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特開2025-24599治療状況を通知する超音波治療装置、当該装置の作動方法およびプログラム
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  • 特開-治療状況を通知する超音波治療装置、当該装置の作動方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024599
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】治療状況を通知する超音波治療装置、当該装置の作動方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20250213BHJP
   A61H 23/02 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
A61N7/00
A61H23/02 341
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128818
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】520275467
【氏名又は名称】サウンドウェーブイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰生
(72)【発明者】
【氏名】白土 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】下川 宏明
【テーマコード(参考)】
4C074
4C160
【Fターム(参考)】
4C074BB05
4C074CC01
4C074DD05
4C074GG20
4C160JJ23
(57)【要約】
【課題】患者の治療の進捗状況を手軽に把握することができる超音波治療装置を提供する。
【解決手段】超音波治療装置100は、電気信号を超音波に変換する振動子41,42を通じて患者の治療部位91に超音波を照射する超音波治療装置であって、超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間、一日あたりの総照射回数、および各照射間の照射中断時間を含む治療プロトコル情報23に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する治療状況通知手段14を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を超音波に変換する振動子を通じて患者の治療部位に超音波を照射する超音波治療装置であって、
前記超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間、一日あたりの総照射回数、および各照射間の照射中断時間を含む治療プロトコル情報に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する治療状況通知手段を備える、超音波治療装置。
【請求項2】
前記治療状況は、一日あたりの総治療時間および治療経過に関する時間と、一日あたりの総照射回数および照射実施回数と、照射一回あたりの照射時間および照射経過に関する時間と、からなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1に記載の超音波治療装置。
【請求項3】
表示画面をさらに備え、
前記治療状況通知手段は、前記表示画面に前記治療状況を表示する、請求項1に記載の超音波治療装置。
【請求項4】
前記治療状況通知手段は、一日あたりの治療経過に関する時間と、照射一回あたりの照射経過に関する時間と、照射中断一回あたりの中断経過に関する時間との少なくとも一つを、バーグラフで表示する、請求項3に記載の超音波治療装置。
【請求項5】
前記治療状況通知手段は、前記治療状況の進捗をタイムチャートで表示する、請求項3に記載の超音波治療装置。
【請求項6】
スピーカをさらに備え、
前記治療状況通知手段は、前記スピーカを通じて前記治療状況を音声で出力する、請求項1に記載の超音波治療装置。
【請求項7】
前記治療プロトコル情報に基づいて、操作者が次にすべき操作手順を通知する操作手順通知手段、をさらに備える、請求項1に記載の超音波治療装置。
【請求項8】
表示画面をさらに備え、
前記操作手順通知手段は、前記表示画面に前記操作手順を表示する、請求項7に記載の超音波治療装置。
【請求項9】
スピーカをさらに備え、
前記操作手順通知手段は、前記スピーカを通じて前記操作手順を音声で出力する、請求項7に記載の超音波治療装置。
【請求項10】
電気信号を超音波に変換する振動子を通じて患者の治療部位に超音波を照射する超音波治療装置の作動方法であって、
前記超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間、一日あたりの総照射回数、および各照射間の照射中断時間を含む治療プロトコル情報に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する治療状況通知ステップを含む、超音波治療装置の作動方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の超音波治療装置の各手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療状況を通知する超音波治療装置、当該装置の作動方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波治療装置は、例えば神経痛や骨折などといった種々の症状の治療や痛みの緩和、治癒力の促進に用いられている。近年では、低出力パルス波超音波(Low-Intensity Pulsed Ultrasound: LIPUS)を出力する治療装置が注目されており、様々な部位や症状、疾患に対する治療が試みられている。例えば下記特許文献1には、認知症の治療を対象とした超音波治療装置が開示されている。このような超音波治療装置は、患者の治療部位に超音波振動子が設置された後、例えば治療開始ボタンが押下されることにより超音波の照射を開始し、所定の時間が経過すると、超音波の照射を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/181991号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特定の疾患を治療する際には、予め定められた治療プロトコルに沿って、患者の治療部位に超音波を照射する。例えば認知症の治療を行う場合の治療プロトコルでは、例えば1回あたり20分の超音波照射を1日あたり3回行い、この1日あたりの照射を1週間に3回行うことを1クールとし、2から3カ月ごとに3クールもしくは6クールの照射を行う。治療対象の疾患が異なると、治療プロトコルも異なる。
【0005】
患者が治療施設に来院して1日分の治療を行うケースを考える。超音波の照射は1回あたり20分程度であり、例えば間に5分の休憩を2回挟んで合計で3回の超音波の照射を行うため、1日あたりの総治療時間は1時間を超える。これまでの超音波治療装置は、所定の時間経過後に超音波の照射を単に停止するのみであり、治療対象の疾患が異なると治療プロトコルも異なることから、多忙な医師が、個々の患者の治療の進捗状況を的確に把握して管理するのは困難である。超音波治療装置を用いて患者を治療する、治療施設の治療室等の治療現場において、個々の患者の治療の進捗状況を手軽に把握するための技術が求められている。
【0006】
本発明は、患者の治療の進捗状況を手軽に把握することができる超音波治療装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
(項1)
電気信号を超音波に変換する振動子を通じて患者の治療部位に超音波を照射する超音波治療装置であって、
前記超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間、一日あたりの総照射回数、および各照射間の照射中断時間を含む治療プロトコル情報に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する治療状況通知手段を備える、超音波治療装置。
(項2)
前記治療状況は、一日あたりの総治療時間および治療経過に関する時間と、一日あたりの総照射回数および照射実施回数と、照射一回あたりの照射時間および照射経過に関する時間と、からなる群から選択される少なくとも一つを含む、項1に記載の超音波治療装置。
(項3)
表示画面をさらに備え、
前記治療状況通知手段は、前記表示画面に前記治療状況を表示する、項1または2に記載の超音波治療装置。
(項4)
前記治療状況通知手段は、一日あたりの治療経過に関する時間と、照射一回あたりの照射経過に関する時間と、照射中断一回あたりの中断経過に関する時間との少なくとも一つを、バーグラフで表示する、項3に記載の超音波治療装置。
(項5)
前記治療状況通知手段は、前記治療状況の進捗をタイムチャートで表示する、項3に記載の超音波治療装置。
(項6)
スピーカをさらに備え、
前記治療状況通知手段は、前記スピーカを通じて前記治療状況を音声で出力する、項1または2に記載の超音波治療装置。
(項7)
前記治療プロトコル情報に基づいて、操作者が次にすべき操作手順を通知する操作手順通知手段、をさらに備える、項1から6のいずれか一項に記載の超音波治療装置。
(項8)
表示画面をさらに備え、
前記操作手順通知手段は、前記表示画面に前記操作手順を表示する、項7に記載の超音波治療装置。
(項9)
スピーカをさらに備え、
前記操作手順通知手段は、前記スピーカを通じて前記操作手順を音声で出力する、項7に記載の超音波治療装置。
(項10)
電気信号を超音波に変換する振動子を通じて患者の治療部位に超音波を照射する超音波治療装置の作動方法であって、
前記超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間、一日あたりの総照射回数、および各照射間の照射中断時間を含む治療プロトコル情報に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する治療状況通知ステップを含む、超音波治療装置の作動方法。
(項11)
項1から9のいずれかに記載の超音波治療装置の各手段として、コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、患者の治療の進捗状況を手軽に把握することができる超音波治療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る超音波治療装置の外観を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る超音波治療装置の機能を説明するためのブロック図である。
図3】装置が照射する超音波の波形及び送信条件の一例である。
図4】超音波照射を用いる治療プロトコルの一例である。
図5】一日あたりの治療を開始する前の、一実施形態に係る画面表示の一例である。
図6】治療を開始し超音波を照射している間の、一実施形態に係る画面表示の一例である。
図7】各照射間で照射を中断している間の、一実施形態に係る画面表示の一例である。
図8】照射中断時間が経過し一日あたりの治療を再開する前の、一実施形態に係る画面表示の一例である。
図9】一日あたりの治療を開始する前の、他の実施形態に係る画面表示の一例である。
図10】各照射間で照射を中断している間の、他の実施形態に係る画面表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
【0011】
[装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波治療装置の外観を概略的に示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る超音波治療装置の機能を説明するためのブロック図である。
【0012】
一実施形態に係る超音波治療装置100(以下、単に装置100とも記載する)は、電気信号を超音波に変換する超音波振動子(以下、単に振動子とも記載する)41,42を通じて患者の治療部位91に超音波を照射する超音波治療装置であって、超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間、一日あたりの総照射回数、および各照射間の照射中断時間を含む治療プロトコル情報23に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する治療状況通知部14を備える超音波治療装置である。
【0013】
装置100が出力する超音波は、本実施形態では低出力パルス波超音波(Low-Intensity Pulsed Ultrasound: LIPUS)である。装置100は、低出力パルス波超音波を患者の心臓や脳へ照射することにより、内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase: eNOS)や血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)の発現を亢進させ、狭心症、収縮機能が保たれた心不全(heart failure with preserved ejection function: HFpEF)、肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension: PAH)およびアルツハイマー型認知症への効果が認められている。eNOS、VEGFの発現亢進の効果を考えると、装置100は、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、脳梗塞、パーキンソン病、HFrEF、ASO、CKD、ED等、微小循環不全からくる他の疾患に対しても治療効果が期待される。
【0014】
一実施形態に係る装置100は、データ処理部10と、補助記憶装置20と、送信器31と、入力部32と、表示部33と、スピーカ34と、通信インタフェース部(通信I/F部)39とを備えている。データ処理部10はソフトウェアの構成であり、補助記憶装置20、送信器31、入力部32、表示部33、スピーカ34、および通信I/F部39はハードウェアの構成である。図示していないが、装置100は、ハードウェアの構成として、データ処理を行うCPU等のプロセッサと、プロセッサがデータ処理の作業領域に使用するメモリとをさらに備えている。
【0015】
データ処理部10は、後述する制御プログラム29(以下、単にプログラム29とも記載する)をプロセッサが実行することにより実現される機能ブロックである。本実施形態では、データ処理部10はソフトウェアによる機能ブロックとして提供される。本実施形態では、データ処理部10は、治療情報取得部11、送信条件設定部12、治療プロトコル管理部13、治療状況通知部14、操作手順通知部15、および入力情報表示部16を含む。入力情報表示部16は、他の実施形態では任意の構成とすることができる。
【0016】
治療情報取得部11は、入力部32を介して操作者から治療情報21を取得する。治療情報21は、例えば患者の治療部位に関する情報(例えば、脳)と、治療対象の疾患に関する情報(例えば、認知症)と、患者情報とを含む。患者情報は、例えば患者名211、生年月日212、患者ID213、および性別214を含む。
【0017】
送信条件設定部12は、治療情報21に基づいて送信条件情報22を設定する。送信条件情報22は、超音波の送信条件に関する情報であり、送信周波数、送信繰り返し時間(PRF=1/送信繰り返し時間)、送信一回あたりの波数、および信号振幅を含む。
【0018】
図3は、装置が照射する超音波の波形及び送信条件の一例である。治療の一例として超音波を例えば脳へ照射する場合には、周波数500kHz、波数32波、送波繰り返し時間1.28ms(複数の振動子を用いて両側から交互に送波)、音圧0.5-0.05MPaの範囲で、超音波が脳の病態部位に照射される。治療の別例として超音波を例えば心臓へ照射する場合には、例えば周波数を1.875MHzにすることができる。このように、異なる照射対象毎に異なる送信条件を設定することができる。
【0019】
治療プロトコル管理部13は、治療情報21に基づいて治療プロトコル情報23を設定し、治療状況の進捗を管理する。治療プロトコル情報23は、超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間231、一日あたりの総照射回数232、および各照射間の照射中断時間233を含む。治療プロトコル情報23は、治療対象の疾患毎に患者毎に設定される情報である。
【0020】
図4は、超音波照射を用いる治療プロトコルの一例である。脳を照射対象として認知症の治療を行う場合の図示する治療プロトコルでは、例えば1回あたり20分の超音波照射を、各回の間隔を5分空けて1日あたり3回行い、この1日あたりの照射を1週間に3回行うことを1クールとし、2から3か月ごとに3クールから9クールの照射を行う。図4において、上段においては3カ月の間隔で6クールが行われ、下段においては2カ月の間隔で9クールが行われることが例示されている。図示する治療プロトコルに沿った超音波照射により、認知症の改善が見られる。狭心症や虚血組織を含む心臓の治療を行う場合の治療プロトコルでも、図示する認知症の場合と同様に、一日あたりの照射時間および照射回数、1クールあたりの日数、並びに総クール数が規定される。心臓の治療を行う場合、脳を治療する場合との違いは、より少ない総クール数であっても病態の改善効果が認められる点であり、例えば3クールであっても病態の改善効果が見られることがある。
【0021】
再び図2および図5、6、7を参照する。治療状況通知部14は、治療プロトコル情報23に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する。本実施形態では、治療状況は、一日あたりの総治療時間241aおよび治療経過に関する時間241bと、一日あたりの総照射回数242aおよび照射実施回数242bと、照射一回あたりの照射時間243aおよび照射経過に関する時間243bと、照射中断一回あたりの照射中断時間244aおよび中断経過に関する時間244bとを含む。なお、治療時間とは治療に要する時間であり、照射時間と照射中断時間とを足し合わせた時間である。
【0022】
治療経過に関する時間241bは、カウントアップ形式の場合は治療の経過時間を意味し、カウントダウン形式の場合は治療の残り時間を意味する。同様に、照射経過に関する時間243bは、カウントアップ形式の場合は照射の経過時間を意味し、カウントダウン形式の場合は照射の残り時間を意味する。同様に、照射の中断の経過に関する時間244bは、カウントアップ形式の場合は中断の経過時間を意味し、カウントダウン形式の場合は中断の残り時間を意味する。本実施形態では、これら経過に関する時間241b,243b,244bを、表示部33に数値として表示する際はカウントダウン形式で表示し、後述するバーグラフ51a~51dで表示する際はカウントアップ形式で表示する。
【0023】
治療状況を通知する態様には種々の態様がある。治療状況通知部14は、表示部33に治療状況を表示することができる。本実施形態では、治療状況通知部14は、一日あたりの治療経過に関する時間241bと、照射一回あたりの照射経過に関する時間243bと、照射中断一回あたりの中断経過に関する時間244bとの少なくとも一つを、バーグラフ51a~51dで表示することができる。他の実施形態では、治療状況通知部14は、治療状況の進捗をタイムチャート53で表示することができる。治療状況通知部14は、スピーカ34を通じて治療状況を音声で出力することもできる。
【0024】
本実施形態では、治療状況通知部14は、リアルタイムの治療状況を通知するとともに、照射一回あたりの照射時間231、一日あたりの総照射回数232、および各照射間の照射中断時間233等の治療プロトコル情報23を表示部33に表示する。
【0025】
操作手順通知部15は、治療プロトコル情報23に基づいて、操作者が次にすべき操作手順を通知する。操作手順通知部15が通知する操作手順の情報は、例えばテキストデータや音声データとして操作手順情報25に予め記憶されている。本実施形態では、操作手順情報25はガイダンスメッセージ251~254を含む。操作手順を通知する態様には種々の態様がある。操作手順通知部15は、表示部33に操作手順を表示することができる。操作手順通知部15は、スピーカ34を通じて操作手順を音声で出力することもできる。
【0026】
入力情報表示部16は、装置100に入力される情報を表示する。本実施形態では、入力情報表示部16は、治療情報21に含まれている患者情報211~214を表示部33に表示する。
【0027】
補助記憶装置20は、オペレーティングシステム(OS)、各種制御プログラム、および、プログラムによって生成されたデータなどを記憶する不揮発性の記憶装置であり、例えば、フラッシュメモリやeMMC(embedded Multi Media Card)、SSD(Solid State Drive)等によって構成される。本実施形態では、補助記憶装置20には、治療情報21、送信条件情報22、治療プロトコル情報23、操作手順情報25、およびプログラム29が記憶される。
【0028】
プログラム29は、ソフトウェアによる機能ブロックである後述するデータ処理部10内の各部11~16を実現するためのコンピュータプログラムである。プログラム29は、通信I/F部39により接続されるインターネット等のネットワーク99を介して装置100にインストールしてもよい。あるいは、プログラム29を記録したメモリカード等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な有体の記録媒体を装置100に読み取らせることにより、プログラム29を装置100にインストールしてもよい。
【0029】
送信器31は、送信条件設定部12からの送信条件情報22と、治療プロトコル管理部13からの治療プロトコル情報23とに基づいて、送信信号を生成し、振動子41,42へ出力する。送信信号は、振動子41,42が超音波を照射するための電気信号であり、振動子41,42は、入力された送信信号を超音波に変換して、患者の治療部位91(例えば脳)に超音波を出力する。装置100を使用しないときは、図1に示すように、装置100に設けられた棒状の持ち手44の両端に振動子41,42を配置することができる。送信器31は、例えば高周波発振器等の電気回路で構成することができる。振動子41,42は、例えば圧電素子で構成することができる。
【0030】
入力部32は、操作者からの入力を受け付ける機器であり、表示部33は、操作者へ情報を表示する機器である。入力部32は例えば入力スイッチやポインティングデバイス、キーボード等で構成することができ、表示部33は例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成することができる。本実施形態では、入力部32および表示部33は一体化されたタッチパネルとして構成されている。スピーカ34は、操作者へ音を出力する機器であり、他の実施形態では任意の構成とすることができる。
【0031】
通信I/F部39は、無線または有線のネットワーク99を介して、図示しない外部機器(例えば、クラウドサーバ)とのデータの送受信を行う機器である。通信I/F部39がデータを送受信する形式は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、およびZigBee(登録商標)等の種々の無線接続またはEthernet(登録商標)等の有線接続とすることができる。通信I/F部39は、他の実施形態では任意の構成とすることができる。
【0032】
[装置の動作]
図5図8は、本発明の一実施形態に係る超音波治療装置の画面表示の一例である。
【0033】
一実施形態に係る超音波治療装置100の作動方法は、電気信号を超音波に変換する超音波振動子41,42を通じて患者の治療部位91に超音波を照射する超音波治療装置の作動方法であって、超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間、一日あたりの総照射回数、および各照射間の照射中断時間を含む治療プロトコル情報23に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する治療状況通知ステップを含む。装置100の作動方法は、治療プロトコル情報23に基づいて、操作者が次にすべき操作手順を通知する操作手順通知ステップをさらに含むことができる。以下では図5図8を参照して、装置100が治療状況と操作手順とを画面表示により通知する態様を、患者が治療施設に来院して1日分の治療を行うケースを一例として説明する。
【0034】
本実施形態では、図5図8に示されるように、装置100を用いて患者の治療部位に超音波を照射する間、表示部33には種々の情報が予め表示されている。入力情報表示部16は、患者名211、生年月日212、患者ID213、および性別214等の患者情報211~214を表示部33に表示する。治療状況通知部14は、照射一回あたりの照射時間231、一日あたりの総照射回数232、および各照射間の照射中断時間233等の治療プロトコル情報23を表示部33に表示する。なお治療ID261は、装置100において実施された治療の通し番号である。治療ID261は、装置100において治療が実施される度に付与される。
【0035】
治療状況通知部14は、治療プロトコル情報23に基づいて、リアルタイムの治療状況を図5図8に例示するように通知する。操作手順通知部15は、治療プロトコル情報23に基づいて、操作者が次にすべき操作手順を図5図8に例示するように通知する。
【0036】
図5は、一日あたりの治療を開始する前の画面表示の一例である。表示部33には、リアルタイムの治療状況として、一日あたりの総治療時間241aと、一日あたりの総照射回数242aおよび照射実施回数242bと、照射一回あたりの照射経過に関する時間243bとが表示されている。表示部33には、リアルタイムの治療状況としてさらに、一日あたりの治療経過に関する時間がバーグラフ51aで表示されている。
【0037】
図5の画面表示は、一日あたりの治療を開始する前の状態を示している。したがって、照射経過に関する時間243bは、照射一回あたりの照射時間231と同じ値に初期化された値が表示される。バーグラフ51a全体の長さは、一日あたりの総治療時間を示しており、治療経過に関する時間は、バーグラフ51a上でゼロの位置(バーグラフ51aの左端)を示している。
【0038】
表示部33には、操作者が次にすべき操作手順を示すガイダンスメッセージ(以下、単にガイダンスとも記載する)251が表示されている。ガイダンス251には、タッチパネルの画面上に表示されている治療開始ボタン52aを押下すると治療を開始する旨のメッセージが含まれている。タッチパネルとしての入力部32を介してボタン52aが押下されると、装置100は超音波を照射して治療を開始する。
【0039】
図6は、治療を開始し超音波を照射している間の画面表示の一例である。図示する例では、治療開始後7分が経過している。装置100が超音波を照射して治療を開始すると、表示部33には、リアルタイムの治療状況として、一日あたりの治療経過に関する時間241bと、照射経過に関する時間243bとが、リアルタイムにカウントダウン形式で表示される。表示部33には、リアルタイムの治療状況としてさらに、照射一回あたりの照射時間243aおよび照射経過に関する時間243bが、バーグラフ51bで表示されている。バーグラフ51b全体の長さは、照射一回あたりの照射時間243aを示しており、照射経過に関する時間243bは、バーグラフ51bの左端からカウントアップ形式で表示されている。
【0040】
表示部33には、操作者が次に可能な操作手順を示すガイダンス252が表示されている。ガイダンス252には、治療停止ボタン52bを押下すると治療を停止することができる旨のメッセージが含まれている。ボタン52bの押下は任意である。本実施形態では、装置100は、治療プロトコル情報23内に規定されている照射一回あたりの照射時間231を経過するか、またはボタン52bが押下されると、超音波の照射を中断する。
【0041】
図7は、各照射間で照射を中断している間の画面表示の一例である。図示する例では、治療開始後1回目の20分間の超音波照射を完了し、1回目の5分間の休憩のうち3分が経過している。装置100が、各照射間のタイミングで超音波の照射を中断している間、表示部33には、リアルタイムの治療状況として、一日あたりの治療経過に関する時間241bと、照射経過に関する時間243bとが、リアルタイムにカウントダウン形式で表示される。図7の画面表示は、超音波の照射を中断している状態を示している。したがって、照射経過に関する時間243bは値ゼロを表示している。表示部33には、リアルタイムの治療状況としてさらに、照射中断一回あたりの照射中断時間244aおよび中断経過に関する時間244bが、バーグラフ51cで表示されている。バーグラフ51c全体の長さは、照射中断一回あたりの照射中断時間244aを示しており、照射の中断経過に関する時間244bは、バーグラフ51cの左端からカウントアップ形式で表示されている。
【0042】
表示部33には、操作者が次にすべき操作手順を示すガイダンス253が表示されている。ガイダンス253には、現在は休憩時間中であり超音波の次の照射を開始する時間まで待機する旨のメッセージが含まれている。装置100が各照射間のタイミングで超音波の照射を中断している間、治療開始ボタン52cは、例えば明暗が反転表示されて押下することができず、操作者による操作を受け付けない。本実施形態では、装置100は、治療プロトコル情報23内に規定されている各照射間の照射中断時間233を経過すると、治療開始ボタン52cの反転表示を解除し、操作者による操作を受け付け可能とし、超音波の次の照射を開始する準備をする。
【0043】
図8は、照射中断時間が経過し一日あたりの治療を再開する前の画面表示の一例である。図示する例では1回目の5分間の休憩が完了している。表示部33には、操作者が次に操作すべき操作手順を示すガイダンス254が表示されている。ガイダンス254には、治療開始ボタン52dを押下すると治療を再開する旨のメッセージが含まれている。タッチパネルとしての入力部32を介して治療開始ボタン52dが押下されると、装置100は超音波を再び照射して治療を再開する。
【0044】
装置100が超音波を再び照射して治療を再開すると、表示部33には、リアルタイムの治療状況として、一日あたりの治療経過に関する時間241bと、照射経過に関する時間243bとが、リアルタイムにカウントダウン形式で表示される。表示部33には、リアルタイムの治療状況としてさらに、一日あたりの総治療時間241aおよび治療経過に関する時間241bがバーグラフ51dで表示されている。バーグラフ51d全体の長さは、一日あたりの総治療時間241aを示しており、治療経過に関する時間241bは、バーグラフ51dの左端からカウントアップ形式で表示されている。
【0045】
図8の画面表示は、照射中断時間が経過し一日あたりの治療を再開する前の状態を示している。したがって、照射経過に関する時間243bは、照射一回あたりの照射時間231と同じ値にリセットされている。治療経過に関する時間241bは、一日あたりの治療経過に関する累積的な時間である。一日あたりの照射実施回数242bもカウントアップされている。
【0046】
以降、装置100は図6図8に示す画面表示の動作を繰り返し、装置100が超音波の照射を、治療プロトコル情報23内に規定されている一日あたりの総照射回数232の回数実行すると、装置100を用いた一日分の治療が完了する。
【0047】
以上、本発明の一実施形態によると、患者の治療の進捗状況を手軽に把握することができる超音波治療装置を提供することができる。
【0048】
一実施形態に係る超音波治療装置100は治療状況通知部14を備え、治療状況通知部14は、超音波の照射条件に関する情報であり、照射一回あたりの照射時間、一日あたりの総照射回数、および各照射間の照射中断時間を含む治療プロトコル情報23に基づいて、リアルタイムの治療状況を通知する。治療状況は、例えば装置100が備える表示部33に表示されるか、または、装置100が備えるスピーカ34を通じて音声で出力される。これにより、医師等の操作者は、患者の治療部位91に対する治療状況を手軽に把握することが可能となり、1日あたりの総治療時間が1時間を超える、長時間におよぶ治療を的確に実施することが可能となる。
【0049】
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0050】
図9および図10は、本発明の他の実施形態に係る超音波治療装置の画面表示の一例である。上記実施形態では、治療状況通知部14は、治療状況をバーグラフ51a~51dで表示しているが、治療状況を表示する態様はこれに制限されない。治療状況通知部14は、例えば図9および図10に例示するように、治療状況の進捗をタイムチャート53で表示してもよい。タイムチャート53には、一日あたりの治療の開始から終了までの間のイベントを示すマイルストーン54と、現在のイベントを示すマーク55とが表示されている。治療状況通知部14は、治療プロトコル情報23に基づいて、タイムチャート53上にマイルストーン54およびマーク55を表示する。
【0051】
図9は、一日あたりの治療を開始する前の画面表示の一例である。リアルタイムの治療状況をバーグラフ51aで表示する図5の態様に代えて、図9に例示する態様では、リアルタイムの治療状況がタイムチャート53で表示されている。図9は、一日あたりの治療を開始する前の画面表示である。したがって、現在のイベントを示すマーク55は、1回目の超音波照射を示すマイルストーンを指すように表示される。
【0052】
図10は、各照射間で照射を中断している間の画面表示の一例である。リアルタイムの治療状況をバーグラフ51cで表示する図7の態様に代えて、図10に例示する態様では、リアルタイムの治療状況がタイムチャート53で表示されている。図10は、1回目の超音波照射を完了し、2回目の超音波照射を開始するまで待機している間の、休憩時間中の画面表示である。したがって、現在のイベントを示すマーク55は、1回目の休憩を示すマイルストーン54と、2回目の超音波照射を示すマイルストーン54との間を示すように表示される。治療状況通知部14が表示する治療状況はリアルタイムであり、マーク55が示すタイムチャート53上の位置も、休憩時間の経過と共にリアルタイムで進行する。
【0053】
上記実施形態では、超音波治療装置100は低出力パルス波超音波(Low-Intensity Pulsed Ultrasound: LIPUS)を出力しているが、装置100が出力する超音波はこの低出力パルス波超音波に制限されない。患者の治療部位91も例示する脳に制限されないし、治療対象の疾患も例示する認知症に制限されない。患者を治療する限り、超音波治療装置100は、あらゆる疾患を治療対象として、あらゆる治療部位に対してあらゆる周波数や波数、振幅、波形等の超音波を出力することができる。
【0054】
上記実施形態では、治療状況通知部14は、装置100に備えられた表示部33またはスピーカ34を通じて操作者に治療状況を通知しているが、治療状況を通知する際の表示部33およびスピーカ34は、装置100に備えられているものに制限されない。治療状況通知部14は、ネットワーク99を介して接続された、例えばナースステーション等に配置されている集中管理システムの表示画面やスピーカに、治療状況を通知してもよい。これにより、治療施設の治療室から離れた場所においても、医師や理学療法士、看護師等の医療従事者が、患者の治療の進捗状況を手軽に把握することが可能となる。
【0055】
上記実施形態では、治療情報21は入力部32を介して操作者から取得しているが、治療情報21を取得する態様はこれに制限されない。治療情報21は、外部機器(例えば、クラウドサーバ)において予め入力し記録されているものが、通信I/F部39およびネットワーク99を介して装置100に取り込まれてもよい。
【0056】
上記実施形態では、超音波治療装置100は一体の装置として実現されているが、装置100は一体の装置である必要はなく、プロセッサ、メモリ、補助記憶装置20等が別所に配置され、これらが互いにネットワークで接続されていてもよい。入力部32、表示部33およびスピーカ34についても、一ヶ所に配置される必要は必ずしもなく、それぞれが別所に配置されて互いにネットワークで通信可能に接続されていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、データ処理部10を構成する各機能ブロック11~16はソフトウェアにより実現されているが、これら各機能ブロック11~16は、一部または全部がハードウェアとして実現されてもよい。データ処理部10を構成する各機能ブロック11~16の処理は単一のプロセッサで処理される必要はなく、複数のプロセッサで分散して処理されてもよい。データ処理部10の機能および補助記憶装置20内のデータ項目は、一部または全部が、通信I/F部39およびネットワーク99を介して接続される外部機器(例えば、クラウドサーバ)においてクラウド化されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 データ処理部
11 治療情報取得部
12 送信条件設定部
13 治療プロトコル管理部
14 治療状況通知部
15 操作手順通知部
16 入力情報表示部
20 補助記憶装置
21 治療情報
22 送信条件情報
23 治療プロトコル情報
25 操作手順情報
29 プログラム
31 送信器
32 入力部
33 表示部
34 スピーカ
39 通信インタフェース部(通信I/F部)
41,42 超音波振動子
44 棒状の持ち手
51a~51d バーグラフ
52a,52c,52d 治療開始ボタン
52b 治療停止ボタン
53 タイムチャート
54 マイルストーン
55 現在のイベントを示すマーク
91 治療部位
99 ネットワーク
100 超音波治療装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10