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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024769
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ゲートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 11/00 20060101AFI20250214BHJP
   E06B 11/02 20060101ALI20250214BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
E06B11/00 A
E06B11/02 P
E04B1/00 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129016
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】308022302
【氏名又は名称】大林株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】片桐 良夫
【テーマコード(参考)】
2E038
【Fターム(参考)】
2E038BA01
2E038BA06
2E038CA21
2E038CB00
2E038DJ02
2E038DK07
2E038DK08
(57)【要約】
【課題】重厚感を与えると共に耐震性の高いゲートを、施工現場での労力負担を軽減し工期を短縮して製造することができる、ゲートの製造方法を提供する。
【解決手段】溶接により鉄骨材を縦横に組み付けて門型の鉄骨構造体1とする鉄骨構造体構築工程と、鉄骨材に構造用合板40を直接に留め付けることにより、鉄骨構造体1を構造用合板40で外側から被覆して合板被覆構造体2とする合板被覆工程と、合板被覆構造体2において構造用合板40の外表面の全面積を、防水材の層を含む防水処理層でコーティングする防水処理工程と、を工場内で行う。防水処理工程を経た半完成品を施工現場まで搬送し、コンクリート基礎上に固定した後、半完成品の外表面を仕上げ材で装飾する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接により鉄骨材を縦横に組み付けて門型の鉄骨構造体とする鉄骨構造体構築工程と、
前記鉄骨材に構造用合板を直接に留め付けることにより、前記鉄骨構造体を前記構造用合板で外側から被覆して合板被覆構造体とする合板被覆工程と、
前記合板被覆構造体において前記構造用合板の外表面の全面積を、防水材の層を含む防水処理層でコーティングする防水処理工程と、を工場内で行い、
前記防水処理工程を経た半完成品を施工現場まで車両で搬送し、コンクリート基礎上に固定した後、前記半完成品の外表面を仕上げ材で装飾する
ことを特徴とするゲートの製造方法。
【請求項2】
前記合板被覆構造体には、巻き取られたシャッターを収容するための下方に開放した箱状の空間が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のゲートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建築物の敷地と道路との境界には、車両や人の出入り口としてゲート(門型の構造物)が設置されることがある。ゲートとしては、従前より、コンクリート製のものが多用されている。コンクリート製のゲートは、重厚感を求める需要者に好まれる。
【0003】
しかしながら、コンクリート製のゲートは、施工現場において型枠を組み、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートの養生をした後、型枠を外すことにより製造される。そのため、施工現場での作業が多段階にわたり労力負担が大きいと共に、施工期間が長いという問題があった。特に、コンクリートの養生には、約4か月という長期間を要する。長期間にわたる野外作業は、天候の影響を受けるという問題もある。また、道路との境界に設置されるゲートの設置工事を長期間にわたり行っていると、工事のための車両や人の出入りによって、道路の通行にも支障をきたし、近隣の住民にも迷惑である。
【0004】
加えて、コンクリート製のゲートは重量物であるため、万一倒れることがあると被害が大きくなるおそれがある。そのため、耐震性を高めるためには、コンクリート内部に鉄筋を縦横に配する必要があり、その作業にも手間がかかると共に時間もかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、重厚感を与えると共に耐震性の高いゲートを、施工現場での労力負担を軽減し工期を短縮して製造することができる、ゲートの製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるゲートの製造方法は、
「溶接により鉄骨材を縦横に組み付けて門型の鉄骨構造体とする鉄骨構造体構築工程と、
前記鉄骨材に構造用合板を直接に留め付けることにより、前記鉄骨構造体を前記構造用合板で外側から被覆して合板被覆構造体とする合板被覆工程と、
前記合板被覆構造体において前記構造用合板の外表面の全面積を、防水材の層を含む防水処理層でコーティングする防水処理工程と、を工場内で行い、
前記防水処理工程を経た半完成品を施工現場まで車両で搬送し、コンクリート基礎上に固定した後、前記半完成品の外表面を仕上げ材で装飾する」ものである。
【0007】
本構成の製造方法は、鉄骨構造体構築工程、合板被覆工程、及び防水処理工程までを工場で行うため、ゲートの施工現場での作業負担を軽減することができる。また、従来のコンクリート製ゲートの製造方法では、コンクリートの養生だけでも数カ月を要していたところ、多くの工程を工場内で行う本製造方法では、施工現場での工期を大幅に短縮することができる。
【0008】
このように、製造工程の多くを工場で行うことは、ゲートの基体(もととなる構造体)を、鉄骨材の溶接により構築した鉄骨構造体としたことにより、初めて可能となったものである。仮に、ゲートの基体を、アルミニウムの棒材をボルトやビスで組み付けて構成させた構造体としたら、搬送中の振動によってボルトやビスを受けている孔部が広がって、組み付けが緩みガタツキが生じてしまうため、搬送することは不可能である。これに対し、本構成でゲートの基体としている鉄骨構造体は、鉄骨材を溶接により縦横に組み付けた構造体であり、堅固な剛体である。そのため、ゲートの半完成品を車両で搬送する際の振動で、鉄骨構造体に緩みやガタツキが生じることがない。
【0009】
また、鉄骨構造体を外側から構造用合板で被覆していることから、鉄骨構造体の内部は中空であるため、同サイズのコンクリート製ゲートに比べて、かなり軽量である。そのため、プレキャストコンクリート製のゲートを工場で作成し、施工現場まで車両で搬送する場合に比べ、搬送が容易である。
【0010】
更に、鉄骨材の溶接により構築した鉄骨構造体は、堅固な剛体であるため、鉄骨構造体を基体とするゲートは耐震性が極めて高い。
【0011】
加えて、鉄骨構造体を外側から構造用合板で被覆しており、木材である構造用合板は野外で使用すれば腐食しやすいところ、構造用合板の外表面の全面積を、防水材の層を含む防水処理層でコーティングしているため、構造用合板の腐食が効果的に防止されている。また、構造用合板の外表面の全面積が防水処理層でコーティングされていることにより、構造用合板で被覆されている鉄骨構造体を構成している鉄骨材の腐食(錆び)も、同様に効果的に防止されている。
【0012】
そして、実際には鉄骨構造体の内部は中空であるが、外観からは中空構造であることは分からないため、重厚感を与えるゲートを製造することができる。
【0013】
本発明にかかるゲートの製造方法は、上記構成に加え、
「前記合板被覆構造体には、巻き取られたシャッターを収容するための下方に開放した箱状の空間が形成される」ものとすることができる。
【0014】
本構成により、シャッターゲートとして使用するゲートを、重厚感を与えると共に耐震性の高いゲートとし、施工現場での労力負担を軽減し工期を短縮して製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、重厚感を与えると共に耐震性の高いゲートを、施工現場での労力負担を軽減し工期を短縮して製造することができる、ゲートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】鉄骨構造体構築工程を経た鉄骨構造体の斜視図である。
図2】合板被覆工程を経た合板被覆構造体の説明図である。
図3】防水処理工程を経た防水処理済み構造体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態であるゲートの製造方法、及び、この製造方法により製造されるゲートについて、図面を用いて説明する。
【0018】
本実施形態のゲートの製造方法は、鉄骨構造体構築工程と、合板被覆工程と、防水処理工程と、付属品埋込み工程と、基礎打設工程と、設置固定工程と、仕上げ工程と、を具備している。これらの工程のうち、鉄骨構造体構築工程、合板被覆工程、防水処理工程、及び付属品埋込み工程は、生産者の工場内で行われる。
【0019】
鉄骨構造体構築工程では、構造用圧延鋼材などの鋼材や鉄材である鉄骨材を縦横に組み付けて、門型の鉄骨構造体1を構築する。門型とは、ベースフレーム10から立設した一対の柱状構造部20の上端を、梁状の横架構造部30で連結した構造である。
【0020】
具体的に説明すると、ベースフレーム10は地面に設置する部分であり、一対のベース用長尺横材11それぞれの両端を、ベース用短尺横材12で連結した長方形の枠体である。ベース用長尺横材11の長さによっては、一対のベース用長尺横材11それぞれの中間部を、ベース用短尺横材12で連結してもよい。ベース用長尺横材11とベース用短尺横材12との連結点は、いずれも溶接によって接合されている。以下では、ベース用長尺横材11の延びる方向を「横方向」と称し、これに直交する方向、すなわちベース用短尺横材12の延びる方向を「前後方向」と称する。
【0021】
一対の柱状構造部20は、上下方向に延びる複数の柱用長尺縦材21と、前後方向に延びる複数の柱用短尺横材22で構成されている。複数の柱用長尺縦材21は、いずれも下端がベースフレーム10に溶接されて、ベースフレーム10から垂直に立設している。柱用長尺縦材21には、ベースフレーム10における横方向の両端部の一方において、前後方向に離隔している一対と、ベースフレーム10における横方向の両端部の他方において、前後方向に離隔している一対とがある。そして、横方向における同じ位置で、前後方向に離隔して対をなしている柱用長尺縦材21が、複数の柱用短尺横材22で連結されている。柱用長尺縦材21と柱用短尺横材22との連結点は、いずれも溶接によって接合されている。
【0022】
ここでは、複数の柱用短尺横材22によって連結されている一対の柱用長尺縦材21が、それぞれ補強用縦材26によって補強されている場合を例示している。補強用縦材26は、それぞれの下端がベースフレーム10に溶接されることにより、ベースフレーム10から垂直に立設しており、柱用長尺縦材21に隣接している。また、補強用縦材26と、これに隣接している柱用長尺縦材21とは、軸方向における複数箇所で溶接されている。
【0023】
横架構造部30は、横方向に延びる複数の梁用長尺横材31a,31bと、前後方向に延びる複数の梁用短尺横材32と、上下方向に延びる複数の梁用短尺縦材33で構成されている。梁用長尺横材31a,31bには、上部梁用長尺横材31aと下部梁用長尺横材31bとがある。上部梁用長尺横材31aには、前後方向における前側で、横方向に離隔している二本の柱用長尺縦材21の上端同士を連結している部材と、前後方向における後ろ側で、横方向に離隔している二本の柱用長尺縦材21の上端同士を連結している部材とがある。下部梁用長尺横材31bには、前後方向における前側の上部梁用長尺横材31aから下方に離隔した位置で、二本の柱用長尺縦材21を連結している部材と、前後方向における後ろ側の上部梁用長尺横材31aから下方に離隔した位置で、二本の柱用長尺縦材21を連結している部材とがあり、それぞれ補強用縦材26の上端と接合されている。
【0024】
そして、二本の上部梁用長尺横材31aを、複数の梁用短尺横材32が連結しており、前後方向における前側及び後ろ側で、それぞれ上下に離隔している上部梁用長尺横材31aと下部梁用長尺横材31bとを、複数の梁用短尺縦材33が連結している。上部梁用長尺横材31aと梁用短尺横材32との連結点、上部梁用長尺横材31a、下部梁用長尺横材31bと梁用短尺縦材33との連結点、及び、下部梁用長尺横材31bと補強用縦材26との接合点は、いずれも溶接によって接合されている。
【0025】
ベース用長尺横材11、ベース用短尺横材12、柱用長尺縦材21、柱用短尺横材22、補強用縦材26、上部梁用長尺横材31a、下部梁用長尺横材31b、梁用短尺横材32、及び、梁用短尺縦材33は、いずれも上記の鉄骨材である。
【0026】
このような鉄骨構造体構築工程により、縦横に延びる鉄骨材が溶接されることにより、門型の鉄骨構造体1が構築される(図1を参照)。この鉄骨構造体1は、縦横に延びる鉄骨材の連結点(交点)が溶接されているため、非常に堅固な剛体である。
【0027】
合板被覆工程では、鉄骨構造体1を構造用合板40で外側から被覆する。具体的には、前後に離隔した上部梁用長尺横材31a同士、前後方向における前側の上部梁用長尺横材31aと下部梁用長尺横材31b、前後方向における後ろ側の上部梁用長尺横材31aと下部梁用長尺横材31bに、それぞれ架け渡すように構造用合板40を外側から張り付けることにより、横架構造部30を上方から、前方から、及び、後方から被覆する。また、一対の柱状構造部20については、四つの側方から構造用合板40で被覆する。すなわち、前方から、後方から、横方向における外方から、横方向における内方から、構造用合板40を柱状構造部20に張り付ける。
【0028】
このような合板被覆工程により、鉄骨構造体1が外側から構造用合板40で被覆され、内部に中空の空間を有する合板被覆構造体2が形成される。ここでは、前側の下部梁用長尺横材31bと後ろ側の下部梁用長尺横材31bとは鉄骨材で連結されていない場合を例示している。そのため、構造用合板40で被覆された横架構造部30は、下方に向かって解放した箱状の空間となる。この空間は、ゲートがシャッターゲートとして使用される場合に、巻き取られたシャッターを収容する空間となる。
【0029】
一方、ゲートがシャッターゲートではない場合は、鉄骨構造体構築工程において、前側の下部梁用長尺横材31bと後ろ側の下部梁用長尺横材31bとを梁用短尺横材32で連結した上で、合板被覆工程においてこの部分も構造用合板40で被覆する。
【0030】
合板被覆工程では、鉄骨構造体1に“直接に”構造用合板40が張り付けられる。これは、鉄骨構造体1を構成する鉄骨材に構造用合板40を当接させた状態で、ビスや釘である留付け部材47を留め付けることにより行われる。留付け部材47は、構造用合板40に当接している鉄骨材の全てについて、それぞれ複数個所で留め付けられる。すなわち、構造用合板40は、一枚当たり、極めて多数の箇所で鉄骨構造体1に留め付けられる。
【0031】
このように、鉄骨構造体1に“直接に”構造用合板40が張り付けるためには、隣接する鉄骨材の外表面を延長した面が、正確に平面を構成するように、極めて精密に鉄骨構造体1が構築されている必要がある。これは、鉄骨材の溶接により構築する鉄骨構造体1にとって、非常に難しいことであるのが実情である。そのため、従来は、鉄骨構造体1に直接に構造用合板40を張り付けることは行われていない。これに対し、本実施形態では、鉄骨構造体構築工程を工場内で行うため、溶接作業を施工現場で行う場合と比べて、作業者が作業しやすい姿勢をとることができる環境を整えやすく、溶接対象の鉄骨材の位置決めをする治具等を正確に配置することも容易であるため、鉄骨構造体1を極めて精密に構築することができ、鉄骨構造体1に“直接に”構造用合板40を張り付けることが可能となっている。
【0032】
なお、構造用合板40としては、ヒノキ、スギ、カラマツ、エゾマツ等の針葉樹を原料とした針葉樹合板を使用することができる。また、構造用合板40は、含水率を8%以下に低下させたものを使用する。
【0033】
合板被覆工程を経て、鉄骨構造体1が構造用合板40で外側から被覆されている合板被覆構造体2が形成される(図2を参照)。
【0034】
防水処理工程では、合板被覆構造体2において鉄骨構造体1を被覆している構造用合板40の外表面の全面積について、防水処理を行う。この防水処理工程は更に、下処理工程と、本処理工程と、保護処理工程の三工程に分けることができる。下処理工程は、その後の本処理工程でコーティングされる防水材の構造用合板40への接着性を高めるために、構造用合板40の外表面にプライマーをコーティングする工程である。プライマーとしては、木材に馴染みが良く、防水材とも親和性の高いコーティング材が使用される。この工程により、構造用合板40の外表面にプライマー層が積層される。
【0035】
本処理工程は、プライマー層の上から構造用合板40の外表面に防水材をコーティングする工程である。構造用合板40のような木材は、水分、酸素、菌類、菌類のための栄養分の存在により、腐食が進行する。構造用合板40に対して予め殺菌処理を施すことによって、菌類、及び菌類のための栄養分を可及的に除去した上で、防水材でコーティングすることにより、構造用合板40への水の浸入を防止すると共に、構造用合板40への酸素ガスのアクセスを妨げることにより、構造用合板40の腐食を効果的に防止することができる。
【0036】
また、構造用合板40への水の浸入を防止し酸素ガスのアクセスを妨げることにより、構造用合板40で被覆されている鉄骨構造体1を構成する鉄骨材の腐食(錆び)を、効果的に防止することができる。
【0037】
防水材としては、温度変化に伴う構造用合板40の伸縮に追随する材料が望ましく、アクリル樹脂系エマルション型防水材を、好適に使用することができる。防水材は、プライマー層の上から構造用合板40の外表面に複数回コーティングすることにより、構造用合板40の外表面の全面積をくまなく十分にコーティングする。これにより、プライマー層の上に、防水材層が積層される。
【0038】
保護処理工程は、防水材層をカバーし、防水材層における亀裂の発生や剥離を防止するために、防水材層の上から構造用合板40の外表面に保護防水材をコーティングする工程である。この工程により、プライマー層に積層されている防水材層に、更に保護防水層が積層される。保護防水材としては、伸びがよく防水材層の全体をカバーすることができ、機械的強度の高い皮膜を形成するコーティング材が使用される。なお、保護防水材として、粘着性を有するコーティング材を使用すれば、後の仕上げ工程で、保護防水層の上から更に貼着される仕上げ材の接着性を高めることができる。
【0039】
このような下処理工程、本処理工程、及び、保護処理工程からなる防水処理工程を経て、プライマー層、防水材層、及び保護防水層の積層構造である防水処理層50が、構造用合板40の外表面の全面積にコーティングされ、防水処理済み構造体3が形成される(図3を参照)。なお、図3では、防水処理済み構造体3の天部に、屋根板60を設置した場合を例示している。屋根板60は、例えば、アルミニウムや亜鉛の合金をメッキした鋼板とすることができる。
【0040】
上記の下処理工程においてプライマーをコーティングする際に、プライマーの接着性を利用して、構造用合板40の表面に網状のクロスを貼り付けることができる。このような網状のクロスにより、その後の本処理工程でコーティングされる防水材を保持する作用が高まるため、経時的に防水材層に亀裂や剥離が生じるおそれを、効果的に低減することができる。このように下処理工程で網状のクロスを貼り付ける場合は、下処理工程、本処理工程、及び、保護処理工程からなる防水処理工程を経て、網状のクロスを含有するプライマー層、防水材層、及び保護防水層の積層構造である防水処理層50が、構造用合板40の外表面の全体にコーティングされる。
【0041】
付属品埋込み工程は、郵便ポスト、宅配ボックス、インターホン、照明、シャッター動作用スイッチなどの付属品、及び、これらの付属品のうち電力を必要とするものに電力を供給するための電線を、防水処理済み構造体3に埋め込んでおく工程である。防水処理層50がコーティングされた構造用合板40の外表面への付属品の設置は、防水処理工程の後に行うことができるが、電線を通すために構造用合板40に孔部を設ける作業や、構造用合板40で被覆された内部空間に電線を配する作業は、合板被覆工程と並行して行われる。
【0042】
工場内で行われる上記の鉄骨構造体構築工程、合板被覆工程、防水処理工程、及び付属品埋込み工程を経て、ゲートの半完成品が製造される。工場での作業は、野外での作業とは異なり天候の影響を受けることがないため、確実な工期で、安定的にゲートの半完成品を供給することができる。
【0043】
半完成品は、クレーンを装備しているトラック(ユニック車)によって、工場から施工現場まで搬送される。車両による搬送により、被搬送物には大きな振動が作用する。そのため、被搬送物が複数の部材を組み付けた製品である場合は、搬送中の振動により部材の組み付けが緩み、ガタツキが生じるおそれがある。これに対し、本実施形態では、搬送される半完成品は、鉄骨材を溶接することにより構築された堅固な剛体である鉄骨構造体1を基体としているため、搬送中の振動により鉄骨材の組み付けが緩むおそれがない。
【0044】
また、仮に、基体としての構造体が、アルミニウムなどの柔らかい金属で構成されていた場合、留め付けられたビスや釘を受け止めている孔部が搬送中の振動により広がってしまい、ビスや釘の留め付けが緩んでしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、搬送される半完成品では、基体としての構造体が鉄骨構造体1であるため、構造用合板40を留め付けているビスや釘を受け止めている孔部が、搬送中の振動により広がってしまうおそれがない利点を有している。
【0045】
このように、ゲートの半完成品は、搬送中の振動により不具合が生じることなく、無事に施工現場まで搬送される。
【0046】
施工現場では、半完成品の到着に先立ち、基礎打設工程が行われる。基礎打設工程では、施工現場においてゲートが設置される場所の地面を所定深さだけ掘削し、砕石を敷いた上でコンクリート基礎を打設する。このコンクリート基礎からは、溶接用の鉄筋(アンカー鉄筋)を立設させておく。本実施形態のゲートは、鉄骨構造体1の内部が中空であるため、同サイズのコンクリート製ゲートに比べて軽量である。そのため、コンクリート基礎も、コンクリート製ゲートのためのコンクリート基礎ほどは厚くする必要がない利点がある。
【0047】
設置固定工程では、施工現場に到着した半完成品をクレーンで吊り下げて、コンクリート基礎の上に降ろす。そして、水平方向と垂直方向の調整をした後、鉄骨構造体1のベースフレーム10と、コンクリート基礎から立設しているアンカー鉄筋とを溶接する。これにより、ベースフレーム10を介して、ゲートの半完成品がコンクリート基礎に固定される。設置固定工程は、半完成品が施工現場に到着してから、わずか数時間から半日で終了する。
【0048】
仕上げ工程では、コンクリート基礎に固定された半完成品の外表面を仕上げ材で装飾する。すなわち、半完成品において構造用合板40の外表面を、防水処理層50の上から仕上げ材で装飾する。仕上げ材として、コンクリート様の外観となる塗料を使用することにより、外観としてはコンクリート製ゲートと区別がつきにくいゲートとすることができる。また、仕上げ材として、煉瓦、陶磁器、天然石、樹脂などで形成されたタイル(装飾用薄板)を使用することができる。仕上げ材として採用できる材料が多種類であるため、仕上がりデザインの多様なゲートを製造することができる。
【0049】
最後の工程として、ベースフレーム10が埋設される高さまで、設置面にコンクリートを打設する。これにより、仕上げ材による装飾がなされた柱状構造部20の下端も、所定の高さまでコンクリートに埋設され、ゲートが完成する。
【0050】
以上のように、本実施形態のゲートの製造方法によれば、鉄骨構造体構築工程、合板被覆工程、防水処理工程、及び付属品埋込み工程までを工場で行うため、ゲートの施工現場での作業負担を軽減し、工期を短縮することができる。このように、製造工程の多くを工場で行うことは、ゲートの半完成品が、車両で搬送する際の振動に耐え得る構成であることから、初めて可能となったものである。つまり、鉄骨材の溶接により構築した鉄骨構造体1を基体とするという構成を採用したからこそ、車両で搬送する際の振動によって緩みやガタツキが生じることがなく、製造工程の多くを工場で行うことが可能となったものである。
【0051】
また、鉄骨構造体1を外側から構造用合板40で被覆していることから、鉄骨構造体1の内部は中空であるため、構造用合板40で被覆し防水処理層50でコーティングしても、同サイズのコンクリート製ゲートよりかなり軽量である。そのため、施工現場までの半完成品の搬送が容易である。
【0052】
更に、鉄骨材の溶接により構築した堅固な剛体である鉄骨構造体1を、ゲートの基体としているため、耐震性が極めて高い利点を有している。
【0053】
そして、実際には鉄骨構造体1の内部は中空であるが、外観からは中空構造であることは分からないため、従来のコンクリート製ゲートと同等以上の重厚感を与えるゲートを製造することができる。
【0054】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0055】
例えば、上記では、一つの鉄骨構造体1を基体とする半完成品の一つから、一つのゲートを製造する場合を例示した。これに限定されず、それぞれ一つの鉄骨構造体1を基体とする半完成品の複数から、複数の出入り口を有する大型のゲートを製造することができる。この場合、一台のユニック車で搬送できるサイズの半完成品を単位とし、それぞれをユニック車で施工現場まで搬送した後、施工現場において複数の半完成品を並設し、組み合わせて大型のゲートとする。仕上げ工程は施工現場で行われるため、複数の半完成品が並設されたことにより生じる境界部分の外表面を、下地処理をしてから仕上げ材で装飾することにより、複数の単位から構成されていることが外観からは分からない大型のゲートを、簡易に製造することができる。
【0056】
また、上記では、仕上げ工程が、半完成品の外表面を仕上げ材で装飾する工程のみからなる場合を例示した。この工程に加えて、半完成品の上部に切妻屋根や寄棟屋根などの屋根を設置する工程を、仕上げ工程にて行うことができる。屋根面には、和瓦や洋瓦などの屋根材を、敷設することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 鉄骨構造体
2 合板被覆構造体
3 防水処理済み構造体
11 ベース用長尺横材(鉄骨材)
12 ベース用短尺横材(鉄骨材)
21 柱用長尺縦材(鉄骨材)
22 柱用短尺横材(鉄骨材)
31a 上部梁用長尺横材(梁用長尺横材、鉄骨材)
31b 下部梁用長尺横材(梁用長尺横材、鉄骨材)
32 梁用短尺横材(鉄骨材)
33 梁用短尺縦材(鉄骨材)
40 構造用合板
50 防水処理層
図1
図2
図3