(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024752
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20250214BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20250214BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250214BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B3/30
B32B27/00 E
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128989
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】南部 祐一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 槙一
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA17
4F055BA13
4F055BA21
4F055CA05
4F055DA02
4F055DA12
4F055DA16
4F055EA26
4F055FA08
4F055FA39
4F055FA40
4F055GA03
4F055GA26
4F055HA06
4F055HA17
4F100AA00C
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK15D
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA23C
4F100DD01B
4F100DD01C
4F100DG10A
4F100EH46D
4F100EJ39
4F100HB31E
4F100JM01D
4F100JN21
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】表面にエンボスを有し、優れたグロスマット感を有する壁紙を提供する。
【解決手段】壁紙100は、紙基材10と、表面20sに凹凸形状を有し、前記紙基材10の上側UPに設けられた表面樹脂層20と、を備え、前記表面樹脂層20は、第一表面保護層と、前記第一表面保護層と異なる光沢を有し、前記第一表面保護層の前記上側UPに設けられた第二表面保護層と、を備え、前記凹凸形状の上下方向Vにおける最大高低差は、100μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
表面に凹凸形状を有し、前記紙基材の上側に設けられた表面樹脂層と、
を備え、
前記表面樹脂層は、
第一表面保護層と、
前記第一表面保護層と異なる光沢を有し、前記第一表面保護層の前記上側に設けられた第二表面保護層と、
を備え、
前記凹凸形状の上下方向における最大高低差は、100μm以下である、
壁紙。
【請求項2】
前記第二表面保護層の塗布量は、0.5g/m2以上2.0g/m2以下である、
請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記第二表面保護層は、合成樹脂ビーズ又は無機化合物フィラーを含む粒子部を有する、
請求項1に記載の壁紙。
【請求項4】
前記表面樹脂層は、
前記紙基材の前記上側に設けられた基体樹脂層と、
前記基体樹脂層の前記上側に設けられた印刷絵柄層と、
をさらに備え、
前記第二表面保護層は、前記印刷絵柄層の絵柄と同調した位置に設けられている、
請求項1に記載の壁紙。
【請求項5】
前記基体樹脂層は、水性エマルジョン系樹脂又は塩化ビニル樹脂を含む、
請求項4に記載の壁紙。
【請求項6】
前記基体樹脂層は、発泡剤を含む、
請求項4に記載の壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面装飾等に用いる壁紙として、光沢が異なる複数の表面保護層によってグロスマット感を表現し、視覚的な立体感を有する壁紙がある。また、エンボス加工等により表面に凹凸形状が形成され、触感による立体感を有する壁紙がある。
【0003】
立体感を有する壁紙として、特許文献1に記載のグロスマット化粧用シートがある。特許文献1に記載のグロスマット化粧用シートは、絵柄印刷層の上側の同一の平面に形成された複数の表面保護層を有する。この複数の表面保護層が異なる光沢を有することで、特許文献1に記載のグロスマット化粧用シートは、視覚的な立体感を有する。また、表面保護層の上面にエンボス加工を施すことで設けられたエンボス(凹凸模様)によって触感による立体感を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光沢が異なる複数の表面保護層によってグロスマット感を表現する壁紙において、表面保護層の表面に設けられたエンボスの深さが深すぎると、グロスマット感が低下し、意匠性が劣る虞がある。また、表面強度が低下する虞がある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、表面にエンボスを有し、優れたグロスマット感を有する壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の壁紙は、紙基材と、表面に凹凸形状を有し、前記紙基材の上側に設けられた表面樹脂層と、を備え、前記表面樹脂層は、第一表面保護層と、前記第一表面保護層と異なる光沢を有し、前記第一表面保護層の前記上側に設けられた第二表面保護層と、を備え、前記凹凸形状の上下方向における最大高低差は、100μm以下である。
【0008】
上記壁紙では、記第二表面保護層の塗布量は、0.5g/m2以上2.0g/m2以下であってもよい。
【0009】
上記壁紙では、前記第二表面保護層は、合成樹脂ビーズ又は無機化合物フィラーを含む粒子部を有していてもよい。
【0010】
上記壁紙では、前記表面樹脂層は、前記紙基材の前記上側に設けられた基体樹脂層と、前記基体樹脂層の前記上側に設けられた印刷絵柄層と、をさらに備え、前記第二表面保護層は、前記印刷絵柄層の絵柄と同調した位置に設けられていてもよい。
【0011】
上記壁紙では、前記基体樹脂層は、水性エマルジョン系樹脂又は塩化ビニル樹脂を含んでいてもよい。
【0012】
上記壁紙では、前記基体樹脂層は、発泡剤を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の壁紙によれば、表面にエンボスを有し、優れたグロスマット感を有する壁紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る壁紙を模式的に示す断面図である。
【
図2】同壁紙の表面樹脂層の表面を模式的に示す断面図である。
【
図3】同表面樹脂層の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る壁紙100を模式的に示す断面図である。
本実施形態では、
図1に示すように、壁紙100の厚さ方向を「上下方向V」、壁紙100の紙基材10が設けられた側を上下方向Vにおける「下側LO」、下側LOと反対側を上下方向Vにおける「上側UP」と定義する。
【0017】
壁紙100は、紙基材10と、表面樹脂層20と、を備える。
紙基材10は、壁紙100の下側LOに設けられた層である。紙基材10として、例えば、壁紙用の裏打紙等など、壁紙の紙基材として使用される公知の繊維シートを採用できる。
【0018】
紙基材10の坪量は、50g/m2以上100g/m2以下が望ましい。また、紙基材10の厚みは、80μm以上150μm以下が望ましい。これにより、壁紙100は十分な剛性を得ることができ、壁紙100におけるカールの発生を防止することができる。
【0019】
表面樹脂層20は、紙基材10の上側UPに設けられた層である。
図2は、表面樹脂層20の表面20s(上側UPの面)を模式的に示す断面図である。
【0020】
表面樹脂層20の表面20sには、凹凸形状(エンボス)が設けられている。この凹凸形状は、例えば、表面樹脂層20の表面20sにエンボスロールを圧接するエンボス加工を施すことで形成される。
【0021】
凹凸形状は、発泡抑制インキにより部分的に発泡させる方法や、熱風や赤外線により部分的に加熱発泡させるケミカルエンボス方法を用いて形成されてもよい。
【0022】
表面樹脂層20の表面20sにおいて、凹凸形状の上下方向Vにおける最大高低差Hは、100μm以下である。ここで、最大高低差Hは、
図2に示すように、表面樹脂層20の表面20sに形成された凹凸形状において、最も上側UPに位置する凸部P1と、最も下側LOに位置する凹部P2との上下方向Vにおける距離を示す。
【0023】
凸部P1は、例えば、表面樹脂層20の表面20sに圧接されて凹凸形状を形成するエンボス版(エンボスロール)の最も版深が深い部分によって形成される部位である。具体的には、
図2に示すように、表面樹脂層20の表面20sの断面形状が波形状であるとき、最も上側UPに突出した部分(山部分)の頂点である。
【0024】
凹部P2は、例えば、表面樹脂層20の表面20sに圧接されて凹凸形状を形成するエンボス版の最も版深が浅い部分によって形成される部位である。具体的には、
図2に示すように、表面樹脂層20の表面20sの断面形状が波形状であるとき、最も下側LOに凹になった部分(谷部分)の底の点である。
【0025】
表面樹脂層20の表面20sに凹凸形状を設けることで、壁紙100は、触感による立体感を有することができる。
【0026】
また、表面樹脂層20が、互いに異なる光沢を有する複数の層で構成されてグロスマット感を有する場合、凹凸形状の上下方向Vにおける最大高低差Hを100μm以下とすることで、グロスマット感が低下するのを抑制できる。
【0027】
そのため、壁紙100は、凹凸形状(エンボス)を有していてもグロスマット感が損なわれず、十分な視覚的な立体感を有することができる。表面樹脂層20が有するグロスマット感の詳細は後述する。
【0028】
また、表面樹脂層20の表面20sにおいて、凹凸形状の上下方向Vにおける最大高低差Hを100μm以下とすることで、表面強度および耐摩耗性を向上できる。
【0029】
図3は、表面樹脂層20の構成を模式的に示す断面図である。
表面樹脂層20は、基体樹脂層21と、印刷絵柄層22と、第一表面保護層23と、第二表面保護層24と、を備える。
【0030】
基体樹脂層21は、表面樹脂層20の下側LOに設けられた層であり、壁紙100において、紙基材10の上側UPに設けられた層である。基体樹脂層21として、水性エマルジョン系樹脂又は塩化ビニル樹脂等を採用できる。
【0031】
基体樹脂層21の塗布量は、80g/m2以上260g/m2以下であるのが望ましい。基体樹脂層21として塩化ビニル樹脂を採用する場合、基体樹脂層21の塗布量は、塩化ビニル樹脂の重合度で限定される。また、塩化ビニル樹脂の重合度は、600以上が望ましい。塩化ビニル樹脂の重合度を600以上とすることで、壁紙100は十分な強度を得ることができる。
【0032】
基体樹脂層21は、発泡剤を含んでいてもよい。基体樹脂層21に混合する発泡剤として、熱膨張性マイクロカプセルなど、壁紙に使用される公知の発泡剤を採用できる。例えば、発泡剤として熱膨張性マイクロカプセルを基体樹脂層21に混合した場合、熱を加えることで熱膨張性カプセルが発泡し、基体樹脂層21の体積が膨張する。基体樹脂層21を発泡剤によって発泡させることで壁紙100の厚さが増すため、壁紙100に十分な不陸隠蔽性を付与できる。
【0033】
また、基体樹脂層21には、可塑剤又は充填剤等を用途に応じて適宜混合できる。可塑剤又は充填剤等を混合することで、基体樹脂層21に柔軟性又は耐熱性等の特性を付与できる。
【0034】
基体樹脂層21を積層する方法として、ナイフコート法、ノズルコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、グラビアコート法、ロータリースクリーンコート法又はリバースロールコート法等の公知のコート方法を採用できる。
【0035】
印刷絵柄層22は、基体樹脂層21の上側UPに設けられた層である。印刷絵柄層22は、例えば、木目、石目又は砂目等の絵柄の印刷を基体樹脂層21の上側UPに施すことで形成されている。
【0036】
印刷絵柄層22は、第一絵柄形成部22aと、第二絵柄形成部22bと、を有する。
第一絵柄形成部22aおよび第二絵柄形成部22bは、例えば、第一絵柄形成部22aを形成するインキが含む顔料と、第二絵柄形成部22bを形成するインキが含む顔料とが異なる色を有することによって、基体樹脂層21の上側UPに絵柄を形成している。
【0037】
印刷絵柄層22を形成する方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。また、第一絵柄形成部22aおよび第二絵柄形成部22bには、採用する印刷方法に適した公知の印刷インキを採用できる。
【0038】
第一表面保護層23は、印刷絵柄層22の上側UPに設けられた層である。第一表面保護層23として、例えば、ウレタン結合を有する熱硬化性樹脂又はアクリル樹脂等の電離放射硬化性樹脂等を採用できる。第一表面保護層23には、印刷絵柄層22の絵柄を透視できる程度に透明又は半透明な材質を採用するのが望ましい。
【0039】
第一表面保護層23を形成する方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。また、第一表面保護層23は、公知のコーティング装置を用いて形成されてもよい。
【0040】
第二表面保護層24は、第一表面保護層23の上側UPに設けられた層である。第二表面保護層24は、第一表面保護層23の上側UPに部分的に設けられてもよい。また、第二表面保護層24は、印刷絵柄層22が有する絵柄と同調した位置に設けられてもよい。例えば、
図3に示す第二表面保護層24は、印刷絵柄層22の第二絵柄形成部22bと同調し、上側UPからの平面視において、第二絵柄形成部22bと重なる位置に設けられている。
【0041】
第二表面保護層24には、第一表面保護層23を通して印刷絵柄層22の絵柄を透視できる程度に透明又は半透明な材質を採用するのが望ましい。第二表面保護層24として、ウレタン結合を有する熱硬化性樹脂又はアクリル樹脂等の電離放射硬化性樹脂等を採用できる。
【0042】
第一表面保護層23と第二表面保護層24とは、異なる光沢を有する。第一表面保護層23と第二表面保護層24との光沢の差を付与する方法として、第一表面保護層23又は第二表面保護層24に艶消剤を添加する方法がある。
【0043】
例えば、第一表面保護層23に艶消剤を添加し、第二表面保護層24に艶消剤を添加しない場合、第一表面保護層23は、第二表面保護層24よりも低い光沢を有する。第一表面保護層23と第二表面保護層24との光沢に差を付与できる程度に、第一表面保護層23と第二表面保護層24とに異なる添加量の艶消剤を添加してもよい。
【0044】
第一表面保護層23と第二表面保護層24との光沢の差によって、壁紙100は、グロスマット感を表現でき、人間の目の錯覚を利用して視覚的に立体感を感じさせることができる。
【0045】
第二表面保護層24は、
図3に示すように、粒子部24aを含む。粒子部24aは、合成樹脂ビーズ又は無機化合物フィラーを含み、第二表面保護層24に触感による立体感を付与する。粒子部24aには、例えば、アクリル樹脂ビーズを採用することができる。また、粒子部24aには、第一表面保護層23および第二表面保護層24を通して印刷絵柄層22の絵柄を透視できる程度に透明又は半透明な材質を採用するのが望ましい。
【0046】
第二表面保護層24が第一表面保護層23の上側UPに部分的に形成されている場合、第二表面保護層24の塗膜厚みによって第一表面保護層23の上側UPの面に凹凸形状が形成されるため、表面樹脂層20の表面20sにエンボス加工によって設けられた凹凸形状による触感に加えて、より強い触感による立体感を壁紙100に付与できる。さらに、第二表面保護層24が粒子部24aを含むことで、粒子部24aの粒径によって触感による立体感をより強調できる。
【0047】
第二表面保護層24を形成する方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。粒子部24aを混合した第二表面保護層24を第一表面保護層23の上側UPに印刷する場合、グラビア印刷等の凹版印刷を採用するのが望ましい。また、第二表面保護層24は、公知のコーティング装置を用いて形成されてもよい。
【0048】
第二表面保護層24の塗布量は、0.5g/m2以上2.0g/m2以下であるのが望ましい。塗布量の下限値を0.5g/m2とすることで、第二表面保護層24の塗膜厚みによって十分な触感による立体感を付与できる。また、塗布量の上限値を2.0g/m2とすることで、第一表面保護層23の上側UPの面において、第二表面保護層24が形成される部分と形成されない部分との上下方向Vにおける高さの差を抑制し、壁紙100の耐傷性および耐摩擦性を向上できる。
【0049】
ここで、上述したように、壁紙100は、第一表面保護層23と第二表面保護層24とが異なる光沢を有することで、グロスマット感を有する。壁紙100は、このグロスマット感を有することで、視覚的な立体感を感じさせることができる。
【0050】
また、表面樹脂層20の表面20sには、エンボス加工を施すことにより、最大高低差Hが100μm以下の凹凸形状(エンボス)が設けられている。壁紙100は、主に、このエンボスを有することで、触感による立体感を感じさせることができる。
【0051】
壁紙100は、グロスマット感による視覚的な立体感と、表面樹脂層20の表面20sに設けられた凹凸形状による触感による立体感を有する。壁紙100は、視覚的な立体感と触感による立体感とを組み合わせることで、より強調した立体感を提供できる。
【0052】
例えば、印刷絵柄層22が有する絵柄が木目柄である場合、木目柄の導管部分に視覚的な立体感および触感による立体感を付与することで、より天然木材の見た目に近い木目柄の壁紙100を提供することができる。
【0053】
壁紙100は、表面樹脂層20の表面20sに設けられた凹凸形状において、上下方向Vにおける最大高低差Hが100μm以下であるため、上記のグロスマット感が低下するのを抑制しつつ、触感による立体感を感じさせることができる。すなわち、凹凸形状の最大高低差Hを100μm以下とすることで、表面樹脂層20の表面20sに凹凸形状(エンボス)を有し、優れたグロスマット感を有する壁紙100を提供することができる。その結果、壁紙100は、触感による立体感と、視覚的な立体感とを有することができる。
【0054】
本実施形態の壁紙100によれば、紙基材10と、紙基材10の上側UPに設けられた表面樹脂層20とを備え、表面樹脂層20の表面20sには、上下方向Vにおける最大高低差Hが100μm以下である凹凸形状が設けられている。また、表面樹脂層20は、第一表面保護層23と、第一表面保護層23の上側UPに設けられた第二表面保護層24とを備え、第一表面保護層23と第二表面保護層24とは、異なる光沢を有する。
【0055】
その結果、表面樹脂層20の表面20sに凹凸形状(エンボス)を有し、優れたグロスマット感を有する壁紙100を提供することができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0057】
(変形例1)
上記実施形態において、第二表面保護層24は、粒子部24aを有するが、第二表面保護層の態様はこれに限定されない。第二表面保護層は、粒子部を有さなくてもよい。第二表面保護層が粒子部を有さなくても、壁紙は、表面樹脂層の表面に有する凹凸形状によって、触感による立体感を感じさせることができる。
【0058】
以下実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
紙基材10として、塗布量65g、厚み110μmの普通紙を準備した。塩化ビニル樹脂に可塑剤55部および充填剤150部を加えたペーストを、塗布量が200g/m2となるようにコーティング法により紙基材10の上側UPに塗布し、基体樹脂層21を形成した。
【0060】
基体樹脂層21の上側UPに水性インキを用いたグラビアインキを印刷し、印刷絵柄層22を形成した。マット(低光沢)樹脂を塗布量が3g/m2となるように印刷絵柄層22の上側UPにグラビア印刷により印刷し、第一表面保護層23を形成した。
【0061】
粒子部24aとして合成樹脂ビーズを添加したグロス(高光沢)樹脂を塗布量が2g/m2となるように第一表面保護層23の上側UPにグラビア印刷により印刷し、第二表面保護層24を形成した。なお、第二表面保護層24は、印刷絵柄層22の第二絵柄形成部22bに同調した位置に形成した。
【0062】
こうして、紙基材10の上側UPに、基体樹脂層21、印刷絵柄層22、第一表面保護層23および第二表面保護層24で構成された表面樹脂層20を形成し、表面温度が170℃になるように加熱した。
【0063】
その後、上下方向Vにおける最大高低差Hが100μm以下になるように表面樹脂層20の表面20sにエンボス加工を施し、表面樹脂層20の表面20sに凹凸形状(エンボス)を形成した。その後、冷却および乾燥を施し、実施例1の壁紙100を得た。
【0064】
(実施例2)
表面樹脂層20の表面20sに設けた凹凸形状の上下方向Vにおける最大高低差Hが50μm以下になるようにした以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の壁紙100を得た。
【0065】
(比較例1)
表面樹脂層の表面にエンボス加工を施さず、凹凸形状を形成しない以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の壁紙を得た。
【0066】
(比較例2)
表面樹脂層の表面に設けた凹凸形状の上下方向における最大高低差が200μm以上になるようにした以外は実施例1と同様の方法により、比較例2の壁紙を得た。
【0067】
(実験1)
実施例1-2および比較例1-2の壁紙に、グロスマット評価試験を実施した。グロスマット評価試験では、10人の試験員で、壁紙の第一表面保護層および第二表面保護層のグロスマット感(光沢の差)による意匠性に対して官能試験を実施し、意匠の見た目の程度について評価した。
【0068】
評価基準は4段階とし、評価〇以上を合格とした。
◎(Excellent):意匠の見た目が良いと評価した人が9人以上10人以下である。
〇(Good):意匠の見た目が良いと評価した人が7人以上8人以下である。
△(Fair):意匠の見た目が良いと評価した人が1人以上6人以下である。
×(Poor):意匠の見た目が良いと評価した人が0人である。
【0069】
(実験2)
実施例1-2および比較例1-2の壁紙に触感評価試験を実施した。触感評価試験では、10人の試験員で、壁紙の表面樹脂層の表面における触感に対して官能試験を実施し、触感の程度について評価した。
【0070】
評価基準は3段階とし、評価〇以上を合格とした。
◎(Excellent):手触り感が良いと評価した人が9人以上10人以下である。
〇(Good):手触り感が良いと評価した人が7人以上8人以下である。
×(Poor):手触り感が良いと評価した人が6人以下である。
【0071】
(実験3)
実施例1-2および比較例1-2の壁紙に表面強度試験を実施した。表面強度試験では、壁紙工業会制定の規格である「表面強化壁紙性能規定」に準拠した試験により、表面樹脂層の表面を引掻いたときの破損状態を目視で確認し、表面樹脂層の表面において、第二表面保護層が脱落するか否かについて評価した。
【0072】
評価基準は2段階とし、評価〇を合格とした。
〇(Good):第二表面保護層が脱落しなかった。
×(Poor):第二表面保護層が脱落した。
【0073】
(実験4)
実施例1-2および比較例1-2の壁紙に耐摩擦性試験を実施した。耐摩擦性試験では、「JIS A 6921 摩擦色落ち度試験」に準拠した試験により、摩擦後の表面樹脂層の表面における表面状態を目視で確認し、表面樹脂層の表面において、第二表面保護層が脱落するか否かおよび第二表面保護層の光沢の変化ついて評価した。
【0074】
評価基準は3段階とし、評価〇以上を合格とした。
◎(Excellent):第二表面保護層の表面状態に著しい変化が無い。
〇(Good):第二表面保護層の光沢の変化はあるが脱落は無い。
×(Poor):第二表面保護層が脱落した。
【0075】
(実験結果)
実験1-4の結果を表1に示す。
実施例1-2はすべての実験において良好な結果を示した。
【0076】
表面樹脂層の表面に凹凸形状を有さない比較例1は、実験2において、実施例1-2にやや劣り不合格であった。表面樹脂層の表面に設けられた凹凸形状において、上下方向における最大高低差が100μmよりも大きい比較例2は、実験1、3および4において不合格であった。
【0077】
【符号の説明】
【0078】
100 壁紙
10 紙基材
20 表面樹脂層
20s 表面樹脂層の表面
21 基体樹脂層
22 印刷絵柄層
22a 第一絵柄形成部
22b 第二絵柄形成部
23 第一表面保護層
24 第二表面保護層
24a 粒子部
V 上下方向
UP 上側
LO 下側