(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024631
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】水田用自動航行ロボット、及びその管理システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250213BHJP
A01M 21/02 20060101ALI20250213BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20250213BHJP
【FI】
A01B69/00 303F
A01M21/02
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128886
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】513224032
【氏名又は名称】株式会社ナチュラルスタイル
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 優一
【テーマコード(参考)】
2B043
2B121
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA10
2B043BB07
2B043EA04
2B043EA35
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB18
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC16
2B121AA19
2B121DA70
2B121EA26
2B121FA04
5H301AA03
5H301AA04
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】 長時間の除草作業を無人で行って省力化することができ、しかも、事前の経路入力等の準備作業も不要で複数の機体の同時使用も容易な水田用自動航行ロボット、及びその管理システムを提供すること。
【解決手段】 水田上に浮遊可能な船体と、この船体を水田上で航行させるための推進装置と、前記船体の航行方向を自動的に操作する自動操船装置と、を含んで構成し、前記自動操船装置は、船体の位置座標を特定するGPS装置と、このGPS装置から得られる船体の過去の経路データを記憶する経路記憶手段と、この経路記憶手段の過去の経路データに基づき、過去の経路との重複を避けるように航行方向を演算出力する針路演算手段と、この針路演算手段で出力された航行方向に基づき船体の航行方向を推進装置または舵により自動制御する針路制御手段とを備えた構成を採用した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田上に浮遊可能な船体と、この船体を水田上で航行させるための推進装置と、前記船体の航行方向を自動的に操作する自動操船装置と、を含んで成り、
前記自動操船装置は、船体の位置座標を特定するGPS装置と、このGPS装置から得られる船体の過去の経路データを記憶する経路記憶手段と、この経路記憶手段の過去の経路データに基づき、過去の路との重複を避けるように航行方向を演算出力する針路演算手段と、この針路演算手段で出力された航行方向に基づき船体の航行方向を推進装置または舵により自動制御する針路制御手段と、を備えた、水田用自動航行ロボット。
【請求項2】
前記自動操船装置に、前記GPS装置から得られる船体の現在地の位置座標が、過去の経路データと比較して一定時間変化しないときに、船体の航行方向を自動的に反転制御する針路反転制御手段を備えた、請求項1または2に記載の水田自動航行ロボット。
【請求項3】
前記針路反転制御手段によって船体の航行方向を反転させたときに、前記針路演算手段による過去の経路との重複を避けた航行方向の演算出力処理が行われる、前記請求項2記載の水田用自動航行ロボット。
【請求項4】
同時に使用される同種のロボットに対して過去の経路データを所定のタイミングで自動送信する自動送信手段、並びに前記同種のロボットから送信された経路データの受信手段を備えると共に、前記自動操船装置の経路記憶手段によって、前記同種のロボットから受信した過去の経路データが記憶され、針路演算手段が前記同種のロボット同士で共有される過去の経路データに基づき、過去の経路との重複を避けるように航行方向を演算出力する、請求項1または2に記載の水田用自動航行ロボット。
【請求項5】
請求項1記載の水田用自動航行ロボットと、この水田用自動航行ロボットとネットワークを介して接続されたロボット管理用端末とを含んで構成され、前記水田用自動航行ロボットに、過去の経路データを所定のタイミングでロボット管理用端末に自動送信する自動送信手段をが設けられた、水田用自動航行ロボットの管理システム。
【請求項6】
前記ロボット管理用端末が、水田のGPSマップデータの受信手段と、前記水田用自動航行ロボットから送信された経路データの記憶手段と、GPSマップデータに経路データを入力して画像出力する経路画像出力手段と、を備えた、請求項5記載の水田用自動航行ロボットの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田上を自動航行して除草等を行う水田用自動航行ロボット、及びその管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水稲などの作物を育成する水田において、水田中に雑草が繁殖すると作物から水分や養分を奪い、品質低下などの悪影響を及ぼすため、雑草を除去する除草機が開発されている。除草機としては、歩行型や乗用型、田植機などに装着するアタッチメント型など、種々のものが存在しているが、大型の機械は取り扱いが大変であり、有人の作業は労力も大きいため、作業を手軽に行えないという問題がある。
【0003】
そこで、従来においては、水田中に浮かべて使用できる小型の除草装置も開発されている(特許文献1~6参照)。しかし、これら従来の除草装置のうち、リモコン操作するタイプは常時有人で作業を行う必要があるため、長時間の除草作業は難しい。また予め設定された経路を航行させるタイプは、除草装置が同じ経路を繰り返し通過するため、経路とそれ以外の部分で除草ムラが大きくなり易い。
【0004】
また上記経路を予め設定するタイプの除草機において、できるだけムラなく除草を行うためには、除草対象となる水田の正確なマップ情報を入力して、そのマップ情報に経路を細かく入力する必要があったが、その方法だと準備作業に時間が取られてしまい迅速に除草作業に入ることができない。加えて、複数の除草機を同じ水田で使用する場合に、除草機同士が衝突しない経路を選定する必要があるため、経路選定の難易度も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-152775号公報
【特許文献2】特開2020-162492号公報
【特許文献3】特開2021-45095号公報
【特許文献4】特開2021-185895号公報
【特許文献5】特開2017-163922号公報
【特許文献6】特許第7291425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約すると長時間の除草作業を無人で行って省力化することができ、しかも、事前の経路入力等の準備作業も不要で複数の機体の同時使用も容易な水田用自動航行ロボット、及びその管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、水田上に浮遊可能な船体と、この船体を水田上で航行させるための推進装置と、前記船体の航行方向を自動的に操作する自動操船装置と、を含んで構成し、前記自動操船装置は、船体の位置座標を特定するGPS装置と、このGPS装置から得られる船体の過去の経路データを記憶する経路記憶手段と、この経路記憶手段の過去の経路データに基づき、過去の経路との重複を避けるように航行方向を演算出力する針路演算手段と、この針路演算手段で出力された航行方向に基づき船体の航行方向を推進装置または舵により自動制御する針路制御手段とを備えた構成を採用した(効果は後述する)。
【0008】
また本発明では、上記自動操船装置に、前記GPS装置から得られる船体の現在地の位置座標が、過去の経路データと比較して一定時間変化しないときに、船体の航行方向を自動的に反転制御する針路反転制御手段を備えることで、水田の周縁部でロボットを自動反転させることができ、近接・接触センサも不要となる。
【0009】
また本発明では、上記針路反転制御手段によって船体の航行方向を反転させたときに、前記針路演算手段による過去の経路との重複を避けた航行方向の演算出力処理が行われるようにすることで、経路の重複を避けて反転航行させることができる。
【0010】
また本発明では、上記同時に使用される同種のロボットに対して過去の経路データを所定のタイミングで自動送信する自動送信手段、並びに前記同種のロボットから送信された経路データの受信手段を備えると共に、前記自動操船装置の経路記憶手段によって、前記同種のロボットから受信した過去の経路データが記憶され、針路演算手段が前記同種のロボット同士で共有される過去の経路データに基づき、過去の経路との重複を避けるように航行方向を演算出力する。これによりロボット同士の接近時や一定時間の経過時に複数のロボット同士が過去の経路データを共有して最適な経路を算出できる。
【0011】
また本発明では、上記水田用自動航行ロボットと、この水田用自動航行ロボットとネットワークを介して接続されたロボット管理用端末とを含んで水田用自動航行ロボットの管理システムを構成し、上記水田用自動航行ロボットに、過去の経路データを所定のタイミングでロボット管理用端末に自動送信する自動送信手段を設けることで、一定時間の経過時や反転時にロボット管理用端末でロボットの経路データを確認できる。
【0012】
また本発明では、上記ロボット管理用端末に、水田のGPSマップデータの受信手段と、前記水田用自動航行ロボットから送信された経路データの記憶手段と、GPSマップデータに経路データを入力して画像出力する経路画像出力手段と、を備えることで、水田上におけるロボットの過去の経路を分かり易く確認できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水田用自動航行ロボットは、GPS装置によって船体の現在地の位置座標を取得して経路データを記憶し、記憶した経路データに基づいて、過去の経路を避けるように針路を自動で算出することができるため、事前の経路入力の必要がなくロボットを水田上に浮かべて起動させるだけで迅速に除草作業に入ることができる。また事前の経路入力が不要であるため、同じ水田で複数のロボットを同時使用することも容易となる。
【0014】
また本発明の水田用自動航行ロボットは、過去の経路を避けるように針路を選択するようにしたことで、水田全体をムラなく航行させることができるため、ロボットを長時間航行させれば水田全体をムラなく除草することができる。更に本発明の水田用自動航行ロボットは、長時間の除草作業を無人で行うことができるため、水田の除草作業の労力を軽減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態における水田用自動航行ロボットを表す全体斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態における水田用自動航行ロボットのソーラーパネルを外した状態を表す平面図および底面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態における水田用自動航行ロボット及びその管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第一実施形態における水田用自動航行ロボットの処理の流れを示す処理フロー図である。
【
図5】本発明の第一実施形態における水田用自動航行ロボットの処理の流れを示す処理フロー図である。
【
図6】本発明の第一実施形態におけるロボット管理用端末で出力される経路画面を示す説明図である。
【
図7】本発明の第一実施形態におけるロボット管理用端末で出力される別の経路画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を
図1~
図6に基づいて説明する。なお図中、符号Rで指示するものは、水田用自動航行ロボットであり、符号1で指示するものは、船体である。また符号2で指示するものは、推進装置であり、符号3で指示するものは、自動操船装置である。また符号4で指示するものは、バッテリーであり、符号5で指示するものは、ソーラーパネルである。また符号6で指示するものは、ロボット管理用端末である。
【0017】
「水田用自動航行ロボット及びその管理システムのハードウェア構成」
[1]水田用自動航行ロボット
[1-1]基本構成
本実施形態の水田用自動航行ロボットRのハードウェア構成について
図1~
図3に基づき説明する。まず本実施形態では、
図1及び
図2(a)(b)に示すように自動航行ロボットRを水田上に浮遊可能な船体1から構成し、更にこの船体1に、
図3に示すように水田上で航行させるための推進装置2と、船体1の航行方向を自動的に操作する自動操船装置3を設けて構成している。自動航行ロボットRの推進装置2と自動操船装置3は電気的に接続されており、自動操船装置3から送られる信号に基づき推進装置2を制御される。またこれらの電源としてバッテリー4を船体1に内蔵しており、本実施形態ではソーラーパネル5によって電気の供給を行えるようにしている。
【0018】
[1-2]船体
上記船体1については、本実施形態では発泡樹脂材料から船体1を形成しているが、船体1の材料は特に限定されず、プラスチック材料や木材などを使用することもできる。また上記船体1には、
図2(a)(b)に示すように平面視の中央部分に空洞部11を設けて、この空洞部11の上下中間位置に基板12を設けると共に、底面部に左右を仕切る仕切り部13を形成している。なお船体1の基板12は、本実施形態では船体1から脱着可能に構成しているが船体1と一体とすることもできる。また船体1の仕切り部13は、本実施形態では推進装置2のスクリュー21の数に合わせて中央に1つ設けているが、スクリュー21の数が3以上の場合には、仕切り部23を複数設けることもできる。また船体1の全体形状についても、本実施形態ではフロント側を円弧型として前後を識別できる形態としているが、前後を同形状として前後を区別しない形態とすることもできる。
【0019】
[1-3]推進装置
次に上記推進装置2については、
図2(a)(b)及び
図3に示すように本実施形態では上記船体1の底面部に配置された左右のスクリュー21、これら各スクリュー21を回転させるための駆動モータ22、これらの駆動モータ22を制御するためのモータ制御部23、並びに動力伝達機構として駆動モータ22の駆動軸とスクリュー21の従動軸を繋ぐ伝動ベルト24から構成している。これによりモータ制御部23からの制御信号によって左側駆動モータ22aと右側駆動モータ22bが駆動し、それぞれの駆動モータ22の駆動軸の回転が伝動ベルト24を介して左側スクリュー21aと右側スクリューの従動軸に伝わり、左右のスクリュー21をそれぞれ回転させて船体1を水上で前進させることが可能となっている。
【0020】
上記スクリュー21に関しては、「スクリュープロペラ」と同義であり、本実施形態では歩きメディアン・スクリューを使用しているが、スクリューの種類はこれに限定されず、例えば二重反転プロペラや可変ピッチプロペラ、アジマススラスター、ハイスキュープロペラ、ポンプ・ジェット、サーフェスプロペラなどを使用することもできる。また推進装置2として、ウォータージェットや外輪、回転ブラシ(詳しくは後述する)、風力推進装置などを使用することもできる。また上記スクリュー21の左右については、平面視において船体1のフロントを上側とした場合の左右方向であり、
図2(b)の底面図では左右が逆となる。その他、スクリュー21の数や材質、大きさなども船体1の大きさや用途に応じて適宜変更できる。
【0021】
上記駆動モータ22に関しては、本実施形態ではDCモータを使用し、船体1の基板12に固定している。上記左側駆動モータ22aは、左側スクリュー21aに対応する駆動モータ22、上記右側駆動モータ22bは、右側スクリュー21bに対応する駆動モータ22を意味し、駆動モータ22の左右位置や上下位置を特定するものではない。その他、駆動モータ22の数や種類なども上記スクリュー21の数や種類に応じて適宜変更できる。
【0022】
上記モータ制御部23に関しては、所定のプログラムと後述の自動操船装置3から送られたデータに基づき駆動モータ22に制御信号を送信する電子機器(マイコン)であり、本実施形態ではモータ制御部23を船体1の基板12に固定している。その他、駆動モータ23の数や種類なども上記駆動モータ22の数や種類に応じて適宜変更できる。
【0023】
上記伝動ベルト24に関しては、上記駆動モータ22の駆動軸とスクリュー21の従動軸の動力伝達機構であり、平ベルトやVベルト、歯付きベルトなどの種類がある。また伝動ベルト24の代わりにローラーチェーンやサイレントチェーンなどを用いることもできる。駆動軸と従動軸の回転数やトルクは、プーリ比やギア比、減速装置などを用いて適宜調整することができる。また動力伝達機構が底面部に露出しないようにカバー等を取り付けることもできる。その他、伝動ベルトの数や種類なども上記駆動モータ22の数や種類に応じて適宜変更できる。
【0024】
[1-4]自動操船装置
次に上記自動操船装置3については、
図2(a)及び
図3に示すように主記憶部31(メモリ等)、制御部32(CPU等)、演算部33(CPU等)、補助記憶部34(ハードディスク、SSD等)、GPS装置35、並びに経路データ送信部36を備えたコンピュータから構成している。この自動操船装置3の補助記憶部34は、
図3に示すように経路データ記憶部34a、経路変更プログラム記憶部34b、針路制御プログラム記憶部34c、針路反転制御プログラム記憶部34d、および自動送信制御プログラム記憶部34eを有している。これらのハードウェアをソフトウェアで連動させて装置の記憶手段、演算手段、出力手段、制御手段、送信手段としている。
【0025】
上記GPS装置35に関しては、
図3に示すように位置座標受信部35aおよびマップデータ受信部35bを備え、外部と無線で通信可能に構成されている。上記経路データ送信部36に関しても、後述のロボット管理用端末6や他の自動航行ロボットRに無線で通信可能に構成されている。また上記自動操船装置3には、他の自動航行ロボットRから送信される経路データを受信するための経路データ受信部を設けることもできる(図示せず)。
【0026】
[1-5]バッテリー
次に上記バッテリー4については、上記推進装置2や自動操船装置3に電気を供給するための電源であり、本実施形態ではバッテリー4を船体1の基板12に固定し、推進装置2や自動操船装置3に電気的に接続している。また本実施形態では、バッテリー4を後述のソーラーパネル3とも電気的に接続している。その他、バッテリー4の種類や数などは、上記駆動モータ22の首里や自動航行ロボットRの連続稼働時間、蓄電性能に応じて適宜変更できる。
【0027】
[1-6]ソーラーパネル
次に上記ソーラーパネル5については、太陽光により発電した電気を上記バッテリー4に供給するための機器であり、本実施形態ではソーラーパネル5を船体1の空洞部11の上側開口部に蓋をするように取り付けているが、ソーラーパネル5の取り付け位置は、これに限定されず、船体1の形状に応じて任意の位置に配置できる。またこのソーラーパネル5により日中、バッテリー4を充電しなくとも自動航行ロボットRを連続稼働することができ、日中発電した電気を利用して夜間の稼働も可能になる。
【0028】
[2]ロボット管理用端末
次に上記水田用自動航行ロボットRの管理システムのハードウェア構成について説明する。本実施形態では、上記自動航行ロボットRとネットワークを介してロボット管理用端末6を接続して水田用自動航行ロボットの管理システムを構成している。ロボット管理用端末6は、
図3に示すように主記憶部61(メモリ等)、演算部62(CPU等)、制御部63(CPU等)、補助記憶部64(ハードディスク、SSD等)を備え、更に入力部65(入力手段)と表示部16(出力手段)を備えたコンピュータ端末から構成している。コンピュータ端末としては、通信機能付きのデスクトップPCやノートPC、タブレット、スマートフォン、PDAなどを使用できる。そして、これらのハードウェアをソフトウェアで連動させて装置の記憶手段、入力手段および出力手段としている。
【0029】
なお上記補助記憶部64に関しては、
図3に示すように少なくとも経路データ記憶部64aおよび経路画像生成プログラム記憶部64bを有している。また上記ロボット管理用端末6に、マップデータ受信部を設けてネットワークを介して外部からマップデータを取得可能に構成し、更に必要に応じて上記補助記憶部64にマップデータ記憶部を設けることもできる。
【0030】
また本実施形態では、ロボット管理用端末6を一つのコンピュータ端末から構成しているが、サーバクライアント等の分散システムやクラウドシステム等を採用して複数のコンピュータを協働して機能を実現することもでき、ロボット管理用端末6の機能の一部として外部のハードウェア(WebサーバやDBサーバ等)を利用することもできる。
【0031】
「水田用自動航行ロボット及びその管理システムのソフトウェア構成」
[1]経路記憶手段
水田用自動航行ロボット及びその管理システムのソフトウェア構成について
図4の処理フローに沿って説明する。まず
図4の(1)経路データ記憶処理のステップでは、自動航行ロボットRの推進装置2を起動し、航行を開始した後、自動操船装置3のGPS装置35の位置座標受信部35aで取得した現在地の座標データに基づき自動航行ロボットRの過去の経路データを経路データ記憶部34aに記憶する。これにより
図4の(2)経路データの読み出しのステップにおいて自動航行ロボットRの過去の経路データを参照することが可能となる。
【0032】
[2]針路演算手段
次に
図4の(3)針路方向の演算処理のステップでは、上記(2)で読み出した過去の経路データに基づき、過去の経路との重複を避けるように航行方向を演算出力する。この際、航行方向を演算するための経路変更プログラムのアルゴリズムとしては特に限定されないが、例えば、過去の経路との重複また交差が少ない針路を選択するものや、水田上において過去の経路データから一度も通っていない領域に向けて針路を選択するものや、過去の経路と異なる方向に針路を選択するものなどが挙げられる。
【0033】
[3]針路制御手段
次に
図3の(4)駆動モータの制御処理のステップでは、上記(3)で演算出力した航行方向(針路データ)に基づき、駆動モータ制御部23に信号を送信して左右のスクリュー21の回転数を調節して船体1の航行方向を推進装置2により自動制御する。例えば、左側駆動モータ22a(または右側駆動モータ22b)の出力を上げて左側スクリュー21a(または右側スクリュー21b)の回転数を上げれば、船体1の航行方向を左方向(または右方向)に旋回させることができる。これにより自動航行ロボットRを水田全体に対して満遍なく航行させることができ、水田上における航行頻度のムラを解消することができる。なお上記の針路制御プログラムは、推進装置2の種類に合わせて適宜変更できる。
【0034】
[4]針路反転制御手段
また
図4の(5)障害物位置データ記憶処理、及び(6)針路反転制御手段のステップでは、自動航行ロボットRが障害物(水田の畦や柵等)に接近または当接した場合に、その位置を障害物位置データとして記憶し、更に船体1の航行方向を自動的に反転制御する(順序は逆でもよい)。なお本実施形態の針路反転制御プログラムは、GPS装置35から得られる船体1の現在地の位置座標が、過去の経路データと比較して一定時間変化しないときに障害物に当接したと判断する。またこれ以外にも、予め入力または受信した水田のマップデータに基づき、畦の位置座標に近付いたときに船体1の反転制御を行うこともできる。これにより近接・接触センサを使用せずに水田の周縁部で自動航行ロボットRを自動反転させることができる。なお近接・接触センサの使用は排除するものではなく、これらのセンサと針路反転制御プログラムを組み合わせて制御を行うこともできる。
【0035】
また上記障害物位置データは補助記憶部に記憶し、それを針路方向の演算処理時に読み出して障害物を避けるように針路計算を行うこともできる。上記針路反転制御手段によって船体1の航行方向を反転させた後は、
図3の(1)のステップに戻り、その後、(2)(3)のステップに進んで針路演算手段による過去の経路との重複を避けた航行方向の演算出力処理を行う。これにより船体1を反転制御した後、過去の経路と重複しないように船体1の針路制御を行うことができる。
【0036】
[5]他ロボットへの自動送信手段について
また本実施形態では、複数の自動航行ロボットRを同じ水田上で同時に航行させる場合に、同時に使用される同種のロボットに対して過去の経路データを所定のタイミングで自動送信することもできる。この自動送信プログラムとしては、例えば、
図5の(7)経路データ送信処理のステップで示すように自動航行ロボットR同士が接近したタイミングで経路データの送受信を行うこともでき、また一定時間経過時に同じ水田上で航行する全てのロボットが互いに送受信を行って経路データを共有することもできる。自動航行ロボットR同士の接近は、GPS装置35による現在地の位置座標に基づいて行うこともでき、近接・接触センサを用いて行うこともできる。これらの経路データの送受信は、自動操船装置3の経路データ送信部36及び受信部を用いて行われ、受信した過去の経路データは経路データ記憶部34aに記憶される。これにより同じ水田上を航行する複数のロボット同士が過去の経路データを共有することができ、更に針路演算手段によって共有された経路データに基づき、過去の経路との重複を避けるように航行方向を演算出力することで、他のロボットの経路とも重複しない最適な経路を算出できる。なお経路データと共に上記障害物位置データの共有を行うこともできる。
【0037】
[6]ロボット用管理端末への自動送信手段について
また
図4の(7)経路データ送信処理のステップでは、航行時に一定時間が経過した際に自動航行ロボットRからロボット管理用端末6に過去の経路データを自動送信する。またロボット管理用端末6への自動送信処理は、船体1の針路反転時に行うこともできる。またこれらの経路データの送受信は、自動操船装置3の経路データ送信部36、及びロボット管理用端末の経路データ受信部67を用いて行われ、受信した過去の経路データは経路データ記憶部64aに記憶される。これにより、一定時間の経過時や針路反転時にロボット管理用端末6において自動航行ロボット6の経路データを確認することができる。なお本実施形態では、経路データと共に上記障害物位置データも自動送信される。
【0038】
[7]ロボット管理用端末の経路画像生成・出力手段について
上記ロボット管理用端末6では、経路画像生成プログラムによってマップデータ受信部で受信した水田のGPSマップデータに、自動航行ロボットRから受信した経路データ(及び障害物位置データ)を入力して表示部66に経路画面Dとして画像出力することができる。これにより
図6及び
図7に示すように、水田上におけるロボットの過去の経路履歴を経路画面Dで分かり易く確認することができる。なお本実施形態では、航行した経路を線状に描き、船体1を反転させた位置を点で表示している。なお複数の自動航行ロボットRを同時使用する場合には、ロボット管理用端末6から各ロボットに経路データや障害物位置データを送信してこれらの情報共有を行うこともできる。
【0039】
「その他の変更例について」
[1]舵による針路制御手段
本実施形態では、推進装置2のスクリュー21によって針路を制御しているが、必ずしもスクリュー21を用いて針路を制御する必要はなく、自動航行ロボットRに舵を設けてこの舵の角度を変更することで針路を制御することもできる。舵の種類としては、特に限定されず、例えば、普通舵や吊り舵、釣合舵、シリング・ラダー、ベックツイン・ラダーなどを採用できる。
【0040】
[2]推進装置に回転ブラシを使用
本実施形態では、推進装置2にスクリュー21を用いているが、特開2020-162492号や特開2016-152775号などに記載されているような除草用の回転ブラシを船体1の中央、左右または前後に設けてこれを回転させることで推進装置2の機能を発揮させることもできる。なお除草用の回転ブラシとは、回転軸の周囲にナイロン等の毛部材を備え、これらの毛部材が回転時に水中を掻くことで、水田中に生えた雑草を搦ませて取り除くことができるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 船体
11 空洞部
12 基板
13 仕切り部
2 推進装置
21 スクリュー
21a 左側スクリュー
21b 右側スクリュー
22 駆動モータ
22a 左側駆動モータ
22b 右側駆動モータ
23 モータ制御部
24 伝動ベルト
3 自動操船装置
31 主記憶部
32 制御部
33 演算部
34 補助記憶部
35 GPS装置
36 経路データ送信部
4 バッテリー
5 ソーラーパネル
6 ロボット管理用端末
61 主記憶部
62 制御部
63 演算部
64 補助記憶部
65 入力部
66 表示部
67 経路データ受信部
R 自動航行ロボット
D 経路画面