(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024847
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】反射防止膜及びそれが設けられた光学部品
(51)【国際特許分類】
G02B 1/115 20150101AFI20250214BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20250214BHJP
【FI】
G02B1/115
B32B7/023
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129177
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】322014451
【氏名又は名称】MFオプテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茂
(72)【発明者】
【氏名】北澤 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】八若 正義
(72)【発明者】
【氏名】浦松 知史
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA02
2K009BB01
2K009BB02
2K009CC03
4F100AA17
4F100AA20
4F100AA20A
4F100AA20B
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EH66
4F100JN00B
4F100JN06
4F100JN18B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】レーザ光に対する耐性の高い反射防止膜を提供する。
【解決手段】反射防止膜10は、波長λのレーザ光用の光学部品20における光入射面及び/又は光出射面を被覆するように設けられる。反射防止膜10は、膜本体11と、その光学部品20側に積層されたアンダーコート層12とを備える。アンダーコート層12の光学膜厚がλ/2よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λのレーザ光用の光学部品における光入射面及び/又は光出射面を被覆するように設けられる反射防止膜であって、
膜本体と、前記膜本体の前記光学部品側に積層されたアンダーコート層と、を備え、
前記アンダーコート層の光学膜厚がλ/2よりも小さい反射防止膜。
【請求項2】
請求項1に記載された反射防止膜において、
前記アンダーコート層の形成材料がSiO2等である反射防止膜。
【請求項3】
請求項1に記載された反射防止膜において、
前記アンダーコート層の形成材料が、前記光学部品における前記アンダーコート層が接触している前記光入射面及び/又は前記光出射面の部分の形成材料と同一である反射防止膜。
【請求項4】
波長λのレーザ光用の光学部品であって、
光入射面及び/又は光出射面を被覆するように請求項1乃至3のいずれかの反射防止膜が設けられた光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜及びそれが設けられた光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ、光ファイバ、レンズ等の光学部品の光透過率を高めることを目的として、その光入射面や光出射面を被覆するように反射防止膜が設けられる(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザの高出力化に伴い、レーザ光用の光学部品に設けられる反射防止膜が破損する可能性が高まっている。
【0005】
本発明の課題は、レーザ光に対する耐性の高い反射防止膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、波長λのレーザ光用の光学部品における光入射面及び/又は光出射面を被覆するように設けられる反射防止膜であって、膜本体と、前記膜本体の前記光学部品側に積層されたアンダーコート層とを備え、前記アンダーコート層の光学膜厚がλ/2よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
本発明は、波長λのレーザ光用の光学部品であって、光入射面及び/又は光出射面を被覆するように本発明の反射防止膜が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射防止膜における膜本体の光学部品側に積層されたアンダーコート層の光学膜厚がλ/2よりも小さいことにより、レーザ光に対する高い耐性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係る反射防止膜の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る反射防止膜10を示す。この反射防止膜10は、波長λのレーザ光用の光学部品20における光入射面及び/又は光出射面を被覆するように設けられるものである。
【0012】
ここで、まず実施形態に係る反射防止膜10が設けられる光学部品20としては、例えば固体レーザ、気体レーザ、半導体レーザ、光ファイバ、光ファイバ素子、各種レンズ、ファラデー回転子、波長変換素子、石英ブロック、石英基板等が挙げられる。固体レーザとしては、例えばガラスレーザ、YAGレーザ等が挙げられる。気体レーザとしては、例えばCO2レーザ、エキシマレーザ等が挙げられる。そして、光学部品20により用いられるレーザ光の波長λは、例えば190nm以上1100nmである。
【0013】
実施形態に係る反射防止膜10は、膜本体11と、その膜本体11の光学部品20側に積層されたアンダーコート層12とを備える。
【0014】
膜本体11は、アンダーコート層12の直上に積層された高屈折率層111と、その高屈折率層111の直上に積層された低屈折率層112とを含む2層構造を有する。なお、膜本体11は、
図2に示すように高屈折率層111及び低屈折率層112が交互に積層された4層構造を有していてもよく、また、6層構造或いは8層構造を有していてもよい。
【0015】
高屈折率層111の形成材料としては、例えばTa2O5、Nb2O5、HfO2、Al2O3、ZrO2が挙げられる。高屈折率層111の厚さは、例えば30nm以上70nm以下である。低屈折率層112の形成材料としては、例えばSiO2等が挙げられる。低屈折率層112の厚さは、例えば230nm以上255nm以下である。
【0016】
アンダーコート層12は、膜本体11の高屈折率層111と光学部品20との間に挟持されるように設けられている。アンダーコート層12の形成材料としては、例えばSiO2等が挙げられる。アンダーコート層12の形成材料は、光学部品20におけるアンダーコート層12が接触している光入射面及び/又は光出射面の部分の形成材料と同一であることが好ましい。アンダーコート層12の光学膜厚は、光学部品20により用いられるレーザ光の波長λの半分、つまり、λ/2よりも小さい。なお、アンダーコート層12の光学膜厚は、アンダーコート層12の屈折率nと物理膜厚dとの積である。
【0017】
実施形態に係る反射防止膜10によれば、反射防止膜10における膜本体11の光学部品20側に積層されたアンダーコート層12の光学膜厚がλ/2よりも小さいことにより、レーザ光に対する高い耐性を得ることができる。このようにレーザ光に対する高い耐性を得る観点からは、アンダーコート層12の光学膜厚は、好ましくは0.15λ以下、より好ましくは0.10λ以下、更に好ましくは0.08λ以下であり、同様の観点から、好ましくは0.02λ以上、より好ましくは0.04λ以上である。
【実施例0018】
(反射防止膜)
<実施例1>
SiO2基板上に、SiO2(屈折率n:1.44944)で形成された物理膜厚29.8nm(光学膜厚:43.2nm)のアンダーコート層、Ta2O5で形成された厚さ39.5nmの高屈折率層及びSiO2で形成された厚さ248.5nmの低屈折率層を順に成膜して積層した反射防止膜を作製し、これを実施例1とした。
【0019】
<実施例2~4>
アンダーコート層の物理膜厚(光学膜厚)を、52.2nm(75.7nm)、74.5nm(108.0nm)及び104.3nm(151.2nm)としたことを除いて実施例1と同様に作製した反射防止膜を、それぞれ実施例2~4とした。
【0020】
<比較例1>
アンダーコート層を設けていないことを除いて実施例1と同様に作製した反射防止膜を比較例1とした。
【0021】
<比較例2>
アンダーコート層の物理膜厚(光学膜厚)を372.6nm(540.1nm)としたことを除いて実施例1と同様に作製した反射防止膜を比較例2とした。
【0022】
(損傷しきい値)
実施例1~4並びに比較例1及び2のそれぞれについて、YAGレーザから出力する波長λ1080nm及びパルス幅10nm並びにスポットサイズ(1/e2):横370μm及び縦420μmのパルスレーザ光を用い、1-on-1法により損傷しきい値を求めた。その結果を表1に示す。
【0023】