(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024641
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】推定装置、モデル学習装置、推定方法、モデル学習方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B32B 43/00 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
B32B43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128905
(22)【出願日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 一平
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA00A
4F100CC00B
4F100EH46B
4F100JB01
4F100JD02
4F100JD16
4F100JJ07
4F100JK04
4F100JK20
4F100JL03
4F100JL10
(57)【要約】
【課題】基材の加工における適切な条件を推定することができる。
【解決手段】推定装置1は、加工前の基材の特性を示す基材情報の入力を受け付ける第1の入力部104と、加工前の基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する、複数の加工情報の内いずれかと、に基づいて、加工前の基材が加工された加工済み基材の性能を示す推定性能情報を推定する推定部106と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工前の基材の特性を示す基材情報の入力を受け付ける第1の入力部と、
前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する、複数の加工情報の内いずれかと、に基づいて、前記加工前の基材が加工された加工済み基材の性能を示す推定性能情報を推定する推定部と、
を備える推定装置。
【請求項2】
基材の特性を示す基材情報と、前記加工情報と、前記基材に加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との関係を学習して、前記基材情報と前記加工情報とが入力されると、前記性能情報を出力するモデルをさらに備え、
前記推定部は、前記モデルに、前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、前記複数の加工情報の内いずれかと、を入力し、前記推定性能情報を出力させる、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記第1の入力部は、前記加工前の基材が加工された加工済み基材の目標性能を示す目標性能情報の入力をさらに受け付け、
前記目標性能情報と、前記推定性能情報とに基づいて、前記基材の推奨特性を示す推奨基材情報及び前記基材の推奨加工条件を示す推奨加工情報の内少なくともいずれかを含む推奨情報を出力する推奨部を備える、請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推奨部は
前記基材情報及び前記加工情報の内少なくともいずれかを含む候補情報を生成する生成部と、
前記候補情報に基づいて前記推定部から前記推定性能情報を取得する取得部と、
探索終了条件に基づいて新たな候補情報を生成するか否かを判定する判定部と、
を含む、請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記探索終了条件である、前記推定性能情報によって示される性能が前記目標性能を満たしている、又は、候補情報が生成された回数が所定の上限回数であるという条件が満たされているか否かを判定し、
前記探索終了条件が満たされていると判定された場合、前記推奨情報を表示する表示部と、
を備える、請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記第1の入力部は、前記加工に関する条件の範囲の入力をさらに受け付け、
前記推奨部は、前記加工に関する条件の範囲に応じた探索範囲情報に基づいて前記推奨情報を出力する、請求項3に記載の推定装置。
【請求項7】
前記第1の入力部は、前記加工済み基材が用いられる国又は分野の入力をさらに受け付け、
前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、複数の前記加工情報の内の前記国又は前記分野に対応する加工情報とに基づいて、前記探索範囲情報を生成する探索範囲生成部をさらに有する、請求項6に記載の推定装置。
【請求項8】
前記加工情報は、前記基材に処方するポリマーの種別、前記ポリマーに添加する添加剤の種別、並びに前記基材に前記ポリマーを塗工する塗工条件を含む、請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項9】
前記推定部は、基材情報が示す基材、及び加工情報が示す加工の内いずれかの特徴を表す特徴量を算出する特徴量算出部を有する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項10】
前記第1の入力部は、前記加工済み基材がバリアする物質を示すバリア対象物質情報をさらに受け付ける、請求項1に記載の推定装置。
【請求項11】
前記推定部は、基材情報が示す基材、及び加工情報が示す加工の内いずれかの特徴を表す特徴量を算出する特徴量算出部を有し、
前記特徴量算出部は、前記基材情報および前記加工情報の内少なくともいずれかと、前記バリア対象物質情報とを用いて、前記基材情報および前記加工情報の内少なくともいずれかと、前記バリア対象物質情報との特徴を示す第1特徴量を算出する、請求項10に記載の推定装置。
【請求項12】
前記推定部は、前記第1特徴量に基づいて、前記加工済み基材が前記バリア対象物質に対して有するバリア性能を示すバリア性能情報を推定する、請求項11に記載の推定装置。
【請求項13】
前記第1の入力部は、前記加工前の基材が加工された加工済み基材の目標性能を示す目標性能情報の入力をさらに受け付け、
前記目標性能情報は、前記加工済み基材が物質をバリアする性能であるバリア性能の目標を示す目標バリア性能情報を含む、請求項12に記載の推定装置。
【請求項14】
前記性能は、前記加工済み基材のバリア性、ヒートシール性、機械的安定性、耐屈曲性、保香性、耐油性、耐薬品性、難燃性、高周波シール性、及び色目の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項15】
前記モデルは、前記性能の種別ごと前記基材ごとのモデルを含み、
前記推定部は、前記性能の種別及び前記加工前の基材の特性を示す基材情報によって示される基材に対応するモデルに、前記基材情報と、前記加工前の基材の加工に関する加工情報とを入力し、前記推定性能情報を出力させる、請求項2に記載の推定装置。
【請求項16】
前記加工に関する条件の入力を受け付ける第2の入力部をさらに備え、
前記推定部は、前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、前記第2の入力部によって入力が受け付けられた前記条件を満たす加工を示す加工情報とに基づいて、前記推定性能情報を推定する、請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項17】
基材の特性を示す基材情報と、前記基材の加工条件に関する加工情報と、前記基材に前記加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との入力を受け付ける第3の入力部と、
前記基材情報と、前記加工情報と、前記性能情報との関係を学習して、前記基材情報と前記加工情報とに基づいて、前記性能情報を出力するモデルを学習するモデル学習部と、
を備えるモデル学習装置。
【請求項18】
前記モデルを記憶するモデル記憶部をさらに備え、
前記第3の入力部は、前記基材情報と、前記加工情報と、前記性能情報との入力を追加で受け付け、
前記モデル学習部は、前記モデル記憶部に記憶された前記モデルの学習に用いられた前記基材情報、前記加工情報、及び前記性能情報と、前記追加で受け付けられた前記基材情報、前記加工情報、及び前記性能情報とを用いて、再びモデルを学習する、請求項17に記載のモデル学習装置。
【請求項19】
推定装置が実行する推定方法であって、
加工前の基材の特性を示す基材情報の入力を受け付けるステップと、
前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する、複数の加工情報の内いずれかと、に基づいて、前記加工前の基材が加工された加工済み基材の性能を示す推定性能情報を推定するステップと、
を含む推定方法。
【請求項20】
基材の特性を示す基材情報と、前記基材の加工条件に関する加工情報と、前記基材に前記加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との入力を受け付けるステップと、
前記基材情報と、前記加工情報と、前記性能情報との関係を学習して、前記基材情報と前記加工情報とに基づいて、前記性能情報を出力するモデルを学習するステップと、
を含むモデル学習方法。
【請求項21】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の推定装置として機能させるためのプログラム。
【請求項22】
コンピュータを、請求項17又は18に記載のモデル学習装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定装置、モデル学習装置、推定方法、モデル学習方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙、プラスチック、布等の基材にサランラテックス等のラテックスを塗工することが知られている。例えば、特許文献1には、ハロゲン化ビニルポリマーを含み、被覆効率が特定の範囲であるハロゲン化ビニルポリマー層を紙支持体上に有する積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2022/059472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、どの基材に対して、どのような加工を施すと所望の性能を満たす塗工済み基材を得ることができるのかを知ることは困難であった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、基材の加工における適切な条件を推定することができる推定装置、モデル学習装置、推定方法、モデル学習方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
加工前の基材の特性を示す基材情報の入力を受け付ける第1の入力部と、
前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する、複数の加工情報の内いずれかと、に基づいて、前記加工前の基材が加工された加工済み基材の性能を示す推定性能情報を推定する推定部と、
を備える推定装置。
[2]
基材の特性を示す基材情報と、前記加工情報と、前記基材に加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との関係を学習して、前記基材情報と前記加工情報とが入力されると、前記性能情報を出力するモデルをさらに備え、
前記推定部は、前記モデルに、前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、前記複数の加工情報の内いずれかと、を入力し、前記推定性能情報を出力させる、[1]に記載の推定装置。
[3]
前記第1の入力部は、前記加工前の基材が加工された加工済み基材の目標性能を示す目標性能情報の入力をさらに受け付け、
前記目標性能情報と、前記推定性能情報とに基づいて、前記基材の推奨特性を示す推奨基材情報及び前記基材の推奨加工条件を示す推奨加工情報の内少なくともいずれかを含む推奨情報を出力する推奨部を備える、[1]又は[2]に記載の推定装置。
[4]
前記推奨部は
前記基材情報及び前記加工情報の内少なくともいずれかを含む候補情報を生成する生成部と、
前記候補情報に基づいて前記推定部から前記推定性能情報を取得する取得部と、
探索終了条件に基づいて新たな候補情報を生成するか否かを判定する判定部と、
を含む、[3]に記載の推定装置。
[5]
前記判定部は、前記探索終了条件である、前記推定性能情報によって示される性能が前記目標性能を満たしている、又は、候補情報が生成された回数が所定の上限回数であるという条件が満たされているか否かを判定し、
前記探索終了条件が満たされていると判定された場合、前記推奨情報を表示する表示部と、
を備える、[4]に記載の推定装置。
[6]
前記第1の入力部は、前記加工に関する条件の範囲の入力をさらに受け付け、
前記推奨部は、前記加工に関する条件の範囲に応じた探索範囲情報に基づいて前記推奨情報を出力する、[3]に記載の推定装置。
[7]
前記第1の入力部は、前記加工済み基材が用いられる国又は分野の入力をさらに受け付け、
前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、複数の前記加工情報の内の前記国又は前記分野に対応する加工情報とに基づいて、前記探索範囲情報を生成する探索範囲生成部をさらに有する、[6]に記載の推定装置。
[8]
前記加工情報は、前記基材に処方するポリマーの種別、前記ポリマーに添加する添加剤の種別、並びに前記基材に前記ポリマーを塗工する塗工条件を含む、[1]から[7]のいずれかに記載の推定装置。
[9]
前記推定部は、基材情報が示す基材、及び加工情報が示す加工の内いずれかの特徴を表す特徴量を算出する特徴量算出部を有する、[1]から[8]のいずれかに記載の推定装置。
[10]
前記第1の入力部は、前記加工済み基材がバリアする物質を示すバリア対象物質情報をさらに受け付ける、[1]から[9]のいずれかにに記載の推定装置。
[11]
前記推定部は、基材情報が示す基材、及び加工情報が示す加工の内いずれかの特徴を表す特徴量を算出する特徴量算出部を有し、
前記特徴量算出部は、前記基材情報および前記加工情報の内少なくともいずれかと、前記バリア対象物質情報とを用いて、前記基材情報および前記加工情報の内少なくともいずれかと、前記バリア対象物質情報との特徴を示す第1特徴量を算出する、[10]に記載の推定装置。
[12]
前記推定部は、前記第1特徴量に基づいて、前記加工済み基材が前記バリア対象物質に対して有するバリア性能を示すバリア性能情報を推定する、[11]に記載の推定装置。
[13]
前記第1の入力部は、前記加工前の基材が加工された加工済み基材の目標性能を示す目標性能情報の入力をさらに受け付け、
前記目標性能情報は、前記加工済み基材が物質をバリアする性能であるバリア性能の目標を示す目標バリア性能情報を含む、[12]に記載の推定装置。
[14]
前記性能は、前記加工済み基材のバリア性、ヒートシール性、機械的安定性、耐屈曲性、保香性、耐油性、耐薬品性、難燃性、高周波シール性、及び色目の少なくとも1つを含む、[1]から[13]のいずれかに記載の推定装置。
[15]
前記モデルは、前記性能の種別ごと前記基材ごとのモデルを含み、
前記推定部は、前記性能の種別及び前記加工前の基材の特性を示す基材情報によって示される基材に対応するモデルに、前記基材情報と、前記加工前の基材の加工に関する加工情報とを入力し、前記推定性能情報を出力させる、[2]に記載の推定装置。
[16]
前記加工に関する条件の入力を受け付ける第2の入力部をさらに備え、
前記推定部は、前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、前記第2の入力部によって入力が受け付けられた前記条件を満たす加工を示す加工情報とに基づいて、前記推定性能情報を推定する、[1]から[15]のいずれかに記載の推定装置。
[17]
基材の特性を示す基材情報と、前記基材の加工条件に関する加工情報と、前記基材に前記加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との入力を受け付ける第3の入力部と、
前記基材情報と、前記加工情報と、前記性能情報との関係を学習して、前記基材情報と前記加工情報とに基づいて、前記性能情報を出力するモデルを学習するモデル学習部と、
を備えるモデル学習装置。
[18]
前記モデルを記憶するモデル記憶部をさらに備え、
前記第3の入力部は、前記基材情報と、前記加工情報と、前記性能情報との入力を追加で受け付け、
前記モデル学習部は、前記モデル記憶部に記憶された前記モデルの学習に用いられた前記基材情報、前記加工情報、及び前記性能情報と、前記追加で受け付けられた前記基材情報、前記加工情報、及び前記性能情報とを用いて、再びモデルを学習する、[17]に記載のモデル学習装置。
[19]
推定装置が実行する推定方法であって、
加工前の基材の特性を示す基材情報の入力を受け付けるステップと、
前記加工前の基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する、複数の加工情報の内いずれかと、に基づいて、前記加工前の基材が加工された加工済み基材の性能を示す推定性能情報を推定するステップと、
を含む推定方法。
[20]
基材の特性を示す基材情報と、前記基材の加工条件に関する加工情報と、前記基材に前記加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との入力を受け付けるステップと、
前記基材情報と、前記加工情報と、前記性能情報との関係を学習して、前記基材情報と前記加工情報とに基づいて、前記性能情報を出力するモデルを学習するステップと、
を含むモデル学習方法。
[21]
コンピュータを、[1]から[16]のいずれかに記載の推定装置として機能させるためのプログラム。
[22]
コンピュータを、[17]又は[18]に記載のモデル学習装置として機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る推定装置、モデル学習装置、推定方法、モデル学習方法、及びプログラムによれば、基材の加工における適切な条件を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る推定装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】第1の入力部に情報を入力するための操作画面の一例である。
【
図3】推奨情報を表示し、第2の入力部に情報を入力するための画面の一例である。
【
図4】本実施形態に係るモデル学習装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図1に示す推定装置における動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図4に示すモデル学習装置における動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<推定装置の構成>
図1を参照して本実施形態の推定装置1の構成について説明する。
【0010】
本実施形態に係る推定装置1は、加工情報記憶部101と、規制情報記憶部102と、モデル記憶部103と、第1の入力部104と、探索範囲生成部105と、推定部106と、推奨部107と、表示部108と、第2の入力部109とを備える。
【0011】
加工情報記憶部101、規制情報記憶部102、及びモデル記憶部103は、メモリによって構成される。メモリは、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等であってよい。第1の入力部104及び第2の入力部109は、入力インターフェースによって構成される。入力インターフェースは、ポインティングデバイス、キーボード、マウス等とすることができる。探索範囲生成部105、推定部106、及び推奨部107は、コントローラによって構成される。コントローラは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。表示部108は、表示インターフェースによって構成される。表示インターフェースは、有機EL(Electro Luminescence)、液晶パネル等とすることができる。
【0012】
加工情報記憶部101は、基材の加工に関する加工情報を記憶している。基材は、プラスチックシート、編織布、不織布、木材、紙、金属箔等とすることができるが、これに限定されない。基材の加工は、例えば、基材にラテックスを塗工することであり、ラテックスは、ポリマー及び添加剤によって構成される。加工情報は、基材の加工条件に関する情報である。加工情報は、基材に処方するポリマーに関するポリマー情報、ポリマーに添加する添加剤に関する添加剤情報、並びに基材にポリマーを塗工する塗工条件を含むことができる。ポリマー情報としては、ポリマーの種別、ポリマーを構成するモノマー、ポリマーを構成するモノマーの重合割合、ポリマーの分子量、ポリマーの粒径等に関する情報をそれぞれ含んでもよい。添加剤情報としては、添加剤の種別等に関する情報をそれぞれ含んでもよい。また、加工情報は、ラテックスの組成に関する組成情報を含んでもよい。組成情報としては、添加剤割合に関する情報をさらに含んでもよい。添加剤割合は、ポリマーの量に対する添加剤の量の割合である。
【0013】
加工情報の一例は、ポリマーが「ラテックスA」であり、添加剤が量「80」の「シリカ」及び量「40」の「ワックス」であり、塗布量が「80」であり、塗布回数が「2」であり、乾燥温度が「100」であり、乾燥時間が「2」であることを示す情報であってよい」。また、加工情報の他の例は、例えば、ポリマーが「ラテックスA」であり、添加剤が量「70」の「シリカ」及び量「50」の「ワックス」であり、塗布量が「60」であり、塗布回数が「3」であり、乾燥温度が「120」であり、乾燥時間が「1」であることを示す情報であってよい。
【0014】
規制情報記憶部102は、基材を加工した加工済み基材が用いられる国に対応付けて、該国での使用が認められているポリマー及び添加剤を記憶している。また、規制情報記憶部102は、基材を加工した加工済み基材が用いられる分野に対応付けて、該分野での使用が認められているポリマー及び添加剤を記憶している。
【0015】
モデル記憶部103は、基材の特性を示す基材情報と、加工情報と、基材に加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との関係を学習して、基材情報と加工情報とが入力されると、性能情報を出力するモデルを記憶している。性能情報が示す性能は、加工された基材の性能である加工基材性能、加工の安定性に関する加工安定性性能を含むことができる。例えば、基材が紙であり、ラテックスを塗布する構成においては、加工基材性能は塗工紙性能とすることができ、加工基材安定性性能は、塗布安定性性能とすることができる。また、性能は、前記加工済み基材のバリア性、ヒートシール性、機械的安定性、耐屈曲性、保香性、耐油性、耐薬品性、難燃性、高周波シール性、及び色目の少なくとも1つを含むことができる。バリア性には、ガスバリア性、防湿性等が含まれる。
【0016】
モデル記憶部103は、追って詳細に説明するモデル学習装置2から、通信ネットワークを介して受信されたモデルを記憶してもよいし、任意の媒体を介してモデル学習装置2から取得されたモデルを記憶してもよい。また、推定装置1が、モデル学習装置2と一体として構成されている場合、推定装置1のモデル記憶部103は、追って詳細に説明するモデル学習装置2のモデル記憶部203そのものであってもよい。
【0017】
モデル記憶部103が記憶しているモデルは、性能の種別ごと基材ごとのモデルを含んでよい。例えば、モデル記憶部103が記憶しているモデルは、バリア性および紙に対応するモデル、並びにバリア性及びプラスチックシートに対応するモデルを含んでよい。また、例えば、モデル記憶部103が記憶しているモデルは、ヒートシール性及び紙に対応するモデル、並びにヒートシール性及びプラスチックシートに対応するモデルを含んでよい。
【0018】
第1の入力部104は、例えば、
図2に示すような操作画面を介して、加工前の基材の特性を示す基材情報の入力を受け付ける。基材情報には、基材の種別が含まれる。基材の種別は、例えば、上述したようなプラスチックシート、編織布、不織布、木材、紙、金属箔等である。また、基材情報には、基材の種別ごとの該基材の性質が含まれてもよい。例えば、基材の種別が紙である場合、該基材の性質は、空隙率、叩解度、サイズ度、つぼ量等の塗工原紙パラメータによって表され得る。
【0019】
また、第1の入力部104は、基材を加工した加工済み基材が用いられる国又は分野の入力をさらに受け付けてもよい。
【0020】
また、第1の入力部104は、加工前の基材が加工された加工済み基材の目標性能を示す目標性能情報の入力をさらに受け付けてもよい。
【0021】
一例として、第1の入力部104は、ユーザが、
図2に示すような操作画面を用いて入力した基材情報、国又は分野、目標性能情報を受け付けてもよい。
図2に示す例では、ユーザは、操作画面に表示されている基材選択部、区部選択部、及び分野選択部それぞれにおいて、基材、国、及び分野を選択することができる。
【0022】
また、操作画面には、基材選択部で選択した基材に応じて基材の性質を入力させる基材性質入力部が表示されてもよい。
図2に示す例では、基材選択部において「紙」が選択されているため、「紙」の性質である空隙率、叩解度、サイズ度、つぼ量の入力欄が表示され、第1の入力部104は、ユーザが該入力欄に入力した、「紙」の性質を受け付けることができる。
【0023】
また、第1の入力部104は、加工済み基材でバリアするバリア対象物質を示すバリア対象物質情報の入力をさらに受け付けてもよい。バリア対象物質としては、水蒸気、酸素、香料、臭気を有する物質のようなバリア対象ガス、油、薬品のようなバリア対象液体を挙げることができる。バリア対象物質情報としては、バリア対象物質の種別、分子構造、分子量等に関する情報を含んでもよい。なお、バリア対象物質情報としてはバリア対象物質の構造に関する情報等から算出される特徴量(後述)を用いてもよい。また、このような構成において、上述した目標性能情報は、加工済み基材が物質をバリアする性能であるバリア性能の目標を示す目標バリア性能情報を含んでもよい。
【0024】
また、操作画面には、目標性能を入力させる目標性能入力部が表示されてもよい。
図2に示す例では、バリア性及びヒートシール性それぞれの最小値の入力欄が表示され、第1の入力部104は、ユーザが該入力欄に入力した最小値以上の性能を目標性能として受け付けることができる。なお、
図2に示す例に限られず、操作画面には、任意の性能の範囲の入力欄が表示されてよく、第1の入力部104は、該範囲の性能を目標性能として受け付けることができる。なお、第1の入力部104は、ユーザによって上述した情報が入力され、「探索開始」ボタンが押下されると、該情報の入力を受け付けてもよい。
【0025】
また、第1の入力部104は、加工に関する条件の範囲の入力をさらに受け付けてもよい。具体的には、第1の入力部104は、加工に関する条件として、塗工条件に含まれる塗布量、塗布回数、乾燥温度、及び乾燥時間の1つ以上における範囲の入力を受け付けてもよい。
【0026】
探索範囲生成部105は、加工前の基材の特性を示す基材情報と、複数の加工情報の内の国又は分野に対応する加工情報とに基づいて、探索範囲情報を生成する。探索範囲情報は、推定部106が推定性能情報を推定するときの基材情報及び加工情報の範囲を示す情報である。
【0027】
具体的には、探索範囲生成部105は、第1の入力部104によって入力が受け付けられた国及び分野で使用が認められているポリマー及び添加剤を含む範囲を探索範囲として生成してもよい。さらに具体的には、探索範囲生成部105は、規制情報記憶部102に、第1の入力部104によって入力が受け付けられた国及び分野に対応付けて記憶されているポリマー及び添加剤を含む範囲を探索範囲として生成してもよい。
【0028】
推定部106は、加工前の基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する、複数の加工情報の内いずれかと、に基づいて、加工前の基材が加工された加工済み基材の性能を示す推定性能情報を推定する。具体的には、推定部106は、上述したモデルに、加工前の基材の特性を示す基材情報と、複数の加工情報の内いずれかと、を入力し、推定性能情報を出力させてもよい。推定部106は、上述したような、ポリマー、添加剤、該添加剤割合、塗工条件等が組み合わされてなる様々な加工情報それぞれと、基材情報とを入力して、加工情報それぞれと基材情報とに基づくそれぞれの性能情報を出力する。
【0029】
一例として、推定部106は、加工前の基材の特性を示す基材情報と、加工情報記憶部101に記憶されている加工情報のうち、加工に関する条件が第1の入力部104によって入力が受け付けられた範囲にある加工を示す加工情報とを入力し、推定性能情報を出力させてもよい。
【0030】
また、上述したように、モデルが性能の種別ごと基材ごとのモデルを含む構成において、推定部106は、性能の種別及び加工前の基材の特性を示す基材情報によって示される基材に対応するモデルに、基材情報と、加工前の基材の加工に関する加工情報とを入力し、推定性能情報を出力させることができる。
【0031】
また、推定部106は、基材情報が示す基材と加工情報が示す加工との特徴を表す特徴量を算出する特徴量算出部106aを有してもよい。このような構成において、推定部106は、上述したモデルに、基材情報が示す基材と加工情報が示す加工との特徴を表す特徴量を入力し、推定性能情報を出力させることができる。ここで特徴量としては、物性値に関する物性値情報、部分構造に関する部分構造情報を含んでも良い。例えば、物性値情報としては、表面電荷、表面積、溶解度指数を挙げることができる。また、部分構造情報としては、分子内に含まれる部分構造を示す分子フィンガープリントを挙げることができる。このような特徴量は、例えば加工情報におけるポリマー情報を例にとると、ポリマーを構成するモノマーに関する情報を用いて算出又は生成することができる。また、溶解度指数としては、ハンセン溶解度パラメータを挙げることができる。なお、溶解度指数は、実験的に取得された各物質のハンセン溶解度パラメータを用いてもよく、各物質の分子構造をベースに算出可能なHSPiP等の既存の推算ツールや、公開データおよび自身で取得したデータに基づいて作成する推算ツールを用いて算出してもよい。さらに、特徴量としては、複数の物質の溶解度指数の関係を用いることができる。このような関係としては、例えば2つの物質の溶解度の差、例えばポリマーの溶解度指数およびバリア対象物質の溶解度指数との差を挙げることができる。このような関係を特徴量として用いることで、推定部の予測性能を向上させることが可能となる。例えば、ポリマーの溶解度指数とバリア対象物質の溶解度指数との差を特徴量として使用することでポリマーとバリア対象物質との親和性を反映させることが可能となり、バリア性に関する指標の予測性能を向上することが可能となる。
【0032】
このため、特徴量算出部106aは、基材情報および加工情報の内少なくともいずれかと、バリア対象物質情報とを用いて、基材情報および加工情報の内少なくともいずれかと、バリア対象物質情報との特徴を示す第1特徴量を算出してもよい。このような構成において、推定部106は、第1特徴量に基づいて、加工済み基材がバリア対象物質に対して有するバリア性能を示すバリア性能情報を推定することができる。
【0033】
推奨部107は、目標性能情報と、推定性能情報とに基づいて、基材の推奨特性を示す推奨基材情報及び基材の推奨加工条件を示す推奨加工情報の内少なくともいずれかを含む推奨情報を出力する。推奨部107は、加工に関する条件の範囲に応じた探索範囲情報に基づいて推奨情報を出力することができる。推奨加工条件は、基材に処方するポリマーに関する推奨条件である推奨ポリマー処方条件、基材に処方するポリマーに添加する添加剤に関する推奨条件である推奨添加剤処方条件、基材にポリマーを塗工する条件である推奨塗工条件等を含むことができる。なお、このとき、推奨部107は、推定性能情報が示す複数の性能がパレート最適解となるような推奨情報を出力してもよい。
【0034】
具体的には、推奨部107は、生成部107aと、取得部107bと、判定部107cとを含む。
【0035】
生成部107aは、基材情報及び加工情報の内少なくともいずれかを含む候補情報を生成する。生成部107aは、探索の1回目においては、探索範囲生成部105で生成された、基材情報及び加工情報に基づく探索範囲情報が示す範囲内で乱数により候補を生成してよい。生成部107aは、探索の2回目以降において、その前の探索において生成された候補に対し、取得部107bによって得られる推定性能情報に基づく評価関数を用いて新たな候補を生成してよい。生成部107aは、例えば勾配降下法、確率的勾配降下法、AdaGrad、RMSProp、Adamといった、評価関数の勾配に基づく既存の条件探索アルゴリズムを使用して、評価関数の出力値が望ましい方向に変化するような候補情報を生成してもよい。推定性能情報に基づく評価関数としては、その性能情報の目標が特定の値を超えること、あるいは下回ることとして指定された場合、推定性能情報そのものの値を出力とする関数を使用してよい。この場合、評価関数の出力値の望ましい方向は、出力値を最大化又は最小化する方向となる。また、目標が特定範囲内に収まることとして指定された場合、特定範囲内のいずれかの点(例えば範囲の上限値と下限値の平均値)と、推定性能情報との間の差の二乗を評価関数として用いてよい。この場合、評価関数の出力値の望ましい方向は、出力値を最小化する方向となる。なお、生成部107aは、前回以前に生成された候補情報に対応する評価関数の値に基づいて評価関数の勾配を算出してよい。また、より適切に候補情報を生成するために、生成部107aは、種々の組合せ最適化問題を解くための最適化手法を利用して候補情報を生成することができ、特に限定されないが、例えば、シミュレーテッドアニーリングや多目的遺伝的アルゴリズム等の既存最適化手法を用いて候補情報を生成してもよい。
【0036】
取得部107bは、候補情報に基づいて推定部106から推定性能情報を取得する。具体的には、取得部107bは、生成部107aによって生成された候補情報に含まれる基材情報及び加工情報に基づいて、推定部106によって推定された推定性能情報を取得する。
【0037】
判定部107cは、探索終了条件に基づいて新たな候補情報を生成するか否かを判定する。探索終了条件は、目標性能を満たしている、又は、候補情報が生成された回数が所定の上限回数であるという条件である。
【0038】
具体的には、判定部107cは、探索終了条件が満たされているか否かを判定する。すなわち、判定部107cは、探索終了条件である、推定性能情報によって示される性能が目標性能を満たしている、又は、候補情報が生成された回数が所定の上限回数であるという条件を満たしているか否かを判定する。そして、判定部107cによって探索終了条件が満たされていないと判定されると、生成部107aは、新たな候補情報を生成する。また、判定部107cによって探索終了条件が満たされていると判定されると、生成部107aは、新たな候補情報を生成しない。
【0039】
表示部108は、推奨部107によって出力された推奨情報を表示する。具体的には、表示部108は、判定部107cによって、探索終了条件が満たされていると判定された場合に推奨情報を表示してもよい。このとき、表示部108は、推奨部107によって出力された推奨情報のうち、ユーザによって選択された加工情報に対応する推定性能情報を表示してもよい。例えば、
図3に示すような画面の条件セット選択欄で条件セット「A」が選択された場合、表示部108は、条件セット「A」に相当する加工情報(例えば、ポリマーが「ラテックスA」であり、添加剤が量「80」の「シリカ」及び量「40」の「ワックス」であり、塗布量が「80」であり、塗布回数が「2」であり、乾燥温度が「100」であり、乾燥時間が「2」であるという加工情報)に対応して出力された推奨情報を表示することができる。
【0040】
また、上述したように、推奨部107が、推定性能情報が示す性能がパレート最適解となるような推奨情報を出力する構成において、表示部108によって表示される条件セットで選択され得る条件は、性能がパレート最適解となるような条件セットとすることができる。
【0041】
また、表示部108は、推定性能情報によって示される性能が目標性能を満たしていると判定された場合に、該推定性能情報と、該推定性能情報に対応する基材情報及び加工情報とを表示してもよい。このような構成において、表示部108は、目標性能を満たしていない性能を示す推定性能情報と該推定性能情報に対応する基材情報及び加工情報とを表示しない。
【0042】
第2の入力部109は、表示部108が推奨情報を出力すると、加工に関する条件の入力を受け付ける。具体的には、推定部106が性能情報を出力し、表示部108が性能情報と、該性能情報に対応する加工情報とを表示すると、第2の入力部109は、ユーザの操作によって加工に関する条件の入力を受け付けることができる。このとき、ユーザは、
図3に示すような、推奨情報とともに表示されている数値入力欄、スライダ等をもちいて加工に関する条件を入力するための操作を行うことができる。これにより、上述した推定部106は、加工前の基材の特性を示す基材情報と、第2の入力部109によって入力が受け付けられた条件を満たす加工を示す加工情報とに基づいて、推定性能情報を推定することができる。これにより、ユーザは、表示部108によって表示された性能情報及び加工情報を参照しながら、加工に関する条件を変更することによって推定性能情報がどのように変更されるかを知ることができる。
【0043】
<モデル学習装置の構成>
図4を参照して本実施形態のモデル学習装置2の構成について説明する。モデル学習装置2は、推定装置1と一体として構成されていてもよいし、別体として構成されていてもよい。
【0044】
本実施形態に係るモデル学習装置2は、第3の入力部201と、モデル学習部202と、モデル記憶部203と、出力部204とを備える。第3の入力部201は入力インターフェースによって構成される。モデル学習部202は、コントローラによって構成される。モデル記憶部203は、メモリによって構成される。出力部204は、出力インターフェースによって構成される。出力インターフェースは、通信インターフェースを含んでもよい。通信インターフェースには、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられてもよい。
【0045】
第3の入力部201は、基材の特性を示す基材情報と、基材の加工に関する加工情報と、基材に加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との入力を受け付ける。例えば、第3の入力部201は、既に実験等によって得られている基材情報、加工情報、及び性能情報を受け付けることができる。第3の入力部201は、新たに実験により明らかになった基材情報、加工情報、及び性能情報の入力を受け付けることができる。
【0046】
また、第3の入力部201は、基材情報と、加工情報と、性能情報との入力を追加で受け付けることができる。例えば、第3の入力部201は、推定装置1によって推奨された推奨情報に基づいて、利用者が、基材を加工したときの該基材を示す基材情報、該加工を示す加工情報、及び基材の加工によって得られた性能を示す性能情報の入力を受け付けることができる。
【0047】
モデル学習部202は、基材情報と、加工情報と、性能情報との関係を学習して、基材情報と加工情報とに基づいて、性能情報を出力するモデルを学習する。ここで、モデルの学習にモデルに用いられるデータは、既に実験等によって得られ、任意の記憶部に記憶されている基材情報、加工情報、及び性能情報であってもよいし、新たなに実験により明らかになった基材情報、加工情報、及び性能情報であってもよいし、これらの両方を結合したものであってもよい。
【0048】
具体的には、性能情報が量的変数の場合、モデル学習部202は、例えば、重回帰分析、リッジ回帰、部分最小二乗法回帰、多層パーセプトロン、CNN(Convolutional Neural Network)及びRNN(Recurrent Neural Network)等のニューラルネットワーク、ガウシアンカーネル等の任意のカーネル関数を用いるサポートベクターマシーン、回帰木としてモデル化したランダムフォレスト、隠れマルコフモデル等を利用したモデル、統計モデルや確率モデル等種々の他のモデルを学習することもできる。また、モデル学習部202は、種々のモデルを組み合わせて総合的な判定を行うモデルを学習することもできる。さらに、性能情報が質的変数の場合、ロジスティック回帰やランダムフォレストやニューラルネット等、種々の判別分析手法が利用されてよい。
【0049】
また、モデル学習部202は、モデル記憶部203に記憶されたモデルの学習に用いられた基材情報、加工情報、及び性能情報と、追加で受け付けられた基材情報、加工情報、及び性能情報とを用いて、再びモデルを学習する。ここで、追加で受け付けられた基材情報、加工情報、及び性能情報とは、例えば、上述したような推定装置1によって推奨された推奨情報に基づいて、利用者が、基材を加工したときの該基材を示す基材情報、該加工を示す加工情報、及び基材の加工によって得られた性能を示す性能情報を含んでよい。
【0050】
ここで、モデル学習部202は、基材情報が示す基材と加工情報が示す加工との特徴を表す特徴量を算出してもよい。このような構成において、モデル学習部202は、基材情報が示す基材と加工情報が示す加工との特徴を表す特徴量を入力してモデルを学習してもよい。
【0051】
モデル記憶部203は、モデル学習部202によって学習されたモデルを記憶する。
【0052】
出力部204は、モデル学習部202によって学習されたモデルを出力する。具体的には、出力部204は、推定装置1にモデルを出力することができる。
【0053】
<推定装置の動作>
ここで、本実施形態に係る推定装置1の動作について、
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る推定装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図5を参照して説明する推定装置1における動作は本実施形態に係る推定装置1の推定方法の一例に相当する。上述したように、推定装置1は、基材の特性を示す基材情報と、加工情報と、基材に加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との関係を学習して、基材情報と加工情報とが入力されると、性能情報を出力するモデルを備えてもよい。本実施形態では、推定装置1は、該推定装置1が備えるモデル記憶部103が、モデルを記憶することによって、モデルを備えている。
【0054】
ステップS11において、第1の入力部104は、加工前の基材の特性を示す基材情報の入力を受け付ける。
【0055】
ステップS12において、第1の入力部104は、加工前の基材が加工された加工済み基材の目標性能を示す目標性能情報の入力をさらに受け付ける。
【0056】
ステップS13において、第1の入力部104は、基材の加工条件に関する加工情報の入力をさらに受け付ける。例えば、第1の入力部104は、加工に関する条件の範囲の入力をさらに受け付ける。代わりに、第1の入力部104は、加工済み基材が用いられる国又は分野の入力を受け付けてもよい。
【0057】
ステップS14において、生成部107aは、基材情報及び加工情報の内少なくともいずれかを含む候補情報を生成する。
【0058】
ステップS15において、取得部107bは、候補情報に基づいて推定部106から推定性能情報を取得する。具体的には、推定部106が、加工前の基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する、複数の加工情報の内いずれかと、に基づいて、加工前の基材が加工された加工済み基材の性能を示す推定性能情報を推定する。そして、取得部107bは、該推定性能情報を取得する。なお、ステップS13において、国又は分野の入力が受け付けられていた場合、探索範囲生成部105が、加工前の基材の特性を示す基材情報と、複数の加工情報の内の国又は分野に対応する加工情報とに基づいて、探索範囲情報を生成し、推定部106は、該探索範囲情報に示される探索範囲の基材情報及び加工情報に基づいて、推定性能情報を入力する。
【0059】
ステップS16において、判定部107cは、探索終了条件が満たされているか否かを判定する。例えば、判定部107cは、探索終了条件である、推定性能情報によって示される性能が目標性能を満たしている、又は、候補情報が生成された回数が所定の上限回数であるという条件が満たされているか否かを判定してもよい。
【0060】
ステップS16で、探索終了条件が満たされていると判定された場合、推奨部107は、目標性能情報と、推定性能情報とに基づいて、基材の推奨特性を示す推奨基材情報及び基材の推奨加工条件を示す推奨加工情報の内少なくともいずれかを含む推奨情報を出力する。また、ステップS16で、探索終了条件が満たされていないと判定された場合、推定装置1は、ステップS14に戻って以降の動作を繰り返す。
【0061】
なお、推奨部107によって推奨情報が出力されると、表示部108が、推奨情報を表示し、さらに、ステップS13に戻って第2の入力部109が、ユーザの操作によって入力された加工に関する条件の入力を受け付けてもよい。また、第2の入力部109が、加工に関する条件の入力を受け付けると、推定装置1は、ステップS13以降の動作を繰り返すことができる。
【0062】
<モデル学習装置の動作>
ここで、本実施形態に係るモデル学習装置2の動作について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係るモデル学習装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
図6を参照して説明するモデル学習装置2における動作は本実施形態に係るモデル学習装置2のモデル学習方法の一例に相当する。
【0063】
ステップS21において、第3の入力部201は、基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する加工情報と、基材に加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との入力を受け付ける。
【0064】
ステップS22において、モデル学習部202は、基材情報と、加工情報と、性能情報との関係を学習して、基材情報と加工情報とに基づいて、性能情報を出力するモデルを学習する。
【0065】
ステップS23において、モデル記憶部203は、モデルを記憶する。
【0066】
ステップS24において、第3の入力部201は、基材情報と、加工情報と、性能情報との入力を追加で受け付ける。
【0067】
ステップS25において、モデル学習部202は、モデル記憶部203に記憶されたモデルの学習に用いられた基材情報、加工情報、及び性能情報と、追加で受け付けられた基材情報、加工情報、及び性能情報とを用いて、再びモデルを学習する。
【0068】
上述したように、本実施形態によれば、推定装置1は、加工前の基材の特性を示す基材情報の入力を受け付ける第1の入力部104と、加工前の基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する、複数の加工情報の内いずれかと、に基づいて、加工前の基材が加工された加工済み基材の性能を示す推定性能情報を推定する推定部106と、を備える。これにより、推定装置1は、基材の加工における適切な条件を推定することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、モデル学習装置2は、基材の特性を示す基材情報と、基材の加工条件に関する加工情報と、基材に加工を施した加工済み基材の性能を示す性能情報との入力を受け付ける第3の入力部201と、基材情報と、加工情報と、性能情報との関係を学習して、基材情報と加工情報とに基づいて、性能情報を出力するモデルを学習するモデル学習部202と、を備える。これにより、モデル学習装置2は、推定装置1が基材の加工における適切な条件を推定するためのモデルを学習することができる。
【0070】
<プログラム>
上述した推定装置1及びモデル学習装置2は、コンピュータ401によってそれぞれ実現することができる。また、推定装置1及びモデル学習装置2としてそれぞれ機能させるためのプログラムが提供されてもよい。また、該プログラムは、記憶媒体に記憶されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。
図7は、推定装置1として機能するコンピュータ401の概略構成を示すブロック図である。モデル学習装置2として機能するコンピュータもコンピュータ401と同様に構成されてよい。ここで、コンピュータ401は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッド等であってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメント等であってもよい。
【0071】
図7に示すように、コンピュータ401は、プロセッサ410と、ROM420と、RAM430と、ストレージ440と、入力部450と、出力部460と、通信インターフェース(I/F)470とを備える。各構成は、バス480を介して相互に通信可能に接続されている。プロセッサ410は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)等であり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。
【0072】
プロセッサ410は、各構成の制御、及び各種の演算処理を実行する。すなわち、プロセッサ410は、ROM420又はストレージ440からプログラムを読み出し、RAM430を作業領域としてプログラムを実行する。プロセッサ410は、ROM420又はストレージ440に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。上述した実施形態では、ROM420又はストレージ440に、本開示に係るプログラムが記憶されている。
【0073】
プログラムは、コンピュータ401が読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このような記憶媒体を用いれば、プログラムをコンピュータ401にインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記憶された記憶媒体は、非一時的(non-transitory)記憶媒体であってもよい。非一時的記憶媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0074】
ROM420は、各種プログラム及び各種データを記憶する。RAM430は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ440は、HDD又はSSDにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを記憶する。
【0075】
入力部450は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく情報を取得する1つ以上の入力インターフェースを含む。例えば、入力部450は、ポインティングデバイス、キーボード、マウス等であるが、これらに限定されない。
【0076】
出力部460は、情報を映像で出力するディスプレイであるが、これらに限定されない。なお、出力部460は、タッチパネル方式のディスプレイである場合には、入力部450としても機能する。
【0077】
通信インターフェース470は、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0078】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0079】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 推定装置
2 モデル学習装置
101 加工情報記憶部
102 規制情報記憶部
103 モデル記憶部
104 第1の入力部
105 探索範囲生成部
106 推定部
107 推奨部
107a 生成部
107b 取得部
107c 判定部
108 表示部
109 第2の入力部
201 第3の入力部
202 モデル学習部
203 モデル記憶部
204 出力部
401 コンピュータ
410 プロセッサ
420 ROM
430 RAM
440 ストレージ
450 入力部
460 出力部
470 通信インターフェース(通信I/F)
480 バス