IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京フード株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-顆粒、食品及び顆粒の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024558
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】顆粒、食品及び顆粒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/00 20250101AFI20250213BHJP
【FI】
A23G1/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128749
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】391005569
【氏名又は名称】東京フード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】山川 朋香
(72)【発明者】
【氏名】鈴本 英之
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GE02
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG14
4B014GK03
4B014GL10
4B014GP02
4B014GP12
4B014GP19
4B014GP27
(57)【要約】
【課題】
本技術は、食品へのトッピング用途のココアパウダーに関連し、チョコの風味を向上させたココアパウダーの顆粒を提供することを主目的とする。
【解決手段】
本発明者らは鋭意研究した結果、少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスをカカオマスでコーティングすることで、ココアパウダーのチョコの風味の向上に有用であることを見出した。すなわち、本技術では、少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスからなるコア層と、前記コア層の少なくとも一部を覆い、カカオマスを含む表面層と、を有する顆粒を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスからなるコア層と、
前記コア層の少なくとも一部を覆い、カカオマスを含む表面層と、を有する顆粒。
【請求項2】
前記表面層が、さらに油脂を含む、請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記油脂が、ココアバター、テンパリングタイプハードバターから選ばれる1以上の油脂からなる、請求項2に記載の顆粒。
【請求項4】
前記ココアパウダーミクスが、さらに甘味料を含有する、請求項1に記載の顆粒。
【請求項5】
造粒を26℃未満で行った場合の顆粒の表面層のL値よりも、当該L値が2.0以上低い、請求項1に記載の顆粒。
【請求項6】
食品のトッピングに用いられる、請求項1から5に記載の顆粒。
【請求項7】
請求項1から5に記載の顆粒をトッピングした食品。
【請求項8】
少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスを攪拌室に投入する投入工程の後、
前記攪拌室内において、前記ココアパウダーミクスを送風、もしくは攪拌羽によって攪拌させ、当該ココアパウダーミクスにカカオマスを含む噴霧液を噴霧する造粒工程を有する、顆粒の製造方法。
【請求項9】
前記攪拌を、26~34℃の温度にて行う、請求項8に記載の顆粒の製造方法。
【請求項10】
前記造粒工程の後、0.5℃/分以上で20~25℃まで冷却する冷却工程を有する、請求項9に記載の顆粒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、顆粒、食品及び顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品市場において、ココアパウダーを原料として用いる、チョコやココア風味の食品が広く流通している。ここで、ココアパウダーは製造工程においてアルカリ処理を施すため、えぐみや苦み等の雑味が生じる場合がある。水への溶解性をよくするためや、吸湿防止などの目的としてココアパウダー粉末の表面を他の材料でコーティングする方法があるが、この方法によりココアパウダーの雑味が緩和される場合もあった。
【0003】
一方で、ココアパウダー粉末の表面を他の材料でコーティングすることで、チョコの風味が低減する場合があった。チョコやココア風味の食品においては、チョコの風味を向上させることは商品価値の上で重要である。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、ココア粉末に植物性硬化油を噴霧して製造した易溶性調整ココアの顆粒が開示されている。但し、上記顆粒は易溶性の顆粒であり、食品へのトッピングを目的とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57-5644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本技術は、食品へのトッピング用途のココアパウダーに関連し、チョコの風味を向上させたココアパウダーの顆粒を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究した結果、少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスをカカオマスでコーティングすることで、ココアパウダーのチョコの風味の向上に有用であることを見出した。
【0008】
すなわち、本技術では、少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスからなるコア層と、前記コア層の少なくとも一部を覆い、カカオマスを含む表面層と、を有する顆粒を提供する。
ここで、前記表面層が、さらに油脂を含んでいてもよい。前記油脂が、ココアバター、テンパリングタイプハードバターから選ばれる1以上の油脂であってもよい。また、前記ココアパウダーミクスが、さらに甘味料を含有していてもよい。
本技術の顆粒は、造粒を26℃未満で行った場合の顆粒のL値よりも、当該L値が2.0以上低い方が好ましい。
本技術の顆粒は、食品のトッピング用途に好適に用いられる。
本技術では、本技術の顆粒をトッピングした食品を提供する。
【0009】
次に、本技術では、少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスを攪拌室に投入する投入工程の後、前記攪拌室内において、前記ココアパウダーミクスを送風、もしくは攪拌羽によって攪拌させ、当該ココアパウダーミクスにカカオマスを含む噴霧液を噴霧する造粒工程を有する、顆粒の製造方法を提供する。
ここで、前記攪拌を、26~34℃の温度にて行ってもよい。また、前記造粒工程の後、0.5℃/分以上で20~25℃まで冷却する冷却工程を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術の顆粒を顕微鏡で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態は本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本技術は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができる。
【0012】
<顆粒>
本技術の顆粒は、少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスからなるコア層と、前記コア層の少なくとも一部を覆い、カカオマスを含む表面層とを有する。
【0013】
ここで、「顆粒」とは、まるくて小さいものをいうが、本技術においては球体の形状に限定されず、原料の粒同士が凝集して表面に凹凸がある粒状のものも含む。
【0014】
「ココアパウダーミクス」とは、少なくともココアパウダーを含む粉体である。すなわち、ココアパウダーミクスは、成分としてココアパウダーのみから形成されていてもよいが、ココアパウダー以外の成分を含有してもよい。ココアパウダーミクスがココアパウダー以外の成分を含有する場合、例えば、甘味料、粉乳、ホエイパウダー、香料、粉末油脂、乳化剤等の成分を含有してもよい。これらは単独の成分として含有させてもよいが、2以上の成分を組み合わせて含有させてもよい。
【0015】
本技術に用いるココアパウダーミクスが含有するココアパウダーは、カカオ豆をアルカリ処理等の加工をして製造される粉末である。ココアパウダーの製造方法は特に限定されず、本技術では、公知の方法により製造されたココアパウダーを好適に使用することができる。
【0016】
本技術に用いるココアパウダーミクスが含有する甘味料は、食品に甘味をつけるための素材であれば、特に制限されるものではなく、糖質系甘味料及び非糖質甘味料のいずれも好適に使用することができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上の甘味料を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
糖質系甘味料としては、例えば、砂糖、ブドウ糖、麦芽糖、果糖、異性化糖、イソマルトオリゴ糖、トレハロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、乳糖、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。
【0018】
非糖質系甘味料としては、例えば、ステビア、甘草(グリチルリチン)等の天然甘味料や、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース等の人工甘味料が挙げられる。
【0019】
本技術に用いるココアパウダーミクスが含有するココアパウダーの含有量の下限は、ココアパウダーミクス100質量%に対し、例えば、20質量%以上、好ましくは25質量%以上等で調整することができる。また、当該ココアパウダーの含有量の上限は100質量%であり、用途の特性に応じて、適宜、含有量を調整することができる。
【0020】
「コア層」とは、本技術の顆粒の核となる部分をいう。コア層はココアパウダーミクスを構成する1以上の粉から形成される。コア層は一つの粉から形成されていてもよいが、複数の粉が凝集して形成されていてもよい。
【0021】
また、ココアパウダーミクスがココアパウダー以外の成分を含有する場合は、ココアパウダーミクスを構成する成分を組み合わせた複数のコア層を有していてもよい。例えば、コア層はココアパウダー単独から形成されるコア層、ココアパウダー以外の成分から形成されるコア層、ココアパウダーとココアパウダー以外の成分とが凝集して形成されるコア層等が形成され得る。
【0022】
「表面層」は、前述のコア層の表面をコーティングする層である。表面層の少なくとも一部は、本技術の顆粒の表面に露出するが、本技術の顆粒同士の間に存在し、顆粒同士の接着層として存在してもよい。
【0023】
本技術の表面層はコア層の表面の全部又は少なくとも一部を覆う。本技術の顆粒において、表面層がコア層の一部を覆う場合、前記表面層に覆われていない部分において、前記コア層は露出する。
【0024】
本技術の顆粒において、表面層は少なくともカカオマスを含む。すなわち、表面層は、成分としてカカオマスのみから形成されていてもよいが、カカオマス以外の成分を含有してもよい。表面層がカカオマス以外の成分を含有する場合、例えば、油脂、香料、乳化剤等の成分を含有してもよい。これらは単独の成分として含有させてもよいが、2以上の成分を組み合わせて含有させることもできる。
【0025】
表面層が含有するカカオマスは、カカオ豆から乾燥、焙煎、磨砕して製造される原料である。カカオマスの製造方法は特に限定されず、本技術では、表面層の成分として、公知の方法により製造されたカカオマスを好適に使用することができる。
【0026】
表面層がカカオマスに加えて、さらに油脂を含有する場合、油脂としては、例えば、ココアバター(カカオバター、カカオ脂)、テンパリングタイプハードバターが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上の油脂を組み合わせて用いてもよい。表面層がさらに油脂を含有することで、表面層となる噴霧液の粘性を調整し得る。
【0027】
上記の「ココアバター」は、カカオ豆から抽出される脂肪をいう。また、「テンパリングタイプハードバター」とは、特定の融点と結晶構造を有し、チョコレートのテンパリングプロセスを必要とするタイプの油脂であり、チョコレート代替脂としても用いられる油脂である。テンパリングタイプハードバターは油脂に含まれるトリグリセリド中、POP、StOSt、POStの合計量が50%以上、より好ましく60%以上を占める油脂である。P:パルミチン酸、O:オレイン酸、St:ステアリン酸を指す。
POP:1位、3位にP、2位にOが結合しているトリグリセリド。
StOSt:1位、3位にSt、2位にOが結合しているトリグリセリド。
POSt:P、Stが1位、3位にそれぞれ1分子ずつ、2位にOが結合しているトリグリセリド。
【0028】
表面層は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述した成分以外の成分を含有していてもよいが、保存性の観点から、水分の含有量は少ないことが好ましい。
【0029】
本技術の顆粒は、ココアパウダーミクスからなるコア層の少なくとも一部を、カカオマスを含む表面層が覆うことで、ココアパウダーの雑味を緩和すると共に、チョコの風味を向上させることができる。
【0030】
さらに、本技術の顆粒はコア層を、カカオマスを含む表面層が覆うことで、当該顆粒を食品にトッピングした際に顆粒が吸湿する、いわゆる「泣き」を低減できる。これにより、本技術の顆粒を食品のトッピングに用いることで、食品に好適にチョコの風味を加えることができる。
【0031】
本技術の顆粒の表面層が含むカカオマスの含有量の下限は、表面層100質量%に対し、例えば、40質量%以上、好ましくは50質量%以上等で調整することができる。また、当該カカオマスの含有量の上限は100質量%であり、用途の特性に応じて、適宜、含有量を調整することができる。
【0032】
本技術の顆粒において、顆粒全体(100質量%)に対する表面層の割合の下限は、用途の特性に応じて、適宜、調整することができるが、例えば、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上等で調整できる。また、顆粒全体(100質量%)に対する表面層の割合の上限は、70質量%以下、60質量%以下、55質量%以下等で調整できる。
【0033】
<顆粒の製造方法>
本技術の顆粒は、少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスを攪拌室に投入する投入工程の後、前記攪拌室内において、前記ココアパウダーミクスを送風若しくは攪拌羽によって攪拌させ、当該ココアパウダーミクスにカカオマスを含む噴霧液を噴霧する造粒工程により、好適に製造することができる。
【0034】
ここで、「攪拌」とは、かき回すことをいい、本技術の顆粒の製造方法においては、ココアパウダーミクスの粉体に対し、送風することにより、若しくは攪拌羽の回転により、又はこれらの組み合わせにより当該粉体を攪拌させる。なお、送風により粉体を攪拌させた場合、当該ココアパウダーミクスの粉体同士を離間させるとともに、当該粉体を転動させ、当該粉体の表面に後述する噴霧液を噴霧し易くなる。
【0035】
この際の送風の手段は、特に制限されず、公知の送風手段を好適に用いることができる。また、送風の強さは、ココアパウダーミクスの粉体を舞い上がらせ、当該粉体同士を離間させることができる程度の強さであれば特に制限されない。
【0036】
攪拌羽による攪拌手段も、特に制限されず、公知の攪拌羽による攪拌手段を好適に用いることができる。また、攪拌羽の回転の強さも、ココアパウダーミクスの粉体を回転させ、当該粉体の表面全体に噴霧液を噴霧できる程度の強さであれば特に制限されない。なお、本技術で攪拌羽による攪拌手段を用いる場合においても、調温等を目的に送風を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
「攪拌室」は、上記の攪拌を行うための区画である。本技術に用いる攪拌室は、少なくとも、上記の送風のための送風口、排気口、及び後述する噴霧液の噴霧口を備える。当該攪拌室は、所望の機能を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述の構成以外のその他の構成を備えていてもよい。その他の構成としては、例えば、攪拌羽による攪拌を行う場合の攪拌羽等が挙げられる。
【0038】
本技術の顆粒の製造方法において、「噴霧」とは噴霧液を霧状にして噴出することをいう。噴霧の手段は特に制限されず、公知の噴霧手段を好適に用いることができる。本技術に用いる噴霧液は、少なくともカカオマス等、本技術の顆粒の表面層の成分を含む。本技術に用いる噴霧液は、本技術の顆粒の表面層の成分に加えて、前記噴霧のために噴霧液の粘度等を調整するために先述の油脂等の成分等を加えても良い。なお、噴霧液は、表面層の原料が含有する水分に加えて、さらに水分を加えないことが好ましい。
【0039】
本技術の顆粒の製造方法において用いる噴霧液が含むカカオマスの含有量は、前述の本技術の顆粒の表面層が含むカカオマスの含有量の実質的に同じである。なお、本技術の顆粒の製造方法において用いる噴霧液が含むカカオマスの含有量は、本技術の顆粒の原料の特性や用途に応じて、適宜、含有量を調整することができる。
【0040】
本技術の顆粒の製造方法において用いる噴霧液の量は、前述の顆粒全体(100質量%)に対する表面層の割合と実質的に同じである。なお、本技術の顆粒の製造方法において用いる噴霧液の量は、コア層の原料の特性や用途に応じて、適宜、調整することができる。
【0041】
本技術の顆粒の製造方法においては、送風により攪拌室内で舞い上がらせ、粉体同士を離間させるとともに、当該粉体を転動させた状態のココアパウダーミクスに噴霧液を噴霧することで、コア層となるココアパウダーミクスの粉体表面に効率的に噴霧液が噴霧されることで、表面層が形成される。これにより、本技術の顆粒が好適に造粒される。
【0042】
本技術の顆粒の製造方法において、前述の攪拌の温度は例えば、26℃以上、好ましくは27℃以上、さらに好ましくは28.5℃以上とすることで、ココアパウダーミクスの粉体表面に噴霧液が延び易くなり、コア層であるココアパウダーミクスの粉体表面全体に対し、表面層となる噴霧液が覆う割合が大きくなり得る。これにより、造粒された顆粒の表面層のL値が低くなり、チョコらしい黒い色調となり得る。攪拌時の温度は送風等によって徐々に上がるものであるため、ここでいう攪拌の温度は噴霧終了時の品温と定義する。これは送風温度などによって調整を行う事ができる。
【0043】
具体的には、本技術の顆粒の製造方法により、攪拌の温度は26℃以上で行った場合の顆粒の表面層のL値は、温度以外を同一条件として攪拌の温度を26℃未満で行った場合の顆粒の表面層のL値よりも2.0以上、好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上低くなり得る。
【0044】
L値は色の明るさ(明度)の指標であり、L値が低いほど黒に近い暗い色であることを示す。なお、本明細書においてL値は、JIS Z 8781の規格に準拠して測定した値をいう。
【0045】
また、前記攪拌の温度の上限は例えば、34℃以下、好ましくは33℃以下、さらに好ましくは32.5℃以下とすることで、後述する冷却工程等、造粒後の顆粒を冷ます過程で表面層を好適に固化させ、当該顆粒をパウダー状にし易くなる。
【0046】
本技術の顆粒の製造方法は、前記造粒工程の後、冷却工程を有することがさらに好ましい。当該冷却工程では、0.5℃/分以上、好ましくは0.6℃/分以上、さらに好ましくは0.7℃/分以上で降温させることで、噴霧液が固まって表面層となるまでの時間を短縮し、噴霧液の噴霧後、噴霧液が固まる前に顆粒同士がぶつかり噴霧液が剥離することを防止する。これにより、造粒後の顆粒の表面層のL値が低くなり、チョコらしい黒い色調となり得る。
【0047】
冷却工程における到達温度の上限は25℃以下、好ましくは24℃以下とすることで、造粒後の顆粒の表面層を好適に固化させ、当該顆粒をパウダー状にすることができる。
【0048】
また、冷却工程における到達温度の下限は造粒後の顆粒の表面層を好適に固化できる温度であれば、特に制限されず、例えば、20℃以上、21℃以上等、任意の条件を適宜、設定することができる。
【0049】
前記冷却工程は、攪拌室で行ってもよいが、造粒後の顆粒を攪拌室とは別の区画に移動させて行ってもよい。
【0050】
特に、本技術の顆粒の製造方法において、前述の攪拌の温度と上記冷却工程の降温条件とを組み合わせることで、造粒後の顆粒の表面層のL値がさらに低くなり、よりチョコらしい色調を実現し得る。
【0051】
本技術の顆粒の製造方法は、投入工程において、ココアパウダーミクスが、攪拌の温度よりも低い温度で攪拌室に投入されることで、ココアパウダーミクスの粉体に噴霧された噴霧液に含まれるカカオマスが前記粉体表面で冷却され、その後、当該カカオマスの温度が上がることで、V型結晶の結晶核が生じ、当該結晶核を核としてV型結晶が成長し、いわゆるテンパリングが実現する可能性が考えられる。これによりチョコらしい色調となり得る。
【0052】
なお、前記の攪拌の温度よりも低い温度としては、例えば、27℃未満、好ましくは26℃未満、さらに好ましくは25℃未満等の条件とすることで、前記ココアパウダーミクスに噴霧液を噴霧した後に、当該噴霧液中のカカオマスが、効果的にV型結晶の結晶核を形成し得る。
【0053】
本技術の顆粒の製造方法を実現する装置は、上記の工程を実現できるものであれば、特に制限されないが、公知の流動層造粒装置を用いることができる。
【0054】
<食品>
本技術の顆粒をトッピングし得る食品は、特に制限されるものではない。当該顆粒をトッピングすることで、例えば、アイス、ホイップクリーム、パン(食パン、テーブルロール、菓子パン、調理パン、フランスパン、ライブレッドなど)、イースト菓子(シュトーレン、パネトーネ、クグロフ、ブリオッシュ、ドーナツなど)、ペストリー(デニッシュ、クロワッサン、パイなど)、ケーキ(バターケーキ、スポンジ、ビスケット、クッキー、ドーナツ、ブッセ、ホットケーキ、ワッフルなど)等のベーカリー製品、和菓子(饅頭、乳菓、蒸しパン、かすてら饅頭、どら焼き、など)等の任意の食品にチョコの風味を加えることができる。
【実施例0055】
以下、具体的な実施例に基づいて、本技術について詳しく説明する。なお、本技術は、以下に示す実施例の内容に、何ら限定されるものではない。
【0056】
<原料>
カカオマス: 大東カカオ社製
ココアバター: カーギル社製
植物油脂A: テンパリングタイプハードバター(ココアバター同等脂)不二製油社製
ココアパウダー: Olam社製
砂糖(粉砂糖): 福谷社製
乳糖: FirstT District Association社製
【0057】
<顆粒の製造>
表1に示す原料を用いて、下記に示す製造条件で顆粒を製造した。なお、表面層を有さらない比較例1および3については、下記に示す顆粒の製造方法を行わず、表1に示す原料を混合したココアパウダーミクスの粉体を用いて、後述する評価を行った。
【0058】
使用機械:流動層造粒装置(フロイント産業社製/型番FL-LABO)
(1)噴霧液の原料を40~55℃の条件で融解混合し、噴霧液を調整する。
(2)原料を混合したココアパウダーミクスを使用機械の攪拌室に投入する。
投入時のココアパウダーミクスの温度(攪拌による昇温前の温度):24℃
作業場室温:24℃
(3)ココアパウダーミクスへ風を送ることで、当該ココアパウダーミクスの粉体を攪拌させながら、上記で調整された噴霧液を噴霧し、造粒し顆粒とする。
送風温度:34℃
噴霧終了時の品温(攪拌の温度):31℃
(4)造粒された顆粒を0.8℃/分の冷却速度で20℃程度まで冷却する。
(5)冷却後の顆粒を30メッシュの篩にかける。
【0059】
【表1】
【0060】
図1は、実施例5の顆粒を顕微鏡(ハイロックス社製/型番KH-1300LED)により観察した写真である。上記の製造方法におけるココアパウダーミクスの粉体への噴霧液の噴霧により、カカオマスを含む噴霧液により、コア層を構成するココアパウダーミクス表面の少なくとも一部を覆う表面層が形成されていることが確認できる。
【0061】
<顆粒の評価>
製造により得られた顆粒を、カカオ風味の強さ、えぐみ・雑味の少なさ、ホイップクリームトッピング時のカカオ風味の強さ、えぐみ・雑味の少なさについて、下記の評価基準を基に7名の熟練した研究員が採点した。なお、ホイップクリームトッピング時のカカオ風味の強さ、えぐみ・雑味の少なさについては、顆粒をホイップクリームにトッピングした状態でカカオ風味の強さの評価基準に従って採点を行った。表2は、研究員の採点結果の合計点を示し、表3では各研究員の採点結果を示す。
【0062】
◆ホイップクリームトッピング時のカカオ感
5. カカオの風味をとても強く感じる。
4. カカオの風味を強く感じる
3. カカオの風味が十分感じられる
2. カカオの風味は多少感じられるが、不十分
1. カカオの風味が感じられない(トッピングしていないホイップクリームと同程度)
【0063】
◆ホイップクリームトッピング時のえぐみ・雑味の少なさ
5. えぐみ、雑味をあまり感じない
4. えぐみ、雑味を少し感じるものの、あまり気にならない
3. カえぐみ、雑味をやや感じるものの、許容範囲
2. えぐみ、雑味を感じる
1. ココアパウダー単体をトッピングしたときと同程度のえぐみ、雑味を感じる。
【0064】
◆顆粒単体でのカカオ風味の強さ
5. ココアパウダー単体の場合と同程度にカカオの風味を強く感じる。
4. カカオの風味を十分強く感じる
3. カカオの風味がある程度感じられる
2. カカオの風味は多少あるものの不十分
1. カカオの風味があまり感じられない
【0065】
◆顆粒単体でのえぐみ・雑味の少なさ
5. えぐみ、雑味をあまり感じない
4. えぐみ、雑味を少し感じるものの、あまり気にならない
3. カえぐみ、雑味をやや感じるものの、許容範囲
2. えぐみ、雑味を感じる
1. ココアパウダー単体の場合と同程度のえぐみ、雑味を感じる。
【0066】
◆泣き耐性
製造により得られた顆粒をホイップクリームの上にトッピングし、冷蔵下で2日間保管した後の状態を下記基準により評価した。結果を表2に示す。
A. 顆粒が湿気ておらず、パウダー状の状態が維持されている。
B. 顆粒の端の方が部分的に湿気ているが、全体的には概ねパウダー状を保っており、許容範囲
C. 顆粒が全体的に湿気ている。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
本技術に係る実施例1~7の顆粒は、表面層が形成されない粉体又は表面層を植物油脂で形成する比較例の顆粒に対し、カカオ感を向上させることが確認できる。さらには、表面層を設けることで、ココアパウダーに由来するえぐみや雑味も低減でき、表面層がカカオマスを含むことでさらに低減でき得ることが確認できる。上記の傾向は、味のコントラストを感じやすいホイップクリームトッピング時の評価において、より顕著に確認された。
【0070】
<製造条件に伴う色調変化の評価>
実施例5に係る原料を用いて、前述の製造条件のうち、表4に示す攪拌の温度及び冷却速度のみを変更し、顆粒を製造した。
【0071】
製造により得られた顆粒の表面層のL値を、卓上色彩計(パパラボ社製/型番PPLB-400A)を用いて、JIS Z 8781の規格に準拠して測定した。さらに、実施例AをBLANKとし、BLANKとのL値の差を算出した。結果を表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
本技術の顆粒の製造方法において、攪拌の温度を26℃以上とし、さらに、造粒工程の後、所定の冷却速度で冷却する冷却工程を行うことで、本技術の顆粒は、表面層のL値が低くなり、より黒い色調を実現し得ることが確認できる。
【0074】
なお、本技術では、以下の構成を取ることができる。
(1)少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスからなるコア層と、
前記コア層の少なくとも一部を覆い、カカオマスを含む表面層と、を有する顆粒。
(2)前記表面層が、さらに油脂を含む、(1)に記載の顆粒。
(3)前記油脂が、ココアバター、テンパリングタイプハードバターから選ばれる1以上の油脂からなる、(2)に記載の顆粒。
(4)前記ココアパウダーミクスが、さらに甘味料を含有する、(1)から(3)のいずれかに記載の顆粒。
(5)造粒を26℃未満で行った場合の顆粒の表面層のL値よりも、当該L値が2.0以上低い、(1)から(4)のいずれかに記載の顆粒。
(6)飲食物のトッピングに用いられる、(1)から(5)のいずれかに記載の顆粒。
(7)(1)から(5)のいずれかに記載の顆粒をトッピングした食品。
(8)少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスを攪拌室に投入する投入工程の後、
前記攪拌室内において、前記ココアパウダーミクスを送風、もしくは攪拌羽によって攪拌させ、当該ココアパウダーミクスにカカオマスを含む噴霧液を噴霧する造粒工程を有する、顆粒の製造方法。
(9)前記攪拌を、26~34℃の温度にて行う、(8)に記載の顆粒の製造方法。
(10)前記造粒工程の後、0.5℃/分以上で20~25℃まで冷却する冷却工程を有する、(9)に記載の顆粒の製造方法。
(11)前記投入工程において、前記ココアパウダーミクスが、攪拌の温度よりも低い温度で前記攪拌室に投入される、(9)又は(10)に記載の顆粒の製造方法。
(12)前記攪拌の温度よりも低い温度で前記攪拌室に投入された前記ココアパウダーミクスが、前記攪拌の温度に上昇する前に、前記噴霧液を噴霧する、(11)に記載の顆粒の製造方法。
(13)前記攪拌の温度よりも低い温度が27℃未満である、(11)又は(12)に記載の顆粒の製造方法。
図1
【手続補正書】
【提出日】2025-01-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスからなるコア層と、
前記コア層の少なくとも一部を覆い、カカオマスを含む表面層と、を有し、
前記表面層が含むカカオマスの含有量は、前記表面層100質量%に対し、40質量%以上であり、
食品のトッピングに用いられる、顆粒。
【請求項2】
前記表面層が、さらに油脂を含む、請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記油脂が、ココアバター、テンパリングタイプハードバターから選ばれる1以上の油
脂からなる、請求項2に記載の顆粒。
【請求項4】
前記ココアパウダーミクスが、さらに甘味料を含有する、請求項1に記載の顆粒。
【請求項5】
造粒を26℃未満で行った場合の顆粒の表面層のL値よりも、当該L値が2.0以上低い、請求項1に記載の顆粒。
【請求項6】
請求項1から5に記載の顆粒をトッピングした食品。
【請求項7】
少なくともココアパウダーを含むココアパウダーミクスを攪拌室に投入する投入工程の
後、
前記攪拌室内において、前記ココアパウダーミクスを送風、もしくは攪拌羽によって攪
拌させ、当該ココアパウダーミクスにカカオマスを含む噴霧液を噴霧する造粒工程を有す
る、顆粒の製造方法。
【請求項8】
前記攪拌を、26~34℃の温度にて行う、請求項に記載の顆粒の製造方法。
【請求項9】
前記造粒工程の後、0.5℃/分以上で20~25℃まで冷却する冷却工程を有する、
請求項に記載の顆粒の製造方法。