管11内へ邪魔板13を挿入する。これによって、更に、補修対象の配管11内の流量が絞られることで、更に圧力が下がる。例えば、補修対象の配管11内において、通常時で1~2MPa程度の低圧の流体を、0.3MPa程度まで減圧することができる。
この減圧工程S10の処理は省略しても良い。ただし、減圧工程S10を行うことで、補修位置での流体の圧力をより確実に抑えることができる。
【0020】
<リング取付け工程S20>
リング取付け工程S20は、減圧工程S10の後に実行する。リング取付け工程S20は、補修対象の配管11における漏出位置よりも上流側の配管外周面に、図8に示すように、第1のリング1及び上記第2のリング2を固定する工程である。このとき、図8に示すように、第1のリング1が、第2のリング2よりも上流側の配置となるようにして、当該第1のリング1及び第2のリング2を取り付ける。第1のリング1及び第2のリング2の取付けは溶接にて行えばよい。
【0021】
ここで、第1のリング1及び第2のリング2は、半割れの構造となっている。このため、第1のリング1及び第2のリング2は、補修のために補修対象の配管11を切断する前に、補修対象の配管11に取り付けることができる。このため、補修対象の配管11内を流れる流体による溶接作業の妨げとなることが防止される。このとき、漏れ部11Aを一時的に塞いでから溶接作業を実行しても良い。
【0022】
<配管切断工程S30>
リング取付け工程S20が完了したら、配管切断工程S30を実行する。
配管切断工程S30は、図8及び図9に示すように、第2のリング2を取り付ける位置よりも下流位置で、補修対象の配管11を切断する工程である。
なお、リング取付け工程S20を、配管切断工程S30後に実行しても良いが、補修対象の配管11内を流れる流体による溶接作業の妨げとなりやすい。
【0023】
<継手用配管の取付け工程S40>
継手用配管の取付け工程S40は、リング取付け工程S20及び配管切断工程S30の後に実行される。継手用配管の取付け工程S40は、図10に示すように、補修対象の配管11の切断方向から第1のリング1に向けて、軸方向に継手用配管3を移動する。そして、継手用配管3を補修対象の配管11の外周に配置する。このとき、図10に示すように、継手用配管3の内径面に第2のリング2の外径面が接触して、継手用配管3が補修対象の配管11と同軸に案内される。
またこのとき、圧抜き弁7が下方を向くように、継手用配管3の円周方向位置を調整する。
更に、継手用配管3の軸方向一端部側を第1のリング1の側面に接触させる。その後、継手用配管3の軸方向一端部を第1のリング1の面に溶接にて固定する。
符号20は、溶接部を示す。
【0024】
この溶接の際には、補修対象の配管11から継手用配管3に流体が流れ込み、図10に示すように、その流体が、補修対象の配管11の外径面と継手用配管3の内径面で形成される隙間に流れ込む。しかし、その流体は、継手用配管3の内径面に接触(摺接)する第2のリング2によって、継手用配管3の軸方向一端部と第1のリング1との溶接箇所まで流れ込むことが抑制される。その結果、当該溶接をより確実に実行可能となる。
【0025】
更に、本実施形態では、圧抜き弁7を開状態とすることで、継手用配管3に流れ込んだ流体は、下方に排出され、継手用配管3内の圧が低減して、更に、流体が上記溶接箇所に流れ込むことを防止できる。なお、圧抜き弁7にホース若しくは配管を接続しておくことで、補修箇所外への流体の排出を促すことも可能となる。
ここで、本実施形態では、継手用配管3に閉塞板4を取り付けて、継手用配管3の他端部側からの流体の排出を防止して、圧抜き弁7からの流体の排出を行う場合の例を説明した。
【0026】
圧抜き弁7を省略する代わりに、閉塞板4の取付けを省略してもよい。この場合でも、継手用配管3内の圧を低減可能である。ただし、圧抜き弁7からの流体の排出の場合、流体の排出位置が1カ所に限定され、排出される流体の扱いが容易となる。
また、継手用配管3に対し、閉塞板4を予め取り付けておく代わりに、継手用配管3に閉止弁15を取り付けておいても良い(図11参照)。この場合、バルブ取付け工程S50が予め実行されることになる。ただし、この場合、狭い場所での作業の場合などでは、継手用配管3の取り回し作業等に手間が掛かったりするおそれがある。
【0027】
<バルブ取付け工程S50、下流配管取付け工程S60>
継手用配管の取付け工程S40の終了後、閉塞板4を取り外し、図11に示すように、代わりに、閉止弁15を取り付ける。閉止弁15は、仕切弁やボール弁などである。
また、閉止弁15の下流に下流配管16を取り付ける。
ここで、継手用配管3の外向きフランジ3Aに対し、下流配管16を直接取り付けてもよい。
また、補修が終了後、邪魔板13を抜いて、不断水用の分岐配管12を閉止する。また、圧抜き弁7を閉状態とする。
【0028】
(作用その他)
本実施形態では、補修対象の配管11に取り付けた第1のリング1に継手用配管3を溶接にて取り付ける際に、第2のリング2が、第1のリング1側への逆流防止リングとして作用する。これによって、溶接箇所への侵入を防止することができる。すなわち、簡易な構成で、溶接補修が行いやすくなる。
また、補修用器具に、比較的手に入りやすく安価で一般的な配管材料を用いることができる。そして、場所を限定せず、一連の作業は、溶接技能を持った作業者であれば誰でも実施が可能となる。このように、特別な技術を持った作業者に限定せずに、低コストにて漏れ箇所の不断水補修を行うことが可能となる。なお、本実施形態は、補修対象の配管11の流体の流れを完全に止めることなく安価で場所を限定せずに漏れ補修を行うものである。
また、補修作業の前に、流体を逃がす分岐配管を取り付けることで、補修部での流体の圧を更に低減することができる。
【0029】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)補修対象の配管における流体の漏出位置よりも上流側に、流体の流れを止める弁が無い当該補修対象の配管に対する、流体漏れの補修方法であって、
内径が補修対象の配管の外径と等しい無端環状の第1のリングと、
内径が補修対象の配管の外径と等しく且つ外径が上記第1のリングの外径よりも小さい無端環状の第2のリングと、
内径が第2のリングの外径に等しく且つ外径が第1のリングの外径以下である継手用配管と、を有し、
上記補修対象の配管における上記漏出位置よりも上流側の配管外周面に、上記第1のリング及び上記第2のリングを、上記第1のリングが上記第2のリングよりも上流側の配置となるようにして、固定する工程と、
上記第2のリングを取り付ける位置よりも下流位置で、上記補修対象の配管を切断する工程と、
上記固定する工程、及び上記切断する工程の後に、上記継手用配管の内径面に上記第2のリングの外径面を接触させると共に、上記継手用配管の軸方向一端部側を上記第1のリングの側面に接触させて固定する継手用配管の取付け工程と、
を備え、
上記継手用配管の軸方向他端部側に、補修対象の配管の下流側を接続する、
流体漏れの補修方法。
【0030】
(2)上記補修対象の配管は、低圧流体用配管である。
(3)補修対象の配管における、上記第1のリングと取り付け位置よりも上流側に、強制的に流量を絞るための分岐配管を取り付けてから、上記切断する工程を行う。
(4)上記継手用配管の軸方向他端部側に、取付け用のボルト穴が開口した外向きフランジが設けられていて、
上記取付け工程の際には、上記外向きフランジに、上記継手用配管の軸方向他端部側の開口を閉塞する閉塞板が取り付けられている。
(5)上記継手用配管は、圧抜き弁が設けられている。
【0031】
(6)流体の漏出位置よりも補修対象の配管の上流側に、流体の流れを止める弁が無い補修対象の配管に対する、流体漏れの補修用器具であって、
内径が補修対象の配管の外径と等しい無端環状の第1のリングと、
内径が補修対象の配管の外径と等しく且つ外径が上記第1のリングの外径よりも小さい無端環状の第2のリングと、
内径が第2のリングの外径に等しく且つ外径が第1のリングの外径以下である継手用配管と、
を備える流体漏れの補修用器具。
(7)上記継手用配管は、軸方向他端部側に、取付け用のボルト穴が開口した外向きフランジが設けられ、
更に、上記外向きフランジにボルト止めされることで、上記継手用配管の軸方向他端部側の開口を閉塞可能な閉塞板を備える。
(8)上記継手用配管に、圧抜き弁が設けられている。
【符号の説明】
【0032】
1 第1のリング
2 第2のリング
3 継手用配管
3A 外向きフランジ
4 閉塞板
7 圧抜き弁
11 補修対象の配管
11A 漏れ部(漏れ位置)
12 不断水用の分岐配管
13 邪魔板
15 閉止弁
16 下流配管
S10 減圧工程
S20 リング取付け工程(固定する工程)
S30 配管切断工程(切断する工程)
S40 継手用配管の取付け工程
S50 バルブ取付け工程
S60 下流配管取付け工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11