IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎車両株式会社の特許一覧

特開2025-24842鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法
<>
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図1
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図2
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図3
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図4
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図5
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図6
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図7
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図8
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図9
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図10
  • 特開-鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024842
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/52 20060101AFI20250214BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B61F5/52
B23K9/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129172
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 博之
(72)【発明者】
【氏名】西原 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】森 茂樹
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081YC10
4E081YX02
4E081YX08
4E081YY02
(57)【要約】
【課題】複数の長尺状の部材を溶接して鉄道車両用台車枠を製造する場合において、部材同士の位置合わせ、及び、溶接に係る作業負担を軽減することにより、鉄道車両用台車枠の製造効率を向上させる。
【解決手段】
鉄道車両用台車枠の製造方法は、長手方向から見て、板部と、板部と連続して板部の一方の板面から外方に突出する凸部と、を有する少なくとも1つの長尺状の第1部材と、第1部材の長手方向に延びる、少なくとも1つの長尺状の第2部材と、を含む複数の部材を準備することと、第1部材の凸部の側面に対し、第1部材の幅方向の両側から第2部材の板面を接触させた状態で、第1部材及び第2部材を溶接することにより、長手方向から見て、複数の部材により囲まれた閉空間を有する中空状の梁を形成することと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向から見て、板部と、前記板部と連続して前記板部の一方の板面から外方に突出する凸部と、を有する少なくとも1つの長尺状の第1部材と、前記第1部材の前記長手方向に延びる、少なくとも1つの長尺状の第2部材と、を含む複数の部材を準備することと、
前記第1部材の前記凸部の側面に対し、前記第1部材の幅方向の両側から前記第2部材の板面を接触させた状態で、前記第1部材及び前記第2部材を溶接することにより、前記長手方向から見て、前記複数の部材により囲まれた閉空間を有する中空状の梁を形成することと、を含む、鉄道車両用台車枠の製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1部材は、各々が前記板部と前記凸部とを有する一対の第1板材を含み、
前記少なくとも1つの第2部材は、一対の第2板材を含み、
前記梁を形成することは、
前記一対の第1板材を互いの前記板面を対向させて配置すると共に、前記一対の第2板材を互いの板面を対向させて配置し、且つ、前記一対の第1板材の各々の前記凸部の前記側面に前記一対の第2板材の各々の前記板面を接触させることにより、前記閉空間を形成した状態で、前記一対の第1板材、及び、前記一対の第2板材を溶接して前記梁を形成することを含む、請求項1に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1部材は、前記板部と前記凸部とを有する単一の第1部材であり、
前記少なくとも1つの第2部材は、単一の第2部材であり、
前記第2部材は、前記長手方向から見て、各々が前記第2部材の前記板面である板面を有する一対の第1板部と、前記一対の第1板部を接続する第2板部と、を有し、
前記梁を形成することは、
前記第2部材の前記一対の第1板部の各々の前記板面を、前記第1部材の前記凸部の前記側面に接触させ、前記第1部材の前記板部、前記第2部材の前記一対の第1板部、及び、前記第2部材の前記第2板部により前記閉空間を形成した状態で、前記第1部材及び前記第2部材を溶接して前記梁を形成することを含む、請求項1に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【請求項4】
前記板材を準備することは、
共に削出し加工により形成した前記板部及び前記凸部を有する前記第1部材を準備することを含む、請求項1に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【請求項5】
前記梁を形成することは、
前記凸部を裏当金として用いて前記第1部材に前記第2部材を接触させることにより、前記第1部材及び前記第2部材を完全溶込溶接することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【請求項6】
前記板材を準備することは、
前記第1部材との間で、外部に露出する開先が形成される形状を有する前記第2部材を準備することを含み、
前記梁を形成することは、
前記第1部材の前記幅方向の外方から、前記開先の内部に溶接ビードを形成することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【請求項7】
前記梁を形成することは、
溶接装置が装着された多関節ロボットと、前記溶接装置と前記多関節ロボットとを制御する制御装置と、を備える自動溶接システムを用い、前記第1部材及び前記第2部材を互いに溶接するように、前記制御装置によって前記溶接装置と前記多関節ロボットとを制御することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【請求項8】
中空状の梁を備え、
前記中空状の梁は、
長手方向から見て、板部と、前記板部と連続して前記板部の一方の板面から外方に突出する凸部と、を有する少なくとも1つの長尺状の第1部材と、
前記第1部材の前記長手方向に延びる、少なくとも1つの長尺状の第2部材と、
前記第1部材の前記凸部の側面に対し、前記第1部材の幅方向の両側から前記第2部材の板面が接触した状態で、前記第1部材及び前記第2部材が溶接された溶接部分と、
前記長手方向から見て、前記第1部材と前記第2部材とにより囲まれた閉空間と、を有する、鉄道車両用台車枠。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1部材は、互いの前記板面を対向させて配置された一対の第1板材を含み、
前記少なくとも1つの第2部材は、互いの前記板面を対向させて配置された一対の第2板材を含み、
前記溶接部分は、前記一対の第1板材の各々の前記凸部の前記側面に前記一対の第2板材の各々の前記板面が接触することにより前記閉空間が形成された状態で、前記一対の第1板材、及び、前記一対の第2板材が溶接された部分を含む、請求項8に記載の鉄道車両用台車枠。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1部材は、前記板部と前記凸部とを有する単一の第1部材であり、
前記少なくとも1つの第2部材は、単一の第2部材であり、
前記第2部材は、前記長手方向から見て、各々が前記第2部材の前記板面である板面を有する一対の第1板部と、前記一対の第1板部を接続する第2板部と、を有し、
前記溶接部分は、前記第2部材の前記一対の第1板部の各々の前記板面が、前記第1部材の前記凸部の前記側面に接触し、前記第1部材の前記板部、前記第2部材の前記一対の第1板部、及び、前記第2部材の前記第2板部により前記閉空間が形成された状態で、前記第1部材及び前記第2部材が溶接された部分を含む、請求項8に記載の鉄道車両用台車枠。
【請求項11】
前記第2部材は、前記第1部材との間で、外部に露出する開先が形成される形状を有し、
前記溶接部分は、前記第1部材の前記幅方向の外方から、前記開先の内部に配置された溶接ビードを含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠。
【請求項12】
前記第1部材の厚みの最大寸法は、前記第2部材の厚みの最大寸法以上の値である、請求項8~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠。
【請求項13】
前記長手方向から見て、前記凸部は、前記第1部材の前記幅方向に延びる延在部分と、前記延在部分の途中で前記板部の厚み方向に向けて窪む窪み部分と、を有する、請求項8~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠。
【請求項14】
前記長手方向から見て、前記第2部材の前記板面は、前記凸部の前記側面と接触し、且つ、前記第2部材の幅方向の先端は、前記第1部材の前記板部の前記一方の板面と接触している、請求項8~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用台車枠及び鉄道車両用台車枠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両の台車枠を製造する際、長尺平板を加工して形成された第1及び第2の側梁部材を溶接等の手段により接合して、矩形状の閉断面を有する側梁本体部を形成する方法が記載されている。この方法では、第1及び第2の側梁部材の接合前に、予め、各側梁部材の内部に複数の補強材を溶接すると共に、各側梁部材の突合せ部の溶接部分に裏当金を溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4428767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の側梁部材のように、重量及び長さ寸法の比較的大きい長尺状の部材同士を溶接する場合、部材同士を高精度に位置合わせして溶接する作業が要求される。また、複数の補強材を部材に溶接する場合、溶接量が増大すると共に、部材内の狭いスペースで溶接作業を行うことが要求される。これにより、作業負担が増加して鉄道車両用台車枠の製造効率が低下する。
【0005】
そこで本開示は、複数の長尺状の部材を溶接して鉄道車両用台車枠を製造する場合において、部材同士の位置合わせ、及び、溶接に係る作業負担を軽減することにより、鉄道車両用台車枠の製造効率を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る鉄道車両用台車枠の製造方法は、長手方向から見て、板部と、前記板部と連続して前記板部の一方の板面から外方に突出する凸部と、を有する少なくとも1つの長尺状の第1部材と、前記第1部材の前記長手方向に延びる、少なくとも1つの長尺状の第2部材と、を含む複数の部材を準備することと、前記第1部材の前記凸部の側面に対し、前記第1部材の幅方向の両側から前記第2部材の板面を接触させた状態で、前記第1部材及び前記第2部材を溶接することにより、前記長手方向から見て、前記複数の部材により囲まれた閉空間を有する中空状の梁を形成することと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、複数の長尺状の部材を溶接して鉄道車両用台車枠を製造する場合において、部材同士の位置合わせ、及び、溶接に係る作業負担を軽減することにより、鉄道車両用台車枠の製造効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る鉄道車両の部分的な側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る自動溶接システムの概要図である。
図3図3は、第1実施形態に係る溶接直前のワークの長手方向から見た断面図である。
図4図4は、図3の第1板材及び第2板材の溶接時の様子を示す部分的な断面図である。
図5図5は、第1実施形態の第1変形例に係る第1部材の長手方向から見た断面図である。
図6図6は、第1実施形態の第2変形例に係る第1部材の長手方向から見た断面図である。
図7図7は、第1実施形態の第3変形例に係る第1部材の長手方向から見た断面図である。
図8図8は、第1実施形態の第4変形例に係る第1部材及び第2部材の長手方向から見た断面図である。
図9図9は、第1実施形態の第5変形例に係る第1部材の側面図である。
図10図10は、第1実施形態の第6変形例に係る第1部材の側面図である。
図11図11は、第2実施形態に係る溶接直前のワークの長手方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。以下で言及する「長手方向」とは、特に断りのない限り、台車枠の中空状の梁の構成要素である第1部材の長手方向を指す。また従来、例えばプレス処理等の処理により曲げ加工して成形した複数の成形部材を準備し、複数の成形部材同士を突合せ溶接して構造物を組み上げる場合、曲げ加工後の成形部材の形状がスプリングバックにより復元し、成形部材同士の突合せ位置が一致せずに段差が生じることがある。以下で言及する「目違い」は、このような段差を指す。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両60の部分的な側面図である。鉄道車両60は、台車50と、車体51とを備える。鉄道車両60は、一例として旅客車であるが、貨車であってもよい。台車50は、車体51の長手方向に延びる台車枠52と、線路上で台車枠52を支持する複数の車輪53とを備える。台車枠52は、少なくとも1つの中空状の梁Pを備える。一例として、台車枠52は、一対の側梁54と、その長手方向中央において、一対の側梁54を車幅方向に接続する横梁55とを備える。少なくとも1つの中空状の梁Pは、例えば側梁54及び横梁55の少なくともいずれかである。梁Pの種類は限定されず、例えば、台車枠52に備えられて、隣接する一対の横梁55同士を接続するツナギ梁でもよい。一例として、梁Pは、車輪53の直径よりも大きい長さ寸法を有する長尺状の部材である。
【0011】
従来、台車枠の製造時には、例えば、複数の梁を形成した後、複数の梁同士を溶接する。複数の梁を形成する場合、例えば、梁の構成部品である長尺状の部材同士を高精度に位置合わせして溶接する作業が要求される。また例えば、複数の補強材を長尺状の部材に溶接する場合、部材内の狭いスペースで各補強材を複数箇所に溶接する作業が要求される。これに対して本実施形態では、以下に示すように、予め準備した所定形状の複数の部材であるワークWを用いて梁Pを形成することにより台車枠52を製造する。これにより、複数の部材同士の位置合せや溶接を行う作業負担によって台車枠52の製造効率が低下するのが防止される。
【0012】
本実施形態では、一例として、自動溶接システム1(以下、単にシステム1とも称する。)を用いて台車枠52を製造する。図2は、第1実施形態に係るシステム1の概要図である。図2に示すように、システム1は、例えば、装置群2、少なくとも1つの多関節ロボット3、制御装置4、ツールチェンジャー5、及び、ポジショナー6を備える。システム1は、装置群2中の複数の装置を使い分けることにより、ワークWを別の場所に大きく移動させることなく、ワークWに対して溶接を含む複数処理を行う。
【0013】
装置群2は、溶接装置10を含む。溶接装置10は、一例として、TIG(Tangsten Inert Gas)溶接装置である。溶接装置10の溶接方法は、TIG溶接法に限定されず、例えば、Hot TIG溶接法、サブマージアーク溶接、エレクトロスラグ溶接法、ガスシールドアーク溶接法等の他の溶接法でもよい。ガスシールドアーク溶接法としては、例えばMAG(Metal Active Gas)溶接法、又は、MIG(Metal Inert Gas)溶接法が挙げられる。装置群2は、不使用時にはラック7に配置されている。ラック7は、一例として、装置群2中の各装置を個別に着脱自在に保持する複数のホルダー7aを有する。
【0014】
多関節ロボット3は、装置群2から選択された特定装置(以下、単に特定装置とも称する。)が着脱自在に装着される。ツールチェンジャー5は、特定装置を多関節ロボット3に対して着脱自在に装着する。ツールチェンジャー5については、例えば特開2020-93348号公報の記載を参照できる。
【0015】
制御装置4は、特定装置と多関節ロボット3とを制御する。本実施形態の制御装置4は、特定装置、多関節ロボット3、及び、ツールチェンジャー5の各々を個別に制御する制御処理回路を有する。一例として制御装置4は、プログラムが格納されたメモリ15と、メモリ15に格納されたプログラムを実行するプロセッサ16とを有する。制御処理回路は、メモリ15とプロセッサ16とにより実現される。プログラムを読み込んだプロセッサ16は、多関節ロボット3への特定装置を着脱するように、多関節ロボット3を制御することを実行するように構成されている。
【0016】
ポジショナー6は、多関節ロボット3に対してワークWを位置決めする。ポジショナー6は、基台17と、テーブル18とを有する。テーブル18には、ワークWが載置される。テーブル18は、水平面に対する上面の傾斜角度を調整可能に基台17に支持されている。テーブル18には、ワークWを着脱自在に保持するホルダーが別途配置されていてもよい。ポジショナー6は、制御装置4により制御される。ワークWは、一例として、梁Pの製造中間品である。
【0017】
本実施形態の台車枠52の製造方法は、ワークWを構成する所定の複数の部材(以下、単に複数の部材とも称する。)を準備する準備工程S1と、複数の部材により梁Pを形成する形成工程S2とを含む。準備工程S1は、複数の部材として、少なくとも1つの長尺状の第1部材20と、少なくとも1つの長尺状の第2部材21(図3参照)とを含むワークWを準備することを含む。また形成工程S2は、第1部材20及び第2部材21を溶接することにより、長手方向から見て複数の部材により囲まれた閉空間Qを有する中空状の梁Pを形成することを含む。準備工程S1及び形成工程S2は、その少なくとも一部が、プロセッサ16により実行され、残余が、作業者により実行されてもよい。本実施形態では、一例として、準備工程S1は、作業者により実行され、形成工程S2は、プロセッサ16により実行される。
【0018】
図3は、第1実施形態に係る溶接直前のワークWの長手方向から見た断面図である。図3では、システム1及び所定の治具により、互いに位置決めされた複数の部材を模式的に示している。図3に示すように、第1部材20は、長手方向から見て、板部20aと、板部20aと連続して板部20aの一方の板面20bから外方に突出する凸部20cとを有する。板面20b及び凸部20cの側面は、第1部材20の長手方向に延びている。第2部材21は、第1部材20の長手方向に延びている。第2部材21の板面21aは、第2部材21の長手方向に延びている。一例として、第1部材20の厚みの最大寸法は、第2部材21の厚みの最大寸法以上の値である。当該厚みの最大寸法は、一例として、第1部材20の凸部20cが配置された領域の厚み寸法である。
【0019】
一例として、少なくとも1つの第1部材20は、一対の第1板材25、26を含み、少なくとも1つの第2部材21は、一対の第2板材27、28を含む。第1板材25、26は、板部20aである板部25a、26aと、板面20bである板面25b、26bと、凸部20cである凸部25c、26cとを有する。一対の第2板材27、28は、板面21aである板面27a、28aを有する。
【0020】
また一例として、一対の第2板材27、28は、幅方向両側に配置されて幅方向の中央から外方に向けて厚み寸法が減少するように板面27a、28aが傾斜する傾斜部27b、28bを有する。傾斜部27b、28bの表面は、外部に露出している。これにより、板材25~28が組み合わされた状態において、第1板材25と第2板材27、28の各間、及び、第1板材26と第2板材27、28の各間に、開先Rが形成される。
【0021】
台車枠52を製造する際、準備工程S1において、作業者は、複数の部材として、少なくとも1つの長尺状の第1部材20と、少なくとも1つの長尺状の第2部材21とを準備する。このとき一例として、作業者は、第1部材20の凸部20cの側面に対し、第1部材20の幅方向の両側から第2部材21の板面21aを接触させるように、複数の部材を組み合わせる。この状態で、プロセッサ16は、形成工程S2において、第1部材20及び第2部材21を溶接し、長手方向から見て、複数の部材により囲まれた閉空間Qを有する中空状の梁Pを形成する。
【0022】
具体的に本実施形態の準備工程S1では、作業者は、板材25~28を準備する。また作業者は、一対の第1板材25、26を、互いの板面25b、26bを対向させて配置する。また作業者は、一対の第2板材27、28を互いの板面27a、28aを対向させて配置する。このとき作業者は、一対の第1板材25、26の各々の凸部25c、26cの側面25d、26dに一対の第2板材27、28の各々の板面27a、28aを接触させる。これにより作業者は、板材25~28に囲まれた閉空間Qが形成されるように板材25~28を組み合わせて配置する。この板材25~28の配置の際、必要に応じて治具が用いられる。その後、プロセッサ16は、作業者より組み合わせられた板材25~28をテーブル18上に配置し、板材25~28を溶接して梁Pを形成する。図3に示される例では、閉空間Qは、長手方向から見て矩形状である。
【0023】
また準備工程S1は、共に削出し加工により形成した板部20a及び凸部20cを有する第1部材20を準備することを含んでいてもよい。削出し加工により、第1部材20の板部20a及び凸部20cが、当該加工を行わない場合に比べて高精度に形成される。また、第1部材20の板部20a及び凸部20cが有する複数の表面である、板面25b、26b及び側面25d、26dの平坦性が向上する。従って、第1部材20及び第2部材21を組み合わせた際に、例えば第1部材20及び第2部材21の間に不要な隙間が発生するのが抑制される。
【0024】
なお準備工程S1は、削出し加工により形成した板面21aを有する第2部材21を準備することを含んでいてもよい。また別の例では、準備工程S1は、削出し加工、圧延加工、鋳造加工、及び、鍛造加工の少なくともいずれかの加工方法により各々成形した第1部材20及び第2部材21を準備することを含んでいてもよい。
【0025】
図4は、図3の第1板材26及び第2板材27の溶接時の様子を示す部分的な断面図である。図4に示すように、第2板材27は、幅方向端部の板面27aが、第1板材26の凸部26cの側面26dに面接触し、且つ、前記幅方向端部が、第1板材26の板面26bと間隔をおいて位置する状態で保持される。この状態で、プロセッサ16は、第1板材26の幅方向の外方から、開先Rの内部に溶接ビードBを形成するように、溶接装置10、多関節ロボット3、及び、ポジショナー6の少なくともいずれかを制御する。これにより、開先Rの内部に十分量の溶接ビードBが形成され、完全溶込溶接がなされる。なお、第1板材26と第2板材28との溶接、及び、第1板材25と第2板材27、28との各溶接においても、プロセッサ16は、同様の処理を実行する。これによりワークWは、板材25~28が溶接された複数の溶接部分が形成される。
【0026】
このように、本実施形態の準備工程S1は、第1部材20との間で、外部に露出する開先Rが形成される形状を有する第2部材21を準備することを含む。傾斜部27b、28bを外部に露出するように、第1部材である第1板材25、26と、第2部材21である第2板材27、28とを配置することで、開先Rが形成される。
【0027】
また、第1部材20及び第2部材21を溶接する際、プロセッサ16は、一例として、完全溶込溶接法によって第1部材20及び第2部材21を溶接する。これにより、第2部材21の厚み部分の全体領域において、第2部材21が第1部材20と溶接される。ここで言う完全溶込溶接とは、第2部材21が、厚み方向の全領域にわたって第1部材20に対して溶け込むことにより溶接されることを指す。この完全溶込溶接は、本実施形態では、第1部材20の側面25dが第2部材21の板面21aと接触することにより、第1部材20が裏当金として機能することで実現される。図3に示すように、本実施形態では、第1部材20が凸部20cを有するため、第2部材21の一対の板面21aのうち、外部に露出する板面21bとは反対側の板面21cに接するように、固形材である裏当金を別途配置することが不要である。従って、裏当金を別途準備して、第1部材20及び第2部材21に対して当該裏当金を位置合わせする作業を行うことなく、第1部材20及び第2部材21が完全溶込溶接される。なお図4では、説明のため、部材20、21、及び、溶接ビードBの境界を模式的に明確に示している。
【0028】
また例えば、プロセッサ16は、第1部材20及び第2部材21を、各々の長手方向に向けて連続的に溶接する。またプロセッサ16は、溶接装置10のワークWに対する相対位置を調整するように、ポジショナー6又は多関節ロボット3のうちの少なくともいずれかを制御することで、第1部材20及び第2部材21の各溶接予定箇所を順次溶接する。この溶接の際、プロセッサ16により、第1部材20の幅方向外部から、第1部材20及び第2部材21が溶接されるため、例えば一対の第2部材21の間から、第1部材20及び第2部材21を溶接する必要がない。形成工程S2が完了した後、プロセッサ16又は作業者は、形成された中空の梁Pを他の部品と溶接し、台車枠52を製造する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の台車枠52の製造方法は、少なくとも1つの長尺状の第1部材20と、少なくとも1つの長尺状の第2部材21とを含む複数の部材を準備することと、第1部材20の凸部20cの側面に対し、第1部材20の幅方向の両側から第2部材21の板面21aを接触させた状態で、第1部材20及び第2部材21を溶接することにより、閉空間Qを有する中空状の梁Pを形成することとを含む。
【0030】
この製造方法によれば、第1部材20の凸部20cの側面に第2部材21の板面21aを接触させることで、例えば第1部材20及び第2部材21を突き合わせた場合に生じる目違いの発生を防止しながら第1部材20と第2部材21との位置合わせを迅速に行える。このため、位置合わせ作業を軽減できる。また、第1部材20の板部20aと凸部20cとが連続しているため、例えば、板部20aに別体の凸部を溶接して取り付ける作業を回避できる。また、第1部材20の凸部20cの側面に第2部材21の板面21aを接触させた状態で、第1部材20の幅方向の外方から第1部材20及び第2部材21を溶接できるため、第2部材21の両面側から溶接する場合に比べて溶接個所を減らせると共に、第1部材20及び第2部材21の外部の広いスペースを利用して溶接作業を行える。これにより、部材同士の位置合わせ及び溶接に係る作業負担を低減できる。その結果、台車枠52の製造効率を向上できる。
【0031】
また前記製造方法によれば、第1部材20及び第2部材21を高精度に位置合わせできるため、多関節ロボット3及び溶接装置10と、ワークWとの相対位置が、ワークW毎にばらつくのを抑制できる。従って、システム1を用いることにより、梁Pを安定した品質で形成できると共に、台車枠52を効率よく製造できる。
【0032】
また前記製造方法によれば、梁Pを形成する際、主として第1部材20の幅方向外側に溶接部分が形成される。この溶接部分は、外部に露出しているため、製造後の台車枠52においても溶接部分を外部から容易に確認できる。これにより、製造後の台車枠52において、溶接部分の状態を台車枠52の外部から検査し易くできると共に、検査の精度が向上する。従って、高い溶接品質を維持し易くできる。
【0033】
また、本実施形態の製造方法では、少なくとも1つの第1部材20は、一対の第1板材25、26を含み、少なくとも1つの第2部材21は、一対の第2板材27、28を含む。梁Pを形成することは、一対の第1板材25、26を互いの板面25b、26bを対向させて配置すると共に、一対の第2板材27、28を互いの板面27a、28aを対向させて配置し、且つ、一対の第1板材25、26の各々の凸部25c、26cの側面25d、26dに一対の第2板材27、28の各々の板面27a、28aを接触させることにより、閉空間Qを形成した状態で、一対の第1板材25、26及び一対の第2板材27、28を溶接して梁Pを形成することを含む。
【0034】
この製造方法によれば、合計4つの板材である複数の部材を用いて梁Pを形成できる。このため、例えば、曲げ加工により成形した長尺状の複数の成形部材を準備し、複数の成形部材同士を突合せ溶接して中空状の梁Pを形成する作業が不要となる。これにより、曲げ加工の際に部材の形状が部分的にばらつくのを回避でき、梁Pを一層高精度で形成できる。よって高品質な台車枠52を効率よく製造できる。また、第1部材20及び第2部材21の各厚み寸法を個別に設定できるため、例えば、補強材の使用量が少ない場合や、補強材を使わない場合でも、適度な強度を有する台車枠52を製造し易くできる。
【0035】
なおシステム1は、複数台の多関節ロボット3を備えていてもよい。システム1が複数台の多関節ロボット3を備える場合、例えば、複数カ所の溶接継手を同時に溶接できる。これにより、台車枠52の製造時間を大幅に短縮できる。なお、2台の多関節ロボット3を配置した形式は、タンデムロボット式とも称される。
【0036】
次に本実施形態の変形例について、本実施形態との差異点を中心に説明する。図5は、第1実施形態の第1変形例に係る第1部材120の長手方向から見た断面図である。図6では、第2部材21である第2板材27、28、及び、溶接ビードBも併せて図示している。図5に示されるように、第1部材120の凸部120cは、長手方向から見て、第1部材120の幅方向に延びる延在部分120eと、延在部分120eの途中で板部120aの厚み方向に向けて窪む少なくとも1つの窪み部分120fとを有する。窪み部分120fの窪み深さ及び幅方向寸法は、例えば、第1部材120に要求される強度及び重量のバランスの範囲内で、適宜設定可能である。
【0037】
図6は、第1実施形態の第2変形例に係る第1部材220の長手方向から見た断面図である。図6では、第2部材21である第2板材27、及び、溶接ビードBも併せて図示している。図6に示されるように、長手方向から見て、第1部材220は、凸部220cの側面の途中から第1部材220の板面220fに向かって下り勾配に傾斜する傾斜部分220eを有する。これにより第1部材220は、凸部220cの根本部分が末広がりになるように形成されている。
【0038】
台車枠52の製造時には、長手方向から見て、凸部220cと傾斜部分220eとの交点である傾斜部分220eの頂点に、第2部材21の幅方向の先端が配置される。第2部材21の幅方向の先端の位置が傾斜部分220eの頂点の位置と一致し、且つ、第2部材21の板面21aが凸部220cの側面と接触することで、第2部材21と第1部材220とが相対的に位置決めされる。第1部材220の板部220bの厚み方向における傾斜部分220eの頂点の位置、及び、第1部材220の板面220fと傾斜部分220eとの交点の位置とは、例えば、第1部材220に要求される強度及び重量のバランスの範囲内で適宜設定可能である。
【0039】
図7は、第1実施形態の第3変形例に係る第1部材320の長手方向から見た断面図である。図7では、第2部材21である第2板材27、及び、溶接ビードBも併せて図示している。図7に示されるように、第1実施形態の第1部材20の凸部20cと同様に、第1部材320は凸部320cを有しているが、第2部材21の板面21aが凸部320cの側面320dと接触し、且つ、第2部材21の幅方向先端が第1部材320の板面320bと接触している。これにより、第2部材21と第1部材320とが相対的に位置決めされ、製品の寸法精度を向上させることができる。
【0040】
図8は、第1実施形態の第4変形例に係る第1部材420及び第2部材421の長手方向から見た断面図である。図8では、溶接ビードBも併せて図示している。図8に示されるように、第1部材420は、凸部425c、426cの幅方向寸法が異なる一対の第1板材425、426を含む。これにより、一対の第2板材427、428の間の間隔は、一対の第1板材425、426のうちの一方から他方に向けて拡大している。図8に示す例では、長手方向から見て、凸部425cの側面425dは、第1板材425の板部425aの板面425bに対して傾斜し、凸部426cの側面426dは、第1板材426の板部426aの板面426bに対して傾斜している。側面425d、426dは、第2板材427、428の板面427a、428aと面接触している。これにより、長手方向から見て、閉空間Qは台形状の形状を有する。このように、長手方向から見た閉空間Qの形状は、矩形状のみに限定されない。
【0041】
図9は、第1実施形態の第5変形例に係る第1部材520の側面図である。図9では、紙面上方が鉛直方向上方に対応している。図9に示されるように、第1部材520の板部520aと連続する凸部520cは、長手方向の両端から内側に向けて、下り勾配に突出方向上面が傾斜する一対の傾斜領域520h、520iを含む。また第1部材520は、長手方向における一対の傾斜領域520h、520iの間に配置されて第1部材520を厚み方向に貫通する貫通孔520jを有する。台車枠52において、第1部材520は、一対の傾斜領域520h、520iを閉空間Qに露出させた状態で配置される。本変形例によれば、例えば、梁Pの形成時に閉空間Qに入り込んだ液体や、製造後の台車枠52において、閉空間Qに入り込んだ結露水等の水が、一対の傾斜領域520h、520iにより案内され、貫通孔520jを介して外部に効率よく排出される。
【0042】
図10は、第1実施形態の第6変形例に係る第1部材620の側面図である。図10に示されるように、第1部材620は、板部620aと連続する凸部620cの突出方向上面から、第1部材620の厚み方向に向けて窪む複数の窪み部620kを有する。図10に示す例では、複数の窪み部620kは、第1部材620の長手方向に互いに離隔して配置されている。第1部材620は、窪み部620kを有さない場合に比べて、軽量化が図られている。各窪み部620kは、第1部材620に要求される強度を保持でき且つ第1部材620の軽量化を図れる範囲内で設定されたサイズ及び窪み深さを有する。複数の窪み部のうち2つの窪み部は、サイズ及び窪み深さの少なくともいずれかが互いに異なっていてもよい。次に第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0043】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る溶接直前のワークYの長手方向から見た断面図である。ワークYは、少なくとも1つの第1部材20と、少なくとも1つの第2部材21とを有する。本実施形態では、少なくとも1つの第1部材20は、板部20aと凸部20cとを有する単一の第1部材20である。一例として、第1部材20は、第1板材26である。
【0044】
また、少なくとも1つの第2部材21は、単一の第2部材221である。第2部材221は、一例として、長手方向から見て、一対の第1板部221bと、一対の第1板部221bを接続する第2板部221cとを有する。一対の第1板部221bは、各々が第2部材21の板面21aである板面221aを有する。一例として、一対の第1板部221bは、第1部材20との間で開先Rを形成するための傾斜部221dを有する。傾斜部221dは、傾斜部27b、28bと同様の構成を有する。
【0045】
図11に示すように、具体的に準備工程S1において、作業者は、テーブル18の近傍に第1部材20及び第2部材221を配置するように、第1部材20及び第2部材221を準備する。その後、形成工程S2において、プロセッサ16は、第2部材221の一対の第1板部221bの各々の板面221aを、第1部材20の凸部20cの側面20dに接触させる。これによりプロセッサ16は、第1部材20の板部20a、第2部材221の一対の第1板部221b、及び、第2部材221の第2板部221cにより、閉空間Qを形成する。この状態で、プロセッサ16は、第1部材20及び第2部材221を溶接する。このとき一例として、プロセッサ16は、第1部材20の長手方向に向けて、各開先Rの内部に溶接ビードBを形成する。これによりプロセッサ16は、長手方向から見て、複数の部材により囲まれた閉空間Qを有する中空状の梁Pを形成する。図11に示される例では、閉空間Qは、長手方向から見て矩形状である。
【0046】
このように、第2実施形態の製造方法において、梁Pを形成することは、第2部材221の一対の第1板部221bの各々の板面221aを、第1部材20の凸部20cの側面26dに接触させ、第1部材20の板部20a、第2部材221の一対の第1板部221b、及び、第2部材221の第2板部221cにより、閉空間Qを形成した状態で、第1部材20及び第2部材221を溶接して梁Pを形成することを含む。第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。また第2実施形態の製造方法によれば、例えば第1実施形態の製造方法に比べて、形成工程S2における溶接量が低減される。
【0047】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアでもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアでもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアは、ハードウェア、プロセッサ、又は、ハードウェア及びプロセッサの組合せの構成に使用される。
【0048】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態及び前記変形例を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態及び前記変形例で説明した各構成要素を組み合わせて新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成を他の構成に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。前記各実施形態では、システム1を用いて台車枠52を製造する製造方法を例示した。しかしながら本開示の製造方法は、例えばシステム1以外の設備を用いる方法であってもよい。また本開示の製造方法は、作業者により台車枠52を製造する方法であってもよい。
【0049】
(開示項目)
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
[項目1]
長手方向から見て、板部と、前記板部と連続して前記板部の一方の板面から外方に突出する凸部と、を有する少なくとも1つの長尺状の第1部材と、前記第1部材の前記長手方向に延びる、少なくとも1つの長尺状の第2部材と、を含む複数の部材を準備することと、
前記第1部材の前記凸部の側面に対し、前記第1部材の幅方向の両側から前記第2部材の板面を接触させた状態で、前記第1部材及び前記第2部材を溶接することにより、前記長手方向から見て、前記複数の部材により囲まれた閉空間を有する中空状の梁を形成することと、を含む、鉄道車両用台車枠の製造方法。
【0050】
前記方法によれば、第1部材の凸部の側面に第2部材の板面を接触させることで、例えば第1部材及び第2部材を突き合わせた場合に生じる目違いの発生を防止しながら第1部材と第2部材との位置合わせを迅速に行える。このため、位置合わせ作業を軽減できる。また、第1部材の板部と凸部とが連続しているため、例えば、板部に別体の凸部を溶接して取り付ける作業を回避できる。また、第1部材の凸部の側面に第2部材の板面を接触させた状態で、第1部材の幅方向の外方から第1部材及び第2部材を溶接できるため、第2部材の両面側から溶接する場合に比べて溶接個所を減らせると共に、第1部材及び第2部材の外部の広いスペースを利用して溶接作業を行える。これにより、部材同士の位置合わせ及び溶接に係る作業負担を低減できる。その結果、台車枠の製造効率を向上できる。
【0051】
[項目2]
前記少なくとも1つの第1部材は、各々が前記板部と前記凸部とを有する一対の第1板材を含み、
前記少なくとも1つの第2部材は、一対の第2板材を含み、
前記梁を形成することは、
前記一対の第1板材を互いの前記板面を対向させて配置すると共に、前記一対の第2板材を互いの板面を対向させて配置し、且つ、前記一対の第1板材の各々の前記凸部の前記側面に前記一対の第2板材の各々の前記板面を接触させることにより、前記閉空間を形成した状態で、前記一対の第1板材、及び、前記一対の第2板材を溶接して前記梁を形成することを含む、項目1に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【0052】
前記方法によれば、一対の第1板材と一対の第2板材とを含む合計4つの板材である複数の部材を用いて梁を形成できる。このため、例えば、長尺状の複数の部材を曲げ加工により成形して梁を形成する作業が不要となる。これにより、曲げ加工の際に部材の形状が部分的にばらつくのを回避でき、前記梁を一層高精度で形成できる。よって高品質な台車枠を効率よく製造できる。また、第1板材及び第2板材の各厚み寸法を個別に設定できるため、例えば、補強材の使用量が少ない場合や、補強材を使わない場合でも、適度な強度を有する台車枠を製造し易くできる。
【0053】
[項目3]
前記少なくとも1つの第1部材は、前記板部と前記凸部とを有する単一の第1部材であり、
前記少なくとも1つの第2部材は、単一の第2部材であり、
前記第2部材は、前記長手方向から見て、各々が前記第2部材の前記板面である板面を有する一対の第1板部と、前記一対の第1板部を接続する第2板部と、を有し、
前記梁を形成することは、
前記第2部材の前記一対の第1板部の各々の前記板面を、前記第1部材の前記凸部の前記側面に接触させ、前記第1部材の前記板部、前記第2部材の前記一対の第1板部、及び、前記第2部材の前記第2板部により前記閉空間を形成した状態で、前記第1部材及び前記第2部材を溶接して前記梁を形成することを含む、項目1に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【0054】
前記方法によれば、それぞれ単一の第1部材及び第2部材を用いて前記梁を形成できるため、部品点数及び溶接量を低減できる。これにより、部材同士の位置合わせ及び溶接に係る作業負担を低減でき、台車枠の製造効率を向上し易くできる。
【0055】
[項目4]
前記板材を準備することは、
共に削出し加工により形成した前記板部及び前記凸部を有する前記第1部材を準備することを含む、項目1に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【0056】
前記方法によれば、削出し加工により、第1部材の板部及び凸部を共に高精度に形成できる。これにより、第1部材と第2部材との組立精度を向上でき、高品質な溶接を行える。よって、溶接不良の発生を防止して、台車枠の製造効率を向上できる。
【0057】
[項目5]
前記梁を形成することは、
前記凸部を裏当金として用いて前記第1部材に前記第2部材を接触させることにより、前記第1部材及び前記第2部材を完全溶込溶接することを含む、項目1~3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【0058】
前記方法によれば、第1部材の板部と連続する凸部を、第1部材の幅方向の外方から第2部材と溶接する際、凸部が裏当金として用いられる。このため、裏当金を別途用いなくても、凸部を裏当金として用いて第1部材に第2部材を接触させることにより、第1部材及び第2部材を完全溶込溶接により溶接できる。よって、溶接を適切に行えると共に、台車枠の部品点数を低減できる。
【0059】
[項目6]
前記板材を準備することは、
前記第1部材との間で、外部に露出する開先が形成される形状を有する前記第2部材を準備することを含み、
前記梁を形成することは、
前記第1部材の前記幅方向の外方から、前記開先の内部に溶接ビードを形成することを含む、項目1~3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【0060】
前記方法によれば、台車枠の製造時において、開先の内部に十分量の溶接ビードを形成することで、第2部材の開先が形成される側の厚み方向の全領域にわたって第2部材を第1部材に対して溶け込ませることができる。これにより、第1部材と第2部材とを完全溶込溶接できる。従って、第1部材と第2部材とを高い強度で溶接できる。また、外部に露出する開先の内部に溶接ビードを形成することにより、例えば第1部材の幅方向の外方から、第1部材及び第2部材を長手方向に向けて効率よく溶接できる。よって、台車枠を製造する際の溶接に係る作業負担を更に低減できる。
【0061】
[項目7]
前記梁を形成することは、
溶接装置が装着された多関節ロボットと、前記溶接装置と前記多関節ロボットとを制御する制御装置と、を備える自動溶接システムを用い、前記第1部材及び前記第2部材を互いに溶接するように、前記制御装置によって前記溶接装置と前記多関節ロボットとを制御することを含む、項目1~3のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠の製造方法。
【0062】
前記方法によれば、凸部の側面に第2部材の板面を接触させて、第1部材と第2部材とを効率よく位置合わせした状態で、溶接装置が装着された多関節ロボットにより、第1部材の幅方向の外方から第1部材及び第2部材を迅速且つ安定して溶接できる。このため、台車枠の製造効率を一層向上できる。
【0063】
[項目8]
中空状の梁を備え、
前記中空状の梁は、
長手方向から見て、板部と、前記板部と連続して前記板部の一方の板面から外方に突出する凸部と、を有する少なくとも1つの長尺状の第1部材と、
前記第1部材の前記長手方向に延びる、少なくとも1つの長尺状の第2部材と、
前記第1部材の前記凸部の側面に対し、前記第1部材の幅方向の両側から前記第2部材の板面が接触した状態で、前記第1部材及び前記第2部材が溶接された溶接部分と、
前記長手方向から見て、前記第1部材と前記第2部材とにより囲まれた閉空間と、を有する、鉄道車両用台車枠。
【0064】
前記構成によれば、台車枠の製造時において、第1部材の凸部の側面に第2部材の板面を接触させることで、前述した通り、目違いの発生を防止しながら第1部材と第2部材との位置合わせを迅速に行えるため、位置合わせ作業を軽減できる。また、第1部材の板部と凸部とが連続しているため、例えば、板部に別体の凸部を溶接して取り付ける作業を回避できる。また、第1部材の凸部の側面に第2部材の板面を接触させた状態で、第1部材の幅方向の外方から第1部材及び第2部材を溶接できるため、第2部材の両面側から溶接する場合に比べて溶接個所を減らせると共に、第1部材及び第2部材の外部の広いスペースを利用して溶接作業を行える。これにより、部材同士の位置合わせ及び溶接に係る作業負担を低減できる。その結果、台車枠の製造効率を向上できる。
【0065】
[項目9]
前記少なくとも1つの第1部材は、互いの前記板面を対向させて配置された一対の第1板材を含み、
前記少なくとも1つの第2部材は、互いの前記板面を対向させて配置された一対の第2板材を含み、
前記溶接部分は、前記一対の第1板材の各々の前記凸部の前記側面に前記一対の第2板材の各々の前記板面が接触することにより前記閉空間が形成された状態で、前記一対の第1板材、及び、前記一対の第2板材が溶接された部分を含む、項目8に記載の鉄道車両用台車枠。
【0066】
前記構成によれば、一対の第1板材と一対の第2板材とを含む合計4つの板材である複数の部材を用いて梁が形成される。このため、台車枠の製造時において、例えば、長尺状の複数の部材を曲げ加工により成形して梁を形成する作業が不要となる。これにより、曲げ加工の際に部材の形状が部分的にばらつくのを回避でき、前記梁を一層高精度で形成できる。よって高品質な台車枠を効率よく製造できる。また、第1板材及び第2板材の各厚み寸法を個別に設定できるため、例えば、補強材の使用量が少ない場合や、補強材を使わない場合でも、良好な強度を有する台車枠を実現し易くできる。
【0067】
[項目10]
前記少なくとも1つの第1部材は、前記板部と前記凸部とを有する単一の第1部材であり、
前記少なくとも1つの第2部材は、単一の第2部材であり、
前記第2部材は、前記長手方向から見て、各々が前記第2部材の前記板面である板面を有する一対の第1板部と、前記一対の第1板部を接続する第2板部と、を有し、
前記溶接部分は、前記第2部材の前記一対の第1板部の各々の前記板面が、前記第1部材の前記凸部の前記側面に接触し、前記第1部材の前記板部、前記第2部材の前記一対の第1板部、及び、前記第2部材の前記第2板部により前記閉空間が形成された状態で、前記第1部材及び前記第2部材が溶接された部分を含む、項目8に記載の鉄道車両用台車枠。
【0068】
前記構成によれば、台車枠の製造時において、それぞれ単一の第1部材及び第2部材を用いて前記梁を形成できるため、部品点数及び溶接量を低減できる。これにより、部材同士の位置合わせ及び溶接に係る作業負担を低減でき、台車枠の製造効率を向上し易くできる。
【0069】
[項目11]
前記第2部材は、前記第1部材との間で、外部に露出する開先が形成される形状を有し、
前記溶接部分は、前記第1部材の前記幅方向の外方から、前記開先の内部に配置された溶接ビードを含む、項目8~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠。
【0070】
前記構成によれば、台車枠の製造時において、開先の内部に十分量の溶接ビードを形成することで、第2部材の開先が形成される側の厚み方向の全領域にわたって第2部材を第1部材に対して溶け込ませることができる。これにより、第1部材と第2部材とを完全溶込溶接できる。従って、第1部材と第2部材とを高い強度で溶接できる。また、外部に露出する開先の内部に溶接ビードを形成することにより、例えば第1部材の幅方向の外方から、第1部材及び第2部材を長手方向に向けて効率よく溶接できる。よって、台車枠を製造する際の溶接に係る作業負担を更に低減できる。
【0071】
[項目12]
前記第1部材の厚みの最大寸法は、前記第2部材の厚みの最大寸法以上の値である、項目8~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠。
【0072】
前記構成によれば、第1部材の厚みの最大寸法を第2部材の厚みの最大寸法以上の値に増大させることにより、複数の部材により構成される中空状の梁の強度を向上できる。これにより、例えば、梁に補強材を溶接する作業を、軽減又は無くすことができる。
【0073】
[項目13]
前記長手方向から見て、前記凸部は、前記第1部材の前記幅方向に延びる延在部分と、前記延在部分の途中で前記板部の厚み方向に向けて窪む窪み部分と、を有する、項目8~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠。
【0074】
前記構成によれば、凸部が延在部分を有することにより、凸部を有する第1部材の部材厚みを増大させ、第1部材の強度を向上できる。また、凸部が窪み部分を有することにより、窪み部分がない場合に比べて第1部材を軽量化できる。従って、強度及び重量のバランスに優れた第1部材を構成し易くできる。
【0075】
[項目14]
前記長手方向から見て、前記第2部材の前記板面は、前記凸部の前記側面と接触し、且つ、前記第2部材の幅方向の先端は、前記第1部材の前記板部の前記一方の板面と接触している、項目8~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用台車枠。
【0076】
前記構成によれば、鉄道車両用台車枠の製造時において、第1部材に対する第2部材の相対位置が自動的に決めされる。このため、第1部材に対する第2部材の相対位置の調整を別途行う工程を省略しつつ製品の寸法精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0077】
B 溶接ビード
P 中空状の梁
Q 閉空間
R 開先
W、Y ワーク(複数の部材)
1 自動溶接システム
3 多関節ロボット
10 溶接装置
20、120、220、320、420、520、620 第1部材
20a、25a、26a、120a、220a、320a、425a、426a、520a、620a 板部
20b、21a、25b、26b、27a、28a、120b、220f、221a、302b、425b、426b、427a、428a 板面
20c、25c、26c、120c、220c、320c、425c、426c、520c、620c 凸部
20d、25d、26d、320d、425d、426d 側面
21、221、421 第2部材
25、26、425、426 第1板材
27、28、427、428 第2板材
50 台車
52 台車枠
60 鉄道車両
120e 延在部分
120f 窪み部分
220e 傾斜部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11