(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024553
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20250213BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20250213BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/00 B
B60C11/03 300D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128743
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 紀彦
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC34
3D131DA33
3D131DA34
3D131EA02U
3D131EA10U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB31V
3D131EB35X
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3D131EB43X
3D131EB44V
3D131EB44X
3D131EC11V
3D131EC11X
(57)【要約】
【課題】積雪路面におけるトラクション性能を維持しながら、耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】横溝30は、タイヤ周方向に並んだショルダーブロック21aを連結するように溝底が隆起したタイバー50を有する。タイバー50は、第1ショルダー主溝11の溝底11aから溝深さD11の50%の深さ位置P1またはそれよりもタイヤ径方向外側に上面51を有する。ベルト5は、第1ベルトプライ5aと、第1ベルトプライ5aのタイヤ径方向外側に積層され且つ第1ベルトプライ5aよりも幅狭の第2ベルトプライとを含む。タイヤ子午断面で見て、第2ベルトプライ5bのタイヤ軸方向外側端5bEは、タイバー50の上面51のタイヤ軸方向外側端51Eoを通るタイヤ内面の法線NLを中心とした幅10mmの領域X内に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トレッド端と第2トレッド端との間でタイヤ周方向に延びる複数の主溝と、複数の前記主溝のうち最も前記第1トレッド端に近い第1ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に隣接して形成された第1ショルダー陸とを含むトレッドゴムと、
前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配置されたベルトと、を備え、
前記第1ショルダー陸は、タイヤ周方向と交差する方向に延びた横溝によって複数のショルダーブロックに区画されており、
前記横溝は、タイヤ周方向に並んだ前記ショルダーブロックを連結するように溝底が隆起したタイバーを有し、
前記タイバーは、前記第1ショルダー主溝の溝底から溝深さの50%の深さ位置またはそれよりもタイヤ径方向外側に上面を有し、
前記ベルトは、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ径方向外側に積層され且つ前記第1ベルトプライよりも幅狭の第2ベルトプライとを含み、
タイヤ子午断面で見て、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向外側端が、前記タイバーの前記上面のタイヤ軸方向外側端を通るタイヤ内面の法線を中心とした幅10mmの領域内に位置する空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記タイバーは、前記横溝の溝底から段階的に隆起している請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドゴムは、トレッド面を形成するキャップゴム層と、前記キャップゴム層のタイヤ径方向内側に配置されたベースゴム層とを備え、
前記ベースゴム層の厚みは前記タイバーのタイヤ径方向内側で最大となる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記タイバーの前記上面は、前記第1ショルダー主溝の溝底から溝深さの75%の深さ位置またはそれよりもタイヤ径方向内側に位置する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記タイバーは、前記ショルダーブロックに対してタイヤ軸方向外側に偏心している請求項1~4いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
オールシーズンタイヤなどでは、積雪路面におけるトラクション性能を確保できるよう、ブロック列を有するトレッドパターンが採用されている。ブロック列のうち、特にタイヤ軸方向外側に位置するショルダーブロックでは、踏み込み側に比べて蹴り出し側が相対的に摩耗する形態の偏摩耗(ヒールアンドトウ摩耗)が生じやすい傾向にある。耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上するためには、ブロックのピッチ長を大きくしてブロック剛性を高めることが有効であるが、そうするとピッチ数の減少により横溝の本数が減るため、積雪路面におけるトラクション性能の低下を引き起こす恐れがある。
【0003】
特許文献1には、ショルダーブロックを区画する横溝の溝底を局部的に隆起させたタイヤが記載されている。しかし、上述したような積雪路面におけるトラクション性能と耐ヒールアンドトウ摩耗性能との背反関係に起因した問題について、その解決手段を示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、積雪路面におけるトラクション性能を維持しながら、耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のタイヤは、第1トレッド端と第2トレッド端との間でタイヤ周方向に延びる複数の主溝と、複数の前記主溝のうち最も前記第1トレッド端に近い第1ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に隣接して形成された第1ショルダー陸とを含むトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配置されたベルトと、を備え、前記第1ショルダー陸は、タイヤ周方向と交差する方向に延びた横溝によって複数のショルダーブロックに区画されており、前記横溝は、タイヤ周方向に並んだ前記ショルダーブロックを連結するように溝底が隆起したタイバーを有し、前記タイバーは、前記第1ショルダー主溝の溝底から溝深さの50%の深さ位置またはそれよりもタイヤ径方向外側に上面を有し、前記ベルトは、第1ベルトプライと、前記第1ベルトプライのタイヤ径方向外側に積層され且つ前記第1ベルトプライよりも幅狭の第2ベルトプライとを含み、タイヤ子午断面で見て、前記第2ベルトプライのタイヤ軸方向外側端が、前記タイバーの前記上面のタイヤ軸方向外側端を通るタイヤ内面の法線を中心とした幅10mmの領域内に位置するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態のタイヤを概略的に示すタイヤ子午断面図
【
図4】ショルダーブロックを区画する横溝を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1に示す本実施形態の空気入りタイヤTは、一対のビード1と、そのビード1の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール2と、そのサイドウォール2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド3とを備えた自動車用ラジアルタイヤである。ビード1には、環状のビードコア1aが埋設されている。ビードコア1aは、鋼線などの収束体をゴムで被覆して形成されている。ビードコア1aのタイヤ径方向外側には、ビードフィラー1bが配置されている。ビードフィラー1bは、ビードコア1aからタイヤ径方向外側に延びた断面三角形状のゴムにより形成されている。
【0010】
ここで、タイヤ径方向は、タイヤTの直径に沿った方向であり、
図1の上下方向に相当する。
図1において上側がタイヤ径方向外側となり、下側がタイヤ径方向内側となる。タイヤ軸方向は、タイヤTの回転軸と平行な方向であり、
図1の左右方向に相当する。タイヤ赤道TCに近付く側がタイヤ軸方向内側となり、タイヤ赤道TCから離れる側がタイヤ軸方向外側となる。タイヤ赤道TCは、タイヤTのタイヤ軸方向中央に位置し、トレッド平面視においてタイヤ回転軸に直交する仮想線である。タイヤ周方向は、タイヤTの回転軸周りの方向である。
【0011】
タイヤTは、一対のビード1の間に跨ってトロイド状に延在したカーカス4を備える。カーカス4は、ビードコア1a及びビードフィラー1bを挟み込むようにしてタイヤ軸方向の内側から外側に巻き上げられている。カーカス4は、カーカスコードをゴム被覆して形成されたカーカスプライにより形成されている。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して交差する方向(例えば、タイヤ周方向に対して75~90度の角度となる方向)に引き揃えられている。カーカスコードの材料には、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミドなどの有機繊維が好ましく用いられる。
【0012】
タイヤTは、カーカス4のタイヤ径方向外側に積層されたベルト5を備える。ベルト5は、互いに積層された複数(本実施形態では2枚)のベルトプライ5a,5bにより形成されている。ベルトプライ5a,5bは、それぞれベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルトコードは、タイヤ周方向に対して傾斜する方向(例えば、タイヤ周方向に対して20~30度の角度となる方向)に引き揃えられている。ベルトコードの材料には、スチールなどの金属が好ましく用いられる。ベルトプライ5a,5bは、それらの間でベルトコードが互いに逆向きに交差するように積層されている。
【0013】
タイヤTは、ベルト5のタイヤ径方向外側に積層されたベルト補強材6を備える。ベルト補強材6は、ベルト補強コードをゴム被覆して形成されたベルト補強プライにより形成されている。ベルト補強コードは、タイヤ周方向に対して実質的に平行に引き揃えられている。ベルト補強プライは、例えば、ゴム被覆された1本又は複数本のベルト補強コードをタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回することにより形成される。ベルト補強コードの材料には、上述した有機繊維が好ましく用いられる。本実施形態では、ベルト補強材6がベルト5を全面的に覆っているが、ベルト5の両端のみを覆う構造でもよい。
【0014】
タイヤ内面には、タイヤTの内圧を保持するインナーライナーゴム7が設けられている。インナーライナーゴム7は、ブチルゴムなどの空気遮蔽性に優れるゴムにより形成されている。カーカス4のタイヤ軸方向外側には、サイドウォール2の外表面を形成するサイドウォールゴム8が設けられている。ベルト5及びベルト補強材6のタイヤ径方向外側には、トレッド3の外表面を形成するトレッドゴム9が設けられている。ベルト補強材6は省略してもよい。本実施形態では、トレッド3のタイヤ軸方向の両端を角張らせたスクウェアショルダーが採用されている。
【0015】
本実施形態において、タイヤTは、ライトトラック用タイヤであるが、これに限られるものではなく、例えば乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤ、その他のカテゴリーのタイヤであっても構わない。
【0016】
本実施形態において、タイヤTは、オールシーズンタイヤであるが、これに限られるものではなく、例えばスノータイヤであってもよい。したがって、タイヤTは、少なくとも一方のサイドウォール2の外表面に3PMSF(Three Peak Mountain Snow Flake)(スリーピークマウンテン・スノーフレーク)マークを有するものであってもよい。
【0017】
トレッドゴム9の外周面におけるトレッド面9fには、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じたトレッドパターンが形成されている。
図2に示すように、本実施形態のトレッドパターンは、第1トレッド端TE1と第2トレッド端TE2との間でタイヤ周方向(
図2の上下方向に相当)に延びる複数の主溝10と、それらによって区画された複数の陸20とを含む。第1トレッド端TE1及び第2トレッド端TE2は、正規リムに装着したタイヤTに正規内圧を充填して平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの接地面のタイヤ軸方向の最外位置である。
【0018】
正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA及びETRTOであれば“Measuring Rim”である。正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”である。タイヤが乗用車用の場合には、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0019】
正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、トラックバス用タイヤ、ライトトラック用タイヤの場合は、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載のLoad Indexに対応した値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、Extra LoadまたはReinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0020】
本実施形態では、3つの主溝10によって4つの陸20が区画されている。3つの主溝10は、最も第1トレッド端TE1に近い第1ショルダー主溝11と、最も第2トレッド端TE2に近い第2ショルダー主溝12と、それらの間に位置するセンター主溝13とを含む。4つの陸20は、第1ショルダー主溝11のタイヤ軸方向外側に隣接して形成された第1ショルダー陸21と、第2ショルダー主溝12のタイヤ軸方向外側に隣接して形成された第2ショルダー陸22と、一対のショルダー主溝11,12のタイヤ軸方向内側に隣接して形成された一対のセンター陸23,24とを含む。主溝10はタイヤ周方向に沿ってジグザグ状に延びているが、これに限られず、例えば直線状に延びていてもよい。
【0021】
トレッド面9fには、更に、タイヤ周方向と交差する方向に延びた横溝30と、切り込み状のサイプ40とが形成されている。横溝30は、例えば1.5mmを超える溝幅を有し、好ましくは1.8mm以上の溝幅を有する。横溝30は、例えば3.0mm以上の溝深さを有し、好ましくは4.0mm以上の溝深さを有する。横溝30の最大溝深さは、主溝10の溝深さと同等に設定されているが、これに限られない。サイプ40は、例えば1.5mm以下の幅を有する。サイプ40は、例えば2.0mm以上の深さを有し、好ましくは3.0mm以上の深さを有する。
【0022】
第1ショルダー陸21は、複数のショルダーブロック21aに区画されている。ショルダーブロック21aを区画する横溝30は、第1ショルダー主溝11からタイヤ軸方向外側に延びて第1トレッド端TE1に到達している。センター陸23は、複数のセンターブロック23aに区画されている。センターブロック23aを区画する横溝30は、第1ショルダー主溝11からタイヤ軸方向内側に延びてセンター主溝13に到達している。本実施形態のトレッドパターンは、タイヤ赤道TC上の任意の点に関して点対称となっており、第2ショルダー陸22及びセンター陸24も上記と同様に複数のブロックに区画されている。
【0023】
ショルダーブロック21aは、第1ショルダー主溝11に面する縦側面部61と、第1トレッド端TE1に面する(第1トレッド端TE1の一部を構成する)縦側面部62と、タイヤ周方向一方側(
図2の下側)の横溝30に面する横側面部63と、タイヤ周方向他方側(
図2の上側)の横溝30に面する横側面部64とを有する。縦側面部61は、タイヤ軸方向内側に凸となるように屈曲し、横側面部63,64に対して鈍角に交わっている。横側面部63,64は、互いに平行に且つタイヤ軸方向に対して傾斜して延びている。本実施形態において、ショルダーブロック21aはトレッド平面視で略五角形状に形成されている。
【0024】
既述のように、本実施形態のタイヤTは、第1トレッド端TE1と第2トレッド端TE2との間でタイヤ周方向に延びる複数の主溝10と、複数の主溝10のうち最も第1トレッド端TE1に近い第1ショルダー主溝11のタイヤ軸方向外側に隣接して形成された第1ショルダー陸21とを含むトレッドゴム9と、そのトレッドゴム9のタイヤ径方向内側に配置されたベルト5とを備える。また、第1ショルダー陸21は、タイヤ周方向と交差する方向に延びた横溝30によって複数のショルダーブロック21aに区画されている。
【0025】
図3は、ショルダーブロック21aを区画する横溝30を横断するタイヤ子午断面図である。
図4は、その横溝30を示す斜視図である。
図3,4に示すように、横溝30は、タイヤ周方向に並んだショルダーブロック21aを連結するように溝底が隆起したタイバー50(
図1,2では図示せず)を有する。タイバー50は、その隆起高さが最大となる箇所に上面51を有する。上面51は、トレッド面9fの輪郭線(プロファイルライン)と実質的に平行に延びており、上面51における横溝30の溝深さD30は一定である。上面51は、セレーションが設けられていない平滑面により形成されている。
【0026】
タイバー50は、第1ショルダー主溝11の溝底11aから溝深さD11の50%の深さ位置P1またはそれよりもタイヤ径方向外側に上面51を有する。したがって、上面51における溝深さD30は、溝深さD11の50%以下となる。このような隆起高さの大きいタイバー50を設けることにより、後述するベルト5の構造とも相俟って、ショルダーブロック21aの剛性を十分に高めることができる。本実施形態では、タイバー50の上面51が深さ位置P1にあり、上面51における溝深さD30が溝深さD11の50%である例を示す。
【0027】
既述のように、ベルト5は、ベルトプライ5a(第1ベルトプライに相当)と、そのベルトプライ5aのタイヤ径方向外側に積層されたベルトプライ5b(第2ベルトプライに相当)とを含む。ベルトプライ5bは、ベルトプライ5aよりも幅狭に形成されている。ベルトプライ5bは、ベルト5を構成する複数のベルトプライのうち、最もタイヤ径方向外側に位置するベルトプライである。ベルトプライ5bのタイヤ軸方向外側端5bE(以下、単に「外側端5bE」と呼ぶ)は、ベルトプライ5aのタイヤ軸方向外側端5aEよりもタイヤ軸方向内側に位置し、それらの離隔距離であるステップ長さSLは、好ましくは4mm以上である。ステップ長さSLは、例えば10mm以下に設定される。
【0028】
図3のように、このタイヤTでは、タイヤ子午断面(タイヤTの中心軸を含む平面で切断した断面)で見て、ベルトプライ5bの外側端5bEが、タイバー50の上面51のタイヤ軸方向外側端51Eo(以下、単に「外側端51Eo」と呼ぶ)を通るタイヤ内面の法線NLを中心とした幅10mmの領域X内に位置する。領域Xは、法線NLからその垂直方向に片側5mmの範囲で帯状に延びている。法線NLは、正規リムに装着したタイヤTに正規内圧を充填した無負荷状態にて定められ、本明細書で説明する各種寸法もこれと同様である。外側端5bE及び外側端51Eoは、いずれも第1トレッド端TE1よりもタイヤ軸方向内側に位置している。
【0029】
外側端5bEが領域X内に位置することにより、タイバー50のタイヤ径方向内側にベルトプライ5bとベルトプライ5aとが配置され、上記の如くタイバー50の隆起高さを大きくしたことと相俟って、ショルダーブロック21aの剛性を十分に高めることができる。かかる効果を奏するうえで、外側端5bEは法線NL上またはそれよりもタイヤ軸方向外側に位置することが好ましい。尚、外側端5bEが領域Xよりもタイヤ軸方向外側に位置する場合には、ベルト5がタイヤ軸方向外側に向かってタイヤ径方向内側へ大きく垂れ下がった形状となり、外側端5aE,5bEに歪みが集中しやすくなるため、高速耐久性能の悪化が懸念される。
【0030】
このタイヤTでは、上記の如くショルダーブロック21aの剛性が十分に高められることにより、ヒールアンドトウ摩耗を効果的に抑制できる。また、ブロック剛性を高めるためにピッチ長を大きくする必要がなく、したがって横溝の本数に影響を及ぼさないため、積雪路面におけるトラクション性能を維持できる。これにより、積雪路面におけるトラクション性能を維持しながら、耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上できる。また、本実施形態のタイヤTはライトトラック用タイヤであり、乗用車用タイヤに比べて低速且つ高負荷での走行条件が想定されるため、隆起高さの大きいタイバー50を設けたことにより耐ハイドロプレーニング性能が低下する心配は少ない。
【0031】
積雪路面におけるトラクション性能に寄与する要素として、ブロック縁でのエッジ効果や、横溝30での雪柱剪断効果などが考えられるが、このタイヤTではエッジ効果に主眼を置いている。それ故、このタイヤTでは、横溝30の容積を減少させるため雪柱剪断効果には不利と考えられる隆起高さの大きいタイバー50を敢えて採用している。後述する試験結果でも確認されている通り、このタイヤTによれば、隆起高さの大きいタイバー50を設けていても積雪路面におけるトラクション性能を維持できており、これはタイバー50やベルト5によってブロック剛性を高めたことがエッジ効果の向上に奏功するためと考えられる。
【0032】
タイバー50は、上面51と、上面51の外側端51Eoからタイヤ径方向内側に延びて横溝30の溝底に至る外側側面52と、上面51のタイヤ軸方向内側端51Ei(以下、単に「内側端51Ei」と呼ぶ)からタイヤ径方向内側に延びて横溝30の溝底に至る内側側面53とを有する。外側端51Eoは、角部にて上面51と外側側面52とが交わる位置であり、角部が面取り状に形成されている場合は、それらの仮想延長線が交わる位置である。同様に、内側端51Eiは、上面51と内側側面53とが交わる位置であり、角部が面取り状に形成されている場合は、それらの仮想延長線が交わる位置である。外側端51Eoと内側端51Eiとのタイヤ軸方向の離隔距離は、例えば7mm以上であり、好ましくは12mm以上である。
【0033】
タイバー50は、横溝30の溝底から段階的に隆起している。かかる構成によれば、横溝30の溝底から立ち上がる角度を緩やかにして歪みの集中を抑制できるため、グルーヴクラックの発生を防止するうえで都合がよい。本実施形態では、外側側面52及び内側側面53が段状に形成されており、それぞれ上面51と実質的に平行なミドル面52m,53mを有している。ミドル面52m,53mは、上面51よりもタイヤ径方向内側に位置し、且つ、横溝30の溝底(及び第1ショルダー主溝11の溝底11a)よりもタイヤ径方向外側に位置している。
【0034】
タイバー50は、ショルダーブロック21aを区画する複数の横溝30の各々に設定されていることが好ましい。かかる構成によれば、第1ショルダー陸21を構成する複数のショルダーブロック21aがタイバー50を介してタイヤ周方向に一連に連接されるため、より効果的にブロック剛性が高められる。既述の通り、本実施形態では第2ショルダー陸22が第1ショルダー陸21と点対称になっており、第1ショルダー陸21と同様に第2ショルダー陸22にもタイバーが設けられているが、これに限られない。このような隆起高さの大きいタイバーをセンター陸23,24に設けることも可能である。
【0035】
トレッドゴム9は、トレッド面9fを形成するキャップゴム層9aと、キャップゴム層9aのタイヤ径方向内側に配置されたベースゴム層9bとを備える。キャップゴム層9aとベースゴム層9bとの界面BFは、ベルト5の外周面に沿ってタイヤ軸方向に延在しつつ、ベルト5のタイヤ軸方向外側端の近傍からタイヤ軸方向外側に向かってタイヤ径方向内側に延び、トレッドゴム9の側面ではなく底面に到達している。界面BFは、トレッドゴム9の底面においてサイドウォールゴム8に接続されている。界面BFが横溝30の溝底に露出していないことは、グルーヴクラックの発生を防ぐうえで都合がよい。
【0036】
ベースゴム層9bは、低発熱性に優れたゴムにより形成されている。ベースゴム層9bは、キャップゴム層9aに比べて損失正接tanδが小さいゴムにより形成されている。本実施形態において、ベースゴム層9bの損失正接tanδは、キャップゴム層9aの損失正接tanδを100とした場合において54である。
【0037】
本実施形態では、ベースゴム層9bの厚みT9bがタイバー50のタイヤ径方向内側で最大となる。これにより、隆起高さの大きいタイバー50を設けてゴムボリュームを増やしたことに伴う発熱を適切に抑えることができる。厚みT9bは、タイバー50のミドル面52mまたはミドル面53mのタイヤ径方向内側で最大となるものでもよいが、タイバー50の上面51のタイヤ径方向内側で最大となることが好ましい。厚みT9bは、タイヤ内面の法線方向に沿って測定される値である。
【0038】
タイバー50の隆起高さが過度に大きいと、トレッド面9fが摩耗する過程で上面51が露出しやすくなり、比較的早い段階でブロック縁が減少してエッジ効果が低下する恐れがある。かかる観点から、タイバー50の上面51は、第1ショルダー主溝11の溝底11aから溝深さD11の75%の深さ位置P2またはそれよりもタイヤ径方向内側に位置することが好ましく、溝底11aから溝深さD11の65%の深さ位置(図示せず)またはそれよりもタイヤ径方向内側に位置することが更に好ましい。
【0039】
タイバー50は、ショルダーブロック21aに対してタイヤ軸方向外側に偏心していることが好ましい。即ち、タイヤ軸方向においてタイバー50の中央位置はショルダーブロック21a(の横側面部63,64)の中央位置よりもタイヤ軸方向外側に位置することが好ましい。本実施形態では、
図4のように、トレッド平面視において、トレッド面9f上の横側面部63のタイヤ軸方向内側端から上面51までの距離D1と、トレッド面9f上の横側面部63のタイヤ軸方向外側端(第1トレッド端TE1)から上面51までの距離D2とが、D1>D2の関係を満たしており、横側面部64においても同様である。第1トレッド端TE1近傍の溝容積を確保する観点から、距離D2は0mmを上回ることが好ましく、例えば8mm以上に設定される。
【0040】
タイヤTに横力が作用した際、ショルダーブロック21aのタイヤ軸方向外側部分での摩擦エネルギーが相対的に大きくなる(延いては偏摩耗量が大きくなる)傾向にある。そのため、上記の如くタイバー50がタイヤ軸方向外側に偏心して配設されていることにより、ショルダー陸21のタイヤ軸方向外側部分がタイヤ軸方向内側部分に比べて早期に摩耗する形態の偏摩耗に関する耐偏摩耗性能を良好に向上できる。タイバー50(の上面51)は、上述のようにタイヤ軸方向外側に偏心しながらも横側面部63,64のタイヤ軸方向中央に位置することが好ましく、それによってショルダーブロック21aの剛性を効果的に高めることができる。
【0041】
図5は、耐ヒールアンドトウ摩耗性能及び積雪路面におけるトラクション性能を評価した結果を示す表である。各性能評価は次のようにして行われた。
【0042】
(1)耐ヒールアンドトウ摩耗性能
ライトトラックにタイヤを装着し、テストコースで所定距離を走行した後、ショルダーブロックの蹴り出し側と踏み込み側との摩耗量の差(偏摩耗量)を測定した。数値が小さいほど、耐ヒールアンドトウ摩耗性能に優れていることを示す。
【0043】
(2)積雪路面におけるトラクション性能
ライトトラックにタイヤを装着し、UN/ECE Regulation No.117 Anenex 7に基づくスピントラクション試験を実施して、参考例1の結果を100とするスノーグリップ指数(Snow Grip Index)を求めた。数値が大きいほど、積雪路面におけるトラクション性能に優れていることを示す。
【0044】
図1~4で示した構造を有し、タイバー50の上面51を第1ショルダー主溝11の溝底11aから溝深さD11の50%の深さ位置P1としたタイヤを実施例とした。また、タイバー50の上面51を第1ショルダー主溝11の溝底11aから溝深さD11の14%の深さ位置としたこと以外は実施例と同じ構成を有するタイヤを参考例1とした。更に、ショルダーブロックをサイズアップしてピッチ長を大きくしたこと以外は参考例1と同じ構成を有するタイヤを参考例2とした。
【0045】
図5に示すように、実施例では参考例1と比べて偏摩耗量が半減しており、耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上できた。しかも、実施例のスノーグリップ指数は参考例1と遜色なく、積雪路面におけるトラクション性能を維持できていた。参考例2は、参考例1よりも耐ヒールアンドトウ摩耗性能に優れることが予想されるものの(但し、性能評価は未実施)、積雪路面におけるトラクション性能が低下することが確認された。
【0046】
本実施形態のタイヤTは、ショルダー陸及びベルトを上記の如く構成したこと以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造などは何れも採用できる。トレッドパターンは、複数のショルダーブロックに区画されたショルダー陸を含むものである限り、特に限定されず、例えば主溝10の本数は2つ、4つまたは5つ以上であってもよい。また、本実施形態では、トレッドパターンが点対称パターンである例を示したが、これに限られず、例えば線対称パターンや非対称パターンであっても構わない。
【0047】
[1]
上記の通り、本実施形態の空気入りタイヤTは、第1トレッド端TE1と第2トレッド端TE2との間でタイヤ周方向に延びる複数の主溝10と、複数の主溝10のうち最も第1トレッド端TE1に近い第1ショルダー主溝11のタイヤ軸方向外側に隣接して形成された第1ショルダー陸21とを含むトレッドゴム9と、トレッドゴム9のタイヤ径方向内側に配置されたベルト5と、を備える。第1ショルダー陸21は、タイヤ周方向と交差する方向に延びた横溝30によって複数のショルダーブロック21aに区画されている。横溝30は、タイヤ周方向に並んだショルダーブロック21aを連結するように溝底が隆起したタイバー50を有する。タイバー50は、第1ショルダー主溝11の溝底11aから溝深さD11の50%の深さ位置P1またはそれよりもタイヤ径方向外側に上面51を有する。ベルト5は、第1ベルトプライ5aと、第1ベルトプライ5aのタイヤ径方向外側に積層され且つ第1ベルトプライ5aよりも幅狭の第2ベルトプライ5bとを含む。タイヤ子午断面で見て、第2ベルトプライ5bのタイヤ軸方向外側端5bEが、タイバー50の上面51のタイヤ軸方向外側端51Eoを通るタイヤ内面の法線NLを中心とした幅10mmの領域X内に位置する。かかる構成によれば、積雪路面におけるトラクション性能を維持しながら、耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上できる。
【0048】
[2]
上記[1]の空気入りタイヤTにおいて、タイバー50は、横溝30の溝底から段階的に隆起していることが好ましい。これにより、横溝30の溝底から立ち上がる角度を緩やかにして歪みの集中を抑制できるため、グルーヴクラックの発生を防止するうえで都合がよい。
【0049】
[3]
上記[1]または[2]の空気入りタイヤTにおいて、トレッドゴム9は、トレッド面9fを形成するキャップゴム層9aと、キャップゴム層9aのタイヤ径方向内側に配置されたベースゴム層9bとを備え、ベースゴム層9bの厚みT9bはタイバー50のタイヤ径方向内側で最大となることが好ましい。これにより、隆起高さの大きいタイバー50を設けてゴムボリュームを増やしたことに伴う発熱を適切に抑えることができる。
【0050】
[4]
タイバー50の隆起高さが過度に大きい場合には、摩耗したトレッド面9fに上面51が露出しやすくなり、比較的早い段階でブロック縁が減少してエッジ効果が低下する恐れがある。かかる観点から、上記[1]~[3]いずれか1つの空気入りタイヤTにおいて、タイバー50の上面51は、第1ショルダー主溝11の溝底11aから溝深さD11の75%の深さ位置P2またはそれよりもタイヤ径方向内側に位置することが好ましい。
【0051】
[5]
上記[1]~[4]いずれか1つの空気入りタイヤTにおいて、タイバー50は、ショルダーブロック21aに対してタイヤ軸方向外側に偏心していることが好ましい。これにより、ショルダー陸21のタイヤ軸方向外側部分がタイヤ軸方向内側部分に比べて早期に摩耗する形態の偏摩耗に関する耐偏摩耗性能を良好に向上できる。
【0052】
本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、更に、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0053】
本開示のタイヤは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものではない。本開示のタイヤは、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。また、上述した実施形態で採用されている各構成を、任意に組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
5 ベルト
5a 第1ベルトプライ
5b 第2ベルトプライ
9 トレッドゴム
9a キャップゴム層
9b ベースゴム層
9f トレッド面
10 主溝
11 第1ショルダー主溝
21 第1ショルダー陸
21a ショルダーブロック
30 横溝
50 タイバー
51 上面
TE1 第1トレッド端
TE2 第2トレッド端