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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024809
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】タンク構造
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20250214BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F01P11/00 Z
B60K11/02
F01P11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129091
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 誠
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AB01
(57)【要約】
【課題】安価な構造でタンク構造の取付部に高応力が発生することを抑制する。
【解決手段】車両の冷却系に介装されるとともに、冷却媒体を貯留可能なタンク構造10において、冷却媒体を貯留可能な貯留槽をなす本体部11と、本体部11から所定の延出方向へ延出した板状部位で形成され、本体部11を車両に取り付けるための取付部20と、を有する。取付部20は、本体部11に対する接続箇所である基端部21に対して延出方向に位置し、車両側に対する取り付け箇所をなす先端部22と、先端部22と基端部21との間において取付部20の一部が打ち抜かれた応力吸収部23と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の冷却系に介装されるとともに、前記冷却系で用いられている冷却媒体を貯留可能なタンク構造において、
前記冷却媒体を貯留可能な貯留槽をなす本体部と、
前記本体部から所定の延出方向へ延出した板状部位で形成されており、前記本体部を前記車両に取り付けるための取付部と、を有し、
前記取付部は、
前記本体部に対する接続箇所である基端部に対して前記延出方向に位置し、前記車両側に対する取り付け箇所をなす先端部と、
前記先端部と前記基端部との間において前記取付部の一部が打ち抜かれた応力吸収部と、を備えた
ことを特徴とする、タンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、車両の冷却系に介装されたタンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの冷却装置において、冷却媒体に混入する空気を除去(気液分離)するためのサージタンクを設けたサージタンク方式の冷却装置が知られる。このサージタンクは、冷却媒体が循環する冷却回路に介装されており、冷却回路を循環する冷却媒体の一部が流入するようになっている。
例えば特許文献1には、キャブオーバ型トラックにおいてキャブを支持するためのキャブブリッジに配置されたサージタンクが開示されている。この例では、サージタンクの本体から延出した取付部においてボルトを締結することで、サージタンクがキャブブリッジに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-131751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高温になった冷却媒体がサージタンクに流入した場合、サージタンクが熱変形する場合がある。上記のように、本体から延出した取付部においてサージタンクがキャブブリッジに取り付けられた構造では、サージタンクの熱変形に起因する高応力が取付部、特に取付部の基端部に発生する傾向がある。この高応力の発生を抑制する技術として、例えばラバー部材を介してボルトを装着することで、ラバー部材により応力を緩和(抑制)することが従来行われている。
【0005】
しかし、この技術では、ラバー部材が比較的高価であること及びラバー部材の取り付けるための作業工数が増加することから、コストが増加していた。そのため、従来のタンク構造では、コスト増加を抑えるとともに、熱変形に起因する高応力の発生を抑制するうえで改善の余地があった。
よって、本件のタンク構造は、安価な構造でタンク構造の取付部に高応力が発生することを抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
【0007】
(1)本適用例に係るタンク構造は、車両の冷却系に介装されるとともに、前記冷却系で用いられている冷却媒体を貯留可能なタンク構造において、前記冷却媒体を貯留可能な貯留槽をなす本体部と、前記本体部から所定の延出方向へ延出した板状部位で形成されており、前記本体部を前記車両に取り付けるための取付部と、を有し、前記取付部は、前記本体部に対する接続箇所である基端部に対して前記延出方向に位置し、前記車両側に対する取り付け箇所をなす先端部と、前記先端部と前記基端部との間において前記取付部の一部が打ち抜かれた応力吸収部と、を備えている。
【0008】
このタンク構造によれば、本体部から延出した取付部の先端部が車両側に取り付けられ、この取付部の先端部と基端部との間、断面積が基端部の断面積よりも小さく設定された応力吸収部が設けられている。
上記の構成によれば、本体部が熱変形した場合、応力吸収部において熱変形による伸長が吸収されるため、取付部の全体が伸長される場合に比べて、取付部、特に取付部の基端部付近における応力の発生を緩和(抑制)することができる。
また、応力吸収部の断面積を基端部の断面積よりも小さく設定するだけで形成でき、例えばラバー部材のような別部材を取り付ける必要がないので、部品コストや工数増加によるコスト増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本件のタンク構造によれば、安価な構造でタンク構造の取付部に高応力が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】適用例に係るタンク構造と、このタンク構造が搭載されたトラックとを上方から視た平面図である。
図2図1のタンク構造とトラックとを後方から視た背面図である。
図3】適用例に係るタンク構造を図1の矢印Aから視た斜視図である。
図4】適用例に係るタンク構造を図3の矢印Bから視た斜視図である。
図5】適用例に係るタンク構造の取付部を拡大して示す説明図である。
図6】変形例に係るタンク構造の取付部を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0012】
以下、本実施形態に係るタンク構造が適応された車両の前後方向を車長方向ともいい、車両の左右方向を車幅方向ともいう。また、前後方向と左右方向とのいずれにも直交する上下方向を車高方向ともいう。なお、左右方向は、車両の前方を向いた姿勢を基準に定める。図面では、前方を「FR」で示し、後方を「RR」で示し、左方を「LH」で示し、右方を「RH」で示し、上方を「UP」で示し、下方を「DW」で示す。
【0013】
[1.構成]
図1は、本実施形態に係るタンク構造10とタンク構造10が搭載されたトラック1とを上方から視た平面図である。図2は、タンク構造10とトラック1とを後方から視た背面図である。図3は、タンク構造10を図1の矢印Aから視た斜視図である。図4はサージタンク10を図3の矢印Bから視た斜視図である。なお、図1図4では、トラック1やタンク構造10の一部を省略している。
図1及び図2に示すトラック1は、タンク構造10が搭載された車両の一例である。ここでは、キャブオーバ型のトラック1が例に挙げられている。トラック1は、車体の骨格をなすラダーフレーム2を備えている。ラダーフレーム2は、車長方向に延びる左右一対のサイドレール3L,3Rと、車幅方向に延びてサイドレール3L,3R同士を連結する複数のクロスメンバ4と、を含む。
【0014】
トラック1の前部には、運転席を有するキャブ5(図中破線で示す)が配設されている。サイドレール3L,3Rには、キャブ5を支持するアーチ状のキャブブリッジ6が前輪1L、1Rよりも後方に架設されている。詳細に言えば、キャブブリッジ6には、図2に示すように、各サイドレール3L,3Rから上方へ延出した垂直部6Aと、各垂直部6Aの上端から車幅方向内側へ斜め上方に延出した傾斜部6Bと、左右の傾斜部6B同士の上端を連結する水平部6Cとが設けられている。すなわち、キャブブリッジ6は、前後方向から見て上側の左右両側の角部が傾斜部6Bで傾きを有するコ字形状に形成されたものとも言える。
なお、各垂直部6Aには、キャブ5をキャブブリッジ6に連結するためのマウント部50L,50Rが車幅方向外外側へ延設されている。
【0015】
また、キャブ5の下方であってキャブブリッジ6の前方には、トラック1の駆動源7(図中破線で示す)が配設されている。駆動源7は例えば内燃機関(エンジン)である。
なお、トラック1は、駆動源としてエンジン7のみを装備したエンジン車両のほか、エンジン7と電動モータとを備えたハイブリット車両や、電動モータのみを装備した電動車両であってもよい。
【0016】
タンク構造10は、トラック1のエンジン7を冷却するための冷却系で用いる冷却媒体を貯留可能なタンクであり、エンジン7よりも後方に配置されたキャブブリッジ6に取り付けられている。
詳しくは、図2に示すように、タンク構造10は、キャブブリッジ6において右側上部、すなわち右側の傾斜部6Bを含む領域に取り付けられている。
【0017】
本実施形態では、タンク構造10の一例として、冷却媒体に混入する空気を除去(気液分離)するためのサージタンクを示す。冷却媒体の例としては冷却水(クーラント液)が挙げられる。
このサージタンク10は、冷却対象であるエンジン7とエンジン7に対して前方に配置されたラジエータ8(図中破線で示す)との間で冷却媒体を循環させるための冷却回路9(冷却系)に介装されている。具体的には、図1図4に示すサージタンク10は、上流側パイプ10Aと下流側パイプ10Bとを介して冷却回路9に介装されている。なお、各図において、上流側パイプ10Aと下流側パイプ10Bなどの配管は模式的に描かれている。
【0018】
上流側パイプ10Aは、2本のパイプ10AX,10AYから構成され、そのうち1本のパイプ10AXがラジエータ8のアッパータンク(図示省略)に接続され、冷却回路9中の冷却媒体の一部をラジエータ8側からサージタンク10へ流入させており、もう一本のパイプ10AYはエンジン7に接続され、エンジン7からサージタンク10へ冷却媒体の一部を流入させている。
下流側パイプ10Bは、冷却回路9中でエンジン7の上流側に配置されたウォーターポンプ(図示省略)に接続され、サージタンク10から冷却媒体を冷却回路9へ戻すパイプである。
【0019】
図3に示すように、サージタンク10には、冷却回路9から流入した冷却媒体を貯留可能な貯留槽をなす本体部11と、本体部11をキャブブリッジ6(車両)に取り付けるための取付部20とが含まれている。
【0020】
本体部11は、その内部に冷却媒体を貯留可能な空間(貯留槽)を有する立体状の容器である。図2~4に示すように、本体部11は、キャブブリッジ6(図3中破線で示す)の傾斜部6B(面取部)に適合する角柱状の容器で形成されており、傾斜部6Bの上面に配置されている。詳しくは図3及び図4に示すにように、本体部11の一部11Aが傾斜部6Bの上面に配置され、本体部11の一部11A以外の他部11Bは傾斜部6Bの上面よりも後方に配置され、ブラケット6D(図3中破線で示す)により支持されている。ブラケット6Dは、傾斜部6Bよりも後方へ延出して設けられた支持部材である。
【0021】
取付部20は、本体部11から所定の延出方向へ延出した板状部位である。
図1図4では、三つの取付部20A~20Cが設けられたサージタンク10の構成例を示す。所定の延出方向とは、各取付部20A~20Cが本体部11から延出する方向であり、各取付部20A~20Cが取り付けられるキャブブリッジ6の各部位が延在する方向に沿う方向である。
【0022】
取付部20Aは、キャブブリッジ6の水平部6Cに対して取り付けられる部位である。この取付部20Aは、水平部6Cの上面に配置され、水平部6Cの延在する車幅方向に沿って、本体部11の一部11Aから車幅方向内側へ向かって略水平に延出している。
取付部20B及び取付部20Cは、図4に示すように、キャブブリッジ6の傾斜部6Bに対して、ブラケット6Dを介して取り付けられる部位である。
【0023】
取付部20Bは、傾斜部6Bに対して後方に隣接して配置されており、傾斜部6Bの延在する傾斜方向に沿って、本体部11の他部11Bから車幅方向内側へ向かって斜め上へ延出し、ブラケット6Dに支持されている。
取付部20Cは、傾斜部6Bに対して後方に隣接して配置されており、傾斜部6Bの延在する傾斜方向に沿って、本体部11の他部11Bから車幅方向外側へ向かって斜め下へ延出し、ブラケット6Dに支持されている。
三つの取付部20A~20Cの大きさや形状は、取り付け先となる部位の形状や寸法に応じて適宜設定されてよい。なお、三つの取付部20A~20Cを区別しない場合は「取付部20」と称する。
【0024】
図5は、一つの取付部20を上から視た説明図である。ここでは、取付部20の例として、取付部20Aを挙げている。
取付部20には、本体部11との接続箇所である基端部21に対して延出方向D1(基端部21から遠ざかる方向)に位置する先端部22が設けられている。この先端部22がキャブブリッジ6(車両側)の水平部6Cに対する取り付け箇所をなす。
先端部22には、キャブブリッジ6に対する取り付け用ボルト22Bを挿通するためのボルト孔22Aが貫設されている。すなわち、サージタンク10には、本体部11から延出方向へ離隔して設けられた先端部22においてキャブブリッジ6へ取り付けられている。
【0025】
取付部20には、先端部22と基端部21との間であってボルト孔22A(図5中破線で示す)よりも基端部21側の位置に応力吸収部23が設けられている。
応力吸収部23は、本体部11(サージタンク10)の熱変形に起因して取付部20、特に取付部20の基端部21付近に応力が発生することを抑制する部位である。
応力吸収部23には、応力を抑制するための構造として、断面積が基端部21よりも小さく設定された構造が設けられている。ここで、断面積とは、取付部20において延出方向に対して交差する切断面の面積である。
【0026】
具体的には、図5に示す取付部20には応力吸収部23として開口23Aが貫設されている。
開口23Aは、取付部20において板幅方向D2の中央部に配設されている。この開口23Aは、取付部20の中央部(取付部20の一部)が厚み方向に打ち抜かれた通孔である。開口23Aが貫設されるので、応力吸収部23の断面積は基端部21よりも小さく設定されたものと言える。言い換えれば、応力吸収部23には、応力を抑制するための構造として、取付部20の一部が厚み方向に打ち抜かれ構造が設けられている。
【0027】
開口23Aの形状や寸法は、応力を抑制する性能と取付部20の強度の確保との観点から適宜に設定される。例えば、開口23Aの寸法が大きいほど、応力を抑制する性能が高まる一方で、取付部20の強度を確保し難くなると言える。
図5に示す開口23Aは、取付部20の板面において延出方向D1に交差する板幅方向D2に沿う辺が長辺をなす長方形状に形成されている。開口23Aの板幅方向D2の寸法は、例えばボルト孔22Aの径以上に設定される。また、取付部20の板幅方向D2の両側にリブを設けて補強した場合には、開口23Aの寸法をより大きく設定することが可能である。
【0028】
取付部20は、開口23Aの設けられた中央部において先端部22と基端部21とが連結されておらず、開口23Aに対して板幅方向D2の両側部23Bにおいて取付部20の先端部22と基端部21とが連結されている。開口23A(応力吸収部23)を設けた取付部20は、開口23Aの設けられた中央部を除く両側部23Bのみで部分的に先端部22と基端部21とが連結されたものと言える。
三つの取付部20A~20Cの全てに図5に示すような開口23A(応力吸収部23)が設けられている。各取付部20A~20Cの開口23Aは共通の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。すなわち、各取付部20A~20Cの開口23Aの形状や寸法は、各取付部20A~20Cの形状や寸法に応じて適宜に設定されてよい。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、サージタンク10にはパイプ10Cを介してリザーバタンク30が接続されている。
リザーバタンク30は、冷却媒体が高温になって体積が増加した場合に、サージタンク10内の冷却媒体の一部が流入し、一時的に貯留する予備的タンクである。サージタンク10は、エンジン7とリザーバタンク30との間に介在するものともいえる。
【0030】
[2.作用効果]
以上説明した本実施形態に係るサージタンク10は以下のような作用効果を奏する。
本適用例に係るサージタンク10は、本体部11から延出した取付部20の先端部22でキャブブリッジ6に取り付けられている。取付部20において先端部22よりも基端部21側には、応力吸収部23として、取付部20の中央部(取付部20の一部)が打ち抜かれた開口23Aが設けられている。すなわち、この応力吸収部23では、開口23Aを設けることにより基端部21よりも断面積が小さく設定される。
【0031】
上記の構成によれば、本体部11が熱変形し、図5において白抜き矢印で示す熱伸方向に沿う伸長力が本体部11から取付部20に加わると、応力吸収部23の開口23Aにより熱変形による伸長が吸収され、両側部23Bだけが伸長する。そのため、取付部20の全体が伸長される場合に比べて、取付部20、特に取付部20の基端部21付近における応力の発生を緩和(抑制)することができる。
【0032】
また、応力吸収部23は、取付部20に開口23Aを打ち抜いて、その断面積を基端部21の断面積よりも小さく設定するだけで形成できるので、例えばラバー部材のような別部材を取り付ける必要がないので、部品コストや作業工数の増加によるコスト増加を抑制することができる。
以上より、適用例に係るサージタンク10によれば、安価な構造で取付部20に高応力が発生することを抑制することができる。
【0033】
[3.そのほか]
応力吸収部23は、上記の図5に示すような開口23Aを設けた構造に限定されない。
応力吸収部23の変形例として、図6に示す取付部20′には、上記の開口23Aに替えて、板幅方向D2の両側部(取付部20′の一部)に、板幅方向D2の外側から内側へ向かう切り欠き(凹み)状に打ち抜かれた溝部23Cが設けられている。溝部23Cは、先端部22と基端部21との間であってボルト孔22A(図6中破線で示す)よりも基端部21側の位置に配設されている。すなわち、この応力吸収部23では、取付部20′の両側部が厚み方向に打ち抜かれた溝部23Cを設けることにより、基端部21よりも断面積が小さく設定されている。
【0034】
各溝部23Cの形状や寸法は、応力を抑制する性能と取付部20′の強度の確保との観点から適宜に設定される。例えば、各溝部23C同士の板幅方向D2の間隔(各溝部23C同士の間に位置する中央部23Dの板幅方向D2の寸法)が小さいほど、応力を抑制する性能が高まる一方で、取付部20′の強度を確保し難くなると言える。
よって、中央部23Dの板幅方向D2の寸法は、例えばボルト孔22Aの径以上に設定される。例えば、取付部20′の板幅方向D2の両側にリブを設けて補強できる場合、各溝部23C同士の板幅方向D2の間隔をより大きく設定することが可能である。
また、図6に示す各溝部23Cは板幅方向D2の上側へ向かって凸をなす曲線状の切り欠きにより形成されている。
【0035】
図6に示す応力吸収部23では、板幅方向D2の両側に設けられた各溝部23Cにおいて先端部22と基端部21とが連結されておらず、各溝部23C同士の間に位置する中央部23Dにおいて取付部20の先端部22と基端部21とが連結されている。溝部23C(応力吸収部23)を設けた取付部20′は、溝部23Cの設けられた両側を除く中央部23Dのみで部分的に先端部22と基端部21とが連結されたものと言える。
【0036】
図6に示す応力吸収部23によれば、本体部11が熱変形した場合に取付部20′に対して白抜き矢印で示す熱伸方向に伸長する伸長力が加わると、応力吸収部23の溝部23Cにより熱変形による伸長が吸収され、溝部23C同士の間の中央部23Dだけが伸長する。そのため、取付部全体が伸長される場合に比べて、特に取付部20′の基端部21付近における応力の発生を緩和(抑制)することができる。
よって、図6の変形例に係る取付部20′を備えたサージタンク10によれば、安価な構造で取付部20に高応力が発生することを抑制することができる。
【0037】
また、開口23Aは、上記のように直線で囲まれた矩形状の開口に限らず、例えば楕円形状のように、曲線で囲まれた開口でもあってもよい。溝部23Cは、上記のように曲線状の切り欠きにより形成されたものに限らず、例えばコの字型やV字型のように直線状の切り欠きにより形成されてもよい。
サージタンク10に設けられた三つの取付部20A~20Cの全てに応力吸収部23が設けられていてもよいし、三つの取付部20A~20Cのうち少なくとも一つにだけ選択的に応力吸収部23が設けられていてもよい。例えば、三つの取付部20A~20Cのうち延出方向の寸法の最も長い取付部20Aにだけ応力吸収部23が設けられていてもよい。
【0038】
サージタンク10に設けられた取付部20の数は、三つに限らず一つ以上の複数であってよい。
取付部20をキャブブリッジ6に取り付ける方法は、ボルト孔22Aにボルトを締結する方法に限らず、その他周知の取り付け方法を適宜採用してよい。
サージタンク10が適用される車両は、キャブオーバ型のトラック1に限らず、どのような種類の車両であってもよい。また、本実施形態に係るタンク構造10は、車両の冷却系に介装されるとともに、前記冷却系で用いられている冷却媒体を貯留可能なタンクであれば、上記のサージタンクに限らずどのような種類のタンクに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 トラック(車両)
1L,1R 前輪
2 ラダーフレーム
3B 傾斜部
3L,3R サイドレール
4 クロスメンバ
5 キャブ
6 キャブブリッジ
6A 垂直部
6B 傾斜部
6C 水平部
6D ブラケット
7 エンジン(駆動源)
8 ラジエータ
9 冷却回路(冷却系)
10 サージタンク(タンク構造)
10A,10AX,10AY 上流側パイプ
10B 下流側パイプ
10C パイプ
11 本体部
20,20A~20C,20′ 取付部
21 基端部
22 先端部
22A ボルト孔
22B 取り付け用ボルト
23 応力吸収部
23A 開口
23B 両側部
23C 溝部
23D 中央部
30 リザーバタンク
50L,50R マウント部
図1
図2
図3
図4
図5
図6