(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024559
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】リリーフバルブ、ポンプ装置、及び電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20250213BHJP
F04C 2/10 20060101ALI20250213BHJP
F04B 53/10 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
F16K17/04 C
F04C2/10 341Z
F04B53/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128751
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小粥 駿
(72)【発明者】
【氏名】内村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 匡将
(72)【発明者】
【氏名】亀井 政幸
【テーマコード(参考)】
3H041
3H059
3H071
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB04
3H041CC15
3H059AA05
3H059BB22
3H059CD05
3H059EE01
3H059FF12
3H071AA03
3H071BB02
3H071CC31
3H071CC34
3H071DD17
(57)【要約】
【課題】軽量で製造工数の少ないリリーフバルブを提供する。
【解決手段】リリーフバルブは、リリーフ流路に往復動可能に収容された弁体と、リリーフ流路の弁体を挟んで吐出流路と反対側に収容されて、先端が弁体に当接するコイルバネと、リリーフ流路の吐出流路と反対側の端部を外部に開放して、弁体及びコイルバネをリリーフ流路に進入させる基端開口と、排出口及び基端開口の間において、リリーフ流路から径方向外側に拡がり且つ周方向に連続する環状空間と、環状空間の周方向の一部を外部に開放する挿入開口とが形成されたハウジングと、挿入開口を通じてリリーフ流路及び環状空間に跨って収容され、コイルバネの基端に当接することによって、コイルバネに弁体を吐出流路に向けて付勢させる基端プレートとを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプで圧縮された液体を吐出する吐出流路に接続されて直線状に延びるリリーフ流路、及び前記リリーフ流路の側面の一部を外部に開放して、前記吐出流路から前記リリーフ流路に流入した液体を外部に排出する排出口が形成されたハウジングと、
前記リリーフ流路に往復動可能に収容された弁体と、
前記リリーフ流路の前記弁体を挟んで前記吐出流路と反対側に収容されて、先端が前記弁体に当接するコイルバネとを備えるリリーフバルブにおいて、
前記ハウジングには、
前記リリーフ流路の前記吐出流路と反対側の端部を外部に開放して、前記弁体及び前記コイルバネを前記リリーフ流路に進入させる基端開口と、
前記排出口及び前記基端開口の間において、前記リリーフ流路から径方向外側に拡がり且つ周方向に連続する環状空間と、
前記環状空間の周方向の一部を外部に開放する挿入開口とが形成され、
前記挿入開口を通じて前記リリーフ流路及び前記環状空間に跨って収容され、前記コイルバネの基端に当接することによって、前記コイルバネに前記弁体を前記吐出流路に向けて付勢させる基端プレートをさらに備えることを特徴とするリリーフバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のリリーフバルブにおいて、
前記基端プレートには、前記基端開口を通じて前記リリーフ流路に挿入されて、前記コイルバネを前記吐出流路に向けて押圧する押圧治具が通過可能な切り欠きが形成されていることを特徴とするリリーフバルブ。
【請求項3】
請求項1に記載のリリーフバルブにおいて、
前記ハウジングには、前記リリーフ流路の側面の一部を外部に開放して、前記コイルバネの基端を前記環状空間より前記吐出流路側に押圧する押圧治具を前記リリーフ流路に進入させる押圧開口が形成されていることを特徴とするリリーフバルブ。
【請求項4】
請求項3に記載のリリーフバルブにおいて、
前記基端プレートは、前記リリーフ流路及び前記環状空間に跨って収容されたときに、前記リリーフ流路の前記環状空間より前記基端開口側に進入して、前記挿入開口を通じた前記基端プレートの脱落を阻止する係止突起を備えることを特徴とするリリーフバルブ。
【請求項5】
請求項1に記載のリリーフバルブと、
前記ハウジングに収容されて液体を吐出するポンプとを備えるポンプ装置において、
前記ハウジングには、
外部から吸入した液体を前記ポンプに供給する吸入流路と、
前記ポンプで圧縮された液体を外部に吐出する吐出流路とがさらに形成されていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のポンプ装置と、
前記ポンプを駆動する電動モータとを備える電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリーフバルブ、ポンプ装置、及び電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という)の推進に向けた取り組みが行われている。それに伴い、持続可能な生産消費形態の確保などのため、廃棄物の発生防止、廃棄物の削減、ならびに製品の再生利用および再利用によって廃棄物の発生を大幅に削減することなどを目指す技術が知られている。
【0003】
従来より、ポンプで圧縮された液体(例えば、オイル)の吐出圧を調整するリリーフバルブが知られている。リリーフバルブは、吐出流路に接続されるリリーフ流路が形成されたハウジングと、リリーフ流路に往復動可能に収容された弁体と、弁体を吐出流路に向けて付勢するコイルバネとを備える(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に記載のリリーフバルブは、弁体及びコイルバネをリリーフ流路に収容するために、リリーフ流路の基端が開口している。また、リリーフバルブのハウジングには、リリーフ流路に弁体及びコイルバネを収容した後に、リリーフ流路の基端開口を閉塞するリリーフプレートがネジ留めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のリリーフバルブは、基端開口を閉塞するためのリリーフプレート及びネジの分だけ重量が増加するという第1の課題がある。また、リリーフプレートをハウジングにネジ留めする分だけ製造工数(タクト数)が増加するという第2の課題がある。
【0007】
本発明の目的は、軽量で製造工数の少ないリリーフバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、ポンプで圧縮された液体を吐出する吐出流路に接続されて直線状に延びるリリーフ流路、及び前記リリーフ流路の側面の一部を外部に開放して、前記吐出流路から前記リリーフ流路に流入した液体を外部に排出する排出口が形成されたハウジングと、前記リリーフ流路に往復動可能に収容された弁体と、前記リリーフ流路の前記弁体を挟んで前記吐出流路と反対側に収容されて、先端が前記弁体に当接するコイルバネとを備えるリリーフバルブにおいて、前記ハウジングには、前記リリーフ流路の前記吐出流路と反対側の端部を外部に開放して、前記弁体及び前記コイルバネを前記リリーフ流路に進入させる基端開口と、前記排出口及び前記基端開口の間において、前記リリーフ流路から径方向外側に拡がり且つ周方向に連続する環状空間と、前記環状空間の周方向の一部を外部に開放する挿入開口とが形成され、前記挿入開口を通じて前記リリーフ流路及び前記環状空間に跨って収容され、前記コイルバネの基端に当接することによって、前記コイルバネに前記弁体を前記吐出流路に向けて付勢させる基端プレートをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽量で製造工数の少ないリリーフバルブを得ることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施形態に係るポンプ部をモータ部側から見た分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るポンプ部をモータ部と反対側から見た分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る押圧治具でコイルバネを押圧した状態のポンプ部を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る基端プレートを挿入した状態のポンプ部を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る押圧治具を抜去した後のポンプ部の断面図である。
【
図7】第2実施形態に係るポンプ部をモータ部側から見た分解斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係るポンプ部をモータ部と反対側から見た分解斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る押圧治具でコイルバネを押圧した状態のポンプ部を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る基端プレートを挿入した状態のポンプ部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動ポンプ1を説明する。
図1は、電動ポンプ1の外観斜視図である。
【0012】
電動ポンプ1は、電力の供給を受けて液体を圧縮して吐出する装置である。電動ポンプ1は、典型的には、自動車に搭載されたエンジンクラッチや変速機構クラッチにオイル(例えば、潤滑油)を供給するオイルポンプ装置である。但し、電動ポンプ1の用途は、これに限定されない。また、液体の具体例は、オイルに限定されない。
【0013】
図1に示すように、電動ポンプ1は、モータ部2と、制御部3と、ポンプ部4とを備える。また、モータ部2及び制御部3は、ポンプ部4とは独立して、所謂「機電一体型」のモータ装置5を構成する。また、ポンプ部4は、モータ部2及び制御部3とは独立して、ポンプ装置を構成する。
【0014】
モータ部2は、制御部3から供給される駆動電力によって回転する(駆動力を発生させる)電動モータ6(
図4~
図6参照)を備える。電動モータ6の具体例は特に限定されないが、例えば、インナロータ型のブラシレスモータを採用することができる。電動モータ6の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。制御部3は、外部装置(図示省略)から供給される電力を、駆動電力として電動モータ6に供給する。ポンプ部4は、モータ部2の駆動力が伝達されてオイルを圧送する。
【0015】
モータ部2、制御部3、及びポンプ部4は、後述する電動モータ6の回転軸7(
図4~
図6参照)の延設方向に隣接して配置されている。より詳細には、中央に配置されたモータ部2に対して、回転軸7の延設方向の一方側に隣接して制御部3が配置され、回転軸7の延設方向の他方側に隣接してポンプ部4が配置されている。
【0016】
電動ポンプ1は、モータ部2及び制御部3の構成部品を収容するモータハウジング8と、ポンプ部4の構成部品を収容するポンプハウジング10(ハウジング)とを備える。モータハウジング8及びポンプハウジング10は、例えば、アルミダイキャスト等の金属材料で構成されている。なお、電動ポンプ1は、モータ部2、制御部3、及びポンプ部4を纏めて収容する一体型のハウジングを備えていてもよい。
【0017】
[第1実施形態]
[ポンプ部4の構成]
図2~
図6を参照して、第1実施形態に係るポンプ部4を説明する。
図2は、第1実施形態に係るポンプ部4をモータ部2側から見た分解斜視図である。
図3は、第1実施形態に係るポンプ部4をモータ部2と反対側から見た分解斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る押圧治具33でコイルバネ13を押圧した状態のポンプ部4を示す図である。
図5は、第1実施形態に係る基端プレート14を挿入した状態のポンプ部4を示す図である。
図6は、第1実施形態に係る押圧治具33を抜去した後のポンプ部4を示す図である。
図2及び
図3に示すように、ポンプ部4は、ポンプハウジング10と、ポンプユニット11(ポンプ)と、弁体12と、コイルバネ13と、基端プレート14とを備える。
【0018】
ポンプハウジング10は、ポンプ部4の構成部品(11~14)を収容する。ポンプハウジング10は、ポンプユニット11を収容するポンプケース15と、弁体12、コイルバネ13、及び基端プレート14を収容するポンプカバー16とで構成される。ポンプケース15及びポンプカバー16は、ボルト17a、17b、17c及び位置決めピン(図示省略)によって接続(締結)される。
【0019】
ポンプケース15は、両端が開口した筒形状の外形を呈する。ポンプケース15の内部空間には、ポンプユニット11が収容される。また、ポンプケース15は、軸方向の一方側の端部がモータハウジング8に接続され、軸方向の他方側の端部がポンプカバー16に接続される。
【0020】
ポンプカバー16の内部には、吸入流路18と、吐出流路19と、リリーフ流路20とが形成されている。吸入流路18及び吐出流路19は、概ね回転軸7の軸方向にポンプカバー16を貫通するオイルの流路である。吸入流路18は、吸入口21を通じて吸入したオイルをポンプユニット11に供給する流路である。吐出流路19は、ポンプユニット11で圧縮されたオイルを吐出口22を通じて外部に吐出する流路である。吸入口21及び吐出口22は、ポンプカバー16のポンプケース15との接続面と反対側の面に形成されている。
【0021】
リリーフ流路20は、吐出流路19に接続されたオイルの流路である。換言すれば、リリーフ流路20は、吐出流路19から分岐した流路である。また、リリーフ流路20は、直線状に延びる流路である。さらに、リリーフ流路20は、円筒形状の空間である。そして、リリーフ流路20は、弁体12、コイルバネ13、及び基端プレート14を収容する。以下、リリーフ流路20の延設方向の両端のうち、吐出流路19に接続される側の端部を「先端」と表記し、先端と反対側の端部を「基端」と表記する。リリーフ流路20は、排出口23と、基端開口24と、環状部25と、環状空間26と、挿入開口27とを備える。
【0022】
排出口23は、リリーフ流路20の先端及び基端の間において、リリーフ流路20の側面に設けられた開口である。すなわち、排出口23は、リリーフ流路20の側面の一部を、ポンプカバー16の外部に開放する。そして、排出口23は、吐出流路19からリリーフ流路20に流入したオイルを、ポンプカバー16の外部に排出する。排出口23は、ポンプカバー16のすべての面に形成可能であるが、第1実施形態では、例えば、ポンプカバー16の吸入口21及び吐出口22と同じ面に形成されている。
【0023】
基端開口24は、リリーフ流路20の基端に設けられた開口である。すなわち、基端開口24は、リリーフ流路20の吐出流路19と反対側の端部をポンプカバー16の外部に開放する。また、基端開口24は、弁体12、コイルバネ13、及び後述する押圧治具33をリリーフ流路20に進入させるための開口である。
【0024】
環状部25は、リリーフ流路20の先端及び排出口23の間に設けられている。環状部25は、リリーフ流路20の内側面から径方向内側に突出し且つ周方向に連続する管状の部分を指す。環状部25は、リリーフ流路20に収容された弁体12が環状部25より吐出流路19側に移動するのを阻止する。一方、環状部25は、吐出流路19からリリーフ流路20に流入したオイルが通過するのを許容する。
【0025】
環状空間26は、リリーフ流路20の排出口23及び基端開口24の間に設けられた空間である。環状空間26は、基端プレート14を収容する空間である。さらに、環状空間26は、リリーフ流路20から径方向外側に拡がり且つ周方向に連続する環状の空間である。すなわち、環状空間26は、リリーフ流路20に連通している。また、環状空間26の直径(外径寸法)は、リリーフ流路20の直径より大きい。そのため、リリーフ流路20と環状空間26との間には、段差が形成される。
【0026】
挿入開口27は、環状空間26の周方向の一部を、ポンプカバー16の外部に開放する開口である。挿入開口27は、基端プレート14を環状空間26に挿入するための開口である。すなわち、基端プレート14は、環状空間26に対して、挿入開口27を通じてリリーフ流路20の延設方向に直交する方向に挿入される。挿入開口27は、ポンプカバー16のすべての面に形成可能であるが、第1実施形態では、例えば、ポンプカバー16の吸入口21、吐出口22、及び排出口23と同じ面に形成されている。
【0027】
ポンプユニット11は、モータ部2の駆動力が伝達されることによって、吸入流路18を通じて供給されたオイルを圧縮して、吐出流路19を通じて吐出する。ポンプユニット11は、例えば、アウタロータ28と、アウタロータ28内で回転するインナロータ29とで構成されるトロコイド式ポンプである。インナロータ29は、回転軸7に接続されている。そして、回転軸7の回転に伴ってインナロータ29が回転することによって、オイルが圧縮される。ポンプユニット11の構成は周知なので、詳細な説明は省略する。
【0028】
弁体12は、リリーフ流路20に収容されて、リリーフ流路20の先端及び基端の間を往復動する。より詳細には、弁体12は、基端開口24を通じてリリーフ流路20に収容されて、環状部25及び環状空間26の間を往復動する。弁体12は、弁本体30と、ガイドロッド31とで構成される。
【0029】
弁本体30は、リリーフ流路20の内径寸法と直径がほぼ同一の円筒形状の部分である。すなわち、弁本体30は、リリーフ流路20の内部空間を、弁本体30より先端側の空間と、弁本体30より基端側の空間とに液密に隔てる。すなわち、吐出流路19からリリーフ流路20に流入したオイルは、弁本体30よりリリーフ流路20の基端側には到達しない。ガイドロッド31は、弁本体30からリリーフ流路20の基端側に向けて突出する。ガイドロッド31は、コイルバネ13をガイドする。
【0030】
コイルバネ13は、リリーフ流路20の弁本体30より基端側の空間に収容されている。また、コイルバネ13は、基端開口24を通じてリリーフ流路20に収容される。さらに、コイルバネ13は、ガイドロッド31に外挿される。コイルバネ13の先端は、弁体12(より詳細には、弁本体30)に当接する。一方、コイルバネ13の基端は、基端プレート14に当接する。
【0031】
そして、弁本体30の軸方向の両端面のうち、リリーフ流路20の先端側を向く先端面は、吐出流路19を通過するオイルの圧力を受ける受圧面である。一方、弁本体30のリリーフ流路20の基端側を向く基端面は、コイルバネ13の先端が当接する当接面である。すなわち、弁本体30は、受圧面で受けるオイルの圧力と、当接面に当接するコイルバネ13の付勢力との大小関係に応じて、リリーフ流路20内を往復動する。
【0032】
基端プレート14は、挿入開口27を通じて環状空間26に挿入される。また、基端プレート14は、リリーフ流路20及び環状空間26に跨って配置される。そして、基端プレート14は、コイルバネ13の基端に当接する。さらに、基端プレート14は、リリーフ流路20と環状空間26との間の段差(より詳細には、リリーフ流路20の基端側の段差)に係止されて、環状空間26よりリリーフ流路20の基端側への移動が規制される。
【0033】
また、基端プレート14には、切り欠き32が形成されている。切り欠き32は、基端プレート14を厚み方向に貫通すると共に、基端プレート14の外縁の一部に達している。すなわち、基端プレート14の外縁の一部は、切り欠き32によって開放されている。このように、第1実施形態に係る基端プレート14は、所謂「馬蹄形」である。切り欠き32は、後述する押圧治具33を通過させるサイズで形成されている。より詳細には、切り欠き32は、押圧治具33を基端プレート14の厚み方向に通過させる。また、切り欠き32は、基端プレート14の開放された部分を通じて、押圧治具33を基端プレート14の厚み方向に直交する方向に通過させる。
【0034】
コイルバネ13は、弁体12(より詳細には、弁本体30)と基端プレート14との間に、圧縮された状態で配置される。そのため、コイルバネ13は、リリーフ流路20の先端(すなわち、吐出流路19)に向けて弁体12を付勢する。また、弁体12のリリーフ流路20の先端側への移動は、環状部25によって規制される。このとき、弁本体30の先端面は、排出口23よりリリーフ流路20の先端側に位置している。その結果、ポンプユニット11から吐出流路19に吐出されるオイルは、リリーフ流路20を通じて排出口23から排出されない。
【0035】
一方、吐出流路19内のオイルの圧力が高くなると、吐出流路19からリリーフ流路20に流入したオイルに押されて、弁体12がコイルバネ13の付勢力に抗してリリーフ流路20の基端側に移動する。そして、吐出流路19内のオイルの圧力が閾値以上になると、弁本体30の先端面が排出口23よりリリーフ流路20の基端側に移動して、排出口23を開放する。これにより、吐出流路19内のオイルの一部がリリーフ流路20を通じて排出口23から排出される。その結果、吐出流路19内のオイルの圧力が閾値未満の状態に保たれる。
【0036】
すなわち、リリーフ流路20、排出口23、基端開口24、環状空間26、挿入開口27が形成されたポンプカバー16(ハウジング)と、弁体12と、コイルバネ13と、基端プレート14とで、吐出流路19内のオイルの一部を排出(換言すれば、吐出流路19内のオイルの圧力を閾値未満に維持)するリリーフバルブ34が構成される。また、このリリーフバルブ34は、ポンプ部4の一部を構成することに限定されず、ポンプ部4とは独立して構成されてもよい。
【0037】
[リリーフバルブ34の組立方法]
次に、
図4~
図6を参照して、リリーフバルブ34の組立方法を説明する。なお、
図4(A)、
図5(A)、及び
図6(A)は、回転軸7及びリリーフ流路20の延設方向に平行なリリーフバルブ34の断面である。また、
図4(B)、
図5(B)、及び
図6(B)は、回転軸7に直交するリリーフバルブ34の断面である。さらに、
図4(C)及び
図5(C)は、
図4(A)及び
図5(A)を矢印Cから見た図である。
【0038】
まず、弁体12及びコイルバネ13を基端開口24を通じてリリーフ流路20に挿入する。より詳細には、弁本体30の先端面をリリーフ流路20の先端側に向けて、弁体12をリリーフ流路20に挿入する。次に、コイルバネ13をリリーフ流路20に挿入して、ガイドロッド31に外挿する。
【0039】
次に、
図4に示すように、基端開口24を通じてリリーフ流路20に押圧治具33を挿入する。
図4(C)に示すように、押圧治具33の先端は、概ね長方形状である。押圧治具33の先端は、コイルバネ13の基端に当接する。この状態で押圧治具33を押し込むと、弁本体30の先端面が環状部25に当接して弁体12の移動が規制され、弁本体30の基端面と押圧治具33の先端とで挟まれたコイルバネ13が圧縮される。その結果、コイルバネ13の基端は、環状空間26よりリリーフ流路20の先端側に移動する。
【0040】
次に、
図5に示すように、基端プレート14の切り欠き32によって開放された側をリリーフ流路20に向けて、基端プレート14を挿入開口27を通じてリリーフ流路20及び環状空間26に挿入する。このとき、既にリリーフ流路20に挿入された押圧治具33は、切り欠き32の開放された部分を通じて、基端プレート14の内部に進入する。また、基端プレート14は、リリーフ流路20及び環状空間26に跨って配置される。
【0041】
次に、
図6に示すように、基端開口24を通じてリリーフ流路20から押圧治具33を抜去する。これにより、押圧治具33は、基端プレート14を厚み方向に通過して、リリーフ流路20から抜去される。また、コイルバネ13は、押圧治具33が抜去されるのに伴って伸長し、基端が基端プレート14に当接する。そして、基端プレート14は、リリーフ流路20及び環状空間26の間の段差に係止されてコイルバネ13を支持する。また、基端プレート14は、伸長しようとするコイルバネ13の力によって、挿入開口27を通じた脱落が防止される。
【0042】
[第1実施形態の作用効果]
第1実施形態によれば、リリーフ流路20及び環状空間26に跨って配置された基端プレート14にコイルバネ13の基端を支持させることによって、基端開口24を閉塞するリリーフプレートをポンプカバー16にネジ留めする必要がなくなる。その結果、軽量で製造工数の少ないリリーフバルブ34を得ることができる。また、リリーフバルブ34を備えるポンプ部4(ポンプ装置)及びポンプ部4を備える電動ポンプ1の軽量化及び製造工数の低減にも寄与することができるので、カーボンニュートラルに貢献する。
【0043】
また、第1実施形態によれば、基端プレート14に切り欠き32を設けることによって、
図4~
図6に示すシンプルな手順でリリーフバルブ34を組み立てることができる。これにより、リリーフバルブ34の製造工数をさらに低減することができる。
【0044】
[第2実施形態]
[ポンプ部4Aの構成]
図7~
図10を参照して、第2実施形態に係るポンプ部4Aを説明する。
図7は、第2実施形態に係るポンプ部4Aをモータ部2側から見た分解斜視図である。
図8は、第2実施形態に係るポンプ部4Aをモータ部2と反対側から見た分解斜視図である。
図9は、第2実施形態に係る押圧治具37でコイルバネ13を押圧した状態のポンプ部4Aを示す図である。
図10は、第2実施形態に係る基端プレート14A、14Bを挿入した状態のポンプ部4Aを示す図である。なお、第1実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0045】
まず、第2実施形態に係る基端プレート14A、14Bは、切り欠き32が形成されていない点で第1実施形態と相違する。また、第2実施形態の変形例に係る基端プレート14Bは、係止突起35を備える点で第1実施形態と相違する。また、第2実施形態に係るポンプカバー16は、押圧開口36をさらに備える点で第1実施形態と相違する。さらに、第2実施形態に係る押圧治具37は、押圧開口36を通じてリリーフバルブ34に挿入可能な棒状の部材である点で第1実施形態と相違する。
【0046】
図7及び
図8に示すように、第2実施形態に係る基端プレート14Aは、切り欠き32を有しない矩形の平板である。また、
図10(B)に示すように、第2実施形態の変形例に係る基端プレート14Bは、係止突起35をさらに備える。係止突起35は、基端プレート14Bの表面から厚み方向に突出する。また、係止突起35は、リリーフ流路20の直径より僅かに小さい円板形状である。そして、係止突起35は、リリーフ流路20及び環状空間26に跨って基端プレート14Bが収容されたときに、リリーフ流路20の環状空間26より基端開口24側に進入して、挿入開口27を通じた基端プレート14Bの脱落を阻止する。
【0047】
押圧開口36は、押圧治具37をリリーフ流路20に進入させるための開口である。押圧開口36は、リリーフ流路20の側面の一部を、ポンプカバー16の外部に開放する。押圧開口36は、リリーフ流路20の基端から先端に向かってリリーフ流路20の延設方向に延びている。また、押圧開口36の基端は、基端開口24に連通している。さらに、押圧開口36の先端は、環状空間26及び挿入開口27よりリリーフ流路20の先端側にまで到達している。すなわち、押圧開口36は、挿入開口27を跨いでリリーフ流路20の延設方向に延びている。押圧開口36は、例えば、ポンプカバー16の吸入口21、吐出口22、排出口23、及び挿入開口27と同じ面に形成されている。
【0048】
そして、リリーフ流路20、排出口23、基端開口24、環状空間26、挿入開口27、及び押圧開口36が形成されたポンプカバー16(ハウジング)と、弁体12と、コイルバネ13と、基端プレート14A(または、基端プレート14B)とで、第2実施形態に係るリリーフバルブ34Aが構成される。
【0049】
[リリーフバルブ34Aの組立方法]
まず、弁体12及びコイルバネ13を基端開口24を通じてリリーフ流路20に挿入する。次に、押圧開口36の基端開口24側から押圧治具37をリリーフ流路20に挿入する。そして、押圧開口36に沿って押圧治具37をリリーフ流路20の先端側に移動させる。これにより、
図9(A)に示すように、環状部25によって移動が規制された弁体12と押圧治具37とでコイルバネ13が圧縮されて、コイルバネ13の基端が環状空間26よりリリーフ流路20の先端側に移動する。
【0050】
次に、
図9(B)に示すように、挿入開口27を通じて基端プレート14Aをリリーフ流路20及び環状空間26に挿入する。次に、リリーフ流路20の延設方向に直交する方向に、押圧開口36を通じてリリーフ流路20から押圧治具37を抜去する。これにより、
図10(A)に示すように、コイルバネ13が伸長して、コイルバネ13の基端が基端プレート14Aに当接する。そして、基端プレート14Aは、リリーフ流路20及び環状空間26の間の段差に係止されてコイルバネ13を支持する。
【0051】
また、第2実施形態では、基端プレート14Aに代えて、挿入開口27を通じて基端プレート14Bを用いることができる。より詳細には、係止突起35をリリーフバルブ34の基端側に向けて、挿入開口27を通じて基端プレート14Bをリリーフ流路20及び環状空間26に挿入する。この状態で押圧開口36を通じて押圧治具37を抜去すると、コイルバネ13によってリリーフ流路20の基端側に基端プレート14Bが押されて、
図10(B)に示すように、係止突起35がリリーフ流路20の環状空間26より基端開口24側に進入する。
【0052】
[第2実施形態の作用効果]
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第1実施形態のように、切り欠き32及び押圧治具33のサイズの制約がないので、リリーフバルブ34Aの製造工程をさらに簡素化することができる。
【0053】
また、第2実施形態によれば、基端プレート14Bを採用することによって、コイルバネ13の付勢力に加えて、係止突起35によって基端プレート14Bの脱落を有効に防止することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 :電動ポンプ
2 :モータ部
3 :制御部
4,4A :ポンプ部
5 :モータ装置
6 :電動モータ
7 :回転軸
8 :モータハウジング
10 :ポンプハウジング
11 :ポンプユニット
12 :弁体
13 :コイルバネ
14,14A,14B :基端プレート
15 :ポンプケース
16 :ポンプカバー
17a-17c :ボルト
18 :吸入流路
19 :吐出流路
20 :リリーフ流路
21 :吸入口
22 :吐出口
23 :排出口
24 :基端開口
25 :環状部
26 :環状空間
27 :挿入開口
28 :アウタロータ
29 :インナロータ
30 :弁本体
31 :ガイドロッド
32 :切り欠き
33,37 :押圧治具
34,34A :リリーフバルブ
35 :係止突起
36 :押圧開口