(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024789
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】エレベーターの着床装置と着床プレートの間隙測定治具、および当該間隙の測定方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B66B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129051
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟木 健
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA01
3F304BA07
3F304EA05
(57)【要約】
【課題】着床プレートと着床装置との間隙測定を短時間かつ高精度で行う間隙測定治具を提供する。
【解決手段】間隙測定治具1は、エレベーターの乗りかごに取り付けられる平面視コの字形状の凹部を含む着床装置10と、最上階の着床プレート11との間隙を測定するための治具であって、ベース部2とレーザー照射器3を備える。ベース部2は互いに直交する第1の辺30と第2の辺31を含み、着床装置10の凹部の縁と平行に第1の辺30と第2の辺31を配置可能である。レーザー照射器3はベース部2上に設置され、ベース部2の表面に垂直で、かつ第1の辺30および第2の辺31と平行な十字状のレーザー光12を出射可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗りかごに取り付けられる平面視コの字形状の凹部を含む着床装置と、最上階の着床プレートとの間隙を測定するための間隙測定治具であって、
互いに直交する第1の辺と第2の辺を含み、前記着床装置の前記凹部と平行に前記第1の辺と前記第2の辺を配置可能なベース部と
前記ベース部上に設置されるレーザー照射器と、
を備え、
前記レーザー照射器は、前記ベース部の表面に垂直で、かつ前記第1の辺および前記第2の辺と平行な十字状のレーザー光を出射可能に構成されている、間隙測定治具。
【請求項2】
前記レーザー照射器は、前記十字状のレーザー光の交点が、前記第1の辺と前記第2の辺の交点上に位置するように、前記ベース部上に設置されている、請求項1に記載の間隙測定治具。
【請求項3】
前記レーザー照射器は、第1レーザー照射器と、第2レーザー照射器とを含み、
前記第1レーザー照射器は、前記十字状のレーザー光の交点が、前記第1の辺と前記第2の辺の交点上に位置するように、前記ベース部上に設置され、
前記第2レーザー照射器は、前記十字状のレーザー光の交点が、前記第1の辺と前記第2の辺の交点から前記第2の辺に沿って前記着床装置の前記凹部の幅と等しい距離だけ離れて位置するように、前記ベース部上に設置されている、請求項1に記載の間隙測定治具。
【請求項4】
前記レーザー照射器は、前記第1の辺および前記第2の辺に沿って前記十字状のレーザー光を出射可能に構成されている、請求項1に記載の間隙測定治具。
【請求項5】
前記ベース部上には、水平方向に対する前記ベース部の傾きを検知する水平器が設置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の間隙測定治具。
【請求項6】
前記ベース部には、前記ベース部の傾きを調節する水平調節ネジが設置されている、請求項5に記載の間隙測定治具。
【請求項7】
エレベーターの乗りかごに取り付けられる平面視コの字形状の凹部を含む着床装置と、最上階の着床プレートとの間隙を測定する間隙測定方法であって、
十字状のレーザー光を出射可能なレーザー照射器を用いて、前記着床装置の表面に垂直で、かつ前記着床装置の前記凹部の直交する2辺と平行に、前記十字状のレーザー光を前記着床プレートの方向に出射させ、
前記十字状のレーザー光が出射される位置において、直尺を前記着床プレートの面に垂直になるように接触させ、
前記十字状のレーザー光が示す前記直尺の目盛りを読むことで間隙を測定する、間隙測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの着床装置と着床プレートの間隙測定治具、および当該間隙の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベーターは、昇降路内を昇降する乗りかごと、各階に設けられた乗場とを備える。昇降路には、各階の乗場に乗りかごを段差なく停止させるための停止位置を規定する着床プレートが設置され、乗りかごには、この着床プレートを検出する着床装置が設置されている。着床装置は、平面視コの字状の凹部を有し、着床プレートが当該凹部内を通過するように、乗りかごの上部に設置される。着床装置は、例えば、磁気センサ又は光学式センサを含み、凹部内に位置する着床プレートを検出可能に構成されている。
【0003】
着床装置の凹部と着床プレートの間隙は、一般的に数ミリメートル程度である。このため、着床装置と着床プレートが接触することがないように、定期点検において当該間隙の測定が行われる。着床装置は乗りかごの上部に設置されているため、作業者は乗りかご上でこの点検を行う。このとき、最上階以外の階では、着床プレートが着床装置の凹部内に存在する状態で間隙を測定できるが、最上階では、乗りかごと昇降路の天井との間のスペースが殆どないため、乗りかごを最上階の乗場に停止させた状態で間隙を測定することができない。つまり、最上階では、着床プレートが着床装置の凹部内に位置する状態で間隙を測定できない。
【0004】
このため、最上階では、糸と錘から構成される下げ振りを着床プレートに取り付けて間隙の測定を行っている。作業者は、着床プレートの間隙を測定する箇所に沿わせて、下げ振りを着床装置に向かって下ろし、下げ振り先端部と着床装置との間隙を直尺で測定することで点検を行う。
【0005】
なお、特許文献1には、着床装置と着床プレートの隙間寸法点検装置であって、着床装置に設けられ、着床装置と着床プレートとの隙間寸法を測定するために幅方向目盛りと奥行方向目盛りが設けられた隙間寸法点検装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、下げ振りを用いて最上階の着床プレートと着床装置の凹部の間隙を測定する場合、下げ振りが揺れることや、何度も下げ振りを配置する必要があるため、間隙の測定を短時間かつ、高精度で行うことができないという課題がある。なお、特許文献1に開示されている方法でも、かかる課題に対応することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
エレベーターの乗りかごに取り付けられる平面視コの字形状の凹部を含む着床装置と、最上階の着床プレートとの間隙を測定するための間隙測定治具であって、間隙測定治具はベース部とレーザー照射器を備える。ベース部は互いに直交する第1の辺と第2の辺を含み、着床装置の凹部の縁と平行に第1の辺と第2の辺を配置可能である。レーザー照射器はベース部上に設置され、ベース部の表面に垂直で、かつ第1の辺および第2の辺と平行な十字状のレーザー光を出射可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る間隙測定治具によれば、着床プレートが着床装置の凹部内に位置していない状態で、着床装置の凹部と着床プレートの間隙の測定を短時間かつ、高精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例である間隙測定治具が使用されるエレベーターの全体構造を示す図である。
【
図2】実施形態の一例である間隙測定治具の全体構成図である。
【
図3】実施形態の一例である着床装置と間隙測定治具との対応関係を示す図である。
【
図4】実施形態の一例である着床プレートと着床装置と間隙測定治具との位置関係を示す斜視図である。
【
図5】実施形態の一例である間隙測定治具の内部結線の構成図である。
【
図6】実施形態の一例である間隙測定治具を用いた最上階の着床プレートと着床装置との間隙測定時の各要素の位置関係を示す図である。
【
図7】実施形態の一例である間隙測定治具を用いて、最上階の着床プレートと着床装置との幅方向の間隙測定方法を説明する図である。
【
図8】実施形態の一例である間隙測定治具を用いて、最上階の着床プレートと着床装置との奥行方向の間隙測定方法を説明する図である。
【
図9】最上階以外の着床プレートと着床装置との間隙測定方法を詳細に説明する図である。
【
図10】下げ振りを用いて最上階の着床プレートと着床装置との間隙測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る間隙測定治具の実施形態について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0012】
図1は、実施形態の一例である間隙測定治具1が使用されるエレベーター100を示す図である。
図1(a)は最上階付近のエレベーター100を示し、
図1(b)は最上階以外のエレベーター100を示す。エレベーター100は、乗りかご21を備え、乗りかご21が昇降路20内を移動して各階の乗場22に停止するように構成された昇降装置である。エレベーター100は、乗りかご21を昇降させる駆動装置として巻上機101を備える。昇降路20内には、巻上機101に巻回され、一端が乗りかご21に連結されたワイヤーロープ102、ワイヤーロープ102の他端に連結された釣合錘103、および複数の滑車が設けられている。また、エレベーター100は、制御装置104を備える。
【0013】
エレベーター100は、昇降路20の上部に機械室を有さない所謂機械室レスエレベーターであり、巻上機101および制御装置104は、昇降路20の下部のピット105に設置されている。エレベーター100では、乗りかご21が最上階の乗場22に停止したとき、天井と乗りかご21の隙間が狭く、作業者200が作業するスペースを確保できない。
【0014】
制御装置104は、各階の乗場22に設けられて乗りかご21を呼ぶための乗りかご呼釦や、乗りかご21内に設けられて行先階を指定する行先階釦から信号を受ける。制御装置104がそれらの信号に基づいて巻上機101のモータの回転方向および速度を制御することによって、乗りかご21が昇降する。
【0015】
エレベーター100は、乗りかご21の上部に着床装置10を備え、昇降路20の壁部に着床プレート11を備える。着床装置10は、平面視コの字形状を有する装置であって、着床プレート11が凹部内を通過するように構成される。着床装置10は、着床プレート11が着床装置10の凹部内の中心を通過するように設置されていることが好ましい。
【0016】
着床装置10は、昇降路20内に設置された着床プレート11を検出する。着床装置10は、例えば、着床プレート11を磁気方式で検出する検出装置である。また着床装置10は、着床プレート11を光学方式で検出できる検出装置であってもよい。着床装置10は、着床プレート11を検出すると、乗りかご21が乗場22に停止したことを表す信号を制御装置104に送信する。制御装置104は、信号を受信すると乗りかご扉開閉用モータを制御することで、乗りかご扉を開くと共に、乗場扉が乗りかご扉の開き動作に連動して開き、人が乗りかご21から乗り降りすることを可能にする。
【0017】
着床プレート11は、鉄板等の板であって、各階床の適切な停止位置に対応する昇降路20の壁面に設置されている。すなわち、着床プレート11は乗りかご21の昇降方向に沿って、各階の間隔に対応した一定の間隔をもって昇降路20内に設置されている。したがって、着床プレート11の設置される数はエレベーター100の乗場22の数と等しい。
【0018】
エレベーター100は、乗りかご21の上部に取り付けられた着床装置10が昇降路20に取り付けられた着床プレート11を検出することで、乗りかご21を各階の乗場22に段差なく停止させる。着床プレート11は、非接触で検出され、着床装置10と着床プレート11との隙間は一般的には数ミリメートル程度である。このため、着床装置10と着床プレート11が接触しないように点検が行われる。詳しくは後述するが、最上階以外の階において、作業者200は、着床装置10の凹部内に着床プレート11が位置する状況で、着床プレート11に直尺13を直接接触させ間隙を測定することで点検を行う(
図9参照)。一方、最上階においては、乗りかご21の上部の作業スペースを確保するため、着床装置10が着床プレート11の凹部内に位置しない状態で間隙測定治具1を用いて間隙測定が行われる(
図6参照)。
【0019】
図2~
図5を参照しながら、実施形態の一例である間隙測定治具1の構成について詳細に説明する。
【0020】
図2は、実施形態の一例である間隙測定治具1の全体構成を示す図である。
図3は、実施形態の一例である着床装置10と間隙測定治具1との対応関係を示す図である。
図4は、最上階における間隙測定時の着床プレート11、着床装置10および間隙測定治具1との位置関係を示す斜視図である。また、
図3以降の図面において、X方向は、着床装置10の幅方向を示し、Y方向は、着床装置10の奥行方向を示す。また、Z方向は、着床装置10の高さ方向を示す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する。
【0021】
図2~
図4に示すように、間隙測定治具1は、最上階における着床プレート11と着床装置10(
図1等参照)との間隙を測定するための治具であって、ベース部2と、ベース部2上に設置されるレーザー照射器3を備える。
【0022】
ベース部2は、互いに直交する第1の辺30と第2の辺31を含み、着床装置10の凹部の縁と平行に第1の辺30および第2の辺31が配置可能に構成されている。第2の辺31の長さは、着床装置10のコの字形状の凹部の幅よりも長いことが好ましい。ベース部2は、例えば、平面視L字形状であってもよく、平面視コの字形状であってもよい。平面視コの字形状である場合には、当該コの字形状の凹部の幅は、着床装置10のコの字形状凹部の幅と等しいことが好ましい。
【0023】
ベース部2は、水平器4および水平調節ネジ5を備える。水平器4は、ベース部2の表面上に配置され、ベース部2の表面の水平度を計測する機能を有する。例えば、間隙測定治具1が設置される着床装置10の表面は平坦ではない場合があることから、水平器4を用いてベース部2の表面の水平度を事前に確認することが好ましい。間隙測定治具1のベース部2を着床装置10の表面に配置したときに、ベース部2の表面が水平方向に対して傾いている場合、水平器4を確認しながら、水平調節ネジ5で傾きを調整する。水平器4は、ベース部2の表面上に設置されるが、好ましくは、水平器4はベース部2の重心付近に設置される。水平器4は、例えば、気泡管が取り付けられている丸型水平器である。
【0024】
水平調節ネジ5は、ベース部2の水平方向の傾きを調整するためのネジであって、ベース部2に設けられたネジ穴に設置される。水平調節ネジ5は、間隙測定治具1が着床装置10に設置された時、着床装置10に接することで、水平調節ネジ5の締め具合によって間隙測定治具1の傾きを調整することができる。水平調節ネジ5は、ベース部2の3箇所以上に互いに離れて設置されることが好ましい。水平調節ネジ5は、ベース部2の重心から離れた端部にそれぞれ設けられることが好ましい。例えば、ベース部2が平面視L字形状である場合は、L字に沿った長さ方向の2つの端部に加えて直角に曲がる部分に設けられる(
図2参照)。
図2に示す例では、3つの水平調節ネジ5のうち2つが、水平器4と同一直線上に設けられている。
【0025】
水平調節ネジ5は、例えば、六角ボルトやトラスネジであってもよい。また、水平調節ネジ5は蝶ネジであることが好ましい。水平調節ネジ5が蝶ネジであれば、点検を行う作業者200は、道具を使用することなく間隙測定治具1の傾き調整を行うことができ、作業効率の改善が可能である。
【0026】
着床装置10は、上記のように、平面視コの字形状を有し、当該コの字形状の凹部は、平面視において、辺40、辺41および辺42によって構成されている。辺40と辺42は、互いに平行な辺であって、辺41と辺40、辺41と辺42は互いに直交する辺である。
【0027】
ベース部2は間隙測定時に間隙測定治具1と着床装置10との位置合わせの際に使用される。間隙測定時、間隙測定治具1は、ベース部2の第1の辺30が辺40に沿うように配置され、第2の辺31が辺41に沿うように配置される。ベース部2の辺が着床装置10の辺に沿うように配置された際、間隙測定治具1および着床装置10をZ方向の真上から見ると辺同士が一致する。
【0028】
レーザー照射器3は、例えば、点状のレーザー光12を照射するレーザー発振器を備え、点状のレーザー光12を平行光に変換する非球面レンズを備える。また、非球面レンズで変換された平行光をライン状のレーザー光12に変換する2つの円形レンズを備える。一方の円柱レンズの端面を他方の円柱レンズの周面に当接させて、2つの円柱レンズがT字状に設置される。また、レーザー発振器によって出射された点状のレーザー光12は、非球面レンズ、円柱レンズの順に通過する。これより、レーザー照射器3は、レーザー発振器から出射された点状のレーザー光12を十字状のレーザー光12として出射可能となる。
【0029】
レーザー照射器3は、ベース部2の表面に設置され、ベース部2の表面に対して垂直で、かつ第1の辺30および第2の辺31と平行な十字状のレーザー光12を出射可能に構成されている。レーザー照射器3は、十字状のレーザー光12の交点が、第1の辺30と第2の辺31の交点上に位置するように、ベース部2の表面に設置されていることが好ましい。
【0030】
レーザー照射器3は、第1レーザー照射器3aのみであってもよいが、第1レーザー照射器3aと第2レーザー照射器3bを含んでいることが好ましい。この場合、第2レーザー照射器3bは、十字状のレーザー光12の交点が第1レーザー照射器3aの十字状のレーザー光12の交点から、第2の辺31と平行に着床装置10の凹部の幅と等しい距離だけ離れて位置するように、ベース部2の表面に設置される。
【0031】
第1レーザー照射器3aは、上記の通り、十字状のレーザー光12の交点が、第1の辺30と第2の辺31の交点上に位置するように、ベース部2の表面に設置されることが好ましい。この場合、第2レーザー照射器3bは、十字状のレーザー光12の交点が、第1の辺30と第2の辺31の交点から第2の辺31に沿って着床装置10のコの字形状の凹部の幅と等しい距離だけ離れて位置するように、ベース部2の表面に設置される。したがって、第1レーザー照射器3aと第2レーザー照射器3bの十字状のレーザー光12の交点間の距離は、着床装置10の凹部の幅の長さ、すなわち辺41の長さと等しくなる。
【0032】
第1レーザー照射器3aおよび第2レーザー照射器3bを設置した時、間隙測定治具1をZ方向の真上から見ると、第1レーザー照射器3aおよび第2レーザー照射器3bがベース部2からはみ出すように設置されていることがわかる(
図2参照)。これより、第1レーザー照射器3aおよび第2レーザー照射器3bの照射する十字状のレーザー光12の交点が、第1の辺30および第2の辺31の上に位置するように配置することができる。
【0033】
図2の間隙測定治具1の右側面図に示されるように、第2レーザー照射器3bは、ベース部2に設置するために、一部がベース部2の第2の辺31を有する平面に引っかかるような形状に設計されている。また、第1レーザー照射器3aも同様に第1の辺30を有する平面および第2の辺31を有する平面に引っかかるような形状に設計されている。
【0034】
レーザー照射器3から出射される十字状のレーザー光12は、2つのライン状のレーザー光12が交差したものであって、ライン状のレーザー光12は、放射角と投影距離によって投影されるラインの長さが決められる。放射角は、着床プレート11に直尺13を垂直に接触させたときに、ライン状のレーザー光12が直尺13に当接し、目盛りが読み取り可能なラインの長さのライン状のレーザー光12を出射可能な角度が好ましい。
【0035】
着床プレート11は、左表面11a、右表面11b、および側面11cを備える。間隙測定治具1は、着床装置10上にベース部2の第1の辺30が辺40に沿うように配置され、第2の辺31が辺41に沿うように配置される。第1レーザー照射器3aおよび第2レーザー照射器3bから出射されるレーザー光12は、ベース部2の表面に対して垂直であって、着床プレート11方向に出射される。また、レーザー光12は、着床装置10の辺40、辺41および辺42に平行になるように出射される(
図4参照)。
【0036】
図5は、間隙測定治具1の内部結線を示す図である。スイッチ6は、ベース部2の表面に設置され、ベース部2の内部で、電池7、第1レーザー照射器3a、第2レーザー照射器3bと接続されている。スイッチ6はON、OFFを切り替え、電気回路の開閉を行うことで、レーザー照射器3のレーザー光12の出射を制御することができる。
【0037】
電池7は、レーザー照射器3の動力源である。電池7は、ベース部2の内部に配置されることが好ましい。間隙測定治具1は電池7を備えることで、外部電源に接続することなく間隙測定を行うことができる。これより、間隙測定治具1の携帯性および利便性を向上できる。
【0038】
図6~
図8を用いて、間隙測定治具1を用いた最上階における着床プレート11と着床装置10の凹部との間隙測定方法を比較として
図10を参照しながら、詳細に説明する。なお、
図9に示すように、最上階以外の階では、着床装置10の凹部内に着床プレート11が位置するため、間隙測定治具1は使用されない。
【0039】
図6は、間隙測定治具1を用いた最上階の着床プレート11と着床装置10の凹部の間隙測定時の各要素の位置関係を示した図である。最上階における着床プレート11と着床装置10との間隙測定時、作業者200は、乗りかご21上に位置し、間隙測定治具1を着床装置10の上に配置し測定を行う。
【0040】
作業者200は、ベース部2の第1の辺30が辺40に沿うように、第2の辺31が辺41に沿うように間隙測定治具1を配置する。これより、自動的に第1レーザー照射器3aの十字状のレーザー光12の交点が、辺40と辺41との交点上に位置するように間隙測定治具1が配置される。また、第2レーザー照射器3bの十字状のレーザー光12の交点が、辺41と辺42との交点上に位置するように間隙測定治具1が配置される(
図3等参照)。
【0041】
作業者200は、水平器4によって間隙測定治具1の水平方向の傾きを検知し、水平調節ネジ5によって間隙測定治具1が水平になるように調節する。これより、レーザー照射器3から出射される十字状のレーザー光12が、着床プレート11の面と平行に出射され、着床装置10と着床プレート11との間隙の正確な測定が可能となる。
【0042】
図7は、最上階における着床プレート11の左表面11aおよび右表面11bと着床装置10の凹部との間隙測定方法を説明する図である。以下、左表面11aと着床装置10の凹部との間隙を間隙50、右表面11bと着床装置10の凹部との間隙を間隙51とする。作業者200は、直尺13を着床プレート11の左表面11aに垂直に接触させ、レーザー光12が示す直尺13の目盛りを読むことで間隙50を測定する。同様に、作業者200は、直尺13を着床プレート11の左表面11aに垂直に接触させ、レーザー光12が示す直尺13の目盛りを読むことで間隙51を測定する。
【0043】
図8は、最上階における着床プレート11の側面11cと着床装置10の凹部との間隙測定方法を説明する図である。以下、着床プレート11の側面11cと着床装置10の凹部との間隙を間隙52とする。作業者200は、直尺13を着床プレート11の側面11cに垂直に接触させ、第1レーザー照射器3aおよび第2レーザー照射器3bが出射するレーザー光12が示す直尺13の目盛りを読むことで間隙52を測定する。
【0044】
一方、
図10に示すように、従来は着床装置10の面に下げ振り23を取り付け、直尺13を用いて下げ振り23の先端部と着床装置10の凹部との距離の測定を行っていた。着床プレート11の右表面11bに沿って下げ振り23を取り付ける。下げ振り23の揺れが収まり次第、直尺13を用いて下げ振り23の先端部と着床装置10の凹部の辺42との距離を測定する。同様の方法で他の面に関しても測定を行う。
【0045】
間隙測定治具1を使用した間隙測定方法は、従来の下げ振り23を用いて点検する場合に比べて、間隙測定治具1を一度設置することで、複数の面の間隙測定を行うことができるため、点検時間を短縮することができる。また、レーザー光12は揺れることがないため、測定の誤差の発生を抑えることができる。
【0046】
上記のように、レーザー照射器3の個数およびベース部2上の配置によって測定方法を変更することで最上階における着床プレート11と着床装置10の凹部との間隙測定を行うことが可能である。
【0047】
なお、上記形態では、間隙測定治具1を使用したが、レーザー照射器3のみで最上階の着床プレート11と着床装置10の凹部との間隙測定を行ってもよい。この場合、作業者200は、レーザー照射器3の十字状のレーザー光12を第1の辺30および第2の辺31に沿うように配置し、十字状のレーザー光12を着床プレート11に向けて出射し、直尺13によって間隙の測定を行ってもよい。しかしながら、レーザー照射器3のみでは、位置合わせが容易でないため誤差が生じやすい。よって、間隙測定治具1を使用することで容易に位置合わせができ、測定誤差の発生を防止することができる。
【0048】
また、第1レーザー照射器3aおよび第2レーザー照射器3bの十字状のレーザー光12の交点が、第1の辺30および第2の辺31上に位置しない場合であっても、着床装置10および着床プレート11の寸法等から各間隙を算出することができる。例えば、十字状のレーザー光12と左表面11aとの距離から、十字状のレーザー光12と第1の辺30との距離を差し引くことで間隙50を算出することができる。また、レーザー照射器3が、第1レーザー照射器3aのみである時も同様に各間隙を算出することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 間隙測定治具、2 ベース部、3 レーザー照射器、3a 第1レーザー照射器、3b 第2レーザー照射器、4 水平器、5 水平調節ネジ、6 スイッチ、7 電池、10 着床装置、11 着床プレート、11a 左表面、11b 右表面、11c 側面、12 レーザー光、13 直尺、20 昇降路、21 乗りかご、22 乗場、23 下げ振り、30 第1の辺、31 第2の辺、40 辺、41 辺、42 辺、50 間隙、51 間隙、52 間隙、100 エレベーター、101 巻上機、102 ワイヤーロープ、103 釣合錘、104 制御装置、105 ピット、200 作業者