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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024797
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ガスエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20250214BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20250214BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20250214BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F02M21/02 Z
F02M21/02 S
F02F11/00 J
F02F1/24 J
F02M21/02 G
F02F7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129074
(22)【出願日】2023-08-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発/水素燃料船の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪口 真帆
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA04
3G024AA72
3G024BA21
3G024DA14
3G024DA30
3G024EA10
3G024FA03
3G024FA08
3G024GA26
3G024HA03
(57)【要約】
【課題】シリンダカバー内にガス供給路を設けつつも、シール部材への熱によるダメージを抑制する。
【解決手段】エンジン1は、水素ガスを燃焼可能なガスエンジンである。このエンジン1は、シリンダライナ14と、シリンダカバー15と、水素ガスを噴射するガス噴射弁5と、ガス噴射弁5に水素ガスを供給するガス供給路32,33と、シリンダカバー15の上面15aに固定され、ガス噴射弁5が挿通されかつシリンダカバー15とは別体に構成されたブロック体7と、ガス供給路32,33とガス噴射弁5との間をシールするシール部材62,63と、を備える。ガス供給路32,33は、シリンダカバー15の内部に区画された第1ガス供給路32と、ブロック体7の内部に区画され、第1ガス供給路32をガス噴射弁5に接続する第2ガス供給路33と、を有し、シール部材62,63は、第2ガス供給路33とガス噴射弁5との接続部S1に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内でガス燃料を燃焼可能なガスエンジンであって、
ピストンを往復移動させるシリンダライナと、
前記シリンダライナの上端に固定され、前記シリンダの蓋となるシリンダカバーと、
前記シリンダ内に前記ガス燃料を噴射する噴射口が設けられたガス噴射弁と、
前記ガス噴射弁に前記ガス燃料を供給するガス供給路と、
前記シリンダカバーの上面に固定され、前記ガス噴射弁が挿通されかつ前記シリンダカバーとは別体に構成されたブロック体と、
前記ガス供給路と前記ガス噴射弁との間をシールするシール部材と、を備え、
前記ガス供給路は、
前記シリンダカバーの内部に区画された第1ガス供給路と、
前記ブロック体の内部に区画され、前記第1ガス供給路を前記ガス噴射弁に接続する第2ガス供給路と、を有し、
前記シール部材は、前記第2ガス供給路と前記ガス噴射弁との接続部に設けられている
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記ガス噴射弁の外周面に開口し、前記第2ガス供給路を前記噴射口に接続するガス導入路と、
前記ブロック体に設けられ、前記ガス噴射弁が挿通される挿通孔と、をさらに備え、
前記ガス噴射弁の軸方向において、該軸方向における前記噴射口側を先端側とし、該軸方向における前記噴射口の反対側を基端側とすると、
前記ガス噴射弁の外周面は、
前記軸方向に沿って延びる第1外周面と、
前記第1外周面よりも前記基端側に配置され、該第1外周面よりも大径かつ前記軸方向に沿って延びる第2外周面と、
前記第1外周面と前記第2外周面を接続する段差又は斜面によって構成される第3外周面と、を有し、
前記挿通孔の内周面は、
前記第1外周面に内接する第1内周面と、
前記第1内周面よりも前記基端側に配置され、該第1内周面よりも大径かつ前記第2外周面に内接する第2内周面と、
前記第1内周面と前記第2内周面を接続する段差又は斜面によって構成される第3内周面と、を有し、
前記ガス噴射弁を前記ブロック体に締結した状態においては、前記第3外周面と前記第3内周面とは、前記軸方向、又は、該軸方向に直交する径方向において隙間を存して向かい合い、
前記隙間は、前記ガス噴射弁の中心軸まわりの周方向に前記ガス燃料を流通させる第1スペースを区画し、
前記ガス導入路は、前記第1スペースに連通するように開口し、
前記シール部材は、前記第1スペースを通じたガス漏れを抑制するように、少なくとも前記第1外周面に装着されている
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載されたガスエンジンにおいて、
前記第1外周面と前記第1内周面との間に区画され、前記第1スペースよりも前記先端側に位置するともに、前記第1スペースからリークした前記ガス燃料を流入させる第2スペースと、
前記第2外周面と前記第2内周面との間に区画され、前記第1スペースよりも前記基端側に位置するともに、前記第1スペースからリークした前記ガス燃料を流入させる第3スペースと、を備え、
前記シール部材は、前記先端側から前記基端側に向かって順に、
前記第2スペースに対して前記先端側に位置するとともに、前記第1外周面と前記第1内周面との間に挟持されるように、前記第1外周面に装着される第1シール部材と、
前記第2スペースに対して前記基端側に位置するとともに、前記第1外周面と前記第1内周面との間に挟持されるように、前記第1外周面に装着される第2シール部材と、
前記第3スペースに対して前記先端側に位置するとともに、前記第2外周面と前記第2内周面との間に挟持されるように、前記第2外周面に装着される第3シール部材と、
前記第3スペースに対して前記基端側に位置するとともに、前記第2外周面と前記第2内周面との間に挟持されるように、前記第2外周面に装着される第4シール部材と、によって構成され、
前記ガス導入路の上流端部は、前記軸方向において、前記第2シール部材と前記第3シール部材との間に配置される
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載されたガスエンジンにおいて、
前記第1及び前記第2シール部材は、前記第1外周面に設けられた窪み部に装着され、
前記第3及び前記第4シール部材は、前記第2外周面に設けられた窪み部に装着され、
前記第2スペースは、前記第1内周面に設けられた溝と、該溝に向かい合う前記第1外周面と、によって区画され、
前記第3スペースは、前記第2内周面に設けられた溝と、該溝に向かい合う前記第2外周面と、によって区画される
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項5】
請求項3に記載されたガスエンジンにおいて、
前記ガス燃料は水素ガスであり、
前記ガス導入路の上流端部は、前記第1外周面に対して垂直に開口する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項6】
請求項5に記載されたガスエンジンにおいて、
前記ガス導入路の上流端部は、前記第1外周面と前記第3外周面との境界部に開口している
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項7】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記ガス燃料は水素ガスであり、
前記ブロック体は、中実の鋼材によって構成され、
前記ブロック体は、
前記シリンダカバーの上面に取り付けられる下面と、
前記ガス噴射弁が挿通される挿通孔と、を有し、
前記第2ガス供給路は、
前記下面に開口する上流端部と、
前記挿通孔の内周面に開口する下流端部と、を有し、
前記上流端部は、前記ガス噴射弁の軸方向に直交する径方向において、前記下流端部よりも外側に配置され、
前記第2ガス供給路は、
前記上流端部から上方に向かって延びる第1部分と、
前記第1部分から連続し、高さ方向において上方に向かうにしたがって、前記径方向の内側に向かって斜めに延びて前記下流端部に至る第2部分と、をさらに有する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項8】
請求項7に記載されたガスエンジンにおいて、
前記ガス燃料の流れ方向における前記第2部分の寸法は、該流れ方向における前記第1部分の寸法よりも長い
ことを特徴とするガスエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、いわゆるガスエンジンの一例として、燃焼室内にガス燃料(気体燃料)を供給するように構成されたエンジン(大型低速ターボ付き2ストロークディーゼルエンジン)が開示されている。具体的に、このエンジンは、シリンダカバー(シリンダの上部カバー)に挿入された気体燃料弁と、そのシリンダカバーに形成され、気体燃料弁にガス燃料を供給するガス供給路(供給導管)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-86867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、ガスエンジンからのガス燃料の漏洩を抑制するために、ガス燃料を流通させる各流路をシリンダカバー内に設けることで、各流路を一体的に形成し、流路間の接続箇所等を低減することを検討した。
【0005】
その具体例としては、例えば前記特許文献1に開示されているように、シリンダカバーに気体燃料弁を挿入するとともに、そのシリンダカバー内にガス供給路を設けることが考えられる。しかし、このような構成を採用した場合、ガス供給路と気体燃料弁との接続箇所からのガス漏れが、依然として懸念される。
【0006】
そうした懸念を払拭するためには、シリンダカバー内にOリング等のシール部材を設けることで、ガス供給路と気体燃料弁との隙間をシールせざるを得ない。
【0007】
しかしながら、シリンダカバー内にシール部材を設けた場合、ガス燃料の燃焼に伴い発生する熱によって、シール部材がダメージを受ける可能性がある。このことは、ガスエンジンの長寿命化を図る上で不都合である。
【0008】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガスエンジンにおいて、シリンダカバー内にガス供給路を設けつつも、シール部材への熱によるダメージを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、シリンダ内でガス燃料を燃焼可能なガスエンジンに係る。このガスエンジンは、ピストンを往復移動させるシリンダライナと、前記シリンダライナの上端に固定され、前記シリンダの蓋となるシリンダカバーと、前記シリンダ内に前記ガス燃料を噴射する噴射口が設けられたガス噴射弁と、前記ガス噴射弁に前記ガス燃料を供給するガス供給路と、前記シリンダカバーの上面に固定され、前記ガス噴射弁が挿通されかつ前記シリンダカバーとは別体に構成されたブロック体と、前記ガス供給路と前記ガス噴射弁との間をシールするシール部材と、を備え、前記ガス供給路は、前記シリンダカバーの内部に区画された第1ガス供給路と、前記ブロック体の内部に区画され、前記第1ガス供給路を前記ガス噴射弁に接続する第2ガス供給路と、を有し、前記シール部材は、前記第2ガス供給路と前記ガス噴射弁との接続部に設けられている。
【0010】
前記第1の態様によると、ガス噴射弁は、シリンダカバー内に区画された第1ガス供給路と直に接続されるのではなく、シリンダカバーとは別体のブロック体を介して間接的に接続されるようになっている。
【0011】
そのように接続したことで、シリンダカバー内にシール部材を設けずとも、ブロック体とガス噴射弁との接続部(第2ガス供給路とガス噴射弁との接続部)にシール部材を設けることが可能になる。
【0012】
ここで、ブロック体は、シリンダカバーの上面に配置されていることから、シリンダカバー内にシール部材を設けるような構成と比較して、シール部材を燃焼室から遠ざけることができる。したがって、シール部材を燃焼室から遠ざけた分、シール部材への熱によるダメージを抑制することが可能になる。
【0013】
こうして、前記第1の態様によれば、シリンダカバー内にガス供給路を設けつつも、シール部材への熱によるダメージを抑制することが可能になる。
【0014】
また、本開示の第2の態様によれば、前記ガスエンジンは、前記ガス噴射弁の外周面に開口し、前記第2ガス供給路を前記噴射口に接続するガス導入路と、前記ブロック体に設けられ、前記ガス噴射弁が挿通される挿通孔と、をさらに備え、前記ガス噴射弁の軸方向において、該軸方向における前記噴射口側を先端側とし、該軸方向における前記噴射口の反対側を基端側とすると、前記ガス噴射弁の外周面は、前記軸方向に沿って延びる第1外周面と、前記第1外周面よりも前記基端側に配置され、該第1外周面よりも大径かつ前記軸方向に沿って延びる第2外周面と、前記第1外周面と前記第2外周面を接続する段差又は斜面によって構成される第3外周面と、を有し、前記挿通孔の内周面は、前記第1外周面に内接する第1内周面と、前記第1内周面よりも前記基端側に配置され、該第1内周面よりも大径かつ前記第2外周面に内接する第2内周面と、前記第1内周面と前記第2内周面を接続する段差又は斜面によって構成される第3内周面と、を有し、前記ガス噴射弁を前記ブロック体に締結した状態においては、前記第3外周面と前記第3内周面とは、前記軸方向、又は、該軸方向に直交する径方向において隙間を存して向かい合い、前記隙間は、前記ガス噴射弁の中心軸まわりの周方向に前記ガス燃料を流通させる第1スペースを区画し、前記ガス導入路は、前記第1スペースに連通するように開口し、前記シール部材は、前記第1スペースを通じたガス漏れを抑制するように、少なくとも前記第1外周面に装着されている、としてもよい。
【0015】
仮に、第3外周面及び第3内周面を設けずに、第1外周面と第2外周面を同径とし、第1内周面と第2内周面を同径としたような構成を考える。このような構成を採用すると、ブロック体へのガス噴射弁の挿入に際し、そのガス噴射弁の第1外周面に装着されたシール部材は、第2内周面及び第1内周面の両方と擦れることになる。この場合、摩耗によるシール部材へのダメージが懸念される。
【0016】
これに対し、前記第2の態様によると、第2内周面は、第1内周面よりも大径とされている。したがって、ブロック体へのガス噴射弁の挿入に際し、そのガス噴射弁の第1外周面に装着されたシール部材と、第2内周面との接触を抑制することができる。これにより、当該接触によるシール部材へのダメージを抑制することができる。また、第2内周面の大径化に併せて、第2外周面を第1外周面よりも大径とすることで、挿通孔の内周面と、ガス噴射弁の外周面との接触を保持することができる。このことは、ガス燃料のリークの抑制に資する。
【0017】
また、第3外周面と第3内周面とを用いて第1スペースを区画することで、ガス噴射弁の外周面に溝等を新設せずとも、周方向にガス燃料を流通させるガス溜まりを構成することができる。通常、そうした溝の作成にはぬすみ加工が必要となるところ、これを不要としたことで、ぬすみ加工をするための特殊工具も不要となる。これにより、ブロック体の加工性を高めることができる。
【0018】
すなわち、前記第2の態様に係る第3外周面及び第3内周面は、ガス燃料のリークの抑制と、シール部材へのダメージの抑制と、周方向へのガス燃料の流通と、ブロック体の加工性の向上と、を同時に成立させることができる。
【0019】
また、本開示の第3の態様によれば、前記ガスエンジンは、前記第1外周面と前記第1内周面との間に区画され、前記第1スペースよりも前記先端側に位置するともに、前記第1スペースからリークした前記ガス燃料を流入させる第2スペースと、前記第2外周面と前記第2内周面との間に区画され、前記第1スペースよりも前記基端側に位置するともに、前記第1スペースからリークした前記ガス燃料を流入させる第3スペースと、を備え、前記シール部材は、前記先端側から前記基端側に向かって順に、前記第2スペースに対して前記先端側に位置するとともに、前記第1外周面と前記第1内周面との間に挟持されるように、前記第1外周面に装着される第1シール部材と、前記第2スペースに対して前記基端側に位置するとともに、前記第1外周面と前記第1内周面との間に挟持されるように、前記第1外周面に装着される第2シール部材と、前記第3スペースに対して前記先端側に位置するとともに、前記第2外周面と前記第2内周面との間に挟持されるように、前記第2外周面に装着される第3シール部材と、前記第3スペースに対して前記基端側に位置するとともに、前記第2外周面と前記第2内周面との間に挟持されるように、前記第2外周面に装着される第4シール部材と、によって構成され、前記ガス導入路の上流端部は、前記軸方向において、前記第2シール部材と前記第3シール部材との間に配置される、としてもよい。
【0020】
前記第3の態様によると、軸方向における第1スペースの両側には、第2シール部材及び第3シール部材が配置され、そのさらなる両側には、第1シール部材及び第4シール部材が配置されるようになっている。このようにレイアウトすることで、4つのシール部材による第1スペースに対する二重シール構造を実現することができる。
【0021】
また、第1及び第2シール部材の間に第2スペースを区画するとともに、第3及び第4シール部材の間に第3スペースを区画することで、第1スペースに対する二重シール構造に加えて、第2スペース及び第3スペースをそれぞれシールするためのシール構造を同時に実現することができる。
【0022】
また、本開示の第4の態様によれば、前記第1及び前記第2シール部材は、前記第1外周面に設けられた窪み部に装着され、前記第3及び前記第4シール部材は、前記第2外周面に設けられた窪み部に装着され、前記第2スペースは、前記第1内周面に設けられた溝と、該溝に向かい合う前記第1外周面と、によって区画され、前記第3スペースは、前記第2内周面に設けられた溝と、該溝に向かい合う前記第2外周面と、によって区画される、としてもよい。
【0023】
仮に、第3外周面及び第3内周面を設けずに、第1外周面と第2外周面を同径とし、第1内周面と第2内周面を同径としたような構成を考える。このような構成を採用すると、ブロック体へのガス噴射弁の挿入に際し、そのガス噴射弁の第1外周面に装着されたシール部材は、第2内周面及び第1内周面の両方と擦れることになる。この場合、シール部材と第2内周面とが擦れる際に、そのシール部材と、第2内周面に設けられた溝との擦れが取り分け懸念される。
【0024】
これに対し、前記第4の態様によると、ブロック体へのガス噴射弁の挿入に際し、そのガス噴射弁の第1外周面に装着されたシール部材と、第2内周面、ひいては第2内周面に設けた溝との接触を抑制することができる。これにより、当該接触によるシール部材へのダメージを抑制する上で有利になる。
【0025】
また、本開示の第5の態様によれば、前記ガス燃料は水素ガスであり、前記ガス導入路の上流端部は、前記第1外周面に対して垂直に開口する、としてもよい。
【0026】
前記第5の態様によると、例えば上流端部を斜めに開口させた場合と比較して、その開口面積を可能な限り抑制することができる。この開口面積を抑制することは、軸方向における第2シール部材と第3シール部材との間隔を狭める上で有効である。この間隔を狭めることは、第1スペースのボリュームの抑制に資する。そして、第1スペースのボリュームの抑制は、当該スペースに溜まり得る水素ガスの量を抑制し、安全性のさらなる向上を図る上で有利になる。このように、前記第5の態様に係るガス噴射弁は、ガス燃料に水素ガスを用いた場合に適した構造とされている。
【0027】
また、本開示の第6の態様によれば、前記ガス導入路の上流端部は、前記第1外周面と前記第3外周面との境界部に開口している、としてもよい。
【0028】
前記第6の態様によると、前記上流端部を前記境界部に開口させることで、例えば第1外周面の先端部に開口させるような構成と比べて、軸方向における第2シール部材と第3シール部材との間隔を狭めることができる。そのことで、第1スペースのボリュームを抑制し、当該スペースに溜まり得る水素ガスの量を抑制することが可能になる。これにより、安全性のさらなる向上を図る上でさらに有利になる。
【0029】
また、本開示の第7の態様によれば、前記ガス燃料は水素ガスであり、前記ブロック体は、中実の鋼材によって構成され、前記ブロック体は、前記シリンダカバーの上面に取り付けられる下面と、前記ガス噴射弁が挿通される挿通孔と、を有し、前記第2ガス供給路は、前記下面に開口する上流端部と、前記挿通孔の内周面に開口する下流端部と、を有し、前記上流端部は、前記ガス噴射弁の軸方向に直交する径方向において、前記下流端部よりも外側に配置され、前記第2ガス供給路は、前記上流端部から上方に向かって延びる第1部分と、前記第1部分から連続し、高さ方向において上方に向かうにしたがって、前記径方向の内側に向かって斜めに延びて前記下流端部に至る第2部分と、をさらに有する、としてもよい。
【0030】
中実の鋼材を用いる場合、通常、軸方向に延びる貫通孔と、径方向に延びる貫通孔と、の組み合わせによって前記第2ガス供給路を加工することが考えられる。しかしながら、そうした2方向の貫通孔を設けた場合、いわゆる捨て穴が生じることになるため、その捨て穴をシールプラグ等によって閉塞することが求められる。しかしながら、シールプラグを用いることは、水素ガスのリーク、及び、シールプラグによる閉塞部に溜まった水素ガスに起因した水素脆化等を招くため不都合である。
【0031】
これに対し、前記第7の態様に係る第2ガス供給路は、斜めに延びる第2部分を有している。これにより、捨て穴、ひいてはシールプラグを用いずとも第2ガス供給路を構成することが可能になる。このことは、水素ガスのリーク及び水素脆化の抑制に資する。
【0032】
また、本開示の第8の態様によれば、前記ガス燃料の流れ方向における前記第2部分の寸法は、該流れ方向における前記第1部分の寸法よりも長い、としてもよい。
【0033】
前記第8の態様によれば、第2部分の寸法を第1部分よりも相対的に長くすることで、第2ガス供給路をより長く斜めに延ばすことができる。第2ガス供給路をより長く斜めに延ばすことで、該第2ガス供給路の中途の部位に水素ガスを留めることなく、第2ガス供給路の下流端部、ひいてはガス噴射弁へと水素ガスをスムースに導くことが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本開示によれば、ガスエンジンにおいて、シリンダカバー内にガス供給路を設けつつも、シール部材への熱によるダメージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ガスエンジンの全体構成を例示する側面図である。
図2図2は、ガスエンジンの構成を例示する模式図である。
図3図3は、ガスエンジンの上部構造を模式的に例示する断面図である。
図4図4は、シリンダカバーの周辺構成を例示する斜視図である。
図5図5は、シリンダカバーの周辺構成を例示する平面図である。
図6図6は、シリンダカバーの周辺構成を例示する正面図である。
図7図7は、図5のA-A断面図である。
図8図8は、ガス噴射弁の構成を例示する縦断面図である。
図9図9は、図7の囲み部XIを拡大して示す図である。
図10図10は、ブロック体の構成を例示する斜視図である。
図11図11は、ブロック体の構成を例示する縦断面図である。
図12図12は、図7のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。図1は、ガスエンジン(以下、単に「エンジン」ともいう)1の全体構成を例示する側面図であり、図2は、エンジン1の構成を例示する模式図であり、図3は、エンジン1の上部構造を模式的に例示する断面図である。
【0037】
<全体構成>
エンジン1は、そのシリンダ16内でガス燃料を燃焼可能なガスエンジンである。特に本実施形態では、ガス燃料は水素ガスである。なお、ガス燃料は、水素ガスには限定されない。メタンガス等、他のガス燃料を用いてもよい。また、エンジン1は、ガス燃料を単独燃焼させるものであってもよし、そのガス燃料と他の油燃料を併用(例えば、水素ガスと重油の混焼)するものであってもよい。
【0038】
エンジン1は、ユニフロー掃気方式の2ストローク1サイクル機関として構成されており、タンカー、コンテナ船、自動車運搬船等の大型の船舶に搭載される。このエンジン1は、搭載先の船舶を推進させるための主機関として用いられる。エンジン1の出力軸は、プロペラ軸(不図示)を介して船舶のプロペラ(不図示)に連結されている。エンジン1が運転することで、その出力がプロペラに伝達されて、船舶が推進するようになっている。
【0039】
<エンジンの主要構成>
図1図3に示されるように、エンジン1は、前述のシリンダ16を有する機関本体10と、ガス供給系統3と、を備えている。各シリンダ16は、ガス燃料を燃焼させるための燃焼室17を区画している。
【0040】
図1に示すように、シリンダ16は、所定方向に並ぶように複数(本実施形態では6つ)設けられている。以下、シリンダ16の並び方向を前後方向又は第1方向とし、この前後方向と、図3に例示するピストン軸(各シリンダ16に挿入されたピストン21の中心軸)Opと、に直交する方向を左右方向又は第2方向とする。
【0041】
(1)機関本体10
機関本体10は、前述のように複数のシリンダ16を有している。機関本体10は、2ストローク式の機関であり、船舶の機関室に設置されている。なお、以下の説明は、特段の記載を除き、6つのシリンダ16で共通である。
【0042】
図2に示すように、本実施形態に係る機関本体10は、そのロングストローク化を実現するべく、いわゆるクロスヘッド式の内燃機関として構成されている。すなわち、この機関本体10においては、下方からピストン21を支持するピストン棒22と、クランクシャフト23に連接される連接棒24と、がクロスヘッド25により連結されている。
【0043】
具体的に、機関本体10は、下方に位置する台板11と、台板11上に設けられる架構12と、架構12上に設けられるシリンダジャケット13と、シリンダライナ14と、シリンダカバー15と、を備えている。各シリンダ16は、シリンダジャケット13内に設けられている。機関本体10はまた、シリンダ16内に配置され、該シリンダ16内で往復運動するピストン21と、その往復運動に連動して回転する出力軸(例えばクランクシャフト23)と、を備えている。
【0044】
ここで、台板11は、エンジン1のクランクケースを構成するものであり、クランクシャフト23と、クランクシャフト23を回転自在に支持する軸受26と、を収容している。クランクシャフト23には、クランク27を介して連接棒24の下端部が連結されている。
【0045】
クロスヘッド25は、一対のガイド板28の間に配置されており、各ガイド板28に沿って上下方向に摺動する。すなわち、一対のガイド板28は、クロスヘッド25の摺動を案内する。クロスヘッド25は、クロスヘッドピン29を介してピストン棒22及び連接棒24と接続されている。クロスヘッドピン29は、ピストン棒22に対しては一体的に上下動するよう接続されている一方、連接棒24に対しては、連接棒24の上端部を支点として、連接棒24を回動させるように接続されている。
【0046】
シリンダジャケット13は、内筒として構成されかつピストン21を往復移動させるシリンダライナ14を支持している。詳しくは、シリンダライナ14の内部には、前述のピストン21が配置されている。シリンダライナ14は、ピストン21を、該シリンダライナ14の内壁に沿って上下方向に往復運動させる。シリンダライナ14の上端は、開口している。
【0047】
また、シリンダカバー15は、シリンダライナ14の上端に固定されている。シリンダカバー15は、シリンダライナ14とともにシリンダ16を構成している。シリンダカバー15は、シリンダライナ14の上端を閉塞することで、シリンダ16の蓋となる。
【0048】
また、シリンダカバー15には、不図示の動弁装置によって作動される排気弁18が設けられている。排気弁18は、シリンダライナ14及びシリンダカバー15から構成されるシリンダ16、並びに、ピストン21の頂面とともに燃焼室17を区画している。排気弁18は、その燃焼室17と排気管19との間を開閉するものである。排気管19は、燃焼室17に通じる排気口を有しており、排気弁18は、その排気口を開閉するように構成されている。
【0049】
また、図2及び図3に示すように、シリンダカバー15には、燃焼室17に水素ガスを供給するための1つ又は複数のガス噴射弁5が設けられている。このガス噴射弁5には、シリンダ16内に水素ガスを噴射する噴射口5aが設けられている。
【0050】
本実施形態では、ガス噴射弁5は、シリンダ16毎に2本ずつ設けられており、それぞれ、燃焼室17の室内に臨むような姿勢で設けられている。各ガス噴射弁5は、その先端に噴射口5aを有しており、その噴射口5aから水素ガスを噴射するように構成されている。以下、2つのガス噴射弁5のうちの一方を「第1ガス噴射弁5A」とし、他方を「第2ガス噴射弁5B」とする場合がある。
【0051】
また、図3に示すように、シリンダカバー15の上面には、シリンダカバー15とは別体に構成された1つ又は複数のブロック体7が固定されている。後述の図4図6に示すように、本実施形態に係るブロック体7は、ガス噴射弁5と同数(つまり、本実施形態では2つ)設けられており、それぞれ、対応するガス噴射弁5が挿通されている。以下、2つのブロック体7のうち、第1ガス噴射弁5Aが挿通される一方を「第1ブロック体7A」とし、第2ガス噴射弁5Bが挿通される他方を「第2ブロック体7B」とする場合がある。
【0052】
図3に示すように、各ガス噴射弁5は、それぞれ、ガス供給系統3に接続されている。このガス供給系統3から各ガス噴射弁5に、後述の第1及び第2ガス供給路32,33を通じて水素ガスが供給されるようになっている。水素ガスが供給された状態で各ガス噴射弁30が開くことで、燃焼室17内に水素ガスが供給される。
【0053】
各ガス噴射弁5は、燃焼室17に水素ガスを供給し、燃焼室17内で燃焼を生じさせる。その燃焼によって、ピストン21が上下方向に往復運動をする。このとき、排気弁18が作動して燃焼室17が開放されると、燃焼によって生じた排ガスが排気管19に押し出されるとともに、不図示の掃気ポートから燃焼室17にガスが導入される。
【0054】
また、燃焼によってピストン21が往復運動をすると、ピストン21とともにピストン棒22が上下方向に往復運動をする。これにより、ピストン棒22に連結されたクロスヘッド25が、上下方向に往復運動をする。このクロスヘッド25は、連接棒24の回動を許容するようになっており、クロスヘッド25との接続部位を支点として、連接棒24を回動させる。そして、連接棒24の下端部に接続されるクランク27がクランク運動し、そのクランク運動に応じてクランクシャフト23が回転する。こうして、クランクシャフト23は、ピストン21の往復運動を回転運動に変換し、プロペラ軸とともに船舶のプロペラを回転させる。これにより、船舶が推進する。
【0055】
(2)ガス供給系統3
図3に示すように、ガス供給系統3は、ガス供給モジュール31と、ガス供給路32,33と、ガスゲート弁(Gas Gate Valve:GGV)34と、ガスパイプ39と、を備えている。また、水素ガスの供給に関連した部材として、本実施形態に係るエンジン1は、シール部材62,63をさらに備えている。
【0056】
このうち、ガス供給モジュール31は、水素タンク31aと、ガスバルブトレイン(Gas Valve Train:GVT)31bと、を有している。
【0057】
水素タンク31aは、水素ガスを貯留する。水素タンク31aに貯留された水素ガスは、不図示のポンプが作動することで、同じく不図示の調温機構によって適温に調整された上、GVT31bに供給される。
【0058】
GVT31bは、種々の配管(不図示)と、各配管を開閉する電磁弁(不図示)と、を有している。GVT31bの各電磁弁は、コントローラ100と電気的に接続されており、コントローラ100から入力される制御信号にしたがって作動する。このGVT31bは、ガスパイプ39を介してガス供給路32,33と接続されている。GVT31bが各電磁弁を開閉することで、ガス供給路32,33ひいては各ガス噴射弁5への水素ガスの供給が制御される。
【0059】
ガス供給路32,33は、ガス噴射弁5に接続されており、そのガス噴射弁5に水素ガスを供給する。前述したシール部材62,63は、ガス供給路32,33とガス噴射弁5との間をシールする。
【0060】
より詳細には、ガス供給路32,33は、それぞれ、シリンダカバー15の内部に区画された第1ガス供給路32と、ブロック体7の内部に区画され、第1ガス供給路32をガス噴射弁5に接続する第2ガス供給路33である。
【0061】
第1ガス供給路32は、ガスパイプ39の下流端部と、第2ガス供給路33の上流端部とを接続する。この第1ガス供給路32の途中には、該第1ガス供給路32を開閉するガスゲート弁34が配置されている。ガスゲート弁34は、作動油の油圧に応じて作動することで、第1ガス供給路32における水素ガスの流通を遮断するように構成されている。
【0062】
第2ガス供給路33は、第1ガス供給路32の下流端部と、ガス導入路としての第1内部流路57とを接続している。後述のように、この第2ガス供給路33は、第1ガス噴射弁5Aに接続される流路と、第2ガス噴射弁5Bに接続される流路と、からなる。それらの流路に接続されるべく、第1ガス供給路32は、その途中で2本の流路(図5の符号32a,32bを参照)に分岐している。
【0063】
<シリンダカバーの周辺構成>
そして、本実施形態に係るエンジン1では、シール部材62,63は、図3に示すように、シリンダカバー15とガス噴射弁5との間ではなく、第2ガス供給路33とガス噴射弁5との接続部(言い換えると、ブロック体7とガス噴射弁5との接続部)に設けられている。
【0064】
以下、本実施形態に係るシリンダカバー15、ガス噴射弁5及びブロック体7について詳細に説明する。なお、以下の説明は、特段の記載を除き、複数のシリンダ16の各々、及び、第1及び第2ガス噴射弁5A,5Bの各々について共通である。
【0065】
(1)シリンダカバー15の具体的構成
図4は、シリンダカバー15の周辺構成を例示する斜視図であり、図5は、シリンダカバー15の周辺構成を例示する平面図であり、図6は、シリンダカバー15の周辺構成を例示する正面図である。
【0066】
図4図6に示すように、シリンダカバー15は、前後方向及び左右方向に沿って平坦な上面15aを有する厚板状の金属ブロックによって形成されている。このシリンダカバー15は、複数(図例では6つ)のカバー締結孔15bと、複数(図例では4つ)の排気弁締結孔15cと、を有している。複数のカバー締結孔15b及び排気弁締結孔15cは、いずれも前記上面15aに開口している。
【0067】
また、シリンダカバー15の中央部には、ピストン21の中心軸Opと同軸の貫通孔15dが形成されている。この貫通孔15dは、円形状の横断面を有しており、シリンダカバー15を厚み方向に貫通している。
【0068】
ここで、複数のカバー締結孔15bには、シリンダカバー15をシリンダライナ14に締結するための締結具(例えばボルト)が挿入される。複数のカバー締結孔15bは、前記中心軸Opまわりの周方向に沿って、等間隔で配置されている。各カバー締結孔15bは、シリンダカバー15を厚み方向(上下方向)に貫通している。
【0069】
一方、複数の排気弁締結孔15cには、排気弁18をシリンダカバー15に締結するための締結具(例えばボルト)が挿入される。複数の排気弁締結孔15cは、前記周方向に沿って、等間隔で配置されている。各排気弁締結孔15cは、前記中心軸Opに直交する径方向において、各カバー締結孔15bの内側(径方向内側)かつ、貫通孔15dの外側(径方向外側)に配置されている。
【0070】
また、シリンダカバー15は、左右方向において非対称な形状を有している。具体的に、シリンダカバー15は、左右方向の一側(右側)に突出した半円部151と、左右方向の他側(左側)に突出したフランジ部152と、を有している。半円部151は、半円状にカーブした右側面を有している。その右側面における半円の中心軸(円弧の中心)は、ピストン軸Opと略一致している。
【0071】
一方、フランジ部152は、前記径方向において、複数のカバー締結孔15bの外側に突出している。複数のカバー締結孔15b及び複数の排気弁締結孔15cは、前記半円部151に開口している。
【0072】
ガスゲート弁34は、フランジ部152の上面に挿入されるようになっている。そのガスゲート弁34によって開閉される第1ガス供給路32は、図5に破線で示すように、フランジ部152及び半円部151の内部に区画されている。この第1ガス供給路32は、フランジ部152におけるガスゲート弁34の挿入部分を起点として2つの流路32a,32bに分岐して、それぞれ、半円部151に向かって延びている。
【0073】
また、シリンダカバー15の上面15aには、第1ガス噴射弁5Aを支持する第1ブロック体7Aが載置される第1取付面153Aと、第2ガス噴射弁5Bを支持する第2ブロック体7Bが載置される第2取付面153Bと、が設けられている。
【0074】
図6に示すように、第1及び第2取付面153A,153Bは、それぞれ、前記径方向に沿ってピストン軸Opから離れるほど、下方に向かって傾斜するように延びている。同図に示すように、第1取付面153Aと第2取付面153Bは、ピストン軸Opを対称軸とした略線対称となるように形成されている。
【0075】
また、図5に示すように、第1取付面153Aの底面(傾斜面)には、第1ガス供給路32を構成する流路のうちの一方(流路32a)の下流端部が開口している。この底面には、図6に示すように、第1ガス噴射弁5Aの先端を挿入するための挿入穴154も開口している。この挿入穴154は、第1ガス噴射弁5Aの中心軸(後述のバルブ軸Ov)に沿って延びる有底かつ断面円形状の穴である。
【0076】
同様に、第2取付面153Bの底面(傾斜面)には、第1ガス供給路32を構成する流路のうちの他方(流路32b)の下流端部が開口している。この底面には、第2ガス噴射弁5Bの先端を挿入するための挿入穴154も開口している。この挿入穴154は、バルブ軸Ovに沿って延びる有底かつ断面円形状の穴である。
【0077】
また、図5の破線Lxに示すように、第1ガス噴射弁5A及び第2ガス噴射弁5Bの並び方向は、平面視において、前後方向に対して傾斜している。この傾斜角は、例えば1.0°以上かつ6.0°以下、詳しくは2.0°以上かつ5.0°以下、さらに詳しくは3.0°以上かつ4.0°以下に設定されている。このように傾斜させることで、第1及び第2ガス噴射弁5A,5Bと、他の弁部材との干渉を抑制しつつ、シリンダカバー15内に配置される冷却通路の肉厚を確保することができる。なお、ここでいう「他の弁部材」には、燃料油噴射弁(FOV)、予混合用のガス噴射弁等、シリンダカバー15に取付可能な弁部材が含まれる。
【0078】
そして、前述のように、第1取付面153Aには第1ブロック体7Aが載置されるとともに、その第1ブロック体7Aによって第1ガス噴射弁5Aが支持されるようになっている。一方、第2取付面153Bには第2ブロック体7Bが載置されるとともに、その第2ブロック体7Bによって第2ガス噴射弁5Bが支持されるようになっている。
【0079】
以下、図4図6の紙面左手側、すなわち、第2ブロック体7B及び第2ガス噴射弁5Bに関して詳細に説明する。以下の説明は、第1ブロック体7A及び第1ガス噴射弁5Aに関する説明と実質的に同じである。
【0080】
(2)ブロック体7及びガス噴射弁5の具体的構成
図7は、図5のA-A断面図であり、図8は、ガス噴射弁5の構成を例示する縦断面図である。また、図9は、図7の囲み部XIを拡大して示す図であり、図12は、図7のB-B断面図である。その他、図10は、ブロック体7の構成を例示する斜視図であり、図11は、ブロック体7の構成を例示する縦断面図である。
【0081】
図7及び図8に示すように、ガス噴射弁5は、筒状体50と、その筒状体50に収容される弁軸54と、を備えている。このガス噴射弁5は、弁軸54をバネ力に抗して開弁させることで、その先端に設けた噴射口5aから水素ガスを噴射するように構成されている。
【0082】
なお、以下の説明においては、ピストン軸Opを基準とした種々の定義に代えて、図6図8に例示される弁軸54の中心軸(以下、「バルブ軸」ともいう)Ovに沿う方向を「バルブ軸方向」又は単に「軸方向」と呼称する。そして、このバルブ軸Ovから放射状に延びる方向を「径方向」とし、バルブ軸Ovを中心とした時計回り方向および反時計回り方向を「周方向」とする。
【0083】
径方向は、前述のバルブ軸方向に直交する。また、径方向においてバルブ軸Ovに近接する一側を「内側」とし、バルブ軸Ovから離間する他側を「外側」とする場合もある。
【0084】
その他、バルブ軸方向におけるガス噴射弁5の先端側(同方向における噴射口5a側であって、図7及び図8の紙面下側)を単に「先端側」とし、バルブ軸方向におけるガス噴射弁5の基端側(同方向における噴射口5aの反対側であって、図7及び図8の紙面上側)を単に「基端側」とする場合もある。
【0085】
具体的に、本実施形態に係るガス噴射弁5は、前述の筒状体50及び弁軸54に加え、付勢部材55と、油室56と、第1内部流路57と、を備えている。
【0086】
このうち、筒状体50は、バルブ軸方向の基端側から順に、付勢部材55を収容するための第1ボディ部51と、弁軸54を収容するための第2ボディ部52と、噴射口5aが設けられた第3ボディ部53と、を有している。
【0087】
図7に示すように、第1ボディ部51は、その基端側を有底面とし、その先端側を開口端とした有底筒状に形成されており、圧縮コイルバネ等からなる付勢部材55を収容している。付勢部材55は、図7に示すように弁軸54の基端部を押圧しており、これをバルブ軸方向の先端側に向かって付勢している。
【0088】
また、図6に戻ると、第1ボディ部51の基端部は、部分的に拡径させたフランジ部51aを構成している。このフランジ部51aには、同図に示すように、ボルト等からなる第1締結具81が挿入されるようになっている。第1締結具81の挿入方向は、バルブ軸方向と平行になるように設定されている。
【0089】
図7及び図8に示すように、第3ボディ部53は、その基端側を開口させた略筒状に形成されている。その略筒状の中空部は、バルブ軸方向に沿って延びる第2内部流路53aを構成している。第2内部流路53aは、弁軸54の先端によって開閉される。第2内部流路53aの下流端部(先端部)には、前述の噴射口5aが接続されている。
【0090】
第3ボディ部53は、本実施形態では挿入穴154に埋没するようレイアウトされる。この挿入穴154は、シリンダカバー15、特にその半円部151を貫通する貫通孔が形成されており、その貫通孔を通じて、噴射口5aを燃焼室17内に露出させるようになっている。
【0091】
図7及び図8に示すように、第2ボディ部52は、その先端側と基端側を開口させた略筒状に形成されている。その略筒状の中空部には、弁軸54が挿入されている。
【0092】
ここで、第2ボディ部52の基端側の開口部には、第1ボディ部51の先端部が取り付けられている。この取り付けによって、弁軸54の基端部が、付勢部材55の先端によって押圧されるようになる。
【0093】
また、第2ボディ部52の先端側の開口部には、第3ボディ部53の基端部が挿入されている。この挿入によって、第2内部流路53aの上流端部(基端部)に対し、弁軸54の先端が当接又は離間することになる。
【0094】
また、第2ボディ部52の中空部(弁軸54が挿入される中空部)においては、そのバルブ軸方向における一部の部位が、弁軸54の外周面よりも拡径されている。この拡径部の内周面と、弁軸54の外周面とによって、作動油が供給される油室56が区画されている。油室56内の油圧を上昇させることで、弁軸54の拡径部に作用する力を利用して弁軸54を上方へ移動させる。弁軸54を上方へ移動させることで、第2内部流路53aを開放することができる。
【0095】
また、第2ボディ部52は、その先端側部分を挿入穴154に埋没させるとともに、その基端側部分を挿入穴154から露出させてブロック体7に挿通させるように構成されている。ガス噴射弁5における前述の第1内部流路57は、第2ボディ部52の先端側及び基端側部分のうち、後者の基端側部分の外周面に開口している。
【0096】
詳しくは、第1内部流路57は、ガス噴射弁5の外周面(特に、第2ボディ部52における前記基端側部分の外周面)に開口しているとともに、第2ガス供給路33を噴射口5aに接続するように構成されている。なお、ここでいう外周面とは、バルブ軸方向に直交する端面ではなく、バルブ軸方向に沿って延びる側面をいう。ガス噴射弁5の外周面は、径方向の外側に面している。
【0097】
さらに詳しくは、第2ボディ部52の外周面は、バルブ軸方向の先端側から順に、第1外周面52aと、第3外周面52cと、第2外周面52bと、を有している。第1外周面52aは、バルブ軸方向に沿って延びている。第2外周面52bは、第1外周面52aよりも基端側に配置されており、該第1外周面52aよりも大径かつバルブ軸方向に沿って延びている。第3外周面52cは、バルブ軸方向において第1外周面52aと第2外周面52bとの間に配置されている。第3外周面52cは、第1外周面52aと第2外周面52bを接続する段差又は斜面(図例では斜面)によって構成されている。
【0098】
第1外周面52aは、円形の横断面を有しており、その先端側部分(図8の区間Lt)を挿入穴154に埋没させるとともに、その基端側部分(図8の区間Lp)を挿入穴154から露出させてブロック体7に挿通させるように構成されている。
【0099】
また、第1外周面52aにおける前述の先端側部分には、図8に示すように、第1の窪み部50aと、第2の窪み部50bと、が設けられている。第1の窪み部50aは、周方向の全域にわたって延びる溝状に形成されている。第2の窪み部50bは、第1の窪み部50aよりも基端側に配置されており、周方向の全域にわたって延びる溝状に形成されている。
【0100】
第2外周面52bは、第1外周面52aよりも大径(前記径方向における寸法が大きい)の円形の横断面を有しており、その先端から基端にかけての全体を挿入穴154から露出させてブロック体7に挿通させるように構成されている。
【0101】
また、第2外周面52bには、図8に示すように、第3の窪み部50cと、第4の窪み部50dと、が設けられている。第3の窪み部50cは、周方向に延びかつ第1及び第2の窪み部50a,50bよりも大径の溝状に形成されている。第4の窪み部50dは、第3の窪み部50cよりも基端側に配置されており、周方向に延びかつ第3の窪み部50cと同径の溝状に形成されている。
【0102】
第3外周面52cは、基端側から先端側に向かうにつれて徐々に縮径させた円形の横断面を有しており、その先端から基端にかけての全体を挿入穴154から露出させてブロック体7の内側に配置させるように構成されている。
【0103】
また、図8に示すように、第1内部流路57の上流端部は、第1外周面52aと第3外周面52cとの境界部に開口している。本実施形態では、第1内部流路57は、第1外周面52aの基端部(紙面上端部)に開口している。また、第1内部流路57の上流端部は、第1外周面52aに対して垂直に開口している。また、第1内部流路57は、図12に示すように、周方向に沿って略90度おきに設けられている。
【0104】
詳しくは、第1内部流路57は、上流側から順に、上流側通路57aと、下流側通路57bと、を有している。上流側通路57aは、第1外周面52aの基端部(紙面上端部)に開口しており、その基端部から径方向の内側に向かって延びている。上流側通路57aは、第1内部流路57の上流端部を含んでいる。下流側通路57bは、上流側通路57aから連続して延びており、第2内部流路53aに向かって斜めに延びている。
【0105】
また、図8等に示すように、ガス噴射弁5の外周面には、4つのシール部材61~64が装着されている。具体的に、4つのシール部材61~64は、ガス噴射弁5の先端側から基端側に向かって順に、第1外周面52aに装着される第1シール部材61及び第2シール部材62と、第2外周面52bに装着される第3シール部材63及び第4シール部材64と、によって構成されている。
【0106】
詳しくは、第1の窪み部50aには第1シール部材61が装着され、第2の窪み部50bには第2シール部材62が装着され、第3の窪み部50cには第3シール部材63が装着され、第4の窪み部50dには第4シール部材64が装着されるようになっている。第1シール部材61~第4シール部材64は、いずれも、周方向に延びるOリングによって構成されている。
【0107】
一方、図10等に示すように、ブロック体7は、略直方状に形成された直方部70を備えている。このブロック体7には、対応するガス噴射弁5が挿通される挿通孔74が設けられている。ブロック体7の直方部70は、本実施形態では中実の鋼材(例えば鍛鋼材)によって構成されている。
【0108】
詳しくは、本実施形態に係る直方部70は、略前方に面する前面70fと、略後方に面する後面70bと、略左方に面する左面70lと、略右方に面する右面70rと、略上方に面する上面70tと、略下方に面する下面70uと、を有している。
【0109】
そして、ブロック体7に設けられた挿通孔74は、上面70tから下面70uに至る貫通孔として形成されており、前面70f、後面70b、左面70l及び右面70rによって側方から包囲されている。
【0110】
具体的に、挿通孔74の内周面は、図9等の各図に示すように、バルブ軸方向の先端側から順に、第1内周面74aと、第3内周面74cと、第2内周面74bと、を有している。第1内周面74aは、バルブ軸方向に沿って延びかつガス噴射弁5の第1外周面52aに内接する。第2内周面74bは、第1内周面74aと同様にバルブ軸方向に沿って延びている。第2内周面74bはまた、第1内周面74aよりも基端側に配置されており、該第1内周面74aよりも大径かつ第2外周面52bに内接する。第3内周面74cは、バルブ軸方向において第1内周面74aと第2内周面74bとの間に配置されている。第3内周面74cは、第1内周面74aと第2内周面74bを接続する段差又は斜面(図例では斜面)によって構成されている。挿通孔74の内周面は、径方向の内側に面している。
【0111】
また、図9及び図10に示すように、第1内周面74aには、該第1内周面74aに沿って周方向に延びる第1溝部77が設けられている。軸方向における第1溝部77の寸法は、少なくとも、第1の窪み部50aと第2の窪み部50bとの間隔(言い換えると、第1シール部材61と第2シール部材62との間隔)よりも狭い。
【0112】
また、図9及び図10に示すように、第2内周面74bには、該第2内周面74bに沿って周方向に延びる第2溝部78が設けられている。軸方向における第2溝部78の寸法は、少なくとも、第3の窪み部50cと第4の窪み部50dとの間隔(言い換えると、第3シール部材63と第4シール部材64との間隔)よりも狭い。
【0113】
また、ブロック体7の下面70uは、シリンダカバー15の上面、特に前述の第1又は第2取付面153A,153Bに取り付けられるようになっている。前述した第2ガス供給路33は、この下面70uと、同じブロック体7の挿通孔74とに開口している。
【0114】
すなわち、本実施形態に係る第2ガス供給路33は、ブロック体7の下面70uに開口する上流端部33aと、挿通孔74の内周面(特に、第2内周面74bと第3内周面74cとの境界部)に開口する下流端部33bと、を有している。そして、第2ガス供給路33の少なくとも一部は、上流端部33a側から下流端部33bに向かって、バルブ軸方向に対して斜めに延びている。
【0115】
特に本実施形態では、上流端部33aは、径方向(図11の紙面左右方向)において、下流端部33bよりも外側に配置されている。詳細には、上流端部33aは、図11に示すように、径方向において、挿通孔74及び下流端部33bよりも外側、かつ第2締結孔73よりも内側の下面70uに開口している。
【0116】
また、下流端部33bは、ブロック体7の内周面のうち、第2又は第3内周面74b,74cに開口している。詳細には、下流端部33bは、第2内周面74bと第3内周面74cとの境界部に開口している。本実施形態では、下流端部33bは、第2内周面74bの先端部(紙面下端部)に開口している。また、下流端部33b、第2内周面74bに対して斜めに開口している。
【0117】
さらに詳細には、第2ガス供給路33は、その上流端部33aから高さ方向において上方に向かって延びる第1部分75と、第1部分75から連続し、同上方に向かうにしたがって、径方向の内側に向かって斜めに延びて下流端部33bに至る第2部分76と、を有する。なお、ここでいう「高さ方向」とは、図3図6等に示した上下方向をいう。本実施形態における「上方」とは、バルブ軸方向の基端側に向かう方向と略一致する。
【0118】
そして、図11に示すように、水素ガスの流れ方向における第2部分76の寸法L2は、該流れ方向における第1部分75の寸法L1よりも長くなっている。なお、ここでいう「水素ガスの流れ方向」とは、第2ガス供給路33の上流端部33aから下流端部33bに向かって水素ガスが流れる方向をいう。本実施形態では、この流れ方向は、第1部分75と第2部分76の境界部で折れ曲がっている。
【0119】
また、図10図12に示すように、ブロック体7は、その直方部70の上面70uに、2つ1組の第1締結孔72と、上面70tの4隅に配置された第2締結孔73と、を有している。
【0120】
第1締結孔72は、ブロック体7にガス噴射弁5を締結するための締結孔であって、前述の第1締結具81が挿入されるようになっている。第1締結孔72は、ブロック体7を厚み方向に貫通しない。すなわち、第1締結孔72の内底部は、図10及び図11に示すようにブロック体7の内部に区画されている。
【0121】
第2締結孔73は、ブロック体7をシリンダカバー15の上面15aに締結するための締結孔であって、ボルト等からなる第2締結具82が挿入されるようになっている。第2締結孔73は、ブロック体7を厚み方向に貫通している。すなわち、第2締結孔73の内底部は、図示は省略するがシリンダカバー15の内部に区画されている。
【0122】
図10に示すように、第2締結孔73は、第1締結孔72よりも径方向の外側に配置されている。そして、第1及び第2締結孔73は、いずれも、バルブ軸方向に沿って延びている。第1締結孔72及び第1締結具81によってガス噴射弁5がブロック体7に締結されるとともに、第2締結孔73及び第2締結具82によってブロック体7がシリンダカバー15に締結されるようになっている。
【0123】
そして、図9に示すように、ガス噴射弁5をブロック体7に締結した状態においては、ガス噴射弁5の第3外周面52cと、ブロック体7の第3内周面74cとは、軸方向又は径方向(図例では軸方向)において隙間を存して向かい合うようになっている。図9及び図12に示すように、この隙間が、ガス噴射弁5の中心軸Ovまわりの周方向に水素ガスを流通させる第1スペースS1を区画している。
【0124】
より詳細には、第1スペースS1は、図9に示すように、第1外周面52aの基端部(紙面上端部)と、第3外周面52cと、第2内周面74bの先端部(紙面下端部)と、第3内周面74cと、によって包囲されており、図12に示すようなリング状の空間を構成している。
【0125】
前述のように、第1内部流路57は、第1外周面52aの基端部に開口している。つまり、ガス導入路としての第1内部流路57は、第1スペースS1に連通するように開口していることになる(図12参照)。同様に、第2ガス供給路33は、前述のように第2内周面74bの先端部に開口している。つまり、第2ガス供給路33も、第1スペースS1に連通するように開口していることになる(図9参照)。
【0126】
第1スペースS1は、第2ガス供給路33とガス噴射弁5との接続部、所謂“ガス溜まり”として機能するようになっている。本実施形態に係るシール部材62,63は、接続部としての第1スペースS1に設けられており、その第1スペースS1を通じたガスのリークを抑制するように、少なくとも第1外周面52aに設けられている。
【0127】
本実施形態では、前述した第1シール部材61~第4シール部材64のうち、第2シール部材62及び第3シール部材63が第1スペースS1を直にシールするためのシール部材に相当し、第1シール部材61及び第4シール部材64が、第1スペースS1を二重にシールするためのシール部材に相当する。
【0128】
前述のように、第1シール部材61と第2シール部材62とが第1外周面52aに設けられており、第3シール部材63と第4シール部材64とが第2外周面52bに設けられている。軸方向の先端側及び基端側の双方で二重シール構造を実現すべく、第1内部流路57の上流端部(開口部)は、図8等に示すように、軸方向において第2シール部材62と第3シール部材63との間に配置されている。
【0129】
また、挿通孔74の内周面と、ガス噴射弁5の外周面との間には、第1スペースS1からリークした水素ガスを流入させて、それを外部に排出するための第2スペースS2と、第3スペースS3と、がさらに区画されている。第1スペースS1、第2スペースS2及び第3スペースS3は、いずれも、周方向に延びるリング状のスペースとして区画されている。
【0130】
第2スペースS2は、第1内周面74aの第1溝部77と、該第1溝部77に向かい合う第1外周面52aと、の間に区画されている。第2スペースS2は、第1スペースS1よりも先端側に位置するともに、第1スペースS1からリークした水素ガスを流入させるものである。第2スペースS2に流入した水素ガスは、ガス噴射弁5の内部に区画した流路、不図示の配管類等を介して排出される。
【0131】
第3スペースS3は、第2内周面74bの第2溝部78と、該第2溝部78に向かい合う第2外周面52bと、の間に区画されている。第3スペースS3は、第1スペースS1よりも基端側に位置するともに、第1スペースS1からリークした水素ガスを流入させるものである。第3スペースS3に流入した水素ガスは、ガス噴射弁5の内部に区画した流路、不図示の配管類等を介して排出される。
【0132】
前述した第1シール部材61~第4シール部材64は、第1スペースS1に関する2重シール構造を構成するのに加えて、第2スペースS2及び第3スペースS3をシールする機能を持ち合わせている。
【0133】
具体的に、第1シール部材61は、第2スペースS2に対して先端側に位置するとともに、第1外周面52aと第1内周面74aとの間に挟持されるように、第1外周面52aに装着される。
【0134】
また、第2シール部材62は、第2スペースS2に対して基端側に位置するとともに、第1外周面52aと第1内周面74aとの間に挟持されるように、第1外周面52aに装着される。
【0135】
また、第3シール部材63は、第3スペースS3に対して先端側に位置するとともに、第2外周面52bと第2内周面74bとの間に挟持されるように、第2外周面52bに装着される。
【0136】
また、第4シール部材64は、第3スペースS3に対して基端側に位置するとともに、第2外周面52bと第2内周面74bとの間に挟持されるように、第2外周面52bに装着される。
【0137】
第1シール部材61と第2シール部材62は、第1スペースS1に加えて、第2スペースS2をシールする。第3シール部材63と第4シール部材64は、第1スペースS1に加えて、第3スペースS3をシールする。
【0138】
その他、ブロック体7の下面70u、特に第2ガス供給路33の上流端部33a周辺の下面70uには、図10及び図11に示すような第1環状溝791及び第2環状溝792が設けられている。
【0139】
第1環状溝791と、シリンダカバー15の上面15a、特に第1又は第2取付面153A,153Bとの間には、Oリング等からなる第5シール部材65が挟持されるようになっている(第5シール部材65については、図7及び図9を参照)。同様に、第2環状溝792と、シリンダカバー15の上面15a、特に第1又は第2取付面153A,153Bとの間には、Oリング等からなる第6シール部材66が挟持されるようになっている(第6シール部材66については、図7及び図9を参照)。第5及び第6シール部材65,66によって、ブロック体7とシリンダカバー15の上面15aとの間をシールすることができる。具体的に、第1環状溝791に第5シール部材65を装着することで、前記下面70uに開口した前記上流端部33aがシールされる。同様に、第2環状溝792に第6シール部材66を装着することで、前記上流端部33aと、該上流端部33aと同様に前記下面70uに開口した挿通孔77とがシールされる。これらのシール部材65,66は、シリンダカバー15の上面に配置されることから、シリンダカバー15の内部に配置されるようなシール部材と比較して、熱によるダメージを抑制する上で有利になる。
【0140】
(3)ブロック体7の意義
以上説明したように、本実施形態によると、ガス噴射弁5は、シリンダカバー15内に区画された第1ガス供給路32と直に接続されるのではなく、シリンダカバー15とは別体のブロック体7を介して間接的に接続されるようになっている(図3図7及び図9等を参照)。
【0141】
そのように接続したことで、シリンダカバー15内にシール部材を設けずとも、ブロック体7とガス噴射弁5との接続部(第2ガス供給路33とガス噴射弁5との接続部)S1に、第1シール部材61~第4シール部材64を設けることが可能になる。
【0142】
ここで、ブロック体7は、シリンダカバー15の上面に配置されていることから、シリンダカバー15内にシール部材を設けるような構成と比較して、第1シール部材61~第4シール部材64を燃焼室17から遠ざけることができる。したがって、第1シール部材61~第4シール部材64を燃焼室17から遠ざけた分、第1シール部材61~第4シール部材64への熱によるダメージを抑制することが可能になる。
【0143】
こうして、本実施形態によれば、シリンダカバー15内に第1ガス供給路32を設けつつも、第1シール部材61~第4シール部材64への熱によるダメージを抑制することが可能になる。
【0144】
仮に、図9等に示した第3外周面52c及び第3内周面74cを設けずに、第1外周面52aと第2外周面52bを同径とし、第1内周面74aと第2内周面74bを同径としたような構成を考える。このような構成を採用すると、ブロック体7へのガス噴射弁5の挿入に際し、そのガス噴射弁5の第1外周面52aに装着されたシール部材(例えば、第1及び第2シール部材61,62)は、第2内周面74b及び第1内周面74aの両方と擦れることになる。この場合、摩耗による第1及び第2シール部材61,62へのダメージが懸念される。
【0145】
これに対し、本実施形態によれば、第2内周面74bは、図11に示すように、第1内周面74aよりも大径とされている。したがって、ブロック体7へのガス噴射弁5の挿入に際し、そのガス噴射弁5の第1外周面52aに装着されたシール部材と、第2内周面74bとの接触を抑制することができる。これにより、当該接触による第1及び第2シール部材61,62へのダメージを抑制することができる。また、第2内周面74bの大径化に併せて、第2外周面52bを第1外周面52aよりも大径とすることで、挿通孔74の内周面と、ガス噴射弁5の外周面との接触を保持することができる。このことは、水素ガスのリークの抑制に資する。
【0146】
また、第3外周面52cと第3内周面74cとを用いて第1スペースS1を区画することで、ガス噴射弁5の外周面に溝等を新設せずとも、周方向にガス燃料を流通させるガス溜まりを構成することができる。通常、そうした溝の作成にはぬすみ加工が必要とされるところ、これを不要としたことで、ぬすみ加工をするための特殊工具も不要となる。これにより、エンジン1の加工性を高めることができる。
【0147】
すなわち、本実施形態に係る第3外周面52c及び第3内周面74cは、水素ガスのリークの抑制と、第1及び第2シール部材61,62へのダメージの抑制と、周方向への水素ガスの流通と、ブロック体7の加工性の向上と、を同時に成立させることができる。
【0148】
また、図8及び図9に示したように、バルブ軸方向における第1スペースS1の両側には、第2シール部材62及び第3シール部材63が配置され、そのさらなる両側には、第1シール部材61及び第4シール部材64が配置されるようになっている。このようにレイアウトすることで、4つのシール部材61,62,63,64による第1スペースS1に対する二重シール構造を実現することができる。
【0149】
また、第1及び第2シール部材61,62の間に第2スペースS2を区画するとともに、第3及び第4シール部材63,64の間に第3スペースS3を区画することで、第1スペースS1に対する二重シール構造に加えて、第2スペースS2及び第3スペースS3をそれぞれシールするためのシール構造を同時に実現することができる。
【0150】
仮に、図9等に示した第3外周面52c及び第3内周面74cを設けずに、第1外周面52aと第2外周面52bを同径とし、第1内周面74aと第2内周面74bを同径としたような構成を考える。このような構成を採用すると、ブロック体7へのガス噴射弁5の挿入に際し、そのガス噴射弁5の第1外周面52aに装着された第1及び第2シール部材61,62は、第2内周面74b及び第1内周面74aの両方と擦れることになる。この場合、第1及び第2シール部材61,62と第2内周面74bとが擦れる際に、それら第1及び第2シール部材61,62と、第2内周面74bに設けられた第2溝部78との擦れが取り分け懸念される。
【0151】
これに対し、本実施形態によれば、ブロック体7へのガス噴射弁5の挿入に際し、そのガス噴射弁5の第1外周面52aに装着された第1及び第2シール部材61,62と、第2内周面74b、ひいては第2内周面74bに設けた第2溝部78との接触を抑制することができる。これにより、当該接触による第1及び第2シール部材61,62へのダメージを抑制する上で有利になる。
【0152】
また、図8等に示すように、第1内部流路57の上流端部(上流側通路57a)を、第2外周面52bに対して垂直に開口させたことで、例えば、この上流端部を斜めに開口させた場合と比較して、その開口面積を可能な限り抑制することができる。この開口面積を抑制することは、バルブ軸方向における第2シール部材62と第3シール部材63との間隔を狭める上で有効である。この間隔を狭めることは、第1スペースS1のボリュームの抑制に資する。そして、第1スペースS1のボリュームの抑制は、当該スペースS1に溜まり得る水素ガスの量を抑制し、安全性のさらなる向上を図る上で有利になる。このように、本実施形態に係るガス噴射弁5は、ガス燃料に水素ガスを用いた場合に適した構造とされている。
【0153】
また、図8及び図9等に示すように、第1内部流路57の上流端部(上流側通路57a)を、第1外周面52aと第3外周面52cとの境界部に開口させたことで、第1外周面52aの先端部(例えば、第2ボディ部52と第3ボディ部53との境界部)に開口させるような構成と比べて、バルブ軸方向における第2シール部材62と第3シール部材63との間隔を狭めることができる。そのことで、第1スペースS1のボリュームを抑制し、当該スペースS1に溜まり得る水素ガスの量を抑制することが可能になる。これにより、安全性のさらなる向上を図る上でさらに有利になる。
【0154】
また、中実の鋼材を用いる場合、通常、バルブ軸方向に延びる貫通孔と、それに直交する径方向に延びる貫通孔と、の組み合わせによって第2ガス供給路33を加工することが考えられる。しかしながら、そうした2方向の貫通孔を設けた場合、いわゆる捨て穴が生じることになるため、その捨て穴をシールプラグ等によって閉塞することが求められる。しかしながら、シールプラグを用いることは、水素ガスのリーク、及び、シールプラグによる閉塞部に溜まった水素ガスに起因した水素脆化等を招くため不都合である。
【0155】
これに対し、本実施形態に係る第2ガス供給路33は、図11等に示すように、斜めに延びる第2部分76を有している。これにより、捨て穴、ひいてはシールプラグを用いずとも第2ガス供給路33を構成することが可能になる。このことは、水素ガスのリーク及び水素脆化の抑制に資する。
【0156】
また、図11等に示すように、第2部分76の寸法L2を第1部分75の寸法L1よりも相対的に長くすることで、第2ガス供給路33をより長く斜めに延ばすことができる。第2ガス供給路33をより長く斜めに延ばすことで、該第2ガス供給路33の中途の部位に水素ガスを留めることなく、第2ガス供給路33の下流端部33b、ひいてはガス噴射弁5へと水素ガスをスムースに導くことが可能となる。
【0157】
<他の実施形態>
前記実施形態では、第1内周面74aに第1溝部77が設けられるとともに、第2内周面74bに第2溝部78が設けられるように構成されていたが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、第1内周面74aに向かい合う第1外周面52aに第1溝部77を設けてもよいし、第2内周面74bに向かい合う第2外周面52bに第2溝部78を設けてもよい。
【符号の説明】
【0158】
1 エンジン(ガスエンジン)
14 シリンダライナ
15 シリンダカバー
15a シリンダカバーの上面
16 シリンダ
21 ピストン
3 ガス供給系統
32 第1ガス供給路(ガス供給路)
33 第2ガス供給路(ガス供給路)
33a 上流端部
33b 下流端部
34 ガスゲート弁
5 ガス噴射弁
5A 第1ガス噴射弁
5B 第2ガス噴射弁
5a 噴射口
50 筒状体
50a 第1の窪み部(第1外周面に設けられた窪み部)
50b 第2の窪み部(第1外周面に設けられた窪み部)
50c 第3の窪み部(第2外周面に設けられた窪み部)
50d 第4の窪み部(第2外周面に設けられた窪み部)
51 第1ボディ部
52 第2ボディ部
52a 第1外周面
52b 第2外周面
52c 第3外周面
53 第3ボディ部
57 第1内部流路(ガス導入路)
57a 上流側通路(ガス導入路の上流端部)
61 第1シール部材(シール部材)
62 第2シール部材(シール部材)
63 第3シール部材(シール部材)
64 第4シール部材(シール部材)
7 ブロック体
7A 第1ブロック体
7B 第2ブロック体
70 直方部
70u 下面
72 第1締結孔
73 第2締結孔
74 挿通孔
74a 第1内周面
74b 第2内周面
74c 第3内周面
75 第1部分
76 第2部分
77 第1溝部(第1内周面に設けられた溝)
78 第2溝部(第2内周面に設けられた溝)
L1 第1部分の寸法
L2 第2部分の寸法
Op ピストンの中心軸
Ov ガス噴射弁の中心軸
S1 第1スペース(第2ガス供給路とガス噴射弁との接続部、隙間)
S2 第2スペース
S3 第3スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12