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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024835
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】潤滑剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B22D17/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129161
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000153270
【氏名又は名称】株式会社日本高熱工業社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡部 一樹
(57)【要約】
【課題】 ダイカストマシンのプランジャースリーブ内に液体と粉体を混合させた潤滑剤を塗布することができる潤滑剤塗布装置を提供する。
【解決手段】 液体送路1から圧送された液体と、気体送路2から圧送された気体を混合して噴霧するミスト噴出部4と、粉体送路3から圧送された粉体を噴出する粉体噴出部5とを備え、ミスト噴出部4から噴出されたミスト中の液体と粉体噴出部5から噴出された粉体とを空中で混合させた後にプランジャースリーブ21内に塗布するようにしたことを特徴としている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカストマシンのプランジャースリーブ内に液体と粉体を混合させた潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置であって、
液体供給源から供給される前記液体を圧送する液体送路と、気体供給源から供給される気体を圧送する気体送路と、粉体供給源から供給される前記粉体を圧送する粉体送路と、前記液体送路から圧送された前記液体と前記気体送路から圧送された前記気体を混合して噴霧するミスト噴出部と、前記粉体送路から圧送された前記粉体を噴出する粉体噴出部とを備え、
前記ミスト噴出部から噴出された前記ミスト中の前記液体と前記粉体噴出部から噴出された前記粉体とを空中で混合させた後に前記プランジャースリーブ内に塗布するようにしたことを特徴とする潤滑剤塗布装置。
【請求項2】
前記粉体噴出部は、前記ミスト噴出部から噴出された前記ミストに向かって噴出するように該ミスト噴出部に対し角度を設けて設置されていることを特徴とする請求項1記載の潤滑剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシンの射出スリーブ内に液体と粉体を混合させた潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶融したアルミニウム合金などの金属(溶湯)を高速・高圧で金型内に射出して成型するダイカストマシンによる鋳造は、生産性や寸法精度に優れていることから、種々の工業製品の生産に広く用いられている。そして、このようなダイカストマシンによる鋳造においては、金型のキャビティに連通するプランジャースリーブ内に溶湯を供給し、該プランジャースリーブ内の溶湯をプランジャーチップによってキャビティへと押し出す工程が前提となる。その際、プランジャーチップとプランジャースリーブの間に発生する摩擦を軽減し、プランジャーチップを良好に摺動させるため、また、溶けた金属の保温効果を図る目的から、予めプランジャースリーブ内に潤滑剤を塗布しておくといったことが行われている。具体的には、特許文献1及び2に示されているように、溶湯供給口の上方からプランジャースリーブ内に潤滑剤をスプレーするといった手法が採用されている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-166129号公報(図10
【特許文献2】特開2004-291058号公報
【0004】
そして、プランジャースリーブ内にスプレーされる潤滑剤としては、現在、液体のみからなるタイプものと、液体に粉体を混同したタイプのものが一般的なものとして使用されている。もっとも、前者は比較的安価であるものの、溶融金属の保温性が低いという点で後者と比較して性能が劣っているという欠点がある。一方、後者は、前者と比較して性能面では優れているものの、比重差のある粉体を液体に分散させていることから、粉体が液体内に沈降してしまうといった欠点を完全には回避することができず、ひいては、プランジャースリーブにスプレーによって塗布される潤滑剤の不均一化を招いてしまうおそれがある。また、仮に粉体と液体をしっかりと攪拌し均一化された潤滑剤を使用したとしても、マシントラブルによる停止時、あるいは休日の操業停止時に、搬送路で粉体が再び沈降してしまうことによる詰まりや、吐出部での水分蒸発による閉塞を発生させてしまうおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、プランジャースリーブに液体と粉体が常に均一に混合された状態の潤滑剤を塗布することができると共に、潤滑剤の送路や噴出部に詰まり等の問題を生じさせない潤滑剤塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、ダイカストマシンのプランジャースリーブ内に液体と粉体を混合させた潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置であって、液体供給源から供給される前記液体を圧送する液体送路と、気体供給源から供給される気体を圧送する気体送路と、粉体供給源から供給される前記粉体を圧送する粉体送路と、前記液体送路から圧送された前記液体と前記気体送路から圧送された前記気体を混合して噴霧するミスト噴出部と、前記粉体送路から圧送された前記粉体を噴出する粉体噴出部とを備え、前記ミスト噴出部から噴出された前記ミスト中の前記液体と前記粉体噴出部から噴出された前記粉体とを空中で混合させた後に前記プランジャースリーブ内に塗布するようにしたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明における前記粉体噴出部は、前記ミスト噴出部から噴出された前記ミストに向かって噴出するように該ミスト噴出部に対し角度を設けて設置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ミスト噴出部から噴出されたミスト中の液体と粉体噴出部から噴出された粉体を空中で混合させてからプランジャースリーブに塗布するようにしたことから、液体に粉体が均一に混同した状態の潤滑剤をプランジャースリーブの内部に塗布することができる。また、液体に粉体を混合させた潤滑剤を使用した際に起こり得る送路や噴出部での詰まり等の発生を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ダイカストマシンの側面図。
図2】潤滑剤塗布装置の設置概要図。
図3】スプレーノズルの側面断面図。
図4】スプレーノズルの平面図。
図5】スプレーノズルによって給湯口に潤滑剤を噴霧する状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。本発明は、ダイカストマシンのプランジャースリーブの内部に液体と粉体を混合させた潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置に係るものであり、この潤滑剤塗布装置は、液体供給源から供給される液体を圧送する液体送路1と、気体供給源から供給される気体を圧送する気体送路2と、粉体供給源から供給される粉体を圧送する粉体送路3と、液体送路1から圧送された液体と気体送路2から圧送された気体を混合して噴霧するミスト噴出部4と、粉体送路3から圧送された粉体を噴出する粉体噴出部5とによって概略構成されている。ちなみに、この実施形態における潤滑剤塗布装置のミスト噴出部4と粉体噴出部5は、スプレーノズル6という1の部材に纏めて構成されている。なお、本発明に係る潤滑剤塗布装置は、ダイカストマシンに設けられていることを前提としているため、まず、この実施形態におけるダイカストマシンMの構成について簡単に説明しておく。
【0011】
図1は、本実施形態に係るダイカストマシンMの模式図であり、ダイカストマシンMは、次のように概略構成されている。なお、ここでは、位置関係を明確にするため、便宜上、図1の左側をダイカストマシンMの前側、図1の右側をダイカストマシンMの後側として説明する。このダイカストマシンMにおいては、基台10上に固定プラテン11、可動プラテン12、リアプラテン13が所定の間隔をもって立設されている。具体的には、ダイカストマシンMの前寄りの位置に固定プラテン11、ダイカストマシンMの略中央部に可動プラテン12、ダイカストマシンMの後端よりの位置にリアプラテン13が立設されている。そして、固定プラテン11と可動プラテン12のそれぞれの四隅には、両者を連結するようにタイバー14が張架され、可動プラテン12とリアプラテン13のそれぞれの四隅には、両者を連結するようにタイバー15が張架されている。また、固定プラテン11及び可動プラテン12の下端と基台10の間に、可動プラテン12を摺動自在に支持するスライド板16が介装されている。さらに、固定プラテン11の内側面には固定型17が、可動プラテン12の内側面には可動型18がそれぞれ固設されている。また、可動プラテン12とリアプラテン13の間には、トグルリンク19が設けられており、このトグルリンク19は、油圧シリンダによって、可動プラテン12を固定プラテン11に対して接近、あるいは離隔し得るようになっている。すなわち、このトグルリンク19によって、可動プラテン12に固設された可動型18を移動させていわゆる型締め、型開きが行えるようになっている。なお、固定型17と可動型18のそれぞれの対向面には、これらが型締めされた際に、鋳造品の形状が形成されるキャビティ17a,18aが形成されている。
【0012】
また、固定型17からダイカストマシンMの前方にかけて射出機構20が形成されている。この射出機構20は、いわゆる金属を溶解した溶湯を固定型17と可動型18のキャビティ17a,18aに供給するための機構で、次のような構成となっている。まず、固定プラテン11及び固定型17の下端部にプランジャースリーブ21が形成されている。このプランジャースリーブ21は、固定プラテン11を左右方向に貫通するように形成されたスリーブ21aと、固定型17を左右方向に貫通するように形成されたスリーブ21bとからなり、このうち、スリーブ21aは、その前端部が固定プラテン11の前方に突出し、その上面に溶湯を投入する給湯口22が開口されている。さらに、プランジャースリーブ21の前端部には、射出シリンダ23が連結されており、この射出シリンダ23内には、先端にプランジャーチップ24を備えたプランジャーロッド25が設けられている。そして、プランジャーチップ24は、プランジャースリーブ21内をその軸方向に摺動可能になっており、プランジャースリーブ21の給湯口22からプランジャースリーブ21内に給湯されたアルミニウム合金等の金属溶湯を加圧して溶湯出口21cから型締めされた状態の固定型17と可動型18の間のキャビティ17a,18aに射出して注湯するようになっている。さらに、プランジャースリーブ21の給湯口22の上方に詳細を後述する潤滑剤塗布装置のスプレーノズル6が配置されている。具体的には、スプレーノズル6は、そのミスト噴出部4が給湯口22に対向位置するように配置されている。
【0013】
また、固定プラテン11の上端には、ロボット26が配置されている。このロボット26には、支持部27に回転自在に連結されたリンク部材28が設けられ、このリンク部材28にアーム29を介して装置ホルダー30が装着されている。さらに、装置ホルダー30の先端部には、離型剤を塗布するためのノズル31が複数固着されている。そして、固定型17に対し可動型18が型開きしている状態において、ロボット26のリンク部材28及びアーム29によって、装置ホルダー30を固定型17及び可動型18の間の所定位置に移動させて、固定型17及び可動型18の内面の適宜箇所に離型剤や冷却水を塗布させられるようになっている。
【0014】
次に、上述したプランジャースリーブ21内に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置について説明する。図2は、本実施形態に係る潤滑剤塗布装置の設置概要図である。この図2に示されているように、液体を圧送する液体送路1と粉体を圧送する粉体送路3とは、それぞれ別個に独立して存在し、各々が液体及び粉体を圧送している。他方、気体供給源から供給される気体を圧送する気体送路2は、第1気体送路2aと第2気体送路2bに分岐されていて、このうち第2気体送路2bは、粉体送路3に連結されている。これら各送路について、さらに具体的に説明すると、液体送路1は、その上流側が液体供給源としてのタンク35に接続され、下流側が後述するスプレーノズル6の液体噴出路47に接続されている。そして、液体送路1の途中には、電磁弁36が設けられている。一方、気体送路2は、上流側が気体供給源としての工場内エアー37に接続されており、これを第1気体送路2aと第2気体送路2bに分岐させ、このうち、第1気体送路2aは、その下流側が後述するスプレーノズル6の気体噴出路50に接続されており、第2気体送路2bは、その途中で粉体送路3に接続されている。また、これら第1気体送路2aと第2気体送路2bのそれぞれに上流側から順に圧力調整装置38,40、電磁弁39,41が設けられている。他方、粉体送路3は、その上流側が粉体供給源としての粉体ホッパー42に接続されており、その途中において第2気体送路2bと接続されて一体化している。すなわち、粉体送路3と第2気体送路2bは、それぞれの途中でエジェクタ43を介して一体となり、その下流側が粉体噴出部5に接続されている。なお、この実施形態における粉体送路3(第2気体送路2b)は、下流側でさらに2つに枝分かれし、それぞれがスプレーノズル6の粉体噴出路55に接続されている。もっとも、上記実施形態のように、必ず気体送路2を分岐させて粉体送路3に接続しなければならないわけではなく、気体噴出路50と粉体噴出路55のそれぞれに対して別々の気体走路を設けることも可能である。
【0015】
前記スプレーノズル6は、図3及び図4に示されているように、ノズル本体6aと外嵌部材6bとによって構成されている。このうち、ノズル本体6aは、金属により形成された円柱形状の部材で、その先端部はやや径を細くした細径部45になっており、その他端部(上流側端部)には中央部と同径の端嵌部材46が固着されている。また、ノズル本体6aの軸方向中央には、貫通状の液体噴出路47が形成されている。さらに、液体噴出路47は、その先端(下流側端)が開口しており、この開口部分が液体の吐出口48になっている一方、液体噴出路47の他端側(上流側端部)である端嵌部材46には、前述の液体送路1と連結させるための連結部49が形成されている。そして、液体送路1の下流端部が連結部49に連結されて、タンク35から圧送された液体が液体送路1を介して液体噴出路47に供給され、最終的に、液体吐出口48から噴出されるようになっている。また、液体噴出路47から外方へやや離れた位置に周回状、すなわち、液体噴出路47の外周をぐるりと囲むように気体噴出路50が形成されている。さらに、気体噴出路50は、その先端(下流側端)が開口されており、この開口部分が気体吐出口51になっている。一方、気体噴出路50の他端側(上流側端部)は、端嵌部材46の手前で途切れている。さらに、ノズル本体6aの外周面であり軸方向中央やや上流側に前述の気体送路2と連結させるための連結部52が形成されている。そして、気体送路2の下流側端部が連結部52に連結されて、工場内エアー37から圧送された空気が第1気体送路2aを介して気体噴出路50に供給され、気体噴出路50の気体吐出口51から噴出されるようになっている。なお、液体吐出口48から噴出された液体と気体吐出口51から噴出された空気は、噴出直後に互いに混合して霧状になり、吐出方向に向かって拡がる略円錐形状に噴霧されることになる。ちなみに、この実施形態では、ミスト噴出部4を前述した構成のノズル本体6aによって形成しているが、ノズル本体6aの細かな構成は自由に設計可能である。また、上述のミスト噴出部4は、液体噴出路、液体吐出口、気体噴出路、気体吐出口をノズル本体6aに集約しているが、液体の吐出と気体の吐出をそれぞれ別の部材で行うことも可能である。要するに、ミスト噴出部は、液体と気体を混合しミストとして噴出し得るようになっていればよい。
【0016】
前記外嵌部材6bは、ノズル本体6aと同一の金属によって形成された円柱形状の部材で、ノズル本体6aの細径部45に固着されている。具体的には、外嵌部材6bは、中央部に貫通状の円孔が穿設されたドーナツ形状になっており、この円孔をノズル本体6aの細径部45に嵌合している。また、外嵌部材6bの外周からやや内側位置に周回状の粉体噴出路55が形成されている。さらに、粉体噴出路55は、その先端(下流側端)が全周に亘って開口しており、この開口部分が粉体吐出口56になっている。一方、粉体噴出路55の他端側(上流側端部)の2箇所に、前述の粉体送路3(第2の気体走路2b)と連結させるための連結部57が形成されている。そして、粉体送路3の下流端部が連結部57に連結されている。また、粉体噴出路55は、その先端側が内側(ノズル本体6a側)に向かって傾斜しており、粉体が粉体吐出口56から内側に向かって、すなわち、ノズル本体6aから噴出したミストに向かって噴出されるようにしている。ちなみに、上記実施形態では、粉体吐出口56が前周に亘って開口している例を示したが、粉体を噴出させることができる開口が形成されていれば、必ずしも、周回状にしなければならないわけではない。また、前述のミスト噴出部4は、液体噴出路、液体吐出口、気体噴出路、気体吐出口をノズル本体6aという1つの部材に集約しているが、液体の吐出と気体の吐出をそれぞれ別の部材で行うことも可能である。要するに、ミスト噴出部は、液体と気体を混合しミストとして噴出し得るようになっていればよい。
【0017】
なお、本発明における液体とは、主として水、鉱物油、アルコール、炭化水素などの有機溶媒からなるものを指し、それらに以下の成分が、溶解・乳化・分散された溶液でも良い。上記溶液の成分としては、水、シリコーンオイル、鉱物油、油脂類、ワックス類、界面活性剤、金属石鹸類、無機塩類、有機酸塩類、増粘剤、防錆剤、防腐剤、塗料等を、一種、もしくは複数種含有していても良い。また、市販の鋳造用離型剤や潤滑剤などの製品も本発明における液体として利用可能である。他方、本発明における粉体とは、黒鉛、窒化ホウ素、窒化ケイ素、タルク、マイカ等の無機化合物、無機塩、有機酸塩、耐熱性樹脂などの有機化合物が利用可能である。また、市販の粉体離型剤や粉体潤滑剤などの製品も本発明における粉体として利用可能である。
【0018】
次に上記のように構成された本実施形態における潤滑剤塗布装置の動作について説明する。まず、液体送路1に設けられている電磁弁36を作動させて液体送路1にタンク35の液体を流入させると共に、気体送路2に設けられている電磁弁40,41を作動させて、気体送路2に工場内エアー37の空気を流入させる。そして、液体送路1の液体は、ノズル本体6aの液体噴出路47へと圧送された後、ノズル本体6aの液体吐出口48から噴出する。また、気体送路2の空気は、第1気体送路2aと第2気体送路2bで分岐して、それぞれの送路2a,2bの双方に圧送される。このうち、第1気体送路2aの空気は、スプレーノズル6(ノズル本体6a)の気体噴出路50に到達した後、ノズル本体6aの気体吐出口51から噴出する。この時、ノズル本体6aの液体吐出口48から噴出した液体と気体吐出口51から噴出した空気は噴出直後に互いに混合して噴霧流となり、この噴霧流は、図5に示されているように、吐出方向に進むに従って拡がる略円錐形状に噴霧されることになる。他方、第2気体送路2bの空気は、エジェクタ43を通過する際、エジェクタ43の駆動力となって粉体送路3の上流側を真空状態にし、粉体ホッパー42の粉体を粉体送路3へと流入させる。これにより、粉体は、エジェクタ43に吸引されて第2気体送路2b(下流側の粉体送路3)に合流し、第2気体送路2bの空気と共に、スプレーノズル6(外嵌部材6b)の粉体噴出路55へ供給され、最終的に、スプレーノズル6の粉体吐出口56から噴出されることになる。この時、粉体吐出口56から噴出された粉体は、粉体噴出路55が内向きに角度を付けて配置されていることから、ノズル本体6aから噴出した噴霧流に向かうように飛び出して、噴霧流に空中で混じり合うことになる。そして、スプレーノズル6のミスト噴出部4と粉体噴出部5がプランジャースリーブ21の給湯口22と対向するように配置されていることから、ミスト噴出部4から噴出されたミスト中の液体と粉体噴出部5から噴出された粉体とがプランジャースリーブの給湯口22と対向する位置の空中で混合され、この混合した状態の潤滑剤がプランジャースリーブ21の給湯口22から該プランジャースリーブ21の内部に塗布(噴霧)される。これにより、プランジャースリーブ21の内周面に粉体と液体が混合した潤滑剤が付着し、プランジャーチップ24とプランジャースリーブ21の間に発生する摩擦が軽減されて、プランジャーチップを良好に摺動させることができる。また、潤滑剤によって、溶湯の熱がプランジャースリーブに奪われてしまうといった弊害を防止することができる。なお、ノズル本体6から噴出させるミストと粉体の噴出タイミングは、任意に選択可能であり、同時に噴出させてもよいが、両者の噴出タイミングをずらすとより効果的である。すなわち、粉体のみではプランジャースリーブ内に噴霧されてもプランジャースリーブ内に付着することができないため、仮に粉体を液体よりも先に噴出させると、その多くが飛散してしまうことになるが、先に噴霧流を噴出し、この噴霧流に後から粉体を合流させるようにすれば、無駄に飛散してしまう粉体をかなり減少させることができる。また、同様に、ミストと粉体の噴出を停止させるタイミングも任意に選択でき、例えば、先に粉体の噴出を停止させれば、無駄に飛散してしまう粉体を減少させることができる。
【0019】
ちなみに、上記実施形態では、ミスト噴出部4と粉体噴出部5をスプレーノズル6に集約して形成した例を示したが、両者を別々にすることも可能である。すなわち、粉体噴出部から噴出した粉体がミスト噴出部から噴出したミストに空中で混合できるのであれば、例えば、粉体噴出部をスプレーノズルとは別個独立した管状のノズル等により形成することも可能である。
【0020】
以上説明した潤滑剤塗布装置の実施形態においては、ミスト噴出部4と粉体噴出部5をプランジャースリーブ21の給湯口22と対向する位置に設け、潤滑剤を給湯口22に向けて噴霧させる例を示したが、これに限られるわけではなく、潤滑剤をプランジャースリーブ21の溶湯出口21c側から噴霧するようにしてプランジャースリーブ21内に塗布するようにしてもよい。すなわち、ミスト噴出部4と粉体噴出部5を溶湯出口21cに移動させる何らかの手段に設けることにより、必要に応じてプランジャースリーブ21の溶湯出口21cに対向する位置に移動させ、溶湯出口21c側から潤滑剤を噴霧するようにしてもよい。その1つの方法として、例えば、前述したダイカストマシンMのロボット26の装置ホルダー30にミスト噴出部4と粉体噴出部5を設け、ロボット26によってプランジャースリーブ21の溶湯出口21cに移動させるようにしてもよい。また、ミスト噴出部4と粉体噴出部5の移動手段を前記ロボット26とは別に設けることも当然可能である。
【実施例0021】
表1は、粉体噴出路55を異なる角度で内向きに傾斜させた場合において、いかなる角度が適正かについて試験をした結果を示すものである。なお、ここでの角度は、図5に示したスプレーノズル6の中心からその軸方向に延びる仮想線Aと粉体吐出口56の中心から軸方向に延びる仮想線Bとの間の角度θとする。この試験結果によると、スプレーノズル6の液体吐出口48と粉体吐出口56が平行となっている0度からやや角度をつけた2度の範囲においては、粉体の飛散が多く生じる結果となった。その傾向は、4度から改善し6度以上になると粉体の飛散・浮遊が少ない混合塗布が実現できている。一方、角度を大きく持たせた25度~20度の範囲では付着膜が不均一となってしまう。その傾向は、18度、16度で改善し、14度以下で均一に成膜することが判明した。
【0022】
【表1】
評価指標
飛散:塗布対象に付着せず飛散・浮遊する粉体を目視評価
〇 飛散・浮遊が少ない
△ 飛散・浮遊がやや多い
× 飛散・浮遊が多い

付着:付着膜の均一性を目視評価
〇 付着範囲内の膜が均一な成膜
△ 付着範囲内の膜がやや不均一
× 付着範囲内の膜が不均一
【0023】
表2は、スプレーノズル6の液体吐出口48と粉体吐出口56がどの程度離れていると噴霧流と粉体が良好に混合するかについて試験をした結果を示すものである。この試験結果によると、液体吐出口48と粉体吐出口56が近距離である10mmでは粉体の飛散が多く、また、付着膜が均一にならないことが判明している。その傾向は20mmから改善し、30mm以上で粉体の飛散が少ない混合塗布を実現できている。一方、150mmから飛散がやや多くなり、200mmを超えると飛散が多く、やや不均一な付着状態となることがわかった。
【0024】
【表2】
評価指標
飛散:塗布対象に付着せず飛散・浮遊する粉体を目視評価
〇 飛散・浮遊が少ない
△ 飛散・浮遊がやや多い
× 飛散・浮遊が多い

付着:付着膜の均一性を目視評価
〇 付着範囲内の膜が均一な成膜
△ 付着範囲内の膜がやや不均一
× 付着範囲内の膜が不均一
【0025】
表3は、スプレーノズル6から噴出する液体と粉体の相対的な噴出速度を示す試験結果である。通常においては、潤滑剤を3~50m/sの速度で噴出するのが一般的である。試験の結果、液体と粉体に速度差が生じる場合、液体と粉体の相対速度は、同速から液体の方が速いと良い結果となることが判明した。すなわち、液体と粉体の噴出速度が同速から液体が4割ほど早い条件では、粉体の飛散が少なく、均一に付着した。これは空間を浮遊する粉体を液体が効率よくキャッチして成膜するためであると考えられる。但し、液体の速度が速くなりすぎる、具体的には、粉体の噴出速度より液体が6割程度速くなると付着膜が不均一になることが判明した。一方、液体が2割ほど遅い条件では粉体の飛散量が増し、それよりも遅くなるほど飛散量が増していくことが判明した。
【0026】
【表3】
評価指標
飛散:塗布対象に付着せず飛散・浮遊する粉体を目視評価
〇 飛散・浮遊が少ない
△ 飛散・浮遊がやや多い
× 飛散・浮遊が多い

付着:付着膜の均一性を目視評価
〇 付着範囲内の膜が均一な成膜
△ 付着範囲内の膜がやや不均一
× 付着範囲内の膜が不均一
【符号の説明】
【0027】
M ダイカストマシン
1 液体送路
2 気体送路
3 粉体送路
5 ミスト噴出部
6 粉体噴出部
37 工場内エアー(気体供給源)
42 粉体ホッパー(粉体供給源)
図1
図2
図3
図4
図5