IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋セメント株式会社の特許一覧 ▶ 日本ヒューム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-筒状のコンクリート杭の製造方法 図1
  • 特開-筒状のコンクリート杭の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024750
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】筒状のコンクリート杭の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 21/34 20060101AFI20250214BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20250214BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20250214BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20250214BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20250214BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20250214BHJP
   E02D 5/30 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B28B21/34
C04B28/02
C04B18/14 Z
C04B14/04 Z
C04B40/02
C04B20/00 B
E02D5/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128985
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 克仁
(72)【発明者】
【氏名】森 寛晃
(72)【発明者】
【氏名】岸良 竜
(72)【発明者】
【氏名】河野 克哉
(72)【発明者】
【氏名】早野 博幸
(72)【発明者】
【氏名】秋元 昌哲
(72)【発明者】
【氏名】江口 秀男
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏嗣
(72)【発明者】
【氏名】石河 蔵之助
【テーマコード(参考)】
2D041
4G112
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA03
2D041CA01
2D041CB06
2D041DB03
2D041DB15
2D041DB16
4G112PA03
(57)【要約】
【課題】成形性に優れ、かつ、高い圧縮強度を有する筒状のコンクリート杭を製造することができる方法を提供する。
【解決手段】セメントとシリカフュームと無機粉末と細骨材と粗骨材とセメント分散剤と水を含み、かつ、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、セメントの割合が55~65体積%、シリカフュームの割合が5~25体積%、無機粉末の割合が15~35体積%であり、水と、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計の質量比が0.11~0.16であり、粗骨材の割合が15~40体積%あるセメント組成物を、遠心成形用の型枠に供給した後、該型枠を振動させながら遠心成形する工程と、未硬化の成形体を封緘養生または気中養生した後脱型する工程と、硬化した成形体を蒸気養生して筒状のコンクリート杭を得る工程を含む筒状のコンクリート杭の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、BET比表面積が15~25m/gであるシリカフュームと、50%体積累積粒径が0.8~5μmである無機粉末と、細骨材と、粗骨材と、セメント分散剤と、水を含むセメント組成物を、遠心成形用の型枠に供給した後、該型枠を振動させながら、上記セメント組成物を遠心成形することで、未硬化の筒状の成形体を得る成形工程と、
上記未硬化の筒状の成形体を、10~40℃で20時間以上、封緘養生または気中養生した後、上記型枠から脱型し、硬化した筒状の成形体を得る常温養生工程と、
上記硬化した筒状の成形体について、70℃以上100℃未満で12時間以上、蒸気養生して、筒状のコンクリート杭を得る蒸気養生工程、
を含み、
上記セメント組成物において、上記セメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計量100体積%中、上記セメントの割合が55~65体積%、上記シリカフュームの割合が5~25体積%、上記無機粉末の割合が15~35体積%であり、
上記水と、上記セメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計の質量比(水/(上記セメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計))が0.11~0.16であり、
上記セメント組成物中の上記粗骨材の割合が15~40体積%であることを特徴とする筒状のコンクリート杭の製造方法。
【請求項2】
上記型枠が、該型枠の外周に設けられた複数の環状凸部を有し、
上記成形工程において、上記型枠の長手方向を軸として上記型枠を回転させながら、上記環状凸部の少なくとも一つの鉛直方向下部に配設された、上記型枠に振動を加えるための加振手段を用いて、上記型枠に、上記環状凸部を介して鉛直方向の振動を与える請求項1に記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
【請求項3】
上記成形工程において、上記型枠の長手方向を軸として上記型枠を10G以下の遠心加速度で回転させながら、上記型枠を振動させる請求項2に記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
【請求項4】
上記粗骨材の最大粒径が、10~25mmである請求項1又は2に記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
【請求項5】
上記筒状のコンクリート杭の、「JIS A 1136:2018(遠心力締固めコンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した圧縮強度が175N/mm以上である請求項1又は2に記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
【請求項6】
上記筒状のコンクリート杭の、外径から内径を差し引いた値の半分(厚み)が30~300mmである請求項1又は2に記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
【請求項7】
上記筒状のコンクリート杭の外径が150~3,000mmである請求項1又は2に記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のコンクリート杭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持力杭を用いた工法として、先端支持力係数αが250以上である支持力杭を用いた高支持力工法が主流となっているが、近年、先端支持力係数αが1,000を超える支持力杭を用いた工法も開発されている。
既製の支持力杭に用いられるコンクリートの設計基準強度の主流は80~105N/mm程度であるが、上記設計基準強度のコンクリートを用いた支持力杭の先端支持力係数αを大きくする(例えば、600を超える)には、支持力杭の厚みを大きくする必要がある。しかし、上記厚みを大きくした場合、掘削残土の増加や、支持力杭の物流コストの増大といった問題が発生する。このため、支持力杭の厚みを維持しつつ先端支持力係数αを大きくした支持力杭を製造しうる高強度のコンクリートが求められている。
【0003】
圧縮強度に優れた遠心成形コンクリート管の製造方法として、特許文献1には、粗骨材、細骨材、高強度化用微粒状混和材、減水剤及びセメントに水を加えて混練し、遠心成形することによりコンクリート管を成形する高強度遠心成形コンクリート管の製造方法であって、前記セメント又は、セメントと微粒状混和材からなる総紛体重量が650kg/m以上であり、該総紛体重量に対する水の比率(水紛体比)が21重量%以下、総骨材容積に対する細骨材容積の比率(細骨材率s/a)が45%以下、セメントペーストの細骨材空隙に対する充填率を示すペースト細骨材比αが2.0<α<3.0、モルタルの粗骨材空隙に対する充填率を示すモルタル粗骨材比βが2.5<β<3.6であり、前記減水剤の添加量を調整することによりスランプフロー値を400mm~800mm、50cmスランプフロー時間を15秒以上、とすることを特徴としてなる高強度遠心成形コンクリート管の製造方法が記載されている。
また、高い圧縮強度を有する材質からなる杭として、特許文献2には、セメント質硬化体からなる杭であって、上記セメント質硬化体が、セメント、BET比表面積が15~25m/gのシリカフューム、50%体積累積粒径が0.8~5μmの無機粉末、最大粒径が1.2mm以下の骨材A、高性能減水剤、消泡剤及び水を含み、かつ上記セメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計量100体積%中、上記セメントの割合が55~65体積%、上記シリカフュームの割合が5~25体積%、上記無機粉末の割合が15~35体積%であるセメント組成物の硬化体であることを特徴とする杭が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-32246号公報
【特許文献2】特開2017-95914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、成形性に優れ、かつ、高い圧縮強度を有する筒状のコンクリート杭を製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメント、シリカフューム、無機粉末、細骨材、粗骨材、セメント分散剤、及び水を含むセメント組成物を、遠心成形用の型枠に供給した後、該型枠を振動させながら遠心成形する工程と、未硬化の成形体を封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型する工程と、筒状の成形体を蒸気養生して、筒状のコンクリート杭を得る工程を含み、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、セメントの割合が55~65体積%、シリカフュームの割合が5~25体積%、無機粉末の割合が15~35体積%であり、(水/(セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計))が0.11~0.16であり、セメント組成物中の粗骨材の割合が15~40体積%である製造方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供するものである。
[1] セメントと、BET比表面積が15~25m/gであるシリカフュームと、50%体積累積粒径が0.8~5μmである無機粉末と、細骨材と、粗骨材と、セメント分散剤と、水を含むセメント組成物を、遠心成形用の型枠に供給した後、該型枠を振動させながら、上記セメント組成物を遠心成形することで、未硬化の筒状の成形体を得る成形工程と、上記未硬化の筒状の成形体を、10~40℃で20時間以上、封緘養生または気中養生した後、上記型枠から脱型し、硬化した筒状の成形体を得る常温養生工程と、上記硬化した筒状の成形体を、70℃以上100℃未満で12時間以上、蒸気養生して、筒状のコンクリート杭を得る蒸気養生工程、を含み、上記セメント組成物において、上記セメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計量100体積%中、上記セメントの割合が55~65体積%、上記シリカフュームの割合が5~25体積%、上記無機粉末の割合が15~35体積%であり、上記水と、上記セメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計の質量比(水/(上記セメント、上記シリカフューム及び上記無機粉末の合計))が0.11~0.16であり、上記セメント組成物中の上記粗骨材の割合が15~40体積%であることを特徴とする筒状のコンクリート杭の製造方法。
【0007】
[2] 上記型枠が、該型枠の外周に設けられた複数の環状凸部を有し、上記成形工程において、上記型枠の長手方向を軸として上記型枠を回転させながら、上記環状凸部の少なくとも一つの鉛直方向下部に配設された、上記型枠に振動を加えるための加振手段を用いて、上記型枠に、上記環状凸部を介して鉛直方向の振動を与える前記[1]に記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
[3] 上記成形工程において、上記型枠の長手方向を軸として上記型枠を10G以下の遠心加速度で回転させながら、上記型枠を振動させる前記[2]に記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
[4] 上記粗骨材の最大粒径が、10~25mmである前記[1]~[3]のいずれかに記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
[5] 上記筒状のコンクリート杭の、「JIS A 1136:2018(遠心力締固めコンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した圧縮強度が175N/mm以上である前記[1]~[4]のいずれかに記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
[6] 上記筒状のコンクリート杭の、外径から内径を差し引いた値の半分(厚み)が30~300mmである前記[1]~[5]のいずれかに記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
[7] 上記筒状のコンクリート杭の外径が150~3,000mmである前記[1]~[6]のいずれかに記載の筒状のコンクリート杭の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の筒状のコンクリート杭の製造方法によれば、遠心成形時の成形性に優れ、かつ、高い圧縮強度を有する筒状のコンクリート杭を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明で用いられる振動遠心成形装置の一例の長手方向の側面図である。
図2】本発明で用いられる振動遠心成形装置の一例の長手方向に垂直な方向の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の筒状のコンクリート杭の製造方法は、セメントと、BET比表面積が15~25m/gであるシリカフュームと、50%体積累積粒径が0.8~5μmである無機粉末と、細骨材と、粗骨材と、セメント分散剤と、水を含むセメント組成物を、遠心成形用の型枠に供給した後、該型枠を振動させながら、セメント組成物を遠心成形することで、未硬化の筒状の成形体を得る成形工程と、未硬化の筒状の成形体を、10~40℃で20時間以上、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した筒状の成形体を得る常温養生工程と、硬化した筒状の成形体を、70℃以上100℃未満で12時間以上、蒸気養生して、筒状のコンクリート杭を得る蒸気養生工程、を含み、セメント組成物において、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中、セメントの割合が55~65体積%、シリカフュームの割合が5~25体積%、無機粉末の割合が15~35体積%であり、水と、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計の質量比(水/(上記セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計))が0.11~0.16であり、セメント組成物中の粗骨材の割合が15~40体積%であるものである。
【0011】
以下、本発明の製造方法で用いられるセメント組成物に含まれる各材料について詳しく説明する。
セメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の硬化前の流動性を向上させる観点から、中庸熱ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメントが好ましく、中庸熱ポルトランドセメントがより好ましい。
【0012】
シリカフュームのBET比表面積は、15~25m/g、好ましくは17~23m/g、特に好ましくは18~22m/gである。該比表面積が15m/g未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。該比表面積が25m/gを超える場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。
【0013】
50%体積累積粒径が0.8~5μmである無機粉末の例としては、石英粉末(珪石粉末)、火山灰、フライアッシュ(分級または粉砕したもの)、スラグ粉末、石灰石粉末、長石類粉末、ムライト類粉末、アルミナ粉末、シリカゾル、炭化物粉末、窒化物粉末、及びエメリー砂の粉砕物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の硬化前の流動性および強度発現性を向上させる観点から、石英粉末及びフライアッシュが好ましい。
また、無機粉末としては、SiOを主成分とするものが好ましい。無機粉末中のSiOの含有率は、セメント組成物の強度発現性をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
なお、本明細書中、50%体積累積粒径が0.8~5μmの無機粉末には、セメントは含まれないものとする。
【0014】
無機粉末の50%体積累積粒径は、0.8~5μm、好ましくは1~4μm、より好ましくは1.1~3.5μm、特に好ましくは1.2μm以上、3μm未満である。該粒径が0.8μm未満の場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。該粒径が5μmを超える場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。
無機粉末の50%体積累積粒径は、市販の粒度分布測定装置(例えば、日機装社製、製品名「マイクロトラックHRA モデル9320-X100」)を用いて求めることができる。
具体的には、粒度分布測定装置を用いて、累積粒度曲線を作成し、該累積粒度曲線から50%体積累積粒径を求めることができる。この際、試料を分散させる溶媒であるエタノール20cmに対して、試料0.06gを添加し、90秒間、超音波分散装置(例えば、日本精機製作所社製、製品名「US300」)を用いて超音波分散したものを測定する。
【0015】
無機粉末の最大粒径は、セメント組成物の強度発現性を向上させる観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは14μm以下、特に好ましくは13μm以下である。
上記無機粉末の95%体積累積粒径は、セメント組成物の強度発現性を向上させる観点から、好ましくは8μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下である。
【0016】
セメント組成物に含まれる、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中のセメントの割合は55~65体積%、好ましくは57~63体積%、より好ましくは59~61体積%である。上記割合が55体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。上記割合が65体積%を超える場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。
また、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中のシリカフュームの割合は5~25体積%、好ましくは7~23体積%、より好ましくは10~20体積%である。上記割合が5体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。上記割合が25体積%を超える場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。
さらに、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100体積%中の無機粉末の割合は15~35体積%、好ましくは17~33体積%、より好ましくは20~30体積%である。上記割合が15体積%未満の場合、セメント組成物の強度発現性が低下する。上記割合が35体積%を超える場合、セメント組成物の硬化前の流動性が低下する。
【0017】
細骨材の例としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、スラグ細骨材、軽量細骨材、クリンカ細骨材、及びCCU細骨材(再生骨材、廃コンクリート、高炉スラブ、および製鋼スラグから選ばれる1種以上に二酸化炭素を固定した細骨材)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメント組成物中の細骨材の割合は、好ましくは25~50体積%、より好ましくは30~45体積%、さらに好ましくは32~42体積%、特に好ましくは35~40体積%である。該割合が25体積%以上であれば、セメント組成物の硬化前の流動性を向上させることができると共に、セメント組成物の発熱量がより小さくなり、かつ、筒状のコンクリート杭(セメント組成物の硬化体)の収縮量がより小さくなる。該割合が50体積%以下であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
【0018】
粗骨材の例としては、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、石灰石骨材、スラグ粗骨材、軽量粗骨材、クリンカ粗骨材、及びCCU粗骨材(再生骨材、廃コンクリート、高炉スラブ、および製鋼スラグから選ばれる1種以上に二酸化炭素を固定した粗骨材)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粗骨材の最大粒径は、好ましくは10~25mm、より好ましくは11~22mm、特に好ましくは13~18mmである。上記最大粒径が10mm以上であれば、後述の成形工程における成形性が向上する。上記最大粒径が25mm以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。
なお、本明細書中、骨材(細骨材及び粗骨材)における最大粒径とは、骨材全体の90質量%以上が通るふるいのうち、最小寸法のふるいの呼び寸法で示される骨材の粒径(一般に、骨材の最大粒径の定義として知られているもの)をいう。
【0019】
粗骨材の破砕値は、好ましくは11%以下、より好ましくは5~10%、特に好ましくは6~9%である。上記破砕値が11%以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。
上記「破砕値」は、「British Standard(BS) 812:Part 110:1990」に規定されている方法(Methods for determination of aggregate crushing value)に準拠して測定することができる。
【0020】
より具体的には、粗骨材の破砕値は、例えば、以下の方法によって測定することができる。
(1)測定の対象となる粗骨材を、目開き10mm及び15mmのふるいを用いて分級して、粒度が10~15mmの試料を10kg用意する。試料は2回分用意する。
(2)上記試料を計量用容器に3層に分けて詰め、各層を詰める際に、各層の表面を約50mmの高さから突き棒を用いて25回突いた後、表面を平らにならす。
(3)上記試料をバット等の容器に移した後、上記試料を100~110℃で4時間乾燥した後、常温になるまで自然冷却し、次いで、上記試料の質量Aを1g単位まで測定する。
(4)上記試料を試験用容器に3層に分けて詰め、各層を詰める際に、各層の表面を約50mmの高さから突き棒を用いて25回突いた後、表面を平らにならす。
(5)試験用容器内にプランジャーを設置し、圧縮試験機を用いて、圧縮荷重が400kNになるまで、毎分40kNの速度でプランジャーを載荷した後、除荷する。
(6)試験用容器内の試料を、目開き2.5mmのふるいを用いて分級した後、ふるいに残存する試料を1g単位まで測定し、得られた測定値から、目開き2.5mmのふるいを通過する試料の質量Bを算出する。
(7) 下記式(1)を用いて、試料の破砕値を算出する。
破砕値(%)=(質量B/質量A)×100 ・・・(1)
(8)2回分の試料の各々について、上記(2)~(7)を行い、試料の破砕値を算出した後、算出した破砕値の平均値を粗骨材の破砕値とする。
【0021】
セメント組成物中の粗骨材の割合は、セメント組成物の強度発現性、及び、後述の成形工程における成形性の向上の観点から、15~40体積%、好ましくは18~38体積%、より好ましくは21~30体積%、特に好ましくは22~28体積%である。また、上記割合が15体積%未満であると、セメント組成物の発熱量が大きくなり、かつ、硬化体(筒状のコンクリート杭)の収縮量が大きくなる。
【0022】
セメント組成物中の細骨材と粗骨材の合計量の割合は、好ましくは50~70体積%、より好ましくは55~68体積%、特に好ましくは58~65体積%である。該割合が50体積%以上であれば、セメント組成物の発熱量がより小さくなり、かつ、硬化体(筒状のコンクリート杭)の収縮量がより大きくなる。該割合が70体積%以下であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
セメント組成物の細骨材率(s/a)は、好ましくは40~70%、より好ましくは45~65%、特に好ましくは56~62%である。細骨材率が上記数値範囲内であれば、後述する成形工程において、成形性が向上する。
なお、細骨材率とは、細骨材と粗骨材の合計量中の細骨材の体積割合をいう。
【0023】
セメント分散剤の例としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、またはポリカルボン酸系等の、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤及び高性能AE減水剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、後述する成形工程における成形性、及びセメント組成物の強度発現性の観点から、高性能減水剤及び高性能AE減水剤が好ましく、高性能減水剤がより好ましい。
セメント分散剤の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、固形分換算で、好ましくは0.20~1.0質量部であり、より好ましくは0.30~0.8質量部、特に好ましくは0.40~0.7質量部である。該量が0.20質量部以上であれば、減水性能が向上し、セメント組成物の硬化前の流動性が向上する。該量が1.0質量部以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。
【0024】
セメント組成物は、上述したセメント分散剤以外のセメント混和剤を含んでいてもよい。
上述したセメント分散剤以外のセメント混和剤の例としては、消泡剤、AE剤、流動化剤、凝結遅延剤等が挙げられる。中でも、セメント組成物の強度発現性向上の観点から、セメント組成物は消泡剤を含むものであることが好ましい。
消泡剤の配合量は、セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001~0.5質量部、より好ましくは0.01~0.3質量部、特に好ましくは0.05~0.2質量部である。該量が0.001質量部以上であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。該量が0.5質量部を超えると、セメント組成物の強度発現性の向上効果が頭打ちとなる。
【0025】
水としては、水道水等を使用することができる。
水と、上述したセメント、シリカフューム及び無機粉末の合計の質量比(水/(セメント、シリカフューム及び無機粉末の合計))は、0.11~0.16、好ましくは0.12~0.15、特に好ましくは0.13~0.14である。上記質量比が0.11未満であると、後述の成形工程における成形性が低下する。上記質量比が0.16を超えると、セメント組成物の強度発現性が低下する。
【0026】
本発明の筒状のコンクリート杭の製造方法は、上述したセメント組成物を、遠心成形用の型枠に供給した後、該型枠を振動させながら、セメント組成物を遠心成形することで、未硬化の筒状の成形体を得る成形工程と、未硬化の筒状の成形体を、10~40℃で20時間以上、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した筒状の成形体を得る常温養生工程と、硬化した筒状の成形体について、70℃以上100℃未満で12時間以上、蒸気養生して、筒状のコンクリート杭(以下、単に「コンクリート杭」ともいう。)を得る蒸気養生工程を含むものである。
以下、工程ごとに詳しく説明する。
【0027】
[成形工程]
本工程は、セメントと、BET比表面積が15~25m/gであるシリカフュームと、50%体積累積粒径が0.8~5μmである無機粉末と、細骨材と、粗骨材と、セメント分散剤と、水を含むセメント組成物を、遠心成形用の型枠に供給した後、該型枠を振動させながら、セメント組成物を遠心成形することで、未硬化の筒状の成形体を得る工程である。
セメント組成物は、通常、予めセメント組成物を構成する各材料を混練(混合)した後、遠心成形用の型枠に供給される。各材料を混練する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、各材料を一括して混練する方法や、水とセメント分散剤以外の材料を混合した後、得られた混合物に予め水とセメント分散剤を混合してなる混合物を投入して混練する方法等が挙げられる。
また、混練に用いる装置も特に限定されるものではなく、オムニミキサ、パン型ミキサ、二軸練りミキサ、傾胴ミキサ等の慣用のミキサを使用することができる。
また、セメント組成物は、セメント組成物中の気泡を低減又は除去したものであってもよい。セメント組成物中の気泡を低減又は除去することで、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
【0028】
上記成形工程における遠心成形の方法は、支持力杭等の内部が中空である円筒形の杭の製造において行われる一般的な遠心成形の方法において、遠心成形用の型枠に振動を加えるものである。
高強度コンクリートは、粘性が高いために型枠に打設するためには大きな流動性が必要である。しかし、円筒形の杭の製造のように遠心成形を行う場合は、セメント組成物(コンクリート)の流動性が大きすぎると遠心成形後に杭の内面のセメント組成物の保形性が失われ、成形が不可能となる。
そのため、円筒形の杭等に用いるコンクリートは、一般的に10cm以下のスランプを有する硬練りのコンクリートが適用されるが、175N/mm以上の強度を発現するコンクリートの粘性は極めて高いため、遠心成形を実施しても型枠内で十分にコンクリートが充填されず、均一な筒状とならないなどの成形性に問題が生じる場合がある。
これらの問題を解決する目的で、遠心成形時に振動を加える(具体的には、型枠を加振する)ことで、成形性を改善することができる。
以下、本発明の製造方法において用いられる、遠心成形用の型枠、及び、振動遠心成形機の一例について、図1~2を参照しながら説明する。
【0029】
遠心成形用の型枠としては、一般的な遠心成形用の型枠(例えば、パイル用型枠)を用いることができる。
図1の遠心成形用の型枠1(以下、単に「型枠」ともいう。)の外周には、複数の環状凸部2(キャス)が設けられている。環状凸部2は、遠心成形用の型枠1の短手方向の外周(表面)に沿って設けられた環状の凸部部分である。
環状凸部2の数は特に限定されるものではなく、遠心成形用の型枠1の大きさに応じて適宜定めればよいが、通常、2~50、好ましくは3~30である。また、環境凸部2は、通常、任意に定められた特定の間隔で配設されている。
遠心成形用の型枠1は、振動遠心成形機10の上部(上方)に載置される。振動遠心成形機10は、遠心成形用の型枠1を支持するための回動用ホイール3(ランナーホイール)、遠心成形用の型枠1に振動を加えるための加振手段5、回動用ホイールを回転させるための回転軸C、及び、回転軸Cを回転させるための駆動部Mを含む。
回動用ホイール3は、遠心成形用の型枠1を、環状凸部2の鉛直方向下部部分で支持している。回動用ホイール3は、環状凸部2と嵌合可能な形状を有し、回転する回動用ホイール3と環状凸部2の摩擦伝導によって、遠心成形用の型枠1は、遠心成形用の型枠1の長手方向を軸として回転する。
回動用ホイール3の数は特に限定されるものではなく、遠心成形用の型枠1の大きさに応じて適宜定めればよいが、通常、環境凸部2と同じかそれ以下の数、好ましくは2~50、より好ましくは3~30である。また、回動用ホイール3は、通常、任意に定められた特定の間隔で配設されている。
【0030】
環状凸部2の鉛直方向下部には、遠心成形用の型枠1に振動を加えるための加振手段5が配設されている。加振手段5の数は特に限定されるものではなく、遠心成形用の型枠1の大きさに応じて適宜定めればよいが、通常、1以上、好ましくは2~30、より好ましくは3~10である。
加振手段5は、遠心成形用の型枠1に、環状凸部2を介して鉛直方向の振動を与えるための、回転可能な歯車状部材5a、及び、歯車状部材5aを軸支しかつ歯車状部材5aを鉛直方向に移動可能な押圧部材5cを含む。
歯車状部材5aには複数の凸部(突起)が形成されている。歯車状部材5aは、任意のタイミングで、押圧部材5cによって鉛直方向上向きに移動し、環状凸部2を押圧することができる。歯車状部材5aが環状凸部2を押圧することで、遠心成形用の型枠1の回転に伴う環状凸部2の回転に応じて、歯車状部材5aも回転し、歯車状部材5aに形成された複数の凸部と凹部(凸部と凸部の間)が、交互に環状凸部2と接触することで、遠心成形用の型枠1に鉛直方向(鉛直方向上向き及び鉛直方向下向き)の振動が加えられる。
【0031】
成形工程において、遠心成形用の型枠1の長手方向を軸として遠心成形用の型枠1を回転させながら、環状凸部2の少なくとも一つの鉛直方向下部に配設された加振手段5を用いて、遠心成形用の型枠1に、環状凸部2を介して鉛直方向の振動が与えられる。
上記振動は、好ましくは10G以下、より好ましくは2~8G、特に好ましくは3~7Gの遠心加速度で、遠心成形用の型枠1を回転させながら加えられることが好ましい。10G以下の遠心加速度で、遠心成形用の型枠1を回転させながら振動を加えることによって、遠心成形時に発生する遠心加速度の100~2000倍の重力加速度が型枠内のセメント組成物4に加えられ、セメント組成物の成形性をより向上させることができる。
また、成形性をより向上させ、かつ、遠心成形に要する時間をより短くする観点から、振動を加えた遠心成形と、振動を加えない遠心成形を交互に行ってもよい。
例えば、4~6Gの遠心加速度で遠心成形用の型枠1を回転させながら、20~40秒間振動を加えた後、12~18G(好ましくは14~16G)遠心加速度で遠心成形用の型枠1を20~40秒間振動を加えずに回転することを1サイクルとして、該サイクルを1~5(好ましくは2~4)回繰り返して遠心成形を行う方法が挙げられる。
また、セメント組成物の成形性をより向上させる観点から、上記サイクルを行った後、振動を加えずに、12G以上、(好ましくは15~30G、より好ましくは18~25G)の遠心加速度で遠心成形を、好ましくは120~420秒間、より好ましくは180~360秒間行ってもよい。
【0032】
[常温養生工程]
本工程は、成形工程で得られた未硬化の筒状の成形体を、10~40℃で20時間以上、封緘養生または気中養生した後、型枠から脱型し、硬化した筒状の成形体を得る工程である。
本工程において、養生温度は、10~40℃、好ましくは15~30℃である。養生温度が10℃以上であれば、養生時間を短くすることができる。養生温度が40℃以下であれば、コンクリート杭の強度を向上させることができる。
養生時間は、20時間以上、好ましくは22~72時間、より好ましくは24~48時間である。養生時間が20時間以上であれば、脱型の際に、硬化した成形体に欠けや割れ等の欠陥が生じにくくなる。
また、本工程において、硬化した筒状の成形体が、好ましくは20~100N/mm、より好ましくは30~80N/mmの圧縮強度を発現した時に、上記成形体を型枠から脱型することが好ましい。上記圧縮強度が20N/mm以上であれば、脱型の際に、上記成形体に欠けや割れ等の欠陥が生じにくくなる。上記圧縮強度が100N/mm以下であれば、後述する吸水工程において、少ない労力で、上記成形体に吸水させることができる。
【0033】
[蒸気養生工程]
本工程は、前工程で得られた硬化した筒状の成形体について、70℃以上100℃未満で12時間以上、蒸気養生して、筒状のコンクリート杭を得る工程である。
本工程において、養生温度は、70℃以上100℃未満、好ましくは75~95℃、より好ましくは80~92℃である。養生温度が70℃以上であれば、養生時間を短くすることができる。養生温度が100℃未満であれば、コンクリート杭の強度を向上させることができる。
本工程において、養生時間は、12時間以上、好ましくは24~96時間、より好ましくは36~72時間である。養生時間が12時間以上であれば、セメント質硬化体の圧縮強度を向上させることができる。
【0034】
[吸水工程]
常温養生工程と蒸気養生工程の間に、常温養生工程において得られた硬化した筒状の成形体に吸水させる吸水工程を設けてもよい。
硬化した筒状の成形体に吸水させる方法としては、上記成形体を水中に浸漬させる方法が挙げられる。また、上記成形体を水中に浸漬させる方法において、短時間で吸水量を増やし、コンクリート杭の圧縮強度を大きくする観点から、(1)上記成形体を、減圧下の水の中に浸漬させる方法、(2)上記成形体を、沸騰している水の中に浸漬させた後、上記成形体を浸漬させたまま、水温を40℃以下に低下させる方法、(3)上記成形体を、沸騰している水の中に浸漬させた後、上記成形体を沸騰している水から取り出して、次いで、40℃以下の水に浸漬させる方法、(4)上記成形体を、加圧下の水の中に浸漬させる方法、又は(5)上記成形体への水の浸透性を向上させる薬剤を溶解させた水溶液の中に、上記成形体を浸漬させる方法、が好ましい。
【0035】
[高温加熱工程]
蒸気養生工程の後に、蒸気養生後の硬化体(コンクリート杭)を、150~200℃(好ましくは170~190℃)で24時間以上(好ましくは24~72時間、より好ましくは36~48時間)、加熱する高温加熱工程を設けてもよい。
本工程において、加熱温度が150℃以上であれば、加熱時間を短くすることができる。加熱温度が200℃以下であれば、コンクリート杭の圧縮強度を向上させることができる。
加熱時間が24時間以上であれば、コンクリート杭の圧縮強度を向上させることができる。
【0036】
本発明の製造方法で得られたコンクリート杭の「JIS A 1136:2018(遠心力締固めコンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した圧縮強度は、好ましくは175N/mm以上、より好ましくは180N/mm以上、さらに好ましくは190N/mm以上、特に好ましくは195N/mm以上である。上記圧縮強度が175N/mm以上であれば、コンクリート杭の厚みを維持又は小さくし、かつ、上記杭の先端支持力係数αをより大きくすることができる。
コンクリート杭の、外径から内径を差し引いた値の半分(厚み:(外径-内径)/2)は、該コンクリート杭の用途によっても異なるが、好ましくは30~300mm、より好ましくは35~200mm、さらに好ましくは50~180mm、特に好ましくは70~140mmである。上記厚みが30mm以上であれば、上記杭の先端支持力係数αをより大きくすることができる。上記厚みが300mm以下であれば、上記杭を用いて支持力工法を行った際の掘削残土の量を少なくすることができる。また、上記杭の軽量化によって作業性を向上させ、かつ、物流コストを低減することができる。
コンクリート杭の外径は、該コンクリート杭の用途によっても異なるが、通常、150~3,000mm、好ましくは400~2,000mmである。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)セメント:中庸熱ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度:3.21g/cm
(2) スラグせっこう系混和材:密度2.64g/cm、デイ・シイ社、商品名「セラパワーCPSI」
(3)シリカフューム:BET比表面積20m/g
(4)無機粉末:珪石粉末、50%累積体積粒径2μm、最大粒径12μm、95%累積体積粒径5.8μm
(5)細骨材:砕砂、最大粒径5.0mm以下、表乾密度2.62g/cm
(6)粗骨材a:砕石1505、表乾密度2.64g/cm、破砕値8%、最大粒径15mm
(7)粗骨材b:砕石2005、表乾密度2.62g/cm、破砕値8%、最大粒径20mm
(8)高性能減水剤:固形分量28.0質量%、フローリック社製、商品名「フローリックSF500U」
(9)消泡剤:BASFジャパン社製、商品名「マスターエア404」
(10)水:上水道水
なお、粗骨材の破砕値は上述した方法で測定した。
【0038】
[実施例1~7]
セメントとシリカフュームと無機粉末と細骨材と表1に示す種類の粗骨材を、一括して強制二軸型ミキサに投入して、30秒間空練りを行った。なお、投入されたセメント等の材料の合計体積は35リットルとなるように定めた。
次いで、水、高性能減水剤、及び消泡剤を強制二軸型ミキサに投入して、510秒間混錬した。
なお、セメントとシリカフュームと無機粉末の量は、粉体原料(セメント、シリカフューム及び無機粉末)の合計100体積%中、セメントの割合が60体積%、シリカフュームの割合が14体積%、無機粉末の割合が26体積%となる量に定めた。
また、細骨材及び粗骨材の量は、得られるセメント組成物100体積%中、細骨材及び粗骨材の割合が表1に示す割合となる量に定めた。
また、水の量は、水と粉体原料の質量比が表1に示す数値となる量に定めた。さらに、高性能減水剤の量(固形分換算)及び消泡剤の量は、粉体原料100質量部に対して、表1に示す量に定めた。
【0039】
混練後のセメント組成物を、内径がφ200×300mmの円筒形の遠心成形用の型枠に供給した。次いで、上記型枠を遠心成形機に載置し、5Gの遠心加速度で該型枠を低速回転させながら、加振手段を作動させて(加振手段の歯車状部材を、鉛直方向上向きに移動させて、環状凸部を押圧させて)、振動を加えながら30秒間遠心成形を行った。ついで、振動を加えずに(加振手段の歯車状部材を、鉛直方向下向きに移動させて、環状凸部を押圧させずに)、15Gの遠心加速度で該型枠を中速回転させながら30秒間成形を行った。この30秒間の低速回転と30秒間の中速回転を1サイクルとして、3サイクル分繰り返した後、振動を加えずに、該型枠に20Gの遠心力がかかるように、該型枠を高速回転させながら、300秒間成形を行うことにより、未硬化の成形体を得た。
遠心成形における成形性を、目視により評価した。具体的には、未硬化の成形体の内面に関し、形状が円筒形に保たれ、内壁面に骨材の突出がなく、平滑で偏肉がない(厚みにばらつきがない)場合を「〇」、内壁面に骨材が突出しており、平滑ではなく偏肉がある(厚みにばらつきがある)場合を「×」として評価した。
【0040】
次いで、未硬化の筒状の成形体について、室温(約20℃)下で24時間、封緘養生を行った後、脱型して硬化した筒状の成形体を得た。該成形体を、20℃/時間の昇温速度で表1に示す温度まで昇温させた後、該温度を表1に示す時間維持した環境下で蒸気養生を行い(表1中、「蒸気養生工程」と示す。)、筒状のコンクリート杭を得た。
上記筒状のコンクリート杭の圧縮強度を、「JIS A 1136:2018(遠心力締固めコンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した。
また、総合評価として、成形性の評価が「〇」であり、かつ、圧縮強度が175N/mm以上、195N/mm未満のものを「〇」、成形性の評価が「〇」であり、かつ、圧縮強度が195N/mm以上のものを「◎」、成形性の評価が「×」、又は、圧縮強度が175N/mm未満のものを「×」として評価した。
また、得られた筒状のコンクリート杭の厚みは40mmであった。
結果を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
セメントとスラグ石こう系混和材と細骨材と表1に示す種類の粗骨材を、一括して強制二軸型ミキサに投入して、30秒間空練りを行った。なお、投入されたセメント等の材料の合計体積は35リットルとなるように定めた。
次いで、水、高性能減水剤、及び消泡剤を強制二軸型ミキサに投入して、510秒間混錬して、セメント組成物を調製した。
なお、セメントとスラグ石こう系混和材の量は、粉体原料(セメント及びスラグ石こう系混和材)の合計100体積%中、セメントの割合が60体積%、スラグせっこう系混和材40体積%となる量に定めた。
また、細骨材及び粗骨材の量は、得られるセメント組成物100体積%中、細骨材及び粗骨材の割合が表1に示す割合となる量に定めた。
また、水の量は、水と粉体原料の質量比が表1に示す数値となる量に定めた。さらに、高性能減水剤の量(固形分換算)及び消泡剤の量は、粉体原料100質量部に対して、表1に示す量に定めた。
混練後のセメント組成物を用いて、実施例1と同様にして遠心成形を行ったが、成形ができなかった。
【0042】
[比較例2~6]
実施例1と同様にして、セメント組成物を調製した後、混練後のセメント組成物を用いて、実施例1と同様にして遠心成形を行い、未硬化の筒状の成形体を得た。次いで、未硬化の筒状の成形体について、実施例1と同様にして蒸気養生を行い、筒状のコンクリート杭を得た。
遠心成形における成形性の評価等を、実施例と同様にして行った。
[比較例7]
遠心成形時に振動を加えない以外は実施例2と同様にして筒状のコンクリート杭を得た。
遠心成形における成形性の評価等を、実施例と同様にして行った。
各々の結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から、実施例1~7では、遠心成形時の成形性に優れ、かつ、圧縮強度の大きい筒状コンクリート杭が得られたことがわかる。
一方、比較例2~3(水/粉体が0.10又は0.17であるもの)、比較例4~5(粗骨材の配合割合が45体積%又は10体積%であるもの)では、遠心成形時の成形性が悪く、かつ、圧縮強度の小さい筒状コンクリート杭が得られたことがわかる。
また、比較例6(蒸気養生時間が6時間であるもの)では、圧縮強度の小さい筒状コンクリート杭が得られたことがわかる。
さらに、比較例7(遠心成型時に振動を与えないもの)では、遠心成型時の成型性が悪く、かつ、圧縮強度の小さい筒状コンクリート杭が得られたことがわかる。
【符号の説明】
【0045】
1 遠心成形用の型枠
2 環状凸部
3 回動用ホイール
4 セメント組成物
5 加振手段
5a 歯車状部材
5b 押圧部材
10 振動遠心成形機
C 回転軸
M 駆動部
図1
図2