(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024666
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】タウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを同時に製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 303/22 20060101AFI20250213BHJP
C07C 309/14 20060101ALI20250213BHJP
C07C 303/44 20060101ALI20250213BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250213BHJP
【FI】
C07C303/22
C07C309/14
C07C303/44
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042815
(22)【出願日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】202310990015.6
(32)【優先日】2023-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520336182
【氏名又は名称】チェンジャン ヨンアン ファーマシュティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン キチャン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】周 巍
(72)【発明者】
【氏名】リュウ フェン
(72)【発明者】
【氏名】リ シャン
(72)【発明者】
【氏名】周 惟
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC52
4H006AD15
4H006BA02
4H006BA29
4H006BE14
4H039CA71
4H039CD50
4H039CD90
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コストが低く収率が高い、タウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを同時に製造する方法を提供する。
【解決手段】エチレンオキシド法によってタウリンを製造し、タウリン母液を得るステップと、タウリン母液をメチルアミンと混合し、塩基性触媒を加えてアミン化反応を行い、反応液を得るステップと、反応液からアンモニア及びメチルアミンを蒸発させ、メチルタウリン塩溶液を得るステップと、メチルタウリン塩溶液を用いてメチルタウリン溶液を製造するステップと、メチルタウリン溶液を濃縮して結晶化させ、メチルタウリンを得るステップと、を含む、エチレンオキシドを用いたタウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンの製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキシドを用いたタウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンの製造方法であって、
エチレンオキシド法によって前記タウリンを製造し、タウリン母液を得るステップと、
前記タウリン母液をメチルアミンと混合し、塩基性触媒を加えてアミン化反応を行い、反応液を得るステップと、
前記反応液からアンモニア及び前記メチルアミンを蒸発させ、メチルタウリン塩溶液を得るステップと、
前記メチルタウリン塩溶液を用いてメチルタウリン溶液を製造するステップと、
前記メチルタウリン溶液を濃縮して結晶化させ、前記メチルタウリンを得るステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記メチルタウリン溶液を濃縮して結晶化させることにより得られたメチルタウリン母液を循環的に濃縮して抽出し、前記メチルタウリンを得る、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エチレンオキシド法によって前記タウリンを製造し、前記タウリン母液を得るステップは、
エチレンオキシドを亜硫酸水素塩溶液と付加反応させ、イセチオン酸塩を得るステップと、
得られた前記イセチオン酸塩を前記アンモニアと混合し、前記塩基性触媒を加えて反応させ、アンモノリシス反応液を得るステップと、
アンモノリシス反応後、前記アンモノリシス反応液から過剰量の前記アンモニアを蒸発により除去し、タウリン塩溶液を得るステップと、
前記タウリン塩溶液を用いてタウリン溶液を製造するステップと、
前記タウリン溶液を濃縮して結晶化させ、前記タウリンを分離して、前記タウリン母液を得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応液から前記アンモニア及び前記メチルアミンを蒸発させ、前記アンモニア及び前記メチルアミンをそれぞれ分離し、エチレンオキシドから前記タウリンを製造するアンモノリシスステップで前記アンモニアを再利用し、分離した前記メチルアミンを前記タウリン母液と混合して前記アミン化反応の原料として利用する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記タウリン母液中の前記タウリン、イセチオン酸塩、ジタウリン塩、トリタウリン塩、タウリン誘導体及びイセチオン酸誘導体は、前記塩基性触媒の存在条件下で前記メチルアミンと反応し、
前記塩基性触媒のモル重量は、前記タウリン母液中の前記タウリン、前記イセチオン酸塩、前記ジタウリン塩、前記トリタウリン塩、前記タウリン誘導体及び前記イセチオン酸誘導体から生成し得るメチルタウリン塩のモル重量の少なくとも90%である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基性触媒のモル重量と、前記タウリン母液中の前記タウリン、前記イセチオン酸塩、前記ジタウリン塩、前記トリタウリン塩、前記タウリン誘導体及び前記イセチオン酸誘導体から生成し得るメチルタウリン塩のモル重量との比が1:1~1.5:1である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基性触媒は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属亜硫酸塩である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記タウリン母液を前記メチルアミンと混合し、前記塩基性触媒を加えた後に、前記アミン化反応は、120℃~280℃の反応温度で実施される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記タウリン母液を前記メチルアミンと混合し、前記塩基性触媒を加えた後に、前記アミン化反応は、60℃~260℃の反応温度で実施される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記タウリン母液を前記メチルアミンと前記塩基性触媒の条件下で、1分~60分間、前記アミン化反応させる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記タウリン母液を前記メチルアミンと前記塩基性触媒の条件下で、10分~30分間、前記アミン化反応させる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記メチルタウリン塩溶液を用いて前記メチルタウリン溶液を製造する反応のpHが、5~7に制御され、又はメチルタウリン塩のアルカリ金属の含有量が制御される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記反応液から前記アンモニア及び前記メチルアミンを蒸発させるステップは、
前記反応液にフラッシュ蒸発を行い、前記反応液から前記アンモニアを分離し、濃縮するために蒸発を行って、前記反応液から前記メチルアミンを分離するステップ、又は
前記アンモニア及び前記メチルアミンの両方を反応液から蒸発させ、次に、前記アンモニア及び前記メチルアミンを精留により分離するステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記反応液から前記アンモニア及び前記メチルアミンを蒸発させるステップは、
前記反応液にフラッシュ蒸発を行い、前記反応液の温度を150℃~200℃、圧力を1.4Mpa~2.1Mpaに制御し、前記反応液から前記アンモニアを分離してから、濃縮するために蒸発を行って、前記反応液から前記メチルアミンを分離するステップを含む、ことを特徴とする請求項1又は13に記載の方法。
【請求項15】
中和法、イオン交換法、イオン膜法又は加熱により前記タウリン塩溶液から前記タウリンを製造する、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項16】
中和法、イオン交換法、イオン膜法又は加熱により前記メチルタウリン塩溶液から前記メチルタウリンを製造する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記メチルタウリン塩は、メチルタウリンリチウム、メチルタウリンナトリウム、メチルタウリンカリウム、メチルタウリンカルシウム、又はメチルタウリンマグネシウムである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記タウリン母液中の前記タウリン、イセチオン酸塩、ジタウリン塩、トリタウリン塩、タウリン誘導体及びイセチオン酸誘導体は、前記塩基性触媒の存在下で前記メチルアミンとの反応を行い、
前記メチルアミンのモル重量は、前記タウリン母液中の前記タウリン、前記イセチオン酸塩、前記ジタウリン塩、前記トリタウリン塩、前記タウリン誘導体及び前記イセチオン酸誘導体が生成し得るメチルタウリン塩のモル重量以上である、ことを特徴とする請求項1又は5に記載の方法。
【請求項19】
前記メチルアミンのモル重量と、前記タウリン母液中の前記タウリン、前記イセチオン酸塩、前記ジタウリン塩、前記トリタウリン塩、前記タウリン誘導体及び前記イセチオン酸誘導体が生成し得るメチルタウリン塩のモル重量との比が1:1~1.5:1である、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを製造する方法に関し、具体的には、タウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを同時に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タウリンは、化学名が2-アミノエタンスルホン酸であり、生体細胞内で含有量が最も豊富な含硫遊離アミノ酸である。タウリンの化学合成プロセスは主にエチレンオキシド法とエタノールアミン法を含む。そのうちのエチレンオキシド法による製造には、以下の3つのステップが含まれている。
【0003】
エチレンオキシドを出発原料とし、エチレンオキシドと重亜硫酸ナトリウムとを付加反応させてイセチオン酸ナトリウムを得て、イセチオン酸ナトリウムをアンモノリシスしてタウリンナトリウムを得て、次に、タウリンナトリウムを塩酸、硫酸、イオン交換樹脂や電気透析等により酸性化してタウリンを得て、これを分離精製して製品を得る。主な反応式は以下のとおりである。
【化1】
【化2】
【化3】
【0004】
アンモノリシス副反応は以下を含む。
【化4】
【化5】
【0005】
アンモノリシスの過程においてイセチオン酸誘導体やタウリン誘導体などが生成される。従来技術では、生成されたこれらの物質は、収率を増加させるために、母液とともにアンモノリシス反応にリサイクルされるが、これにはエネルギー消費量の増加と製造コストの増加を伴う。
【0006】
メチルタウリンナトリウムは用途が広いファインケミカル製品であり、日用の化学中間体及び繊維助剤であり、界面活性剤を製造する重要な原料であり、また、ココイル-N-メチルタウリンナトリウム、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体、ポリアクリロイルジメチルタウリンナトリウムなど、様々な高付加価値製品を合成することに用いることができ、これらの製品は、穏やかな特性を持っているため、温和な界面活性剤としても使用することができる。人々の生活水準の日々の向上に伴い、温和な界面活性剤の需要量もおおいに増加している。
【0007】
メチルタウリンナトリウム系の温和な界面活性剤では、メチルタウリンナトリウムの合成が最も重要な反応である。現在開示されている、メチルタウリンナトリウムの合成方法としては、直接メチル化法、オキサゾリジノン中間体によるメチル化生成物への再変換法、及び還元アミノ化法などである。これらの方法の中には、不必要な副生成物が発生するもの、使用する原料価格が比較的に高いもの、必要な条件が比較的に厳しいもの、反応ステップが比較的に多いものがあり、避けられない誤差が生じやすいため、反応の総反応収率が低下する。
【0008】
特許文献1は、タウリンナトリウムとホルムアルデヒドを原料とし、触媒の作用下で2段階の反応を経てメチルタウリンナトリウムを製造する、タウリンナトリウムからメチルタウリンナトリウムを製造する方法を提供しているが、この方法には、水素化工程が含まれ、プロセスは比較的複雑であり、危険なプロセスである水素化反応を伴う。
【0009】
特許文献2は、タウリンナトリウムとハロゲン化メタンを原料とし、第4級アンモニウム塩を触媒として、メチルタウリンナトリウムを製造するが、この方法は反応系にハロゲン原子を新たに導入するため、設備への腐食の危険性があり、ハロゲン原子の導入により多くの廃水が発生し、処理が困難である。
【0010】
特許文献3は、タウリンナトリウムとメチルアミンを原料としてメチルタウリンナトリウムを製造するが、この方法は、まずタウリンナトリウムを製造し、次に、タウリンナトリウムをメチルアミンと高温高圧で反応させる必要がある。この方法は、まず高圧でタウリンナトリウムを製造し、次に高温高圧でメチルタウリンナトリウムを製造する必要があるので、エネルギー消費量が大幅に増加し、製造コストが高くなる。
【0011】
以上のことから、タウリンとメチルタウリンナトリウムを合成するための従来の工業的な製造において、プロセスの経路が複雑で、総合コストが高く、収率が低いという問題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】中国特許出願公開第110963946号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第113801039号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第115403487号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、コストが低く、収率が高いタウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを同時に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、エチレンオキシドを用いたタウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンの製造方法であって、エチレンオキシド法によってタウリンを製造し、タウリン母液を得るステップと、タウリン母液をメチルアミンと混合し、塩基性触媒を加えてアミン化反応を行い、反応液を得るステップと、反応液からアンモニア及びメチルアミンを蒸発させ、メチルタウリン塩溶液を得るステップと、メチルタウリン塩溶液を用いてメチルタウリン溶液を製造するステップと、メチルタウリン溶液を濃縮して結晶化させ、メチルタウリンを得るステップと、を含む方法を提供する。
【0015】
本発明の方法の一実施形態によれば、メチルタウリン溶液を濃縮して結晶化させることにより得られたメチルタウリン母液を循環的に濃縮して抽出し、メチルタウリンを得る。
【0016】
本発明の方法の一実施形態によれば、エチレンオキシド法によってタウリンを製造し、タウリン母液を得るステップは、エチレンオキシドを亜硫酸水素塩溶液と付加反応させイセチオン酸塩を得るステップと、得られたイセチオン酸塩をアンモニアと混合し、塩基性触媒を加えて反応させ、アンモノリシス反応液を得るステップと、アンモノリシス反応後に、アンモノリシス反応液から過剰量のアンモニアを蒸発により除去し、タウリン塩溶液を得るステップと、タウリン塩溶液を用いてタウリン溶液を製造するステップと、タウリン溶液を濃縮して結晶化させ、タウリンを分離して、タウリン母液を得るステップと、を含む。
【0017】
本発明の方法の一実施形態によれば、反応液からアンモニア及びメチルアミンを蒸発させ、さらにアンモニア及びメチルアミンをそれぞれ分離し、エチレンオキシドからタウリンを製造するアンモノリシスステップでアンモニアを再利用し、分離したメチルアミンをタウリン母液と混合してアミン化反応の原料として利用する。
【0018】
本発明の方法の一実施形態によれば、タウリン母液中のタウリン、イセチオン酸塩、ジタウリン塩、トリタウリン塩、タウリン誘導体及びイセチオン酸誘導体は、塩基性触媒の条件下でメチルアミンと反応させ、塩基性触媒のモル重量は、タウリン母液中のタウリン、イセチオン酸塩、ジタウリン塩、トリタウリン塩、タウリン誘導体及びイセチオン酸誘導体が生成し得るメチルタウリン塩のモル重量の少なくとも90%であり、好ましくは、モル重量の比が1:1~1.5:1である。
【0019】
本発明の方法の一実施形態によれば、塩基性触媒は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属亜硫酸塩、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、最も好ましくは、水酸化ナトリウムである。
【0020】
本発明の方法の一実施形態によれば、タウリン母液をメチルアミンと混合し、塩基性触媒を加えた後に、アミン化反応を、120℃~280℃の温度、好ましくは、160℃~260℃温度で行う。
【0021】
本発明の方法の一実施形態によれば、タウリン母液をメチルアミンと塩基性触媒の条件下でアミン化反応させる時間が、1分~60分、好ましくは、10分~30分である。
【0022】
本発明の方法の一実施形態によれば、メチルタウリン塩溶液を用いてメチルタウリン溶液を製造する反応のpHが、5~7に制御され、又はメチルタウリン塩のアルカリ金属の含有量が制御される。
【0023】
本発明の方法の一実施形態によれば、反応液からアンモニア及びメチルアミンを蒸発させるステップは、反応液をフラッシュ蒸発させ、反応液からアンモニアを分離し、さらに濃縮するために蒸発させ、反応液からメチルアミンを分離するステップ、又はアンモニア及びメチルアミンの両方を反応液から蒸発させ、次に、アンモニア及びメチルアミンを精留により分離するステップを含む。
【0024】
本発明の方法の一実施形態によれば、反応液からアンモニア及びメチルアミンを蒸発させるステップは、反応液をフラッシュ蒸発させ、反応液の温度を150℃~200℃、圧力を1.4Mpa~2.1Mpaに制御し、反応液からアンモニアを分離してから、濃縮するために蒸発させ、反応液からメチルアミンを分離するステップを含む。
【0025】
本発明の方法の一実施形態によれば、中和法、イオン交換法、イオン膜法又は加熱によりタウリン塩溶液からタウリンを製造する。
【0026】
本発明の方法の一実施形態によれば、中和法、イオン交換法、イオン膜法又は加熱によりメチルタウリン塩溶液からメチルタウリンを製造する。
【0027】
本発明の方法の一実施形態によれば、メチルタウリン塩は、メチルタウリンリチウム、メチルタウリンナトリウム、メチルタウリンカリウム、メチルタウリンカルシウム、又はメチルタウリンマグネシウムである。
【0028】
本発明の方法の一実施形態によれば、タウリン母液中のタウリン、イセチオン酸塩、ジタウリン塩、トリタウリン塩、タウリン誘導体及びイセチオン酸誘導体は、塩基性触媒の条件下でメチルアミンと反応させ、メチルアミンのモル重量は、タウリン母液中のタウリン、イセチオン酸塩、ジタウリン塩、トリタウリン塩、タウリン誘導体及びイセチオン酸誘導体が生成し得るメチルタウリン塩のモル重量以上であり、好ましくは、モル重量の比が1:1~1.5:1である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の製造方法は、エチレンオキシドを用いて、タウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを同時に製造するものであり、プロセスが簡単で、タウリンの製造において残留する母液を原料として活用し、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを製造することにより、タウリンの従来の製造における母液のリサイクル問題を回避し、不純物が発生する可能性を減少させ、また、反応中の原料と触媒とのモル比を制御することで、メチルタウリン塩及びメチルタウリンへの定量的な変換を実現し、全体の収率が98%以上に達する。タウリン及びメチルタウリン塩の製品の品質を高めるとともに、全体的な製造コストを大幅に向上させ、環境に優しいプロセスであるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】タウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを製造する方法のフロー図である。
【
図2】タウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを製造する方法の別のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の目的、内容、及び利点をより明確にするために、以下で図面及び実施例を参照して、本発明の具体的な実施形態をさらに詳細に説明する。
【0032】
特に断らない限り、以下の実施形態で使用する原料はすべて市販品であり、特に断らない限り、使用する方法はすべて通常の方法であり、特に断らない限り、材料の含有量はすべて質量体積百分率を指す。HPLC及びLC-MS分析により、反応中の物質の含有量を検出し、示した。実施例ではナトリウム塩を例に挙げて説明することが多いが、実際には、ナトリウム塩の代わりに、例えばカリウム、リチウム等の他のアルカリ金属塩を用いてもよい。
【0033】
本発明者は、タウリン母液の成分について分析及び実験研究を長期的に行った結果、所定の反応条件下では、タウリンの製造における母液をメチルタウリンアルカリ金属塩に転化することができ、しかも、ほぼ定量的な転化が可能であることを見出した。本発明者は、反応条件及び反応生成物の収量について研究した結果、メチルタウリンアルカリ金属塩の転化には以下の要素が存在することを見出した。
タウリンを抽出された母液には、メチルアミンと反応してメチルタウリン塩を製造することができるタウリン及びイセチオン酸塩が一定量で含まれている。
【0034】
さらに驚くべきことに、塩基性触媒が十分な条件下では、メチルアミンの添加で、タウリン母液中のタウリン誘導体、イセチオン酸誘導体はメチルタウリン塩に定量的に転化することもできる。
【0035】
本発明者は、分析した結果、メチルアミンは塩基性が最も強いが、立体障害が小さく、反応に最も有利であることがその主な原因であることを見出した。また、塩基性触媒については、塩基性化合物、例えばアルカリ金属水酸化物であってもよいが、好ましくは、水酸化ナトリウムである。
【0036】
本発明者は、さらなる研究をした結果、添加されるアルカリ金属のモル重量がタウリン母液中のタウリン、イセチオン酸塩、タウリン誘導体、及びイセチオン酸誘導体の総モル重量を超えるべきであることを見出した。アルカリ金属水酸化物に加えて、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属亜硫酸塩等も選択可能である。
【0037】
本発明者の上記の実験結果に基づいて、本発明は、エチレンオキシドを用いたタウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンの製造方法を提供し、
図1に示すように、方法は、具体的には、以下のステップS1~S9を含む。
【0038】
ステップS1:エチレンオキシドを亜硫酸水素塩溶液と付加反応させ、イセチオン酸塩を得る。
亜硫酸水素ナトリウムを例にして、反応式は以下のとおりである。
【化6】
【0039】
ステップS2:S1で得たイセチオン酸塩をアンモニアと塩基性触媒の条件下で混合してアンモノリシス反応させ、アンモノリシス反応液を得る。
イセチオン酸ナトリウムを例にして、反応式は以下のとおりである。
【化7】
【0040】
ステップS3:アンモノリシス反応後、過剰量のアンモニアを蒸発により除去し、タウリン塩を得る。
ステップS4:得たタウリン塩をタウリンに転化する。
具体的には、タウリン塩溶液は、中和法、イオン交換法、イオン膜法又は加熱によりタウリンに転化されてもよい。
タウリンナトリウムを例にして、反応式は以下のとおりである。
【化8】
【0041】
ステップS5:タウリン溶液を濃縮して結晶化させて分離し、タウリン及びタウリン母液を得る。
【0042】
ステップS6:タウリン母液をメチルアミンと塩基性触媒の条件下で混合して反応させ、反応液を得る。
タウリン母液中の反応用の塩がナトリウム塩である場合を例にして、タウリン母液の各物質を、メチルアミンと塩基性触媒の条件下でメチルタウリンナトリウムに転化する化学反応式は、以下を含む。
(1)イセチオン酸ナトリウムとメチルアミンを反応させて、メチルタウリンナトリウム及び水を生成する。
【化9】
;
(2)ジタウリンナトリウムとメチルアミンを反応させて、メチルタウリンナトリウム及びアンモニアを生成する。
【化10】
(3)タウリンナトリウムとメチルアミンを反応させて、メチルタウリンナトリウム及びアンモニアを生成する。
【化11】
(4)トリタウリンナトリウムとメチルアミンを反応させて、メチルタウリンナトリウム及びアンモニアを生成する。
【化12】
(5)タウリン誘導体、イセチオン酸ナトリウム誘導体、及びメチルアミンを反応させて、メチルタウリンナトリウム及び対応する一般式で表される生成物を生成する。
ここで、Rは、異なる基を表し、R
m(CH
2CH
2SO
3Na)
nはタウリン誘導体及びイセチオンを示す。
【化13】
【0043】
ステップS7:ステップS6の反応後、反応液をフラッシュ蒸発に付して、アンモニア及びメチルアミンを分離し、メチルタウリン塩水溶液を得る。
分離したアンモニアは、更なる再利用が可能であり、例えば、ステップS2で再利用してもよく、分離したメチルアミンは、ステップS6で再利用してもよい。
【0044】
ステップS8:得たメチルタウリン塩をメチルタウリンに転化する。
具体的には、メチルタウリン塩溶液は、中和法、イオン交換法、イオン膜法又は加熱によりメチルタウリンに転化されてもよい。
具体的な反応式は以下の通りであってもよい。
【化14】
【0045】
ステップS9:メチルタウリン溶液を濃縮して結晶化させ、メチルタウリンを得る。
【0046】
分離により得られた母液は、本ステップS9において、循環的に濃縮されてメチルタウリンを抽出されてもよい。
【0047】
好ましい実施形態において、S6ステップでは、塩基性触媒のモル重量は、タウリン母液中のタウリン、イセチオン酸塩、ジタウリン塩、トリタウリン塩、タウリン誘導体、及びイセチオン酸誘導体(以上、すべてイセチオン酸ナトリウムのモル重量に換算)のモル重量の少なくとも90%であり、好ましくは、モル重量の比が1:1~1.5:1である。具体的には、化学式において上記の各物質が生成し得る対応するモル重量のメチルタウリン塩を参照することができ、このため、イセチオン酸ナトリウム換算のモル重量は、生成し得るメチルタウリン塩のモル重量に対応してもよい。
【0048】
好ましい実施形態において、ステップS6では、塩基性触媒は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属亜硫酸塩、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、最も好ましくは、水酸化ナトリウムである。
【0049】
好ましい実施形態において、ステップS6では、メチルアミンと、タウリン母液中のタウリン、イセチオン酸塩、ジタウリン塩、トリタウリン塩、イセチオン酸塩誘導体、及びタウリン誘導体(以上、すべてイセチオン酸ナトリウムのモル重量に換算)とのモル比が、1:1以上、好ましくは、1:1~5:1である。
【0050】
好ましい実施形態において、ステップS6では、アミン化反応の温度は、120℃~280℃、好ましくは、160℃~260℃である。
【0051】
好ましい実施形態において、ステップS6では、アミン化反応の時間は、1分~60分、好ましくは、10分~30分である。
【0052】
図1及び
図2に示すように、ステップS7では、アミン化が完了した後、まず、フラッシュ蒸発により再利用のためにアンモニアを分離し、次に、蒸発濃縮によりメチルアミンを除去してアミン化反応でメチルアミンを再利用してもよく、アンモニアとメチルアミンを同時に蒸発させ、次に、アンモニア及びメチルアミンを精留により分離し、それぞれを再利用してもよい。
【0053】
ここで、アミン化が完了した後、まず、フラッシュ蒸発をする場合、アンモニアを分離する反応の条件としては、メチルアミンの蒸発を避けるために、反応液の温度は150~200℃、圧力は1.4Mpa~2.1Mpaに制御される。
【0054】
ステップS8では、メチルタウリン塩をメチルタウリンに転化するときには、pHは5~7に制御され、又は、メチルタウリン塩のアルカリ金属の含有量が制御されてもよい。
【実施例0055】
以下、複数の異なる実験を通じて、本発明が奏する技術的効果が実証される。
【0056】
実施例1.本実施例は、水酸化ナトリウムの存在下で、異なる温度でメチルタウリンナトリウムを製造する実験を示す。
亜硫酸水素ナトリウム溶液2molとエチレンオキシド2molとを圧力0.1Mpa、pH5.0~9.0、温度60℃~80℃の条件下で反応させ、イセチオン酸ナトリウムを製造した。次に、イセチオン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、及びアンモニアを、温度250℃~270℃、圧力10MPa~15MPaの条件下で、45分反応させ、反応完了後、アンモニアを除去した溶液はタウリンナトリウム溶液であった。タウリンナトリウムをイオン交換樹脂によりタウリンに転化してから、濃縮、冷却結晶化を行い、タウリンの含有量が99.9質量%のタウリン182gを得た。残ったタウリン母液は144mLであり、タウリンの質量/体積パーセントが11.6%であり、モル重量に換算すると0.13molであり、イセチオン酸ナトリウムの質量/体積パーセントが14.8%であり、モル重量に換算すると0.14molであり、ジタウリンの質量/体積パーセントが17.1%であり、モル重量に換算すると0.11molであり、トリタウリンの質量/体積パーセントが4.7%であり、モル重量に換算すると0.02molである。次に、母液に水酸化ナトリウム0.56molを加え、メチルアミン2.8molを導入し、反応液中のメチルアミンの含有量を25%~40%に制御し、表1の各温度にそれぞれ加熱して30分反応させ、反応完了後、溶液中のメチルアミン及びアンモニアを蒸発により除去し、メチルタウリンナトリウムを得た。
【0057】
【0058】
実施例2.本実施例は、アルカリ金属触媒の異なる添加量でタウリン母液からメチルタウリンナトリウムを製造する実験を示す。
上記の実施例1の方法に従ってタウリン母液を製造し、母液に各触媒を加え、次に、メチルアミン2.8molをタウリン母液に導入し、反応液中のメチルアミンの含有量を25%~40%に制御し、200℃~240℃にそれぞれ加熱して30分反応させ、反応完了後、溶液中のメチルアミン及びアンモニアを蒸発により除去し、メチルタウリンナトリウムを得た。
【0059】
【0060】
実施例3.本実施例は、異なるメチルアミン添加量の条件でタウリン母液からメチルタウリンナトリウムを製造する実験を示す。
上記の実施例1の方法に従ってタウリン母液を製造し、母液に水酸化ナトリウム0.56molを加え、次に、異なる量のメチルアミンを母液に導入し、反応液中のメチルアミン含有量を25%~40%に制御し、200℃~240℃にそれぞれ加熱して30分反応させ、反応完了後、溶液中のメチルアミン及びアンモニアを蒸発により除去し、メチルタウリンナトリウムを得た。
【0061】
【0062】
実施例4.本実施例は、メチルタウリンをさらに製造する実験を示し、以下を含む。
上記の実施例の方法に従ってタウリン母液を製造し、母液に水酸化ナトリウム0.56molを加え、次に、メチルアミン2.8molを母液に導入し、反応液中のメチルアミン含有量を25%~40%に制御し、200℃~240℃にそれぞれ加熱して30分反応させ、反応完了後、溶液中のメチルアミン及びアンモニアを蒸発により除去し、メチルタウリンナトリウムを得た。(硫酸中和、イオン交換、電極膜)などの異なる方式を用いて、メチルタウリンナトリウムをメチルタウリンに転化し、メチルタウリン溶液のpHを5~7にし、次に、濃縮して結晶化させ、遠心分離してから乾燥させ、メチルタウリンを得、得たサンプルについてメチルタウリンの含有量を検出した結果、いずれも99.5%を超えた。
【0063】
以上によって、本発明の方法は、タウリンの製造による母液を十分に活用して、タウリン、メチルタウリン塩及びメチルタウリンを同時に製造することを可能にする方法であり、しかも、すべての材料が排出されずにリサイクルされ、原料の利用率が100%に達し、しかも98%以上の全収率が得られる。また、従来のプロセスにおいて母液を大量にサイクルさせることによる収率損失やエネルギー浪費が回避され、エネルギー消費量がさらに節約され、総合的なコストを低減し、環境にやさしい省エネプロセスである。本発明によるプロセスは、不連続、半連続又は連続的に行われ得る。
【0064】
以上は単に本発明の好適な実施形態であり、指摘すべきことは、当業者にとって、本発明の技術原理を逸脱することなく、いくつかの改良及び変形を行うことができ、これらの改良及び変形も本発明の保護範囲とみなすべきである。