(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024565
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/30 20060101AFI20250213BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
H02K1/30 A
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128761
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹也
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 烈
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601EE19
5H601GA02
5H601GC18
(57)【要約】
【課題】本発明は、鉄心に電磁鋼板を利用しても3次元磁極構造の特性を活かすことができる電動機を提供する。
【解決手段】本発明における電動機1000は、3次元磁極構造を有し、その鉄心211aは、積層された複数の電磁鋼板2111で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板2111における積層面は、前記鉄心211aを通る互いに異なる3方向の第1ないし第3磁束方向のうちの少なくとも2つの磁束方向に対して傾斜している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子コイルを備える電機子と、前記電機子と対向して配置される鉄心、および、前記電機子との対向面を可動子磁極として開放するように前記鉄心を囲繞する複数の永久磁石を備える磁極ブロックを複数備える可動子とを備え、
前記磁極ブロックにおける前記複数の永久磁石は、前記鉄心に同一の磁極を向けて配置され、
前記複数の磁極ブロックのそれぞれは、それぞれが備える永久磁石同士が隣り合うように並べて配置され、互いに隣接する磁極ブロックは、永久磁石の一面を互いに接して接続され、
前記鉄心は、積層された複数の電磁鋼板で構成され、
前記積層された複数の電磁鋼板における積層面は、前記鉄心を通る互いに異なる3方向の第1ないし第3磁束方向のうちの少なくとも2つの磁束方向に対して傾斜している、
電動機。
【請求項2】
前記積層された複数の電磁鋼板における積層面は、前記第1ないし第3磁束方向に対して傾斜している、
請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記積層された複数の電磁鋼板は、前記傾斜の方向が異なる複数の部分を備える、
請求項1に記載の電動機。
【請求項4】
前記複数の部分は、周方向に並置されている、
請求項3に記載の電動機。
【請求項5】
電機子コイルを備える電機子と、前記電機子と対向して配置される鉄心、および、前記電機子との対向面を可動子磁極として開放するように前記鉄心を囲繞する複数の永久磁石を備える磁極ブロックを複数備える可動子とを備え、
前記磁極ブロックにおける前記複数の永久磁石は、前記鉄心に同一の磁極を向けて配置され、
前記複数の磁極ブロックのそれぞれは、それぞれが備える永久磁石同士が隣り合うように並べて配置され、互いに隣接する磁極ブロックは、永久磁石の一面を互いに接して接続され、
前記鉄心は、積層された複数の電磁鋼板で構成され、積層方向の異なる部分を含む複数の部分で形成されている、
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元磁極構造を備えた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の出力を向上させるためには、電機子と可動子との間のギャップに生じる磁束数を増大させることが必要である。このために、例えば、特許文献1には、3次元磁極構造を備えた電動機が開示されている。この特許文献1に開示された電動機は、電機子コイルを有する電機子と、前記電機子と対向して配置される鉄心と、前記電機子との対向面を開放して前記鉄心を囲繞する複数の永久磁石とを具備する磁極ブロックを複数有する可動子とを備え、前記磁極ブロックにおいて、前記複数の永久磁石が前記鉄心に同一の磁極を向けて配置され、複数の前記磁極ブロックのそれぞれは、それぞれが具備する永久磁石同士が隣り合うように並べて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7044844号公報(特開2020-202746号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、3次元磁極構造を備えた電動機の鉄心(コア)には、R方向(径方向)、θ方向(周方向)およびZ方向(回転軸方向)の3方向から磁束が侵入するため、通常、バルクの純鉄や磁性鉄粉等が利用される。しかしながら、鉄心にバルクの純鉄を利用すると、いわゆる渦電流が大きく発生してしまう。また、鉄心に磁性鉄粉を利用すると、透磁率が低くなってしまい、また、強度が劣ってしまう。一方、これらを解消するために、電動機の鉄心に多用される電磁鋼板を一般的な電動機と同様にZ方向が法線となるように配置して利用すると、Z方向の磁束が活用し難くなり、3方向からの磁束を利用できるという3次元磁極構造の特性を活かせなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、鉄心に電磁鋼板を利用しても3次元磁極構造の特性を活かすことができる電動機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる電動機は、電機子コイルを備える電機子と、前記電機子と対向して配置される鉄心、および、前記電機子との対向面を可動子磁極として開放するように前記鉄心を囲繞する複数の永久磁石を備える磁極ブロックを複数備える可動子とを備え、前記磁極ブロックにおける前記複数の永久磁石は、前記鉄心に同一の磁極を向けて配置され、前記複数の磁極ブロックのそれぞれは、それぞれが備える永久磁石同士が隣り合うように並べて配置され、互いに隣接する磁極ブロックは、永久磁石の一面を互いに接して接続され、前記鉄心は、積層された複数の電磁鋼板で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板における積層面は、前記鉄心を通る互いに異なる3方向の第1ないし第3磁束方向のうちの少なくとも2つの磁束方向に対して傾斜している。
【0007】
このような電動機は、3次元磁極構造を備えた電動機であり、鉄心には、電磁鋼板が利用される。ここで、上記電動機は、複数の電磁鋼板における積層面が鉄心を通る互いに異なる3方向の第1ないし第3磁束方向のうちの少なくとも2つの磁束方向に対して傾斜しているので、Z方向の磁束が鉄心に入ることができ、鉄心に電磁鋼板を利用しても3次元磁極構造の特性を活かすことができる。
【0008】
他の一態様では、上述の電動機において、前記積層された複数の電磁鋼板における積層面は、前記第1ないし第3磁束方向に対して傾斜している。
【0009】
このような電動機は、前記積層面が3つの磁束方向に対して傾斜しているので、前記積層面が2つの磁束方向に対して傾斜している場合に較べ、傾きの方向を各方向に分散でき、電磁力の偏りを低減できる。
【0010】
他の一態様では、これら上述の電動機において、前記積層された複数の電磁鋼板は、前記傾斜の方向が異なる複数の部分を備える。好ましくは、上述の電動機において、前記複数の部分それぞれにおける電磁鋼板は、別体で構成されている。好ましくは、上述の電動機において、前記複数の部分それぞれにおける電磁鋼板は、一体で構成されている。
【0011】
このような電動機は、傾斜の方向が異なる複数の部分を備えるので、鉄心内で磁束分布のバランスを取り易く、印加される電磁力に偏りが出難い。
【0012】
他の一態様では、上述の電動機において、前記複数の部分は、周方向に並置されている。好ましくは、上述の電動機において、前記複数の部分は、前記積層された複数の電磁鋼板それぞれを屈曲することによって形成されている。
【0013】
これによれば、前記複数の部分が周方向に並置されている電動機が提供できる。
【0014】
本発明の他の一態様にかかる電動機は、電機子コイルを備える電機子と、前記電機子と対向して配置される鉄心、および、前記電機子との対向面を可動子磁極として開放するように前記鉄心を囲繞する複数の永久磁石を備える磁極ブロックを複数備える可動子とを備え、前記磁極ブロックにおける前記複数の永久磁石は、前記鉄心に同一の磁極を向けて配置され、前記複数の磁極ブロックのそれぞれは、それぞれが備える永久磁石同士が隣り合うように並べて配置され、互いに隣接する磁極ブロックは、永久磁石の一面を互いに接して接続され、前記鉄心は、積層された複数の電磁鋼板で構成され、積層方向の異なる部分を含む複数の部分で形成されている。好ましくは、上述の電動機において、前記複数の部分は、回転軸方向に並置されている。
【0015】
このような電動機は、鉄心が積層方向の異なる部分を含む複数の部分で形成されているので、各方向の磁束を通過させ易くでき、鉄心に電磁鋼板を利用しても3次元磁極構造の特性を活かすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる電動機は、鉄心(コア)に電磁鋼板を利用しても3次元磁極構造の特性を活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態における電動機の構成を示す斜視図である。
【
図2】前記電動機における可動子(ロータ)の構成を示す斜視図である。
【
図3】第1態様における鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
【
図4】第2態様における一方列の鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
【
図5】前記第2態様における前記一方列に回転軸方向で隣接する他方列の鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
【
図6】第3態様における鉄心の構成を説明するための図である。
【
図7】第4態様における鉄心の構成を説明するための図である。
【
図8】第5および第6態様における各鉄心の構成を説明するための図である。
【
図9】第7態様における鉄心の構成を説明するための図である。
【
図10】第8態様における鉄心の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0019】
実施形態における電動機(モータ)は、電機子コイルを備える電機子と、前記電機子と対向して配置される鉄心、および、前記電機子との対向面を可動子磁極として開放するように前記鉄心を囲繞する複数の永久磁石を備える磁極ブロックを複数備える可動子とを備える。前記磁極ブロックにおける前記複数の永久磁石は、前記鉄心に同一の磁極を向けて配置され、前記複数の磁極ブロックのそれぞれは、それぞれが備える永久磁石同士が隣り合うように並べて配置され、互いに隣接する磁極ブロックは、永久磁石の一面を互いに接して接続される。このように実施形態における電動機は、3次元磁極構造を備えている。そして、実施形態における電動機では、前記鉄心は、積層された複数の電磁鋼板で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板における積層面は、前記鉄心を通る互いに異なる3方向の第1ないし第3磁束方向のうちの少なくとも2つの磁束方向に対して傾斜している。以下、このような電動機について、より具体的に説明する。
【0020】
図1は、実施形態における電動機の構成を示す斜視図である。
図2は、前記電動機における可動子(ロータ)の構成を示す斜視図である。
図2Aは、全体図であり、
図2Bは、
図2Aで○で囲んだ部分の一部拡大図である。
【0021】
実施形態における電動機1000は、例えば、
図1および
図2に示すように、電機子1と、可動子2とを備え、本実施形態では、電機子1の内側に可動子2を回転可能に配置したラジアルギャップ型のインナーロータ型である。
【0022】
電機子1は、複数の電機子コイルを備え、前記複数の電機子コイルによって、可動子2を回転させるための磁界を発生させる部品である。より具体的には、電機子1は、本実施形態では固定子(ステータ)として機能し、例えば、
図1に示すように、円環状(円筒状)のヨーク部と、前記ヨーク部の内周面において周方向に等間隔で並び、前記内周面から径方向の内側(中心に向けて)に突出した、柱状の、複数のティース部と、前記複数の電機子コイルとしての、前記複数のティース部それぞれに巻き回された複数のコイルとを備える。前記ヨーク部および前記ティース部は、例えば軟鉄やソフトフェライト等の軟磁性体によって一体的にあるいは複数個の組み合わせで形成されている。
【0023】
可動子2は、磁気を帯びる複数の磁極ブロック21を備え、電機子1で生成された各磁界(回転磁界)と複数の磁極ブロック21で生成された各磁界との磁気的な相互作用によって可動する部品である。可動子2は、図略の円柱状の回転軸(出力軸)に固定的に取り付けられている。より具体的には、可動子2は、本実施形態では回転子(ロータ)として機能し、例えば、
図2に示すように、複数の磁極ブロック21と、バックヨーク22とを備える。
【0024】
複数の磁極ブロック21は、それぞれ、電機子1と対向して配置される鉄心(コア)211、および、電機子1との対向面を可動子磁極として開放するように鉄心211を囲繞する複数の永久磁石212~214を備えている。磁極ブロック21における複数の永久磁石212~214は、鉄心211に同一の磁極を向けて配置され、前記複数の磁極ブロック21のそれぞれは、それぞれが備える永久磁石212~214同士が隣り合うように並べて配置され、互いに隣接する磁極ブロック21は、永久磁石212~214の一面を互いに接して接続される。複数の永久磁石212~214は、それぞれ、直方体形状または立方体形状である。このような磁極ブロック21は、
図2Bに、相対的に太い矢印で示すように磁束が向き、電機子1と可動子2との間のギャップ(エアギャップ)に生じる磁束を増大させる構成であり、例えば、特許第6835692号公報(特開2019-75848号公報)や前記特許文献1等に開示されている。バックヨーク22は、円環状(円筒状)の部材であり、前記ヨーク部と同様に、軟磁性体によって形成されている。バックヨーク22の外周面には、周方向に順次に前記複数の磁極ブロック21が配設されている。
【0025】
より具体的には、前記周方向に順次に配設された複数の磁極ブロック21は、前記回転軸方向に複数列で配設され、鉄心211は、大略、6面体であり、複数の永久磁石212~214は、鉄心211の底面に配設される第1永久磁石(R磁石)212、前記鉄心211における回転方向に沿う側面に配設される第2永久磁石(θ磁石)213、および、各列間に配設される第3永久磁石(Z磁石)214を含む。当該磁極ブロック21において、鉄心211における前記回転方向に沿う一方の側面は、当該磁極ブロック21の第2永久磁石213によって囲まれ、前記鉄心211における前記回転方向に沿う他方の側面は、前記複数の磁極ブロック21がバックヨーク22における周方向に外周面に順次に配設されることで、当該磁極ブロック21の周方向に隣接して配設された他の磁極ブロック21の第2永久磁石213によって囲まれる。したがって、
図2に示す例では、1個の鉄心211は、底面、前記回転方向に沿う2個の側面および列間の側面の4面で第1ないし第3永久磁石212、213、214によって囲まれる。なお、
図2に示す例では、前記複数の磁極ブロック21は、2列でバックヨーク22の外周面に配設されているが、これに限定されるものではなく、任意の個数の複数列でバックヨーク22の外周面に配設されてよい。
【0026】
鉄心(コア)211における電機子1との対向面(永久磁石が当接していない開方面)は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、周方向に曲率を持ち、回転軸方向に曲率を持たない(曲率半径が無限大)曲面となっている。鉄心211は、上述のように、大略、6面体であるが、本実施形態では、複数の磁極ブロック21を留める円環状の、図略の留具が嵌まり込むように、鉄心211における前記回転軸方向の両端部それぞれに段部が形成されている。このような鉄心211は、本実施形態では、積層された複数の電磁鋼板で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板における積層面は、鉄心211を通る互いに異なる3方向の第1ないし第3磁束方向のうちの少なくとも2つの磁束方向に対して傾斜している。例えば、前記第1磁束方向は、R方向(径方向)であり、前記第2磁束方向は、θ方向(周方向)であり、前記第3磁束方向は、Z方向(回転軸方向)である。
【0027】
より具体的には、鉄心211は、本実施形態では、次の第1ないし第8態様のうちのいずれかで構成されている。
【0028】
図3は、第1態様における鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
図4は、第2態様における一方列の鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
図5は、前記第2態様における前記一方列に回転軸方向で隣接する他方列の鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
図6は、第3態様における鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
図6Aは、1個の鉄心を示し、
図6Bは、バックヨーク22に配置された様子で複数の鉄心を示す。
図7は、第4態様における鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
図7Aは、1個の鉄心を示し、
図7Bは、バックヨーク22に配置された様子で複数の鉄心を示す。
図8は、第5および第6態様における各鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
図8Aは、第5態様の鉄心を示し、
図8Bは、第6態様の鉄心を示し、
図8Aおよび
図8Bは、バックヨーク22に配置された様子で複数の鉄心を示す。
図9は、第7態様における鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
図10は、第8態様における鉄心(コア)の構成を説明するための図である。
図10Aは、バックヨーク22に配置された様子で複数の鉄心を示し、
図10Bは、1個の鉄心を示す。これら
図3ないし
図9および
図10Bは、
図2Bに、相対的に細い矢印で示すように、径方向外側から径方向に沿って径方向内側へ見た場合で鉄心211a~211iが図示されている。これら
図3ないし
図10には、説明の都合上、各図に示すように、可動子2の外周の接線方向に沿う線分をx軸とし、R方向に沿う線分をy軸とし、Z方向に沿う線分をz軸としたxyz直交座標系が設定される。これら
図3ないし
図10では、説明の都合上、
図2に示す上述の段部は、省略されている。
【0029】
第1態様の鉄心(コア)211aは、例えば、
図3に示すように、積層された複数の電磁鋼板2111で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板2111における積層面は、θ方向およびZ方向の2つの磁束方向に対して傾斜している。より具体的には、前記複数の電磁鋼板2111は、それぞれ、板状であり、前記積層面がR方向(y軸方向)に沿って配置されるとともに、R方向に沿う線分(y軸)を回転軸に、前記積層面の法線がZ方向から、Zθ面(zx面)内で所定の傾斜角(第1傾斜角)だけ傾斜するように配置されている。
図3に示す例では、前記第1傾斜角は、Z方向からZθ面(zx面)内で反時計回りに45[度]であり、このため、前記積層面がx軸に対し45[度]傾斜し、かつ、z軸に対し45[度]傾斜している。前記xyz直交座標系において、前記積層面の法線方向を表す単位ベクトルは、(1、0、1)である。なお、前記第1傾斜角は、1:1の45[度]に限らず、Z方向からZθ面(zx面)内で反時計回りで、0[度]<前記第1傾斜角<90[度]であってよい。
【0030】
前記周方向に順次に配設された複数の磁極ブロック21が前記回転軸方向(Z方向)に複数列で配設されている場合、各列の鉄心211aにおける複数の電磁鋼板2111は、同様に配設されてよいが、バランスよく力を働かせる観点から、前記複数列における互いに隣接する2列において、前記2列間のθR面(xy面)が対象面となるように配設されることが好ましい。
図3に示す例では、前記複数列における互いに隣接する2列における一方列の複数の電磁鋼板2111は、前記第1傾斜角がZ方向からZθ面(zx面)内で反時計回りに45[度]であるように配設され、前記複数列における互いに隣接する2列における他方列の複数の電磁鋼板2111は、前記第1傾斜角がZ方向からZθ面(zx面)内で時計回りに45[度]であるように配設される。
【0031】
第2態様の鉄心(コア)211b、211cは、例えば、
図4および
図5に示すように、積層された複数の電磁鋼板2112、2113で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板2112、2113における積層面は、Z方向およびR方向の2つの磁束方向に対して傾斜している。
【0032】
より具体的には、回転軸方向に配列された複数列における一方列の鉄心211bにおいて、
図4に示すように、前記複数の電磁鋼板2112は、それぞれ、板状であり、前記積層面がθ方向の接線方向(x軸方向)に沿って配置されるとともに、θ方向の接線方向に沿う線分(x軸)を回転軸に、前記積層面の法線がZ方向から、RZ面(yz面)内で所定の傾斜角(第2傾斜角)だけ傾斜するように配置されている。
図4に示す例では、前記第2傾斜角は、Z方向からRZ面(yz面)内で反時計回りに45[度]であり、このため、前記積層面がy軸に対し45[度]傾斜し、かつ、z軸に対し45[度]傾斜している。前記xyz直交座標系において、前記積層面の法線方向を表す単位ベクトルは、(0、1、-1)である。なお、前記第2傾斜角は、この角度に限らず、Z方向からRZ面(yz面)内で反時計回りで、0[度]<前記第2傾斜角<90[度]であってよい。前記一方列に回転軸方向で隣接する他方列の鉄心211cにおいて、
図5に示すように、前記複数の電磁鋼板2113は、それぞれ、板状であり、前記積層面がθ方向の接線方向(x軸方向)に沿って配置されるとともに、θ方向の接線方向に沿う線分(x軸)を回転軸に、前記積層面の法線がZ方向から、RZ面(yz面)内で時計回りに所定の傾斜角(第3傾斜角)だけ傾斜するように配置されている。
図5に示す例では、前記第3傾斜角は、Z方向からRZ面(yz面)内で時計回りに45[度]であり、このため、前記積層面がy軸に対し45[度]傾斜し、かつ、z軸に対し45[度]傾斜している。前記xyz直交座標系において、前記積層面の法線方向を表す単位ベクトルは、(0、1、1)である。なお、前記第3傾斜角は、この角度に限らず、RZ面(yz面)内で時計回りで、0[度]<前記第3傾斜角<90[度]であってよい。
【0033】
そして、第2態様では、
図4および
図5に示すように、前記複数列における互いに隣接する2列において、前記2列間のθR面(xy面)が対象面となるように配設され、z軸方向の磁束が前記ティース部をその突出方向に抜けるように配設される。
【0034】
このような第2態様では、バランスよく力が働くようになる。
【0035】
第3態様の鉄心(コア)211dは、例えば、
図6Aに示すように、積層された複数の電磁鋼板2114で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板2114における積層面は、θ方向およびZ方向の2つの磁束方向に対して傾斜している。そして、この第3態様の鉄心211dでは、前記積層された複数の電磁鋼板2114は、前記傾斜の方向が異なる複数の部分を備え、前記複数の部分は、周方向に並置されている。言い換えれば、第3態様の鉄心211dは、前記積層された複数の電磁鋼板2114で構成され、積層方向の異なる部分を含む複数の部分で形成され、前記複数の部分は、周方向に並置されている。
図6Aに示す例では、前記複数の電磁鋼板2114は、それぞれ、板状であり、前記積層面がR方向(y軸方向)に沿って配置されるとともに、R方向に沿う線分(y軸)を回転軸に、前記積層面の法線がZ方向から、Zθ面(zx面)内で反時計回りに所定の傾斜角(第4傾斜角)だけ傾斜するように配置されている部分(第1部分)と、前記積層面がR方向(y軸方向)に沿って配置されるとともに、R方向に沿う線分(y軸)を回転軸に、前記積層面の法線がZ方向から、Zθ面(zx面)内で時計回りに前記第4傾斜角だけ傾斜するように配置されている部分(第2部分)とを備えて構成されている。
図6Aに示す例では、前記第1部分の前記第4傾斜角は、Z方向からZθ面(zx面)内で反時計回りに45[度]であり、前記第2部分の前記第4傾斜角は、Z方向からZθ面(zx面)内で時計回りに45[度]であり、このため、電磁鋼板2114のZθ面(zx面)の断面形状は、略∧字形状である。前記第1部分の電磁鋼板と前記第2部分の電磁鋼板とは、別体で構成してもよいが、本実施形態では、一体で構成され、この一体で構成される電磁鋼板は、θ方向の中央位置において90[度]で屈曲している。なお、前記第4傾斜角は、0[度]<前記第4傾斜角<90[度]であってよい。そして、第4態様の鉄心(コア)211dでは、例えば、
図6Bに示すように、前記複数列における互いに隣接する2列において、前記2列間のRθ面(xy面)が対象面となるように配設される。
【0036】
第4態様の鉄心(コア)211eは、例えば、
図7Aに示すように、積層された複数の電磁鋼板2115で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板2115における積層面は、θ方向およびZ方向の2つの磁束方向に対して傾斜している。そして、この第4態様の鉄心211eでは、前記積層された複数の電磁鋼板2115は、前記傾斜の方向が異なる複数の部分を備え、前記複数の部分は、周方向に並置されている。言い換えれば、第4態様の鉄心211eは、前記積層された複数の電磁鋼板2115で構成され、積層方向の異なる部分を含む複数の部分で形成され、前記複数の部分は、周方向に並置されている。
図7Aに示す例では、前記複数の電磁鋼板2115は、それぞれ、板状であり、前記積層面がR方向(y軸方向)に沿って配置されるとともに、R方向に沿う線分(y軸)を回転軸に、前記積層面の法線がZ方向から、Zθ面(zx面)内で、時計回りに所定の傾斜角(第5傾斜角)だけ傾斜するように配置されている部分(第3部分)と、前記積層面がR方向(y軸方向)に沿って配置されるとともに、R方向に沿う線分(y軸)を回転軸に、前記積層面の法線がZ方向から、Zθ面(zx面)内で、反時計回りに前記第5傾斜角だけ傾斜するように配置されている部分(第4部分)とを備えて構成されている。
図7Aに示す例では、前記第3部分の前記第5傾斜角は、Z方向からZθ面(zx面)内で時計回りに45[度]であり、前記第4部分の前記第5傾斜角は、Z方向からZθ面(zx面)内で反時計回りに45[度]であり、このため、電磁鋼板2114のZθ面(zx面)の断面形状は、略V字形状である。前記第3部分の電磁鋼板と前記第4部分の電磁鋼板とは、別体で構成してもよいが、本実施形態では、一体で構成され、この一体で構成される電磁鋼板は、θ方向の中央位置において90[度]で屈曲している。なお、前記第5傾斜角は、0[度]<前記第5傾斜角<90[度]であってよい。そして、第4態様の鉄心(コア)211eでは、例えば、
図7Bに示すように、前記複数列における互いに隣接する2列において、前記2列間のθR面(xy面)が対象面となるように配設される。
【0037】
第5態様の鉄心(コア)211fは、例えば、
図8Aに示すように、
図6Aに示す上述の第3態様の鉄心211dと同様な鉄心211f(211f-12、211f-14;211f-22、211f-24)と、
図7Aに示す上述の第4態様の鉄心211eと同様な鉄心211f(211f-11、211f-13、211f-15;211f-21、211f-23、211f-25)とを周方向に交互に配置するように備え、前記複数列における互いに隣接する2列において、同様に配設されている。
【0038】
第6態様の鉄心(コア)211gは、例えば、
図8Bに示すように、
図6Aに示す上述の第3態様の鉄心211dと同様な鉄心211g(211g-11、211g-13、211g-15;211g-22、211g-24)と、
図7Aに示す上述の第4態様の鉄心211eと同様な鉄心211g(211g-12、211g-14;211g-21、211g-23、211g-25)とを周方向に交互に配置するように備え、前記複数列における互いに隣接する2列において、前記2列間のθR面(xy面)が対象面となるように配設される。
【0039】
なお、第3ないし第6態様では、前記複数の部分は、2つであったが、3つ以上であってよい。
【0040】
第3ないし第6態様の鉄心211d~211gのうちのいずれかを備えた電動機1000は、傾斜の方向が異なる複数の部分を備えるので、鉄心内で磁束分布のバランスを取り易く、印加される電磁力に偏りが出難い。
【0041】
第7態様の鉄心(コア)211hは、例えば、
図9に示すように、積層された複数の電磁鋼板2118で構成され、前記積層された複数の電磁鋼板2118における積層面は、R方向、θ方向およびZ方向の3つの磁束方向に対して傾斜している。より具体的には、前記複数の電磁鋼板2118は、それぞれ、板状であり、前記積層面の法線がZ方向から、R方向、θ方向およびZ方向のうちの2つの方向に沿う2つの各線分で形成される2つの各面内それぞれで所定の各傾斜角(第8Aおよび第8B傾斜角)だけ傾斜するように配置されている。
図9に示す例では、前記第8A傾斜角は、Z方向からZθ面(zx面)内で反時計回りに45[度]であり、前記第8B傾斜角は、Z方向からRZ面(yz面)内で時計回りに45[度]であり、このため、前記積層面がx軸方向に対し45[度]傾斜し、かつ、y軸方向に対し45[度]傾斜し、かつ、z軸方向に対し45[度]傾斜している。前記xyz直交座標系において、前記積層面の法線方向を表す単位ベクトルは、(1、1、1)である。なお、前記第8A傾斜角は、0[度]<前記第1傾斜角<90[度]であってよく、前記第8B傾斜角は、0[度]<前記第1傾斜角<90[度]であってよい。
【0042】
第7態様の鉄心211hを備えた電動機1000は、前記積層面が3つの磁束方向に対して傾斜しているので、前記積層面が2つの磁束方向に対して傾斜している場合に較べ、傾きの方向を各方向に分散でき、電磁力の偏りを低減できる。
【0043】
第8態様の鉄心(コア)211iは、例えば、
図10に示すように、積層された複数の電磁鋼板2119で構成され、積層方向の異なる部分を含む複数の部分で形成されている。
図10に示す例では、第9態様の鉄心211iは、第1方向(この例ではθ方向)に積層された部分(第5部分)と、前記第1方向と異なる第2方向(この例ではZ方向)に積層された部分(第6部分)とを備え、前記第5および第6部分は、Z方向に並置されている。すなわち、前記第5部分は、積層された板状の複数の電磁鋼板2119-1で構成され、第1方向(θ方向)を積層方向とする鉄心211iの一部分であり、前記第6部分は、積層された板状の複数の電磁鋼板2119-2で構成され、第2方向(Z方向)を積層方向とする鉄心211iの残余の部分である。前記xyz直交座標系において、前記第5部分における積層面の法線方向を表す単位ベクトルは、(1、0、0)であり、前記第6部分における積層面の法線方向を表す単位ベクトルは、(0、0、1)である。
【0044】
前記第5部分と前記第6部分との割合は、鉄心211iに接する磁石表面積の割合にほぼ比例する。
図1、
図2および
図10に示す例では、R磁石の表面積が相対的に大きく、Z磁石の表面積が相対的に小さいため、前記第5部分が前記第6部分に較べて小さくなっている。
【0045】
前記周方向に順次に配設された複数の磁極ブロック21が前記回転軸方向(Z方向)に複数列で配設されている場合、各列の鉄心211iにおける複数の電磁鋼板2119は、同様に配設されてよいが、バランスよく力を働かせる観点から、前記複数列における互いに隣接する2列において、前記2列間のRθ面(xy面)が対象面となるように配設されることが好ましい。
【0046】
第8態様の鉄心211iを備えた電動機1000は、鉄心が積層方向の異なる部分を含む複数の部分で形成されているので、各方向の磁束を通過させ易くできる。
【0047】
第1、第2および第7態様の鉄心211a、(211b、211c)、211hは、単に電磁鋼板を積層することによって形成できるので、第3ないし第6態様の鉄心211d~211gに較べ容易に形成できる。
【0048】
以上説明したように、実施形態における電動機1000は、複数の電磁鋼板における積層面が鉄心を通る互いに異なる3方向の第1ないし第3磁束方向のうちの少なくとも2つの磁束方向に対して傾斜しているので、Z方向の磁束が鉄心に入ることができ、鉄心に電磁鋼板を利用しても3次元磁極構造の特性を活かすことができる。
【0049】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0050】
1000 電動機
1 電機子
2 可動子
21 磁極ブロック
211、211a~211i 鉄心(コア)
212、213、214 永久磁石