(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024807
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/91 20110101AFI20250214BHJP
【FI】
H01R12/91
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129088
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】新堂 悟
(72)【発明者】
【氏名】上辻 哲平
(72)【発明者】
【氏名】武田 昌樹
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB01
5E223AB26
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223DB08
5E223DB11
5E223DB25
5E223EA02
(57)【要約】
【課題】並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行え、構造の大型化及び複雑化を抑制できる、電気コネクタを提供する。
【解決手段】電気コネクタ1は、固定ハウジング11と、可動ハウジング12と、複数の端子13と、を備える。可動ハウジング12には、開口33が設けられて複数の相手側接続部材101aを受け入れる誘導部31と、誘導部31の内側で並び、相手側接続部材101aがそれぞれ挿入される複数の挿入孔34と、が設けられる。誘導部31の内壁には、幅方向の両端側において、高さ方向に向かうとともに幅方向の外側に向かってテーパ状に広がる第1の傾斜面35が設けられる。幅方向において隣り合う挿入孔34の間には、挿入孔34の入口に向かってテーパ状に延びる第2の傾斜面36が設けられる。第1の傾斜面35は、第2の傾斜面36よりも、幅方向の寸法及び高さ方向の寸法が大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材が挿入されて接続される電気コネクタであって、
基板に対して設置される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対変位可能に装着される可動ハウジングと、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングを変位可能に支持するともに複数の前記相手側接続部材に対してそれぞれ電気的に接続される複数の端子と、を備え、
前記可動ハウジングには、複数の前記相手側接続部材が挿入される開口が設けられて前記開口に挿入された複数の前記相手側接続部材を当該可動ハウジングの内側に受け入れるように誘導する誘導部と、前記誘導部の内側で並んで設けられて前記誘導部で誘導された複数の前記相手側接続部材がそれぞれ挿入される複数の挿入孔と、が設けられ、
前記誘導部の内壁には、複数の前記挿入孔が並ぶ方向である幅方向における両端側において、複数の前記相手側接続部材が当該誘導部に挿入される方向である挿入方向と反対方向である高さ方向に向かうとともに前記幅方向の外側に向かって前記開口までテーパ状に広がって延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第1の傾斜面が設けられ、
前記幅方向において隣り合う前記挿入孔の間には、前記挿入方向に向かうとともに前記相手側接続部材が挿入される前記挿入孔の入口に向かってテーパ状に延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第2の傾斜面が設けられ、
前記第1の傾斜面の前記幅方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記幅方向における寸法よりも大きく、
前記第1の傾斜面の前記高さ方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記高さ方向における寸法よりも大きいことを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気コネクタであって、
前記第1の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、前記第2の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きいことを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気コネクタであって、
前記誘導部の内壁には、前記幅方向と前記高さ方向とに垂直な方向である前後方向における両端側において、前記高さ方向に向かうとともに前記前後方向の外側に向かって前記開口までテーパ状に広がって延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第3の傾斜面が設けられ、
前記第3の傾斜面の前記高さ方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記高さ方向における寸法よりも大きいことを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項4】
2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材が挿入されて接続される電気コネクタであって、
基板に対して設置される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対変位可能に装着される可動ハウジングと、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングを変位可能に支持するとともに複数の前記相手側接続部材に対してそれぞれ電気的に接続される複数の端子と、を備え、
前記可動ハウジングには、複数の前記相手側接続部材が挿入される開口が設けられて前記開口に挿入された複数の前記相手側接続部材を当該可動ハウジングの内側に受け入れるように誘導する誘導部と、前記誘導部の内側で2列に並んで設けられて前記誘導部で誘導された複数の前記相手側接続部材がそれぞれ挿入される複数の挿入孔と、が設けられ、
前記誘導部の内壁には、複数の前記挿入孔が2列に並ぶ方向である幅方向における両端側において、複数の前記相手側接続部材が当該誘導部に挿入される方向である挿入方向と反対方向である高さ方向に向かうとともに前記幅方向の外側に向かって前記開口までテーパ状に広がって延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第1の傾斜面が設けられ、
前記幅方向において隣り合う前記挿入孔の間には、前記挿入方向に向かうとともに前記相手側接続部材が挿入される前記挿入孔の入口に向かってテーパ状に延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第2の傾斜面が設けられ、
前記第1の傾斜面の前記幅方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記幅方向における寸法よりも大きく、
前記第1の傾斜面の前記高さ方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記高さ方向における寸法よりも大きいことを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載の電気コネクタであって、
前記第1の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、前記第2の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きいことを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の電気コネクタであって、
前記誘導部の内壁には、前記幅方向と前記高さ方向とに垂直な方向である前後方向における両端側において、前記高さ方向に向かうとともに前記前後方向の外側に向かって前記開口までテーパ状に広がって延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第3の傾斜面が設けられ、
前記前後方向において隣り合う前記挿入孔の間には、前記挿入方向に向かうとともに前記挿入孔の前記入口に向かってテーパ状に延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第4の傾斜面が設けられ、
前記第3の傾斜面の前記前後方向における寸法は、前記第4の傾斜面の前記前後方向における寸法よりも大きく、
前記第3の傾斜面の前記高さ方向における寸法は、前記第4の傾斜面の前記高さ方向における寸法よりも大きいことを特徴とする、電気コネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載の電気コネクタであって、
前記第3の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記前後方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、前記第4の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記前後方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きいことを特徴とする、電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して設置される固定ハウジングと、固定ハウジングに対して相対変位可能に装着される可動ハウジングと、固定ハウジングに対して可動ハウジングを変位可能に支持する複数の端子と、を備え、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材が挿入されて接続される電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材と、基板とを接続する際には、基板に設置され、複数のピン状の相手側接続部材が挿入されて接続される電気コネクタが用いられている。このような電気コネクタとしては、基板に対して設置される固定ハウジングと、固定ハウジングに対して相対変位可能に装着される可動ハウジングと、固定ハウジングに対して可動ハウジングを変位可能に支持するともに相手側接続部材に対して電気的に接続される複数の端子と、を備えたものが用いられる。このような電気コネクタにおいては、固定ハウジングに対して可動ハウジングが相対変位可能に支持されるため、基板と相手側接続部材との間での位置ずれを吸収することができる。例えば、基板に対して電気コネクタを介して相手側接続部材が接続された状態で、基板側の振動が発生した場合であっても、基板と相手側接続部材との間において、基板に発生した振動を端子で吸収し、相手側接続部材への振動の伝達を抑制することができる。このような電気コネクタとして、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された電気コネクタは、基板Pに設置される固定ハウジング4と、固定ハウジング4に対して相対変位可能に装着される可動ハウジング5と、固定ハウジング4に対して可動ハウジング5を支持するとともにピン状の相手側接続部材である複数のピン端子Tとそれぞれ電気的に接続される複数の端子3とを備えて構成されている。
【0004】
特許文献2に開示された電気コネクタは、基板24bに設置される固定ハウジング31と、固定ハウジング31に対して相対変位可能に装着される可動ハウジング32と、固定ハウジング31に対して可動ハウジング32を支持するとともにピン状の相手側接続部材である複数のピン端子12とそれぞれ電気的に接続される複数のコネクタ端子33とを備えて構成されている。なお、並んで配置される複数のピン端子12は、外部接続ケース11に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-160698号公報
【特許文献2】特開2019-207747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された電気コネクタに対して、並んで配置された複数のピン端子Tが接続される際には、複数のピン端子Tが、可動ハウジング5に設けられた複数の挿入口26にそれぞれ挿入される。複数のピン端子Tが、可動ハウジング5における複数の挿入口26にそれぞれ挿入されると、各ピン端子Tが挿入口26の内側に配置された各端子3と電気的に接続される。しかし、並んで配置された複数のピン端子Tが、可動ハウジング5における複数の挿入口26に対してずれた位置で可動ハウジング5に対して挿入されると、ピン端子Tを可動ハウジング5の挿入口26に適切に挿入することが困難になってしまう。この場合、ピン端子Tが、可動ハウジング5において隣り合う挿入口26の間の隔壁24や、可動ハウジング5における複数の挿入口26の両側の横壁22、22に対して当接してしまい、複数のピン端子Tを複数の挿入口26にそれぞれ適切に挿入することが困難になってしまうという問題がある。
【0007】
特許文献2に開示された電気コネクタに対して、並んで配置された複数のピン端子12が接続される際には、複数のピン端子12が、可動ハウジング32に設けられた複数の挿入口39にそれぞれ挿入される。複数のピン端子12が、可動ハウジング32における複数の挿入口39にそれぞれ挿入されると、各ピン端子12が挿入口39の内側に配置された各コネクタ端子33と電気的に接続される。特許文献2に開示された構成においては、並んで配置された複数のピン端子12が、可動ハウジング32における複数の挿入口39に対してずれた位置で可動ハウジング32に対して挿入される場合に、複数のピン端子12の可動ハウジング32への挿入方向をガイドするためのガイド機構が設けられている。ガイド機構は、電気コネクタの可動ハウジング32と、並んで配置される複数のピン端子12を保持する外部接続ケース11とにおいて設けられている。外部接続ケース11には、ガイド機構として、複数のピン端子12の両側において、可動ハウジング32への挿入方向に向かって大きく突出したガイド突起15が設けられている。可動ハウジング32には、複数の挿入口39の両側で大きく張り出すとともにガイド突起15をガイドする面が形成された構造が設けられている。このため、特許文献2に開示された構成では、電気コネクタ及び電気コネクタに接続される相手側の構造の大型化と複雑化とを招いてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができ、構造の大型化及び複雑化を招いてしまうことも抑制できる、電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための本発明のある局面に係る電気コネクタは、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材が挿入されて接続される電気コネクタに関する。そして、本発明のある局面に係る電気コネクタは、基板に対して設置される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対変位可能に装着される可動ハウジングと、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングを変位可能に支持するともに複数の前記相手側接続部材に対してそれぞれ電気的に接続される複数の端子と、を備え、前記可動ハウジングには、複数の前記相手側接続部材が挿入される開口が設けられて前記開口に挿入された複数の前記相手側接続部材を当該可動ハウジングの内側に受け入れるように誘導する誘導部と、前記誘導部の内側で並んで設けられて前記誘導部で誘導された複数の前記相手側接続部材がそれぞれ挿入される複数の挿入孔と、が設けられ、前記誘導部の内壁には、複数の前記挿入孔が並ぶ方向である幅方向における両端側において、複数の前記相手側接続部材が当該誘導部に挿入される方向である挿入方向と反対方向である高さ方向に向かうとともに前記幅方向の外側に向かって前記開口までテーパ状に広がって延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第1の傾斜面が設けられ、前記幅方向において隣り合う前記挿入孔の間には、前記挿入方向に向かうとともに前記相手側接続部材が挿入される前記挿入孔の入口に向かってテーパ状に延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第2の傾斜面が設けられ、
前記第1の傾斜面の前記幅方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記幅方向における寸法よりも大きく、前記第1の傾斜面の前記高さ方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記高さ方向における寸法よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
この構成によると、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材と電気コネクタが接続される際には、複数の相手側接続部材が、可動ハウジングの誘導部の開口に挿入される。可動ハウジングの誘導部の開口に挿入された複数の相手側接続部材は、挿入位置がずれていない状態で開口に挿入された場合は、誘導部の内側の複数の挿入孔にそれぞれ挿入される。そして、複数の挿入孔にそれぞれ挿入された複数の相手側接続部材は、複数の端子とそれぞれ電気的に接続される。一方、可動ハウジングの誘導部の開口に挿入された複数の相手側接続部材が、挿入位置が幅方向にずれた状態で開口に挿入された場合は、複数の相手側接続部材のうちの幅方向の両端側のうちの一方側の相手側接続部材の先端部が、誘導部の内壁における幅方向の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面に対して当接する。なお、誘導部の内壁の幅方向の両端側において高さ方向に向かって且つ幅方向の外側に向かって傾斜して設けられた第1の傾斜面は、隣り合う挿入孔間において挿入孔の入口に向かって傾斜した第2の傾斜面よりも、高さ方向の寸法が大きく、且つ、幅方向の寸法が大きく設定されている。このため、並んで配置された複数の相手側接続部材が、幅方向にずれた状態で誘導部の開口に挿入された場合は、複数の相手側接続部材の先端部が複数の挿入孔へと至る第2の傾斜面に当接するよりも先に、複数の相手側接続部材のうちの幅方向の両端側のうちの一方側の相手側接続部材の先端部が、誘導部の内壁における幅方向の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面に対して当接する。そして、幅方向の両端側のうちの一方側の相手側接続部材が、第1の傾斜面に沿って摺接しながら開口の内側に挿入される。これにより、並んで配置された複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面に沿って摺接しながら開口に挿入される幅方向の両端側のうちの一方側の相手側接続部材とともに移動して、誘導部の内側へと第1の傾斜面によって誘導されながら挿入される。複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されると、続いて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。したがって、複数の相手側接続部材が、挿入位置が幅方向にずれた状態で可動ハウジングに挿入される場合であっても、複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入され、複数の挿入孔へと適切に挿入される。よって、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を電気コネクタに挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。また、上記の構成によると、可動ハウジングにおいて、開口を設けた誘導部の幅方向の両端側に第1の傾斜面を設けた簡素な構造で、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を電気コネクタに挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。このため、電気コネクタ及び電気コネクタに接続される相手側の構造の大型化と複雑化とを招いてしまうことを抑制することができる。
【0011】
以上のとおり、上記の構成によると、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができ、構造の大型化及び複雑化を招いてしまうことも抑制できる、電気コネクタを提供できる。
【0012】
(2)前記第1の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、前記第2の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きくてもよい。
【0013】
第1の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第2の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさと同じである場合は、複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されて第2の傾斜面と同じ高さ位置に達すると、続いて、第1の傾斜面と第2の傾斜面とに沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。これに対し、上記の構成によると、第1の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第2の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きく設定される。これにより、複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されて第2の傾斜面と同じ高さ位置に達しても、第2の傾斜面にほぼ摺接することなく、引き続き、第1の傾斜面に沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。こうして、可動ハウジングの開口に挿入された複数の相手側接続部材は、第2の傾斜面にもほぼ摺接することなく、第1の傾斜面に沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。このため、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を適切に挿入して接続する作業を更に円滑に容易に行うことができる。
【0014】
(3)前記誘導部の内壁には、前記幅方向と前記高さ方向とに垂直な方向である前後方向における両端側において、前記高さ方向に向かうとともに前記前後方向の外側に向かって前記開口までテーパ状に広がって延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第3の傾斜面が設けられ、前記第3の傾斜面の前記高さ方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記高さ方向における寸法よりも大きくてもよい。
【0015】
この構成によると、可動ハウジングの誘導部の開口に挿入された複数の相手側接続部材が、挿入位置が前後方向にずれた状態で開口に挿入された場合は、複数の相手側接続部材の先端部が、誘導部の内壁における前後方向の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面に対して当接する。なお、誘導部の内壁の前後方向の両端側において高さ方向に向かって且つ前後方向の外側に向かって傾斜して設けられた第3の傾斜面は、隣り合う挿入孔間において挿入孔の入口に向かって傾斜した第2の傾斜面よりも、高さ方向の寸法が大きく設定されている。このため、並んで配置された複数の相手側接続部材が、前後方向にずれた状態で誘導部の開口に挿入された場合は、複数の相手側接続部材の先端部が複数の挿入孔のそれぞれへと至る第2の傾斜面と同じ高さ位置に達するよりも先に、複数の相手側接続部材の先端部が、誘導部の内壁における前後方向の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面に対して当接する。そして、並んで配置された複数の相手側接続部材は、第3の傾斜面に沿って摺接しながら開口の内側に挿入されて、誘導部の内側へと第3の傾斜面によって誘導されながら挿入される。複数の相手側接続部材は、第3の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されると、続いて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。したがって、複数の相手側接続部材が、挿入位置が前後方向にずれた状態で可動ハウジングに挿入される場合であっても、複数の相手側接続部材は、第3の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入され、複数の挿入孔へと適切に挿入される。よって、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を電気コネクタに挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。
【0016】
(4)上記目的を達成するための本発明のある局面に係る電気コネクタは、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材が挿入されて接続される電気コネクタに関する。そして、本発明のある局面に係る電気コネクタは、基板に対して設置される固定ハウジングと、前記固定ハウジングに対して相対変位可能に装着される可動ハウジングと、前記固定ハウジングに対して前記可動ハウジングを変位可能に支持するとともに複数の前記相手側接続部材に対してそれぞれ電気的に接続される複数の端子と、を備え、前記可動ハウジングには、複数の前記相手側接続部材が挿入される開口が設けられて前記開口に挿入された複数の前記相手側接続部材を当該可動ハウジングの内側に受け入れるように誘導する誘導部と、前記誘導部の内側で2列に並んで設けられて前記誘導部で誘導された複数の前記相手側接続部材がそれぞれ挿入される複数の挿入孔と、が設けられ、前記誘導部の内壁には、複数の前記挿入孔が2列に並ぶ方向である幅方向における両端側において、複数の前記相手側接続部材が当該誘導部に挿入される方向である挿入方向と反対方向である高さ方向に向かうとともに前記幅方向の外側に向かって前記開口までテーパ状に広がって延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第1の傾斜面が設けられ、前記幅方向において隣り合う前記挿入孔の間には、前記挿入方向に向かうとともに前記相手側接続部材が挿入される前記挿入孔の入口に向かってテーパ状に延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第2の傾斜面が設けられ、前記第1の傾斜面の前記幅方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記幅方向における寸法よりも大きく、前記第1の傾斜面の前記高さ方向における寸法は、前記第2の傾斜面の前記高さ方向における寸法よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
この構成によると、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材と電気コネクタが接続される際には、複数の相手側接続部材が、可動ハウジングの誘導部の開口に挿入される。可動ハウジングの誘導部の開口に挿入された複数の相手側接続部材は、挿入位置がずれていない状態で開口に挿入された場合は、誘導部の内側の複数の挿入孔にそれぞれ挿入される。そして、複数の挿入孔にそれぞれ挿入された複数の相手側接続部材は、複数の端子とそれぞれ電気的に接続される。一方、可動ハウジングの誘導部の開口に挿入された複数の相手側接続部材が、挿入位置が幅方向にずれた状態で開口に挿入された場合は、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材のうちの幅方向の両端側のうちの一方側の相手側接続部材の先端部が、誘導部の内壁における幅方向の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面に対して当接する。なお、誘導部の内壁の幅方向の両端側において高さ方向に向かって且つ幅方向の外側に向かって傾斜して設けられた第1の傾斜面は、幅方向において隣り合う挿入孔間において挿入孔の入口に向かって傾斜した第2の傾斜面よりも、高さ方向の寸法が大きく、且つ、幅方向の寸法が大きく設定されている。このため、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材が、幅方向にずれた状態で誘導部の開口に挿入された場合は、複数の相手側接続部材の先端部が複数の挿入孔へと至る第2の傾斜面に当接するよりも先に、複数の相手側接続部材のうちの幅方向の両端側のうちの一方側の相手側接続部材の先端部が、誘導部の内壁における幅方向の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面に対して当接する。そして、幅方向の両端側のうちの一方側の相手側接続部材が、第1の傾斜面に沿って摺接しながら開口の内側に挿入される。これにより、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面に沿って摺接しながら開口に挿入される幅方向の両端側のうちの一方側の相手側接続部材とともに移動して、誘導部の内側へと第1の傾斜面によって誘導されながら挿入される。複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されると、続いて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。したがって、複数の相手側接続部材が、挿入位置が幅方向にずれた状態で可動ハウジングに挿入される場合であっても、複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入され、複数の挿入孔へと適切に挿入される。よって、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を電気コネクタに挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。また、上記の構成によると、可動ハウジングにおいて、開口を設けた誘導部の幅方向の両端側に第1の傾斜面を設けた簡素な構造で、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を電気コネクタに挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。このため、電気コネクタ及び電気コネクタに接続される相手側の構造の大型化と複雑化とを招いてしまうことを抑制することができる。
【0018】
以上のとおり、上記の構成によると、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができ、構造の大型化及び複雑化を招いてしまうことも抑制できる、電気コネクタを提供できる。
【0019】
(5)前記第1の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、前記第2の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きくてもよい。
【0020】
第1の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第2の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさと同じである場合は、複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されて第2の傾斜面と同じ高さ位置に達すると、続いて、第1の傾斜面と第2の傾斜面とに沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。これに対し、上記の構成によると、第1の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第2の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と幅方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きく設定される。これにより、複数の相手側接続部材は、第1の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されて第2の傾斜面と同じ高さ位置に達しても、第2の傾斜面にほぼ摺接することなく、引き続き、第1の傾斜面に沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。こうして、可動ハウジングの開口に挿入された複数の相手側接続部材は、第2の傾斜面にもほぼ摺接することなく、第1の傾斜面に沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。このため、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を適切に挿入して接続する作業を更に円滑に容易に行うことができる。
【0021】
(6)前記誘導部の内壁には、前記幅方向と前記高さ方向とに垂直な方向である前後方向における両端側において、前記高さ方向に向かうとともに前記前後方向の外側に向かって前記開口までテーパ状に広がって延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第3の傾斜面が設けられ、前記前後方向において隣り合う前記挿入孔の間には、前記挿入方向に向かうとともに前記挿入口の前記入口に向かってテーパ状に延びるように前記高さ方向に対して傾斜した第4の傾斜面が設けられ、前記第3の傾斜面の前記前後方向における寸法は、前記第4の傾斜面の前記前後方向における寸法よりも大きく、前記第3の傾斜面の前記高さ方向における寸法は、前記第4の傾斜面の前記高さ方向における寸法よりも大きくてもよい。
【0022】
この構成によると、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材が、可動ハウジングの誘導部の開口に対して、挿入位置が前後方向にずれた状態で挿入された場合は、2列に並んだ複数の相手側接続部材のうちの前後方向の一方側の列で並んだ相手側接続部材の先端部が、誘導部の内壁における前後方向の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面に対して当接する。なお、誘導部の内壁の前後方向の両端側において高さ方向に向かって且つ前後方向の外側に向かって傾斜して設けられた第3の傾斜面は、前後方向において隣り合う挿入孔間において挿入孔の入口に向かって傾斜した第4の傾斜面よりも、高さ方向の寸法が大きく、且つ、前後方向の寸法が大きく設定されている。このため、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材が、前後方向にずれた状態で誘導部の開口に挿入された場合は、複数の相手側接続部材の先端部が複数の挿入孔のそれぞれへと至る第4の傾斜面に当接するよりも先に、前後方向の一方側の列で並んだ相手側接続部材の先端部が、誘導部の内壁における前後方向の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面に対して当接する。そして、複数の相手側接続部材が、第3の傾斜面に沿って摺接しながら開口の内側に挿入される。これにより、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材は、第3の傾斜面に沿って摺接しながら開口に挿入される前後方向の一方側の列で並んだ相手側接続部材とともに移動して、誘導部の内側へと第3の傾斜面によって誘導されながら挿入される。複数の相手側接続部材は、第3の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されると、続いて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。したがって、複数の相手側接続部材が、挿入位置が前後方向にずれた状態で可動ハウジングに挿入される場合であっても、複数の相手側接続部材は、第3の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入され、複数の挿入孔へと適切に挿入される。よって、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を電気コネクタに挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。
【0023】
(7)前記第3の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記前後方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、前記第4の傾斜面が前記高さ方向に対して傾斜する方向と前記前後方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きくてもよい。
【0024】
第3の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と前後方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第4の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と前後方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさと同じである場合は、複数の相手側接続部材は、第3の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されて第4の傾斜面と同じ高さ位置に達すると、続いて、第3の傾斜面と第4の傾斜面とに沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。これに対し、上記の構成によると、第3の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と前後方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第4の傾斜面が高さ方向に対して傾斜する方向と前後方向とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きく設定される。これにより、複数の相手側接続部材は、第3の傾斜面の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部の内側に挿入されて第4の傾斜面と同じ高さ位置に達しても、第4の傾斜面にほぼ摺接することなく、引き続き、第3の傾斜面に沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。こうして、可動ハウジングの開口に挿入された複数の相手側接続部材は、第4の傾斜面にもほぼ摺接することなく、第3の傾斜面に沿って誘導されて、複数の挿入孔へとそれぞれ挿入されることになる。このため、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を適切に挿入して接続する作業を更に円滑に容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができ、構造の大型化及び複雑化を招いてしまうことも抑制できる、電気コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電気コネクタを基板及び相手側コネクタとともに示す斜視図である。
【
図4】電気コネクタの斜視図であって、電気コネクタの幅方向に垂直な面での断面を含んだ状態で示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は、電気コネクタの側面図であり、
図5(B)は、電気コネクタの断面図であって
図5(A)のA-A線矢視位置における断面図である。
【
図6】
図6(A)は、電気コネクタの正面図であり、
図6(B)は、電気コネクタの断面図であって
図6(A)のB-B線矢視位置における断面図である。
【
図7】電気コネクタと相手側コネクタとが接続された状態を示す断面図であって、電気コネクタの前後方向に垂直な面での断面図である。
【
図8】電気コネクタと相手側コネクタとが接続された状態を示す断面図であって、電気コネクタの幅方向に垂直な面での断面図である。
【
図9】電気コネクタの固定ハウジングを示す斜視図である。
【
図10】電気コネクタの可動ハウジングを示す斜視図である。
【
図11】
図5(B)の一部を拡大して示す図である。
【
図12】
図6(B)の一部を拡大して示す図である。
【
図14】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入される直前の状態を示す側面図であって、電気コネクタについては固定ハウジングを省略した状態で示す図である。
【
図16】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図14のC-C線矢視位置に対応する位置での断面図である。
【
図17】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図14のC-C線矢視位置に対応する位置での断面図である。
【
図18】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入される直前の状態を示す正面図であって、電気コネクタについては固定ハウジングを省略した状態で示す図である。
【
図20】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図18のD-D線矢視位置に対応する位置での断面図である。
【
図21】本発明の第2実施形態に係る電気コネクタを基板及び相手側コネクタとともに示す斜視図である。
【
図23】電気コネクタの斜視図であって、電気コネクタの幅方向に垂直な面での断面を含んだ状態で示す斜視図である。
【
図24】
図24(A)は、電気コネクタの正面図であり、
図24(B)は、電気コネクタの側面図である。
【
図25】
図24(A)のE-E線矢視位置における断面図である。
【
図26】
図24(B)のF-F線矢視位置における断面図である。
【
図29】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入される直前の状態を示す側面図であって、電気コネクタについては固定ハウジングを省略した状態で示す図である。
【
図31】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図29のG-G線矢視位置に対応する位置での断面図である。
【
図32】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図29のG-G線矢視位置に対応する位置での断面図である。
【
図33】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入される直前の状態を示す正面図であって、電気コネクタについては固定ハウジングを省略して示す図である。
【
図35】相手側コネクタの複数のピン状の相手側接続部材が電気コネクタに対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図33のH-H線矢視位置に対応する位置での断面図である。
【
図36】変形例に係る電気コネクタを基板とともに示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、基板に対して設置される固定ハウジングと、固定ハウジングに対して相対変位可能に装着される可動ハウジングと、固定ハウジングに対して可動ハウジングを変位可能に支持する複数の端子と、を備え、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材が挿入されて接続される電気コネクタとして、種々の用途に広く適用することができるものである。
【0028】
(第1実施形態)
[電気コネクタの概略構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気コネクタ1を基板100及び相手側コネクタ101とともに示す斜視図である。なお、
図1は、電気コネクタ1が基板100に設置されて基板100に対して電気的に接続された状態を示しており、また、相手側コネクタ101が電気コネクタ1に接続されていない状態を示している。
図2は、電気コネクタ1を示す斜視図である。
図3は、電気コネクタ1の分解斜視図である。
図4は、電気コネクタ1の斜視図であって、電気コネクタ1の幅方向に垂直な面での断面を含んだ状態で示す斜視図である。
図5(A)は、電気コネクタ1の側面図であり、
図5(B)は、電気コネクタ1の断面図であって
図5(A)のA-A線矢視位置における断面図である。
図6(A)は、電気コネクタ1の正面図であり、
図6(B)は、電気コネクタ1の断面図であって
図6(A)のB-B線矢視位置における断面図である。
図7は、電気コネクタ1と相手側コネクタ101とが接続された状態を示す断面図であって、電気コネクタ1の前後方向に垂直な面での断面図である。
図8は、電気コネクタ1と相手側コネクタ101とが接続された状態を示す断面図であって、電気コネクタ1の幅方向に垂直な面での断面図である。なお、
図7及び
図8では、電気コネクタ1については断面図を示しており、相手側コネクタ101については一部のみを断面図で示している。
【0029】
図1乃至
図8に示す電気コネクタ1は、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを有する相手側コネクタ101に対して電気的に接続される電気コネクタとして構成されている。そして、電気コネクタ1は、相手側コネクタ101において並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが挿入されて接続される電気コネクタとして構成されている。
【0030】
図1乃至
図8を参照して、電気コネクタ1は、固定ハウジング11と、可動ハウジング12と、複数の端子13と、移動規制部材14と、一対の固定金具15と、を備えて構成されている。固定ハウジング11及び可動ハウジング12は、絶縁性を有する樹脂材料で形成されている。複数の端子13は、導電性を有する金属材料で形成されている。移動規制部材14及び一対の固定金具15は、金属材料で形成されている。固定ハウジング11は、基板100に対して設置されるように構成される。可動ハウジング12は、固定ハウジング11に対して相対変位可能に装着されるように構成される。複数の端子13は、固定ハウジング11に対して可動ハウジング12を変位可能に支持するとともに複数のピン状の相手側接続部材101aに対してそれぞれ電気的に接続されるように構成される。なお、可動ハウジング12は、固定ハウジング11に対して遊嵌状態で挿入されて装着される。そして、固定ハウジング11に可動ハウジング12が遊嵌状態で挿入されて装着された状態で、移動規制部材14が固定ハウジング11に取付けられる。移動規制部材14は、固定ハウジング11に遊嵌状態で挿入されて装着された可動ハウジング12と当接可能に設けられる。そして、移動規制部材14は、可動ハウジング12と当接することで固定ハウジング11に対する可動ハウジング12の変位量を規制するとともに、可動ハウジング12が固定ハウジング11から脱落してしまうことを防止する。
【0031】
電気コネクタ1は、基板100に対して設置されて実装されることで、基板100に対して機械的及び電気的に接続される。なお、電気コネクタ1が基板100に接続される際には、電気コネクタ1における複数の端子13のそれぞれが、基板100に対してはんだ付けされるとともに、電気コネクタ1における一対の固定金具15も基板100に対してはんだ付けされる。また、電気コネクタ1は、基板100に設置された状態で、相手側コネクタ101に対して機械的及び電気的に接続される。電気コネクタ1が基板100に設置された状態で相手側コネクタ101に接続されることで、基板100と相手側コネクタ101とが電気コネクタ1を介して電気的に接続されることになる。
【0032】
電気コネクタ1が設置される基板100については、
図1において、一部のみを切欠き状態で模式的に示しており、電気コネクタ1が設置される部分及びその近傍の部分のみを図示している。電気コネクタ1が設置される基板100は、導電回路パターンが表面に設けられた基板として構成されている。
図1では、基板100における導電回路パターンの図示は省略している。基板100は、例えば、車載用の機器(図示省略)に設けられる基板として用いられる。
【0033】
電気コネクタ1に接続される相手側コネクタ101は、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aと、複数の相手側接続部材101aを保持する相手側ハウジング101bとを有している。なお、
図1では、相手側ハウジング101bについては、その一部のみを切欠き状態で図示している。複数のピン状の相手側接続部材101aは、等間隔で1列に並んで配置された状態で、相手側ハウジング101bに保持されている。相手側コネクタ101は、例えば、基板100が設けられた車載用の機器に電源を供給する電源ユニット(図示省略)に対して接続される。
【0034】
なお、相手側コネクタ101における複数の相手側接続部材101aは、導電性を有する金属材料でピン状に形成されており、本実施形態では、オス型のピン端子として設けられている。電気コネクタ1に対して相手側コネクタ101が接続される際には、相手側コネクタ101において1列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが、電気コネクタ1における可動ハウジング12に対して挿入される。そして、可動ハウジング12に挿入された複数のピン状の相手側接続部材101aは、電気コネクタ1における複数の端子13に対して、可動ハウジング12の内側においてそれぞれ接触する。可動ハウジング12の内側で複数の相手側接続部材101aと複数の端子13とがそれぞれ接触することで、複数の相手側接続部材101aと複数の端子13とがそれぞれ電気的に接続される。このように、電気コネクタ1は、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが挿入されて接続されるように構成されている。
【0035】
以下、電気コネクタ1のさらに詳細な構成について説明する。なお、以下の説明では、
図1乃至
図8及び後述の図面において矢印X1、矢印X2、両端矢印X3、及び両端矢印X4で示すように、電気コネクタ1における挿入方向X1、高さ方向X2、幅方向X3、及び前後方向X4を定義する。挿入方向X1は、電気コネクタ1において、可動ハウジング12に対して複数のピン状の相手側接続部材101aが挿入されて接続される方向として構成される。なお、複数のピン状の相手側接続部材101aは、可動ハウジング12に対して、可動ハウジング12における後述の誘導部31に挿入される。また、挿入方向X1は、固定ハウジング11に対して可動ハウジング12が挿入されて装着される方向としても構成される。高さ方向X2は、挿入方向X1と反対方向として構成される。すなわち、高さ方向X2は、挿入方向X1と平行で逆向きの方向であり、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング12に挿入される方向と逆向きの方向として構成される。幅方向X3は、可動ハウジング12における後述の誘導部31の内側で並んで設けられて複数の相手側接続部材101aがそれぞれ挿入される後述の複数の挿入孔34が並ぶ方向として構成される。なお、可動ハウジング12の誘導部31の内側で複数の挿入孔34が並ぶ方向である幅方向X3は、固定ハウジング11において複数の端子13が列を形成して並ぶピッチ方向としても構成される。前後方向X4は、高さ方向X2と幅方向X3との両方の方向に対して垂直な方向として構成される。すなわち、前後方向X4は、高さ方向X2及び挿入方向X1に対して垂直な方向であるとともに、幅方向X3に対しても垂直な方向として構成される。
【0036】
[固定ハウジング]
図9は、電気コネクタ1の固定ハウジング11を示す斜視図である。
図1乃至
図9に示す固定ハウジング11は、可動ハウジング12が挿入されて装着されるとともに、複数の端子13を保持するように構成されている。更に、固定ハウジング11は、複数の端子13と一対の固定金具15とを介して、基板100に対して設置されるように構成されている。
【0037】
固定ハウジング11は、複数の端子13を保持する端子保持壁21、端子保持壁21と前後方向X4において対向する背面壁22、端子保持壁21及び背面壁22に対して垂直に延びる一対の側壁23及び側壁24とを有している。端子保持壁21と、側壁23と、背面壁22と、側壁24とは、挿入方向X1に垂直な面において矩形の断面を形成するように並び、固定ハウジング11の4つの外周面を構成するように一体に設けられている。このため、固定ハウジング11は、略直方体状の基本外形を有している。
【0038】
端子保持壁21は、固定ハウジング11の前後方向X4における一端側の壁部として設けられ、複数の端子13を保持するように構成されている。端子保持壁21には、複数の端子13のそれぞれにおける後述の固定部39が圧入されることで固定される複数の端子固定部25が設けられている。複数の端子固定部25は、端子保持壁21において、挿入方向X1における端部側に設けられ、幅方向X3に沿って並んで設けられている。複数の端子固定部25のそれぞれは、複数の端子13のそれぞれにおける後述の固定部39が圧入される一対の圧入溝を有している。端子固定部25の一対の圧入溝に端子13の固定部39が圧入されることで、端子13が端子保持壁21に固定された状態で保持される。
【0039】
また、端子保持壁21には、複数のスリット26が設けられている。複数のスリット26は、端子保持壁21において、幅方向X3に沿って並んで設けられており、挿入方向X1と平行な方向において複数の端子固定部25にそれぞれ対応する位置に設けられている。複数のスリット26は、それぞれ、端子保持壁21を前後方向X4と平行な方向に貫通するとともに、挿入方向X1と平行な方向に沿って延びるように設けられている。複数のスリット26のそれぞれには、端子保持壁21に保持された状態の複数の端子13のそれぞれにおける後述の可動バネ部41の一部が配置される。
【0040】
また、
図3乃至
図5、
図6(B)、
図7乃至
図9を参照して、固定ハウジング11においては、端子保持壁21から固定ハウジング11の内側に向かって延びる複数の区画壁27が設けられている。複数の区画壁27は、固定ハウジング11の内側において、幅方向X3に沿って並んで設けられている。また、複数の区画壁27は、固定ハウジング11の内側において、端子保持壁21から前後方向X4と平行な方向に沿って延びて設けられている。複数の区画壁27は、固定ハウジング11内において幅方向X3に沿って並んで配置される複数の端子13の間を区画する内壁として設けられている。即ち、固定ハウジング11内においては、幅方向X3に沿って並んで配置される複数の端子13のうち隣り合って配置される端子13同士の間が、区画壁27によって区画されている。
【0041】
また、
図2乃至
図4、
図6、
図8、
図9を参照して、固定ハウジング11においては、移動規制部材14が取り付けられる一対の取付け溝28が設けられている。一対の取付け溝28は、固定ハウジング11において、幅方向X3の両端側で高さ方向X2における端部に設けられている。一対の取付け溝28に移動規制部材14の幅方向X3の両端部が圧入されて嵌め込まれることで、移動規制部材14が固定ハウジング11に固定されて取り付けられる。なお、移動規制部材14は、平坦な板状の部材として設けられ、固定ハウジング11に遊嵌状態で挿入されて装着された可動ハウジング12の固定ハウジング11に対する変位量を規制するとともに、可動ハウジング12が固定ハウジング11から脱落してしまうことを防止するための部材として設けられる。固定ハウジング11に可動ハウジング12が挿入された状態で、移動規制部材14が固定ハウジング11の取付け溝28に圧入されて固定される。この状態で、移動規制部材14は、可動ハウジング12における後述の凸部32と高さ方向X2において当接するように設けられる。固定ハウジング11に取り付けられた移動規制部材14と、固定ハウジング11に挿入された可動ハウジング12の凸部32とが当接することで、可動ハウジング12の高さ方向X2における変位量が規制され、可動ハウジング12の固定ハウジング11からの脱落が防止される。
【0042】
また、
図3乃至
図9を参照して、固定ハウジング11においては、可動ハウジング12が遊嵌状態で挿入される挿入口29が形成されている。挿入口29は、固定ハウジング11の内側を外部に開放する孔として設けられ、高さ方向X2に向かって開口する孔として設けられている。また、挿入口29は、端子保持壁21から固定ハウジング11の内側に突出する複数の区画壁27と、側壁23と、背面壁22と、側壁24とで囲まれた固定ハウジング11の内側の領域として設けられている。
【0043】
また、
図2、
図3、
図5(A)、
図6を参照して、固定ハウジング11は、側壁23及び側壁24において、固定金具15が取り付けられるように構成されている。側壁23及び側壁24には、挿入方向X1の端部において、固定金具15が圧入される圧入溝が設けられている。側壁23及び側壁24にそれぞれ設けられた圧入溝に固定金具15が圧入されることで、固定金具15が側壁23及び側壁24に取り付けられる。尚、固定金具15には、側壁23及び側壁24の圧入溝に圧入される圧入部15bと、圧入部15bに対して屈曲形成された部分として設けられて基板100に対してはんだ付けによって固定されるはんだ付け部15aとが設けられている。
【0044】
[可動ハウジング]
図10は、電気コネクタ1の可動ハウジング12を示す斜視図である。
図1乃至
図8、
図10に示す可動ハウジング12は、固定ハウジング11の挿入口29に対して遊嵌状態で挿入され、固定ハウジング11に対して相対変位可能に装着される。また、可動ハウジング12は、複数の端子13を介して固定ハウジング11に対して相対変位可能に支持される。そして、可動ハウジング12には、固定ハウジング11の挿入口29に挿入される本体部30と、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング12に挿入される際に複数の相手側接続部材101aを可動ハウジング12の内側に受け入れるように誘導する誘導部31と、が設けられている。誘導部31は、本体部30の高さ方向X2における端部側で本体部30と一体に設けられている。
【0045】
本体部30は、幅方向X3に沿って長く延びる略直方体状の基本外形を有する部分として形成されており、固定ハウジング11に形成された挿入口29に対して遊嵌状態で挿入されるように構成されている。本体部30は、固定ハウジング11の挿入口29に対して遊嵌状態で挿入されるため、挿入口29の内側で相対変位可能に配置される。尚、本体部30は、挿入口29に挿入された状態では、複数の端子13を介して固定ハウジング11に対して支持されている。
【0046】
また、本体部30が挿入される挿入口29の挿入方向X1に垂直な断面の断面積は、本体部30の挿入口29に挿入される部分における挿入方向X1に垂直な断面の断面積よりも大きく設定されている。このため、挿入口29に挿入された本体部30は、挿入口29内において幅方向X3及び前後方向X4に変位した際に、幅方向X3及び前後方向X4における変位量が所定の変位量以下となるように規制される。よって、電気コネクタ1においては、固定ハウジング11の挿入口29は、幅方向X3及び前後方向X4のいずれの方向においても、可動ハウジング12の本体部30の固定ハウジング11に対する変位量を規制するように設けられている。
【0047】
図5及び
図7を参照して、本体部30が、固定ハウジング11の挿入口29に挿入されるとともに、複数の端子13を介して固定ハウジング11に支持された状態では、本体部30の幅方向X3における両端部と一対の側壁23及び側壁24との間には、それぞれ隙間が形成されている。即ち、本体部30の幅方向X3における一方の端部と側壁23との間には隙間が形成され、本体部30の幅方向X3における他方の端部と側壁24との間にも隙間が形成されている。そして、本体部30が幅方向X3において変位すると、本体部30の幅方向X3における端部と側壁23又は側壁24とが当接し、本体部30の幅方向X3における変位量が規制される。これにより、挿入口29に挿入された本体部30の幅方向X3における固定ハウジング11に対する変位量が規制される。即ち、本体部30が挿入口29に挿入された状態では、可動ハウジング12の幅方向X3における固定ハウジング11に対する変位量が規制される。
【0048】
また、
図6及び
図8を参照して、本体部30が、固定ハウジング11の挿入口29に挿入されるとともに、複数の端子13を介して固定ハウジング11に支持された状態では、本体部30の前後方向X4における両端部と複数の区画壁27及び背面壁22との間には、それぞれ隙間が形成されている。即ち、本体部30の前後方向X4における一方の端部と複数の区画壁27との間には隙間が形成され、本体部30の前後方向X4における他方の端部と背面壁22との間にも隙間が形成されている。そして、本体部30が前後方向X4において変位すると、本体部30の前後方向X4における端部と複数の区画壁27又は背面壁22とが当接し、本体部30の前後方向X4における変位量が規制される。これにより、挿入口29に挿入された本体部30の前後方向X4における固定ハウジング11に対する変位量が規制される。即ち、本体部30が挿入口29に挿入された状態では、可動ハウジング12の前後方向X4における固定ハウジング11に対する変位量が規制される。
【0049】
また、
図5乃至
図8を参照して、本体部30には、複数の端子13における後述の相手側接続部40をそれぞれ収容して保持する複数の保持室30aが設けられている。複数の保持室30aは、本体部30の内部における複数の空間領域として設けられ、本体部30の内側において幅方向X3に並んで設けられている。また、複数の保持室30aのそれぞれは、本体部30の内側における略直方体状の空間領域として設けられており、挿入方向X1に向かって開口している。各端子13の相手側接続部40は、各保持室30aに対して、各保持室30aの開口から高さ方向X2に向かって挿入される。各端子13の相手側接続部40は、各保持室30aに対して圧入された状態で挿入され、各保持室30aに保持される。
【0050】
また、本体部30には、前後方向X4に沿って突出する凸部32が設けられている。凸部32は、幅方向X3に沿って長く延びる略直方体状の形状を有し、本体部30から前後方向X4に沿って凸状に突出した部分として設けられている。凸部32は、本体部30が挿入口29に挿入された状態で、前後方向X4において、固定ハウジング11において端子13が固定されている端子保持壁21側に向かって本体部30から突出して設けられている。尚、端子13には、固定ハウジング11の端子保持壁21に固定される部分としての固定部39が設けられている。よって、凸部32は、本体部30が挿入口29に挿入された状態で、前後方向X4において、固定ハウジング11における端子13の固定部39が固定されている側に向かって本体部30から突出して設けられている。
【0051】
本体部30から前後方向X4に沿って突出する凸部32は、可動ハウジング12が固定ハウジング11に装着された状態では、固定ハウジング11の複数の区画壁27と固定ハウジング11に取り付けられた移動規制部材14との間で前後方向X4に沿って突出するように配置される。このため、凸部32は、固定ハウジング11の複数の区画壁27とは挿入方向X1において対向し、移動規制部材14とは高さ方向X2において対向して配置される。そして、凸部32と固定ハウジング11の複数の区画壁27との間には隙間が形成され、凸部32と移動規制部材14との間にも隙間が形成されている。そして、可動ハウジング12とともに変位する凸部32が、挿入方向X1に変位すると、凸部32と複数の区画壁27とが当接し、凸部32が設けられた可動ハウジング12の挿入方向X1における変位量が規制される。また、可動ハウジング12とともに変位する凸部32が、高さ方向X2に変位すると、凸部32と移動規制部材14とが当接し、凸部32が設けられた可動ハウジング12の高さ方向X2における変位量が規制される。このため、固定ハウジング11の挿入口29に本体部30にて挿入された可動ハウジング12が挿入口29から抜ける方向である高さ方向X2に変位した際に、可動ハウジング12の凸部32が移動規制部材14と当接し、可動ハウジング12の高さ方向X2における変位量が規制され、可動ハウジング12が固定ハウジング11からの抜け止めが図られる。
【0052】
図1乃至
図8、
図10を参照して、誘導部31は、本体部30の高さ方向X2における端部側で本体部30と一体に設けられ、可動ハウジング12において高さ方向X2における端部側の部分として設けられている。そして、誘導部31は、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング12に挿入される際に複数の相手側接続部材101aを可動ハウジング12の内側に受け入れるように誘導する部分として設けられている。誘導部31には、複数の相手側接続部材101aが挿入される開口33が設けられている。開口33は、複数の相手側接続部材101aが誘導部31に挿入される方向である挿入方向X1と反対方向である高さ方向X2に向かって開口しており、幅方向X3に亘って広がった状態で開口している。そして、誘導部31は、開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aを可動ハウジング12の内側に受け入れるように誘導するように構成されている。
【0053】
また、誘導部31の内側には、誘導部31で誘導された複数の相手側接続部材101aがそれぞれ挿入される複数の挿入孔34が並んで設けられている。複数の挿入孔34は、誘導部31の内側において、幅方向X3に沿って1列に並んで設けられている。なお、可動ハウジング12において複数の挿入孔34が並ぶ方向が電気コネクタ1の幅方向X3を構成している。複数の挿入孔34は、幅方向X3において等間隔で並んで設けられている。幅方向X3において複数の挿入孔34が等間隔で並ぶ間隔寸法であるピッチ寸法は、相手側コネクタ101において幅方向X3に複数の相手側接続部材101aが等間隔で並ぶ間隔寸法と同じに設定されている。
【0054】
また、複数の挿入孔34のそれぞれは、誘導部31の開口33の内側で高さ方向X2に沿って開口している。複数の挿入孔34のそれぞれは、挿入方向X1において、可動ハウジング12の本体部30の内側で幅方向X3に並んで設けられた複数の保持室30aに連通している。複数の相手側接続部材101aは、可動ハウジング12の誘導部31に挿入される際には、開口33から誘導部31に挿入される。開口33から挿入された複数の相手側接続部材101aは、開口33の内側で幅方向X3に並ぶとともに高さ方向X2に開口した複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入される。複数の相手側接続部材101aのそれぞれは、挿入孔34に挿入されると、挿入孔34を通過して、保持室30aへと挿入される(
図8及び
図8を参照)。保持室30aまで挿入された相手側接続部材101aは、保持室30aに保持された端子13の相手側接続部40と接触する。各挿入孔34に挿入された各相手側接続部材101aが各端子13の相手側接続部40と接触することで、各相手側接続部材101aと各端子13とが電気的に接続される。
【0055】
ここで、誘導部31の構成についてさらに詳しく説明する。
図11は、
図5(B)の一部を拡大して示す図である。
図12は、
図6(B)の一部を拡大して示す図である。
図2、
図4乃至
図8、
図10乃至
図12を参照して、誘導部31の内壁には、複数の挿入孔34が並ぶ方向である幅方向X3における両端側において、第1の傾斜面35が設けられている。第1の傾斜面35は、複数の相手側接続部材101aが誘導部31に挿入される方向である挿入方向X1と反対方向である高さ方向X2に向かうとともに幅方向X3の外側に向かって開口33までテーパ状に広がって延びるように高さ方向X2に対して傾斜した面として設けられている。第1の傾斜面35は、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側にそれぞれ設けられており、幅方向X3の両端側の第1の傾斜面35のそれぞれは、複数の挿入孔34のうちの幅方向X3の両端側に配置された挿入孔34のそれぞれに連続するように設けられている。
【0056】
また、
図2、
図4乃至
図8、
図10乃至
図12を参照して、誘導部31の内側では、幅方向X3において隣り合う挿入孔34の間において、第2の傾斜面36が設けられている。幅方向X3において隣り合う挿入孔34の間に設けられる第2の傾斜面36は、挿入方向X1に向かうとともに相手側接続部材101aが挿入される挿入孔34の入口に向かってテーパ状に延びるように高さ方向X2に対して傾斜した面として設けられている。幅方向X3の両端側に配置された挿入孔34に対しては、幅方向X3における一方側でのみ挿入孔34が隣り合って配置されるため、幅方向X3における一方側でのみ第2の傾斜面36が対応して設けられている。幅方向X3の両端側以外の位置に配置された挿入孔34に対しては、幅方向X3における両側で挿入孔34が隣り合って配置されるため、幅方向X3における両側で第2の傾斜面36が対応して設けられている。第2の傾斜面36は、挿入孔34に対して連続するように設けられている。そして、隣り合う挿入孔34の間では、隣り合う挿入孔34のそれぞれに対して連続する第2の傾斜面36が幅方向X3において並んで設けられている。
【0057】
図5(B)、
図7及び
図11を参照して、誘導部31の内壁において幅方向X3の両端側に設けられる第1の傾斜面35は、その幅方向X3における寸法が、隣り合う挿入孔34の間に設けられる第2の傾斜面36の幅方向X3における寸法よりも大きくなるように設定されている。なお、
図11では、第1の傾斜面35の幅方向X3における寸法W1について、両端矢印W1で示しており、第2の傾斜面36の幅方向X3における寸法W2について、両端矢印W2で示している。第1の傾斜面35の幅方向X3における寸法W1は、第2の傾斜面36の幅方向X3における寸法W2よりも大きく設定されている。
【0058】
また、
図5(B)、
図7及び
図11を参照して、第1の傾斜面35は、その高さ方向X2における寸法が、第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法よりも大きくなるように設定されている。なお、
図11では、第1の傾斜面35の高さ方向X2における寸法H1について、両端矢印H1で示しており、第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法H2について、両端矢印H2で示している。第1の傾斜面35の高さ方向X2における寸法H1は、第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法H2よりも大きく設定されている。
【0059】
また、
図5(B)、
図7及び
図11を参照して、第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きくなるように設定されている。なお、
図11では、第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ1について、θ1の符号を付して示している。また、
図11では、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ2について、θ2の符号を付して示している。第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ1は、誘導部31の内側の幅方向X3の両端側で高さ方向X2に向けてテーパ状に広がる第1の傾斜面35の傾斜角度を構成している。そして、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ2は、隣り合う挿入孔34の間で挿入孔34の入口に向けてテーパ状に延びる第2の傾斜面36の傾斜角度を構成している。第1の傾斜面35の傾斜角度である角θ1は、第2の傾斜面36の傾斜角度である角θ2よりも大きくなるように設定されている。
【0060】
また、
図2、
図4乃至
図8、
図10乃至
図12を参照して、誘導部31の内壁には、幅方向X3と高さ方向X2とに垂直な方向である前後方向X4における両端側において、第3の傾斜面37が設けられている。第3の傾斜面37は、高さ方向X2に向かうとともに前後方向X4の外側に向かって開口33までテーパ状に広がって延びるように高さ方向X2に対して傾斜した面として設けられている。第3の傾斜面37は、誘導部31の内壁における前後方向X4の両端側にそれぞれ設けられており、幅方向X3に並んだ複数の挿入孔34のそれぞれに対して連続するように設けられている。
【0061】
図6(B)、
図8及び
図12を参照して、誘導部31の内壁において前後方向X4の両端側に設けられる第3の傾斜面37は、その高さ方向X2における寸法が、隣り合う挿入孔34の間に設けられる第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法よりも大きくなるように設定されている。なお、
図12では、第3の傾斜面37の高さ方向X2における寸法H3について、両端矢印H3で示しており、第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法H2について、両端矢印H2で示している。第3の傾斜面37の高さ方向X2における寸法H3は、第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法H2よりも大きく設定されている。
【0062】
[端子]
図13は、電気コネクタ1の端子13を示す斜視図であり、電気コネクタ1における複数の端子13のうちの1つを拡大して示す斜視図である。
図1乃至
図8、
図13を参照して、電気コネクタ1においては複数の端子13が備えられており、複数の端子13は、電気コネクタ1において幅方向X3に並んで配置されている。複数の端子13のそれぞれは、一方の端部側が固定ハウジング11に固定され、他方の端部側が可動ハウジング12に保持され、両方の端部の間の部分が弾性変形可能に構成されている。これにより、複数の端子13は、固定ハウジング11に対して可動ハウジング12を変位可能に支持するように構成されている。また、複数の端子13のそれぞれは、一方の端部側において基板100に対してはんだ付けで実装されて固定されるとともに、他方の端部側において相手側コネクタ101の複数の相手側接続部材101aのそれぞれに対して接触して電気的に接続されるように構成されている。
【0063】
また、複数の端子13のそれぞれは、具体的には、基板接続部38と、固定部39と、相手側接続部40と、可動バネ部41とを備えて構成されている。端子13において、基板接続部38、固定部39、可動バネ部41、及び相手側接続部40は、この順番で並んで一体に設けられている。基板接続部38及び固定部39は、端子13における一方の端部側に設けられ、相手側接続部40は、端子13における他方の端部側に設けられている。
【0064】
図1乃至
図4、
図6、
図8、
図13を参照して、基板接続部38は、端子13における一方の端部として設けられ、基板100に対して接続される部分として設けられている。基板接続部38は、基板100の表面に対してはんだ付けによって固定されることで基板100に対して電気的及び機械的に接続される。
【0065】
図2乃至
図4、
図6、
図8、
図11を参照して、固定部39は、固定ハウジング11に取り付けられて固定される部分として設けられ、端子13の一方の端部側において基板接続部38に隣接して配置された部分として設けられている。固定部39は、固定ハウジング11の端子保持壁21における端子固定部25に対して圧入されることで、端子保持壁21に固定される。尚、固定部39には、幅方向両側に突出した一対の圧入用爪部が設けられている。そして、固定部39が端子固定部25に圧入される際には、固定部39の一対の圧入用爪部が、端子固定部25における一対の圧入溝にそれぞれ差し込まれて圧入される。固定部39が端子固定部25に圧入されることで、固定部39が端子固定部25に固定され、端子13が固定ハウジング11の端子保持壁21に固定される。
【0066】
図4乃至
図8、
図13を参照して、相手側接続部40は、端子13における他方の端部側の部分として設けられ、可動ハウジング12に保持されるとともに相手側コネクタ101の相手側接続部材101aに接続される部分として設けられている。相手側接続部40は、メス型端子としての接続部分として設けられており、筒状部40a、バネ接点部40b、及び圧入部40cを有している。
【0067】
相手側接続部40の筒状部40aは、角筒状に折り曲げられて形成された部分として設けられている。相手側接続部40が可動ハウジング12に保持される際には、筒状部40aが可動ハウジング12の本体部30の保持室30aに挿入されて保持される。筒状部40aは、高さ方向X2において開口しており、筒状部40aが保持室30aに挿入された状態では、筒状部40aの開口が挿入孔34に対向した状態で配置される。そして、端子13が相手側接続部材101aと接続される際には、挿入孔34から挿入された相手側接続部材101aが、保持室30a内の筒状部40aの内側に差し込まれる。
【0068】
相手側接続部40のバネ接点部40bは、筒状部40aの内側で屈曲形成された板バネ状に設けられており、相手側接続部材101aと接触して電気的に接続される接点部分を有して構成されている。端子13が相手側接続部材101aと接続される際には、可動ハウジング12の挿入孔34から挿入されて筒状部40aの内側に差し込まれた相手側接続部材101aに対してバネ接点部40bが接触して電気的に接続される。
【0069】
相手側接続部40の圧入部40cは、筒状部40aに隣接して設けられ、可動ハウジング12の本体部30に対して圧入される部分として設けられている。筒状部40aが可動ハウジング12の本体部30の保持室30aに挿入された際、圧入部40cは、保持室30aの内壁に対して圧入される。圧入部40cが本体部30に圧入されることで、相手側接続部40は、可動ハウジング12の本体部30に対して強固に保持される。
【0070】
図2乃至
図4、
図6、
図8、
図13を参照して、可動バネ部41は、端子13において、固定部39と相手側接続部40とを一体に連結するとともに固定部39に対して相手側接続部40を相対変位可能に支持するバネ部分として設けられている。可動バネ部41は複数回に亘って屈曲しながら延びる細長い板バネ状の部分として設けられている。尚、可動バネ部41は、本実施形態では、固定部39から高さ方向X2に延びた後、前後方向X4における背面壁22側に向かって略直角に屈曲して延び、次いで、挿入方向X1に向かって略直角に屈曲して延び、更に、挿入方向X1から高さ方向X2へと略180度に亘って半円弧状に屈曲して延び、相手側接続部40へと連続するように設けられている。
【0071】
また、電気コネクタ1において幅方向X3の両端側以外の位置に配置された端子13の可動バネ部41は、固定ハウジング11内では、幅方向X3において隣接する区画壁27の間において複数回に亘って屈曲しながら延びるように配置されている。また、電気コネクタ1において幅方向X3の両端側の位置に配置された端子13の可動バネ部41は、固定ハウジング11内では、側壁23と区画壁27との間において、又は、側壁24と区画壁27との間において複数回に亘って屈曲しながら延びるように配置されている。
【0072】
[電気コネクタによる基板と相手側コネクタとの接続]
次に、上述した電気コネクタ1による基板100と相手側コネクタ101との接続について説明する。基板100には、例えば、表面に導電回路パターン(図示省略)が設けられており、その基板100に対して、電気コネクタ1が実装されて接続される。電気コネクタ1は、基板100上に設置されると、電気コネクタ1の複数の端子13の基板接続部38が基板100に対してはんだ付けされるとともに、電気コネクタ1の一対の固定金具15も基板100に対してはんだ付けされる。これにより、電気コネクタ1と基板100とが接続される。
【0073】
基板100に電気コネクタ1が接続されると、電気コネクタ1に対して相手側コネクタ101が接続される。これにより、基板100と相手側コネクタ101とが電気コネクタ1を介して電気的に接続される。電気コネクタ1への相手側コネクタ101の接続の際には、相手側コネクタ101の複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング12に対して挿入される。複数の相手側接続部材101aは、まず、可動ハウジング12の誘導部31の開口33に挿入される。誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、誘導部31の内側で並んで配置された複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入される。挿入孔34に挿入された相手側接続部材101aは、可動ハウジング12の内側で保持された端子13の相手側接続部40のバネ接点部40bと接触し、端子13に対して電気的に接続される。これにより、電気コネクタ1と相手側コネクタ101とが接続され、基板100と相手側コネクタ101とが電気コネクタ1を介して電気的に接続される。
【0074】
電気コネクタ1においては、相手側コネクタ101の複数の相手側接続部材101aが接続された可動ハウジング12が、基板100に接続された固定ハウジング11に対して、複数の端子13を介して相対変位可能に支持されている。このため、基板100と相手側コネクタ101との間での位置ずれが生じた場合であっても、可動ハウジング12と固定ハウジング11との間での相対変位によって、その位置ずれが吸収される。例えば、基板100側に振動が発生した場合であっても、基板100と相手側コネクタ101との間において、基板100側で発生した振動を端子13の可動バネ部41の弾性変形で吸収し、相手側コネクタ101への振動の伝達が抑制される。
【0075】
[相手側接続部材と電気コネクタとの接続動作]
ここで、相手側コネクタ101において並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ1に挿入されて接続される際の動作についてさらに説明する。複数の相手側接続部材101aが電気コネクタ1に挿入される際には、複数の相手側接続部材101aは、電気コネクタ1における可動ハウジング12に対して挿入される。このとき、複数の相手側接続部材101aは、可動ハウジング12に対して、挿入位置がずれた状態で挿入される場合がある。
図14は、相手側コネクタ101の複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ1に対して挿入される直前の状態を示す側面図であって、電気コネクタ1については固定ハウジング11を省略した状態で示す図である。
図15は、
図14のC-C線矢視位置における断面図である。
図14及び
図15は、複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング12に対して、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で挿入される場合を示している。
【0076】
図14及び
図15を参照して、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング12に挿入される際には、複数の相手側接続部材101aは、可動ハウジング12の誘導部31の開口33へと挿入される。複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング12に対して、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で挿入される場合は、複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34に対して、挿入方向X1において重ならずに幅方向X3にずれた位置で、開口33に挿入される。誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で開口33に挿入されると、複数の相手側接続部材101aのうちの幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面35に対して当接する。なお、第1の傾斜面35の高さ方向X2の寸法H1は、第2の傾斜面36の高さ方向X2の寸法H2よりも大きく設定されており、更に、第1の傾斜面35の幅方向X3の寸法W1は、第2の傾斜面36の幅方向X3の寸法W2よりも大きく設定されている。このため、並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、幅方向X3にずれた状態で誘導部31の開口33に挿入されると、複数の相手側接続部材101aの先端部が複数の挿入孔34へと至る第2の傾斜面36に当接するよりも先に、複数の相手側接続部材101aのうちの幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面35に対して当接する。
【0077】
図16及び
図17は、相手側コネクタ101の複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ1に対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図14のC-C線矢視位置に対応する位置での断面図である。なお、
図16は、
図15に示す状態から複数の相手側接続部材101aがさらに誘導部31の奥側に挿入された状態を示す図であり、
図17は、
図16に示す状態から複数の相手側接続部材101aがさらに誘導部31の奥側に挿入された状態を示す図である。
図16を参照して、複数の相手側接続部材101aが開口33に挿入され、幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aが第1の傾斜面35に当接すると、幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aが、第1の傾斜面35に沿って摺接しながら開口33の内側に挿入される。これにより、並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35に沿って摺接しながら開口33に挿入される幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材100とともに挿入方向X1に移動する。このため、並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、誘導部31の内側へと第1の傾斜面35によって誘導されながら挿入される。そして、
図17に示すように、複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35によって誘導されながら誘導部31の奥側まで挿入されると、続いて、複数の挿入孔34へとそれぞれ誘導されることになる。複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34へそれぞれ誘導されると、そのまま複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。そして、複数の挿入孔34にそれぞれ挿入された複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34をそれぞれ通過して、可動ハウジング12の内側で保持された端子13の相手側接続部40のバネ接点部40bと接触し、端子13に対して電気的に接続される(
図7を参照)。
【0078】
次に、複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング12に対して、挿入位置が前後方向X4においてずれた状態で挿入される場合について説明する。
図18は、相手側コネクタ101の複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ1に対して挿入される直前の状態を示す正面図であって、電気コネクタ1については固定ハウジング11を省略した状態で示す図である。
図19は、
図18のD-D線矢視位置における断面図である。
図18及び
図19は、複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング12に対して、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で挿入される場合を示している。
【0079】
図18及び
図19を参照して、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング12に挿入される際には、複数の相手側接続部材101aは、可動ハウジング12の誘導部31の開口33へと挿入される。複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング12に対して、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で挿入される場合は、複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34に対して、挿入方向X1において重ならずに前後方向X4にずれた位置で、開口33に挿入される。誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で開口33に挿入されると、複数の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁の前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に対して当接する。なお、第3の傾斜面37の高さ方向X2の寸法H1は、第2の傾斜面36の高さ方向X2の寸法H2よりも大きく設定されている。このため、並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、前後方向X4にずれた状態で誘導部31の開口33に挿入されると、複数の相手側接続部材101aの先端部が複数の挿入孔34のそれぞれへと至る第2の傾斜面36と同じ高さに達するよりも先に、複数の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に対して当接する。
【0080】
図20は、相手側コネクタ101の複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ1に対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図18のD-D線矢視位置に対応する位置での断面図である。
図20を参照して、複数の相手側接続部材101aが開口33に挿入され、複数の相手側接続部材101aが、前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に当接すると、複数の相手側接続部材101aが、第3の傾斜面37に沿って摺接しながら開口33の内側に挿入される。これにより、並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37に沿って摺接しながら挿入方向X1に移動する。このため、並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、誘導部31の内側へと第3の傾斜面37によって誘導されながら挿入される。そして、複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37によって誘導されながら誘導部31の奥側まで挿入されると、続いて、複数の挿入孔34へとそれぞれ誘導されることになる。複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34へそれぞれ誘導されると、そのまま複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。そして、複数の挿入孔34にそれぞれ挿入された複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34をそれぞれ通過して、可動ハウジング12の内側で保持された端子13の相手側接続部40のバネ接点部40bと接触し、端子13に対して電気的に接続される(
図8を参照)。
【0081】
[第1実施形態の作用及び効果]
第1実施形態によると、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aと電気コネクタ1が接続される際には、複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング12の誘導部31の開口33に挿入される。可動ハウジング12の誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、挿入位置がずれていない状態で開口33に挿入された場合は、誘導部31の内側の複数の挿入孔34にそれぞれ挿入される。そして、複数の挿入孔34にそれぞれ挿入された複数の相手側接続部材101aは、複数の端子13とそれぞれ電気的に接続される。一方、可動ハウジング12の誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aが、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で開口33に挿入された場合は、複数の相手側接続部材101aのうちの幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面35に対して当接する。なお、誘導部31の内壁の幅方向X3の両端側において高さ方向X2に向かって且つ幅方向X3の外側に向かって傾斜して設けられた第1の傾斜面35は、隣り合う挿入孔34間において挿入孔34の入口に向かって傾斜した第2の傾斜面36よりも、高さ方向X2の寸法が大きく、且つ、幅方向X3の寸法が大きく設定されている。このため、並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、幅方向X3にずれた状態で誘導部31の開口33に挿入された場合は、複数の相手側接続部材101aの先端部が複数の挿入孔34へと至る第2の傾斜面36に当接するよりも先に、複数の相手側接続部材101aのうちの幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面35に対して当接する。そして、幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aが、第1の傾斜面35に沿って摺接しながら開口33の内側に挿入される。これにより、並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35に沿って摺接しながら開口33に挿入される幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aとともに移動して、誘導部31の内側へと第1の傾斜面35によって誘導されながら挿入される。複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されると、続いて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。したがって、複数の相手側接続部材101aが、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で可動ハウジング12に挿入される場合であっても、複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入され、複数の挿入孔34へと適切に挿入される。よって、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを電気コネクタ1に挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。また、第1実施形態によると、可動ハウジング12において、開口33を設けた誘導部31の幅方向X3の両端側に第1の傾斜面35を設けた簡素な構造で、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを電気コネクタ1に挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。このため、電気コネクタ1及び電気コネクタ1に接続される相手側コネクタ101の構造の大型化と複雑化とを招いてしまうことを抑制することができる。
【0082】
以上のとおり、第1実施形態によると、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができ、構造の大型化及び複雑化を招いてしまうことも抑制できる、電気コネクタ1を提供できる。
【0083】
また、第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ1の大きさが、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ2の大きさと同じである場合は、複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されて第2の傾斜面36と同じ高さ位置に達すると、続いて、第1の傾斜面35と第2の傾斜面36とに沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。これに対し、第1実施形態によると、第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ1の大きさが、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ2の大きさよりも大きく設定される。これにより、複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されて第2の傾斜面36と同じ高さ位置に達しても、第2の傾斜面36にほぼ摺接することなく、引き続き、第1の傾斜面35に沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。こうして、可動ハウジング12の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、第2の傾斜面36にもほぼ摺接することなく、第1の傾斜面35に沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。このため、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを適切に挿入して接続する作業を更に円滑に容易に行うことができる。
【0084】
また、第1実施形態によると、可動ハウジング12の誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aが、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で開口33に挿入された場合は、複数の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に対して当接する。なお、誘導部31の内壁の前後方向X4の両端側において高さ方向X2に向かって且つ前後方向X4の外側に向かって傾斜して設けられた第3の傾斜面37は、隣り合う挿入孔34間において挿入孔34の入口に向かって傾斜した第2の傾斜面36よりも、高さ方向X2の寸法が大きく設定されている。このため、並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、前後方向X4にずれた状態で誘導部31の開口33に挿入された場合は、複数の相手側接続部材101aの先端部が複数の挿入孔34のそれぞれへと至る第2の傾斜面36と同じ高さ位置に達するよりも先に、複数の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に対して当接する。そして、並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37に沿って摺接しながら開口33の内側に挿入されて、誘導部31の内側へと第3の傾斜面37によって誘導されながら挿入される。複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されると、続いて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。したがって、複数の相手側接続部材101aが、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で可動ハウジング12に挿入される場合であっても、複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入され、複数の挿入孔34へと適切に挿入される。よって、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを電気コネクタ1に挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。
【0085】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る電気コネクタ2について説明する。なお、以下の第2実施形態についての説明においては、前述の第1実施形態と同様に構成される要素及び第1実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、重複する説明を省略する。
【0086】
前述の第1実施形態では、電気コネクタ1は、複数の端子13が、幅方向X3に沿って1列に並んで配置され、1列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが挿入されて接続されるように構成されていた。しかし、第2実施形態の電気コネクタ2は、第1実施形態の電気コネクタ1とは異なり、複数の端子13が幅方向X3に沿って2列に並んで配置され、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが挿入されて接続されるように構成されている。
【0087】
図21は、第2実施形態に係る電気コネクタ2を基板101及び相手側コネクタ101とともに示す斜視図である。
図22は、電気コネクタ2を示す斜視図である。
図23は、電気コネクタ2の斜視図であって、電気コネクタ2の幅方向X3に垂直な面での断面を含んだ状態で示す斜視図である。
図24(A)は、電気コネクタ2の正面図であり、
図24(B)は、電気コネクタ2の側面図である。
図25は、
図24(A)のE-E線矢視位置における断面図である。
図26は、
図24(B)のF-F線矢視位置における断面図である。
【0088】
図21乃至
図26を参照して、第2実施形態に係る電気コネクタ2は、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを有する相手側コネクタ101に対して電気的に接続される電気コネクタとして構成されている。そして、電気コネクタ2は、相手側コネクタ101において2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが挿入されて接続される電気コネクタとして構成されている。
【0089】
第2実施形態に係る電気コネクタ2は、第1実施形態の電気コネクタ1と同様に、基板100に対して設置される固定ハウジング51と、固定ハウジング51に対して相対変位可能に装着される可動ハウジング52と、固定ハウジング51に対して可動ハウジング52を変位可能に支持するとともに複数の相手側接続部材101aに対してそれぞれ電気的に接続される複数の端子13と、を備えている。ただし、電気コネクタ2は、複数の端子13が幅方向X3に沿って2列に並んで配置され、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが挿入されて接続されることに対応して、固定ハウジング51及び可動ハウジング52に関する構成が、前述の第1実施形態の電気コネクタ1とは一部異なっている。
【0090】
なお、電気コネクタ2についての以下の説明では、
図21乃至
図26及び後述の図面において矢印X1、矢印X2、両端矢印X3、及び両端矢印X4で示すように、電気コネクタ2における挿入方向X1、高さ方向X2、幅方向X3、及び前後方向X4を定義する。挿入方向X1は、電気コネクタ2において、可動ハウジング52に対して複数のピン状の相手側接続部材101aが挿入されて接続される方向として構成される。複数のピン状の相手側接続部材101aは、可動ハウジング52に対して、可動ハウジング52における誘導部31に挿入される。また、挿入方向X1は、固定ハウジング51に対して可動ハウジング52が挿入されて装着される方向としても構成される。高さ方向X2は、挿入方向X1と反対方向として構成される。すなわち、高さ方向X2は、挿入方向X1と平行で逆向きの方向であり、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング52に挿入される方向と逆向きの方向として構成される。幅方向X3は、可動ハウジング52における誘導部31の内側で2列に並んで設けられる複数の挿入孔34が2列に並ぶ方向として構成される。2列に並んで設けられた複数の挿入孔34に対しては、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aがそれぞれ挿入される。なお、可動ハウジング52の誘導部31の内側で複数の挿入孔34が2列に並ぶ方向である幅方向X3は、固定ハウジング51において複数の端子13が2列に列を形成して並ぶピッチ方向としても構成される。前後方向X4は、高さ方向X2と幅方向X3との両方の方向に対して垂直な方向として構成される。すなわち、前後方向X4は、高さ方向X2及び挿入方向X1に対して垂直な方向であるとともに、幅方向X3に対しても垂直な方向として構成される。
【0091】
図21乃至
図26を参照して、基板100に対して設置される固定ハウジング51は、電気コネクタ1の固定ハウジング11と略同様に構成されるが、固定ハウジング11とは異なり、背面壁22が設けられておらず、端子保持壁21が一対で設けられている。即ち、固定ハウジング51は、前後方向X4において互いに対向して配置されるとともに互いに平行に延びる一対の端子保持壁21と、一対の端子保持壁21に対して垂直に延びる一対の側壁23及び側壁24とを有して構成されている。一対の端子保持壁21のうちの一方の端子保持壁21は、幅方向X3に沿って2列に並んだ複数の端子13のうちの一方の列の複数の端子13を保持する壁部として設けられている。そして、一対の端子保持壁21のうちの他方の端子保持壁21は、幅方向X3に沿って2列に並んだ複数の端子13のうちの他方の列の複数の端子13を保持する壁部として設けられている。
【0092】
固定ハウジング51に対して相対変位可能に装着される可動ハウジング52は、電気コネクタ1の可動ハウジング12と略同様に構成されるが、可動ハウジング12とは異なり、本体部30及び誘導部31が、2列に並んで配置された相手側接続部材101aが挿入されて接続されるように構成されている。
【0093】
可動ハウジング52の本体部30においては、複数の保持室30aが、幅方向X3に沿って2列に並んで設けられている。可動ハウジング52の本体部30において、2列に並んで設けられた複数の保持室30aにおける各列の複数の保持室30aは、誘導部31において2列に並んで設けられた複数の挿入孔34と対応して設けられている。また、可動ハウジング52の本体部30の2列に並んだ複数の保持室30aのうちの一方の列の複数の保持室30aは、電気コネクタ2において2列に並んで配置される複数の端子13のうちの一方の列の複数の端子13の相手側接続部40を保持するように構成されている。そして、可動ハウジング52の本体部30の2列に並んだ複数の保持室30aのうちの他方の列の複数の保持室30aは、電気コネクタ2において2列に並んで配置される複数の端子13のうちの他方の列の複数の端子13の相手側接続部40を保持するように構成されている。
【0094】
図21乃至
図26を参照して、可動ハウジング52の誘導部31は、本体部30の高さ方向X2における端部側で本体部30と一体に設けられ、可動ハウジング52において高さ方向X2における端部側の部分として設けられている。そして、誘導部31は、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング12に挿入される際に複数の相手側接続部材101aを可動ハウジング12の内側に受け入れるように誘導する部分として設けられている。誘導部31には、複数の相手側接続部材101aが挿入される開口33が設けられている。開口33は、複数の相手側接続部材101aが誘導部31に挿入される方向である挿入方向X1と反対方向である高さ方向X2に向かって開口しており、幅方向X3に亘って広がった状態で開口している。そして、誘導部31は、開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aを可動ハウジング12の内側に受け入れるように誘導するように構成されている。
【0095】
また、誘導部31の内側には、誘導部31で誘導された複数の相手側接続部材101aがそれぞれ挿入される複数の挿入孔34が2列に並んで設けられている。複数の挿入孔34は、誘導部31の内側において、幅方向X3に沿って2列に並んで設けられている。なお、可動ハウジング52において複数の挿入孔34が2列に並ぶ方向が電気コネクタ2の幅方向X3を構成している。複数の挿入孔34は、幅方向X3において等間隔で2列に並んで設けられている。幅方向X3において複数の挿入孔34が等間隔で2列に並ぶ間隔寸法であるピッチ寸法は、相手側コネクタ101において幅方向X3に複数の相手側接続部材101aが等間隔で2列に並ぶ間隔寸法と同じに設定されている。
【0096】
また、複数の挿入孔34のそれぞれは、誘導部31の開口33の内側で高さ方向X2に沿って開口している。複数の挿入孔34のそれぞれは、挿入方向X1において、可動ハウジング52の本体部30の内側で幅方向X3に2列に並んで設けられた複数の保持室30aに連通している。複数の相手側接続部材101aは、可動ハウジング52の誘導部31に挿入される際には、開口33から誘導部31に挿入される。開口33から挿入された複数の相手側接続部材101aは、開口33の内側で幅方向X3に2列に並ぶとともに高さ方向X2に開口した複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入される。複数の相手側接続部材101aのそれぞれは、挿入孔34に挿入されると、挿入孔34を通過して、保持室30aへと挿入される。保持室30aまで挿入された相手側接続部材101aは、保持室30aに保持された端子13の相手側接続部40と接触する。各挿入孔34に挿入された各相手側接続部材101aが各端子13の相手側接続部40と接触することで、各相手側接続部材101aと各端子13とが電気的に接続される。
【0097】
ここで、可動ハウジング52の誘導部31の構成についてさらに詳しく説明する。
図27は、
図26の一部を拡大して示す図である。
図28は、
図25の一部を拡大して示す図である。
図21乃至
図23、
図26、
図27を参照して、誘導部31の内壁には、複数の挿入孔34が2列に並ぶ方向である幅方向X3における両端側において、第1の傾斜面35が設けられている。第1の傾斜面35は、複数の相手側接続部材101aが誘導部31に挿入される方向である挿入方向X1と反対方向である高さ方向X2に向かうとともに幅方向X3の外側に向かって開口33までテーパ状に広がって延びるように高さ方向X2に対して傾斜した面として設けられている。第1の傾斜面35は、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側にそれぞれ設けられており、幅方向X3の両端側の第1の傾斜面35のそれぞれは、複数の挿入孔34のうちの幅方向X3の両端側に配置された挿入孔34に連続するように設けられている。
【0098】
また、
図21乃至
図23、
図26、
図27を参照して、誘導部31の内側では、幅方向X3において隣り合う挿入孔34の間において、第2の傾斜面36が設けられている。幅方向X3において隣り合う挿入孔34の間に設けられる第2の傾斜面36は、挿入方向X1に向かうとともに相手側接続部材101aが挿入される挿入孔34の入口に向かってテーパ状に延びるように高さ方向X2に対して傾斜した面として設けられている。幅方向X3の両端側に配置された挿入孔34に対しては、幅方向X3における一方側でのみ挿入孔34が隣り合って配置されるため、幅方向X3における一方側でのみ第2の傾斜面36が対応して設けられている。幅方向X3の両端側以外の位置に配置された挿入孔34に対しては、幅方向X3における両側で挿入孔34が隣り合って配置されるため、幅方向X3における両側で第2の傾斜面36が対応して設けられている。第2の傾斜面36は、挿入孔34に対して連続するように設けられている。そして、隣り合う挿入孔34の間では、隣り合う挿入孔34のそれぞれに対して連続する第2の傾斜面36が幅方向X3において並んで設けられている。
【0099】
図26及び
図27を参照して、誘導部31の内壁において幅方向X3の両端側に設けられる第1の傾斜面35は、その幅方向X3における寸法が、隣り合う挿入孔34の間に設けられる第2の傾斜面36の幅方向X3における寸法よりも大きくなるように設定されている。なお、
図27では、第1の傾斜面35の幅方向X3における寸法W1について、両端矢印W1で示しており、第2の傾斜面36の幅方向X3における寸法W2について、両端矢印W2で示している。第1の傾斜面35の幅方向X3における寸法W1は、第2の傾斜面36の幅方向X3における寸法W2よりも大きく設定されている。
【0100】
また、
図26及び
図27を参照して、第1の傾斜面35は、その高さ方向X2における寸法が、第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法よりも大きくなるように設定されている。なお、
図11では、第1の傾斜面35の高さ方向X2における寸法H1について、両端矢印H1で示しており、第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法H2について、両端矢印H2で示している。第1の傾斜面35の高さ方向X2における寸法H1は、第2の傾斜面36の高さ方向X2における寸法H2よりも大きく設定されている。
【0101】
また、
図26及び
図27を参照して、第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きくなるように設定されている。なお、
図27では、第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ1について、θ1の符号を付して示している。また、
図27では、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ2について、θ2の符号を付して示している。第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ1は、誘導部31の内側の幅方向X3の両端側で高さ方向X2に向けてテーパ状に広がる第1の傾斜面35の傾斜角度を構成している。そして、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ2は、隣り合う挿入孔34の間で挿入孔34の入口に向けてテーパ状に延びる第2の傾斜面36の傾斜角度を構成している。第1の傾斜面35の傾斜角度である角θ1は、第2の傾斜面36の傾斜角度である角θ2よりも大きくなるように設定されている。
【0102】
また、
図21乃至
図23、
図25乃至
図28を参照して、誘導部31の内壁には、幅方向X3と高さ方向X2とに垂直な方向である前後方向X4における両端側において、第3の傾斜面37が設けられている。第3の傾斜面37は、高さ方向X2に向かうとともに前後方向X4の外側に向かって開口33までテーパ状に広がって延びるように高さ方向X2に対して傾斜した面として設けられている。第3の傾斜面37は、誘導部31の内壁における前後方向X4の両端側にそれぞれ設けられており、幅方向X3に2列並んだ複数の挿入孔34のうちの各列における複数の挿入孔34のそれぞれに対して連続するように設けられている。
【0103】
また、
図21乃至
図23、
図25、
図28を参照して、誘導部31の内側では、前後方向X4において隣り合う挿入孔34の間において、第4の傾斜面53が設けられている。前後方向X4において隣り合う挿入孔34の間に設けられる第4の傾斜面53は、挿入方向X1に向かうとともに相手側接続部材101aが挿入される挿入孔34の入口に向かってテーパ状に延びるように高さ方向X2に対して傾斜した面として設けられている。第4の傾斜面53は、挿入孔34に対して連続するように設けられている。そして、前後方向X4において隣り合う挿入孔34の間では、隣り合う挿入孔34のそれぞれに対して連続する第4の傾斜面53が前後方向X4に並んで設けられている。
【0104】
図25及び
図28を参照して、誘導部31の内壁において前後方向X4の両端側に設けられる第3の傾斜面37は、その前後方向X4における寸法が、前後方向X4において隣り合う挿入孔34の間に設けられる第4の傾斜面53の前後方向X4における寸法よりも大きくなるように設定されている。なお、
図28では、第3の傾斜面37の前後方向X4における寸法Y3について、両端矢印Y3で示しており、第4の傾斜面53の前後方向X4における寸法Y4について、両端矢印Y4で示している。第3の傾斜面37の前後方向X4における寸法Y3は、第4の傾斜面53の前後方向X4におけるY4よりも大きく設定されている。
【0105】
図25及び
図28を参照して、第3の傾斜面37は、その高さ方向X2における寸法が、第4の傾斜面53の高さ方向X2における寸法よりも大きくなるように設定されている。なお、
図28では、第3の傾斜面37の高さ方向X2における寸法H3について、両端矢印H3で示しており、第4の傾斜面53の高さ方向X2における寸法H4について、両端矢印H4で示している。第3の傾斜面37の高さ方向X2における寸法H3は、第4の傾斜面53の高さ方向X2における寸法H4よりも大きく設定されている。
【0106】
また、
図25及び
図28を参照して、第3の傾斜面37が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角の大きさが、第4の傾斜面53が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角の大きさよりも大きくなるように設定されている。なお、
図28では、第3の傾斜面37が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角θ3について、θ3の符号を付して示している。また、
図28では、第4の傾斜面53が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角θ4について、θ4の符号を付して示している。第3の傾斜面37が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角θ3は、誘導部31の内側の前後方向X4の両端側で高さ方向X2に向けてテーパ状に広がる第3の傾斜面37の傾斜角度を構成している。そして、第4の傾斜面53が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角θ4は、前後方向X4において隣り合う挿入孔34の間で挿入孔34の入口に向けてテーパ状に延びる第4の傾斜面53の傾斜角度を構成している。第3の傾斜面37の傾斜角度である角θ3は、第4の傾斜面53の傾斜角度である角θ4よりも大きくなるように設定されている。
【0107】
ここで、相手側コネクタ101において2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ2に挿入されて接続される際の動作についてさらに説明する。複数の相手側接続部材101aが電気コネクタ2に挿入される際には、複数の相手側接続部材101aは、電気コネクタ2における可動ハウジング52に対して挿入される。このとき、複数の相手側接続部材101aは、可動ハウジング52に対して、挿入位置がずれた状態で挿入される場合がある。
図29は、相手側コネクタ101の複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ2に対して挿入される直前の状態を示す側面図であって、電気コネクタ2については固定ハウジング51を省略した状態で示す図である。
図30は、
図29のG-G線矢視位置における断面図である。
図29及び
図30は、複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング52に対して、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で挿入される場合を示している。
【0108】
図29及び
図30を参照して、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング52に挿入される際には、複数の相手側接続部材101aは、可動ハウジング52の誘導部31の開口33へと挿入される。複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング52に対して、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で挿入される場合は、複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34に対して、挿入方向X1において重ならずに幅方向X3にずれた位置で、開口33に挿入される。誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で開口33に挿入されると、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aのうちの幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面35に対して当接する。なお、第1の傾斜面35の高さ方向X2の寸法H1は、第2の傾斜面36の高さ方向X2の寸法H2よりも大きく設定されており、更に、第1の傾斜面35の幅方向X3の寸法W1は、第2の傾斜面36の幅方向X3の寸法W2よりも大きく設定されている。このため、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、幅方向X3にずれた状態で誘導部31の開口33に挿入されると、複数の相手側接続部材101aの先端部が複数の挿入孔34へと至る第2の傾斜面36に当接するよりも先に、複数の相手側接続部材101aのうちの幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面35に対して当接する。
【0109】
図31及び
図32は、相手側コネクタ101の複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ2に対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図29のG-G線矢視位置に対応する位置での断面図である。なお、
図31は、
図30に示す状態から複数の相手側接続部材101aがさらに誘導部31の奥側に挿入された状態を示す図であり、
図32は、
図31に示す状態から複数の相手側接続部材101aがさらに誘導部31の奥側に挿入された状態を示す図である。
図31を参照して、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aが開口33に挿入され、幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aが第1の傾斜面35に当接すると、幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aが、第1の傾斜面35に沿って摺接しながら開口33の内側に挿入される。これにより、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35に沿って摺接しながら開口33に挿入される幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材100とともに挿入方向X1に移動する。このため、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、誘導部31の内側へと第1の傾斜面35によって誘導されながら挿入される。そして、
図32に示すように、複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35によって誘導されながら誘導部31の奥側まで挿入されると、続いて、複数の挿入孔34へとそれぞれ誘導されることになる。複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34へそれぞれ誘導されると、そのまま複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。そして、複数の挿入孔34にそれぞれ挿入された複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34をそれぞれ通過して、可動ハウジング12の内側で保持された端子13の相手側接続部40のバネ接点部40bと接触し、端子13に対して電気的に接続される。
【0110】
次に、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング52に対して、挿入位置が前後方向X4においてずれた状態で挿入される場合について説明する。
図33は、相手側コネクタ101の複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ2に対して挿入される直前の状態を示す正面図であって、電気コネクタ2については固定ハウジング51を省略した状態で示す図である。
図34は、
図33のH-H線矢視位置における断面図である。
図33及び
図34は、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング52に対して、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で挿入される場合を示している。
【0111】
図33及び
図34を参照して、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング52に挿入される際には、複数の相手側接続部材101aは、可動ハウジング52の誘導部31の開口33へと挿入される。複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング12に対して、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で挿入される場合は、複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34に対して、挿入方向X1において重ならずに前後方向X4にずれた位置で、開口33に挿入される。誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で開口33に挿入されると、2列に並んだ複数の相手側接続部材101aのうちの前後方向X4の一方側の列で並んだ相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁の前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に対して当接する。なお、第3の傾斜面37の高さ方向X2の寸法H3は、第4の傾斜面53の高さ方向X2の寸法H4よりも大きく設定されており、更に、第3の傾斜面37の前後方向X4の寸法Y3は、第4の傾斜面53の前後方向X4の寸法Y4よりも大きく設定されている。このため、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、前後方向X4にずれた状態で誘導部31の開口33に挿入されると、複数の相手側接続部材101aの先端部が複数の挿入孔34のそれぞれへと至る第4の傾斜面53と同じ高さに達するよりも先に、前後方向X4の一方側の列で並んだ相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に対して当接する。
【0112】
図35は、相手側コネクタ101の複数のピン状の相手側接続部材101aが電気コネクタ2に対して挿入されている途中の状態を示す断面図であって、
図33のH-H線矢視位置に対応する位置での断面図である。
図35を参照して、複数の相手側接続部材101aが開口33に挿入され、2列に並んだ複数の相手側接続部材101aのうちの前後方向X4の一方側の列で並んだ相手側接続部材101aが、前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に当接すると、前後方向X4の一方側の列で並んだ相手側接続部材101aが、第3の傾斜面37に沿って摺接しながら開口33の内側に挿入される。これにより、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37に沿って摺接しながら開口33に挿入される前後方向X4の一方側の列で並んだ相手側接続部材101aとともに挿入方向X1に移動する。このため、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、誘導部31の内側へと第3の傾斜面37によって誘導されながら挿入される。そして、複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37によって誘導されながら誘導部31の奥側まで挿入されると、続いて、複数の挿入孔34へとそれぞれ誘導されることになる。複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34へそれぞれ誘導されると、そのまま複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。そして、複数の挿入孔34にそれぞれ挿入された複数の相手側接続部材101aは、複数の挿入孔34をそれぞれ通過して、可動ハウジング52の内側で保持された端子13の相手側接続部40のバネ接点部40bと接触し、端子13に対して電気的に接続される。
【0113】
以上説明した第2実施形態によると、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aと電気コネクタ2が接続される際には、複数の相手側接続部材101aが、可動ハウジング52の誘導部31の開口33に挿入される。可動ハウジング52の誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、挿入位置がずれていない状態で開口33に挿入された場合は、誘導部31の内側の複数の挿入孔34にそれぞれ挿入される。そして、複数の挿入孔34にそれぞれ挿入された複数の相手側接続部材101aは、複数の端子13とそれぞれ電気的に接続される。一方、可動ハウジング52の誘導部31の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aが、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で開口33に挿入された場合は、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aのうちの幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面35に対して当接する。なお、誘導部31の内壁の幅方向X3の両端側において高さ方向X2に向かって且つ幅方向X3の外側に向かって傾斜して設けられた第1の傾斜面35は、幅方向X3において隣り合う挿入孔34間において挿入孔34の入口に向かって傾斜した第2の傾斜面36よりも、高さ方向X2の寸法が大きく、且つ、幅方向X3の寸法が大きく設定されている。このため、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、幅方向X3にずれた状態で誘導部31の開口33に挿入された場合は、複数の相手側接続部材101aの先端部が複数の挿入孔34へと至る第2の傾斜面36に当接するよりも先に、複数の相手側接続部材101aのうちの幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における幅方向X3の両端側のうちの一方側の第1の傾斜面35に対して当接する。そして、幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aが、第1の傾斜面35に沿って摺接しながら開口33の内側に挿入される。これにより、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35に沿って摺接しながら開口33に挿入される幅方向X3の両端側のうちの一方側の相手側接続部材101aとともに移動して、誘導部31の内側へと第1の傾斜面35によって誘導されながら挿入される。複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されると、続いて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。したがって、複数の相手側接続部材101aが、挿入位置が幅方向X3にずれた状態で可動ハウジング52に挿入される場合であっても、複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入され、複数の挿入孔34へと適切に挿入される。よって、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを電気コネクタ2に挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。また、第2実施形態によると、可動ハウジング52において、開口33を設けた誘導部31の幅方向X3の両端側に第1の傾斜面35を設けた簡素な構造で、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを電気コネクタ2に挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。このため、電気コネクタ2及び電気コネクタ2に接続される相手側コネクタ101の構造の大型化と複雑化とを招いてしまうことを抑制することができる。
【0114】
以上のとおり、第2実施形態によると、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材を挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができ、構造の大型化及び複雑化を招いてしまうことも抑制できる、電気コネクタ2を提供できる。
【0115】
また、第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ1の大きさが、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ2の大きさと同じである場合は、複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されて第2の傾斜面36と同じ高さ位置に達すると、続いて、第1の傾斜面35と第2の傾斜面36とに沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。これに対し、第2実施形態によると、第1の傾斜面35が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ1の大きさが、第2の傾斜面36が高さ方向X2に対して傾斜する方向と幅方向X3とが成す角のうちの小さい方の角θ2の大きさよりも大きく設定される。これにより、複数の相手側接続部材101aは、第1の傾斜面35の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されて第2の傾斜面36と同じ高さ位置に達しても、第2の傾斜面36にほぼ摺接することなく、引き続き、第1の傾斜面35に沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。こうして、可動ハウジング52の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、第2の傾斜面36にもほぼ摺接することなく、第1の傾斜面35に沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。このため、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを適切に挿入して接続する作業を更に円滑に容易に行うことができる。
【0116】
また、第2実施形態によると、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aが、可動ハウジング52の誘導部31の開口33に対して、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で挿入された場合は、2列に並んだ複数の相手側接続部材101aのうちの前後方向X4の一方側の列で並んだ相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に対して当接する。なお、誘導部31の内壁の前後方向X4の両端側において高さ方向X2に向かって且つ前後方向X4の外側に向かって傾斜して設けられた第3の傾斜面37は、前後方向X4において隣り合う挿入孔34間において挿入孔34の入口に向かって傾斜した第4の傾斜面53よりも、高さ方向X2の寸法が大きく、且つ、前後方向X4の寸法が大きく設定されている。このため、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aが、前後方向X4にずれた状態で誘導部31の開口33に挿入された場合は、複数の相手側接続部材101aの先端部が複数の挿入孔34のそれぞれへと至る第4の傾斜面53に当接するよりも先に、前後方向X4の一方側の列で並んだ相手側接続部材101aの先端部が、誘導部31の内壁における前後方向X4の両端側のうちの一方側の第3の傾斜面37に対して当接する。そして、複数の相手側接続部材101aが、第3の傾斜面37に沿って摺接しながら開口33の内側に挿入される。これにより、2列に並んで配置された複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37に沿って摺接しながら開口33に挿入される前後方向X4の一方側の列で並んだ相手側接続部材101aとともに移動して、誘導部31の内側へと第3の傾斜面37によって誘導されながら挿入される。複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されると、続いて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。したがって、複数の相手側接続部材101aが、挿入位置が前後方向X4にずれた状態で可動ハウジング52に挿入される場合であっても、複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入され、複数の挿入孔34へと適切に挿入される。よって、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを電気コネクタ2に挿入して接続する作業を適切に且つ容易に行うことができる。
【0117】
また、第3の傾斜面37が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角θ3の大きさが、第4の傾斜面53が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角θ4の大きさと同じである場合は、複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されて第4の傾斜面53と同じ高さ位置に達すると、続いて、第3の傾斜面37と第4の傾斜面53とに沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。これに対し、第2実施形態によると、第3の傾斜面37が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角θ3の大きさが、第4の傾斜面53が高さ方向X2に対して傾斜する方向と前後方向X4とが成す角のうちの小さい方の角θ4の大きさよりも大きく設定される。これにより、複数の相手側接続部材101aは、第3の傾斜面37の傾斜方向に沿って誘導されながら誘導部31の内側に挿入されて第4の傾斜面53と同じ高さ位置に達しても、第4の傾斜面53にほぼ摺接することなく、引き続き、第3の傾斜面37に沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。こうして、可動ハウジング52の開口33に挿入された複数の相手側接続部材101aは、第4の傾斜面53にもほぼ摺接することなく、第3の傾斜面37に沿って誘導されて、複数の挿入孔34へとそれぞれ挿入されることになる。このため、2列に並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材101aを適切に挿入して接続する作業を更に円滑に容易に行うことができる。
【0118】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0119】
前述の第1実施形態では、電気コネクタ1における挿入方向X1及び高さ方向X2が、電気コネクタ1が基板100に設置された状態において、平坦に広がる基板100の表面に対して垂直な方向として構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。電気コネクタにおける挿入方向X1及び高さ方向X2が、電気コネクタが基板100に設置された状態において、平坦に広がる基板100の表面と平行な方向として構成された形態が実施されてもよく、例えば、
図36乃至
図39に示すような変形例が実施されてもよい。
【0120】
図36は、変形例に係る電気コネクタ1aを基板とともに示す斜視図である。
図37は、電気コネクタ1aの正面図である。
図38は、
図37のI-I線矢視位置における断面図である。
図39は、
図37のJ-J線矢視位置における断面図である。なお、以下の変形例についての説明においては、前述の第1実施形態と同様に構成される要素及び第1実施形態と対応して構成される要素については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、説明を省略する。
【0121】
図36乃至
図39に示す変形例に係る電気コネクタ1aは、複数の相手側接続部材101aが可動ハウジング12の誘導部31に挿入される方向である挿入方向X1と、挿入方向X1と反対方向である高さ方向X2とが、電気コネクタ1aが基板100に設置された状態において、平坦に広がる基板100の表面と平行な方向として構成されている。また、電気コネクタ1aにおいては、複数の挿入孔34が並ぶ方向である幅方向X3と高さ方向X2との両方の方向に対して垂直な方向である前後方向X4が、平坦に広がる基板100の表面に垂直な方向として構成されている。
【0122】
図36乃至
図39に示す変形例のように、電気コネクタ1aにおける挿入方向X1及び高さ方向X2が、電気コネクタ1aが基板100に設置された状態において、平坦に広がる基板100の表面と平行な方向として構成された形態が実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、基板に対して設置される固定ハウジングと、固定ハウジングに対して相対変位可能に装着される可動ハウジングと、固定ハウジングに対して可動ハウジングを変位可能に支持する複数の端子と、を備え、並んで配置された複数のピン状の相手側接続部材が挿入されて接続される電気コネクタとして、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0124】
1、1a、2 電気コネクタ
11、51 固定ハウジング
12、52 可動ハウジング
13 端子
31 誘導部
33 開口
34 挿入孔
35 第1の傾斜面
36 第2の傾斜面
37 第3の傾斜面
53 第4の傾斜面
100 基板
101a 相手側接続部材