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2025-24817送信機、受信機、通信システム、送信方法、および受信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024817
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】送信機、受信機、通信システム、送信方法、および受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20250214BHJP
【FI】
H04J99/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129102
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】宮本 勝男
(57)【要約】
【課題】振幅値方向に搬送信号が多重化された通信信号を用いた無線通信を実現できる送信機を提供する。
【解決手段】送信機は、ビット系列である複数の情報系列を取得する取得部と、誤り訂正符号を用いて、複数の情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化する符号化器と、複数の符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算する増幅器と、実数振幅値が乗算された複数の符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する加算器と、生成された通信信号を変調し、変調された通信信号を送信する送信部と、を備える送信機とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビット系列である複数の情報系列を取得する取得部と、
誤り訂正符号を用いて、複数の前記情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化する符号化器と、
複数の前記符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算する増幅器と、
前記実数振幅値が乗算された複数の前記符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する加算器と、
生成された前記通信信号を変調し、変調された前記通信信号を送信する送信部と、を備える送信機。
【請求項2】
複数の前記情報系列は、
第1情報系列および第2情報系列を含み、
前記符号化器は、
第1誤り訂正符号を用いて、前記第1情報系列を第1符号系列に符号化し、
第2誤り訂正符号を用いて、前記第2情報系列を第2符号系列に符号化し、
前記増幅器は、
第1実数振幅値で前記第1符号系列を増幅し、
第2実数振幅値で前記第2符号系列を増幅し、
前記加算器は、
前記第1実数振幅値で増幅された前記第1符号系列を含む第1搬送信号と、前記第2実数振幅値で増幅された前記第2符号系列を含む第2搬送信号とを加算して、前記第1搬送信号に前記第2搬送信号が重畳された前記通信信号を生成する請求項1に記載された送信機。
【請求項3】
前記第1実数振幅値が前記第2実数振幅値よりも大きい請求項2に記載された送信機。
【請求項4】
複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信する受信部と、
誤り訂正符号を用いて、前記通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号する復号器と、
復号された前記情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された前記情報系列を再符号化する再符号化器と、
再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する乗算器と、
前記復号対象符号系列から前記レプリカ信号を減算して、前記復号対象符号系列を更新する減算器と、
復号された前記情報系列が受信対象であった場合、受信対象の前記情報系列を出力する出力部と、を備える受信機。
【請求項5】
復号された前記情報系列に含まれる復号誤りを訂正する訂正器を備える請求項4に記載の受信機。
【請求項6】
前記復号器は、
第1誤り訂正符号を用いて、前記搬送信号から第1情報系列を復号し、
前記出力部は、
前記第1情報系列が受信対象であった場合、復号された前記第1情報系列を出力し、
前記再符号化器は、
前記第1情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された前記第1情報系列を第1符号系列に再符号化し、
前記乗算器は、
再符号された第1符号系列に第1実数振幅値を乗算して第1レプリカ信号を生成し、
前記減算器は、
前記復号対象符号系列から前記第1レプリカ信号を減算して、前記復号対象符号系列を更新し、
前記復号器は、
第2誤り訂正符号を用いて、更新された前記復号対象符号系列から第2情報系列を復号し、
前記出力部は、
復号された前記第2情報系列を出力する請求項4に記載の受信機。
【請求項7】
前記再符号化器、前記乗算器、前記減算器、および前記復号器は、受信対象である前記情報系列が得られるまで処理を繰り返す請求項6に記載の受信機。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の送信機と、
請求項4乃至7のいずれか一項に記載の受信機と、を備える通信システム。
【請求項9】
ビット系列である複数の情報系列を取得し、
誤り訂正符号を用いて、複数の前記情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化し、
複数の前記符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算し、
前記実数振幅値が乗算された複数の前記符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成し、
生成された前記通信信号を変調し、
変調された前記通信信号を送信する送信方法。
【請求項10】
複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信し、
誤り訂正符号を用いて、前記通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号し、
復号された前記情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された前記情報系列を再符号化し、
再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成し、
前記復号対象符号系列から前記レプリカ信号を減算して、前記復号対象符号系列を更新し、
復号された前記情報系列が受信対象であった場合、受信対象の前記情報系列を出力する受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信機、受信機、通信システム、送信方法、および受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信においては、通信容量が増加傾向にあるため、周波数資源の枯渇が問題になっている。一度構築された通信システムにおいては、通信容量を増やすことは困難である。
【0003】
特許文献1には、誤り訂正符号を適用した無線の重畳伝送方式について開示されている。特許文献1の方式では、複数の第1信号と、第2信号とを用いる。複数の第1信号には、周波数領域において隣接する信号と一端または両端が重畳された誤り訂正符号が適用される。第2信号には、複数の第1信号の重畳された帯域である重畳帯域のいずれかに更に重畳される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-109370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方式では、周波数方向に信号を多重化することによって、通信容量を増やす。しかし、特許文献1の方式では、周波数帯域幅に応じて、信号の多重化に限界があった。振幅値方向に信号を多重化できれば、周波数帯域幅に依存せずに、通信容量を増やすことができる。
【0006】
本開示の目的は、振幅値方向に搬送信号が多重化された通信信号を用いた無線通信を実現できる送信機、受信機、通信システム、送信方法、および受信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の送信機は、ビット系列である複数の情報系列を取得する取得部と、誤り訂正符号を用いて、複数の情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化する符号化器と、複数の符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算する増幅器と、実数振幅値が乗算された複数の符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する加算器と、生成された通信信号を変調し、変調された通信信号を送信する送信部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の受信機は、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信する受信部と、誤り訂正符号を用いて、通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号する復号器と、復号された情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された情報系列を再符号化する再符号化器と、再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する乗算器と、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新する減算器と、復号された情報系列が受信対象であった場合、受信対象の情報系列を出力する出力部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様の送信方法においては、ビット系列である複数の情報系列を取得し、誤り訂正符号を用いて、複数の情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化し、複数の符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算し、実数振幅値が乗算された複数の符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成し、生成された通信信号を変調し、変調された通信信号を送信する。
【0010】
本開示の一態様の受信方法においては、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信し、誤り訂正符号を用いて、通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号し、復号された情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された情報系列を再符号化し、再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成し、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新し、復号された情報系列が受信対象であった場合、受信対象の情報系列を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、振幅値方向に搬送信号が多重化された通信信号を用いた無線通信を実現できる送信機、受信機、通信システム、送信方法、および受信方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示における通信システムの構成の一例を示す概念図である。
図2】本開示における通信システムが備える送信機の構成の一例を示すブロック図である。
図3】本開示における通信システムが備える受信機の構成の一例を示すブロック図である。
図4】本開示における信号の2重化の一例について説明するための概念図である。
図5】本開示における符号化の一例について説明するための概念図である。
図6】本開示における復号の一例について説明するための概念図である。
図7】本開示における信号の多重化の一例について説明するための概念図である。
図8】本開示における通信システムが備える送信機の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図9】本開示における通信システムが備える受信機の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図10】本開示における送信機の構成の一例を示すブロック図である。
図11】本開示における送信機の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図12】本開示における受信機の構成の一例を示すブロック図である。
図13】本開示における受信機の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図14】各実施形態に係る処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示を実施するための形態について図面を用いて説明する。本開示において、各実施形態の説明において使用される図面は、1以上の実施形態に関連付けられる。また、各図面に含まれる要素は、1以上の実施形態に当てはまりうる。以下に述べる実施形態には、本開示を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、開示の範囲を以下に限定するものではない。以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、信号等の向きを限定するものではない。以下の実施形態において、ベクトルを示す記号を通常のアルファベットで表記する。
【0014】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る通信システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る通信システムは、振幅値方向に信号を多重化する。本実施形態に係る通信システムの送信局(送信機)は、誤り訂正符号で符号化された符号系列を振幅値方向に多重化する。複数の符号系列が多重化された符号系列には、通信経路において雑音が付加される。受信局(受信機)は、受信した符号系列から、受信対象の情報系列を復号する。
【0015】
まず、本実施形態における信号の多重化の原理について説明する。デジタル無線通信では、通信経路で付加される雑音等による情報系列の誤り率を軽減するために、誤り訂正符号が用いられる。誤り訂正符号においては、符号化と復号が対をなす。誤り訂正符号は、通信経路において符号系列に付加された雑音系列の合成信号から、情報系列を復号するための符号である。見方を変えると、誤り訂正符号は、符号系列と雑音系列とで2重化された合成信号から、情報系列を抽出するための符号である。本実施形態においては、雑音信号の代わりに、情報系列を符号化した搬送信号を重畳することによって、回線を多重化する。
【0016】
誤り訂正符号の復号誤り率は、雑音の電力値によって決まる。そのため、2つの搬送信号(符号系列)が重畳された場合であっても、重畳された搬送信号の電力値によって復号性能が決まる。2つの搬送信号が重畳されて、誤り訂正符号で復号されただけでは、電力値の小さい方の搬送信号において、復号誤り率が高くなる。誤り訂正符号で復号された情報系列を同じ誤り訂正符号の復号器で復号すると、誤りが全て訂正された情報系列または一部の誤りを含んだ情報系列が得られる。また、変調方式が既知であれば、レプリカ信号を生成できる。受信した搬送信号からレプリカ信号を差し引くと、もう1つの搬送信号が得られる。この搬送信号を復号すれば、もう1つの情報系列を得ることができる。このように、回線の多重化が可能となる。本実施形態では、誤り訂正で符号化された符号系列(搬送信号)を電力方向(振幅値方向)で多重化することによって、回線を多重化する。
【0017】
(構成)
図1は、本開示における通信システム1の構成の一例を示す概念図である。通信システム1は、送信機11と、複数の受信機15-1~nとを備える(nは自然数)。送信機11は、送信局に設置される。複数の受信機15-1~nの各々は、受信局に設置される。以下において、複数の受信機15-1~nを互いに区別しない場合は、受信機15と記載する。通信システム1においては、既存の通信方式を用いて、通信が行われる。通信システム1が使用する通信帯域については、特に限定を加えない。図1には、情報系列を情報と記載し、符号系列を符号と記載する。
【0018】
送信機11は、無線通信機能を有する。送信機11が複数の受信機15-1~nと無線通信できれば、送信機11が使用するネットワーク帯域や変調方式については、特に限定を加えない。送信機11は、複数の受信機15-1~nに向けて、複数の搬送信号が重畳された通信信号を送信する。無線信号には、複数の受信機15-1~nの各々に向けられた搬送信号が含まれる。
【0019】
送信機11は、複数の受信機15-1~nの各々に向けられた情報系列を取得する。情報系列は、複数の受信機15-1~nの各々に向けられた情報を含む。送信機11は、誤り訂正符号を用いて、複数の受信機15-1~nの各々に対する情報系列を符号化する。送信機11は、第1誤り訂正符号を用いて、情報系列u1を符号系列v1に符号化する。送信機11は、第2誤り訂正符号を用いて、情報系列u2を符号系列v2に符号化する。さらに、送信機11は、第n誤り訂正符号を用いて、情報系列unを符号系列vnに符号化する。第1誤り訂正符号、第2誤り訂正符号、・・・、第n誤り訂正符号は、互いに異なっていてもよいし、少なくともいずれかが同一であってもよい。
【0020】
送信機11は、誤り訂正符号を用いて符号化された複数の符号系列に、既定の実数振幅値を乗算する。送信機11は、実数振幅値が乗算された符号系列(搬送信号)を電力方向(振幅値方向)に多重化する。実数振幅値では、符号系列ごとに異なってもよいし、少なくともいずれかの符号系列で同一であってもよい。送信機11は、多重化された搬送信号によって構成された通信信号を、複数の受信機15-1~nに向けて送信する。
【0021】
通信信号は、第1搬送信号、第2搬送信号、・・・、第n搬送信号を含む。第1搬送信号は、情報系列u1が符号化された符号系列v1を含む。情報系列u1は、受信機15-1に向けられた情報を含む。第2搬送信号は、情報系列u2が符号化された符号系列v2を含む。情報系列u2は、受信機15-2に向けられた情報を含む。第n搬送信号は、情報系列unが符号化された符号系列vnを含む。情報系列unは、受信機15-nに向けられた情報を含む。例えば、基幹的な通信ネットワークで使用されている第1搬送信号に、第2搬送信号、・・・、第n搬送信号を重畳させる適用例が想定される。無線回線を用いたネットワークであれば、基幹的な通信ネットワークには、特に限定を加えない。例えば、基幹的な通信ネットワークの一例として、地上デジタル放送が例示される。
【0022】
複数の受信機15-1~nは、無線通信機能を有する。複数の受信機15-1~nが送信機11と無線通信できれば、複数の受信機15-1~nが使用するネットワーク帯域や変調方式については、特に限定を加えない。複数の受信機15-1~nは、送信機11から送信された無線信号を受信する。無線信号には、複数の受信機15-1~nの各々の受信対象である搬送信号が含まれる。
【0023】
複数の受信機15-1~nは、送信機11から送信された通信信号を取得する。通信信号は、多重化された複数の搬送信号を含む。送信機11と受信機15との間の通信経路において、通信信号には雑音が付加される。また、通信経路において、各々の搬送信号の強度(実数振幅値)が変動する。複数の受信機15-1~nの各々は、それぞれの受信機15に向けられた情報系列を復号する。搬送信号から情報系列を復号する具体的な方法については後述する。復号された情報系列の出力先や用途については、特に限定を加えない。
【0024】
受信機15-1は、多重化された搬送信号(符号系列)によって構成された通信信号から、情報系列u1XORe1を復号する。情報系列u1XORe1には、復号誤りe1が含まれる。受信機15-1は、受信対象である情報系列u1を含む情報を出力する。受信機15-1にとって、情報系列u1以外の情報系列に復号される信号は、雑音であるとみなせる。
【0025】
受信機15-2は、多重化された搬送信号(符号系列)によって構成された通信信号から、情報系列u1XORe1を復号する。情報系列u1XORe1には、復号誤りe1が含まれる。受信機15-2は、復号された情報系列u1XORe1を再符号化し、既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する。受信機15-2は、多重化された搬送信号(符号系列)から、生成されたレプリカ信号を減算して、復号対象符号を生成する。受信機15-2は、復号対象符号から、情報系列u2XORe2を復号する。情報系列u2XORe2には、復号誤りe2が含まれる。複数の受信機15-2は、受信対象である情報系列u2を含む情報を出力する。
【0026】
受信機15-nは、多重化された搬送信号(符号系列)によって構成された通信信号から、情報系列u1XORe1を復号する。情報系列u1XORe1には、復号誤りe1が含まれる。受信機15-nは、復号された情報系列u1XORe1を再符号化し、既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する。受信機15-nは、多重化された搬送信号(符号系列)から、生成されたレプリカ信号を減算して、復号対象符号を生成する。受信機15-nは、復号対象符号から、情報系列u2XORe2を復号する。情報系列u2XORe2には、復号誤りe2が含まれる。受信機15-nは、受信対象である情報系列unが得られるまで、再符号化、レプリカ信号の生成、減算、および復号を繰り返す。複数の受信機15-nは、受信対象である情報系列unを含む情報を出力する。
【0027】
〔送信機〕
次に、通信システム1が備える送信機11について図面を参照しながら説明する。図2は、本開示における送信機11の構成の一例を示すブロック図である。送信機11は、取得部111、符号化器112、増幅器113、加算器115、および送信部117を有する。図2には、本実施形態に係る処理を行う主な構成を示す。図2には、送信機11の送信機能を発現させる全ての構成が図示されているわけではない。
【0028】
取得部111は、複数の受信機15-1~nの各々に送信される情報系列uを取得する(nは自然数)。情報系列uは、{0、1}によって構成されるビット系列である。以下において、受信機15-iに送信される情報系列をuiと表記する(iは、1以上n以下の自然数)。取得部111による情報系列の取得方法については、特に限定を加えない。例えば、取得部111は、入力装置(図示しない)を介して入力された情報系列uを取得する。例えば、取得部111は、記憶装置(図示しない)に記憶された送信対象の情報を含む情報系列uを取得する。
【0029】
符号化器112は、誤り訂正符号φを用いて、複数の受信機15-1~nの各々に送信される情報系列uを、系列長Lの符号系列vに変換する。誤り訂正符号φを用いた情報系列uの符号系列vへの変換は、下記の式1で表される。
[数1]
φ(u)=v・・・(1)
符号系列vは、{-1、1}によって構成された軟値データ系列である。符号化器112は、複数の受信機15-1~nの各々に関して、情報系列uiを符号系列viに変換する。
【0030】
誤り訂正符号φは、情報系列uごとに同一でもよいし、情報系列uごとに異なっていてもよい。符号化器112が用いる誤り訂正符号については、特に限定しない。例えば、誤り訂正符号としては、ブロック符号や、畳込み符号、連接符号を適用できる。例えば、ブロック符号には、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号やBCH(Bose-Chaudhuri-Hocquenghem)符号が含まれる。また、ブロック符号には、リードソロモン符号やLDPC(Low Density Parity Check)符号が含まれる。例えば、畳込み符号には、畳込み符号化-ビタビ復号法やターボ符号が含まれる。
【0031】
増幅器113は、通信に用いられる周波数帯の信号を増幅する。増幅器113は、符号系列viごとに設定された実数振幅値aiで符号系列viを増幅する。例えば、増幅器113は、符号系列viごとに配置される。増幅器113は、符号系列viごとの実数振幅値aiに応じた利得で、符号系列viを増幅する。実数振幅値aiは、符号系列viごとに同一でもよいし、符号系列viごとに異なっていてもよい。
【0032】
加算器115は、増幅器113によって増幅された複数の搬送信号(符号系列)を加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に重畳された通信信号を生成する。加算器115は、符号系列viごとに増幅された符号系列aiiを加算して、符号系列aiiが振幅値方向に重畳された通信信号を生成する。
【0033】
送信部117は、加算器115によって生成された通信信号を変調する。送信部117は、変調された通信信号を送信する。なお、通信信号を変調するために、変調部(図示しない)が設けられてもよい。送信部117から送信される通信信号の変調方式には、特に限定を加えない。例えば、送信部117から送信される信号は、二位相偏移変調BPSK(Binary Phase Shift Keying)方式で変調される。例えば、送信部117から送信される信号は、四位相偏移変調QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式で変調されてもよい。例えば、送信部117から送信される信号は、差動位相偏移変調DPSK(Differential Phase Shift Keying)方式で変調されてもよい。送信部117から送信された通信信号は、複数の受信機15-1~nの各々によって受信される。
【0034】
〔受信機〕
次に、通信システム1が備える受信機15について図面を参照しながら説明する。図3は、本開示における送信機11の構成の一例を示すブロック図である。受信機15は、受信部151、復号器152、再符号化器153、乗算器155、減算器156、訂正器157、および出力部159を有する。図3には、本実施形態に係る処理を行う主な構成を示す。図3には、受信機15の受信機能を発現させる全ての構成が図示されているわけではない。
【0035】
受信部151は、通信経路13を介して、送信機11から送信された通信信号を受信する。受信された通信信号(符号系列)は、復号対象符号系列に相当する。受信部151が受信する通信信号に含まれる搬送信号(符号系列vi)の振幅値は、実数振幅値Aiに変化する。以下においては、受信機15の側で、実数振幅値Aiが既知であると仮定する。また、通信経路において、通信信号に含まれる複数の搬送信号に関する振幅値の変化率は同一であるとみなす。すなわち、受信機15における符号系列viの実数振幅値Aiに対する符号系列vi+1の実数振幅値Ai+1の比と、送信機11における符号系列viの実数振幅値aiに対する符号系列vi+1の実数振幅値ai+1の比とは等しい。さらに、受信部151が受信する符号系列には、雑音系列nが付加される。
【0036】
復号器152は、誤り訂正符号を用いて、復号対象符号系列から情報系列を復号する。復号器152は、誤り訂正符号ψを用いて、雑音系列nが付加された符号系列v+nを、情報系列uXOReに変換する。XORは、排他的論理和を表す。情報系列uXOReは、復号誤りeを含む。誤り訂正符号ψを用いた情報系列uXOReの復号は、下記の式2で表される。
[数2]
ψ(v+n)=uXORe・・・(2)
雑音系列nは、実数値系列である。+は、実数値の加法を表す。
【0037】
1回目の復号において、復号器152は、復号対象符号系列を誤り訂正符号ψ1で復号して、復号誤りe1を含む情報系列u1XORe1を得る。情報系列u1XORe1は、情報系列u1と復号誤りe1の排他的論理和を示す。情報系列u1が受信対象であった場合、復号器152は、復号された情報系列u1XORe1を訂正器157に出力する。情報系列u1が受信対象でなかった場合、復号器152は、復号された情報系列u1XORe1を再符号化器153に出力する。2回目以降のi回目の復号において、復号器152は、復号対象符号系列を誤り訂正符号ψiで復号して、復号誤りeiを含む情報系列uiXOReiを得る。情報系列uiが受信対象であった場合、復号器152は、復号された情報系列uiXOReiを訂正器157に出力する。情報系列uiが受信対象でなかった場合、復号器152は、復号された情報系列uiXOReiを再符号化器153に出力する。復号器152は、受信対象の情報系列が得られるまで、復号対象符号系列の復号を繰り返す。
【0038】
再符号化器153は、受信対象ではなかった情報系列uXOReを符号化する。再符号化器153は、下記の式3のように、情報系列uXOReを誤り訂正符号φで再符号化する。
[数3]
φ(uXORe)=v+N・・・(3)
Nは、復号誤りeにより発生した雑音系列である。式1から式3を減算すると、雑音系列Nは残るが、符号系列vを消去できる。
【0039】
ここで、別の情報系列u’を誤り訂正符号φ’で符号化した符号系列v’と雑音系列n’との和の符号系列v’+n’を雑音系列nに置き換えると、式2は下記の式4で表される。
[数4]
ψ(v+v’+n’)=uXORe’・・・(4)
下記の式5は、誤り訂正符号φを用いた情報系列uXORe’の再符号化を表す。
[数5]
φ(uXORe’)=v+v’+N’・・・(5)
式1と式5より、下記の式6の関係が導かれる。
[数6]
φ(uXORe’)-φ(u)=v’+N’・・・(6)
式6の右辺の符号系列v’+N’を誤り訂正符号ψ’で複号すると、下記の式7のように、情報系列uXORe’’が復号される。
[数7]
ψ(v’+N’)=uXORe’’・・・(7)
このように、誤り訂正符号で符号化された複数の符号系列(搬送信号)を多重化することにより、複数の情報系列が得られる。すなわち、誤り訂正符号で符号化された複数の符号系列を多重化することにより、回線が多重化される。
【0040】
再符号化器153は、復号器152において受信対象の情報系列が得られるまで、復号誤りを含む情報系列の再符号化を繰り返す。1回目の再符号化において、再符号化器153は、誤り訂正符号φ1を用いて、復号誤りe1を含む情報系列u1XORe1を符号系列v1+n1に符号化する。2回目以降のi回目の再符号化において、再符号化器153は、誤り訂正符号φiを用いて、復号誤りeiを含む情報系列uiXOReiを符号系列vi+niに符号化する。
【0041】
乗算器155は、通信経路において変動後の実数振幅値を、再符号化器153から出力された符号系列に乗算して、レプリカ信号を生成する。1回目の乗算において、乗算器155は、通信経路において変動後の実数振幅値A1を符号系列v1+n1に乗算して、レプリカ信号A1(v1+n1)を生成する。2回目以降のi回目の再符号化において、乗算器155は、通信経路において変動後の実数振幅値Aiを符号系列vi+niに乗算して、レプリカ信号Ai(vi+ni)を生成する。乗算器155は、復号器152において受信対象の情報系列が得られるまで、レプリカ信号の生成を繰り返す。
【0042】
減算器156は、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、減算後の符号系列で復号対象符号系列を更新する。1回目の減算において、減算器156は、受信した多重化された符号系列から、レプリカ信号A1(v1+n1)を減算する。2回目以降のi回目の再符号化において、減算器156は、前回のレプリカ信号A1-1(v1-1+n1-1)が減算された符号系列からレプリカ信号A1(v1+n1)を減算する。減算器156は、復号器152において受信対象の情報系列が得られるまで、レプリカ信号の減算を繰り返す。
【0043】
訂正器157は、受信対象である情報系列の復号誤りを訂正する。すなわち、訂正器157は、受信対象である情報系列uiXOReiの復号誤りeiを訂正して、受信対象の情報系列uiを得る。情報系列uiXOReiの復号誤りeiを訂正しない場合、訂正器157が省略されてもよい。
【0044】
出力部159は、受信対象の情報系列uiを出力する。情報系列uiXOReiの復号誤りeiを訂正しない場合、出力部159は、復号誤りeiを含む情報系列uiXOReiを出力する。情報系列uiの出力先については、特に限定しない。例えば、情報系列uiは、その情報系列uiを使用するシステムや装置に向けて出力される。
【0045】
〔2重化〕
次に、本開示における回線の2重化について説明する。誤り訂正符号の多重化は、符号系列を振幅値方向に多重化するため、軟判定復号とする。送信局では、{0、1}によって構成された2種類のビットの情報系列を、2つの符号系列に変換する。k1ビットの情報系列u1は、誤り訂正符号φ1によって、系列長L1の符号系列v1に変換される。k2ビットの情報系列u2は、誤り訂正符号φ2によって、系列長L2の符号系列v2に変換される。誤り訂正符号φ1と誤り訂正符号φ2とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
誤り訂正符号φ1に対応する誤り訂正符号ψ1を用いると、通信経路において雑音系列n1が付加された符号系列v1+n1が復号されて、情報系列u1XORe1が得られる。誤り訂正符号φ1の符号化率は、k1/L1である。誤り訂正符号φ2に対応する誤り訂正符号ψ2を用いると、通信経路において雑音系列n2が付加された符号系列v2+n2が復号されて、情報系列u2XORe2が得られる。誤り訂正符号φ2の符号化率は、k2/L2である。符号系列v1に実数振幅値a1が乗算された符号系列a11と、符号系列v2に実数振幅値a2が乗算された符号系列a22との和は、符号系列a11+a22である。ただし、実数振幅値a1は、実数振幅値a2よりも大きい。送信機11は、符号系列a11+a22を含む通信信号を通信経路に送出する。
【0047】
送信機11(送信局)から送信された通信信号(符号系列a11+a22)には、通信経路において雑音系列nが付加される。受信機15(受信局)は、下記の式8で表される符号系列を受信する。
[数8]
11+A22+n・・・(8)
1は、通信経路において増大または減衰した実数振幅値a1に対応する。A2は、通信経路において増大または減衰した実数振幅値a2に対応する。A1とA2は、下記の式9の関係を満たすものとする。
[数9]
2/A1=a2/a1・・・(9)
式8で示される符号系列A11+A22+nは、符号系列A11に雑音系列A22+nが付加された合成信号とみなせる。符号系列A11+A22+nの誤り訂正符号ψ1による復号は、下記の式10で表される。
[数10]
ψ1(A11+A22+n)=u1XORe1・・・(10)
1は、復号誤りである。
【0048】
誤り訂正符号φ1を用いて、式10の右辺を再符号化すると、下記の式11のように表される。
[数11]
φ1(u1XORe1)=v1+n1・・・(11)
1が既知であれば、式8で表された符号系列A11+A22+nから、実数振幅値A1が乗算された式11の右辺を減算することによって、下記の式12の右辺に示す符号系列が得られる。
[数12]
11+A22+n-A1(v1+n1)=A22+n-A11・・・(12)
式12の右辺の符号系列A22+n-A11は、誤り訂正符号φ2で符号化された符号系列A22に、雑音系列n-A11が付加されたものとみなせる。
【0049】
符号系列A22+n-A11の誤り訂正符号ψ2による復号は、下記の式13で表される。
[数13]
ψ2(A22+n-A11)=u2XORe2・・・(13)
上記のように、復号誤りe1を含んだ情報系列u1を式10から得ることができる。また、復号誤りe2を含んだ情報系列u2を式13から得ることができる。すなわち、本実施形態の手法によれば、単一の送信機11(送信局)から2つの受信機15(受信局)に対して、同一の通信信号を用いて異なる情報を送信できる。
【0050】
図4は、本開示の手法で2重化された回線の一例を示す概念図である。送信機11は、符号系列(符号1)と符号系列(符号2)とが振幅値方向に重畳された符号系列(通信信号)を送信する。符号系列(符号1)は、情報系列(情報1)が符号化された第1搬送信号である。情報系列(情報1)は、受信機15-1に向けられた情報を含む。符号系列(符号2)は、情報系列(情報2)が符号化された第2搬送信号である。情報系列(情報2)は、受信機15-2に向けられた情報を含む。通信信号は、第1搬送信号に第2搬送信号が、振幅値方向に重畳された信号である。
【0051】
受信機15-1は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)を受信する。受信機15-1は、受信した通信信号(符号系列)から、情報系列(情報1)を復号する。受信機15-1にとって、復号された情報系列(情報1)は受信対象である。このように、受信機15-1は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)から、受信対象の情報系列(情報1)を復号する。
【0052】
受信機15-2は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)を受信する。受信機15-2は、受信した通信信号(符号系列)から、情報系列(情報1)を復号する。受信機15-2にとって、復号された情報系列(情報1)は、受信対象ではない。受信機15-2は、復号された情報系列(情報1)を再符号化する。受信機15-2は、受信時点における符号系列(符号1)の実数振幅値を、再符号化された符号系列に乗算してレプリカ信号を生成する。受信機15-2は、受信した符号系列から、レプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を算出する。受信機15-2は、復号対象符号系列から、情報系列(情報2)を復号する。受信機15-2にとって、復号された情報系列(情報2)は受信対象である。このような手順で、受信機15-2は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)から、受信対象の情報系列(情報2)を復号する。
【0053】
〔多重化〕
次に、本開示における回線の多重化について説明する。図5図6は、本開示における回線の多重化について説明するための概念図である。図5は、送信機11における符号化について説明するための概念図である。図6は、受信機15における復号について説明するための概念図である。以下においては、回線をn重に多重化する例について説明する(nは自然数)。図5図6においては、個々の信号を区別するために、iやjなどの添え字を付す(i、jは、1以上n以下の自然数)。
【0054】
図5において、取得部111は、{0、1}によって構成されるビットの情報系列uiを取得する。符号化器112は、誤り訂正符号φ1を用いて、取得した情報系列uiを系列長Liの符号系列viに変換する。誤り訂正符号φiは、情報系列uiごとに同一でもよいし、情報系列uiごとに異なっていてもよい。増幅器113(ξ1~ξn)は、実数振幅値aiの増幅率で、符号系列viを符号系列aiiに増幅する。加算器115は、符号系列v1~符号系列vnに関して、増幅後の符号系列aiiを加算する。送信部117は、下記の式14で表される符号系列の和で示される通信信号(符号系列)を通信経路13に送出する。
[数14]
式14で表された通信信号(符号系列)は、複数の搬送信号(符号系列)が振幅値方向に多重化された信号である。
【0055】
図6において、受信部151は、通信経路13を介して、送信機11から送信された通信信号(符号系列)を受信する。受信部151は、下記の式15で表される通信信号(符号系列)を受信する。
[数15]
上記の式15の符号系列は、復号対象符号系列に相当する。
【0056】
受信部151は、実数振幅値aiが実数振幅値Aiに変化し、雑音系列nが付加された符号系列を受信する。受信機15における符号系列viの実数振幅値Aiに対する符号系列vi+1の実数振幅値Ai+1の比と、送信機11における符号系列viの実数振幅値aiに対する符号系列vi+1の実数振幅値ai+1の比とは、以下の式16を満たすと仮定する。
[数16]
以下においては、受信機15の側で、実数振幅値Aiが既知であると仮定する。
【0057】
上記の式15の復号対象符号系列は、下記の式17で表される復号対象符号系列に変形できる。
[数17]
下記の式18のように、復号器152は、誤り訂正符号ψ1を用いて、上記の式17の復号対象符号系列から情報系列を復号する。
[数18]
式18において、e1は復号誤りである。
【0058】
下記の式19のように、再符号化器153は、式18の右辺の情報系列u1XORe1を誤り訂正符号φ1で再符号化する。
[数19]
上記の式19の右辺の符号系列v1+n1は、雑音系列n1を含む。
【0059】
乗算器155は、上記の式19の右辺の符号系列v1+n1に実数振幅値Aiを乗算して、レプリカ信号A1(v1+n1)を生成する。
【0060】
減算器156は、式17の符号系列からレプリカ信号A1(v1+n1)を減算する。その結果、下記の式20の復号対象符号系列が得られる。
[数20]
上記の式20は、復号対象符号系列に相当する。
【0061】
復号器152は、上記の式20で表された復号対象符号系列を誤り訂正符号ψ2で復号する。その結果、情報系列u2XORe2が得られる。
【0062】
再符号化器153は、誤り訂正符号φ2を用いて、情報系列u2XORe2を再符号化して、符号系列v2+n2に変換する。乗算器155は、実数振幅値A2を符号系列v2+n2に乗算して、レプリカ信号A2(v2+n2)を生成する。同様の演算が繰り返されると、i=jの時、符号系列は下記の式21になり、情報系列uiXOReiが得られる。
[数21]
受信機15(受信局)は、さらに演算を繰り返すことによって、unXORenまでのn個の情報系列を得られる。
【0063】
訂正器157は、情報系列unXORenを誤り訂正することによって、受信対象である情報系列ukを得る(kは、1以上n以下の自然数)。
【0064】
図7は、本開示の手法で多重化(3重化)された回線の一例を示す概念図である。送信機11は、符号系列(符号1)、符号系列(符号2)、および符号系列(符号3)が振幅値方向に重畳された符号系列(通信信号)を送信する。符号系列(符号1)は、情報系列(情報1)が符号化された第1搬送信号である。情報系列(情報1)は、受信機15-1に向けた情報を含む。符号系列(符号2)は、情報系列(情報2)が符号化された第2搬送信号である。情報系列(情報2)は、受信機15-2に向けた情報を含む。符号系列(符号3)は、情報系列(情報3)が符号化された第3搬送信号である。情報系列(情報3)は、受信機15-3に向けた情報を含む。
【0065】
受信機15-1は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)を受信する。受信機15-1は、受信した通信信号(符号系列)から、情報系列(情報1)を復号する。受信機15-1にとって、復号された情報系列(情報1)は、受信対象である。このように、受信機15-1は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)から、受信対象の情報系列(情報1)を復号する。
【0066】
受信機15-2は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)を受信する。受信機15-2は、受信した通信信号(符号系列)から、情報系列(情報1)を復号する。受信機15-2にとって、復号された情報系列(情報1)は、受信対象ではない。受信機15-2は、復号された情報系列(情報1)を再符号化する。受信機15-2は、受信時点における符号系列(符号1)の実数振幅値を、再符号化された符号系列に乗算してレプリカ信号を生成する。受信機15-2は、受信した符号系列から、レプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を算出する。受信機15-2は、復号対象符号系列から、受信対象である情報系列(情報2)を復号する。受信機15-2にとって、復号された情報系列(情報2)は、受信対象である。このような手順で、受信機15-2は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)から、受信対象の情報系列(情報2)を復号する。
【0067】
受信機15-3は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)を受信する。受信機15-3は、受信した通信信号(符号系列)から、情報系列(情報1)を復号する。受信機15-3にとって、復号された情報系列(情報1)は、受信対象ではない。受信機15-3は、復号された情報系列(情報1)を再符号化する。受信機15-3は、受信時点における符号系列(符号1)の実数振幅値を、再符号化された符号系列に乗算してレプリカ信号を生成する。受信機15-3は、受信した符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を算出する。受信機15-3は、復号対象符号系列から、受信対象である情報系列(情報2)を復号する。受信機15-3にとって、復号された情報系列(情報2)は、受信対象ではない。受信機15-3は、復号された情報系列(情報2)を再符号化する。受信機15-3は、受信時点における符号系列(符号2)の実数振幅値を、再符号化された符号系列に乗算する。受信機15-3は、その時点における復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、新たな復号対象符号系列を算出する。受信機15-3は、復号対象符号系列から、情報系列(情報3)を復号する。受信機15-3にとって、復号された情報系列(情報3)は、受信対象である。このような手順で、受信機15-3は、送信機11から送信された通信信号(符号系列)から、受信対象の情報系列(情報3)を復号する。
【0068】
(動作)
次に、本実施形態における通信システム1の動作について図面を参照しながら説明する。以下においては、通信システム1が備える送信機11および受信機15の動作について個別に説明する。
【0069】
〔送信機〕
図8は、本開示における送信機11の動作の一例を示すフローチャートである。図8のフローチャートに沿った処理の説明においては、送信機11の構成要素を動作主体とする。図8のフローチャートに沿った処理の動作主体は、送信機11であってもよい。
【0070】
図8において、まず、取得部111が、送信対象である複数の情報系列を取得する(ステップS111)。複数の情報系列の各々は、複数の受信機15-1~nの各々に向けられた情報を含む。
【0071】
次に、符号化器112が、誤り訂正符号を用いて、取得した複数の情報系列の各々を、複数の受信機15-1~nごとの系列長の符号系列に符号化する(ステップS112)。
【0072】
次に、増幅器113が、複数の符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算する(ステップS113)。
【0073】
次に、加算器115が、実数振幅値が乗算された複数の符号系列を互いに加算する(ステップS114)。加算された符号系列は、複数の受信機15ごとの搬送信号(符号系列)が振幅値方向に多重化された符号系列(通信信号)である。
【0074】
次に、送信部117が、複数の受信機15ごとの符号系列が振幅値方向に多重化された符号系列(通信信号)を変調し、変調された通信信号を送信する(ステップS115)。通信経路において、送信部117から送信された通信信号(符号系列)の実数振幅値が変化する。また、通信経路において、送信部117から送信された通信信号(符号系列)には雑音系列が付加される。
【0075】
〔受信機〕
図9は、本開示における受信機15の動作の一例を示すフローチャートである。図9のフローチャートに沿った処理の説明においては、受信機15の構成要素を動作主体とする。図9のフローチャートに沿った処理の動作主体は、受信機15であってもよい。
【0076】
図9において、まず、受信部151が、通信信号(符号系列)を受信する(ステップS151)。受信された通信信号(符号系列)は、複数の送信機11に向けられた搬送信号(符号系列)が重畳された信号である。
【0077】
次に、復号器152が、誤り訂正符号を用いて、復号対象符号系列から情報系列を復号する(ステップS152)。1回目の復号においては、搬送信号(符号系列)が復号対象符号系列に相当する。2回目以降の復号において、復号器152は、更新された復号対象符号系列から情報系列を復号する。
【0078】
復号された情報系列が受信対象ではなかった場合(ステップS153でNo)、再符号化器153は、復号された情報系列を再符号化する(ステップS154)。i回目の再符号化において、再符号化器153は、i回目の符号化条件で情報系列を再符号化する。i回目の符号化条件では、情報系列uiの符号化で用いられた誤り訂正符号が用いられる。一方、復号された情報系列が受信対象であった場合(ステップS153でYes)、ステップS157の処理に進む。
【0079】
ステップS154の次に、乗算器155が、再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する(ステップS155)。i回目の乗算において、乗算器155は、i回目の乗算条件で、再符号化された符号系列に実数振幅値を乗算する。i回目の乗算条件では、通信信号の受信時点における第i搬送信号の実数振幅値が用いられる。
【0080】
次に、減算器156が、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新する(ステップS156)。ステップS156の次は、ステップS152に戻る。1回目の減算において、減算器156は、受信した符号系列(復号対象符号系列)からレプリカ信号を減算し、減算後の符号系列で復号対象符号系列を更新する。2回目以降のi回目の減算において、減算器156は、前回の減算において更新された復号対象符号系列からi回目のレプリカ信号を減算し、減算後の符号系列で復号対象符号系列を更新する。
【0081】
ステップS153において、復号された情報系列が受信対象の場合(ステップS153でYes)、訂正器157が、受信対象である情報系列の復号誤りを訂正する(ステップS157)。受信機15において情報系列の復号誤りが訂正されない場合、ステップS157は省略される。
【0082】
次に、出力部159が、復号誤りが訂正された情報系列を出力する(ステップS158)。受信機15において情報系列の復号誤りが訂正されない場合、出力部159は、復号誤りを含む情報系列を出力する。
【0083】
以上のように、本実施形態の通信システムは、送信機および受信機を備える。本実施形態の通信システムは、複数の受信機を備える。送信機は、取得部、符号化器、増幅器、加算器、および送信部を備える。取得部は、ビット系列である複数の情報系列を取得する。次に、符号化器は、誤り訂正符号を用いて、複数の情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化する。増幅器は、複数の符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算する。加算器は、実数振幅値が乗算された複数の符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する。送信部は、生成された通信信号を変調し、変調された通信信号を送信する。受信機は、受信部、復号器、再符号化器、乗算器、減算器、および出力部を備える。受信部は、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信する。復号器は、誤り訂正符号を用いて、通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号する。復号された情報系列が受信対象ではなかった場合、再符号化器は、復号された情報系列を再符号化する。乗算器は、再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する。減算器は、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新する。復号された情報系列が受信対象であった場合、出力部は、受信対象の情報系列を出力する。
【0084】
本実施形態の送信機は、複数の情報系列の各々を誤り訂正符号で符号化する。本実施形態の送信機は、訂正符号で符号化された複数の符号系列を加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する。本実施形態の受信機は、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を復号対象符号系列として、誤り訂正符号を用いて、情報系列を復号する。本実施形態の受信機は、受信対象ではない情報系列が復号されると、その情報系列を再符号化し、既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する。本実施形態の受信機は、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新する。本実施形態の受信機は、誤り訂正符号を用いて、更新された復号対象符号系列から情報系列を復号する。本実施形態の受信機は、受信対象の情報系列が復号されるまで、これらの処理を繰り返す。このように、本実施形態の受信機は、誤り訂正符号を用いて、複数の搬送信号が重畳された通信信号から、受信対象の情報系列を復号する。そのため、本実施形態の通信システムによれば、振幅値方向に搬送信号が多重化された通信信号を用いた無線通信を実現できる。
【0085】
本実施形態の一態様の送信機において、複数の情報系列は、第1情報系列および第2情報系列を含む。符号化器は、第1誤り訂正符号を用いて、第1情報系列を第1符号系列に符号化する。符号化器は、第2誤り訂正符号を用いて、第2情報系列を第2符号系列に符号化する。増幅器は、第1実数振幅値で第1符号系列を増幅する。増幅器は、第2実数振幅値で第2符号系列を増幅する。例えば、第1実数振幅値が第2実数振幅値よりも大きい。加算器は、第1実数振幅値で増幅された第1符号系列を含む第1搬送信号と、第2実数振幅値で増幅された第2符号系列を含む第2搬送信号とを加算して、第1搬送信号に第2搬送信号が重畳された通信信号を生成する。本態様によれば、振幅値方向に搬送信号が2重化された通信信号を送信できる。
【0086】
本実施形態の一態様の受信機は、復号された情報系列に含まれる復号誤りを訂正する訂正器を備える。本態様によれば、復号誤りが訂正された情報系列が得られる。
【0087】
本実施形態の一態様において、復号器は、第1誤り訂正符号を用いて、搬送信号から第1情報系列を復号する。出力部は、第1情報系列が受信対象であった場合、復号された第1情報系列を出力する。再符号化器は、第1情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された第1情報系列を第1符号系列に再符号化する。乗算器は、再符号された第1符号系列に第1実数振幅値を乗算して第1レプリカ信号を生成する。減算器は、復号対象符号系列から第1レプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新する。復号器は、第2誤り訂正符号を用いて、更新された復号対象符号系列から第2情報系列を復号する。出力部は、復号された第2情報系列を出力する。本態様によれば、振幅値方向に搬送信号が2重化された通信信号から、受信対象である情報系列を復号できる。
【0088】
本実施形態の一態様の受信機において、再符号化器、乗算器、減算器、および復号器は、受信対象である情報系列が得られるまで処理を繰り返す。本態様によれば、振幅値方向に搬送信号が多重化された通信信号から、受信対象である情報系列を復号できる。
【0089】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る送信機について図面を参照しながら説明する。本実施形態の送信機は、第1実施形態に係る通信システムが備える送信機を簡略化した構成である。
【0090】
(構成)
図10は、本開示における送信機21の構成の一例を示すブロック図である。送信機21は、取得部211、符号化器212、増幅器213、加算器215、および送信部217を備える。
【0091】
取得部211は、ビット系列である複数の情報系列を取得する。符号化器212は、誤り訂正符号を用いて、複数の情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化する。増幅器213は、複数の符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算する。加算器215は、実数振幅値が乗算された複数の符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する。送信部217は、生成された通信信号を変調し、変調された通信信号を送信する。
【0092】
(動作)
図11は、本開示における送信機21の動作の一例(送信方法)を示すフローチャートである。図11のフローチャートに沿った処理の説明においては、送信機21の構成要素を動作主体とする。図11のフローチャートに沿った処理の動作主体は、送信機21であってもよい。
【0093】
図11において、まず、取得部211は、ビット系列である複数の情報系列を取得する(ステップS211)。
【0094】
次に、符号化器212は、誤り訂正符号を用いて、複数の情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化する(ステップS212)。
【0095】
次に、増幅器213は、複数の符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算する(ステップS213)。
【0096】
次に、加算器215は、実数振幅値が乗算された複数の符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する(ステップS214)。
【0097】
次に、送信部217は、生成された通信信号を変調し、変調された通信信号を送信する(ステップS215)。
【0098】
本実施形態の送信機は、複数の情報系列の各々を誤り訂正符号で符号化する。本実施形態の送信機は、訂正符号で符号化された複数の符号系列を加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する。そのため、本実施形態の送信機によれば、振幅値方向に搬送信号が多重化された通信信号を用いた無線通信を実現できる。
【0099】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る受信機について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受信機は、第1実施形態に係る通信システムが備える受信機を簡略化した構成である。
【0100】
(構成)
図12は、本開示における受信機35の構成の一例を示すブロック図である。受信機35は、受信部351、復号器352、再符号化器353、乗算器355、減算器356、および出力部359を備える。
【0101】
受信部351は、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信する。復号器352は、誤り訂正符号を用いて、通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号する。復号された情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された情報系列を再符号化する。乗算器355は、再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する。減算器356は、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新する。復号された情報系列が受信対象であった場合、受信対象の情報系列を出力する。
【0102】
(動作)
図13は、本開示における受信機35の動作の一例(受信方法)を示すフローチャートである。図13のフローチャートに沿った処理の説明においては、受信機35の構成要素を動作主体とする。図13のフローチャートに沿った処理の動作主体は、受信機35であってもよい。
【0103】
図13において、まず、受信部351は、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信する(ステップS351)。
【0104】
次に、復号器352は、誤り訂正符号を用いて、通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号する(ステップS352)。
【0105】
復号された情報系列が受信対象ではなかった場合(ステップS353でNo)、復号された情報系列を再符号化する(ステップS354)。一方、復号された情報系列が受信対象であった場合(ステップS353でYes)、出力部359は、受信対象の情報系列を出力する(ステップS357)。
【0106】
ステップS354の次に、乗算器355は、再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する(ステップS355)。
【0107】
次に、減算器356は、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新する(ステップS356)。ステップS356の次は、ステップS352に戻る。
【0108】
本実施形態の受信機は、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を復号対象符号系列として、誤り訂正符号を用いて、情報系列を復号する。本実施形態の受信機は、受信対象ではない情報系列が復号されると、その情報系列を再符号化し、既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する。本実施形態の受信機は、復号対象符号系列からレプリカ信号を減算して、復号対象符号系列を更新する。本実施形態の受信機は、誤り訂正符号を用いて、更新された復号対象符号系列から情報系列を復号する。本実施形態の受信機は、受信対象の情報系列が復号されるまで、これらの処理を繰り返す。このように、本実施形態の受信機は、誤り訂正符号を用いて、複数の搬送信号が重畳された通信信号から、受信対象の情報系列を復号する。そのため、本実施形態の受信機によれば、振幅値方向に搬送信号が多重化された通信信号を用いた無線通信を実現できる。
【0109】
(ハードウェア)
次に、本開示における処理を実行するハードウェア構成について、図面を参照しながら説明する。ここでは、そのようなハードウェア構成の一例として、図14の情報処理装置90(コンピュータ)をあげる。図14の情報処理装置90は、本開示における処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0110】
図14のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図14においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0111】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラム(命令)を、主記憶装置92に展開する。例えば、プログラムは、本開示における処理を実行するためのソフトウェアプログラムである。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。プロセッサ91は、プログラムを実行することによって、本開示における処理を実行する。
【0112】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magneto resistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0113】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0114】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。外部機器と接続されるインターフェースとして、入出力インターフェース95と通信インターフェース96とが共通化されてもよい。
【0115】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。入力機器としてタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルの機能を有する画面がインターフェースになる。プロセッサ91と入力機器とは、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0116】
情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器が備え付けられてもよい。表示機器が備え付けられる場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられる。情報処理装置90と表示機器は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0117】
情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体に格納されたデータやプログラムの読み込みや、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みを仲介する。情報処理装置90とドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して接続される。
【0118】
以上が、本開示における処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。図14のハードウェア構成は、本開示における処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本開示の範囲を限定するものではない。本開示における処理をコンピュータに実行させるプログラムも、本開示の範囲に含まれる。
【0119】
本実施形態における処理を実行するプログラムを記録したプログラム記録媒体も、本発明の範囲に含まれる。例えば、プログラム記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体である。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。
【0120】
本開示における構成要素は、任意に組み合わせられてもよい。本開示における構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよい。本開示における構成要素は、回路によって実現されてもよい。
【0121】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。そして、各実施の形態は、適宜他の実施の形態と組み合わせることができる。
【0122】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
ビット系列である複数の情報系列を取得する取得部と、
誤り訂正符号を用いて、複数の前記情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化する符号化器と、
複数の前記符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算する増幅器と、
前記実数振幅値が乗算された複数の前記符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成する加算器と、
生成された前記通信信号を変調し、変調された前記通信信号を送信する送信部と、を備える送信機。
(付記2)
複数の前記情報系列は、
第1情報系列および第2情報系列を含み、
前記符号化器は、
第1誤り訂正符号を用いて、前記第1情報系列を第1符号系列に符号化し、
第2誤り訂正符号を用いて、前記第2情報系列を第2符号系列に符号化し、
前記増幅器は、
第1実数振幅値で前記第1符号系列を増幅し、
第2実数振幅値で前記第2符号系列を増幅し、
前記加算器は、
前記第1実数振幅値で増幅された前記第1符号系列を含む第1搬送信号と、前記第2実数振幅値で増幅された前記第2符号系列を含む第2搬送信号とを加算して、前記第1搬送信号に前記第2搬送信号が重畳された前記通信信号を生成する付記1に記載された送信機。
(付記3)
前記第1実数振幅値が前記第2実数振幅値よりも大きい付記2に記載された送信機。
(付記4)
複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信する受信部と、
誤り訂正符号を用いて、前記通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号する復号器と、
復号された前記情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された前記情報系列を再符号化する再符号化器と、
再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成する乗算器と、
前記復号対象符号系列から前記レプリカ信号を減算して、前記復号対象符号系列を更新する減算器と、
復号された前記情報系列が受信対象であった場合、受信対象の前記情報系列を出力する出力部と、を備える受信機。
(付記5)
復号された前記情報系列に含まれる復号誤りを訂正する訂正器を備える付記4に記載の受信機。
(付記6)
前記復号器は、
第1誤り訂正符号を用いて、前記搬送信号から第1情報系列を復号し、
前記出力部は、
前記第1情報系列が受信対象であった場合、復号された前記第1情報系列を出力し、
前記再符号化器は、
前記第1情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された前記第1情報系列を第1符号系列に再符号化し、
前記乗算器は、
再符号された第1符号系列に第1実数振幅値を乗算して第1レプリカ信号を生成し、
前記減算器は、
前記復号対象符号系列から前記第1レプリカ信号を減算して、前記復号対象符号系列を更新し、
前記復号器は、
第2誤り訂正符号を用いて、更新された前記復号対象符号系列から第2情報系列を復号し、
前記出力部は、
復号された前記第2情報系列を出力する付記4に記載の受信機。
(付記7)
前記再符号化器、前記乗算器、前記減算器、および前記復号器は、受信対象である前記情報系列が得られるまで処理を繰り返す付記6に記載の受信機。
(付記8)
付記1乃至3のいずれか一つに記載の送信機と、
付記4乃至7のいずれか一つに記載の受信機と、を備える通信システム。
(付記9)
ビット系列である複数の情報系列を取得し、
誤り訂正符号を用いて、複数の前記情報系列の各々を軟値データ系列である符号系列に符号化し、
複数の前記符号系列の各々に既定の実数振幅値を乗算し、
前記実数振幅値が乗算された複数の前記符号系列を互いに加算して、複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を生成し、
生成された前記通信信号を変調し、
変調された前記通信信号を送信する送信方法。
(付記10)
複数の前記情報系列は、
第1情報系列および第2情報系列を含み、
前記符号化において、
第1誤り訂正符号を用いて、前記第1情報系列を第1符号系列に符号化し、
第2誤り訂正符号を用いて、前記第2情報系列を第2符号系列に符号化し、
前記増幅において、
第1実数振幅値で前記第1符号系列を増幅し、
第2実数振幅値で前記第2符号系列を増幅し、
前記加算において、
前記第1実数振幅値で増幅された前記第1符号系列を含む第1搬送信号と、前記第2実数振幅値で増幅された前記第2符号系列を含む第2搬送信号とを加算して、前記第1搬送信号に前記第2搬送信号が重畳された前記通信信号を生成する付記9に記載された送信機。
(付記11)
前記第1実数振幅値が前記第2実数振幅値よりも大きい付記10に記載された送信機。
(付記12)
複数の搬送信号が振幅値方向に多重化された通信信号を受信し、
誤り訂正符号を用いて、前記通信信号に由来する軟値データ系列である復号対象符号系列から、ビット系列である情報系列を復号し、
復号された前記情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された前記情報系列を再符号化し、
再符号された符号系列に既定の実数振幅値を乗算してレプリカ信号を生成し、
前記復号対象符号系列から前記レプリカ信号を減算して、前記復号対象符号系列を更新し、
復号された前記情報系列が受信対象であった場合、受信対象の前記情報系列を出力する受信方法。
(付記13)
復号された前記情報系列に含まれる復号誤りを訂正する付記12に記載の受信機。
(付記14)
前記復号において、
第1誤り訂正符号を用いて、前記搬送信号から第1情報系列を復号し、
前記出力において、
前記第1情報系列が受信対象であった場合、復号された前記第1情報系列を出力し、
前記再符号化において、
前記第1情報系列が受信対象ではなかった場合、復号された前記第1情報系列を第1符号系列に再符号化し、
前記乗算において、
再符号された第1符号系列に第1実数振幅値を乗算して第1レプリカ信号を生成し、
前記減算において、
前記復号対象符号系列から前記第1レプリカ信号を減算して、前記復号対象符号系列を更新し、
前記復号において、
第2誤り訂正符号を用いて、更新された前記復号対象符号系列から第2情報系列を復号し、
前記出力において、
復号された前記第2情報系列を出力する付記12に記載の受信機。
(付記15)
前記再符号化、前記乗算、前記減算、および前記復号は、受信対象である前記情報系列が得られるまで処理が繰り返される付記14に記載の受信機。
【符号の説明】
【0123】
1 通信システム
11、21 送信機
15、35 受信機
111、211 取得部
112、212 符号化器
113、213 増幅器
115、215 加算器
117、217 送信部
151、351 受信部
152、352 復号器
153、353 再符号化器
155、355 乗算器
156、356 減算器
157 訂正器
159、359 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14