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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024768
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】配線基板及び配線方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129015
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中坊 真敏
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338CC02
5E338CC05
5E338CD12
5E338EE13
(57)【要約】
【課題】ノイズを抑制できる配線基板又は配線方法を提供する。
【解決手段】配線基板12は、複数の配線層を有する配線基板12であって、複数の配線層に形成される配線31の少なくとも一部はミアンダパターン33を有し、異なる配線層に形成される配線31は、異なるパラメータに基づきミアンダパターン33が設定されている。例えば、配線31の長さが特定配線長にならないようにミアンダパターン33が用いられてもよい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線層を有する配線基板であって、
前記複数の配線層に形成される配線の少なくとも一部はミアンダパターンを有し、
異なる配線層に形成される配線は、異なるパラメータに基づき前記ミアンダパターンが設定されている
配線基板。
【請求項2】
前記配線の長さが特定周波数帯域に対応する特定配線長にならないように前記ミアンダパターンが用いられる
請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
異なる配線層に対して、異なる前記特定配線長が設定される
請求項2記載の配線基板。
【請求項4】
前記異なる配線層は、表層と内層とである
請求項3記載の配線基板。
【請求項5】
前記表層の前記特定配線長は、
εe=((εr1+1)/2)+((εr1-1)/2)×1/(√(1+(10×h)/w)
v1=c/√εe
λ1=v1/f
に基づき決定される波長λ1に基づき決定され、
前記内層の前記特定配線長は、
v2=c/√εr2
λ2=v2/f
に基づき決定される波長λ2に基づき決定され、
εeは前記表層に含まれる第1絶縁層の実効比誘電率であり、εr1は前記第1絶縁層の比誘電率であり、hは前記第1絶縁層の厚さであり、wは前記表層の前記配線の幅であり、cは光速であり、v1は前記表層における伝搬速度であり、fは前記特定周波数帯域であり、εr2は前記内層に含まれる第2絶縁層の比誘電率であり、v2は前記内層における伝搬速度である、
請求項4記載の配線基板。
【請求項6】
前記特定周波数帯域は、1559.052MHz~1563.144MHzの帯域に含まれる帯域、又は、1594.0625MHz~1609.375MHzに含まれる帯域である、
請求項5記載の配線基板。
【請求項7】
前記表層の前記特定配線長は、28.8mm~29.0mmに含まれ、
前記内層の前記特定配線長は、24.2mm~24.4mmに含まれる、
請求項4記載の配線基板。
【請求項8】
前記表層の前記特定配線長は、28.0mm~28.4mmに含まれ、
前記内層の前記特定配線長は、23.5mm~23.9mmに含まれる、
請求項4記載の配線基板。
【請求項9】
前記特定配線長は、前記特定周波数帯域と、配線幅と、絶縁体プリブレグの厚さとに基づき設定される
請求項2記載の配線基板。
【請求項10】
前記配線基板は車載用である
請求項1~9のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項11】
前記配線基板は、ASC(Active Sound Control)ユニット及びANC(Active Noise Control)ユニットの少なくとも一方を含むECU(Electronic Control Unit)に用いられる
請求項10記載の配線基板。
【請求項12】
複数の配線層を有する配線基板における配線方法であって、
前記複数の配線層に形成される配線の少なくとも一部はミアンダパターンを有し、
前記配線方法は、
異なる配線層に形成される配線に、異なるパラメータに基づき前記ミアンダパターンを設定する
配線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板及び配線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用計器における配線パターン等について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-116348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ノイズを抑制できる配線基板及び配線方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る配線基板は、複数の配線層を有する配線基板であって、前記複数の配線層に形成される配線の少なくとも一部はミアンダパターンを有し、異なる配線層に形成される配線は、異なるパラメータに基づき前記ミアンダパターンが設定されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、ノイズを抑制できる配線基板及び配線方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態に係る電子機器の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係るミアンダパターンを用いない配線パターンの例を示す図である。
図3図3は、実施の形態に係るミアンダパターンを用いない配線パターンの例を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係るミアンダパターンを用いた配線パターンの例を示す図である。
図5図5は、実施の形態に係るミアンダパターンを用いた配線パターンの例を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る表層のマイクロストリップラインの構成例を示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る内層のストリップラインの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0009】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0010】
(実施の形態)
[発明の基礎となった知見]
車載機器では、EV(Electric Vehicle)化により、電子機器のデジタル化が進むことで機器間ノイズ干渉が増えている。また、車両に搭載される機器の数の増加に伴い、車載機器には軽量化が求められている。軽量化を実現する手法として、金属筐体の代わりに樹脂筐体を用いる方法が考えられる。しかしながら、樹脂筐体を用いることで、ノイズ耐性の低下が懸念される。これらの原因により、車載機器におけるEMC(Electromagnetic Compatibility)対策が課題となってる。
【0011】
一方で、車室内に配置できる製品サイズから基板の外形サイズが決まる。また、この基板の外形の制約により、各部品の配置レイアウトにおいて、自由に各部品の距離(つまり配線パターン長)を決定することができない。これにより、EMI(Electromagnetic Interference)規格の限度値が最も厳しいBDS(Beidou Navigation Satellite System)帯域及びGLONASS(Global Navigation Satellite System)帯域等の特定周波数帯域(以下、特定帯域とも呼ぶ)に対応した特定配線長に、基板内の配線の配線長が合致してしまい、特定帯域でのノイズレベルが高くなってしまうという課題がある。ここで、特定配線長とは、特定帯域に対してアンテナパターンとなる配線長である。
【0012】
これに対して、本実施の形態では、基板内の全ての配線の配線長を、特定配線長にならないように、敢えて長くする。これにより、配線が特定帯域に対してアンテナパターンとならないようにできる。よって、例えば、樹脂筐体を用いた場合においてもEMI規格を満たすことができる。
【0013】
さらに、本実施の形態では、配線長をコントロールするだけではなく、基板材質に基づく比誘電率から実際の実効比誘電率を求める。また、表層配線と内層配線でのデジタル信号の高速伝送路における伝搬遅延特性を加味する。これらにより、基板内の各層の配線長を厳密にコントロールすることができる。
【0014】
[電子機器の構成]
まず、本実施の形態に係る電子機器10の構成例を説明する。図1は、本実施の形態に係る電子機器10の斜視図である。図1は、電子機器10を分解した様子を示している。
【0015】
電子機器10は、筐体11と、基板12とを含む。筐体11は、例えば、樹脂で構成され、上部シャーシ13と、下部シャーシ14とを含む。
【0016】
基板12は、配線基板であり、複数の配線層を有する。この配線層は、表層と1以上の内層とを含む。なお、配線層の数は特に限定されないが、例えば、基板12は、4層基板又は6層基板である。基板12は、筐体11の内部に配置される。
【0017】
また、基板12には集積回路等の複数の素子(電子部品)が配置される。なお、図1では、これらの一部のみを図示し、他は省略している。
【0018】
電子機器10は、例えば、車載用のECU(Electronic Control Unit)である。当該ECUは、例えば、車載音響関連の処理を行うASC(Active Sound Control)ユニット及びANC(Active Noise Control)ユニットの少なくとも一方を含む。言い換えると、当該ECUは、ASC及びANCの少なくとも一方の機能を有する。ASCは、EV又はハイブリット車において、エンジン音等を付加する処理を行う。ANCは、車内のノイズをキャンセルする処理を行う。
【0019】
なお、電子機器10は、上記の例に限定されない。電子機器10は、上記以外の車載用の電子機器であってもよいし、車載用以外の電子機器であってもよい。
【0020】
[配線長の調整]
本実施の形態では、基板12の全ての配線の配線長を、特定帯域に対応する特定配線長にならないように長くする。これにより、配線が特定帯域でのアンテナパターンとならないようにできる。つまり、基板12は、特定帯域に対応する特定配線長の配線を含まない。言い換えると、基板12の全ての配線の配線長は、特定配線長ではない。
【0021】
具体的には、基板12の配線長を調整する手法として、ミアンダパターン(ミアンダ型パターンとも呼ぶ)を用いる。ミアンダパターンとは、配線長が最短となる配線パターンではなく、配線を蛇行させることで配線長が長くなっている配線パターンである。
【0022】
図2及び図3は、比較のための図であり、ミアンダパターンを用いない配線パターンの例を示す図である。図2及び図3は、それぞれミアンダパターンを用いない配線21及び配線22を示す。
【0023】
図4及び図5は、それぞれ図2及び図3に対応し、ミアンダパターンを用いた配線パターンの例を示す図である。図4に示す配線31はミアンダパターン33を含む。図5に示す配線32はミアンダパターン34を含む。
【0024】
ここで、ミアンダパターンは、一般的に、複数の配線の配線長をそろえ、例えばデータラインとクロックラインとの複数配線の信号の遅延時間を合わせることで通信タイミングを合致させることを目的とし、すなわち伝搬遅延特性を合わせるために用いられる。つまり、ミアンダパターンは、同期しなければならない各信号ラインの等長配線を行うために用いられる。一方で、本実施の形態では、このミアンダパターンを、配線長が、特定配線長にならないようにするために用いる。
【0025】
[特定配線長の算出]
次に、特定配線長の算出方法について説明する。まず、真空中の配線の伝搬速度について説明する。真空中の伝搬速度は光速cと同じ30万km/secである。具体的には、真空中の伝搬速度は、下記(式1)により規定される。
【0026】
c=1/√(ε0×μ0) ・・・ (式1)
【0027】
ここで、ε0は真空の誘電率であり、ε0=8.85×10-12である。μ0は真空の透磁率であり、μ0=4π×10-7である。よって、伝搬速度c=2.99792458×10[m/sec]である。
【0028】
一方で同軸ケーブルの場合には、主に材質による比誘電率εrの影響により、伝搬速度が低下する。この伝搬速度の低下を波長短縮と呼ぶ。この場合の波長は、下記(式2)で表される。
【0029】
λ=λ0×1/√εr ・・・ (式2)
【0030】
ここで、λ0は真空時の波長である。例えば、絶縁体がポリエチレンである場合、εr=2.2~2.4であり、伝搬速度は、2.99792458/√2.3=1.97677293×10[m/sec]と算出される。つまり、同軸ケーブルにおける伝搬速度は真空時の約66%となる。よって、波長短縮率は0.66である。
【0031】
同軸ケーブルの場合と同様に、基板に形成される配線における信号の伝搬速度を算出できる。
【0032】
ここで、この伝搬速度は一般的な計算では光速cの約半分とされている。基板材質がガラスエポキシ(FR-4)である場合、その比誘電率は4.3/1GHzである。よって、伝搬速度は、2.99792458/√4.3=1.4457276101×10[m/sec]である。
【0033】
しかしながら、この計算で得られた伝搬速度は、実際の伝搬速度に対して誤差を有する。特に、GHz帯域においては大きく誤差が出るため、より厳密な制御が必要である。
【0034】
ここで、基板表層ではマイクロストリップラインが用いられ、基板内層ではストリップラインが用いられる。本実施の形態では、この表層と内層とで異なる計算を行うことで、表層と内層とで異なる伝搬速度を厳密に算出する。
【0035】
図6は、表層のマイクロストリップラインの構成例を示す図である。図6に示すように表層では、基板12は、グランド導体41と絶縁層42と配線43とを含む。グランド導体41は、電気的に接地された導体であり、例えば、金属層である。絶縁層42は、グランド導体41と配線43との間に配置される絶縁体の層であり、絶縁体プリブレグとも呼ばれる。配線43は、金属の配線パターンであり、信号を伝送する。
【0036】
本実施の形態では、絶縁層42の比誘電率εrと、絶縁層42の厚さ(高さ)hと、配線43の幅wと、を用いて、下記(式3)から実効比誘電率εeを算出する。
【0037】
εe=((εr+1)/2)+((εr-1)/2)×1/(√(1+(10×h)/w) ・・・ (式3)
【0038】
また、光速cと絶縁層42の実効比誘電率εeとを用いて、下記(式4)から伝搬速度vを算出する。
【0039】
v=c/√εe ・・・ (式4)
【0040】
さらに、特定帯域の周波数fと伝搬速度vから、下記(式5)を用いて波長λを算出する。
【0041】
λ=v/f ・・・ (式5)
【0042】
図7は、内層のストリップラインの構成例を示す図である。図7に示すように内層では、基板12は、グランド導体51及び54と絶縁層52と配線53とを含む。グランド導体51及び54は、電気的に接地された導体であり、例えば、金属層である。絶縁層52は、グランド導体51とグランド導体54との間に配置される絶縁体の層である。配線53は、絶縁層52内に配置される金属の配線パターンであり、信号を伝送する。
【0043】
この場合、光速cと絶縁層42の比誘電率εrとを用いて、下記(式6)から伝搬速度vを算出する。
【0044】
v=c/√εr ・・・ (式6)
【0045】
また、(式6)で得られた伝搬速度vから上記(式5)を用いて波長λを算出する。このように、表層と内層とで異なる伝搬速度vが算出され、異なる波長λが算出される。
【0046】
次に、表層の波長λに基づき表層の特定配線長が算出され、内層の波長λに基づき、内層の特定配線長が算出される。例えば、特定配線長はλ/4である。
【0047】
次に、表層の配線の配線長が、算出された表層の特定配線長にならないように、かつ、内層の配線の配線長が、算出された内層の特定配線長にならないように、表層及び内層の全ての配線パターンが作成される。例えば、所定のルールに基づき(例えば配線長が最短になるように)配線パターンが作成される。次に、作成された配線パターンのうち、算出された特定配線長と一致する配線長を有する配線が抽出され、抽出された配線が異なる配線長の配線(例えば、上述したミアンダパターンを有する配線)に置き換えられる。
【0048】
例えば、εr=3.9、h=0.2mm、w=0.1mmの場合、表層の伝搬速度vは1.80481941×10[m/sec]であり、内層の伝搬速度vは1.51805812×10[m/sec]である。よって、BDS帯(1.56GHz)に対応する表層の特定配線長は28.9mm程度であり、内層の特定配線長は24.3mm程度である。詳細には、BDS帯が1559.052MHz~1563.144MHzの帯域なので、BDS帯に対応する表層の特定配線長は28.8mm~29.0mmに含まれ、内層の特定配線長は、24.2mm~24.4mmに含まれる。
【0049】
また、GLONASS帯(1.60GHz)に対応する表層の特定配線長は28.1mm~28.2mm程度であり、内層の特定配線長は23.7~23.8mm程度である。詳細には、GLONASS帯は1594.0625MHz~1609.375MHzの帯域なので、表層の特定配線長は、28.0mm~28.4mmに含まれ、内層の特定配線長は、23.5mm~23.9mmに含まれる。
【0050】
なお、上記では、特定配線長がλ/4である例を述べたが、特定配線長はλ/2であってもよい。その場合には、GLONASS帯(1.60GHz)に対応する表層の特定配線長は56.2mm~56.4mm程度であり、内層の特定配線長は47.4~47.6mm程度である。詳細には、GLONASS帯は1594.0625MHz~1609.375MHzの帯域なので、表層の特定配線長は、56.0mm~56.8mmに含まれ、内層の特定配線長は、47.0mm~47.8mmに含まれる。また、λ/4とλ/2の両方が特定配線長として用いられてもよい。
【0051】
λ/2が用いられる場合、上記の例では、BDS帯(1.56GHz)に対応する表層の特定配線長は57.8mm程度であり、内層の特定配線長は48.6mm程度である。例えば、BDS帯に対応する表層の特定配線長は57.6mm~58.0mmに含まれ、内層の特定配線長は、48.4mm~48.8mmに含まれる。
【0052】
また、GLONASS帯(1.60GHz)に対応する表層の特定配線長は56.3mm~56.5mm程度であり、内層の特定配線長は47.3mm~47.5mm程度である。例えば、表層の特定配線長は、56.0mm~56.8mmに含まれ、内層の特定配線長は、47.0mm~47.8mmに含まれる。
【0053】
なお、上記で示す数値範囲は一例であり、基板の品番が異なれば、基材が異なることにより、誘電率εrが変わるため、線長のコントロールは必要となる。また、よりマージンを確保するために、上記の特定配線長の数値範囲を広くしてもよい。逆に、使用可能な配線長の範囲を広くするために、上記の特定配線長の数値範囲を狭くしてもよい。
【0054】
なお、上記では、特定帯域としてBDS帯及びGLONASS帯の例を挙げたが、特定帯域は他の周波数帯域であってもよい。また、特定帯域はGHz帯域に限らない。例えば、特定帯域は、電子機器10に含まれる回路等の動作周波数であってもよいし、電子機器10に接続される機器の動作周波数であってもよい。また、特定帯域は、これらの動作周波数のn倍(nは自然数)の周波数であってもよい。例えば、特定帯域は、これらの動作周波数の奇数倍の周波数であってもよい。
【0055】
また、特定帯域は複数であってもよい。この場合、特定帯域ごとに使用しない配線長が決定され、決定された全ての配線長の配線を含まないように配線パターンが生成される。
【0056】
[効果等]
本明細書の開示内容から導き出される発明は、例えば以下のような発明である。以下、本明細書の開示内容から導き出される発明について、当該発明によって得られる効果等と合わせて説明する。
【0057】
例えば、本開示の一態様に係る基板12は、複数の配線層を有する基板12であって、複数の配線層に形成される配線31(又は配線32)の少なくとも一部はミアンダパターン33(又はミアンダパターン34)を有し、異なる配線層に形成される配線は、異なるパラメータに基づきミアンダパターンが設定されている。ここで、基板12は配線基板の一例である。ここで、パラメータとは、例えば、伝搬速度v、波長λ又は特定帯域に対応する配線長である。
【0058】
これによれば、配線層毎に、当該配線層に適したパラメータを用いて、ミアンダパターンを形成できる。よって、例えば、特定帯域に対応するノイズを抑制できる。
【0059】
例えば、配線の長さが特定周波数帯域に対応する特定配線長にならないようにミアンダパターンが用いられてもよい。ここで、特定配線長とは、例えば、特定周波数帯域(特定帯域)のアンテナパターンとなる配線長である。
【0060】
これによれば、配線が、特定帯域に対応する特定配線長にならないようにできるので特定帯域に対応するノイズを抑制できる。
【0061】
例えば、異なる配線層に対して、異なる特定配線長が設定されてもよい。これによれば、配線層毎に、当該配線層に適したパラメータを用いて、特定帯域に対応する配線の長さを算出できる。よって、特定帯域に対応するノイズを抑制できる。
【0062】
例えば、異なる配線層は、表層と内層とであってもよい。これによれば、表層と内層とで、適切に特定帯域に対応する配線の長さを算出できる。よって、特定帯域に対応するノイズを抑制できる。
【0063】
例えば、表層の特定配線長は、εe=((εr1+1)/2)+((εr1-1)/2)×1/(√(1+(10×h)/w)、v1=c/√εe、λ1=v1/fに基づき決定される波長λ1に基づき決定され、内層の特定配線長は、v2=c/√εr2、λ2=v2/f、に基づき決定される波長λ2に基づき決定され、εeは表層に含まれる第1絶縁層の実効比誘電率であり、εr1は第1絶縁層の比誘電率であり、hは第1絶縁層の厚さであり、wは表層の配線の幅であり、cは光速であり、v1は表層における伝搬速度であり、fは特定周波数帯域であり、εr2は内層に含まれる第2絶縁層の比誘電率であり、v2は内層における伝搬速度であってもよい。これによれば、表層と内層とで、適切に特定帯域に対応するノイズを抑制できる。
【0064】
例えば、特定周波数帯域は、1559.052MHz~1563.144MHzの帯域に含まれる帯域、又は、1594.0625MHz~1609.375MHzに含まれる帯域であってもよい。つまり、特定周波数帯域は、BDS帯及びGLONASS帯であってもよい。
【0065】
例えば、表層の特定配線長は、28.8mm~29.0mmに含まれ、内層の特定配線長は、24.2mm~24.4mmに含まれてもよい。これによれば、表層と内層とで、適切に特定帯域に対応するノイズを抑制できる。
【0066】
例えば、表層の特定配線長は、28.0mm~28.4mmに含まれ、内層の特定配線長は、23.5mm~23.9mmに含まれてもよい。これによれば、表層と内層とで、適切に特定帯域に対応するノイズを抑制できる。
【0067】
例えば、特定配線長は、特定周波数帯域と、配線幅と、絶縁体プリブレグの厚さとに基づき設定されてもよい。例えば、上記(式3)~(式5)を用いて特定配線長が算出される。これによれば、複数のパラメータを加味して高精度に特定配線長を算出できる。
【0068】
例えば、配線基板は車載用であってもよい。例えば、配線基板は、ASC(Active Sound Control)ユニット及びANC(Active Noise Control)ユニットの少なくとも一方を含むECU(Electronic Control Unit)に用いられてもよい。
【0069】
例えば、本開示の一態様に係る配線方法は、複数の配線層を有する基板12における配線方法であって、複数の配線層に形成される配線31(又は配線32)の少なくとも一部はミアンダパターン33(又はミアンダパターン34)を有し、配線方法は、異なる配線層に形成される配線に、異なるパラメータに基づきミアンダパターンを設定する。ここで、パラメータとは、例えば、伝搬速度v、波長λ又は特定帯域に対応する配線長である。
【0070】
これによれば、配線層毎に、当該配線層に適したパラメータを用いて、ミアンダパターンを形成できる。よって、例えば、特定帯域に対応するノイズを抑制できる。
【0071】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0072】
例えば、上記実施の形態に係る電子機器は、車両以外の移動体装置に搭載されてもよい。移動体装置は、例えば、航空機または船舶であってもよい。また、本開示は、このような車両以外の移動体装置として実現されてもよい。
【0073】
また、本開示の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0074】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の電子機器は、例えば、車載用の電子機器として有用である。
【符号の説明】
【0076】
10 電子機器
11 筐体
12 基板
13 上部シャーシ
14 下部シャーシ
21、22、31、32 配線
33、34 ミアンダパターン
41、51、54 グランド導体
42、52 絶縁層
43、53 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7