(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024700
(43)【公開日】2025-02-20
(54)【発明の名称】駆動装置、ロボット、駆動装置の制御方法、及び位置検出システム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024131256
(22)【出願日】2024-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2023128510
(32)【優先日】2023-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹嶋 健太
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CX01
3C707CX03
3C707HS27
3C707HT21
3C707KS06
3C707KT01
3C707KT06
3C707KT09
3C707KV01
3C707LV20
3C707LW07
(57)【要約】
【課題】任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上する。
【解決手段】駆動装置は、モータと、前記モータ側に位置する第1歯車および前記第1歯車に噛み合うように配置された第2歯車を含む複数の歯車で構成された減速機とを有する駆動部と、前記減速機を介して前記モータにより駆動される可動部と、前記駆動部を制御する制御部と、前記モータの出力軸の相対的な回転位置を検出する第1エンコーダと、前記減速機の出力軸の絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダと、を備える。前記制御部は、前記モータを駆動して前記第1歯車を第1の回転方向に回転させ、前記モータを駆動して前記第1歯車を、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させた時点の前記第2エンコーダの検出結果から取得した前記第1エンコーダの回転位置を基準位置として設定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータ側に位置する第1歯車および前記第1歯車に噛み合うように配置された第2歯車を含む複数の歯車で構成された減速機とを有する駆動部と、
前記減速機を介して前記モータにより駆動される可動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記モータの出力軸の相対的な回転位置を検出する第1エンコーダと、
前記減速機の出力軸の絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダと、
を備え、
前記制御部は、
前記モータを駆動して前記第1歯車を第1の回転方向に回転させ、
前記モータを駆動して前記第1歯車を、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させた時点の前記第2エンコーダの検出結果から取得した前記第1エンコーダの回転位置を基準位置として設定する、
駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2エンコーダの検出結果から取得した前記第1エンコーダの回転位置を仮の基準位置として設定した後、
前記モータを駆動して前記第1歯車を第1の回転方向に回転させて、前記第1歯車の歯部を前記第1の回転方向側に位置する前記第2歯車の第1歯部に接触させ、
前記モータを駆動して前記第1歯車を、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させて、前記第1歯車の歯部を、前記第2の回転方向側に位置する前記第2歯車の第2歯部に接触させ、
当該接触させた時点の前記第2エンコーダの検出結果から取得した前記第1エンコーダの回転位置を基準位置として設定する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1歯車を、前記第1の回転方向に前記減速機のバックラッシに対応する所定角度以上回転させた後に、前記第2の回転方向に前記所定角度以上回転させる、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記仮の基準位置を設定した後、
前記モータを駆動して所定位置へ所定の歯部を移動させたうえで、前記モータを駆動して前記基準位置の設定を行う、
請求項2に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記基準位置の設定は、前記駆動装置に新たに電源が投入されるたびに行う、
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項6】
複数の駆動装置本体と、
制御部と
を備え、
前記複数の駆動装置本体それぞれは、
モータと、前記モータ側に位置する第1歯車および前記第1歯車に噛み合うように配置された第2歯車を含む複数の歯車で構成された減速機とを有する駆動部と、
前記減速機を介して前記モータにより駆動される可動部と、
前記モータの出力軸の相対的な回転位置を検出する第1エンコーダと、
前記減速機の出力軸の絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダと、
を備え、
前記制御部は、前記複数の駆動装置本体それぞれについて、
前記モータを駆動して前記第1歯車を第1の回転方向に回転させ、
前記モータを駆動して前記第1歯車を、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させた時点の前記第2エンコーダの検出結果から取得した前記第1エンコーダの回転位置を基準位置として設定する、
ロボット。
【請求項7】
前記制御部は、前記減速機の前記複数の歯車の回転軸が重力方向に直交している駆動装置本体について、前記基準位置の設定を行わない、
請求項6に記載のロボット。
【請求項8】
前記制御部は、前記モータを停止した際、重力の作用によって、常時、前記第1歯車の歯部が前記第2歯車の第1歯部に接触する駆動装置本体、または、常時、前記第1歯車の歯部が前記第2歯車の第2歯部に接触する駆動装置本体について、前記基準位置の設定を行わない、
請求項6に記載のロボット。
【請求項9】
モータと、前記モータ側に位置する第1歯車および前記第1歯車に噛み合うように配置された第2歯車を含む複数の歯車で構成された減速機とを有する駆動部と、
前記減速機を介して前記モータにより駆動される可動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記モータの出力軸の相対的な回転位置を検出する第1エンコーダと、
前記減速機の出力軸の絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダと、
を備える駆動装置の制御方法であって、
前記制御部が、
前記モータを駆動して前記第1歯車を第1の回転方向に回転させ、
前記モータを駆動して前記第1歯車を、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させた時点の前記第2エンコーダの検出結果から取得した前記第1エンコーダの回転位置を基準位置として設定する、
ことを含む、駆動装置の制御方法。
【請求項10】
ロボットと、
検出装置と、
を備え、
前記ロボットは、
複数の駆動装置本体と、
制御部と、
計測用マーカと、
を備え、
前記複数の駆動装置本体それぞれは、
モータと、前記モータ側に位置する第1歯車および前記第1歯車に噛み合うように配置された第2歯車を含む複数の歯車で構成された減速機とを有する駆動部と、
前記減速機を介して前記モータにより駆動される可動部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の駆動装置本体それぞれについて、
前記モータを駆動して前記第1歯車を第1の回転方向に回転させ、
前記モータを駆動して前記第1歯車を、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させ、
前記検出装置は、
前記第1歯車が前記第1の回転方向に回転した後に前記第2の回転方向に回転した時点における、前記計測用マーカの位置を検出する、
位置検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、ロボット、駆動装置の制御方法、及び位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の生産課題に対応するため、ロボットを用いた生産装置の適用範囲は拡大しており、人と同じ空間で作業することを想定したロボットのニーズが高まっている。
【0003】
このようなロボットの場合、部品の故障やソフトウェアに異常が発生しても、安全機能を維持することが求められており、安全機能を維持するため、駆動部の駆動状態を判別するためのセンサを二重化するものがある。
【0004】
例えば、従来の駆動装置の中には、駆動部を構成するモータの出力角度を計測する第1のエンコーダと、駆動部を構成する減速機の出力角度を計測する第2のエンコーダと、を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上することに関して改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上することができる駆動装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る駆動装置は、モータと、前記モータ側に位置する第1歯車および前記第1歯車に噛み合うように配置された第2歯車を含む複数の歯車で構成された減速機とを有する駆動部と、前記減速機を介して前記モータにより駆動される可動部と、前記駆動部を制御する制御部と、前記モータの出力軸の相対的な回転位置を検出する第1エンコーダと、前記減速機の出力軸の絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダと、を備える。前記制御部は、前記モータを駆動して前記第1歯車を第1の回転方向に回転させ、前記モータを駆動して前記第1歯車を、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させた時点の前記第2エンコーダの検出結果から取得した前記第1エンコーダの回転位置を基準位置として設定する。
【0009】
本発明に係る駆動装置の一態様によれば、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す駆動装置が有する駆動部を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す駆動装置が備える減速機において、減速機が備える駆動伝達機構が有する複数の歯車を示す平面図である。
【
図4】
図4は、駆動部の停止状態において、複数の歯車の位置の一例を示す概略部分拡大図である。
【
図5】
図5は、駆動部の停止状態において、複数の歯車の位置の別の一例を示す概略部分拡大図である。
【
図6】
図6は、駆動部の停止状態において、複数の歯車の位置のさらに別の一例を示す概略部分拡大図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る駆動装置の制御方法を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る駆動装置の制御方法を順番に示す概略部分拡大図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る駆動装置の制御方法を順番に示す概略部分拡大図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る駆動装置の制御方法を順番に示す概略部分拡大図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るロボットの斜視図である。
【
図13】
図13は、従来のロボットにおいて、駆動回数と、第6アームの先端部が任意の位置へ移動した際の位置決め精度を示すグラフである。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係るロボットにおいて、駆動回数と、第6アームの先端部が任意の位置へ移動した際の位置決め精度を示すグラフである。
【
図15】
図15は、第3実施形態に係るロボットの位置検出システムの概略側面図である。
【
図17】
図17は、複数のキャリブレーション位置におけるロボットの状態を示す概略側面図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係る位置検出システムの制御方法を示すフロー図である。
【
図19】
図19は、第4実施形態に係る位置検出システムの制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施形態に係る駆動装置、ロボット、駆動装置の制御方法、及び位置検出システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る駆動装置1および駆動装置1の制御方法について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る駆動装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示す駆動装置1が有する駆動部Jを示す模式図である。
図3は、
図2に示す駆動装置1が備える減速機32において、減速機32が備える駆動伝達機構が有する複数の歯車Gを示す平面図である。
【0013】
第1実施形態に係る
図1に示す駆動装置1の説明において、方向の理解を容易にするため、重力方向であるZ1方向を含む上下方向(以下、「Z方向」と称呼する)に対して直交する第1方向をX方向と称呼し、Z方向に対して直交する第2方向をY方向と称呼する。そして、X方向と、Y方向と、Z方向とは、相互に直交する。また、X方向およびY方向を含む平面は水平面であり、水平面は、Z方向に直交する。Z方向は、鉛直方向である。また、重力方向Z1は、上下方向Zにおいて、重力により引っ張られている方向である。
【0014】
図1に示す駆動装置1は、例えば、駆動装置本体Dと、架台2と、制御部4と、を備える。架台2は、駆動装置本体Dを搭載する台である。
【0015】
駆動装置本体Dは、例えば、駆動部Jと、可動部(アーム)Aと、を備える。第1実施形態に係る駆動装置1は、例えば、1つの駆動装置本体Dを備える。
【0016】
駆動装置本体Dは、例えば、1つの駆動部Jと、1つの可動部A(第1実施形態では、可動部Aは、第2アームA2)と、を有する。駆動部Jは、例えば、重力方向Z1を含むZ方向に沿う軸心JXを有し、駆動装置1は、駆動部Jを駆動することによっての軸心JX回りに第2アームA2の先端部を揺動可能である。
【0017】
より具体的に説明すると、駆動装置1は、駆動部Jによって、軸心JX回りに第2アームA2の先端部を第1の回転方向C1へ揺動可能であると共に、第2の回転方向C2へ揺動可能である。つまり、駆動装置1は、駆動部Jによって、第2アームA2の先端部を周方向Cへ揺動可能である。
【0018】
駆動部Jは、第1アームA1の先端部であって、第2アームA2の基端部に設けられる。
【0019】
図2に示す駆動部Jは、例えば、モータ31および減速機32を有する。モータ31は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する機械である。モータ31は、出力側に第1軸(出力軸)31Sを有し、
図1に示す第1アームA1の第1フレームA1fに固定される。そして、第1軸31Sは減速機32に向けて延出し、減速機32に連結される。
【0020】
減速機32は、出力側に第2軸(出力軸)32Sを有する。減速機32は、第1軸31Sよりも回転数を減少させ、トルクを増幅し、第2軸32Sへ駆動力を伝達する機械である。そして、第2軸32Sは、第2アームA2の第2フレームA2fに取り付けられる。言い換えると、駆動装置1は、減速機32を介してモータ31により駆動される可動部A(第2アームA2)を有する。
【0021】
減速機32は、例えば、複数の歯車Gで構成される。減速機32が有する複数の歯車Gは、例えば、
図3に示すように、第1歯車G1と、第2歯車G2と、を含む。第1歯車G1は、第1回転軸G1S(回転軸GS)を有する。第2歯車G2は、第2回転軸G2S(回転軸GS)を有する。そして、第2歯車G2は、第1歯車G1に噛み合うように配置される。第1実施形態に係る減速機32において、複数の歯車Gの回転軸GSは重力方向Z1に沿う。
【0022】
第1歯車G1は、例えば、モータ31の第1軸31Sに固定される。言い換えると、第1実施形態に係る駆動装置1では、第1軸31Sと第1回転軸G1Sとが同一である。そして、第1歯車G1は、第2歯車G2よりもモータ31側に配置されることになる。
【0023】
第1歯車G1の第1ピッチ円G1Pと、第2歯車G2の第2ピッチ円G2Pとは交差する。そして、第1歯車G1の第1ピッチ円G1P上において、第1歯車G1と第2歯車G2との間には、所定の間隙GAが設けられる。所定の間隙GAは、いわゆるバックラッシであり、第2歯車G2が第1歯車G1に噛み合い、かつ、所定の伝達効率を維持しながら、第1歯車G1を第1の回転方向R11および第2の回転方向R12(つまり、周方向Ra)へ回転すると共に、第2歯車G2を第1の回転方向R21および第2の回転方向R22(つまり、周方向Rb)へ回転するために設けられる。つまり、バックラッシは、第1歯車G1と、第2歯車G2との間に設けられる。
【0024】
制御部4は、駆動装置1の各部を統括的に制御する機能を有する。言い換えると、制御部4は、駆動部Jを制御する。例えば、制御部4は、予め作成されたデータに基づいて、駆動部Jのモータ31を駆動することによって、第2アームA2を、駆動部Jの軸心JX回りに揺動する。
【0025】
制御部4は、不図示の記憶部を有する。記憶部は、制御部4が受信した各種のデータを記憶する。また、制御部4は、モータ31に対して電気的に接続され、第1エンコーダ5に対して電気的に接続され、第2エンコーダ6に対して電気的に接続される。
【0026】
次に、この種の駆動装置1における問題点について、
図4、
図5、および、
図6を用いて説明する。
図4は、駆動部Jの停止状態において、複数の歯車Gの位置の一例を示す概略部分拡大図である。
図5は、駆動部Jの停止状態において、複数の歯車Gの位置の別の一例を示す概略部分拡大図である。
図6は、駆動部Jの停止状態において、複数の歯車Gの位置のさらに別の一例を示す概略部分拡大図である。なお、
図4~
図6において、問題点の説明を容易にするため、第1歯車G1の周方向Ra、および、第2歯車G2の周方向Rbを、直線に置き換えて図示してある。
【0027】
複数の歯車Gを備える駆動装置1において、駆動部Jの第1歯車G1を第1の回転方向R11へ回転させると、第2歯車G2は第1の回転方向R21へ回転する。その後、駆動部Jを逆方向へ駆動、すなわち、第1歯車G1を第2の回転方向R12へ回転させると、第2歯車G2は第2の回転方向R22へ回転するが、バックラッシの影響により、第2歯車G2が回転するまでに第1歯車G1が空転する期間が生じる。この第1歯車G1の空転量は、以下に説明するように変化する。なお、第1実施形態に係る駆動装置1において、モータ31の第1軸31Sに、第1歯車G1が固定されているため、第1アームA1における第1の回転方向C1と、第1歯車G1の第1の回転方向R11とが同一であり、第1アームA1における第2の回転方向C2と、第1歯車G1の第2の回転方向R12とが同一である。
【0028】
例えば、
図4に示すように、第1歯車G1の歯部G1aが、第2歯車G2の第1歯部G2aに接触した状態において、駆動部Jを駆動した場合には、第1歯車G1の歯部G1aが、第2歯車G2の第2歯部G2bに接触するまでは、第1歯車G1が第2の回転方向R12へ移動しても、第2歯車G2の第1歯部G2aおよび第2歯部G2bは、第2の回転方向R22へ移動することがない。よって、第2歯車G2から視ると、第1歯車G1の第2の回転方向C2への移動(具体的には距離L11の移動)は空転する期間が生じていることとなる。
【0029】
また、例えば
図5に示すように第1歯車G1の歯部G1aが、第2歯車G2の第1歯部G2aと第2歯部G2bとの間に配置された状態において、駆動部Jを駆動した場合には、第1歯車G1の歯部G1aが、第2歯車G2の第2歯部G2bに接触するまでは、第1歯車G1が第2の回転方向R12へ移動しても、第2歯車G2の第1歯部G2aおよび第2歯部G2bは、第2の回転方向R22へ移動することがない。よって、第2歯車G2から視ると、第1歯車G1の第2の回転方向C2への移動(具体的には距離L12の移動)は空転する期間が生じていることとなる。
【0030】
さらに、例えば
図6に示すように第1歯車G1の歯部G1aが、第2歯車G2の第2歯部G2bに接触した状態において、駆動部Jを駆動した場合には、直ちに、第1歯車G1の歯部G1aの第2の回転方向R12への移動と共に、第2歯車G2が第2の回転方向R22へ移動する。そのため、この状態では、第2歯車G2から視て、第1歯車G1の第2の回転方向R22への移動は空転する期間が生じていない。
【0031】
ここで、第1実施形態に係る駆動装置1の駆動部Jは、
図2に示すように、モータ31に第1エンコーダ5が設けられ、減速機32に第2エンコーダ6が設けられる。言い換えると、第1実施形態に係る駆動装置1は、モータ31の第1軸(出力軸)31Sの相対的な回転位置を検出する第1エンコーダ5と、減速機32の第2軸(出力軸)32Sの絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダ6と、を備える。例えば、第1エンコーダ5はインクリメンタル式のエンコーダ、第2エンコーダ6はアブソリュート式のエンコーダである。
【0032】
第1実施形態に係る駆動装置1において、駆動装置1の起動時、すなわち電源投入時には、減速機32に設けられたアブソリュート式の第2エンコーダ6の値を基準に、モータ31に設けられたインクリメンタル式の第1エンコーダ5の基準位置設定を行う必要がある。この時、上述したバックラッシの影響により、駆動装置1の起動ごとに減速機32の複数の歯車Gの位置にズレが生じていると、アブソリュート式の第2エンコーダ6の値に対し、毎回、歯車Gが異なった位置でインクリメンタル式の第1エンコーダ5の基準位置が設定される。この場合、駆動装置1において、起動ごとに制御部4の指令値に対するアームA2の位置が異なり、再現性が確保できないという問題が生じる。
【0033】
上述した問題を解決するため、第1実施形態において、制御部4が行う駆動装置1の制御方法(基準位置の設定処理)を、
図7~
図10を用いて説明する。
図7は、第1実施形態に係る駆動装置1の制御方法を示すフロー図である。
図8は、第1実施形態に係る駆動装置1の制御方法を順番に示す概略部分拡大図である。
図9は、第1実施形態に係る駆動装置1の制御方法を順番に示す概略部分拡大図である。
図10は、第1実施形態に係る駆動装置1の制御方法を順番に示す概略部分拡大図である。なお、
図7~
図10において、基準位置の設定処理の説明を容易にするため、第1歯車G1の周方向Ra、および、第2歯車G2の周方向Rbを、直線に置き換えて図示してある。
【0034】
なお、以下の説明において、例えば
図8に示すように、第1歯車G1の歯部G1aは、第2歯車G2の第1歯部G2aと、第2歯車G2の第2歯部G2bとの中間に配置された状態で、駆動装置1は、前回の駆動を終了したものとして説明する。つまり、
図8中において、第1歯車G1の歯部G1aの左側に位置する距離L14と、第1歯車G1の歯部G1aの右側に位置する距離L15と、同一である。また、この説明においては、距離L14と距離L15とを加算した距離は、バックラッシに相当する間隙GAと同一である。
【0035】
この状態において、
図7に示すように、制御部4は、先ず、駆動装置1の電源がオンされたこと、すなわち電源が投入されたことを検知した場合(ステップS01)、ステップS02に進む。つまり、制御部4は、ステップS01において、駆動装置1が起動されたことを検知した場合には、次のステップS02に進む。
【0036】
次に、制御部4は、第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を、仮の基準位置として設定し(ステップS02)、ステップS03に進む。仮の基準位置の設定は、例えば、モータ31が何回転したかを計測し、かつ、予めモータ31に設定された第1軸31Sの所定位置が、どれくらいの角度位置にあるかを計測する多回転処理を行うと共に、第1歯車G1の第1歯部G2aに相当する第1軸31Sの所定位置を基準位置とするオフセット処理を行う。例えば、減速機32の減速比が50:1であった場合、減速機32の出力段の角度が31.5°であれば、モータ31の出力段の角度は31.5×50=1575°(=135+360×4)となる。よって、このとき、基準位置設置では、モータ31の回転角度135°と多回転(周回数)オフセット数4を設定するオフセット処理を行う。
【0037】
次いで、制御部4は、モータ31を駆動して所定位置へ可動部Aを移動させ(ステップS03)、ステップS04へ進む。なお、この基準位置の設定処理の説明において、第1軸31Sの所定位置と、第1歯車G1の位置(角度)とが対応する。
【0038】
次いで、制御部4は、駆動部Jを駆動し、第1歯車G1を第1の回転方向R11へ回転し(ステップS04)、ステップS05へ進む。ステップS04における第1歯車G1の第1の回転方向R11の移動距離は、例えば、間隙GAと同一である。そのため、第2歯車G2の第1歯部G2aおよび第2歯部G2bは、間隙GAの半分の距離だけ、第1の回転方向R21側に移動する。換言すると、ステップS04において、制御部4は、モータ31を駆動して
図9に示す第1歯車G1を第1の回転方向R11に回転させて、第1歯車G1の歯部G1aを第1の回転方向R11側に位置する第2歯車G2の第1歯部G2aに接触させる。
【0039】
次に、制御部4は、駆動部Jを逆駆動し、第1歯車G1を第2の回転方向R12へ回転し(ステップS05)、ステップS06へ進む。ステップS05における第1歯車G1の第2の回転方向R12の移動距離は、ステップS04の間隙GAと同一である。換言すると、ステップS05において、制御部4は、モータ31を駆動して
図10に示す第1歯車G1を、第1の回転方向R11とは逆の第2の回転方向R12に回転させて、第1歯車G1の歯部G1aを、第2の回転方向R12側に位置する第2歯車G2の第2歯部G2bに接触させる。
【0040】
次に、制御部4は、当該接触させた時点の第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を基準位置として設定し(ステップS06)、基準位置の設定処理を終了する。
【0041】
なお、第1実施形態における駆動装置1において、第2歯車G2の第1歯部G2aおよび第2歯部G2bに対して、第1歯車G1の歯部G1aの位置が異なったとしても、ステップS04における第2歯車G2の第1歯部G2aの移動距離が異なるだけで、基準位置の設定処理を終了した状態では、第1歯車G1の歯部G1aは、第2歯車G2の第2歯部G2bに接触した状態である。
【0042】
このような駆動装置1で、仮に、
図4に示すように、第1歯車G1の歯部G1aと第2歯車G2の第1歯部G2aとが接触した状態で、駆動装置1は、前回の駆動を終了した場合において、上記に説明した基準位置の設定処理を行った場合を説明する。
【0043】
ステップS01、S02、S03は、上記の基準位置の設定処理と同様である。そして、ステップS04の処理を行うと、第1歯車G1の歯部G1aは、第1の回転方向R11へ、間隙GAの距離だけ移動する。この第1歯車G1の移動により、第2歯車G2は、第1の回転方向R21へ、間隙GAの分だけ移動する。
【0044】
この状態からステップS05の処理を行うと、上記の基準位置の設定処理と同様となる。
【0045】
また、このような駆動装置1で、仮に、
図6に示すように、第1歯車G1の歯部G1aと第2歯車G2の第2歯部G2bとが接触した状態で、駆動装置1は、前回の駆動を終了した場合において、上記に説明した基準位置の設定処理を行った場合を説明する。
【0046】
ステップS01、S02、S03は、上記の基準位置の設定処理と同様である。そして、ステップS04の処理を行うと、第1歯車G1の歯部G1aは、第1の回転方向R11へ、間隙GAの距離だけ移動する。この第1歯車G1の移動により、第1歯車G1の第1歯部G2aは、第2歯車G2の第1歯部G2aへ接触する。
【0047】
この状態からステップS05の処理を行うと、上記の基準位置の設定処理と同様となる。
【0048】
つまり、上記の基準位置の設定処理を行った場合、前回の駆動装置1の停止状態における第1歯車G1の歯部G1aが、いかなる態様であっても、ステップS04における第2歯車G2の移動距離が異なるだけで、基準位置の設定処理を終了した状態では、第1歯車G1の歯部G1aは、第2歯車G2の第2歯部G2bに接触した状態となる。
【0049】
従って、上記のような基準位置の設定処理を行うことによって、次に、駆動装置1を駆動した場合、第1歯車G1の移動と共に直ちに第2歯車G2が移動するか、または、第2歯車G2に対して第1歯車G1が、常に、バックラッシに相当する間隙GAだけ空転してから、第2歯車G2が移動することになる。そのため、駆動装置1を駆動した際に、任意の位置へ移動した際の位置決め精度の再現性を向上することができる。なお、ステップS04とステップS05における第1歯車G1の移動距離は、間隔GA以上であればどのような移動距離でも良い。
【0050】
そして、制御部4、基準位置の設定処理を行った後、第1エンコーダ5の検出結果に基づいて、駆動装置1の各部(例えば、第2アームA2の先端部の位置)のフィードバック制御を行う。
【0051】
なお、上述した駆動装置1の基準位置の設定処理において、ステップS03の処理を省略してもよい。
【0052】
第1実施形態に係る駆動装置1において、基準位置の設定は、駆動装置1に新たに電源が投入されるたびに行う。
【0053】
以上説明したように、第1実施形態に係る駆動装置1は、モータ31と、モータ31側に位置する第1歯車G1および第1歯車G1に噛み合うように配置された第2歯車G2を含む複数の歯車Gで構成された減速機32とを有する駆動部Jと、減速機32を介してモータ31により駆動される可動部Aと、駆動部Jを制御する制御部4と、モータ31の出力軸の相対的な回転位置を検出する第1エンコーダ5と、減速機32の出力軸の絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダ6と、を備える。制御部4は、モータ31を駆動して第1歯車G1を第1の回転方向R11に回転させる。次に、制御部4は、モータ31を駆動して第1歯車G1を、第1の回転方向R11とは逆の第2の回転方向R12に回転させた時点の第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を基準位置として設定する。それらのため、第1実施形態に係る駆動装置1は、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上することができる。その上、インクリメント式の第1エンコーダ5は、アブソリュート式の第2エンコーダ6よりも安価である。そのため、第1実施形態に係る駆動装置1は、モータ31および減速機32のそれぞれにアブソリュート式のエンコーダを備える駆動装置1と比べ、安価である。また、第1実施形態に係る駆動装置1は、モータ31にインクリメント式の第1エンコーダ5を設け、減速機32にアブソリュート式の第2エンコーダ6を設ける。通常、アブソリュート式のエンコーダが制御部4に送信する情報量は、インクリメント式のエンコーダが制御部4に送信する情報量よりも多い。そのため、第1実施形態に係る駆動装置1は、モータ31および減速機32のそれぞれにアブソリュート式のエンコーダを備えた駆動装置1と比べて、第1エンコーダ5および第2エンコーダ6から制御部4に送信される情報量を少なくすることができる。なお、駆動装置1の動作を制御する制御部4は、基準位置の設定を行った後、第1エンコーダ5の検出結果に基づいて、駆動装置1の各部(例えば、第2アームA2の先端部の位置)のフィードバック制御を行う。そのため、制御性の観点において、減速機出力段のエンコーダの検出結果に基づいて、各部の制御(いわゆるフルクローズド制御)を行う駆動装置と比べて、第1実施形態に係る制御部4は、モータ出力段のエンコーダ(ここでは第1エンコーダ5)の検出結果に基づいて駆動装置1の各部の制御(いわゆるセミクローズド制御)を行うため、制御帯域を高くすることができ、制御部4による各部の操作を容易にすることができる。
【0054】
また、第1実施形態に係る駆動装置1において、制御部4は、第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を仮の基準位置として設定する。次に、制御部4は、モータ31を駆動して第1歯車G1を第1の回転方向R11に回転させて、第1歯車G1の歯部G1aを第1の回転方向R11側に位置する第2歯車G2の第1歯部G2aに接触させる。次に、制御部4は、モータ31を駆動して第1歯車G1を、第1の回転方向R11とは逆の第2の回転方向R12に回転させて、第1歯車G1の歯部G1aを、第2の回転方向R12側に位置する第2歯車G2の第2歯部G2bに接触させ、当該接触させた時点の第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を基準位置として設定する。それらのため、第1実施形態に係る駆動装置1は、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上することができる。
【0055】
また、第1実施形態に係る駆動装置1の制御方法は、モータ31と、モータ31側に位置する第1歯車G1および第1歯車G1に噛み合うように配置された第2歯車G2を含む複数の歯車Gで構成された減速機32とを有する駆動部Jと、減速機32を介してモータ31により駆動される可動部Aと、駆動部Jを制御する制御部4と、モータ31の出力軸の相対的な回転位置を検出する第1エンコーダ5と、減速機32の出力軸の絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダ6と、を備える駆動装置1に適用される。制御部4は、モータ31を駆動して第1歯車G1を第1の回転方向R11に回転させる。次に、制御部4は、モータ31を駆動して第1歯車G1を、第1の回転方向R11とは逆の第2の回転方向R12に回転させた時点の第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を基準位置として設定する。それらのため、第1実施形態に係る駆動装置1の制御方法は、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上することができる。
【0056】
第1実施形態に係る制御部4は、第1歯車G1を、第1の回転方向R11に減速機32のバックラッシに対応する所定角度回転させた後に、第2の回転方向R12に所定角度回転させる。そのため、第1実施形態に係る制御部4は、駆動装置1を駆動した際において、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上することができる。なお、制御部4は、第1歯車G1を、第1の回転方向R11に減速機32のバックラッシに対応する所定角度以上回転させた後に、第2の回転方向R12に所定角度以上回転させてもよい。
【0057】
第1実施形態に係る駆動装置1において、制御部4は、仮の基準位置を設定した後、モータ31を駆動して所定位置へ所定の歯部を移動させたうえで、モータ31を駆動して基準位置の設定を行う。駆動装置1において、バックラッシ以外の種々の機械的誤差による影響を抑えるため、予め設定した所定位置へ移動させた後に、上述した制御部4の処理を行うことによって、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性をさらに向上することができる。
【0058】
また、第1実施形態に係る駆動装置1において、基準位置の設定は、駆動装置1に新たに電源が投入されるたびに行う。
【0059】
なお、上述した実施形態に係る駆動装置1は、1つの駆動部Jと、1本の可動部A(第2アームA2)とを備える駆動装置1を設定した。しかし、第1実施形態に係る駆動装置1は、それに限られない。例えば、複数の駆動部Jと、複数の可動部Aとを備える駆動装置1に適用することができる。
【0060】
なお、上述した実施形態に係る駆動装置1は、減速機32の複数の歯車Gの回転軸GSが重力方向Z1に沿うものを説明した。しかし、第1実施形態に係る駆動装置1において、減速機32の複数の歯車Gの回転軸GSが重力方向Z1に直交する場合、すなわち歯車Gの回転方向に重力がかかる場合は、常に重力方向Z1とは逆方向にバックラッシ(間隙GA)が寄せられているため、本発明における基準位置の設定を行わなくてもよい。
【0061】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るロボット100について、
図11、
図12を用いて説明する。
図11は、第2実施形態に係るロボット100の斜視図である。
図12は、
図11に示すロボット100の概略側面図である。なお、以下に説明する第2実施形態に係るロボット100の構成において、第1実施形態に係る駆動装置1の構成と同一のものについては、同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について、以下に説明する。
【0062】
ロボット100は、架台2と、複数の駆動装置本体Dと、制御部4Aと、を備える。
【0063】
第2実施形態に係るロボット100は、いわゆる六軸多関節ロボットである。より具体的に説明すると、ロボット100は、6つの駆動装置本体Dである第1駆動装置本体D11、第2駆動装置本体D12、第3駆動装置本体D13、第4駆動装置本体D14、第5駆動装置本体D15および第6駆動装置本体D16を備える。
【0064】
第1駆動装置本体D11~第6駆動装置本体D16それぞれは、駆動部Jとして、第1駆動部J11、第2駆動部J12、第3駆動部J13、第4駆動部J14、第5駆動部J15、第6駆動部J16を備える。
【0065】
また、第1駆動装置本体D11~第6駆動装置本体D16それぞれは、可動部Aとして、第1アームA11、第2アームA12、第3アームA13、第4アームA14、第5アームA15、第6アームA16を備える。
【0066】
また、第1駆動装置本体D11~第6駆動装置本体D16それぞれは、不図示の第1エンコーダ5および第2エンコーダ6を備える。
【0067】
そして、第6駆動装置本体D16は、さらに、第6アームA16の先端にグリッパであるエンドエフェクタ161を備える。
【0068】
そして、ロボット100は、第1駆動装置本体D11~第6駆動装置本体D16によって、相互に直交するX方向、Y方向、および、Z方向に第6アームA16の先端にあるエンドエフェクタ161を移動可能である。
【0069】
第2実施形態に係る駆動部Jの構成は、第1実施形態に係る駆動装置1の駆動部Jと同様の構成である。また、第2実施形態に係る第1エンコーダ5の構成および第2エンコーダ6の構成は、第1実施形態に係る駆動装置1の第1エンコーダ5の構成および第2エンコーダ6の構成と同様である。
【0070】
第1駆動部J11は、第1アームA11の基端部に設けられ、かつ、架台2に内蔵される。そして、第1駆動部J11は、架台2に対して、Z方向に沿う第1駆動部J11の軸心J11X回り(
図12における矢印C11回り)に、架台2に対して第1アームA11を回転する。第1駆動部J1の減速機32において、複数の歯車Gの回転軸GSは重力方向Z1に沿う。
【0071】
第1アームA11は、棒状に設けられ、軸心A11Xに沿って延在する。軸心A11Xは、Z方向に沿って配置される。
【0072】
第2駆動部J12は、第1アームA11の先端部であって、かつ、第2アームA12の基端部に設けられる。そして、第2駆動部J12は、Y方向に沿う第2駆動部J12の軸心J12X回り(
図12における矢印C12回り)に、第2アームA12を第1アームA11に対して揺動する。第2駆動部J2の減速機32において、複数の歯車Gの回転軸GSは重力方向Z1に直交する。
【0073】
第2アームA12は、棒状に設けられ、軸心A12Xに沿って延在する。軸心A12Xは、
図11、
図12に示す状態では、Z方向に沿って配置される。
【0074】
第3駆動部J13は、第2アームA12の先端部であって、かつ、第3アームA13の基端部に設けられる。そして、第3駆動部J13は、Y方向に沿う第3駆動部J13の軸心J13X回り(
図12における矢印C13回り)に、第3アームA13を第2アームA12に対して揺動する。第3駆動部J3の減速機32において、複数の歯車Gの回転軸GSは重力方向Z1に直交する。
【0075】
第3アームA13は、棒状に設けられ、軸心A13Xに沿って延在する。軸心A13Xは、
図11、
図12に示す状態では、X方向に沿って配置される。
【0076】
第4駆動部J14は、第3アームA13の先端部であって、第4アームA14の基端部に設けられる。そして、第4駆動部J14は、第4駆動部J14の軸心J14X回り(
図12における矢印C14回り)に、第4アームA14を第3アームA13に対して回転する。例えば、
図11、
図12に示す状態では第4駆動部J14の軸心J14Xは、X方向に沿う。第4駆動部J4の減速機32において、
図11、
図12に示す状態では、複数の歯車Gの回転軸GSは重力方向Z1に直交する。
【0077】
第4アームA14は、棒状に設けられ、軸心A14Xに沿って延在する。軸心A14Xは、
図11、
図12に示す状態では、X方向に沿って配置される。
【0078】
第5駆動部J15は、第4アームA14の先端部であって、かつ、第5アームA15の基端部に設けられる。そして、第5駆動部J15は、Y方向に沿う第5駆動部J15の軸心J15X回り(
図12における矢印C15回り)に、第5アームA15を第4アームA14に対して揺動する。第5駆動部J5の減速機32において、
図11、
図12に示す状態では、複数の歯車Gの回転軸GSは重力方向Z1に直交する。
【0079】
第5アームA15は、棒状に設けられ、軸心A15Xに沿って延在する。軸心A15Xは、
図11、
図12に示す状態では、X方向に沿って配置される。
【0080】
第6駆動部J16は、第5アームA15の先端部であって、第6アームA16の基端部に設けられる。そして、第6駆動部J16は、第6駆動部J16の軸心J16X回り(
図12における矢印C16回り)に、第6アームA16を第5アームA15に対して回転する。例えば、
図11、
図12に示す状態では第6駆動部J16の軸心J16Xは、X方向に沿う。第6駆動部J6の減速機32において、
図11、
図12に示す状態では、複数の歯車Gの回転軸GSは重力方向Z1に直交する。
【0081】
第6アームA16は、棒状に設けられ、軸心A16Xに沿って延在する。軸心A16Xは、
図11、
図12に示す状態では、X方向に沿って配置される。第6アームA16の先端には、対象物を把持するエンドエフェクタ161が設けられる。
【0082】
制御部4Aは、ロボット100の各部を統括的に制御する機能を有する。言い換えると、制御部4Aは、複数の駆動装置本体Dを制御する。例えば、制御部4Aは、予め作成されたデータに基づいて、複数の駆動装置本体Dを駆動することによって第6アームA16の先端部を、X方向、Y方向、および、Z方向に移動すると共に、第6アームA16の先端部に設けられたハンドで対象物を把持し、かつ、対象物が基準位置から所定の載置位置まで、対象物の姿勢を変えながら移動させる機能を有する。制御部4Aは、不図示の記憶部を有し、記憶部は、制御部4Aが受信した各種のデータを記憶する。また、制御部4Aは、モータ31に対して電気的に接続され、第1エンコーダ5に対して電気的に接続され、第2エンコーダ6に対して電気的に接続される。
【0083】
このようなロボット100において、電源をオンした場合、制御部4Aは、上述した駆動装置1と同様の基準位置の設定処理を行う。より具体的に説明すると、制御部4Aは、複数の駆動装置本体Dのそれぞれに対して、基準位置の設定処理を行う。
【0084】
図13は、従来のロボットにおいて、駆動回数と、第6アームの先端部が任意の位置へ移動した際の位置決め精度を示すグラフである。
図13において、横軸の駆動回数とは、ロボットの電源をオフにした後、電源をオンにして駆動し、毎回同じ任意の位置へ第6アームの先端部を移動させることを繰り返した時、何回目に駆動したものかを示したものである。また、
図13において、縦軸の位置決め再現性とは、初回駆動時に第6アームの先端部が移動した位置をゼロとし、その後、電源のオンとオフを繰り返して駆動した際の第6アームの先端部の位置と初回駆動時の位置の差を示したものである。従来のロボットは、電源をオンした際に、本発明における基準位置の設定処理を行わないため、ロボットを駆動した際に、第6アームの先端部の基準位置が任意の位置へ移動するごとにズレが生じる。より具体的に説明すると、従来のロボットを10回駆動した場合、第6アームの先端部の初回との差は、-143[μm]~134[μm]の範囲となる。
【0085】
図14は、第2実施形態に係るロボット100において、駆動回数と、第6アームA16の先端部が任意の位置へ移動した際の位置決め精度を示すグラフである。
図14の横軸および縦軸において、従来のロボットを本発明に係るロボット100に変えたことを除いて、
図13と同様である。第2実施形態に係るロボット100は、電源をオンした際に、本発明における基準位置の設定処理を行うため、ロボット100を駆動した際に、第6アームA16の先端部の基準位置のズレがわずかである。より具体的に説明すると、第2実施形態に係るロボット100を10回駆動した場合、第6アームA16の先端部の初回との差は、-9[μm]~7[μm]の範囲となる。
【0086】
以上説明したように、第2実施形態に係るロボット100は、複数の駆動装置本体Dと、制御部4Aと、を備える。複数の駆動装置本体Dそれぞれは、モータ31と、モータ31側に位置する第1歯車G1および第1歯車G1に噛み合うように配置された第2歯車G2を含む複数の歯車Gで構成された減速機32とを有する駆動部Jと、減速機32を介してモータ31により駆動される可動部Aと、モータ31の出力軸の相対的な回転位置を検出する第1エンコーダ5と、減速機32の出力軸の絶対的な回転位置を検出する第2エンコーダ6と、を備える。制御部4Aは、複数の駆動装置本体Dそれぞれについて、モータ31を駆動して第1歯車G1を第1の回転方向R11に回転させる。次に、制御部4Aは、モータ31を駆動して第1歯車G1を、第1の回転方向R11とは逆の第2の回転方向R12に回転させた時点の第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を基準位置として設定する。それらのため、第2実施形態に係るロボット100は、上述した駆動装置1と同様の作用・効果を奏することができる。特に、ロボット100は、6つの駆動装置本体Dを有し、ロボット100の動作(第6アームA16における先端部)を制御する制御部4Aは、基準位置の設定を行った後、第1エンコーダ5の検出結果に基づいて、ロボット100の各部(例えば、第6アームA16の先端部の位置)のフィードバック制御を行う。ロボット100の動作を制御する制御部4Aは、基準位置の設定を行った後、第1エンコーダ5の検出結果に基づいて各部のフィードバック制御を行う。そのため、制御性の観点において、減速機出力段のエンコーダの検出結果に基づいて、各部の制御(いわゆるフルクローズド制御)を行うロボットと比べて、第2実施形態に係る制御部4Aは、モータ出力段のエンコーダ(ここでは第1エンコーダ5)の検出結果に基づいてロボット100の各部の制御(いわゆるセミクローズド制御)を行うため、制御帯域を高くすることができ、制御部4Aによる各部の操作を容易にすることができる。
【0087】
その上、ロボット100の先端に取り付けたエンドエフェクタ161にて対象物を把持する場合、架台2に近い箇所に位置する第1駆動装置本体D11とエンドエフェクタ161との間に距離があるため、架台2に近い箇所に位置する第1駆動装置本体D11のバックラッシによる位置ズレがわずかな場合でも、エンドエフェクタ161に与える影響がおおきい。しかしながら、第2実施形態に係るロボット100では、上記の構成によって、第1駆動装置本体D11等のバックラッシによる位置ズレを抑制することができるため、バックラッシによるエンドエフェクタ161に与える影響を抑制することができる。
【0088】
また、第2実施形態に係るロボット100において、制御部4Aは、第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を仮の基準位置として設定する。次に、制御部4Aは、モータ31を駆動して第1歯車G1を第1の回転方向R11に回転させて、第1歯車G1の歯部G1aを第1の回転方向R11側に位置する第2歯車G2の第1歯部G2aに接触させる。次に、制御部4Aは、モータ31を駆動して第1歯車G1を、第1の回転方向R11とは逆の第2の回転方向R12に回転させて、第1歯車G1の歯部G1aを、第2の回転方向R12側に位置する第2歯車G2の第2歯部G2bに接触させ、当該接触させた時点の第2エンコーダ6の検出結果から取得した第1エンコーダ5の回転位置を基準位置として設定する。それらのため、第2実施形態に係るロボット100は、任意の位置へ移動した際の位置決め再現性を向上することができる。
【0089】
なお、上述したロボット100において、複数の駆動装置本体Dそれぞれは、制御部4Aによる基準位置の設定処理を行うものを説明した。しかし、第2実施形態に係るロボット100は、それに限られない。例えば、ロボット100の制御部4Aは、減速機32の複数の歯車Gの回転軸GSが重力方向Z1に直交している駆動装置本体Dについて、本発明に係る基準位置の設定を行わなくてもよい。例えば、第2実施形態に係るロボット100において、
図11、
図12に示す状態では、第2駆動装置本体D12、第3駆動装置本体D13、第5駆動装置本体D15のそれぞれにおいて、減速機32の複数の歯車Gの回転軸GSが重力方向Z1に直交している。そのため、制御部4Aは、基準位置が
図11、
図12に示す状態である場合、第2駆動装置本体D12、第3駆動装置本体D13、第5駆動装置本体D15について、従来の基準位置の設定を行えばよい。
【0090】
また、ロボット100の制御部4Aは、モータ31を停止した際、重力の作用によって、常時、第1歯車G1の歯部G1aが第2歯車G2の第1歯部G2aに接触する駆動装置本体D、または、常時、第1歯車G1の歯部G1aが第2歯車G2の第2歯部G2bに接触する駆動装置本体Dについて、基準位置の設定を行わなくてもよい。このようなロボット100によれば、制御部4Aによる各部の操作を容易にすることができる。
【0091】
なお、上述した実施形態に係るロボット100は、いわゆる六軸多関節ロボットであって、6つの駆動装置本体Dを備えるものを説明した。しかし、第2実施形態に係るロボット100は、それに限られない。例えば、本発明に係る基準位置の設定を六軸多関節ロボットではない、他のロボットに適用することができる。
【0092】
(第3実施形態)
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、第1エンコーダ5及び第2エンコーダ6を用いて、第6アームA16の先端部に取り付けられるエンドエフェクタ161の位置を検出していたが、実施の形態はこれに限られない。例えば、
図15に示すようなカメラ等の検出装置を用いて、エンドエフェクタ161の位置を検出してもよい。
図15は、第3実施形態に係るロボットの位置検出システムの概略側面図である。
図15に示すように、第3実施形態における位置検出システム1000は、ロボット200と、検出装置であるカメラ300とを備える。
【0093】
図15に示すように、第3実施形態におけるロボット200は、架台2と、
図11に示す複数の駆動装置本体Dと、制御部4Bと、を備える。ロボット200の6つの駆動装置本体D11~D16は、それぞれ駆動部JBと、
図11に示す可動部Aとを備える。
【0094】
第3実施形態における制御部4Bは、ロボット200の各部と、カメラ300とを統括的に制御する機能を有する。
図15及び
図16に示すように、制御部4Bは、ロボット200が備える複数の駆動部JBのモータ31と、カメラ300と対して電気的に接続される。
図16は、
図15に示すロボットの駆動装置が有する駆動部を示す模式図である。
図16に示すように、第3実施形態における駆動部JBは、例えば第1エンコーダ5及び第2エンコーダ6等のセンサを備えないような構成であってもよい。
【0095】
制御部4Bは、撮影されたロボット200のエンドエフェクタ161のカメラ座標系における位置を特定する。また、制御部4Bは、撮影されたエンドエフェクタ161のカメラ座標系における位置をもとに、ロボット200のロボット座標系に基づく位置指令を生成し、エンドエフェクタ161の位置制御を行う。
【0096】
カメラ等の検出装置を用いる場合、ロボット200の動作により移動するエンドエフェクタ161のロボット座標系における位置と、エンドエフェクタ161をカメラ300で撮影することにより検出されるエンドエフェクタ161のカメラ座標系における位置の間に誤差が生じないよう、ロボット座標系とカメラ座標系の調整(キャリブレーション処理)を行う。
【0097】
また、第3実施形態のロボット200において、第6アームA16の先端に取り付けられたエンドエフェクタ161には、キャリブレーション処理時、例えばARマーカ等の計測用マーカ299が取り付けられる。
【0098】
カメラ300は、例えば
図15に示す作業領域の天井Cに固定されており、エンドエフェクタ161に取り付けられた計測用マーカ299を撮影する。カメラ300は、例えば撮影された対象物までの距離及び方向を特定できるステレオカメラである。また、カメラ300の代わりに、超音波や電磁波を送受信することにより、対象物までの距離や方向を検出できる装置を検出装置として用いてもよい。また、カメラ300は、把持対象となるワークWを合わせて撮影してもよい。
【0099】
キャリブレーション処理の精度を向上するには、
図17に示すように、ロボット200の位置及び姿勢を変化させて、複数の位置・姿勢におけるエンドエフェクタ161をカメラ300で撮影することが望まれる。
図17は、複数のキャリブレーション位置におけるロボットの状態を示す概略側面図である。まず、カメラ300は、エンドエフェクタ161が
図17の(a)に示す位置にある状態において、計測用マーカ299を撮影する。次に、エンドエフェクタ161は、駆動部J13が矢印に示す方向に回転することにより、
図17の(b)に示す位置に移動する。そして、カメラ300は、移動後の計測用マーカ299を撮影する。
【0100】
しかし、ロボット200の位置・姿勢を変化させる際に、ロボット200の複数の駆動部J11~J16における歯車のバックラッシにより、エンドエフェクタ161の位置の誤差が生じる。かかる誤差は、キャリブレーション処理の精度の低下の原因となる。
【0101】
そこで、第3実施形態においても、各駆動部J11~J16における複数の第1歯車G1を片寄せさせる(第1歯車G1の歯部を、第2歯車G2の歯部に接触させる)ように第1歯車G1を動作させてからキャリブレーション位置に移動することにより、歯車の位置のズレが抑制される。
【0102】
図18は、第3実施形態に係る位置検出システムの制御方法を示すフロー図である。まず、キャリブレーション処理が開始されると、制御部4Bは、ロボット200のエンドエフェクタ161を、キャリブレーション開始位置に移動させる(ステップS11)。キャリブレーション開始位置は、第2実施形態における仮の基準位置に相当するものである。これにより、バックラッシ以外の機械的誤差等の影響が抑制される。なお、ステップS11においては、各駆動装置本体D11~D16における第1歯車G1と第2歯車G2との位置関係が、
図4~
図6に示すいずれの場合であるかは特定されていない。
【0103】
次に、制御部4Bは、n番目のキャリブレーション位置を特定する。まず、制御部4Bは、複数のキャリブレーション位置の番号を示すカウンタnをインクリメントする(ステップS12)。
【0104】
次に、制御部4Bは、インクリメントされたn番目のキャリブレーション位置への移動軌道を算出する(ステップS13)。第3実施形態において、カウンタnの初期値は例えばゼロである。すなわち、制御部4Bは、1番目のキャリブレーション位置から、移動軌道の算出を開始する。n番目のキャリブレーション位置への移動軌道は、例えば各駆動装置本体D11~D16の回転角度等により計算される。移動軌道は、例えば制御部4Bにより算出されるが、これに限られず、例えば図示しない外部装置により算出され、制御部4Bに送信されるような構成であってもよい。
【0105】
次に、制御部4Bは、算出された移動軌道を用いて、エンドエフェクタ161を、n番目のキャリブレーション位置へ移動させる(ステップS14)。その際、制御部4Bは、例えば各駆動装置本体D11~D16を順番に回転させてもよく、又は複数の駆動装置本体Dを同時に回転させてもよい。
【0106】
そして、制御部4Bは、ステップS15~S16において、第2実施形態と同様に、バックラッシを片寄せするための処理を行う。なお、ステップS15~S16についても、各駆動装置本体D11~D16について順番に実行させても、同時に実行させてもよい。
【0107】
まず、制御部4Bは、駆動部JBを目標とするキャリブレーション位置よりも所定量多く駆動するよう、第1歯車G1を第1の回転方向R11へ回転し(ステップS15)、ステップS16へ進む。所定量は、減速機32のバックラッシ分よりも多い量であればよい。これにより、第1歯車G1の歯部G1aが、
図9に示すように、第1の回転方向R11側に位置する第2歯車G2の第1歯部G2aに接触する。
【0108】
次に、制御部4Bは、駆動部JBをステップS15の所定量と同じだけ逆駆動することで、第1歯車G1を第2の回転方向R12へ回転し(ステップS16)、ステップS17に進む。これにより、ステップS16において、目標とするキャリブレーション位置に到達する。
【0109】
その後、制御部4Bは、カメラ300で、エンドエフェクタ161に付された計測用マーカ299を撮影する(ステップS17)。すなわち、カメラ300は、第1歯車G1が第1の回転方向R11に回転した後に第2の回転方向R12に回転した時点における、計測用マーカ299の位置を検出する。第3実施形態においては、第1歯車G1及び第2歯車G2が片寄せされた状態からキャリブレーション位置に移動し、計測用マーカ299の撮影が行われるので、バックラッシの影響が抑制される。
【0110】
そして、制御部4Bは、全てのキャリブレーション位置でマーカの撮影が実施されたか否かを判定する(ステップS21)。実施されていないキャリブレーション位置があると判定された場合(ステップS21:No)、制御部4BはステップS12に戻って処理を繰り返す。
【0111】
一方、全てのキャリブレーション位置でマーカの撮影が実施されたと判定された場合(ステップS21:Yes)、制御部4Bは、ロボット座標系における位置情報と、カメラ座標系における位置情報とを用いて、キャリブレーション値を演算し(ステップS22)、キャリブレーション処理を終了する。これにより、バックラッシの影響が抑制された状態において、カメラ座標系とロボット座標系とのキャリブレーション処理が行われる。
【0112】
以上説明したように、第3実施形態における位置検出システム1000は、ロボット200と、検出装置(カメラ)300とを備える。ロボット200は、複数の駆動装置本体D11~D16と、制御部4Bと、計測用マーカと、を備える。複数の駆動装置本体D11~D16それぞれは、モータ31と、モータ31側に位置する第1歯車G1および第1歯車G1に噛み合うように配置された第2歯車G2を含む複数の歯車で構成された減速機32とを有する駆動部JBと、減速機32を介してモータ31により駆動される可動部Aと、を備える。制御部4Bは、複数の駆動装置本体D11~D16それぞれについて、モータ31を駆動して第1歯車G1を第1の回転方向に回転させ、モータ31を駆動して第1歯車G1を、第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に回転させる。検出装置(カメラ)300は、第1歯車G1が第1の回転方向に回転した後に第2の回転方向に回転した時点における、計測用マーカ299の位置を検出する。かかる構成によれば、検出装置(カメラ)300を用いてエンドエフェクタ161の位置決めを精度よく行うことができる。また、ワークWとの相対的な位置関係において、ロボットのエンドエフェクタ161の位置決めを行うことができる。
【0113】
また、カメラ300は、制御部4Bからの指示に基づき、計測用マーカ299の位置を検出するが、これに限られず、カメラ300が、制御部4Bとは異なる別の制御装置により制御されてもよい。
【0114】
(第4実施形態)
第3実施形態において、複数の駆動装置本体D11~D16は、複数のキャリブレーション位置への移動を繰り返す。この場合において、計測用マーカ299をn-1番目のキャリブレーション位置から第n番目のキャリブレーション位置に移動する際、回転方向が変化しない場合は、バックラッシの状態も変化しないため、誤差が生じない。なお、n-1番目のキャリブレーション位置は、第1の位置の一例であり、n番目のキャリブレーション位置は、第2の位置の一例である。
【0115】
そこで、第4実施形態における位置検出システム2000は、
図19に示すように、第1歯車G1の回転方向に応じて、バックラッシを片寄せする動作を省略する。
図19は、第4実施形態に係る位置検出システムの制御方法を示すフロー図である。なお、
図19において、
図18に示すフロー図と同様の処理には同一のステップ番号を付し、詳細な説明は省略する。また、位置検出システム2000は、
図15に示す制御部4Cが制御部4Bとは異なる処理を行う以外、外観に相違はないため、位置検出システム2000の図示を省略する。
【0116】
まず、キャリブレーション処理が開始されると、制御部4Cは、ロボット200のエンドエフェクタ161を、キャリブレーション開始位置に移動させる(ステップS11)。次に、制御部4Cは、複数のキャリブレーション位置の番号を示すカウンタnをインクリメントする(ステップS12)。次に、制御部4Cは、インクリメントされたn番目のキャリブレーション位置への移動軌道を算出する(ステップS13)。
【0117】
そして、制御部4Cは、算出された移動軌道に基づき、いずれかの駆動装置本体D11~D16の駆動部JBにおけるn番目のキャリブレーション位置への移動における回転方向が、前回、すなわちn-1番目のキャリブレーション位置への移動における最後の回転方向(以下、「第5の回転方向」と表記する場合がある)と同一であるか否かを判定する(ステップS31)。回転方向が同一であると判定された場合(ステップS31:Yes)、例えば駆動部JBを第5の回転方向に回転させる場合、制御部4Cは、駆動部JBを、n番目のキャリブレーション位置へ移動させ(ステップS33)、ステップS37に進む。
【0118】
例えば、第5の回転方向が第2の回転方向R12である場合において、n番目のキャリブレーション位置への移動における回転方向も第2の回転方向R12であるとき、すなわち第5の回転方向に回転させるときはバックラッシの状態が変化しないため、ステップS35~S36における片寄せ動作を省略できる。
【0119】
一方、回転方向が同一ではない、例えば、第5の回転方向とは異なる第3の回転方向と判定された場合(ステップS31:No)、制御部4Cは、駆動部JBを、n番目のキャリブレーション位置へ移動させた後に(ステップS34)、ステップS35に進む。
【0120】
そして、制御部4Cは、ステップS35~S36において、第3実施形態と同様に、バックラッシを片寄せするための処理を行う。まず、制御部4Cは、駆動部JBを目標となるキャリブレーション位置よりも所定量だけ多く駆動するよう、第1歯車G1を第3の回転方向(例えば、第1の回転方向R11)へ回転し(ステップS35)、ステップS36へ進む。所定量は、減速機32のバックラッシ分よりも多い量であればよい。次に、制御部4Cは、駆動部JBをステップS35の所定量と同じだけ逆駆動することで、第1歯車G1を第4の回転方向(例えば、第2の回転方向R12)へ回転し(ステップS36)、ステップS37に進む。
【0121】
第4実施形態において、第3の回転方向は、n-1番目のキャリブレーション位置への移動における回転方向とは反対の回転方向であり、第4の回転方向は、n-1番目のキャリブレーション位置への移動における回転方向と同一の回転方向である。言い換えれば、第3の回転方向は第5の回転方向と反対の回転方向であり、第4の回転方向は第5の回転方向と同一の回転方向である。
【0122】
なお、n=1である場合、すなわちキャリブレーション開始位置から1番目のキャリブレーション開始位置へ駆動部JBの移動を開始させる場合は、第1歯車G1と第2歯車G2との位置関係が特定されていない。また、n-1番目のキャリブレーション位置への移動における最後の回転方向も特定されていないため、ステップS33における回転方向の判定結果にかかわらず、ステップS35~S36の処理を行うような構成であってもよい。
【0123】
そして、制御部4Cは、全ての駆動部JBについて駆動済みか否かを判定する(ステップS37)。駆動済みでない駆動部JBがあると判定された場合(ステップS37:No)、制御部4CはステップS31に戻って処理を繰り返す。
【0124】
一方、全ての駆動部JBについて駆動済みであると判定された場合(ステップS37:Yes)、制御部4Cは、カメラ300で、エンドエフェクタ161に付された計測用マーカ299を撮影する(ステップS17)。この場合において、制御部4Bは、ステップS33において第1歯車G1を回転させた後に、第1歯車G1を第3の回転方向に回転させることなく、カメラ300に、n番目のキャリブレーション位置における計測用マーカ299の位置の検出を指示する。
【0125】
そして、制御部4Cは、全てのキャリブレーション位置でマーカの撮影が実施されたか否かを判定する(ステップS21)。実施されていないキャリブレーション位置があると判定された場合(ステップS21:No)、制御部4CはステップS12に戻って処理を繰り返す。
【0126】
一方、全てのキャリブレーション位置でマーカの撮影が実施されたと判定された場合(ステップS21:Yes)、制御部4Cは、ロボット座標系における位置情報と、カメラ座標系における位置情報とを用いて、キャリブレーション値を演算し(ステップS22)、キャリブレーション処理を終了する。
【0127】
以上説明したように、第4実施形態における位置検出システム2000において、検出装置(カメラ)300は、制御部4Cからの指示に基づき、計測用マーカ299の位置を検出する。制御部4Cは、複数の駆動装置本体D11~D16それぞれについて、第1歯車G1を第3の回転方向に回転させた後に第4の回転方向に回転させることにより、計測用マーカ299を第1の位置に移動させる。そして、検出装置(カメラ)300に、第1の位置における計測用マーカ299の位置の検出を指示した後において、モータ31を駆動して第1歯車G1を第4の回転方向に回転させることにより、計測用マーカ299の位置を第1の位置から第2の位置に移動させた場合、第1歯車G1を第3の回転方向に回転させることなく、検出装置(カメラ)300に第2の位置における計測用マーカ299の位置の検出を指示する。かかる構成によれば、バックラッシの状態に変化が生じない場合には片寄せ動作を省略するので、処理を簡略化できる。
【0128】
また、第4実施形態においては、制御部4Cが、複数の駆動装置本体D11~D16を順次回転させる処理について説明したが、複数の駆動装置本体D11~D16を同時に回転させる、例えばステップS31~S36の処理を、複数の駆動装置本体D11~D16について同時並行で実行してもよい。第2実施形態及び第3実施形態においても同様に、複数の駆動装置本体D11~D16を順次回転させても、同時に回転させてもよい。
【0129】
なお、第4実施形態における、各駆動部JBの回転方向に応じて処理を変更する構成を、第2実施形態における処理に適用してもよい。また、第3実施形態や第4実施形態においても、第2実施形態と同様に、
図11、
図12に示す状態で重力方向Z1に直交している駆動装置本体D12,D13及びD15について、回転方向に関係なく、ステップS35及びS36における片寄せ動作を行わないような構成であってもよい。
【0130】
以上、第1実施形態に係る駆動装置1、並びに第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態に係るロボット100に基づいて説明したが、本発明は各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能であることも言うまでもない。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、第3実施形態及び第4実施形態における位置検出システムにおいて、ロボット200の代わりに第2実施形態におけるロボット100や、第1実施形態における駆動装置1の位置を検出してもよい。そのような要旨を逸脱しない範囲での種々の変更を行ったものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0131】
1 駆動装置、31 モータ、32 減速機、31S 第1軸(出力軸)、32S 第2軸(出力軸)、4,4A,4B,4C 制御部、5 第1エンコーダ、6 第2エンコーダ、100,200 ロボット、161 エンドエフェクタ、299 計測用マーカ、300 検出装置(カメラ)、1000,2000 位置検出システム、A 可動部、A2 第2アーム(可動部)、A11 第1アーム(可動部)、A12 第2アーム(可動部)、A13 第3アーム(可動部)、A14 第4アーム(可動部)、A15 第5アーム(可動部)、A16 第6アーム(可動部)、D 駆動装置本体、D11 第1駆動装置本体、D12 第2駆動装置本体、D13 第3駆動装置本体、D14 第4駆動装置本体、D15 第5駆動装置本体、D16 第6駆動装置本体、J,JB 駆動部、J11 第1駆動部、J12 第2駆動部、J13 第3駆動部、J14 第4駆動部、J15 第5駆動部、J16 第6駆動部、GA 間隙、GS 回転軸、G1 第1歯車、G2 第2歯車、W ワーク