(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024770
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/00 20060101AFI20250214BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20250214BHJP
H03H 5/02 20060101ALI20250214BHJP
H03H 7/075 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01F27/00 160
H01F27/00 S
H01F27/00 R
H01F17/00 C
H03H5/02
H03H7/075 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129019
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中堤 純
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AA05
5E070AB01
5E070AB03
5E070CB15
5E070CB17
5E070DB08
5J024AA01
5J024BA04
5J024BA11
5J024CA03
5J024CA04
5J024DA04
5J024DA29
5J024EA03
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】小型化およびインダクタの配置に起因する問題の発生を抑制しながら、所望の特性を実現する。
【解決手段】電子部品1は、積層体50と、第1のインダクタL11と、第2のインダクタL21とを備えている。第1のインダクタL11は、第1の導体層661と、第1の柱状導体T1aと、第2の柱状導体T1bとを含んでいる。第2のインダクタL21は、第2の導体層662と、第3の柱状導体T2aと、第4の柱状導体T2bとを含んでいる。第1の導体層661の少なくとも一部は、第1の柱状導体T1aと第2の柱状導体T1bとが並ぶ方向と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在している。第2の導体層662の少なくとも一部は、第3の柱状導体T2aと第4の柱状導体T2bとが並ぶ方向と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の誘電体層を含む積層体と、
前記複数の誘電体層の積層方向と交差する平面に沿って延在する第1の導体層と、前記積層方向に平行な方向に延在し且つ前記第1の導体層の一端部の近傍部分に接続された第1の柱状導体と、前記積層方向に平行な方向に延在し且つ前記第1の導体層の他端部の近傍部分に接続された第2の柱状導体とを含む第1のインダクタと、
前記積層方向と交差する平面に沿って延在する第2の導体層と、前記積層方向に平行な方向に延在し且つ前記第2の導体層の一端部の近傍部分に接続された第3の柱状導体と、前記積層方向に平行な方向に延在し且つ前記第2の導体層の他端部の近傍部分に接続された第4の柱状導体とを含む第2のインダクタとを備え、
前記積層体は、前記積層方向の両端に位置する第1の面および第2の面と、前記第1の面と前記第2の面を接続する第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面とを有し、
前記第1の側面と前記第2の側面は、互いに反対側を向き、
前記第3の側面と前記第4の側面は、互いに反対側を向き、
前記第1のインダクタは、前記第2の側面よりも前記第1の側面により近い位置に配置され、
前記第2のインダクタは、前記第1の側面よりも前記第2の側面により近い位置に配置され、
前記第1の導体層の少なくとも一部は、前記第1の柱状導体と前記第2の柱状導体とが並ぶ方向と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在し、
前記第2の導体層の少なくとも一部は、前記第3の柱状導体と前記第4の柱状導体とが並ぶ方向と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在していることを特徴とする積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1のインダクタは、前記第4の側面よりも前記第3の側面により近い位置に配置され、
前記第2のインダクタは、前記第3の側面よりも前記第4の側面により近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1の導体層は、前記第1の導体層の前記一端部から離れるに従って前記第2の側面に近づくように延在する第1の部分と、前記第1の導体層の前記他端部から離れるに従って前記第2の側面に近づくように延在する第2の部分とを含み、
前記第2の導体層は、前記第2の導体層の前記一端部から離れるに従って前記第1の側面に近づくように延在する第3の部分と、前記第2の導体層の前記他端部から離れるに従って前記第1の側面に近づくように延在する第4の部分とを含むことを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1の導体層と前記第2の導体層の各々は、直線状に延在する直線部分を含み、
前記第1の導体層の前記直線部分と前記第2の導体層の前記直線部分は、互いに平行であることを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1の導体層は、一方向に延在する第1の部分と、前記第1の部分とは異なる方向に延在し且つ前記第1の部分とは異なる長さを有する第2の部分とを含み、
前記第2の導体層は、一方向に延在する第3の部分と、前記第3の部分とは異なる方向に延在し且つ前記第3の部分とは異なる長さを有する第4の部分とを含むことを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第2の部分から前記第4の部分までの距離は、前記第1の部分から前記第3の部分までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項5記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第1の導体層と前記第2の導体層の各々は、湾曲するように延在する湾曲部分を含むことを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記積層方向と直交し且つ前記第1の側面と前記第2の側面とが並ぶ方向を第1の方向とし、前記積層方向と直交し且つ前記第3の側面と前記第4の側面とが並ぶ方向を第2の方向としたときに、前記第2の柱状導体と前記第4の柱状導体は、前記第2の方向において前記第1の柱状導体と前記第3の柱状導体との間に配置され、
前記第1の方向における前記第2の柱状導体と前記第4の柱状導体との間隔は、前記第1の方向における前記第1の柱状導体と前記第3の柱状導体との間隔よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の積層型電子部品。
【請求項9】
更に、第1のハイパスフィルタと、
第2のハイパスフィルタと、
回路構成上、前記第1のハイパスフィルタと前記第2のハイパスフィルタとの間に設けられたローパスフィルタとを備え、
前記第1のハイパスフィルタは、前記第1のインダクタを含み、
前記第2のハイパスフィルタは、前記第2のインダクタを含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記ローパスフィルタは、それぞれ前記平面に沿って延在する導体層と前記積層方向に平行な方向に延在し且つ前記導体層に接続された一対の柱状導体とを含む第3のインダクタおよび第4のインダクタを含み、
前記第3のインダクタと前記第4のインダクタは、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタが並ぶ方向と交差する方向に並んでいることを特徴とする請求項9記載の積層型電子部品。
【請求項11】
積層された複数の誘電体層を含む積層体と、
前記複数の誘電体層の積層方向と交差する平面に沿って延在する導体層と、前記積層方向に平行な方向に延在し且つ前記導体層の一端部の近傍部分に接続された第1の柱状導体と、前記積層方向に平行な方向に延在し且つ前記導体層の他端部の近傍部分に接続された第2の柱状導体とを含むインダクタとを備え、
前記導体層は、それぞれ前記第1の柱状導体と前記第2の柱状導体とが並ぶ方向と交差する方向に延在し、互いに異なる方向に延在し、且つ互いに長さが異なる第1の部分および第2の部分を含むことを特徴とする積層型電子部品。
【請求項12】
前記導体層は、更に、湾曲するように延在し且つ前記導体層の長手方向において前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置された湾曲部分を含むことを特徴とする請求項11記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記積層体は、前記積層方向の両端に位置する第1の面および第2の面と、前記第1の面と前記第2の面を接続する第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面とを有し、
前記第1の側面と前記第2の側面は、互いに反対側を向き、
前記第3の側面と前記第4の側面は、互いに反対側を向き、
前記インダクタは、前記第2の側面よりも前記第1の側面により近い位置に配置され、
前記第1の部分は、前記導体層の前記一端部を含むと共に、前記一端部から離れるに従って前記第2の側面に近づくように延在し、
前記第2の部分は、前記導体層の前記他端部を含むと共に、前記他端部から離れるに従って前記第2の側面に近づくように延在することを特徴とする請求項11記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記積層体は、前記積層方向の両端に位置する第1の面および第2の面と、前記第1の面と前記第2の面を接続する第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面とを有し、
前記第1の側面と前記第2の側面は、互いに反対側を向き、
前記第3の側面と前記第4の側面は、互いに反対側を向き、
前記第2の柱状導体と前記第1の側面との間隔は、前記第1の柱状導体と前記第1の側面との間隔よりも大きいことを特徴とする請求項11記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタを含む積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置に用いられる電子部品の一つに、バンドパスフィルタがある。バンドパスフィルタには、例えば、インダクタとキャパシタを用いて構成されたLC共振器が用いられる。
【0003】
近年、小型移動体通信機器の小型化、省スペース化が市場から要求されており、その通信機器に用いられるバンドパスフィルタの小型化も要求されている。小型化に適したバンドパスフィルタとしては、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体を用いたものが知られている。
【0004】
積層体を用いたバンドパスフィルタに用いられるインダクタとしては、導体層と複数のスルーホールとによって構成されたインダクタであって、複数の誘電体層の積層方向に直交する軸に巻回されたインダクタが知られている。
【0005】
特許文献1には、2段または3段のLC並列共振器からなる積層型フィルタ装置が開示されている。積層型フィルタ装置の積層体の内部には、複数のインダクタ(LC並列共振回路)が設けられている。複数のインダクタの各々は、積層体の内部に設けられたインダクタ用内部電極および2つのインダクタ用ビア電極によって構成されている。インダクタ用内部電極と2つのインダクタ用ビア電極は、積層体の内部においてループ状に形成されている。複数のインダクタは、それぞれのループ面が対向するように積層体内に配列されている。インダクタ用内部電極は、積層体の短手方向に延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された積層型フィルタ装置では、積層体が小型化すると、複数のインダクタ間の結合が強くなりすぎるおそれがある。一方、特許文献1に開示された積層型フィルタ装置において、それぞれのループ面が対向しないように複数のインダクタを配置すると、複数のインダクタ間の結合が弱くなりすぎるおそれがある。このように、複数のインダクタ間の結合が強くなりすぎたり弱くなりすぎたりすると、所望の特性を実現することができない場合がある。
【0008】
上記の問題は、複数のインダクタ間の結合に限らず、インダクタと任意の導体との間の結合にも当てはまる。また、上記の問題は、バンドパスフィルタに限らず、インダクタを含む積層型電子部品全般にも当てはまる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、インダクタを含む積層型電子部品において、小型化およびインダクタの配置に起因する問題の発生を抑制しながら、所望の特性を実現できるようにした積層型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点の積層型電子部品は、
積層された複数の誘電体層を含む積層体と、
複数の誘電体層の積層方向と交差する平面に沿って延在する第1の導体層と、積層方向に平行な方向に延在し且つ第1の導体層の一端部の近傍部分に接続された第1の柱状導体と、積層方向に平行な方向に延在し且つ第1の導体層の他端部の近傍部分に接続された第2の柱状導体とを含む第1のインダクタと、
積層方向と交差する平面に沿って延在する第2の導体層と、積層方向に平行な方向に延在し且つ第2の導体層の一端部の近傍部分に接続された第3の柱状導体と、積層方向に平行な方向に延在し且つ第2の導体層の他端部の近傍部分に接続された第4の柱状導体とを含む第2のインダクタと
を備えている。
【0011】
積層体は、積層方向の両端に位置する第1の面および第2の面と、第1の面と第2の面を接続する第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面とを有している。第1の側面と第2の側面は、互いに反対側を向いている。第3の側面と第4の側面は、互いに反対側を向いている。第1のインダクタは、第2の側面よりも第1の側面により近い位置に配置されている。第2のインダクタは、第1の側面よりも第2の側面により近い位置に配置されている。第1の導体層の少なくとも一部は、第1の柱状導体と第2の柱状導体とが並ぶ方向と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在している。第2の導体層の少なくとも一部は、第3の柱状導体と第4の柱状導体とが並ぶ方向と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在している。
【0012】
本発明の第2の観点の積層型電子部品は、積層された複数の誘電体層を含む積層体と、複数の誘電体層の積層方向と交差する平面に沿って延在する導体層と、積層方向に平行な方向に延在し且つ導体層の一端部の近傍部分に接続された第1の柱状導体と、積層方向に平行な方向に延在し且つ導体層の他端部の近傍部分に接続された第2の柱状導体とを含むインダクタとを備えている。導体層は、それぞれ第1の柱状導体と第2の柱状導体とが並ぶ方向と交差する方向に延在し、互いに異なる方向に延在し、且つ互いに長さが異なる第1の部分および第2の部分を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の観点の積層型電子部品では、第1のインダクタの第1の導体層の少なくとも一部と第2のインダクタの第2の導体層の少なくとも一部は、それぞれ、前述のように定義された所定の方向に延在している。本発明の第2の観点の積層型電子部品では、インダクタの導体層の第1の部分と第2の部分は、それぞれ、前述のように定義された所定の方向に延在している。本発明の第1および第2の観点の積層型電子部品によれば、小型化およびインダクタの配置に起因する問題の発生を抑制しながら、所望の特性を実現することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層型電子部品の回路構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る積層型電子部品の外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における4層目ないし16層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る積層型電子部品の積層体における17層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部の一部を示す平面図である。
【
図8】比較例の積層型電子部品の積層体における16層目および17層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図9】比較例の積層型電子部品の積層体の内部を示す斜視図である。
【
図10】実施例のモデルと比較例のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【
図11】
図10に示した通過減衰特性の一部を拡大して示す特性図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態に係る積層型電子部品の積層体の内部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る積層型電子部品(以下、単に電子部品と記す。)1の概略の構成について説明する。
図1は、電子部品1の回路構成を示す回路図である。
【0016】
本実施の形態に係る電子部品1は、第1の信号端子2と、第2の信号端子3と、第1のハイパスフィルタ10と、第2のハイパスフィルタ20と、ローパスフィルタ30とを備えている。第1および第2の信号端子2,3の各々は、信号の入力または出力のための端子である。すなわち、第1の信号端子2に信号が入力される場合には、第2の信号端子3から信号が出力される。第2の信号端子3に信号が入力される場合には、第1の信号端子2から信号が出力される。
【0017】
第1のハイパスフィルタ10、第2のハイパスフィルタ20およびローパスフィルタ30は、所定の通過帯域内の周波数の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタを構成する。第1のハイパスフィルタ10、ローパスフィルタ30および第2のハイパスフィルタ20は、第1の信号端子2から第2の信号端子3に向かって、この順に直列に接続されている。ローパスフィルタ30は、回路構成上、第1のハイパスフィルタ10と第2のハイパスフィルタ20との間に設けられている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0018】
第1のハイパスフィルタ10、第2のハイパスフィルタ20およびローパスフィルタ30の各々は、少なくとも1つのインダクタと少なくとも1つのキャパシタとを用いて構成されたLCフィルタである。本実施の形態では特に、第1のハイパスフィルタ10は、第1のインダクタL11を含んでいる。第2のハイパスフィルタ20は、第2のインダクタL21を含んでいる。ローパスフィルタ30は、第3のインダクタL31と第4のインダクタL32とを含んでいる。
【0019】
次に、
図1を参照して、電子部品1の回路構成の一例について説明する。第1のハイパスフィルタ10は、第1のインダクタL11と、キャパシタC11,C12,C13,C14とを含んでいる。
【0020】
キャパシタC11の一端は、第1の信号端子2に接続されている。キャパシタC12の一端は、キャパシタC11の他端に接続されている。キャパシタC13の一端は、キャパシタC11の一端に接続されている。キャパシタC13の他端は、キャパシタC12の他端に接続されている。
【0021】
第1のインダクタL11の一端は、キャパシタC11とキャパシタC12との接続点に接続されている。第1のインダクタL11の他端は、グランドに接続されている。キャパシタC14は、第1のインダクタL11に対して並列に接続されている。
【0022】
第2のハイパスフィルタ20は、第2のインダクタL21と、キャパシタC21,C22,C23,C24とを含んでいる。
【0023】
キャパシタC21の一端は、第2の信号端子3に接続されている。キャパシタC22の一端は、キャパシタC21の他端に接続されている。キャパシタC23の一端は、キャパシタC21の一端に接続されている。キャパシタC23の他端は、キャパシタC22の他端に接続されている。
【0024】
第2のインダクタL21の一端は、キャパシタC21とキャパシタC22との接続点に接続されている。第2のインダクタL21の他端は、グランドに接続されている。キャパシタC24は、第2のインダクタL21に対して並列に接続されている。
【0025】
ローパスフィルタ30は、第3のインダクタL31と、第4のインダクタL32と、キャパシタC31,C32,C33,C34,C35とを含んでいる。
【0026】
キャパシタC31の一端は、第1のハイパスフィルタ10のキャパシタC12の他端に接続されている。キャパシタC32の一端は、キャパシタC31の他端に接続されている。キャパシタC32の他端は、第2のハイパスフィルタ20のキャパシタC22の他端に接続されている。
【0027】
第3のインダクタL31の一端は、キャパシタC12とキャパシタC31との接続点に接続されている。第4のインダクタL32の一端は、第3のインダクタL31の他端に接続されている。第4のインダクタL32の他端は、キャパシタC22とキャパシタC32との接続点に接続されている。
【0028】
キャパシタC33の一端は、キャパシタC12とキャパシタC31との接続点に接続されている。キャパシタC34の一端は、第3のインダクタL31と第4のインダクタL32との接続点およびキャパシタC31とキャパシタC32との接続点に接続されている。キャパシタC35の一端は、キャパシタC22とキャパシタC32との接続点に接続されている。キャパシタC33~C35の各他端は、グランドに接続されている。
【0029】
次に、
図2を参照して、電子部品1のその他の構成について説明する。
図2は、電子部品1の外観を示す斜視図である。
【0030】
電子部品1は、更に、積層された複数の誘電体層と、複数の導体(複数の導体層および複数のスルーホール)とを含む積層体50を備えている。第1の信号端子2、第2の信号端子3、第1のハイパスフィルタ10、第2のハイパスフィルタ20およびローパスフィルタ30は、積層体50に一体化されている。
【0031】
積層体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する第1の面50Aおよび第2の面50Bと、第1の面50Aと第2の面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、第1の面50Aおよび第2の面50Bに対して垂直になっていてもよい。
【0032】
ここで、
図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。また、「積層方向Tから見たとき」という表現は、Z方向または-Z方向に離れた位置から対象物を見ることを意味する。
【0033】
図2に示したように、第1の面50Aは、積層体50における-Z方向の端に位置する。第1の面50Aは、積層体50の底面でもある。第2の面50Bは、積層体50におけるZ方向の端に位置する。第2の面50Bは、積層体50の上面でもある。側面50Cは、積層体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、積層体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、積層体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、積層体50におけるY方向の端に位置する。
【0034】
側面50Cと側面50Dは、X方向に平行な方向に並んでいる。X方向に平行な方向は、本発明における「第2の方向」に対応する。また、側面50Eと側面50Fは、Y方向に平行な方向に並んでいる。Y方向に平行な方向は、本発明における「第1の方向」に対応する。
【0035】
電子部品1は、更に、積層体50の第1の面50Aに設けられた複数の電極111,112,113を含んでいる。電極111は、側面50Cの近傍においてY方向に延びている。電極112は、側面50Dの近傍においてY方向に延びている。電極113は、電極111と電極112の間に配置されている。
【0036】
電極111は第1の信号端子2に対応し、電極112は第2の信号端子3に対応している。従って、第1および第2の信号端子2,3は、積層体50の第1の面50Aに設けられている。電極113は、グランドに接続される。
【0037】
次に、
図3(a)ないし
図5を参照して、積層体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体の一例について説明する。この例では、積層体50は、積層された17層の誘電体層を含んでいる。以下、この17層の誘電体層を、下から順に1層目ないし17層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし17層目の誘電体層を符号51~67で表す。
【0038】
図3(a)ないし
図4(c)において、複数の円は複数のスルーホールを表している。誘電体層51~66の各々には、複数のスルーホールが形成されている。複数のスルーホールは、それぞれ、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填することによって形成される。複数のスルーホールの各々は、電極、導体層または他のスルーホールに接続されている。
【0039】
図3(a)ないし
図4(c)では、複数のスルーホールのうちの複数の特定のスルーホールに、符号を付している。複数の特定のスルーホールの各々と、導体層または他のスルーホールとの接続関係については、1層目ないし17層目の誘電体層51~67が積層された状態における接続関係について説明している。
【0040】
図3(a)は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、電極111~113が形成されている。
【0041】
図3(b)は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、導体層521,522,523,524,525,526,527が形成されている。導体層522,524は、導体層527に接続されている。
図3(b)では、導体層522と導体層527の境界と、導体層524と導体層527の境界を、それぞれ点線で示している。
【0042】
図3(c)は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。誘電体層53のパターン形成面には、導体層531,532,533,534,535が形成されている。
【0043】
図3(c)において符号53T1aを付したスルーホールは、導体層531に接続されている。なお、以下の説明では、符号53T1aを付したスルーホールを、単にスルーホール53T1aと記す。また、スルーホール53T1a以外の符号を付したスルーホールについても、スルーホール53T1aと同様に記す。
【0044】
図3(c)に示したスルーホール53T2aは、導体層532に接続されている。
図3(c)に示したスルーホール53T1b,53T2bは、導体層535に接続されている。
図3(c)に示した2つのスルーホール53T3aは、導体層533に接続されている。
図3(c)に示した2つのスルーホール53T4aは、導体層534に接続されている。
【0045】
図4(a)は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、導体層541,542,543,544,545が形成されている。導体層543,544は、導体層545に接続されている。
図4(a)では、導体層543と導体層545の境界と、導体層544と導体層545の境界を、それぞれ点線で示している。
【0046】
スルーホール53T1a,53T1b,53T2a,53T2bは、それぞれ、
図4(a)に示したスルーホール54T1a,54T1b,54T2a,54T2bに接続されている。2つのスルーホール53T3aは、
図4(a)に示した2つのスルーホール54T3aに接続されている。2つのスルーホール53T4aは、
図4(a)に示した2つのスルーホール54T4aに接続されている。
図4(a)に示した2つのスルーホール54T3bと
図4(a)に示した2つのスルーホール54T4bは、導体層545に接続されている。
【0047】
図4(b)は、5層目ないし15層目の誘電体層55~65の各々のパターン形成面を示している。スルーホール54T1a,54T1b,54T2a,54T2bは、それぞれ、誘電体層55に形成されたスルーホール55T1a,55T1b,55T2a,55T2bに接続されている。2つのスルーホール54T3a、2つのスルーホール54T3b、2つのスルーホール54T4aおよび2つのスルーホール54T4bは、それぞれ、誘電体層55に形成された2つのスルーホール55T3a、2つのスルーホール55T3b、2つのスルーホール55T4aおよび2つのスルーホール55T4bに接続されている。また、誘電体層55~65では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0048】
図4(c)は、16層目の誘電体層66のパターン形成面を示している。誘電体層66のパターン形成面には、インダクタ用の導体層661,662,663,664が形成されている。導体層661は、導体層661の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層662は、導体層662の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層663は、導体層663の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層664は、導体層664の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。
【0049】
誘電体層65に形成されたスルーホール55T1aと、
図4(c)に示したスルーホール66T1aは、導体層661の第1端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成されたスルーホール55T1bと、
図4(c)に示したスルーホール66T1bは、導体層661の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成されたスルーホール55T2aと、
図4(c)に示したスルーホール66T2aは、導体層662の第1端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成されたスルーホール55T2bと、
図4(c)に示したスルーホール66T2bは、導体層662の第2端の近傍部分に接続されている。
【0050】
誘電体層65に形成された2つのスルーホール55T3aと、
図4(c)に示した2つのスルーホール66T3aは、導体層663の第1端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成された2つのスルーホール55T3bと、
図4(c)に示した2つのスルーホール66T3bは、導体層663の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成された2つのスルーホール55T4aと、
図4(c)に示した2つのスルーホール66T4aは、導体層664の第1端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成された2つのスルーホール55T4bと、
図4(c)に示した2つのスルーホール66T4bは、導体層664の第2端の近傍部分に接続されている。
【0051】
図5は、17層目の誘電体層67のパターン形成面を示している。誘電体層67のパターン形成面には、インダクタ用の導体層671,672,673,674が形成されている。導体層671は、導体層671の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層672は、導体層672の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層673は、導体層673の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層674は、導体層674の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。
【0052】
スルーホール66T1aは、導体層671の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール66T1bは、導体層671の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール66T2aは、導体層672の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール66T2bは、導体層672の第2端の近傍部分に接続されている。
【0053】
2つのスルーホール66T3aは、導体層673の第1端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール66T3bは、導体層673の第2端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール66T4aは、導体層674の第1端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール66T4bは、導体層674の第2端の近傍部分に接続されている。
【0054】
積層体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が積層体50の第1の面50Aになり、17層目の誘電体層67のパターン形成面とは反対の面が積層体50の第2の面50Bになるように、1層目ないし17層目の誘電体層51~67が積層されて構成される。
【0055】
図3(a)ないし
図4(c)に示した複数のスルーホールの各々は、1層目ないし17層目の誘電体層51~67を積層したときに、積層方向Tにおいて重なる導体層または積層方向Tにおいて重なる他のスルーホールに接続されている。また、
図3(a)ないし
図4(c)に示した複数のスルーホールのうち、電極内または導体層内に位置するスルーホールは、その電極またはその導体層に接続されている。
【0056】
図6は、1層目ないし17層目の誘電体層51~67が積層されて構成された積層体50の内部を示している。
図6に示したように、積層体50の内部では、
図3(a)ないし
図5に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。
【0057】
以下、
図1に示した電子部品1の回路の構成要素と、
図3(a)ないし
図5に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。始めに、第1のハイパスフィルタ10について説明する。第1のインダクタL11は、インダクタ用の導体層661,671と、スルーホール53T1a,53T1b,54T1a,54T1b,55T1a,55T1b,66T1a,66T1bとによって構成されている。
【0058】
キャパシタC11は、導体層521,531と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC12は、導体層531,541と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC13は、導体層521,533と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC14は、導体層522,531と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。
【0059】
次に、第2のハイパスフィルタ20の構成要素について説明する。第2のインダクタL21は、インダクタ用の導体層662,672と、スルーホール53T2a,53T2b,54T2a,54T2b,55T2a,55T2b,66T2a,66T2bとによって構成されている。
【0060】
キャパシタC21は、導体層523,532と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC22は、導体層532,542と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC23は、導体層523,534と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC24は、導体層524,532と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。
【0061】
次に、ローパスフィルタ30の構成要素について説明する。第3のインダクタL31は、インダクタ用の導体層663,673と、スルーホール53T3a,54T3a,54T3b,55T3a,55T3b,66T3a,66T3bとによって構成されている。第4のインダクタL32は、インダクタ用の導体層664,674と、スルーホール53T4a,54T4a,54T4b,55T4a,55T4b,66T4a,66T4bとによって構成されている。
【0062】
キャパシタC31は、導体層533,543と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC32は、導体層534,544と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。
【0063】
キャパシタC33は、導体層525,533,535と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。キャパシタC34は、導体層535,545と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC35は、導体層526,534,535と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。
【0064】
次に、
図1ないし
図7を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の構造上の特徴について説明する。
図7は、積層体50の内部の一部を示す平面図である。なお、
図7は、積層体50の第2の面50B側から見た積層体50の内部を示している。
【0065】
始めに、第1ないし第4のインダクタL11,L21,L31,L32に関わる特徴について説明する。
図7に示したように、第1のハイパスフィルタ10の第1のインダクタL11は、積層体50の側面50Dよりも積層体50の側面50Cにより近い位置に配置されている。また、第1のインダクタL11は、積層体50の側面50Fよりも積層体50の側面50Eにより近い位置に配置されている。
【0066】
図7に示したように、第2のハイパスフィルタ20の第2のインダクタL21は、側面50Cよりも側面50Dにより近い位置に配置されている。また、第2のインダクタL21は、側面50Eよりも側面50Fにより近い位置に配置されている。
【0067】
第1のインダクタL11と第2のインダクタL21は、側面50Cと側面50Eとが交差する位置に存在する第1の角部から側面50Dと側面50Fとが交差する位置に存在する第2の角部に向かう方向に沿って並んでいる。
図7に示したように、ローパスフィルタ30の第3のインダクタL31と第4のインダクタL32は、第1のインダクタL11および第2のインダクタL21が並ぶ方向と交差する方向に並ぶように配置されている。本実施の形態では特に、第3のインダクタL31は、第1のインダクタL11と側面50Fとの間に配置されていると共に、第2のインダクタL21と側面50Cとの間に配置されている。第4のインダクタL32は、第1のインダクタL11と側面50Dとの間に配置されていると共に、第2のインダクタL21と側面50Eとの間に配置されている。
【0068】
第1のインダクタL11、第2のインダクタL21、第3のインダクタL31および第4のインダクタL32は、いずれも、積層方向Tに直交する方向に延びる軸を中心に巻回されたインダクタである。ここで、複数のスルーホールが直列に接続されることによって構成された柱状の構造物を、柱状導体と言う。柱状導体は、積層方向Tに平行な方向に延在する。第1ないし第4のインダクタL11,L21,L31,L32の各々は、少なくとも1つの導体層と、複数の柱状導体とを含んでいる。
【0069】
また、インダクタL11,L21,L31,L32の各々は、矩形状またはほぼ矩形状の巻線でもある。矩形状またはほぼ矩形状の巻線では、巻回数について、巻線を矩形とみなしたときに、矩形の1辺につき1/4回と数えてもよい。本実施の形態では、インダクタL11,L21,L31,L32の各々の巻回数は、3/4回である。
【0070】
第1のインダクタL11は、導体層661と、導体層661の第1端の近傍部分に接続された第1の柱状導体T1aと、導体層661の第2端の近傍部分に接続された第2の柱状導体T1bとを含んでいる。第1の柱状導体T1aは、スルーホール53T1a,54T1a,55T1aが直列に接続されることによって構成されている。第2の柱状導体T1bは、スルーホール53T1b,54T1b,55T1bが直列に接続されることによって構成されている。第1のインダクタL11は、導体層661、第1の柱状導体T1aおよび第2の柱状導体T1bによって囲まれた第1の開口部が形成されるように、積層方向Tに直交する第1の軸を中心に巻回されている。
【0071】
第1のインダクタL11は、更に、導体層671と、導体層661と導体層671とを電気的に接続するスルーホール66T1a,66T1bとを含んでいる。なお、
図7では、第1のインダクタL11のうち、導体層671およびスルーホール66T1a,66T1bを省略している。
【0072】
第2のインダクタL21は、導体層662と、導体層662の第1端の近傍部分に接続された第3の柱状導体T2aと、導体層662の第2端の近傍部分に接続された第4の柱状導体T2bとを含んでいる。第3の柱状導体T2aは、スルーホール53T2a,54T2a,55T2aが直列に接続されることによって構成されている。第4の柱状導体T2bは、スルーホール53T2b,54T2b,55T2bが直列に接続されることによって構成されている。第2のインダクタL21は、導体層662、第3の柱状導体T2aおよび第4の柱状導体T2bによって囲まれた第2の開口部が形成されるように、積層方向Tに直交する第2の軸を中心に巻回されている。
【0073】
第2のインダクタL21は、更に、導体層672と、導体層662と導体層672とを電気的に接続するスルーホール66T2a,66T2bとを含んでいる。なお、
図7では、第2のインダクタL21のうち、導体層672およびスルーホール66T2a,66T2bを省略している。
【0074】
第3のインダクタL31は、導体層663と、それぞれ導体層663の第1端の近傍部分に接続された2つの柱状導体T3aと、それぞれ導体層663の第2端の近傍部分に接続された2つの柱状導体T3bとを含んでいる。2つの柱状導体T3aは、スルーホール53T3a,54T3a,55T3aが直列に接続されることによって構成されている。2つの柱状導体T3bは、スルーホール54T3b,55T3bが直列に接続されることによって構成されている。第3のインダクタL31は、導体層663、2つの柱状導体T3aおよび2つの柱状導体T3bによって囲まれた第3の開口部が形成されるように、積層方向Tに直交する第3の軸を中心に巻回されている。
【0075】
第3のインダクタL31は、更に、導体層673と、導体層663と導体層673とを電気的に接続するスルーホール66T3a,66T3bとを含んでいる。なお、
図7では、第3のインダクタL31のうち、導体層673およびスルーホール66T3a,66T3bを省略している。
【0076】
第4のインダクタL32は、導体層664と、それぞれ導体層664の第1端の近傍部分に接続された2つの柱状導体T4aと、それぞれ導体層664の第2端の近傍部分に接続された2つの柱状導体T4bとを含んでいる。2つの柱状導体T4aは、スルーホール53T4a,54T4a,55T4aが直列に接続されることによって構成されている。2つの柱状導体T4bは、スルーホール54T4b,55T4bが直列に接続されることによって構成されている。第4のインダクタL32は、導体層664、2つの柱状導体T4aおよび2つの柱状導体T4bによって囲まれた第4の開口部が形成されるように、積層方向Tに直交する第4の軸を中心に巻回されている。
【0077】
第4のインダクタL32は、更に、導体層674と、導体層664と導体層674とを電気的に接続するスルーホール66T4a,66T4bとを含んでいる。なお、
図7では、第4のインダクタL32のうち、導体層674およびスルーホール66T4a,66T4bを省略している。
【0078】
第1のインダクタL11と第2のインダクタL21は、Y方向に平行な方向に見たときに、第1の開口部と第2の開口部とが重ならず且つ第1の軸と第2の軸とが重ならないように配置されている。第3のインダクタL31と第4のインダクタL32は、Y方向に平行な方向から見たときに、第3の開口部と第4の開口部とが重ならず且つ第3の軸と第4の軸とが重ならないように配置されている。
【0079】
また、第1のインダクタL11と第3のインダクタL31は、Y方向に平行な方向に見たときに、第1の開口部と第3の開口部とが重なるように配置されている。第1のインダクタL11と第3のインダクタL31は、Y方向に平行な方向に見たときに、第1の軸と第3の軸とが重なるように配置されていてもよいし、第1の軸と第3の軸とが重ならないように配置されていてもよい。第1の軸と第3の軸は、互いに平行であってもよいし、互いに平行ではなくてもよい。
【0080】
また、第2のインダクタL21と第4のインダクタL32は、Y方向に平行な方向に見たときに、第2の開口部と第4の開口部とが重なるように配置されている。第2のインダクタL21と第4のインダクタL32は、Y方向に平行な方向に見たときに、第2の軸と第4の軸とが重なるように配置されていてもよいし、第2の軸と第4の軸とが重ならないように配置されていてもよい。第2の軸と第4の軸は、互いに平行であってもよいし、互いに平行ではなくてもよい。
【0081】
次に、
図7を参照して、第1のインダクタL11の導体層661および第2のインダクタL21の導体層662に関わる特徴について説明する。導体層661,662の各々は、積層方向Tと交差する平面すなわち誘電体層66のパターン形成面に沿って延在している。
【0082】
導体層661の少なくとも一部は、第1の柱状導体T1aと第2の柱状導体T1bとが並ぶ方向(以下、第1の配列方向と言う。)と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在している。すなわち、導体層661の少なくとも一部は、第1の配列方向および第1の配列方向に直交する方向には延在せずに、第1の配列方向と交差する方向に延在している。なお、「導体層661の少なくとも一部」が「導体層661の全体」である場合、導体層661は、第1の配列方向と交差する方向に延在する複数の部分を含んでいてもよい。また、「導体層661の少なくとも一部」が「導体層661の一部」である場合、導体層661は、更に、第1の配列方向に延在する部分と、第1の配列方向に直交する方向に延在する部分のうち、少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0083】
本実施の形態では特に、導体層661は、「導体層661の少なくとも一部」として、導体層661の第1端を含む第1の部分661Aと、導体層661の第2端を含む第2の部分661Bとを含んでいる。第1の部分661Aは、導体層661の第1端から離れるに従って側面50Fに近づくように一方向に延在している。第2の部分661Bは、導体層661の第2端から離れるに従って側面50Fに近づくように一方向に延在している。また、第2の部分661Bは、第1の部分661Aとは異なる長さを有している。本実施の形態では特に、第2の部分661Bは、第1の部分661Aよりも長い。
【0084】
導体層661は、更に、湾曲するように延在する湾曲部分661Cを含んでいる。本実施の形態では、第1の部分661Aは湾曲部分661Cの一端部に接続され、第2の部分661Bは湾曲部分661Cの他端部に接続されている。
図7では、第1の部分661Aと湾曲部分661Cとの境界と、第2の部分661Bと湾曲部分661Cとの境界を、それぞれ点線で示している。
【0085】
積層方向Tから見たときに、導体層661は、全体的には、側面50Eから側面50Fに向かう方向に突出するような形状を有している。
【0086】
導体層662の少なくとも一部は、第3の柱状導体T3aと第4の柱状導体T4bとが並ぶ方向(以下、第2の配列方向と言う。)と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在している。すなわち、導体層662の少なくとも一部は、第2の配列方向および第2の配列方向に直交する方向には延在せずに、第2の配列方向と交差する方向に延在している。なお、「導体層662の少なくとも一部」が「導体層662の全体」である場合、導体層662は、第2の配列方向と交差する方向に延在する複数の部分を含んでいてもよい。また、「導体層662の少なくとも一部」が「導体層662の一部」である場合、導体層662は、更に、第2の配列方向に延在する部分と、第2の配列方向に直交する方向に延在する部分のうち、少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0087】
本実施の形態では特に、導体層662は、「導体層662の少なくとも一部」として、導体層662の第1端を含む第3の部分662Aと、導体層662第2端を含む第4の部分662Bとを含んでいる。第3の部分662Aは、導体層662の第1端から離れるに従って側面50Eに近づくように一方向に延在している。第4の部分662Bは、導体層662の第2端から離れるに従って側面50Eに近づくように一方向に延在している。また、第4の部分662Bは、第3の部分662Aとは異なる長さを有している。本実施の形態では特に、第4の部分662Bは、第3の部分662Aよりも長い。
【0088】
導体層662は、更に、湾曲するように延在する湾曲部分662Cを含んでいる。本実施の形態では、第3の部分662Aは湾曲部分662Cの一端部に接続され、第4の部分662Bは湾曲部分662Cの他端部に接続されている。
図7では、第3の部分662Aと湾曲部分662Cとの境界と、第4の部分662Bと湾曲部分662Cとの境界を、それぞれ点線で示している。
【0089】
積層方向Tから見たときに、導体層662は、全体的には、側面50Fから側面50Cに向かう方向に突出するような形状を有している。
【0090】
導体層661の第1の部分661Aと導体層662の第3の部分662Aの各々は、実質的に直線状に延在する直線部分を含んでいる。第1の部分661Aの直線部分と第3の部分662Aの直線部分は、互いに平行またはほぼ平行であってもよい。
【0091】
導体層661の第2の部分661Bと導体層662の第4の部分662Bの各々は、実質的に直線状に延在する直線部分を含んでいる。第2の部分661Bの直線部分と第4の部分662Bの直線部分は、互いに平行またはほぼ平行であってもよい。
図7に示した例では、第2の部分661Bの直線部分と第4の部分662Bの直線部分は、互いに平行である。
【0092】
本実施の形態では、第2の部分661Bから第4の部分662Bまでの距離は、第1の部分661Aから第3の部分662Aまでの距離よりも小さい。また、第2の部分661Bのうちの第4の部分662Bにより近い部分と、第4の部分662Bのうちの第2の部分661Bにより近い部分との間には、他の導体が存在しない。そのため、第2の部分661Bの上記の部分と第4の部分662Bの上記の部分は、互いに対向している。これにより、第1のインダクタL11の一部と第2のインダクタL21の一部も、互いに対向している。
【0093】
積層方向Tから見たときに、導体層661と導体層662は、全体的に、積層体50の外周部(側面50E,50F)から互いに近づくような形状を有している。また、導体層661と導体層662の各々において、Y方向に平行な方向において導体層661と導体層662との間隔が最小になる位置は、第1端と第2端との間に存在する。
【0094】
導体層671の形状は、導体層661の形状と同じか導体層661に相似する形状である。また、導体層671の配置は、積層方向Tにおける位置を除いて、導体層661の配置と同じかほぼ同じである。また、導体層672の形状は、導体層662の形状と同じか導体層662に相似する形状である。また、導体層672の配置は、積層方向Tにおける位置を除いて、導体層662の配置と同じかほぼ同じである。導体層661,662についての上記の説明は、導体層661,662および柱状導体T1a,T1b,T2a,T2bをそれぞれ導体層671,672およびスルーホール66T1a,66T1b,66T2a,66T2bに置き換えれば、導体層671,672にも当てはまる。
【0095】
次に、
図7を参照して、第1のインダクタL11の第1および第2の柱状導体T1a,T1bおよび第2のインダクタL21の第3および第4の柱状導体T2a,T2bに関わる特徴について説明する。
図7に示したように、第1の柱状導体T1aと第2の柱状導体T1bは、側面50Eに沿って配置されている。第2の柱状導体T1bは、第1の柱状導体T1aよりも、側面50Eからより遠い位置に配置されている。従って、第1の柱状導体T1aと第2の柱状導体T1bが並ぶ方向すなわち第1の配列方向は、側面50Eに対して傾いている。また、第1の配列方向は、X方向とY方向の各々に対して傾いている。
【0096】
図7に示したように、第3の柱状導体T2aと第4の柱状導体T2bは、側面50Fに沿って配置されている。第4の柱状導体T2bは、第3の柱状導体T2aよりも、側面50Fからより遠い位置に配置されている。従って、第3の柱状導体T2aと第4の柱状導体T2bが並ぶ方向すなわち第2の配列方向は、側面50Fに対して傾いている。また、第2の配列方向は、X方向とY方向の各々に対して傾いている。
【0097】
第2の柱状導体T1bと第4の柱状導体T2bは、X方向に平行な方向において第1の柱状導体T1aと第3の柱状導体T2aとの間に配置されている。Y方向に平行な方向における第2の柱状導体T1bと第4の柱状導体T2bとの間隔は、Y方向に平行な方向における第1の柱状導体T1aと第3の柱状導体T2aとの間隔よりも小さい。
【0098】
次に、本実施の形態に係る電子部品1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、第1のインダクタL11の導体層661の少なくとも一部は、第1の配列方向(第1の柱状導体T1aと第2の柱状導体T1bとが並ぶ方向)と交差する方向に延在している。本実施の形態では特に、導体層661の第1の部分661Aと第2の部分661Bの各々が、上記の「導体層661の少なくとも一部」に対応する。これにより、本実施の形態によれば、導体層661が第1の配列方向に延在する場合に比べて、導体層661を長くすることができ、その結果、第1のインダクタL11のインダクタンスを大きくすることができる。
【0099】
同様に、本実施の形態では、第2のインダクタL21の導体層662の少なくとも一部は、第2の配列方向(第3の柱状導体T2aと第4の柱状導体T2bとが並ぶ方向)と交差する方向に延在している。本実施の形態では特に、導体層662の第3の部分662Aと第4の部分662Bの各々が、上記の「導体層662の少なくとも一部」に対応する。これにより、本実施の形態によれば、導体層661と同様に、導体層662を長くすることができ、その結果、第2のインダクタL21のインダクタンスを大きくすることができる。
【0100】
また、本実施の形態によれば、導体層661によって、第1のインダクタL11と積層体50内の他の導体との間の結合を調整することができると共に、導体層662によって、第2のインダクタL21と積層体50内の他の導体との間の結合を調整することができる。本実施の形態は特に、導体層661,662によって、第1のインダクタL11と第2のインダクタL21との間の結合を調整することができる。以下、この効果について詳しく説明する。
【0101】
本実施の形態では、第1のインダクタL11と第2のインダクタL21は、Y方向に平行な方向に見たときに、第1の開口部と第2の開口部とが重ならず且つ第1の軸と第2の軸とが重ならないように配置されている。これにより、本実施の形態によれば、積層体50の小型化に伴って第1のインダクタL11と第2のインダクタL21との間の結合が強くなりすぎることを防止することができる。
【0102】
また、本実施の形態では、導体層661,662を互いに近づくような形状にすることにより、第1のインダクタL11と第2のインダクタL21との間の結合を強くすることができ、その結果、第1のインダクタL11と第2のインダクタL21の配置に起因して第1のインダクタL11と第2のインダクタL21との間の結合が弱くなりすぎることを防止することができる。
【0103】
本実施の形態では特に、導体層661の第2の部分661Bと導体層662の第4の部分662Bの各々は、実質的に直線状に延在する直線部分を含んでいる。ここで、第2の部分661Bの直線部分と第4の部分662Bの直線部分の両方と交差する仮想の直線を想定する。本実施の形態では、仮想の直線に平行な一方向から見たときに、導体層661の第2の部分661Bと導体層662の第4の部分662Bは、互いに重なっている。また、第2の部分661Bの直線部分と第4の部分662Bの直線部分は、互いに平行またはほぼ平行である。これにより、本実施の形態によれば、第1のインダクタL11と第2のインダクタL21と間の結合を強くすることができる。
【0104】
また、本実施の形態では、第2の柱状導体T1bと第4の柱状導体T2bとの間隔が小さくなるような姿勢で、第1および第2のインダクタL11,L21を配置している。具体的には、Y方向に平行な方向における第2の柱状導体T1bと第4の柱状導体T2bとの間隔を、Y方向に平行な方向における第1の柱状導体T1aと第3の柱状導体T2aとの間隔よりも小さくしている。これによっても、本実施の形態によれば、第1のインダクタL11と第2のインダクタL21と間の結合を強くすることができる。
【0105】
以上のことから、本実施の形態によれば、積層体50の小型化および第1および第2のインダクタL11,L21の配置に起因する問題の発生を抑制しながら、所望の特性を実現することができる。
【0106】
次に、比較例の電子部品101と比較しながら、本実施の形態の効果について更に詳しく説明する。始めに、比較例の電子部品101の構成について詳しく説明する。比較例の電子部品101の回路構成は、
図1に示した本実施の形態に係る電子部品1の回路構成と同じである。また、比較例の電子部品101の物理的な構成は、以下で説明する点を除いて、電子部品1の物理的な構成と同じである。
【0107】
比較例の電子部品101は、電子部品1と同様に、積層体50を備えている。ただし、比較例の電子部品101の積層体50は、本実施の形態における誘電体層66,67の代わりに、誘電体層166,167を含んでいる。誘電体層166は、16層目の誘電体層であり、誘電体層167は、17層目の誘電体層である。
【0108】
図8(a)は、16層目の誘電体層166のパターン形成面を示している。誘電体層66のパターン形成面には、インダクタ用の導体層1661,1662,1663,1664が形成されている。導体層1661は、導体層1661の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層1662は、導体層1662の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層1663は、導体層1663の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層1664は、導体層1664の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。
【0109】
誘電体層65に形成されたスルーホール55T1a(
図4(b)参照)と、
図8(a)に示したスルーホール166T1aは、導体層1661の第1端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成されたスルーホール55T1b(
図4(b)参照)と、
図8(a)に示したスルーホール166T1bは、導体層1661の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成されたスルーホール55T2a(
図4(b)参照)と、
図8(a)に示したスルーホール166T2aは、導体層1662の第1端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成されたスルーホール55T2b(
図4(b)参照)と、
図8(a)に示したスルーホール166T2bは、導体層1662の第2端の近傍部分に接続されている。
【0110】
誘電体層65に形成された2つのスルーホール55T3a(
図4(b)参照)と、
図8(a)に示した2つのスルーホール166T3aは、導体層1663の第1端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成された2つのスルーホール55T3b(
図4(b)参照)と、
図8(a)に示した2つのスルーホール166T3bは、導体層1663の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成された2つのスルーホール55T4a(
図4(b)参照)と、
図8(a)に示した2つのスルーホール166T4aは、導体層1664の第1端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成された2つのスルーホール55T4b(
図4(b)参照)と、
図8(a)に示した2つのスルーホール166T4bは、導体層1664の第2端の近傍部分に接続されている。
【0111】
図8(b)は、17層目の誘電体層167のパターン形成面を示している。誘電体層167のパターン形成面には、インダクタ用の導体層1671,1672,1673,1674が形成されている。導体層1671は、導体層1671の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層1672は、導体層1672の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層1673は、導体層1673の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。導体層1674は、導体層1674の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。
【0112】
スルーホール166T1aは、導体層1671の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール166T1bは、導体層1671の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール166T2aは、導体層1672の第1端の近傍部分に接続されている。スルーホール166T2bは、導体層1672の第2端の近傍部分に接続されている。
【0113】
2つのスルーホール166T3aは、導体層1673の第1端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール166T3bは、導体層1673の第2端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール166T4aは、導体層1674の第1端の近傍部分に接続されている。2つのスルーホール166T4bは、導体層1674の第2端の近傍部分に接続されている。
【0114】
図9は、比較例の電子部品101の積層体50の内部を示している。比較例の電子部品101における第1ないし第4のインダクタL11,L21,L31,L32の配置は、電子部品1における第1ないし第4のインダクタL11,L21,L31,L32の配置と実質的に同じである。
【0115】
比較例の電子部品101では、第1のインダクタL11は、インダクタ用の導体層1661,1671と、第1の柱状導体T1aと、第2の柱状導体T1bと、スルーホール166T1a,166T1bとによって構成されている。
図8(b)に示したように、導体層1661は、導体層1661の第1端を含みY方向に平行な方向に延在する第1の部分と、導体層1661の第2端を含みY方向に平行な方向に延在する第2の部分と、X方向に平行な方向に延在し第1の部分と第2の部分とを接続する第3の部分とを含んでいる。導体層1671は、導体層1661と同じ形状を有している。
【0116】
比較例の電子部品101では、第2のインダクタL21は、インダクタ用の導体層1662,1672と、第3の柱状導体T2aと、第4の柱状導体T2bと、スルーホール166T2a,166T2bとによって構成されている。
図8(b)に示したように、導体層1662は、導体層1662の第1端を含みY方向に平行な方向に延在する第4の部分と、導体層1662の第2端を含みY方向に平行な方向に延在する第5の部分と、X方向に平行な方向に延在し第4の部分と第5の部分とを接続する第6の部分とを含んでいる。導体層1672は、導体層1662と同じ形状を有している。
【0117】
比較例の電子部品101では、第3のインダクタL31は、インダクタ用の導体層1663,1673と、2つの柱状導体T3aと、2つの柱状導体T3bと、スルーホール166T3a,166T3bとによって構成されている。導体層1663,1673の形状は、それぞれ、本実施の形態における導体層663,673の形状と同じである。
【0118】
比較例の電子部品101では、第4のインダクタL32は、インダクタ用の導体層1664,1674と、2つの柱状導体T4aと、2つの柱状導体T4bと、スルーホール166T4a,166T4bとによって構成されている。導体層1664,1674の形状は、それぞれ、本実施の形態における導体層664,674の形状と同じである。
【0119】
次に、シミュレーションによって求めた実施例のモデルと比較例のモデルの通過減衰特性について説明する。実施例のモデルは、本実施の形態に係る電子部品1のモデルである。比較例のモデルは、比較例の電子部品101のモデルである。
【0120】
図10は、実施例のモデルと比較例のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
図11は、
図10の一部を拡大して示す特性図である。
図10および
図11において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図10および
図11において、符号81を付した曲線は、実施例のモデルの通過減衰特性を示し、符号82を付した曲線は、比較例のモデルの通過減衰特性を示している。
【0121】
図10および
図11において、減衰量の絶対値が0に近い値になる周波数領域は、バンドパスフィルタの通過帯域である。実施例のモデルでは、通過帯域よりも低域側の周波数領域において発生する2つの減衰極の間隔(周波数の差)は、比較例のモデルよりも広い。これにより、実施例のモデルでは、通過帯域よりも低く通過帯域に近い周波数領域において、減衰量の絶対値が急峻に変化する特性を実現している。この結果は、実施例のモデルでは、比較例のモデルに比べて、第1のインダクタL11と第2のインダクタL21との間の結合が強くなったことによるものである。この結果から理解されるように、第1および第2のインダクタL11,L21の各々に含まれる導体層の形状を調整することによって、特性を調整することが可能である。
【0122】
ところで、
図1に示したように、第1のインダクタL11は第1のハイパスフィルタ10に含まれ、第2のインダクタL21は第2のハイパスフィルタ20に含まれている。ローパスフィルタ30は、回路構成上、第1のハイパスフィルタ10と第2のハイパスフィルタ20との間に設けられている。シミュレーションの結果から理解されるように、本実施の形態によれば、回路構成上隣接しない第1のハイパスフィルタ10と第2のハイパスフィルタ20に含まれている第1のインダクタL11と第2のインダクタL21との間の結合を調整することができる。
【0123】
[第2の実施の形態]
次に、
図12を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図12は、本実施の形態に係る電子部品の積層体の内部を示す斜視図である。
【0124】
本実施の形態に係る電子部品201の回路構成は、第1の実施の形態に係る電子部品1の回路構成と同じである。また、本実施の形態に係る電子部品101の物理的な構成は、以下で説明する点を除いて、第1の実施の形態に係る電子部品1の物理的な構成と同じである。
【0125】
本実施の形態に係る電子部品201は、第1の実施の形態に係る電子部品1と同様に、積層体50を備えている。ただし、本実施の形態に係る電子部品101の積層体50は、第1の実施の形態における誘電体層66,67の代わりに、本実施の形態における16層目の誘電体層と、本実施の形態における17層目の誘電体層とを含んでいる。
【0126】
本実施の形態における16層目の誘電体層のパターン形成面には、インダクタ用の導体層661,663,664,1662が形成されている。導体層661,663,664の形状および配置は、第1の実施の形態における誘電体層66のパターン形成面に形成された導体層661,663,664の形状および配置と同じである。導体層1662の形状および配置は、第1の実施の形態において説明した比較例の電子部品101の誘電体層166のパターン形成面に形成された導体層1662の形状および配置と同じである。
【0127】
導体層661,663,664と柱状導体T1a,T1b,T3a,T3b,T4a,T4bとの接続関係は、第1の実施の形態に係る電子部品1と同じである。導体層1662と柱状導体T2a,T2bとの接続関係は、比較例の電子部品101と同じである。
【0128】
本実施の形態における17層目の誘電体層のパターン形成面には、インダクタ用の導体層671,673,674,1672が形成されている。導体層671,673,674の形状および配置は、第1の実施の形態における誘電体層67のパターン形成面に形成された導体層671,673,674の形状および配置と同じである。導体層1672の形状および配置は、第1の実施の形態において説明した比較例の電子部品101の誘電体層167のパターン形成面に形成された導体層1672の形状および配置と同じである。
【0129】
本実施の形態における16層目の誘電体層には、導体層661,663,664,671,673,674との接続関係が
図4(c)に示したスルーホール66T1a,66T1b,66T3a,66T3b,66T4a,66T4bと同じ複数のスルーホールが形成されている。また、本実施の形態における16層目の誘電体層には、更に、導体層1662,1672との接続関係が
図8(a)に示したスルーホール166T2a,166T2bと同じ2つのスルーホールが形成されている。
【0130】
本実施の形態における第1、第3および第4のインダクタL11,L31,L32の形状および配置は、第1の実施の形態に係る電子部品1の第1、第3および第4のインダクタL11,L31,L32の形状および配置と同じである。本実施の形態における第2のインダクタL21の形状および配置は、比較例の電子部品101の第2のインダクタL21の形状および配置と同じである。
【0131】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2のインダクタL21が関わる作用および効果を除いて、第1の実施の形態と同様である。
【0132】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の積層型電子部品は、分波器等のバンドパスフィルタ以外の電子部品であってもよい。
【0133】
また、電子部品1は、ローパスフィルタ30の代わりに、第3のインダクタL31に対応するインダクタを含む第1のローパスフィルタと、第4のインダクタL32に対応するインダクタを含む第2のローパスフィルタとを含んでいてもよい。第1のローパスフィルタと第2のローパスフィルタは、直接または間接的に直列に接続されていてもよい。
【0134】
以上説明したように、本発明の第1の観点の積層型電子部品は、
積層された複数の誘電体層を含む積層体と、
複数の誘電体層の積層方向と交差する平面に沿って延在する第1の導体層と、積層方向に平行な方向に延在し且つ第1の導体層の一端部の近傍部分に接続された第1の柱状導体と、積層方向に平行な方向に延在し且つ第1の導体層の他端部の近傍部分に接続された第2の柱状導体とを含む第1のインダクタと、
積層方向と交差する平面に沿って延在する第2の導体層と、積層方向に平行な方向に延在し且つ第2の導体層の一端部の近傍部分に接続された第3の柱状導体と、積層方向に平行な方向に延在し且つ第2の導体層の他端部の近傍部分に接続された第4の柱状導体とを含む第2のインダクタと
を備えている。
【0135】
積層体は、積層方向の両端に位置する第1の面および第2の面と、第1の面と第2の面を接続する第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面とを有している。第1の側面と第2の側面は、互いに反対側を向いている。第3の側面と第4の側面は、互いに反対側を向いている。第1のインダクタは、第2の側面よりも第1の側面により近い位置に配置されている。第2のインダクタは、第1の側面よりも第2の側面により近い位置に配置されている。第1の導体層の少なくとも一部は、第1の柱状導体と第2の柱状導体とが並ぶ方向と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在している。第2の導体層の少なくとも一部は、第3の柱状導体と第4の柱状導体とが並ぶ方向と90°の奇数倍を除く角度で交差する方向に延在している。
【0136】
本発明の第1の観点の積層型電子部品において、第1のインダクタは、第4の側面よりも第3の側面により近い位置に配置されていてもよい。第2のインダクタは、第3の側面よりも第4の側面により近い位置に配置されていてもよい。
【0137】
また、本発明の第1の観点の積層型電子部品において、第1の導体層は、第1の導体層の一端部から離れるに従って第2の側面に近づくように延在する第1の部分と、第1の導体層の他端部から離れるに従って第2の側面に近づくように延在する第2の部分とを含んでいてもよい。第2の導体層は、第2の導体層の一端部から離れるに従って第1の側面に近づくように延在する第3の部分と、第2の導体層の他端部から離れるに従って第1の側面に近づくように延在する第4の部分とを含んでいてもよい。
【0138】
また、本発明の第1の観点の積層型電子部品において、第1の導体層と第2の導体層の各々は、直線状に延在する直線部分を含んでいてもよい。第1の導体層の直線部分と第2の導体層の直線部分は、互いに平行であってもよい。
【0139】
また、本発明の第1の観点の積層型電子部品において、第1の導体層は、一方向に延在する第1の部分と、第1の部分とは異なる方向に延在し且つ第1の部分とは異なる長さを有する第2の部分とを含んでいてもよい。第2の導体層は、一方向に延在する第3の部分と、第3の部分とは異なる方向に延在し且つ第3の部分とは異なる長さを有する第4の部分とを含んでいてもよい。第2の部分から第4の部分までの距離は、第1の部分から第3の部分までの距離よりも小さくてもよい。
【0140】
また、本発明の第1の観点の積層型電子部品において、第1の導体層と第2の導体層の各々は、湾曲するように延在する湾曲部分を含んでいてもよい。
【0141】
また、本発明の第1の観点の積層型電子部品において、積層方向と直交し且つ第1の側面と第2の側面とが並ぶ方向を第1の方向とし、積層方向と直交し且つ第3の側面と第4の側面とが並ぶ方向を第2の方向としたときに、第2の柱状導体と第4の柱状導体は、第2の方向において第1の柱状導体と第3の柱状導体との間に配置されていてもよい。第1の方向における第2の柱状導体と第4の柱状導体との間隔は、第1の方向における第1の柱状導体と第3の柱状導体との間隔よりも小さくてもよい。
【0142】
また、本発明の第1の観点の積層型電子部品は、更に、第1のハイパスフィルタと、第2のハイパスフィルタと、回路構成上、第1のハイパスフィルタと第2のハイパスフィルタとの間に設けられたローパスフィルタとを備えていてもよい。第1のハイパスフィルタは、第1のインダクタを含んでいてもよい。第2のハイパスフィルタは、第2のインダクタを含んでいてもよい。ローパスフィルタは、それぞれ平面に沿って延在する導体層と積層方向に平行な方向に延在し且つ導体層に接続された一対の柱状導体とを含む第3のインダクタおよび第4のインダクタを含んでいてもよい。第3のインダクタと第4のインダクタは、第1のインダクタと第2のインダクタが並ぶ方向と交差する方向に並んでいてもよい。
【0143】
本発明の第2の観点の積層型電子部品は、積層された複数の誘電体層を含む積層体と、複数の誘電体層の積層方向と交差する平面に沿って延在する導体層と、積層方向に平行な方向に延在し且つ導体層の一端部の近傍部分に接続された第1の柱状導体と、積層方向に平行な方向に延在し且つ導体層の他端部の近傍部分に接続された第2の柱状導体とを含むインダクタとを備えている。導体層は、それぞれ第1の柱状導体と第2の柱状導体とが並ぶ方向と交差する方向に延在し、互いに異なる方向に延在し、且つ互いに長さが異なる第1の部分および第2の部分を含んでいる。
【0144】
本発明の第2の観点の積層型電子部品において、導体層は、更に、湾曲するように延在し且つ導体層の長手方向において第1の部分と第2の部分との間に配置された湾曲部分を含んでいてもよい。
【0145】
また、本発明の第2の観点の積層型電子部品において、積層体は、積層方向の両端に位置する第1の面および第2の面と、第1の面と第2の面を接続する第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面とを有していてもよい。第1の側面と第2の側面は、互いに反対側を向いていてもよい。第3の側面と第4の側面は、互いに反対側を向いていてもよい。インダクタは、第2の側面よりも第1の側面により近い位置に配置されていてもよい。第1の部分は、導体層の一端部を含むと共に、一端部から離れるに従って第2の側面に近づくように延在していてもよい。第2の部分は、導体層の他端部を含むと共に、他端部から離れるに従って第2の側面に近づくように延在していてもよい。
【0146】
また、本発明の第2の観点の積層型電子部品において、第2の柱状導体と第1の側面との間隔は、第1の柱状導体と第1の側面との間隔よりも大きくてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1…積層型電子部品、2…第1の信号端子、3…第2の信号端子、10…第1のハイパスフィルタ、20…第2のハイパスフィルタ、30…ローパスフィルタ、50…積層体、50A…第1の面、50B…第2の面、50C~50F…側面、111~113…電極、C11~C14,C21~C24,C31~C35…キャパシタ、L11…第1のインダクタ、L21…第2のインダクタ、L31…第3のインダクタ、L32…第4のインダクタ。