(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002461
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】把持装置、食品取扱装置及び食品製造方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102657
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲陽
(72)【発明者】
【氏名】西村 斉寛
(72)【発明者】
【氏名】森 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松下 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】藤森 菜々瀬
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 友亮
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707ET08
3C707EU11
3C707EV27
3C707HT24
3C707NS02
3C707NS26
(57)【要約】
【課題】対象を把持及び回転することができる新規な把持装置を提供する。
【解決手段】把持装置は、相互間の間隔が可変であり、対象を挟んで把持可能な第1支持部及び第2支持部を備え、第2支持部は、支持ベルトと、支持ベルトを移動可能に支持し、且つ、支持ベルトの姿勢を少なくともロール回転姿勢に可変的に調整するベルト支持部と、を有し、ロール回転姿勢に調整された支持ベルトに対象が載せられた状態で支持ベルトが移動させられることで、対象はロール方向に回転される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互間の間隔が可変であり、対象を挟んで把持可能な第1支持部及び第2支持部を備え、
前記第2支持部は、
支持ベルトと、
前記支持ベルトを移動可能に支持し、且つ、前記支持ベルトの姿勢を少なくともロール回転姿勢に可変的に調整するベルト支持部と、
を有し、
前記ロール回転姿勢に調整された前記支持ベルトに前記対象が載せられた状態で前記支持ベルトが移動させられることで、前記対象はロール方向に回転される、
把持装置。
【請求項2】
前記支持ベルトは、無端形状を有し、
前記ベルト支持部は、前記支持ベルトを支持する複数の支持ローラと、前記複数の支持ローラを回転可能に支持する支持本体と、を有し、
前記複数の支持ローラは、回転によって前記支持ベルトの移動を推進する移動推進ローラを含み、
前記支持本体は、第1支持ブロックと、前記第1支持ブロックに対する相対的な姿勢が外力に応じて変わる第2支持ブロックと、を有し、
前記対象が載せられている載置面に対して前記第2支持部が押しつけられつつ前記第2支持部が移動されることによって、前記移動推進ローラが、前記載置面上を転がりつつ、前記支持ベルトを前記ロール回転姿勢の状態で移動させる、
請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
ベルト移動駆動装置を更に備え、
前記支持ベルトは、無端形状を有し、
前記ベルト支持部は、前記支持ベルトが掛け渡される複数の支持ローラと、前記複数の支持ローラを回転可能に支持する支持本体と、を有し、
前記複数の支持ローラは、前記支持ベルトに係合する移動推進ローラを含み、
前記ベルト移動駆動装置が前記移動推進ローラを回転させるように駆動することで、前記支持ベルトを前記ロール回転姿勢の状態で移動させる、
請求項1に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1支持部及び前記第2支持部の相互間の間隔を変えるように前記第1支持部及び前記第2支持部を把持開閉方向に移動させ、またピッチ回転軸線を中心に前記第1支持部及び前記第2支持部を回転させる支持移動部を更に備える、
請求項1に記載の把持装置。
【請求項5】
前記支持移動部は、
支持移動駆動装置から伝えられる動力によって、第1回転軸線を中心に回転される入力ギアと、
前記入力ギアに係合する中間ギアと、
前記中間ギアに係合する第1出力ギアと、
前記中間ギアに取り付けられ、前記中間ギアとともに前記第1回転軸線を中心に回転可能に設けられる第2出力ギアと、
前記第1出力ギアから伝えられる動力によって、前記第1支持部及び前記第2支持部を前記把持開閉方向に移動させる開閉移動機構と、
前記第2出力ギアから伝えられる動力によって、前記ピッチ回転軸線を中心に前記第1支持部及び前記第2支持部を回転させるピッチ回転機構と、
を備える、
請求項4に記載の把持装置。
【請求項6】
前記第1回転軸線を中心とした前記中間ギアの回転を抑える回転抵抗力を、前記中間ギアに作用させる回転調整部を備え、
前記入力ギアから前記中間ギアに伝えられる前記第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、前記回転抵抗力の最大値に基づいて定められるモード切替閾値以下の場合、前記中間ギア及び前記第2出力ギアは、前記第1回転軸線を中心に回転せず、
前記入力ギアから前記中間ギアに伝えられる前記第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、前記モード切替閾値よりも大きい場合、前記中間ギア及び前記第2出力ギアは、前記第1回転軸線を中心に回転する、
請求項5に記載の把持装置。
【請求項7】
相互間の間隔が可変であり、対象を挟んで把持可能な第1支持部及び第2支持部と、
前記第1支持部及び前記第2支持部の相互間の間隔を変えるように前記第1支持部及び前記第2支持部を把持開閉方向に移動させ、またピッチ回転軸線を中心に前記第1支持部及び前記第2支持部を回転させる支持移動部と、
回転調整部と、を備え、
前記支持移動部は、
支持移動駆動装置から伝えられる動力によって、第1回転軸線を中心に回転される入力ギアと、
前記入力ギアに係合する中間ギアと、
前記中間ギアに係合する第1出力ギアと、
前記中間ギアに取り付けられ、前記中間ギアとともに前記第1回転軸線を中心に回転可能に設けられる第2出力ギアと、
前記第1出力ギアから伝えられる動力によって、前記第1支持部及び前記第2支持部を前記把持開閉方向に移動させる開閉移動機構と、
前記第2出力ギアから伝えられる動力によって、前記ピッチ回転軸線を中心に前記第1支持部及び前記第2支持部を回転させるピッチ回転機構と、を有し、
前記回転調整部は、前記第1回転軸線を中心とした前記中間ギアの回転を抑える回転抵抗力を、前記中間ギアに作用させ、
前記入力ギアから前記中間ギアに伝えられる前記第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、前記回転抵抗力の最大値に基づいて定められるモード切替閾値以下の場合、前記中間ギア及び前記第2出力ギアは、前記第1回転軸線を中心に回転せず、
前記入力ギアから前記中間ギアに伝えられる前記第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、前記モード切替閾値よりも大きい場合、前記中間ギア及び前記第2出力ギアは、前記第1回転軸線を中心に回転する、
把持装置。
【請求項8】
把持の前記対象が食品である請求項1~7のいずれか一項に記載の把持装置を備える食品取扱装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の把持装置によって食品を把持する工程を含む食品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、把持装置、食品取扱装置及び食品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
把持装置は、対象を把持する機能だけではなく、当該対象を回転させる機能も求められることがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、対象を把持及び回転することができる新規な把持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、相互間の間隔が可変であり、対象を挟んで把持可能な第1支持部及び第2支持部を備え、第2支持部は、支持ベルトと、支持ベルトを移動可能に支持し、且つ、支持ベルトの姿勢を少なくともロール回転姿勢に可変的に調整するベルト支持部と、を有し、ロール回転姿勢に調整された支持ベルトに対象が載せられた状態で支持ベルトが移動させられることで、対象はロール方向に回転される、把持装置に関する。
【0006】
本開示の他の態様は、相互間の間隔が可変であり、対象を挟んで把持可能な第1支持部及び第2支持部と、第1支持部及び第2支持部の相互間の間隔を変えるように第1支持部及び第2支持部を把持開閉方向に移動させ、またピッチ回転軸線を中心に第1支持部及び第2支持部を回転させる支持移動部と、回転調整部と、を備え、支持移動部は、支持移動駆動装置から伝えられる動力によって、第1回転軸線を中心に回転される入力ギアと、入力ギアに係合する中間ギアと、中間ギアに係合する第1出力ギアと、中間ギアに取り付けられ、中間ギアとともに第1回転軸線を中心に回転可能に設けられる第2出力ギアと、第1出力ギアから伝えられる動力によって、第1支持部及び第2支持部を把持開閉方向に移動させる開閉移動機構と、第2出力ギアから伝えられる動力によって、ピッチ回転軸線を中心に第1支持部及び第2支持部を回転させるピッチ回転機構と、を有し、回転調整部は、第1回転軸線を中心とした中間ギアの回転を抑える回転抵抗力を、中間ギアに作用させ、入力ギアから中間ギアに伝えられる第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、回転抵抗力の最大値に基づいて定められるモード切替閾値以下の場合、中間ギア及び第2出力ギアは、第1回転軸線を中心に回転せず、入力ギアから中間ギアに伝えられる第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、モード切替閾値よりも大きい場合、中間ギア及び第2出力ギアは、第1回転軸線を中心に回転する、把持装置に関する。
【0007】
本開示の他の態様は、把持の対象が食品である上記の把持装置を備える食品取扱装置に関する。
【0008】
本開示の他の態様は、上記の把持装置によって食品を把持する工程を含む食品製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、対象を把持及び回転することができる新規な把持装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の一例に係る把持装置を示す図であり、特に第2支持部が把持姿勢をとっている状態を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示す把持装置の第1支持部及び第2支持部を示す図であり、特に第2支持部がロール回転姿勢をとっている状態を示す。
【
図3】
図3は、
図2に示す第2支持部の拡大図であり、対象をロール方向に回転させる方法の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の他の例に係る把持装置の第1支持部及び第2支持部を示す図であり、特に第2支持部がロール回転姿勢をとっている状態が示される。
【
図5】
図5は、第2実施形態の一例に係る支持移動部が具備するギアアセンブリの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すギアアセンブリを具備する支持移動部の一例を示す概略図であり、把持動作のための構成例を示す。
【
図7】
図7は、
図5に示すギアアセンブリを具備する支持移動部の一例を示す概略図であり、ピッチ回転動作のための構成例を示す。
【
図8】
図8は、把持モード及びピッチ回転モードにおける、時間(秒(s);X軸)と、第1支持部及び第2支持部によって対象にもたらされる把持力(ニュートン(N);Y軸)との間の関係例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、第3実施形態の一例に係る把持装置を示す図であり、特に第2支持部が把持姿勢をとっている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の例示的な実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
以下の各実施形態では、把持及び回転の対象が食品(例えば柔らかくて脆いコロッケなど)である場合について例示的に説明する。ただし本開示技術は、食品以外の任意の物体の把持及び回転を行う装置及び方法に対しても適用可能であり、金属や樹脂などの硬い物体が、把持及び回転の対象であってもよく、本開示技術を適用可能な技術分野も限定されない。
【0013】
本開示は、製造現場の省人化を通して持続可能な生産を確保し、もってSDGs(Sustainable Development Goals)に貢献する技術に関する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の一例に係る把持装置10を示す図であり、特に第2支持部12が把持姿勢Sgをとっている状態を示す。
図2は、
図1に示す把持装置10の第1支持部11及び第2支持部12を示す図であり、特に第2支持部12がロール回転姿勢Srをとっている状態を示す。
図1及び
図2において、上下方向は高さ方向(鉛直方向)に対応し、左右方向は水平方向に対応する。
【0015】
本実施形態の把持装置10は、対象85を把持する把持モードを実行することが可能であるとともに、ロール方向Drに対象85を回転させるロール回転モードを実行するが可能である。
図1に示す例において「ロール方向Drへの回転」は、紙面に垂直な方向に延びる軸線(以下「ロール回転軸線」と称する)を基準とした回転である。また
図1に示す把持装置10は、ピッチ方向Dpにも対象85を回転させることが可能である。
図1に示す例において「ピッチ方向Dpへの回転」は、ロール回転軸線と直交し且つ水平方向に延びるピッチ回転軸線Lpを中心とした回転である。
【0016】
把持装置10は、第1支持部11及び第2支持部12を備える。第1支持部11及び第2支持部12は、水平方向(特に把持開閉方向Dg)の相互間の間隔が可変であり、対象85を挟んで把持可能に設けられる。
図1及び
図2に示す例では、第1支持部11及び第2支持部12の両方が鏡面対称的に把持開閉方向Dgに移動させられることで、第1支持部11及び第2支持部12の把持開閉方向Dgの相互間の間隔が変えられる。なお他の例として、第1支持部11及び第2支持部12の一方(例えば第2支持部12)のみが把持開閉方向Dgに移動させられ、他方(例えば第1支持部11)は把持開閉方向Dgに移動させられずに固定的に設けられてもよい。この場合にも、第1支持部11及び第2支持部12の一方を、対象85を介して他方に向けて移動させることによって、対象85を第1支持部11及び第2支持部12によって把持することが可能である。
【0017】
第1支持部11及び第2支持部12の各種動作(対象85を移動及び回転させるための動作を含む)は、支持移動部40の駆動下で行われる。支持移動部40は、制御装置15の制御下で支持移動駆動装置16から伝えられる動力に基づいて、第1支持部11及び第2支持部12を動作させる。支持移動駆動装置16及び支持移動部40の具体的な構成は限定されない。典型的には、支持移動駆動装置16はモータ(例えばサーボモータ)を含むことができ、支持移動部40は後述の第3実施形態(
図9参照)と同様に構成されることが可能である。
【0018】
第1支持部11は、支持ベルト21と、支持ベルト21を支持するベルト支持部22とを有する。支持ベルト21は、対象85を把持する際に対象85と接触する部位であり、対象85を把持するのに適した材料、形状及び姿勢を有する。ベルト支持部22は、任意の構成を有することができる。
図1に示す例では、ベルト支持部22が支持ベルト21を張った状態で固定的に支持し、支持ベルト21は、対象85を把持する際に弾性的に撓むことで、対象85に加えられる衝撃を緩和することができる。
【0019】
なお第1支持部11の支持ベルト21及びベルト支持部22は、
図1に示す例では後述の第2支持部12の支持ベルト31及びベルト支持部32と異なる構成を有するが、第2支持部12の支持ベルト31及びベルト支持部32と同様に構成されてもよい。また第1支持部11は、
図1に示す構成とは異なる任意の構成を有することが可能であり、使用状況に応じて最適化された構成を有することができる。例えば、把持の際の衝撃を緩和する必要がない対象85(例えば十分に硬い対象85)を把持する場合、第1支持部11は、支持ベルト21を具備していなくてもよく、撓むことなく対象85に接触して当該対象85を把持可能な部材を具備していてもよい。
【0020】
第1支持部11の支持ベルト21及びベルト支持部22は、回転シャフト77に対して固定される。回転シャフト77は、プーリー75が固定的に取り付けられ、支持アーム41によって回転自在に支持される。プーリー75が支持移動部40によって回転されることで、プーリー75と一体的に回転シャフト77が回転し、ひいては支持ベルト21及びベルト支持部22が、回転シャフト77と一体的に、ピッチ回転軸線Lpを中心にピッチ方向Dpへ回転する。
【0021】
第2支持部12も、対象85を把持する際に対象85と接触する支持ベルト31と、支持ベルト31を支持するベルト支持部32とを有し、プーリー75が取り付けられ且つ支持アーム41によって回転自在に支持される回転シャフト77に固定される。そしてプーリー75が支持移動部40によって回転されることで、第2支持部12の支持ベルト31及びベルト支持部32は、回転シャフト77及びプーリー75と一体的に、ピッチ回転軸線Lpを中心にピッチ方向Dpへ回転する。
【0022】
なお第1支持部11及び第2支持部12のピッチ方向Dpへの回転は、お互いに同期して行われる。ここで言う第1支持部11及び第2支持部12のピッチ方向Dpへの同期回転は、第1支持部11及び第2支持部12の両方を能動的に回転させることで実現されてもよいし、一方のみを能動的に回転させつつ他方を受動的に回転させることで実現されてもよい。例えば、第1支持部11に取り付けられる第2プーリー75及び第2支持部12に取り付けられる第2プーリー75の両方に、駆動装置からの回転駆動力を伝達することで、第1支持部11及び第2支持部12のピッチ方向Dpへの同期回転が行われてもよい。或いは、駆動装置からの回転駆動力を第1支持部11及び第2支持部12のうちの一方のみの第2プーリー75に伝達し、他方はピッチ方向Dpに回転自在に設けられてもよい。この場合、第1支持部11及び第2支持部12が対象85を把持している状態で、第1支持部11及び第2支持部12のうちの一方の第2プーリー75が回転駆動力によって能動的に回転させられることで、対象85及び他方の支持部は受動的に一緒に回転する。
【0023】
第2支持部12のベルト支持部32は、支持ベルト31を移動可能に支持し、且つ、支持ベルト31の姿勢を、少なくとも把持姿勢Sg(
図1参照)及びロール回転姿勢Sr(
図2参照)に可変的に調整する。
【0024】
第2支持部12の把持姿勢Sgは、支持ベルト31が対象85を把持するのに適した姿勢をとるように、ベルト支持部32が支持ベルト31を調整するための姿勢である。
図1に示す把持姿勢Sgの第2支持部12によれば、対象85の高さ方向サイズが小さい場合、支持ベルト31は、対象85の一方の側方部(
図1の右側側方部)を包み込むように対象85を把持することができる。
【0025】
ロール回転姿勢Srは、支持ベルト31が対象85をロール方向Drに回転させるのに適した姿勢をとるように、ベルト支持部32が支持ベルト31を調整するための姿勢である。
図2に示す例によれば、第2支持部12がロール回転姿勢Srをとることによって、支持ベルト31(特に第2支持ブロック34bに取り付けられる方向転換ローラ33aに近接する部分)は、載置面上の対象85の下方に進入するのに適した楔状の外形を有する。
【0026】
図1に示す第2支持部12の支持ベルト31は、無端形状を有し、複数の支持ローラ33a、33bによって案内されつつ走行可能である。第2支持部12のベルト支持部32は、支持ベルト31を走行可能に支持する複数の支持ローラ33a、33bと、複数の支持ローラ33a、33bを回転可能に支持する支持本体34a、34bとを有する。
【0027】
複数の支持ローラ33a、33bは、少なくとも1つの(
図1に示す例では3つの)方向転換ローラ33aと、少なくとも1つの(
図1に示す例では1つの)係合ローラ(移動推進ローラ)33bとを含む。支持本体34a、34bは、第1支持ブロック34aと、第1支持ブロック34aに対する相対的な姿勢を変更可能な第2支持ブロック34bとを有する。
【0028】
図1に示す例において、第1支持ブロック34aは、支持部材(回転シャフト77)により固定的に支持されて揺動しないが、第2支持ブロック34bは、揺動軸36を介し、第1支持ブロック34aに対して揺動可能(特に揺動自在)に連結される。第1支持ブロック34aには、2つの方向転換ローラ33a及び1つの係合ローラ33bが回転自在に取り付けられる。第2支持ブロック34bには、1つの方向転換ローラ33aが回転自在に取り付けられる。
【0029】
方向転換ローラ33aは、巻き掛けられる支持ベルト31を支持しつつ、支持ベルト31の延在方向を転換する。特に第2支持ブロック34bに取り付けられる方向転換ローラ33aは、第1支持ブロック34aに対する第2支持ブロック34bの揺動に応じて、揺動軸36を中心に移動し、他の支持ローラ33a、33bに対する自らの相対的な位置を変えることができる。
【0030】
支持ベルト31の姿勢は、複数の支持ローラ33a、33bの相互間の位置関係に応じて決まる。すなわち、支持ベルト31を支持する複数の支持ローラ33a、33bの相互間の相対位置を変えることによって、支持ベルト31の姿勢を変えることができる。とりわけ支持ベルト31のうち「対象85に接触することが意図される部分」を支持する支持ローラ(
図1及び
図2に示す例では方向転換ローラ33a)の相互間の相対位置を変えることによって、支持ベルト31の姿勢を変えることができる。したがって複数の支持ローラ33a、33b(とりわけ支持ベルト31のうち「対象85に接触する部分」を支持する支持ローラ33a)の相互間の相対位置は、把持姿勢Sgとロール回転姿勢Srとの間で異なる。支持ベルト31の姿勢の切り替え(例えば把持姿勢Sg(
図1参照)とロール回転姿勢Sr(
図2参照)との間の切り替え)は、第1支持ブロック34aに対する第2支持ブロック34bの姿勢(揺動位置)の調整によって行われる。
【0031】
本例では、第2支持ブロック34bに対して外力(特に揺動軸36の周りで上向きに働く外力)が作用しない間、支持ベルト31が把持姿勢Sgをとるように、第2支持ブロック34bの揺動位置が調整される(
図1参照)。一方、第2支持ブロック34bに対してそのような外力が作用している間、支持ベルト31がロール回転姿勢Srをとるように、第2支持ブロック34bの揺動位置が調整される(
図2参照)。
【0032】
図1に示す把持姿勢Sgをとる第2支持部12において、第2支持ブロック34bによって支持される方向転換ローラ33aの最下部位は、係合ローラ33bの最下部位よりも下方に位置づけられる。一方、
図2に示すロール回転姿勢Srをとる第2支持部12において、第2支持ブロック34bによって支持される方向転換ローラ33aの最下部位は、係合ローラ33bの最下部位よりも上方に位置づけられる。
【0033】
なお第2支持ブロック34bの揺動位置の調整手法は限定されない。例えば、第2支持ブロック34bが、重力のみが作用する自然状態下で、所望の揺動位置(把持姿勢Sg)をとることができるように、第2支持ブロック34bの重心位置が調整されてもよい。また第2支持ブロック34bは、バネなどの弾性デバイス(図示省略)を具備し、当該弾性デバイスによってもたらされる弾性力を利用して、外力(当該弾性力は含まれない)が作用しない間に所望の揺動位置(把持姿勢Sg)をとるように構成されてもよい。
【0034】
支持ベルト31の姿勢の切り替えは、本例では第2支持部12(特に第2支持ブロック34b)に対する接触によりもたらされる負荷や第2支持部12に作用する重力を利用して行われるが、重力以外の外力を利用して重力とは無関係に行われてもよい。例えば、第2支持ブロック34bと一体的に回転する揺動軸36を、図示しない駆動装置を制御装置15の制御下で回転させることで、第1支持ブロック34aに対する第2支持ブロック34bの揺動位置を調整して、支持ベルト31の姿勢を切り替えてもよい。
【0035】
係合ローラ33bは支持ベルト31に係合し、係合ローラ33bが回転することで、支持ベルト31の移動を推進する力が、係合ローラ33bから支持ベルト31に作用する。支持ベルト31と係合ローラ33bとの間の係合態様は限定されず、係合ローラ33bの回転によって支持ベルト31の移動を推進可能な任意の態様とすることができる。典型的には、係合ローラ33bは支持ベルト31に対し、凹凸嵌合に基づいて係合したり、接触摩擦に基づいて係合したりする。
【0036】
支持ベルト31は、係合ローラ33bの回転に伴うそのような推進力を受けることで、複数の支持ローラ33a、33bにより定められる走行経路に沿って、エンドレスに移動する。
【0037】
本例では後述のように、対象85をロール方向Drに回転させるために、係合ローラ33bを物体面(
図3に示す「載置面s」参照)上で転動させる必要がある。そのために係合ローラ33bの下部(特に最外面)は、支持ベルト31により覆われることなく、外方(特に下方)に露出されることが必要である。そのため本例の支持ベルト31は、係合ローラ33bの上部に巻き掛けられ、係合ローラ33bを上方から覆うように延在する。これにより係合ローラ33b(特に下部)は、物体面に押し当てられた際に、支持ベルト31によって邪魔されることなく当該物体面に接触して、当該物体面からの抵抗力(特に摩擦力)を受けつつ当該物体面上を転動することができる。
【0038】
図3は、
図2に示す第2支持部12の拡大図であり、対象85をロール方向Drに回転させる方法の一例を説明する図である。
【0039】
本実施形態において対象85をロール方向Drに回転させる場合、
図3に示すように、対象85が載せられている載置面sに対して第2支持部12が押しつけられつつ、第2支持部12が、載置面s上を、対象85に向けて把持開閉方向Dgに移動される。これにより、係合ローラ33bが、係合ローラ回転方向Dfに回転しながら載置面s上を転がり、ロール回転姿勢Srをとっている支持ベルト31に推進力を作用させて、支持ベルト31をベルト移動方向Dbに移動させる。
【0040】
図3に示す例において第2支持ブロック34bは、載置面sに載せられ、載置面sから受ける上向きの力によって揺動軸36を中心に揺動し、支持ベルト31をロール回転姿勢Srに調整及び維持する。すなわち把持姿勢Sgの第2支持部12を載置面s上に載せることによって、第2支持ブロック34bは、係合ローラ33bに先立って載置面sに接触して、載置面sから上向きの力を受けつつ揺動し、最終的にロール回転姿勢Srをとる。
【0041】
本例では、支持移動駆動装置16からの動力によって駆動される支持移動部40が、第1支持部11及び第2支持部12を昇降方向Deに上昇又は降下させる。なお支持移動部40は、第1支持部11及び第2支持部12を昇降させる代わりに、載置面sを昇降させることで、第1支持部11及び第2支持部12を支持移動部40に対して相対的に昇降させてもよい。
【0042】
そして支持移動部40は、ロール回転姿勢Srの第2支持部12を、載置面s上で把持開閉方向Dg(特に対象85に向かう方向)に移動させる。これにより、第2支持部12の第2支持ブロック34bの先端部が対象85の下方に入り込んで、対象85は部分的に支持ベルト31に載せられる。そして、ロール回転姿勢Srに調整された支持ベルト31に対象85が載せられた状態で第2支持部12が把持開閉方向Dg(特に対象85に向かう方向)に更に移動することで、対象85は、走行する支持ベルト31から力を受けてロール方向Drに回転される。すなわち
図3の実線及び二点鎖線によって示されるように、支持ベルト31に載せられている対象85は、複数の支持ローラ33a、33bによって案内されつつ走行する支持ベルト31から力を受けて徐々に引き起こされ、ロール方向Drに回転される。
【0043】
なお
図3では図示が省略されているが、第1支持部11の支持ベルト21が対象85を第2支持部12の支持ベルト31に押しつけつつ当該支持ベルト31を走行させることで、対象85をロール方向Drに回転させてもよい。また対象85をロール方向Drへ回転させる際に、支持ベルト31は、必ずしも常時走行している必要はない。例えば、走行する支持ベルト31によって対象85をロール方向Drにある程度回転させた後、支持ベルト31の走行を停止した状態で、第2支持部12を第1支持部11に向けて移動させることで、対象85をロール方向Drに更に回転させてもよい。この場合、支持ベルト31の走行を停止させるため、支持移動部40は第2支持部12を上昇させて少なくとも係合ローラ33bを載置面sから離間させ、例えば第2支持部12は把持姿勢Sgをとってもよい。
【0044】
なお上述の
図1~
図3に示す把持装置10では、第2支持部12を載置面sに押しつけつつ移動させて係合ローラ33bを載置面s上で転動させることで、支持ベルト31は走行する。したがって支持ベルト31の走行を利用した対象85のロール方向Drへの回転の実行には、係合ローラ33bを載置面s(物体面)上で転動させることが必要とされる。換言すれば、係合ローラ33b(第2支持部12)が空中に位置し、係合ローラ33bが物体面に接触しない場合、支持ベルト31を走行させることができず、ひいては対象85をロール方向Drに回転させることが難しい。
【0045】
図4は、第1実施形態の他の例に係る把持装置10の第1支持部11及び第2支持部12を示す図であり、特に第2支持部12がロール回転姿勢Srをとっている状態が示される。
【0046】
図4に示す把持装置10は、基本的に上述の
図1~
図3に示す把持装置10と同様の構成を有するが、ベルト移動駆動装置30を備える。ベルト移動駆動装置30は、制御装置15(
図1参照)の制御下で係合ローラ33bを回転させるように駆動し、支持ベルト31をロール回転姿勢Srの状態で移動(走行)させる。ベルト移動駆動装置30は、典型的にはモータによって構成されるが、他の任意のデバイスにより構成されてもよい。
【0047】
図4に示す例において、係合ローラ33bと係合する支持ベルト31は、係合ローラ33bの下部に巻き掛けられ、係合ローラ33bを下方から覆うように延在する。
【0048】
本例では、ベルト移動駆動装置30によって係合ローラ33bが回転されることで支持ベルト31が走行させられるため、上述の
図1~
図3に示す例のように係合ローラ33bを載置面上で転動させることは必要とされない。そのため、係合ローラ33bの下部を外方に露出させることが不要であり、
図4に示すように支持ベルト31を係合ローラ33bの下部に巻き掛けることができる。ただし本例のようにベルト移動駆動装置30によって係合ローラ33bが回転される場合であっても、
図1~
図3の例と同様に、支持ベルト31が係合ローラ33bの上部に巻き掛けられ、係合ローラ33bの下部が外方に露出されてもよい。
【0049】
図4に示す例において、支持ベルト31が走行を停止している間、第2支持部12は把持姿勢Sgをとり、支持ベルト31がベルト移動方向Dbに走行している間、第2支持部12はロール回転姿勢Srをとる。すなわちベルト移動駆動装置30によって係合ローラ33bを回転させて支持ベルト31をベルト移動方向Dbに走行させることで、第2支持ブロック34bにより支持される方向転換ローラ33aが、支持ベルト31から力を受ける。その結果、第2支持ブロック34bは、揺動軸36の周りで
図4の紙面上時計回りに働くモーメントを受けて上向きに揺動し、ロール回転姿勢Srに調整される。一方、支持ベルト31の走行が停止することで、第2支持ブロック34bにより支持される方向転換ローラ33aは支持ベルト31から力を受けず、第2支持ブロック34bは把持姿勢Sgに調整される。
【0050】
上述の
図4に示す把持装置10によれば、係合ローラ33bを物体面(載置面s等)に接触させることなく、対象85をロール方向Drに回転させることが可能である。係合ローラ33bを物体面に接触させないことによって、当該物体面上の異物による第2支持部12の汚染を抑えることができ、対象85のロール回転及び把持を衛生的に実行することができる。加えて、係合ローラ33bが物体面(載置面s等)に接触しないので、支持ベルト31の摩耗を低減できる。
【0051】
[第2実施形態]
本実施形態において、上述の第1実施形態と同一又は対応の構成要素には同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
図5は、第2実施形態の一例に係る支持移動部40が具備するギアアセンブリ50の斜視図である。
図5において第2出力ギア54の図示が一部省略され、第2出力ギア54の内側の構成が図示されている。
【0053】
図6は、
図5に示すギアアセンブリ50を具備する支持移動部40の一例を示す概略図であり、把持動作のための構成例を示す。
図7は、
図5に示すギアアセンブリ50を具備する支持移動部40の一例を示す概略図であり、ピッチ回転動作のための構成例を示す。
図6及び
図7は同一の把持装置10を示し、
図6及び
図7に示すギアアセンブリ50は、
図5のギアアセンブリ50に対応するが、簡略化されて描かれており、
図5に示されるような詳細な装置構成は
図6及び
図7に描かれていない。なお
図6には、対象85を把持及び解放するための開閉移動機構60の一例が示されており、ピッチ回転機構70の図示は省略されている。一方、
図7には、対象85をピッチ方向Dpに回転させるためのピッチ回転機構70の一例が示されており、開閉移動機構60の図示は省略されている。
【0054】
本実施形態の把持装置10は、対象85を把持することが可能であるとともに、ピッチ方向Dpに対象85を回転させることが可能である。すなわち本実施形態の支持移動部40は、第1支持部11及び第2支持部12の相互間の間隔を変えるように第1支持部11及び第2支持部12を把持開閉方向Dgに移動させ、またピッチ回転軸線Lpを中心に第1支持部11及び第2支持部12を回転させる。
【0055】
具体的には、支持移動部40は、ギアアセンブリ50と、ギアアセンブリ50から出力される動力によって駆動される開閉移動機構60(
図6参照)及びピッチ回転機構70(
図7参照)とを備える。
【0056】
ギアアセンブリ50は、入力ギア51、中間ギア52、第1出力ギア53及び第2出力ギア54を含む。
【0057】
入力ギア51は、支持移動駆動装置16(
図1参照)から伝えられる動力によって、第1回転軸線L1を中心に回転される。第1回転軸線L1は、入力ギア51、第1出力ギア53及び第2出力ギア54の各々の中心軸線と一致し、高さ方向(鉛直方向)に沿って延びる。
【0058】
図5に示す例では、入力ギア51及び第1出力ギア53を回転自在に支持する第1ギア支持シャフト55が、第1回転軸線L1上に延在する。入力ギア51及び第1出力ギア53は、第1回転軸線L1と直交する水平方向への位置ずれが第1ギア支持シャフト55により抑えられた状態で、第1回転軸線L1を中心に安定的に回転することができる。第1ギア支持シャフト55は第2ギア支持シャフト56と一体的に設けられており、後述の第1回転軸線L1を中心とした第2ギア支持シャフト56の回転に応じて、第1ギア支持シャフト55も第1回転軸線L1を中心に回転する。なお第1ギア支持シャフト55が第1回転軸線L1を中心に回転しても、第1ギア支持シャフト55から入力ギア51及び第1出力ギア53の各々に、入力ギア51及び第1出力ギア53を回転させる力は伝わらない。
【0059】
中間ギア52は、入力ギア51と第1出力ギア53との間に配置され、入力ギア51及び第1出力ギア53の各々と係合する。
図5に示す例では2つの中間ギア52が設けられるが、中間ギア52の数は限定されず、単一の中間ギア52が設けられてもよいし、3つ以上の中間ギア52が設けられてもよい。ギアアセンブリ50の構造安定性の観点からは、複数の中間ギア52が設けられることが望ましく、特に複数の中間ギア52が第1回転軸線L1の周りで等角度間隔に設けられることが望ましい。
図5に示す2つの中間ギア52は、第1回転軸線L1と交わり且つ第1回転軸線L1と直角を成す方向(水平方向)に延びる第2回転軸線L2上に、互いに距離をおいて配置される。
【0060】
図5に示す例において、第2ギア支持シャフト56の中心軸線及び各第2出力ギア54の中心軸線は、第2回転軸線L2と一致する。2つの中間ギア52は、第2ギア支持シャフト56によって、第2回転軸線L2を中心に回転自在であるように支持されている。各中間ギア52は、第2回転軸線L2と直交する方向への位置ずれが第2ギア支持シャフト56により抑えられた状態で、第2回転軸線L2を中心に安定的に回転することができる。
【0061】
本例の第2ギア支持シャフト56は、各中間ギア52を貫通して延在し、両端が第2出力ギア54に固定される。
図5に示す例では、第2出力ギア54において貫通孔として形成される2つの固定孔54hにネジ等の固定具(図示省略)が挿入され、当該固定具を介して第2ギア支持シャフト56の両端が第2出力ギア54に対して固定される。したがって2つの固定孔54hは、第2ギア支持シャフト56及び各中間ギア52の中心軸線(第2回転軸線L2)によって貫通される位置に設けられる。
【0062】
このように第2ギア支持シャフト56、各中間ギア52及び第2出力ギア54は一体的に設けられており、各中間ギア52が第1回転軸線L1を中心に回転すると、第2ギア支持シャフト56及び第2出力ギア54も第1回転軸線L1を中心に回転する。なお各中間ギア52が第2回転軸線L2を中心に回転しても、各中間ギア52が第1回転軸線L1を中心に回転しない限りは、第2ギア支持シャフト56及び第2出力ギア54は第1回転軸線L1を中心に回転しない。
【0063】
第1出力ギア53は、一方の端部において第1歯部53aを有し、他方の端部において第2歯部53bを有する。第1歯部53aには各中間ギア52の歯部が係合し、第2歯部53bには開閉移動機構60(本例では第1ラック61及び第2ラック62(
図6参照))の歯部が係合する。第1出力ギア53は、入力ギア51から各中間ギア52を介して伝えられる動力によって、第1回転軸線L1を中心に回転され、当該回転に伴う動力を開閉移動機構60に伝える。
【0064】
第2出力ギア54は、第2ギア支持シャフト56を介して各中間ギア52に取り付けられ、各中間ギア52とともに第1回転軸線L1を中心に回転可能に設けられる。第2出力ギア54はピッチ回転機構70(本例では2つの伝達ギア71(
図7参照))に係合し、第2出力ギア54の回転に伴う動力がピッチ回転機構70に伝えられる。
【0065】
本例の支持移動部40はモード切替調整部58(
図6及び
図7参照)を更に備える。モード切替調整部58は、第1回転軸線L1を中心とした第2出力ギア54の回転を抑える回転抵抗力(例えば摩擦力)を、第2出力ギア54に作用させる。第2出力ギア54は第2ギア支持シャフト56を介して各中間ギア52に連結されている。そのためモード切替調整部58は、各中間ギア52の第1回転軸線L1を中心とした回転を抑える回転抵抗力を、第2出力ギア54及び第2ギア支持シャフト56を介し、各中間ギア52に作用させる。
【0066】
開閉移動機構60(
図6参照)は、第1出力ギア53から伝えられる動力によって、第1支持部11及び第2支持部12(
図1参照)を把持開閉方向Dgに移動させる。開閉移動機構60の具体的な構成は限定されないが、
図6には一例としてラック・アンド・ピニオン機構に基づく開閉移動機構60が示されている。
【0067】
すなわち
図6に示す開閉移動機構60は第1ラック61及び第2ラック62を含み、第1ラック61及び第2ラック62の各々が、ピニオンとして働く第1出力ギア53の第2歯部53bに係合する。第1ラック61には、支持アーム41(
図1参照)を介して第1支持部11が取り付けられ、第2ラック62には支持アーム41を介して第2支持部12が取り付けられる。したがって第1支持部11は第1ラック61と一体的に移動し、第2支持部12は第2ラック62と一体的に移動する。
【0068】
第1ラック61及び第2ラック62は、水平方向(特に把持開閉方向Dg)に延在し、相互間に第1出力ギア53を介在させつつ互いに向かい合うように配置される。
図6に示す例において、第1ラック61は第1出力ギア53よりも紙面手前側に位置し、第2ラック62は第1出力ギア53よりも紙面奥側に位置する。
【0069】
第1出力ギア53が第1回転軸線L1を中心に回転することによって、第1ラック61及び第2ラック62は、把持開閉方向Dgへ互いに逆向きに直線移動する。
図6において、第1ラック61が右方向に移動する場合には第2ラック62は左方向に移動し、第1ラック61が左方向に移動する場合には第2ラック62は右方向に移動する。したがって第1ラック61及び第2ラック62のそれぞれと一体的に移動する第1支持部11及び第2支持部12は、第1回転軸線L1を基準に、鏡面対称的に把持開閉方向Dgへ移動し、互いに近づいたり、互いから遠ざかったりする。
【0070】
一方、ピッチ回転機構70(
図7参照)は、第2出力ギア54から伝えられる動力によって、第1支持部11及び第2支持部12を、ピッチ回転軸線Lpを中心に回転させる。ピッチ回転機構70の具体的な構成は限定されない。
図7には、伝達ギア71、第1回転シャフト72、ワンウェイホイール73、第1プーリー74、第2プーリー75、伝達ベルト76及び第2回転シャフト77を含むピッチ回転機構70が例示されている。またピッチ回転機構70を実現する他の例として、ボールの転がり運動を利用したボールスプラインを含む機構がある。なおボールスプラインは汎用技術なので、ここではボールスプラインを含むそのような機構の具体例の説明を割愛する。
【0071】
第1支持部11及び第2支持部12には、それぞれ別個に設けられるピッチ回転機構70が割り当てられる。
図7において、第2支持部12を駆動するためのピッチ回転機構70の一例は示されているが、第1支持部11を駆動するためのピッチ回転機構70の大部分の図示は省略されている。
【0072】
以下、
図7に示される第2支持部12のためのピッチ回転機構70について説明する。なお第1支持部11を駆動するためのピッチ回転機構70は、第2支持部12を駆動するためのピッチ回転機構70と同様に構成可能である。以下の説明は、特に断りがない限り、第1支持部11を駆動するためのピッチ回転機構70に対しても適用される。
【0073】
伝達ギア71は、ピッチ回転軸線Lpが延びる方向(すなわち把持開閉方向Dg)に延在する第1回転シャフト72に対し、固定的に取り付けられる。伝達ギア71は、第2出力ギア54の上部外面を構成する歯部に係合し、第1回転軸線L1を中心とした第2出力ギア54の回転に応じて、第1回転シャフト72を中心とした第1シャフト回転方向D1に、第1回転シャフト72と一体的に回転する。
【0074】
第1回転シャフト72には、ワンウェイホイール73を介して第1プーリー74が取り付けられている。ワンウェイホイール73は、例えばワンウェイクラッチによって構成可能であり、一方の方向にのみ第1回転シャフト72からの回転動力を第1プーリー74に伝える。例えば、第1回転シャフト72が正方向(
図7の第1シャフト回転方向D1参照)に回転する場合、ワンウェイホイール73は第1回転シャフト72と一体的に正方向に回転し、第1プーリー74もワンウェイホイール73と一体的に正方向に回転する。一方、第1回転シャフト72が逆方向に回転する場合、ワンウェイホイール73は回転せず、第1プーリー74も回転しない。
【0075】
第1プーリー74には無端形状の伝達ベルト76が巻き掛けられており、第1プーリー74の回転動力が伝達ベルト76を介して第2プーリー75に伝えられる。伝達ベルト76が巻き掛けられている第2プーリー75は、第2回転シャフト77に対して固定的に取り付けられている。第2回転シャフト77は、ピッチ回転軸線Lpが延びる方向(すなわち把持開閉方向Dg)に延在し、一方の先端部(すなわち第1支持部11側の先端部)に第2支持部12が固定的に取り付けられている。
【0076】
第1回転シャフト72が第1シャフト回転方向D1へ回転することによって、ワンウェイホイール73及び第1プーリー74も第1シャフト回転方向D1に回転する。第1プーリー74が第1シャフト回転方向D1へ回転することによって、伝達ベルト76が走行する。伝達ベルト76の走行に応じて、第2プーリー75及び第2回転シャフト77が、自らの中心軸線(すなわちピッチ回転軸線Lp)を中心に第2シャフト回転方向D2へ回転する。その結果、第2支持部12が、第2回転シャフト77と一体的に、ピッチ回転軸線Lpを中心とした第2シャフト回転方向D2(すなわちピッチ方向Dp)に回転する。
【0077】
第2支持部12に連結される
図7に示すピッチ回転機構70において、第2プーリー75の第2シャフト回転方向D2(ひいてはピッチ方向Dp)は、第1プーリー74の第1シャフト回転方向D1と同じ向きである。
【0078】
なお
図7に示す例において、第1支持部11に連結されるピッチ回転機構70は、上述の第2支持部12に連結されるピッチ回転機構70と同様の構成を有する。ただし第1支持部11に連結されるピッチ回転機構70の伝達ギア71は、第1回転軸線L1を介し、第2支持部12に連結されるピッチ回転機構70の伝達ギア71とは反対側の対面に位置する。そのため第2出力ギア54が第1回転軸線L1を中心に回転する場合、第1支持部11及び第2支持部12のそれぞれに連結されるピッチ回転機構70間で、伝達ギア71及び第1回転シャフト72の第1シャフト回転方向D1は逆向きになる。
【0079】
そこで、第1支持部11に連結されるピッチ回転機構70において、第1プーリー74の第1シャフト回転方向D1が第2プーリー75の第2シャフト回転方向D2と逆向きになるように、伝達ベルト76は第1プーリー74及び第2プーリー75に巻き掛けられる。例えば、第2支持部12のための伝達ベルト76をプーリー74、75間でクロスさせることなく延在させる一方で、第1支持部11のための伝達ベルト76をプーリー74、75間でクロスさせつつ延在させてもよい。
【0080】
これにより第1支持部11に連結されるピッチ回転機構70では、第2シャフト回転方向D2が第1シャフト回転方向D1とは逆向きになる。その結果、第1支持部11のためのピッチ回転機構70と、第2支持部12のためのピッチ回転機構70との間で、第2シャフト回転方向D2を一致させることができ、ひいては第1支持部11及び第2支持部12のピッチ方向Dpを一致させることができる。
【0081】
上述のギアアセンブリ50、開閉移動機構60及びピッチ回転機構70を備える本実施形態の支持移動部40は、制御装置15(
図1参照)の制御下で、把持モード、ピッチ回転モード及び解放モードを行う。
【0082】
把持モードは、第1支持部11及び第2支持部12を、対象85を把持していない非把持状態から、対象85を挟んで把持する把持状態に移行する期間と、第1支持部11及び第2支持部12によって対象85を把持している期間とを含むモードである。なお第1支持部11及び第2支持部12によって対象85を把持しつつ回転させるための期間(例えばピッチ方向Dpへの回転のための期間)は、把持モードから除外される。
【0083】
具体的には、第1支持部11と第2支持部12との間に対象85が位置づけられている状態で、支持移動駆動装置16(
図1参照)から入力ギア51に正方向への回転動力が伝えられる。これにより、入力ギア51から各中間ギア52を介して第1出力ギア53に回転動力が伝えられ、第1出力ギア53から伝えられる動力によって、第1支持部11及び第2支持部12が互いに近づくように、開閉移動機構60が駆動される。その結果、第1支持部11及び第2支持部12は、徐々に対象85に近づき、最終的に対象85を挟んで把持する。なお、第1出力ギア53には入力ギア51からの動力が各中間ギア52を介して伝えられるため、第1出力ギア53の回転方向は、入力ギア51の回転方向とは逆向きになる。
【0084】
ピッチ回転モードは、第1支持部11及び第2支持部12を、対象85を把持している状態で、対象85とともにピッチ方向Dpに回転させるモードである。
【0085】
具体的には、第1支持部11及び第2支持部12によって対象85が把持されている状態で、支持移動駆動装置16(
図1参照)から入力ギア51に正方向への回転動力が伝えられる。これにより、入力ギア51から中間ギア52を介して第1出力ギア53に動力が伝えられ、第1支持部11及び第2支持部12を互いに近づけるように働く動力が、開閉移動機構60に伝わる。
【0086】
しかしながら既に対象85を把持している第1支持部11及び第2支持部12は、互いに対する接近が対象85によって制限されるため、対象85を把持しつつ静止した状態を維持する。そのため第1出力ギア53は、各中間ギア52を介して動力が伝えられるが、第1回転軸線L1を中心に回転することなく、回転位置が固定されたロック状態となる。
【0087】
各中間ギア52は、回転位置が固定された第1出力ギア53上で、入力ギア51から正回転方向の動力が伝えられるため、第1回転軸線L1を中心に正方向へ回転させられるように働く力が作用する。その一方で、各中間ギア52は、モード切替調整部58によって、第1回転軸線L1を中心とした正方向への回転を抑える回転抵抗力を受ける。そのため、入力ギア51から各中間ギア52に伝えられる正方向への回転動力が、モード切替調整部58によって各中間ギア52に作用する回転抵抗力以下の間は、各中間ギア52は第1回転軸線L1を中心に回転することなく静止状態を維持する。一方、入力ギア51から各中間ギア52に伝えられる正方向への回転動力が、モード切替調整部58によって各中間ギア52に作用する回転抵抗力よりも大きくなると、各中間ギア52は第1回転軸線L1を中心に回転する。
【0088】
このように入力ギア51から各中間ギア52に伝えられる第1回転軸線L1を中心とした回転方向の力が、回転抵抗力の最大値に基づいて定められるモード切替閾値以下の場合、各中間ギア52及び第2出力ギア54は、第1回転軸線L1を中心に回転しない。
【0089】
一方、入力ギア51から各中間ギア52に伝えられる第1回転軸線L1を中心とした回転方向への力が、当該モード切替閾値よりも大きい場合、各中間ギア52及び第2出力ギア54は、第1回転軸線L1を中心に回転する。具体的には、第1出力ギア53の回転がロックしている状態で、各中間ギア52は、入力ギア51からの動力によって、第1回転軸線L1及び第2回転軸線L2の各々を中心に回転し、入力ギア51と中間ギア52との間で転動する。これにより第2ギア支持シャフト56及び第2出力ギア54も、各中間ギア52とともに第1回転軸線L1を中心に回転する。
【0090】
なお第1出力ギア53が各中間ギア52を介して伝えられる動力によって第1出力ギア53が回転可能な間は、各中間ギア52は、入力ギア51からの動力によって、基本的に第1回転軸線L1を中心とした回転を行うことなく、第2回転軸線L2を中心に回転する。
【0091】
このようにして第2出力ギア54が第1回転軸線L1を中心に正方向へ回転することで、第2出力ギア54からピッチ回転機構70に動力が伝えられ、第1支持部11及び第2支持部12はピッチ回転機構70によってピッチ方向Dpに回転される。
【0092】
なおピッチ回転モードは、対象85が第1支持部11及び第2支持部12により把持されていることが前提になるため、上述の把持モード後に行われる。ただし、把持モードとピッチ回転モードとの間に任意の処理が行われてもよい。
【0093】
解放モードは、第1支持部11及び第2支持部12を、対象85を把持している把持状態から、対象85を解放する非把持状態に移行する期間を含むモードである。
【0094】
具体的には、第1支持部11及び第2支持部12が対象85を把持している状態で、支持移動駆動装置16(
図1参照)から入力ギア51に逆方向(すなわち上述の把持モードの際に入力ギア51に伝えられる回転動力とは逆向きの方向)に回転動力が伝えられる。これにより入力ギア51から各中間ギア52を介して第1出力ギア53に回転動力が伝えられ、第1支持部11及び第2支持部12が互いから離れるように、第1ラック61及び第2ラック62が第1出力ギア53によって駆動される。その結果、第1支持部11及び第2支持部12は、対象85から離れて、最終的に対象85を解放する。
【0095】
なお把持装置10においてピッチ回転モードが行われる場合、解放モードはピッチ回転モード後に行われる。対象85をピッチ方向Dpに回転させない場合、ピッチ回転モードは行われず、解放モードは把持モード後に行われる。また解放モードに先立って、任意の処理が行われてもよい。例えば、第1支持部11及び第2支持部12によって把持される対象85を載置面上又は載置面の直ぐ上に位置づけるように、第1支持部11及び第2支持部12を降下させた後、第1支持部11及び第2支持部12から対象85が解放されてもよい。
【0096】
図8は、把持モード及びピッチ回転モードにおける、時間(秒(s);X軸)と、第1支持部11及び第2支持部12によって対象にもたらされる把持力(ニュートン(N);Y軸)との間の関係例を示すグラフである。
【0097】
本件発明者は、本実施形態に基づく把持装置10(後述の
図9参照)を実際に製作し、当該把持装置10を使って
図8に示すデータを取得した。具体的には、対象85にフォースゲージを取り付けて、当該フォースゲージに把持力が作用するように把持装置10の第1支持部11及び第2支持部12に対象85を把持させた。
図8に示す把持力(Y軸)は、当該フォースゲージの測定値に基づく。
【0098】
図8に示す例では把持モード及びピッチ回転モードが連続的に行われ、把持移行期間t1、把持状態期間t2、把持力上昇期間t3及びピッチ回転期間t4が経時的に順次存在する。
【0099】
把持移行期間t1は、第1支持部11及び第2支持部12を、対象85を把持していない非把持状態から、対象85を挟んで把持する把持状態に移行した期間である。すなわち把持移行期間t1では、上述のように支持移動駆動装置16によって入力ギア51が正方向に回転され、第1支持部11及び第2支持部12が互いに近づくように、開閉移動機構60が駆動される。
【0100】
把持移行期間t1において、第1支持部11及び第2支持部12による把持力は、第1支持部11及び第2支持部12が対象85に接触した直後から増大し、把持基準値Gまで増大される。把持基準値Gは、対象85の把持に必要な力の基準値であり、対象85、第1支持部11(支持ベルト21)及び第2支持部12(支持ベルト31)の特性に応じて適宜決められる。
【0101】
把持状態期間t2は、第1支持部11及び第2支持部12によって対象85が把持されているが、第1支持部11及び第2支持部12によって対象85の回転(本例ではピッチ回転)が行われなかった期間である。
【0102】
具体的には、把持状態期間t2において、第1支持部11及び第2支持部12により把持されている対象85が、高さ方向(昇降方向De)に持ち上げられた。
図8に示す例では、昇降装置(図示省略)が把持装置10の全体を上昇させることによって対象85が持ち上げられたが、対象85の昇降は任意の装置によって実行可能である。このようにピッチ回転モードに先立って、対象85が第1支持部11及び第2支持部12とともに上昇されることで、その後のピッチ回転モードにおいて対象85を空中でピッチ方向Dpに回転させることができる。これにより、載置面によって対象85の回転が邪魔されることなく、対象85を精度良くピッチ方向Dpに回転させることができる。
【0103】
把持状態期間t2において、支持移動駆動装置16から入力ギア51に伝えられる動力は基本的に一定に保たれるように維持され、第1支持部11及び第2支持部12による把持力は把持基準値Gよりも大きくはならなかった。すなわち把持状態期間t2の間、支持移動駆動装置16から入力ギア51に正回転方向への力が伝え続けられたが、入力ギア51、中間ギア52及び第1出力ギア53は、基本的に回転することなく、回転位置が動かない状態を保持した。
【0104】
図8に示す例では、把持状態期間t2の間、支持移動駆動装置16として働くモータに一定の駆動電圧を供給し、支持移動駆動装置16から入力ギア51に一定のトルクがかかるように支持移動部40が駆動された。この場合、外乱がない理想的な状態では、第1支持部11及び第2支持部12による把持力はほぼ一定値(例えば把持基準値G又は把持基準値Gの近傍の値)に保たれるが、
図8に示す例では当該把持力がわずかに変動した。
【0105】
把持力上昇期間t3は、第1支持部11及び第2支持部12によって把持されている対象85を、ピッチ方向Dpに回転させるための移行期間(ピッチ移行期間)である。したがって把持力上昇期間t3において対象85は、第1支持部11及び第2支持部12によって把持されているが、ピッチ方向Dpに回転していない。
【0106】
把持力上昇期間t3において、支持移動駆動装置16から入力ギア51に伝えられる動力が徐々に増大され、それに伴って第1出力ギア53に伝えられる動力も徐々に増大し、その結果、第1支持部11及び第2支持部12による把持力も徐々に増大する。その一方で、第1回転軸線L1を中心とした回転を抑える回転抵抗力がモード切替調整部58から各中間ギア52に作用する。把持力上昇期間t3では、入力ギア51から各中間ギア52に伝えられる第1回転軸線L1を中心とした回転方向への力が、各中間ギア52に作用する回転抵抗力(特に回転抵抗力の最大値(すなわちモード切替閾値))以下である。
【0107】
ピッチ回転期間t4は、第1支持部11及び第2支持部12によって把持されている対象85が、ピッチ方向Dpに回転させられる期間である。すなわち入力ギア51から各中間ギア52に伝えられる第1回転軸線L1を中心とした回転方向への力が、モード切替閾値よりも大きくなることで、各中間ギア52及び第2出力ギア54が第1回転軸線L1を中心に回転する。このようにして第2出力ギア54が回転することで、ピッチ回転機構70が駆動され、第1支持部11及び第2支持部12が対象85とともにピッチ方向Dpへ回転する。
【0108】
このように第1支持部11、第2支持部12及び対象85のピッチ方向Dpへの回転は、モード切替調整部58によって各中間ギア52にもたらされる回転抵抗力の最大値に基づいてコントロールされる。換言すれば、モード切替調整部58によって各中間ギア52にもたらされる回転抵抗力の最大値を調節することで、第1支持部11、第2支持部12及び対象85のピッチ方向Dpへの回転を調整できる。したがって
図6及び
図7に示す例では、モード切替調整部58から第2出力ギア54に付与される回転抵抗力の最大値を調節することによって、ピッチ回転モードにおける第1支持部11及び第2支持部12による把持力やピッチ回転トルクなどを調整できる。
【0109】
[第3実施形態]
本実施形態において、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同一又は対応の構成要素には同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0110】
図9は、第3実施形態の一例に係る把持装置10を示す図であり、特に第2支持部12が把持姿勢Sgをとっている状態を示す。
図9において第1支持部11の支持ベルト21及び第2支持部12の支持ベルト31の図示が省略されているが、
図9に示す把持装置10は、上述の第1実施形態(
図1参照)と同様に、支持ベルト21、31を備える。
【0111】
図9に示す把持装置10は、特に
図1~
図3及び
図5~
図7と同様の構成を有するため、その構成及び作用の詳細な説明は省略する。
【0112】
なおモード切替調整部58は押圧部材58aを有し、第2出力ギア54の外周部に押圧部材58aが押し当てられることで、第2出力ギア54の回転を抑える回転抵抗力として働く摩擦力が、第2出力ギア54と押圧部材58aとの間に生じる。第2出力ギア54に対する押圧部材58aの押し当て力は調節可能であり、当該押し当て力を調節することによって、第2出力ギア54の回転を抑える回転抵抗力(ひいては各中間ギア52の回転を抑える回転抵抗力)が調整される。
【0113】
このように本実施形態に係る把持装置10は、上述の第1実施形態及び第2実施形態の組み合わせに基づいており、制御装置15(
図1参照)の制御下で、把持モード、ロール回転モード、ピッチ回転モード及び解放モードを行うことが可能である。なお把持モード、ロール回転モード、ピッチ回転モード及び解放モードの具体的な実行方法は、第1実施形態及び第2実施形態に関して上述されているので、ここでの説明は省略する。
【0114】
本実施形態の把持装置10は、例えば、把持モード、ロール回転モード、ピッチ回転モード及び解放モードの全てを実行してもよい。この場合、制御装置15の制御下で、把持モード、ロール回転モード、ピッチ回転モード及び解放モードが、この順番で実行される。また本実施形態の把持装置10は、把持モード及び解放モードを実行しつつ、ロール回転モード及びピッチ回転モードのうちの少なくともいずれか一方を実行しなくてもよい。
【0115】
以上説明したように上述の各実施形態の把持装置10によれば、限られた数のアクチュエータを使って対象を把持及び回転することができる。そのため各実施形態の把持装置10は、把持装置10を安価に構成するのに有利である。
【0116】
特に第1実施形態の把持装置10(特に
図1~
図3に示す把持装置10)によれば、単一の駆動源(支持移動駆動装置16)から出力される動力によって、対象85の把持及びロール回転を行うことができる。また第2実施形態の把持装置10によれば、単一の駆動源(支持移動駆動装置16)から出力される動力によって、対象85の把持及びピッチ回転を行うことができる。また第3実施形態の把持装置10によれば、単一の駆動源(支持移動駆動装置16)から出力される動力によって、対象85の把持及び2方向への回転(ロール回転及びピッチ回転)を行うことができる。
【0117】
また上述の各実施形態の把持装置10は、操作性にも優れている。例えば柔らかくて脆い食品のような対象85であっても、各実施形態の把持装置10は、対象85の変形や損傷を抑えつつ、対象85の把持及び回転を行うことが可能である。また第1実施形態及び第3実施形態の把持装置10によれば、対象85のロール回転及びピッチ回転の両方を行うことができるため、対象85を把持しつつ任意の方向に向けることができ、対象85の任意の箇所をあらゆる方向に向けることが可能である。このような把持装置10によれば、人手による動作により近い把持動作及び回転動作を、対象85に対して行うことが可能である。
【0118】
また各実施形態の把持装置10は、既存の装置(例えばスカラ型ロボット)に対しても簡単に適用可能であり、既存装置の一部を改造することで、上述の各実施形態の把持装置10と同等の機能を既存装置に持たせることが可能である。
【0119】
なお本件発明者は、上述の第1~第3実施形態の各々に基づく装置を実際に試作し、これらの試作装置に、対象85を把持する動作及び回転させる動作を行わせた。特に対象85として、形状及び硬さの異なる様々なもの(例えば冷凍食品、金属缶、紙の箱及び空のペットボトルなど)を準備した。その結果、いずれの実施形態に係る試作装置も、準備した各種の対象85を適切に把持することができ、また各種の対象85を回転(ロール回転及び/又はピッチ回転)させることができた。
【0120】
[食品取扱装置及び食品製造方法]
図10は、食品取扱装置90の一例を示す図である。
【0121】
図10に示す食品取扱装置90は、搬送装置91、検査システム92、不良食品処理システム93及び製造処理システム94を備える。
【0122】
搬送装置91は、制御装置15(
図1参照)による制御下で、食品である対象85を、検査システム92、不良食品処理システム93及び製造処理システム94に順次搬送する。搬送装置91の装置構成及び搬送方式は限定されない。一例として、搬送装置91は、対象85を継続的又は間欠的に搬送するベルトコンベアを具備してもよく、当該ベルトコンベアに複数の対象85が載せられてもよい。
【0123】
検査システム92は、制御装置15による制御下で、対象85の検査を行って、検査結果を制御装置15に送信する。検査システム92において行われる対象85の検査の内容及び手法は限定されない。一例として、検査システム92は、対象85の状態(例えば形状や表面特性)を検出可能なセンサ(例えばカメラ)を使って、対象85の状態の良否判定を行ってもよい。
【0124】
不良食品処理システム93は、制御装置15による制御下で、検査システム92による検査の結果から不良と判定された対象85に対し、処理を行う。不良食品処理システム93において行われる対象85に対する処理の内容及び手法は限定されない。不良食品処理システム93は、例えば、対象85の不良部分を直す処理を行ってもよいし、不良の対象85を搬送装置91から取り除いて後段に送られないようにしてもよい。
【0125】
製造処理システム94は、制御装置15による制御下で、対象85を使って食品を製造する食品製造方法を行う。製造処理システム94において行われる食品製造の内容及び手法は限定されない。製造処理システム94は、例えば、対象85に対して調味料などの他の食材を付与したり、対象85を加熱及び/又は冷却したり、対象85を成形したりしてもよい。
【0126】
なお食品取扱装置90は、上述の検査システム92、不良食品処理システム93及び製造処理システム94以外の各種のシステム及び装置を備えていてもよい。
【0127】
食品取扱装置90の各種のシステム及び装置は、上述の把持装置10を具備することが可能である。
【0128】
例えば検査システム92が把持装置10を具備する場合、把持装置10が対象85を把持及び/又は回転させることで、検査の実行に最適な位置及び姿勢に対象85を調整することができる。対象85の検査箇所が搬送装置91により覆われている場合でも、把持装置10が対象85を搬送装置91から持ち上げたり、検査箇所を検査装置(図示省略)に向けるように対象85を回転させたりすることで、検査箇所を適切に検査できる。
【0129】
また不良食品処理システム93が把持装置10を具備する場合、把持装置10が対象85を把持及び/又は回転させることで、不良部分の修正に最適な位置及び姿勢に対象85を調整したり、不良の対象85を搬送装置91から取り除いたりできる。対象85の不良部分が搬送装置91によって覆われている場合でも、把持装置10が対象85を搬送装置91から持ち上げたり、不良部分を不良修正装置(図示省略)に向けるように対象85を回転させたりすることで、不良部分を適切に修正できる。
【0130】
また製造処理システム94が把持装置10を具備する場合、把持装置10が対象85を把持及び/又は回転させることで、対象85を使った食品製造に最適な位置及び姿勢に対象85を調整することができる。対象85のうち搬送装置91によって覆われている部分に対しても調理処理を加える必要がある場合であっても、把持装置10が対象85を搬送装置91から持ち上げたり、回転させたりすることで、当該部分の調理処理を適切に実行できる。
【0131】
本明細書で開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が全体的に又は部分的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と組み合わされてもよい。また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果がもたらされてもよい。
【0132】
上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置を製造する方法或いは使用する方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【0133】
[付記]
上述からも明らかなように、本開示は以下の態様を含む。
【0134】
[態様1]
相互間の間隔が可変であり、対象を挟んで把持可能な第1支持部及び第2支持部を備え、
前記第2支持部は、
支持ベルトと、
前記支持ベルトを移動可能に支持し、且つ、前記支持ベルトの姿勢を少なくともロール回転姿勢に可変的に調整するベルト支持部と、
を有し、
前記ロール回転姿勢に調整された前記支持ベルトに前記対象が載せられた状態で前記支持ベルトが移動させられることで、前記対象はロール方向に回転される、
把持装置。
【0135】
[態様2]
前記支持ベルトは、無端形状を有し、
前記ベルト支持部は、前記支持ベルトを支持する複数の支持ローラと、前記複数の支持ローラを回転可能に支持する支持本体と、を有し、
前記複数の支持ローラは、回転によって前記支持ベルトの移動を推進する移動推進ローラを含み、
前記支持本体は、第1支持ブロックと、前記第1支持ブロックに対する相対的な姿勢が外力に応じて変わる第2支持ブロックと、を有し、
前記対象が載せられている載置面に対して前記第2支持部が押しつけられつつ前記第2支持部が移動されることによって、前記移動推進ローラが、前記載置面上を転がりつつ、前記支持ベルトを前記ロール回転姿勢の状態で移動させる、
態様1に記載の把持装置。
【0136】
[態様3]
ベルト移動駆動装置を更に備え、
前記支持ベルトは、無端形状を有し、
前記ベルト支持部は、前記支持ベルトが掛け渡される複数の支持ローラと、前記複数の支持ローラを回転可能に支持する支持本体と、を有し、
前記複数の支持ローラは、前記支持ベルトに係合する移動推進ローラを含み、
前記ベルト移動駆動装置が前記移動推進ローラを回転させるように駆動することで、前記支持ベルトを前記ロール回転姿勢の状態で移動させる、
態様1又は2に記載の把持装置。
【0137】
[態様4]
前記第1支持部及び前記第2支持部の相互間の間隔を変えるように前記第1支持部及び前記第2支持部を把持開閉方向に移動させ、またピッチ回転軸線を中心に前記第1支持部及び前記第2支持部を回転させる支持移動部を更に備える、
態様1~3のいずれかに記載の把持装置。
【0138】
[態様5]
前記支持移動部は、
支持移動駆動装置から伝えられる動力によって、第1回転軸線を中心に回転される入力ギアと、
前記入力ギアに係合する中間ギアと、
前記中間ギアに係合する第1出力ギアと、
前記中間ギアに取り付けられ、前記中間ギアとともに前記第1回転軸線を中心に回転可能に設けられる第2出力ギアと、
前記第1出力ギアから伝えられる動力によって、前記第1支持部及び前記第2支持部を前記把持開閉方向に移動させる開閉移動機構と、
前記第2出力ギアから伝えられる動力によって、前記ピッチ回転軸線を中心に前記第1支持部及び前記第2支持部を回転させるピッチ回転機構と、
を備える、
態様4に記載の把持装置。
【0139】
[態様6]
前記第1回転軸線を中心とした前記中間ギアの回転を抑える回転抵抗力を、前記中間ギアに作用させる回転調整部を備え、
前記入力ギアから前記中間ギアに伝えられる前記第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、前記回転抵抗力の最大値に基づいて定められるモード切替閾値以下の場合、前記中間ギア及び前記第2出力ギアは、前記第1回転軸線を中心に回転せず、
前記入力ギアから前記中間ギアに伝えられる前記第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、前記モード切替閾値よりも大きい場合、前記中間ギア及び前記第2出力ギアは、前記第1回転軸線を中心に回転する、
態様5に記載の把持装置。
【0140】
[態様7]
相互間の間隔が可変であり、対象を挟んで把持可能な第1支持部及び第2支持部と、
前記第1支持部及び前記第2支持部の相互間の間隔を変えるように前記第1支持部及び前記第2支持部を把持開閉方向に移動させ、またピッチ回転軸線を中心に前記第1支持部及び前記第2支持部を回転させる支持移動部と、
回転調整部と、を備え、
前記支持移動部は、
支持移動駆動装置から伝えられる動力によって、第1回転軸線を中心に回転される入力ギアと、
前記入力ギアに係合する中間ギアと、
前記中間ギアに係合する第1出力ギアと、
前記中間ギアに取り付けられ、前記中間ギアとともに前記第1回転軸線を中心に回転可能に設けられる第2出力ギアと、
前記第1出力ギアから伝えられる動力によって、前記第1支持部及び前記第2支持部を前記把持開閉方向に移動させる開閉移動機構と、
前記第2出力ギアから伝えられる動力によって、前記ピッチ回転軸線を中心に前記第1支持部及び前記第2支持部を回転させるピッチ回転機構と、を有し、
前記回転調整部は、前記第1回転軸線を中心とした前記中間ギアの回転を抑える回転抵抗力を、前記中間ギアに作用させ、
前記入力ギアから前記中間ギアに伝えられる前記第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、前記回転抵抗力の最大値に基づいて定められるモード切替閾値以下の場合、前記中間ギア及び前記第2出力ギアは、前記第1回転軸線を中心に回転せず、
前記入力ギアから前記中間ギアに伝えられる前記第1回転軸線を中心とした回転方向への力が、前記モード切替閾値よりも大きい場合、前記中間ギア及び前記第2出力ギアは、前記第1回転軸線を中心に回転する、
把持装置。
【0141】
[態様8]
把持の前記対象が食品である態様1~7のいずれか一項に記載の把持装置を備える食品取扱装置。
【0142】
[態様9]
態様1~7のいずれか一項に記載の把持装置によって食品を把持する工程を含む食品製造方法。
【符号の説明】
【0143】
10 把持装置、11 第1支持部、12 第2支持部、15 制御装置、16 支持移動駆動装置、21 支持ベルト、22 ベルト支持部、30 ベルト移動駆動装置、31 支持ベルト、32 ベルト支持部、33a 方向転換ローラ、33b 係合ローラ、34a 第1支持ブロック(支持本体)、34b 第2支持ブロック(支持本体)、36 揺動軸、40 支持移動部、41 支持アーム、50 ギアアセンブリ、51 入力ギア、52 中間ギア、53 第1出力ギア、53a 第1歯部、53b 第2歯部、54 第2出力ギア、54h 固定孔、55 第1ギア支持シャフト、56 第2ギア支持シャフト、58 モード切替調整部、58a 押圧部材、60 開閉移動機構、61 第1ラック、62 第2ラック、70 ピッチ回転機構、71 伝達ギア、72 第1回転シャフト、73 ワンウェイホイール、74 第1プーリー、75 第2プーリー、76 伝達ベルト、77 第2回転シャフト、85 対象、90 食品取扱装置、91 搬送装置、92 検査システム、93 不良食品処理システム、94 製造処理システム、D1 第1シャフト回転方向、D2 第2シャフト回転方向、Db ベルト移動方向、De 昇降方向、Df 係合ローラ回転方向、Dg 把持開閉方向、Dp ピッチ方向、Dr ロール方向、G 把持基準値、L1 第1回転軸線、L2 第2回転軸線、Lp ピッチ回転軸線、s 載置面、Sg 把持姿勢、Sr ロール回転姿勢、t1 把持移行期間、t2 把持状態期間、t3 把持力上昇期間、t4 ピッチ回転期間