(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002481
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】液体凍結装置
(51)【国際特許分類】
F25D 13/00 20060101AFI20241226BHJP
F25D 17/02 20060101ALI20241226BHJP
A23B 2/80 20250101ALN20241226BHJP
【FI】
F25D13/00 A
F25D17/02 303
A23L3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102688
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美帆
(72)【発明者】
【氏名】大矢 敏史
【テーマコード(参考)】
3L045
4B022
【Fターム(参考)】
3L045AA04
3L045BA03
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045FA02
3L045GA02
3L045HA01
3L045KA00
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA04
3L045PA05
4B022LF11
4B022LN05
4B022LT06
(57)【要約】
【課題】不凍液が冷却領域内にて螺旋状に巻回された蒸発管の内側と外側と間の狭い範囲で循環しないようにして、浸漬領域の不凍液を十分に冷却できるようにする。
【解決手段】液体凍結装置10は、内部に不凍液を貯える凍結槽20と、凍結槽20内にて螺旋状に巻回した蒸発管34に冷媒を循環させることにより不凍液を冷却する冷凍装置30と、凍結槽20内にて蒸発管34の内側に回転可能に設けられた撹拌羽根57を回転させることによって下方へ流れる液流を発生させる撹拌装置50と、凍結槽20内を蒸発管34が配置された冷却領域20cと被凍結物を浸漬させる浸漬領域20bとに通液可能に仕切る仕切板25とを備え、凍結槽20内の底部には撹拌羽根57の下側に冷却領域20cから浸漬領域20b側に向けて下方に傾斜して撹拌羽根57によって下方に流れる不凍液を通路25bを通して浸漬領域20bに案内するガイド部59が設けられている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯えた不凍液により被凍結物を凍結させる凍結槽と、
前記凍結槽内にて螺旋状に巻回した蒸発管に冷媒を循環させることにより前記不凍液を冷却する冷凍装置と、
前記凍結槽内にて前記螺旋状に巻回した蒸発管の内側に回転可能に設けられた撹拌羽根を回転させることによって前記螺旋状に巻回した蒸発管の内側に下方へ流れる液流を発生させる撹拌装置と、
少なくとも前記凍結槽内の底部に凍結液が通過可能な通路を有して、前記凍結槽内を前記蒸発管が配置されて不凍液を冷却する冷却領域と前記被凍結物を浸漬させるための浸漬領域とに通液可能に仕切る仕切板とを備えた液体凍結装置であって、
前記凍結槽内の底部には前記撹拌羽根の下側に前記冷却領域から前記浸漬領域側に向けて下方に傾斜して回転する前記撹拌羽根によって下方に流れる不凍液を前記通路を通して前記浸漬領域に案内するガイド部を設けたことを特徴とする液体凍結装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体凍結装置において、
前記ガイド部には前記冷却領域と前記浸漬領域とが配置される方向と水平方向に直交する方向に不凍液の流れを遮る遮蔽部を設けたことを特徴とする液体凍結装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体凍結装置において、
前記撹拌羽根の上側には前記撹拌羽根に空気の巻き込みを防止する空気巻き込み防止板を設けたことを特徴とする液体凍結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材や調理物等の被凍結物を冷却した不凍液によって凍結させる液体凍結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、食材や調理物等の被凍結物を冷却した不凍液によって凍結させる食品冷凍装置が開示されている。この食品冷凍装置は、不凍液を貯える冷凍槽と、冷凍槽内の左側部にて螺旋状に巻回された冷媒管に冷媒を循環させることにより不凍液を冷却する冷凍装置と、冷凍槽内にて螺旋状に巻回された蒸発管の内側に撹拌羽根を有した撹拌手段とを備えている。この食品冷凍装置においては、冷凍槽内の不凍液は冷凍装置を構成する冷媒管を循環する冷媒により冷却されており、冷媒管により冷却された不凍液は螺旋状に巻回された冷媒管の内側で撹拌手段の撹拌羽根により下方へ流れる液流によって冷媒管の下部から遠心方向の外側に送出され、冷凍槽内の不凍液は撹拌手段の撹拌羽根により螺旋状に巻回された冷媒管の上部から内側に流入し、冷凍槽内の不凍液は螺旋状に巻回された冷媒管の内側と外側を循環することで冷却されている。冷凍槽内の不凍液中に食材等の被凍結物を浸漬すると、被凍結物は冷却された不凍液と熱交換されて凍結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で用いられている食品冷凍装置(液体凍結装置)においては、冷凍槽(凍結槽)内の不凍液は螺旋状に巻回された冷媒管(蒸発管)の内側と外側とを循環することで冷却されている。この種の食品冷凍装置では、冷凍槽内を冷媒管が配置されて不凍液を冷却する冷却領域と被凍結物を不凍液に浸漬させる浸漬領域とに仕切る仕切板を配設することで、被凍結物が冷媒管に接触する可能性を回避することができる。冷凍槽内を仕切板によって冷媒管が配置された冷却領域と被凍結物を浸漬させる浸漬領域に仕切るようにしたときには、撹拌手段の撹拌羽根によって螺旋状に巻回された冷媒管の下部から外側に送出された不凍液は仕切板によって冷却領域から浸漬領域に流れにくくなるおそれがある。この場合に、螺旋状に巻回された冷媒管の下部から外側に送出された不凍液は螺旋状に巻回された冷媒管の外側を上昇して螺旋状に巻回された冷媒管の上部から内側に流入し、不凍液が螺旋状に巻回された冷媒管の内側と外側との間の狭い範囲で循環するでショートサイクルが生じることになり、浸漬領域の不凍液を十分に冷却することができないおそれがある。本発明は、凍結槽内を螺旋状に巻回された蒸発管が配置されて不凍液を冷却する冷却領域と被凍結物を浸漬させるための浸漬領域とを通液可能に仕切る仕切板を設けた液体凍結装置において、不凍液が螺旋状に巻回された蒸発管の内側と外側と間の狭い範囲で循環しないようにして、凍結槽の浸漬領域の不凍液を十分に冷却できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために、内部に貯えた不凍液により被凍結物を凍結させる凍結槽と、凍結槽内にて螺旋状に巻回した蒸発管に冷媒を循環させることにより不凍液を冷却する冷凍装置と、凍結槽内にて螺旋状に巻回した蒸発管の内側に回転可能に設けられた撹拌羽根を回転させることによって螺旋状に巻回した蒸発管の内側に下方へ流れる液流を発生させる撹拌装置と、少なくとも凍結槽内の底部に凍結液が通過可能な通路を有して、凍結槽内を蒸発管が配置されて不凍液を冷却する冷却領域と被凍結物を浸漬させるための浸漬領域とに通液可能に仕切る仕切板とを備えた液体凍結装置であって、凍結槽内の底部には撹拌羽根の下側に冷却領域から浸漬領域側に向けて下方に傾斜して回転する撹拌羽根によって下方に流れる不凍液を通路を通して浸漬領域に案内するガイド部を設けたことを特徴とする液体凍結装置を提供するものである。
【0006】
上記のように構成した液体凍結装置においては、凍結槽内の底部には撹拌羽根の下側に冷却領域から浸漬領域側に向けて下方に傾斜して撹拌羽根によって下方に流れる不凍液を通路を通して浸漬領域に案内するガイド部が設けられている。凍結槽内の冷却領域の凍結液は螺旋状に巻回した蒸発管の内側にて撹拌装置の撹拌羽根による液流によって下方に流れ、下方に流れる不凍液はガイド部によって浸漬領域側に送出されるようになるので、不凍液が螺旋状に巻回された蒸発管の内側と外側と間の狭い範囲で循環するショートサイクルが生じないようになり、凍結槽の浸漬領域の不凍液を十分に冷却することができる。
【0007】
上記のように構成した液体凍結装置においては、ガイド部には冷却領域と浸漬領域とが配置される方向と水平方向に直交する方向に不凍液の流れを遮る遮蔽部を設けるのが好ましい。このようにしたときには、螺旋状に巻回された蒸発管の内側を下方に流れる不凍液は遮蔽部によって冷却領域と浸漬領域とが配置される方向と水平方向に直交する方向に流れにくくなって浸漬領域に多く流れるようになり、凍結槽の浸漬領域の不凍液をさらに十分に冷却することができる。
【0008】
また、この種の液体凍結装置においては、撹拌装置の撹拌羽根を回転させることにより螺旋状に巻回した蒸発管の内側に下方へ流れる液流を発生させたときに、撹拌羽根の上側に発生する渦によって、撹拌羽根に空気が巻き込まれるおそれがある。撹拌羽根に空気が巻き込まれると、不凍液に熱量を持つ空気が混入し、不凍液の冷却速度が遅くなるおそれがある。上記のように構成した液体凍結装置においては、撹拌羽根の上側には撹拌羽根に空気の巻き込みを防止する空気巻き込み防止板を設けるのが好ましい。このようにしたときには、撹拌装置の撹拌羽根を回転させることにより螺旋状に巻回した蒸発管の内側に下方へ流れる液流を発生させたときに、撹拌羽根に空気が巻き込まれにくくすることができ、撹拌羽根に空気が巻き込まれることでの不具合を生じさせにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】液体凍結装置の左右方向の中央部を前後方向に沿って切断した縦方向断面図である。
【
図4】箱形ケーシング部のカバーを取り外した状態の液体凍結装置の斜視図である。
【
図6】液体凍結装置の上側部にて前後方向の中央部で左右方向に沿って切断した縦方向断面図である。
【
図7】液体凍結装置の冷凍装置を中心とした概略図である。
【
図9】仕切板の後側位置での左右方向に沿って切断した縦方向断面斜視図(a)と、(a)の蒸発管を取り外した状態の縦方向断面斜視図(b)である。
【
図10】
図4にて撹拌装置を上側に取り外した状態の斜視図である。
【
図11】網棚を前方に引き出した状態の収納籠の斜視図である。
【
図12】網棚を収納籠内に収納した状態で可動枠部の下部を外側に回動させたときの収納籠の斜視図である。
【
図13】収納籠の係止部を凍結槽の開口部のフックに係止させたときの
図2に相当する縦方向断面図である。
【
図14】収納籠の係止部を凍結槽の開口部のフックに係止させて網棚を前方に引き出したときの斜視図である。
【
図16】凍結運転モードから保冷運転モードに切り替えたときのタイムチャートである。
【
図17】凍結運転モードで省エネルギーモードから通常凍結モードに切り替えるときのタイムチャートである。
【
図18】凍結運転モードで温度センサにより被凍結物投入温度を検出したときに省エネルギーモードから通常凍結モードに切り替えるときのタイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の液体凍結装置の一実施形態を添付図面を参照して説明する。本発明の液体凍結装置10は、リキッドフリーザーとも呼ばれるものであり、エタノール(57wt%)を用いた不凍液を用いて食材、調理物等の被凍結物を急速で凍結させるものである。食材、調理物等の被凍結物は、主として真空包装機等を用いて包装袋内に密閉されたものが用いられ、液体凍結装置10で凍結された後で冷凍庫内で冷凍保存される。
図1及び
図2に示したように、液体凍結装置10は、ハウジング11内の上部に凍結槽20と下部に機械室12とを備えている。
図2及び
図3に示したように、凍結槽20の後部には後述する撹拌装置50の撹拌モータ51を支持する支持板13が架設されており、ハウジング11の上面部には後部を除く部分に凍結槽20の上面の開口部20aが配置され、ハウジング11の後側上面部に配置される支持板13の上側には上方に立ち上がる箱形ケーシング部14が設けられている。
【0011】
図1、
図2及び
図4に示したように、箱形ケーシング部14は後述する撹拌装置50の撹拌モータ51を含めた各種機器及び制御装置80を構成する基板17等を収納するものであり、箱形ケーシング部14は前部及び上部を覆うカバー15を着脱可能に備えている。
図4に示したように、箱形ケーシング部14のカバー15を取り外すことにより、箱形ケーシング部14は内部がメンテナンス可能となる。
図1及び
図3に示したように、カバー15は、箱形ケーシング部14の前面から上面を覆っており、前面15aと上面15bとの間に斜め前方に傾斜する傾斜面15cを備えている。カバー15の傾斜面15cには操作パネル部(パネル部)16が設けられており、操作パネル部16はこの液体凍結装置10の各種操作をするための操作スイッチ等を用いた操作部16aと、凍結槽20内の不凍液の温度や各種情報を表示する液晶パネルやランプ等を用いた表示部16bとを備えている。
【0012】
図2、
図4及び
図8に示したように、箱形ケーシング部14内には内部を下部領域と上部領域とに仕切る仕切部材18が設けられ、箱形ケーシング部14内の下部領域には撹拌モータ51が配設され、箱形ケーシング部14の上部領域には基板17が配設されている。箱形ケーシング部14の上部領域に配置される基板17は、凍結槽20内にて冷却された不凍液から離れた位置に配置されているので、凍結槽20内の不凍液の冷熱の影響を受けにくい。また、箱形ケーシング部14の下部領域には撹拌モータ51及び冷凍装置30の冷媒配管の一部が配置されているので、箱形ケーシング部14内は撹拌モータ51の排熱や冷媒配管を通過する冷媒から生じる熱により温められる。ハウジング11の後部には冷凍装置30の冷媒配管の一部を収納する機械室12から箱形ケーシング部14内に冷媒を循環させる冷凍装置30の冷媒配管を収納する後部ケーシング部19が設けられており、機械室12内に配置した冷凍装置30の圧縮機31の排熱が後部ケーシング部19を介して箱形ケーシング部14内に導入される。箱形ケーシング部14内の基板17は凍結槽20の不凍液から離れた位置に配置されているだけでなく、箱形ケーシング部14内には撹拌モータ51の排熱が生じるとともに機械室12から圧縮機31の排熱が導入されるので、箱形ケーシング部14の上部の基板17に結露が生じにくい。
【0013】
図2及び
図3に示したように、凍結槽20は、内部に貯えた不凍液により被凍結物を凍結させるものであり、上面に被凍結物を出し入れするための開口部20aが形成された略直方体形状をしている。凍結槽20の外周面には断熱材が設けられており、凍結槽20内に貯えた不凍液の冷熱が断熱材によって外側に放出されにくい。
図2に示したように、凍結槽20は、上側が開いた箱形をした本体部21と、本体部21の上側に設けられた上側部22とを備えている。
図5に示したように、本体部21の上端部には外側に拡がる取付フランジ部21aが形成され、上側部22の下端部には外側に拡がる取付フランジ部22aが形成されている。本体部21の取付フランジ部21aの上側に上側部22の取付フランジ部22aが重なるように配置され、本体部21の取付フランジ部21aと上側部22の取付フランジ部22aとの間にはシリコンシート等の断熱材23が介装されている。上側部22の取付フランジ部22aは断熱材23が介装された状態で本体部21の取付フランジ部21aにリベットによって固定されている。さらに、本体部21の取付フランジ部21aと上側部22の取付フランジ部22aとの間はシリコンコーキングによってシールされている。凍結槽20内には不凍液が本体部21の上端よりも低い液面で貯えられており、本体部21内の不凍液の冷熱が断熱材23によって上側部22に伝わりにくい。
【0014】
図2及び
図3に示したように、凍結槽20の前部及び左右両側部の上部には外側に拡がるフランジ部24が形成されており、フランジ部24の内側は凍結槽20の上面の開口部20aとなっている。フランジ部24は、上側部22の周囲(前側及び左右側)の側壁から斜め外側に傾斜する傾斜部24aと、傾斜部24aの上端から水平方向にて外側に拡がる水平部24bとを備えている。傾斜部24aは凍結槽20の左右方向に対向する左右両側の側面(本体部21及び上側部22の左右両側の側面)から外側に斜め上方に傾斜している。フランジ部24は凍結槽20内から被凍結物を持ち上げたときに滴り落ちる不凍液を受ける機能を有しており、滴り落ちた不凍液はフランジ部24から凍結槽20内に導かれる。フランジ部24は傾斜部24aが形成されることにより水平部24bの面積が小さく形成され、フランジ部24で受けた不凍液は傾斜部24aによって凍結槽20内に戻りやすい。また、フランジ部24の水平部24bの下側にはヒータ24cが設けられており、ヒータ24cはフランジ部24の水平部24bの上面に結露を生じさせにくくする機能を有している。ヒータ24cは箱形ケーシング部14の下側にも配設されているので、箱形ケーシング部14内はヒータ24cによって温められて基板17に結露が生じにくい。
【0015】
フランジ部24の左右両側の傾斜部24aには後述する被凍結物を凍結槽20内に浸漬させるための収納籠60の下部を支持するフック24dが設けられており、収納籠60はフック24dによって凍結槽20内の不凍液の液面から離間した状態で凍結槽20の開口部20aに支持される。傾斜部24aは凍結槽20の左右方向に対向する左右両側の側面から外側に斜め上方に傾斜しているので、傾斜部24aに取り付けられたフック24dは凍結槽20の左右両側面の鉛直方向の上側から外側に待避することになる。このため、収納籠60を凍結槽20内に出し入れするときには、収納籠60がフック24dに引っかかりにくい。フック24dは左右両側の傾斜部24aで前後に離間した2箇所に配設されている。なお、左右の各々の傾斜部24aにて前後に配設されたフック24dを前後に連続するように配設するようにしてもよい。
【0016】
図1~
図3に示したように、凍結槽20の上面の開口部20aには扉(蓋)26が開閉自在に設けられており、扉26はハウジング11の後部にて水平軸線回りに回動可能に支持されている。扉26の内部には断熱材が設けられており、扉26の下面には凍結槽20の開口部20aの周縁部との間をシールするパッキン26aが設けられている。扉26の左右両側部の後端部には扉26を閉じた状態で後方に延出するアーム部27が設けられており、アーム部27の先端部は箱形ケーシング部14の側部(側面)14aに回動可能に支持されている。扉26の前部を持ち上げて凍結槽20の開口部20aを開放したときに、扉26の後端はアーム部27によって持ち上がるようになり、箱形ケーシング部14に設けた操作パネル部16が前側から露出されるようになる。このように、扉26が閉塞されたときだけでなく開放されたときであっても、操作パネル部16の操作部16a及び表示部16bは前側から操作及び視認可能となっている。
【0017】
図2及び
図6に示したように、凍結槽20の後部には仕切板25が設けられており、仕切板25は凍結槽20内の後部を不凍液が通過可能に前後に仕切っている。
図6に示したように、仕切板25には不凍液が通過可能な多数の開口部25aが形成されており、仕切板25と凍結槽20の底部との間には不凍液が通過可能な通路25bが形成されている。凍結槽20内は仕切板25により仕切られた後部より前側を被凍結物を不凍液中に浸漬させるための浸漬領域20bとし、凍結槽20の後部を不凍液を冷却するための冷却領域20cとしている。仕切板25の上部には凍結槽20内の不凍液の上限液位を表示する上限液位表示部25cと、凍結槽20内の不凍液の下限液位を表示する下限液位表示部25dとが形成されている。これらの上限及び下限液位表示部25c,25dの各々は左右方向に配置される複数の突部により形成されており、液体凍結装置10の前側から見やすい位置に配置されている。
図6及び
図7に示したように、凍結槽20内には温度センサ28が設けられており、温度センサ28は凍結槽20内の不凍液の温度を検出している。
【0018】
図2及び
図7に示したように、冷却領域20cには冷凍装置30を構成する蒸発管34が螺旋状に巻回されて配設されており、凍結槽20内の不凍液は蒸発管34を通過する冷媒によって冷却される。
図7に示したように、冷凍装置30は、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮機31から圧送された冷媒を冷却して液化させる凝縮器32と、凝縮器32にて液化させた液化冷媒を膨張させて低圧の液化冷媒とする膨張弁33と、膨張弁33により膨張させた液化冷媒を気化させて凍結槽20内の不凍液を冷却する蒸発管34とを備えている。冷凍装置30は、圧縮機31、凝縮器32、膨張弁33及び蒸発管34を冷媒管によって環状に接続することで冷媒が循環する冷凍回路を構成している。冷凍装置30の冷媒を循環させたときには、圧縮機31から圧送された冷媒が凝縮器32にて冷却されて液化冷媒となり、液化冷媒は膨張弁33にて低圧の液化冷媒となり、低圧の液化冷媒は蒸発管34にて蒸発するときの気化熱によって凍結槽20内の不凍液を冷却する。
【0019】
図7に示したように、圧縮機31には過負荷リレー31aが設けられており、過負荷リレー31aは冷媒の液温が高いときや過電流が流れたときのような異常時に圧縮機31を停止させている。冷凍装置30は、圧縮機31と並列的に均圧弁35を備えており、均圧弁35は開放することによって圧縮機31の冷媒の吸入側及び吐出側での差圧を解消するのに用いられる。また、圧縮機31の冷媒の吐出側には温度センサ36が設けられており、温度センサ36は圧縮機31から吐出される冷媒の温度を検出する。
【0020】
図2、
図8及び
図9に示したように、凍結槽20の冷却領域20cには螺旋状に巻回された蒸発管34の内側に撹拌装置50の撹拌羽根57が配設されており、凍結槽20内の不凍液は撹拌装置50の撹拌羽根57が回転することにより撹拌される。
図4及び
図8に示したように、撹拌装置50は、凍結槽20の後部に架設した支持板13の上側に撹拌モータ51を備えており、撹拌モータ51は取付板52を介して支持板13に着脱可能に固定されている。撹拌モータ51は、回転数を変更可能としたものであって、回転数を変更することによって凍結槽20内の不凍液の液流の強度を変更可能としている。
図8に示したように、撹拌モータ51と取付板52との間には樹脂材よりなる断熱材を用いたスペーサ53が設けられており、スペーサ53は凍結槽20内の不凍液から支持板13及び取付板52を介して撹拌モータ51に冷熱の伝達を妨げている。また、取付板52の下側には筒状の断熱体54と断熱体54の下面に設けた固定板55とが設けられており、断熱体54は凍結槽20内の不凍液から取付板52に冷熱の伝達を妨げている。
【0021】
図2、
図8及び
図9に示したように、撹拌モータ51の回転軸56は凍結槽20内にて螺旋状に巻回された蒸発管34の内側に垂下しており、回転軸56の先端部には撹拌羽根57が設けられている。撹拌モータ51により回転軸56を回転させると、回転軸56の先端部の撹拌羽根57が凍結槽20内の螺旋状の蒸発管34の内側で回転する。撹拌羽根57を回転させることにより、冷却領域20c内の不凍液は螺旋状の蒸発管34の内側を通過するときに冷却され、冷却された不凍液は蒸発管34の底部を通って外側に送出され、送出された不凍液は仕切板25の下端と凍結槽20の底壁との間の通路25bを通って浸漬領域20b側に流れる。浸漬領域20bに送出された不凍液は仕切板25の開口部25aから冷却領域20c側に流れ、冷却領域20cに送出された不凍液は螺旋状の蒸発管34の上側から内側に流入する。このように、凍結槽20内の不凍液は浸漬領域20bと冷却領域20cとを循環する過程で蒸発管34により冷却されている。
【0022】
図2、
図8及び
図9に示したように、撹拌羽根57の上側には撹拌羽根57に空気の巻き込みを防止する空気巻き込み防止板58が設けられている。空気巻き込み防止板58は、撹拌羽根57を回転させたときに撹拌羽根57の上側に渦の発生を抑制し、撹拌羽根57に空気が巻き込まれるのを防ぐようにし、凍結槽20内の不凍液が巻き込まれる空気によって温度が上昇するのを防ぐようにしている。この実施形態の空気巻き込み防止板58は2つの空気巻き込み防止板58a,58bを備えており、上側の空気巻き込み防止板58aは仕切板25の上部に取り付けられており、下側の空気巻き込み防止板58bは回転軸56に嵌合固定されている。上側の空気巻き込み防止板58aには後側に開いた回転軸56を挿通する切欠部58cが形成されており、切欠部58cには回転軸56が挿通されている。上側の空気巻き込み防止板58aは上側から見たときに撹拌羽根57より大きな大きさをし、撹拌羽根57に空気を巻き込みにくくしている。下側の空気巻き込み防止板58bは、円形の樹脂部材を用いたものであり、中心部が上側の空気巻き込み防止板58aと撹拌羽根57との間で回転軸56に嵌合されている。撹拌羽根57の上側には空気の巻き込みを防止する2つの空気巻き込み防止板58a,58bが設けられているので、撹拌羽根57の回転時に撹拌羽根57に空気が巻き込まれにくい。
【0023】
図2、
図8及び
図9に示したように、凍結槽20の底部には冷却領域20c内の不凍液を浸漬領域20bに案内するガイド部59が設けられている。ガイド部59は、撹拌羽根57の下側にて冷却領域20cから浸漬領域20b側となる前側に向けて下方に傾斜する傾斜板を用いたものであり、螺旋状に巻回された蒸発管34の内側で撹拌羽根57によって下方に流れる不凍液を仕切板25の下側の通路25bを通して浸漬領域20bに案内するものである。また、ガイド部59の左右両側には上方に立ち上がる遮蔽部59aが設けられており、遮蔽部59aは撹拌羽根57により下方に流れる不凍液を浸漬領域20bと冷却領域20cとが配置される方向と水平方向に直交する方向として左右方向に流れにくくしている。遮蔽部59aは、凍結槽20内の不凍液を螺旋状に巻回された蒸発管34の内側から左右方向に流れにくくし、蒸発管34の内側を流れる不凍液が蒸発管34の左右方向の外側と凍結槽20の左右の側面との間を上昇して再び蒸発管34の内側に流入して蒸発管34の内外を狭い範囲で循環するショートサイクルの発生を防いでいる。このように、凍結槽20の底部に冷却領域20c内の不凍液を浸漬領域20bに案内するガイド部59を設けるようにしたので、凍結槽20内の不凍液は冷却領域20cと浸漬領域20bとの間で循環するようになり、浸漬領域20b内に浸漬した被凍結物が冷却領域20cで冷却された不凍液により冷却される。
【0024】
撹拌装置50は、撹拌モータ51を含めて全ての部品が取付板52に固定されており、取付板52は支持板13にねじによって着脱可能に固定されている。
図10に示したように、撹拌装置50をメンテナンスするときには、箱形ケーシング部14のカバー15を取り外して、箱形ケーシング部14の内部を開放し、取付板52を固定するねじを取り外した後で、撹拌モータ51を取付板52とともに持ち上げることで、撹拌装置50を取り外してメンテナンスすることができる。
【0025】
液体凍結装置10は、食材、調理物等の被凍結物を収納して凍結槽20内に浸漬させるための収納籠60を備えている。
図11に示したように、収納籠60は、複数のワイヤ材(金属線材)を屈曲及び接着させて加工したものであり、前部及び後部にて互いに離間した位置に略矩形状の前側及び後側枠部61,62と、前側及び後側枠部61,62を離間した状態で連結する第1~第3連結バー63~65と、被凍結物を収納籠60内に上下に多段状に配置させる網棚69とを備えている。前側枠部61の内側には上記の第1~第3連結バー63~65が配置されてないことによって開口部61aが形成されており、被凍結物は前側枠部61の開口部61aから収納籠60内に入出可能となっている。
【0026】
前側及び後側枠部61,62は互いに前後に離間した位置に配置され、前側及び後側枠部61,62の間には3本の第1連結バー63が設けられている。第1連結バー63は、前側が開いた略コ字形をしており、前側及び後側枠部61,62の上下部を連結している。前側及び後側枠部61,62の間には4本の第2連結バー64が設けられている。第2連結バー64は、後側枠部62の上下に延出した下端から前側枠部61側となる前方に延びる略L字形をしており、前側及び後側枠部61,62の下部を連結している。第1及び第2連結バー63及び64は左右方向に交互に配置されている。第1連結バー63は前側及び後側枠部61,62との間の上側、後側及び下側に配置され、収納籠60内の被凍結物が上側、後側及び下側から離脱するのを防ぐ機能を有している。第2連結バー64は前側及び後側枠部61,62との間の後側及び下側に配置され、収納籠60内の被凍結物が後側及び下側から離脱するのを防ぐ機能を有している。さらに、後側枠部62の上下方向の中間部には左右に延びる補助バー66が設けられており、補助バー66は、後側枠部62が左右に撓むのを防ぐとともに、収納籠60内に収納した被凍結物が後側から離脱するのを防ぐ機能を有している。
【0027】
前側及び後側枠部61,62の左右の両側部の間には、上下部に第3連結バー65(65a,65c)が設けられている。上側の第3連結バー65aは、前側及び後側枠部61,62よりも上側に突出する下側に開く略コ字形をしている。上側の第3連結バー65aの上下方向の中間部には前後方向に延びる支持バー65bが設けられており、支持バー65bには後述する可動枠部70が前後方向となる水平軸線回りに回動可能に軸支されている。上側の第3連結バー65aは、前後方向となる水平軸線回りに回動可能に支持された可動枠部70の下部を凍結槽20のフック24dに係止可能な角度で回動停止させるためのストッパとして機能している。下側の第3連結バー65cは、前側及び後側枠部61,62よりも下側に突出する内側に開く略コ字形をしている。下側の第3連結バー65cの下部には脚部65dが設けられており、収納籠60は脚部65dによって設置面から離間するように設置される。上側の第3連結バー65aの支持バー65bと下側の第3連結バー65cには2本の支柱部67が前後に離間して設けられており、これらの支柱部67は上側の第3連結バー65aの支持バー65bが下側に撓むのを防ぐ機能を有している。
【0028】
前側及び後側枠部61,62の左右の両側部(収納籠60の幅方向の両側)には網棚69を支持する左右一対の支持レール68が設けられており、この実施形態では、支持レール68は前側及び後側枠部61,62の左右の両側部で上下に3段で配置されている。支持レール68は、収納籠60の幅方向と水平方向に直交する奥行き方向(前後方向)に延び、網棚69の左右方向の端部の下側を支持する下側レール68aと、網棚69の左右方向の端部の上側を覆う上側レール68bとを備えている。下側レール68aは、収納籠60の内側に湾曲した状態で前側枠部61と後側枠部62との間で前後に延び、前側枠部61と後側枠部62とに固着されている。上側レール68bは、収納籠60の内側に湾曲した状態で前側の支柱部67と後側枠部62との間で前後に延び、支柱部67と後側枠部62とに固着されている。上側レール68bは、下段の網棚69に載せた被凍結物が不凍液内で浮かび上がろうとするときに網棚69が上側に移動するのを規制する機能を有している。下側及び上側レール68a,68bは、支柱部67よりも収納籠60の幅方向の内側に配置されている。
【0029】
網棚69は、収納籠60内にて被凍結物を上下に多段状に配置させるものであり、収納籠60の前側の開口部61aから入出可能となっている。網棚69は、略矩形状の棚枠部69aと、棚枠部69aの内側で前後方向に沿って延びて被凍結物を載せる載置バー69bと、棚枠部69aの上側にて幅方向の両側に設けられたガイド69cとを備えている。棚枠部69aの幅方向の外径は前側枠部61の幅方向の内径よりも少し小さな大きさであり、網棚69は開口部61aから収納籠60内に入出可能となっている。網棚69の棚枠部69aの幅方向の端部は支持レール68を構成する下側及び上側レール68a,68bの間で前後方向に沿って摺動移動可能に支持される。ガイド69cは、棚枠部69aの幅方の両側にて幅方向の端部より少し内側で収納籠60の奥行き方向に沿って延び、網棚69を下側及び上側レール68a,68bの間で前後方向に摺動移動させるときに、上側レール68bにおける収納籠60の内側部分に係止することで、網棚69が下側及び上側レール68a,68bの間で左右に傾いて移動するのを防ぐ機能を有している。網棚69は、ガイド69cによって下側及び上側レール68a,68bの間で左右方向にずれることなく前後方向に摺動移動するので、支持レール68の外側の支柱部67に引っかからないようになる。
【0030】
図11及び
図12に示したように、収納籠60の左右両側には略矩形状の可動枠部70が設けられており、可動枠部70は前側及び後側枠部61,62の左右両側部の上部を連結する上側の第3連結バー65aに設けた支持バー65bに前後方向となる水平軸線回りに回動可能に支持されている。可動枠部70の上部には上端部より下側位置に前後に延びる取付軸部70aが設けられており、可動枠部70は取付軸部70aによって支持バー65bに前後方向を軸線方向として回動可能に支持されている。可動枠部70は取付軸部70aより上側に取手部70bを備えており、取手部70bは下側が開く略コ字形をしている。可動枠部70の取手部70bは収納籠60を把持するのに用いられ、収納籠60は取手部70bを把持して凍結槽20内に入出される。可動枠部70は下端部に前後に延びる係止部70cを備えており、係止部70cは前側及び後側枠部61,62の左右の各側部から外側に回動可能に支持されている。可動枠部70の下部の係止部70cを前側及び後側枠部61,62の左右の各側部から外側に回動させたときに、係止部70cは凍結槽20の開口部20aに設けたフック24dに係止可能となる。係止部70cは後側が斜め上方に傾斜しており、係止部70cを凍結槽20の開口部20aに設けたフック24dに係止させた状態で、収納籠60は凍結槽20の開口部20aにて後側が下方に傾くように支持される。
【0031】
図11に示したように、可動枠部70は、取付軸部70aより上側の取手部70bが上方に起立した状態では、取付軸部70aより下側が前側及び後側枠部61,62の左右の側部に沿って垂下している。この状態では、左右両側の可動枠部70が凍結槽20の左右両側面の内側で収まるようになり、収納籠60を凍結槽20内に入れて不凍液に浸漬させることができる。収納籠60を凍結槽20の開口部20aより上側に持ち上げた状態で、左右の可動枠部70の取手部70bがストッパとなる上側の第3連結バー65cに係止するまで互いに近づく方向に移動させると、取付軸部70aより下側の係止部70cが前側及び後側枠部61,62の左右の側部から離間するように外側に回動し、係止部70cが凍結槽20の開口部20aに設けたフック24dに係止可能となる。
【0032】
図13に示したように、収納籠60を凍結槽20の開口部20aの上側から下方に移動させると、可動枠部70の係止部70cが凍結槽20の開口部20aに設けたフック24dに係止される。可動枠部70の係止部70cが凍結槽20の開口部20aに設けたフック24dに係止されたときに、収納籠60は凍結槽20内の凍結液の液面よりも上側で開口部20aに支持され、収納籠60及び被凍結物に付着している不凍液は開口部20aから凍結槽20内に落下する。
図13及び
図14に示したように、係止部70cは後側が斜め上方に傾斜しているので、係止部70cを開口部20aのフック24dに係止させると、収納籠60は凍結槽20の開口部20aにて後側が下方に傾くようになり、収納籠60及び被凍結物に付着している不凍液の液切れが良好となる。収納籠60及び被凍結物に付着している不凍液を凍結槽20内に落下させた後で、
図14に示したように、網棚69を前方に引き出して被凍結物を収納籠60から取り出すことができる。
【0033】
図15に示したように、液体凍結装置10は、制御装置80を備えており、制御装置80は、操作パネル部16、温度センサ28、冷凍装置30及び撹拌モータ51に接続されている。制御装置80はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM、EEPROM等の不揮発性メモリ(不揮発性記憶部)及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。
【0034】
ROMには、凍結槽20内の不凍液を被凍結物を凍結させるのに適した凍結温度に冷却する凍結運転モードと、凍結槽20内の不凍液を保管するのに適した保冷温度に冷却する保冷運転モードのプログラムと、凍結槽20内の不凍液を排出に適した排出温度まで上昇させる保守運転モードのプログラムとが記憶されており、操作パネル部16に設けた操作部16aを操作することによって各モードのプログラムを実行可能としている。なお、操作パネル部16に設けた操作部16aを操作することによって、タイマにより設定時刻毎に凍結運転モードと保冷運転モードとを切り替えて実行するように制御してもよい。凍結運転モード、保冷運転モードまたは保守運転モードを実行しているときには、不揮発性メモリに実行しているモードが記憶される。不揮発性メモリには液体凍結装置10の電源がオフ状態となっても、不揮発性記憶部には実行しているモードが記憶されており、液体凍結装置10の電源がオン状態にしたときに、記憶されているモードを実行させることができる。
【0035】
制御装置80には通信端末81が接続されており、制御装置80は通信端末81を介して外部のクラウド等のインターネットIに通信可能となっている。クラウド等のインターネットIには外部のパソコンやスマートフォン等の端末装置Pから通信可能となっており、端末装置Pをインターネットに接続して、端末装置Pから制御装置80を遠隔操作することができる。端末装置Pから制御装置80を遠隔操作することにより、液体凍結装置10を設置した設置場所から離れた場所で凍結運転モード、保冷運転モードまたは保守運転モードを選択して実行、実行停止または実行予約等の操作をすることができる。
【0036】
この液体凍結装置10においては、凍結槽20内の不凍液の設定温度は凍結運転モード及び保冷運転モードによって独自に設定されている。凍結運転モードでは、凍結槽20内の不凍液の設定温度は被凍結物を凍結させるのに適した凍結用温度に設定されており、この実施形態では設定温度となる凍結用温度は被凍結物を早期に凍結させることができる温度の一例として-35℃に設定されている。これに対し、保冷運転モードでは、凍結槽20内の不凍液の設定温度は、凍結用温度より高くて不凍液を保管するのに適した保冷温度に設定されており、この実施形態では、設定温度となる保冷温度は不凍液の揮発温度や引火温度よりも低い温度の一例として-10℃に設定されている。
【0037】
凍結槽20内の不凍液を設定温度となるように冷却制御するときには、制御装置80は、温度センサ28の検出温度が設定温度に所定の加算値を加算して設定された上限設定温度以上となると冷凍装置30の圧縮機31を作動させ、温度センサ28の検出温度が設定温度から所定の減算値を減算して設定された下限設定温度以下となると冷凍装置30の圧縮機31の作動を停止させるように制御する。凍結槽20内の不凍液は温度が低くなると温度の低下速度が遅くなる傾向にある。このため、凍結槽20内の不凍液を設定温度となるように冷却制御するときに、設定上限温度と設定下限温度とを設定するための加算値及び減算値を全ての設定温度で同じ条件とすると、冷凍装置30の圧縮機31の作動時間が長くなったり、短時間でのオンオフ動作を繰り返すおそれがある。
【0038】
保冷運転モードで凍結槽20内の不凍液を設定温度とした-10℃となるように制御するときには、凍結槽20内の不凍液の温度の低下速度が比較的に速く、上限設定温度を設定するための加算値及び下限設定温度を設定するための減算値の各々は2℃と設定されている。保冷運転モードの上限設定温度は設定温度の-10℃に2℃の加算値を加算した-8℃と設定され、保冷運転モードの下限設定温度は設定温度の-10℃から2℃の減算値を減算した-12℃と設定され、保冷運転モードでは凍結槽20内の不凍液は設定温度である-10℃の±2℃の範囲となるように温度制御される。
【0039】
これに対し、凍結運転モードで凍結槽20内の不凍液を設定温度とした-35℃となるように制御するときには、凍結槽20内の不凍液の温度の低下速度は低い傾向にある。不凍液を-35℃より低く冷却しようしても、不凍液の温度は-35℃よりも低下しにくく、凍結運転モードで上述した保冷運転モードと同様に2℃の減算値で下限設定温度を設定しても、凍結槽20内の不凍液が下限設定温度まで低下しにくく、冷凍装置30の圧縮機31を長時間で作動させるおそれがある。このため、凍結運転モードで凍結槽20内の不凍液を設定温度とした-35℃となるように制御するときには、上限設定温度を設定するための加算値は2℃で設定され、下限設定温度を設定するための減算値は保冷運転モードよりも低く1℃と設定されている。凍結槽20内の設定温度が-35℃のように低いときであっても、凍結槽20内の不凍液を冷凍装置30により冷却するときに、冷凍装置30が連続的または長時間で作動しないようになる。
【0040】
次に、凍結運転モードでの制御について説明する。凍結運転モードは、凍結槽20内の不凍液を被凍結物を凍結させるのに適した凍結用温度に冷却するものである。
図16に示したように、制御装置80は、凍結運転モードでは、撹拌装置50の撹拌モータ51を作動させた状態で、凍結槽20内の不凍液が被凍結物を凍結するのに適した凍結用温度となるように、温度センサ28の検出温度に基づいて冷凍装置30の作動を制御している。上述したように、制御装置80は、温度センサ28により凍結用温度の上限設定温度を検出すると冷凍装置30を作動させるように制御し、温度センサ28により凍結用温度の下限設定温度を検出すると冷凍装置30の作動を停止させるように制御しており、凍結槽20内の不凍液は凍結用温度を設定温度とした上限設定温度と下限設定温度の温度範囲となるように制御される。
【0041】
また、制御装置80は、凍結運転モードを実行しているときには、凍結槽20内の不凍液中に浸漬した被凍結物をできるだけ速やかに凍結できるように、撹拌装置50の撹拌モータ51を高い回転数(この実施形態では3,000rpmであり、図中では高速と示している)で回転させるように制御している。凍結槽20内の不凍液中に浸漬した被凍結物は、撹拌モータ51を高い回転数で回転させたときの液流によって冷却された不凍液と熱交換されて冷却される。
【0042】
凍結運転モードを実行しているときであっても、凍結槽20内に被凍結物を浸漬させていないときには、凍結槽20内の不凍液を被凍結物に熱交換させて冷却していないので、撹拌装置50の撹拌モータ51を高い回転数で回転させる必要がない。凍結運転モードでは被凍結物を凍結させるときの通常凍結モードにさらに被凍結物を浸漬させる前の省エネルギーモードが設定されており、凍結運転モードの省エネルギーモードを実行しているときは、制御装置80は、凍結運転モードを実行しているときであっても、撹拌モータ51を低い回転数(この実施形態では600rpmであり、図中では低速と示している)で回転させるように制御している。この実施形態では、操作パネル部16の操作部16aを適宜操作することで、凍結モードと省エネルギーモードに切替可能としている。
【0043】
図17に示したように、凍結運転モードにて省エネルギーモードとしているときには、、制御装置80は撹拌モータ51を低い回転数で回転させるように制御している。凍結槽20内の不凍液中に被凍結物を浸漬して凍結させるときには、操作部16aを操作して通常凍結モードに切り替えると、制御装置80は撹拌モータ51を高い回転数で回転させるように制御する。凍結槽20内の不凍液中に浸漬した被凍結物は撹拌モータ51を高い回転数で回転させたときの液流によって冷却された不凍液と熱交換されて冷却される。被凍結物が凍結した後で、操作部16aを操作して省エネルギーモードに切り替えると、制御装置80は撹拌モータ51を低い回転数で回転させるように制御する。
【0044】
また、温度センサ28の検出温度に基づいて、凍結運転モードの省エネルギーモードから通常凍結モードへ切り替えるようにしてもよい。
図18のaのタイミングに示したように、凍結槽20内の不凍液中に被凍結物を投入すると不凍液の急激な温度上昇が始まり、
図18のbのタイミングに示したように、凍結槽20内の不凍液中に被凍結物を浸漬させたときに上昇する被凍結物投入温度(この実施形態では-30℃に設定されている)が温度センサ28によって検出されると、省エネルギーモードから通常凍結モードに切り替えて、撹拌モータ51を高い回転数(この実施形態では3,000rpm)で回転させるように制御している。このように、凍結槽20内の不凍液中に被凍結物を浸漬させていないときには、撹拌装置50の撹拌モータ51の回転数を低くするように制御することで、撹拌装置50の撹拌モータ51を作動させたときの消費電力を低く抑えることができ、凍結槽20内の不凍液中に被凍結物を浸漬させたときには、撹拌装置50の撹拌モータ51の回転数を高い回転数とするように制御することで、凍結槽20内の不凍液中に浸漬した被凍結物を速やかに凍結させることができる。
【0045】
なお、制御装置80は、凍結運転モードを実行しているときに、凍結槽20内の不凍液中に被凍結物を浸漬させたときの被凍結物投入温度が温度センサ28により検出されるまでは、撹拌モータ51を通常の高い回転数(この実施形態では3,000rpm)で回転させ、凍結槽20内の不凍液中に被凍結物を浸漬させたときの被凍結物投入温度が温度センサ28により検出されると、撹拌モータ51をさらに高い回転数(この実施形態では例えば4,000rpm)で回転させるように制御してもよい。このように、凍結槽20内の不凍液中に被凍結物を浸漬させたときには、撹拌装置50の撹拌モータ51の回転数を通常の回転数より高く制御することで、凍結槽20内の不凍液中に浸漬した被凍結物をさらに速やかに凍結させることができる。
【0046】
次に、保冷運転モードでの制御について説明する。保冷運転モードは、凍結槽20内の不凍液を凍結用温度より高くて保管するのに適した保冷温度に冷却するものであり、凍結槽20内の不凍液が揮発温度等の高い温度まで上昇しないように冷却するものである。制御装置80は、保冷運転モードでも、撹拌装置50の撹拌モータ51を作動させた状態で、凍結槽20内の不凍液を保管するのに適した保冷温度となるように、温度センサ28の検出温度に基づいて冷凍装置30の作動を制御している。上述したように、制御装置80は、温度センサ28により保冷温度の上限設定温度を検出すると冷凍装置30を作動させるように制御し、温度センサ28により保冷温度の下限設定温度を検出すると冷凍装置30の作動を停止させるように制御しており、凍結槽20内の不凍液は保冷温度を設定温度とした上限設定温度と下限設定温度の温度範囲となるように制御される。
【0047】
保冷運転モードでは凍結槽20内で被凍結物を凍結させることを目的としないので、制御装置80は、撹拌装置50の撹拌モータ51を上述した高い回転数より低い回転数(この実施形態では600rpm)で回転させるように制御している。このように、制御装置80は、保冷運転モードでは凍結運転モードを実行しているときよりも撹拌装置50の撹拌モータ51の回転数を低くするように制御しており、撹拌装置50の撹拌モータ51を作動させたときの消費電力を低く抑えることができる。
【0048】
次に、保守運転モードでの制御について説明する。保守運転モードは、凍結槽20内の不凍液を排出に適した排出温度まで上昇させるものであり、凍結槽20内の不凍液によって排出に供する器具等が凍結しない温度まで上昇しないようにしたものである。制御装置80は、保守運転モードでは、冷凍装置30により冷却することなく、撹拌装置50の撹拌モータ51を(この実施形態では3,000rpm)で回転させるように制御している。撹拌装置50の撹拌モータ51を作動させると、凍結槽20内の不凍液が撹拌されて空気が混入しやすくなり、凍結槽20内の不凍液は混入する空気により温度が上昇しやすくなる。凍結槽20内の不凍液の温度は徐々に上昇し、温度センサ28により排出温度として設定した0℃以上を検出すると、制御装置80は、撹拌モータ51の作動を停止させるように制御する。なお、温度センサ28の検出温度が10℃以上となると、制御装置80は、冷凍装置30を作動させるように制御するとともに撹拌装置50の撹拌モータ51を回転させるように制御し、凍結槽20内の不凍液が揮発温度や引火温度以上とならないように制御するのが好ましい。
【0049】
この液体凍結装置10により被凍結物を凍結させるときには、操作部16aを操作して制御装置80により凍結運転モードを実行させる。凍結運転モードを実行しているときには、凍結槽20内の不凍液は、冷却領域20c内にて螺旋状に巻回された蒸発管34の内側で撹拌装置50の撹拌羽根57の回転によって生じる液流により下方に流れるときに冷却される。蒸発管34の内側で下方に流れる不凍液はガイド部59によって仕切板25の下側の通路25bを通って浸漬領域20bに送出される。冷却領域20cから浸漬領域20bに送出された不凍液は仕切板25の開口部25aから再び冷却領域20cに戻り、冷却領域20c内に戻された不凍液は螺旋状に巻回された蒸発管34の上側から内側に流入して蒸発管34の内側を流れるときに冷却される。
【0050】
浸漬領域20bの冷却された不凍液中に被凍結物を収納した収納籠60を浸漬させると、収納籠60内の被凍結物は冷却領域20cと浸漬領域20bを循環して冷却された不凍液と熱交換されて冷却される。被凍結物を凍結させるのに要する時間が経過した後で、取手部70bを把持して凍結槽20内の収納籠60を凍結槽20の上側まで持ち上げ、左右の取手部70bを互いに近づく方向(収納籠60の内側方向)に移動させると、可動枠部70の下部の係止部70cが外側に回動して凍結槽20の開口部20aに設けたフック24dに係止可能となる。収納籠60を凍結槽20の上側から下方に移動させると、可動枠部70の下部の係止部70cが凍結槽20の開口部20aに設けたフック24dに係止され、収納籠60は凍結槽20の開口部20aに支持される。収納籠60及び収納籠60内の被凍結物に付着している不凍液は下側に落下し、落下する不凍液は凍結槽20内に受けられる。収納籠60及び収納籠60内の被凍結物に付着している不凍液の液切りを終えてから、凍結させた収納籠60内の被凍結物を冷凍庫に移動させて保存する。
【0051】
上記のように構成した液体凍結装置10は、内部に貯えた不凍液により被凍結物を凍結させる凍結槽20と、凍結槽20内にて螺旋状に巻回した蒸発管34に冷媒を循環させることにより不凍液を冷却する冷凍装置30と、凍結槽20内にて螺旋状に巻回した蒸発管34の内側に回転可能に設けられた撹拌羽根57を回転させることによって螺旋状に巻回した蒸発管34の内側に下方へ流れる液流を発生させる撹拌装置50と、凍結槽20内の底部に凍結液が通過可能な通路25bを有して、凍結槽20内を蒸発管34が配置されて不凍液を冷却する冷却領域20cと被凍結物を浸漬させるための浸漬領域20bとに通液可能に仕切る仕切板25とを備えている。
【0052】
この液体凍結装置10においては、凍結槽20内の底部には撹拌羽根57の下側に冷却領域20cから浸漬領域20b側に向けて下方に傾斜して撹拌羽根57によって下方に流れる不凍液を通路25bを通して浸漬領域20bに案内するガイド部59が設けられている。凍結槽20内の冷却領域20cの凍結液は螺旋状に巻回した蒸発管34の内側にて撹拌装置50の撹拌羽根57による液流によって下方に流れ、下方に流れる不凍液はガイド部59によって冷却領域20cから浸漬領域20b側に送出されるようになるので、不凍液が螺旋状に巻回された蒸発管34の内側と外側と間の狭い範囲で循環するショートサイクルが生じないようになり、凍結槽20の浸漬領域20bの不凍液を十分に冷却することができる。
【0053】
また、この実施形態では冷却領域20cと浸漬領域20bとが前後に配置され、ガイド部59には冷却領域20cと浸漬領域20bとが配置される前後方向と水平方向に直交する左右方向に不凍液の流れを遮る遮蔽部59aが設けられている。螺旋状に巻回された蒸発管34の内側を下方に流れる不凍液は遮蔽部59aによって冷却領域20cと浸漬領域20bとが配置される前後方向と水平方向に直交する左右方向に流れにくくなって浸漬領域20bに多く流れるようになり、凍結槽20の浸漬領域20bの不凍液をさらに十分に冷却することができる。この実施形態では、冷却領域20cと浸漬領域20bとが前後に配置されているが、これに限られるものでなく、冷却領域20cと浸漬領域20bとを左右に配置したときには、ガイド部59には冷却領域20cと浸漬領域20bとが配置される左右方向と水平方向に直交する前後方向に凍結槽20の流れを遮る遮蔽部59aを設けるようにすると、上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
また、この液体凍結装置10においては、撹拌装置50の撹拌羽根57を回転させることにより螺旋状に巻回した蒸発管34の内側に下方へ流れる液流を発生させたときに、撹拌羽根57の上側に発生する渦によって、撹拌羽根57に空気が巻き込まれるおそれがある。撹拌羽根57に空気が巻き込まれると、不凍液に熱量を持つ空気が混入し、不凍液の冷却速度が遅くなるおそれがある。この液体凍結装置10においては、撹拌羽根57の上側には撹拌羽根57に空気の巻き込みを防止する空気巻き込み防止板58が設けられている。この実施形態では、空気巻き込み防止板58は回転軸56の軸線方向に互いに離間して配置された2枚(複数)の空気巻き込み防止板58a,58bとから構成されている。
【0055】
撹拌羽根57の上側に空気巻き込み防止板58a,58bを設けたことで、撹拌装置50の撹拌羽根57を回転させることにより螺旋状に巻回した蒸発管34の内側に下方へ流れる液流を発生させたときに、撹拌羽根57に空気が巻き込まれにくくすることができる。これによって、撹拌羽根57に空気が巻き込まれることで生じる巻込音の発生や、不凍液に熱量を持つ空気が混入することによる温度上昇等の不具合を生じさせにくくすることができる。この実施形態では、空気巻き込み防止板58は回転軸56の軸線方向に互いに離間して配置された2枚(複数)の空気巻き込み防止板58a,58bとから構成されているが、これに限られるものでなく、空気巻き込み防止板を1枚または上下に離間して配置した3枚以上としたものであってもよい。
【0056】
上述した実施形態においては、不凍液の濃度、不凍液の凍結用温度、保冷用温度、排出温度等の各種設定温度、設定上限温度の加算値、設定下限温度の減算値及び撹拌モータ51の回転数は一例であって上述したものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0057】
10…液体凍結装置、20…凍結槽、25…仕切板、25b…通路、30…冷凍装置、34…蒸発管、50…撹拌装置、57…撹拌羽根、58,58a,58b…空気巻き込み防止板、59…ガイド部、59a…遮蔽部。