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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024849
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】インタラップタップ
(51)【国際特許分類】
   B23G 5/06 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B23G5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129180
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】芦田 孝則
(72)【発明者】
【氏名】山崎 格
(72)【発明者】
【氏名】栗田 祐希
(57)【要約】
【課題】本発明では食付き部の切れ刃の摩耗を低減しながら、被削材テーパねじ部のシール性能を確保して、加工面のムシレを抑制するインタラップタップを提供する。
【解決手段】
食付き部1および完全山テーパ部2を有するらせん状のねじ部10と、ねじ部10を分断するように形成された3条の溝21~23と、を備えており、各ランドのねじ山を1山とびに取り除いたインタラップタップ50において、少なくとも食付き部1の切れ刃の刃先を丸み処理する。また、完全山テーパ部2における一部の切れ刃の刃先も丸み処理して構わない。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食付き部および完全山テーパ部を有するらせん状のねじ部と、前記ねじ部を分断するように形成された3条の溝と、を備えており、各ランドのねじ山を1山とびに取り除いたインタラップタップにおいて、前記食付き部の切れ刃の刃先が丸み処理されていることを特徴とするインタラップタップ。
【請求項2】
さらに、前記完全山テーパ部における一部の切れ刃の刃先が丸み処理されていることを特徴とする請求項1に記載のインタラップタップ。
【請求項3】
前記インタラップタップの長手方向の断面視において、前記食付き部の切れ刃の丸み処理されている刃先の曲率半径は、前記完全山テーパ部における一部の切れ刃の丸み処理されている刃先の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のインタラップタップ。
【請求項4】
前記食付き部の切れ刃の丸み処理されている刃先の曲率半径は20μm以上であり、かつ前記完全山テーパ部における一部の切れ刃の丸み処理されている刃先の曲率半径は10μm以上であることを特徴とする請求項3に記載のインタラップタップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被削材に対して切削加工によりねじ穴を形成するインタラップタップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管用テーパタップは、完全山テーパ部の切れ刃による被削材への切り込み量は約4~11μm程度であることから、切れ刃と被削材は擦れた状態で切削加工が進み、加工面にはムシレが発生しやすい傾向であった。
【0003】
この加工面のムシレが発生する問題に対して、切れ刃全体に対して刃先のみを丸め加工(R面取り加工)することで、切れ刃の微少チッピングを抑制し、被削材の加工面におけるムシレを抑制できる。また、完全山テーパ部の切れ刃を部分的に間引いて形成されたタップである「インタラップタップ」がある。これは、一般的な管用テーパタップに比べて、完全山テーパ部の切れ刃の数が少ないので、1刃当たりの切削加工時の被削材に対する切り込み量が大きいので、加工面のムシレが発生しがたい(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5816368号公報
【特許文献2】特許第5756562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、食付き部の切れ刃の刃先を丸め加工処理することで切れ刃の欠けを抑制し、一定程度のムシレ抑制効果があるが、完全山テーパ部の切れ刃全体の刃先も丸め加工処理を行うと、切削加工時の切り込み量(切り込み深さ)よりも刃先の丸め量が大きくなると、ムシレを抑制できる効果が減少するという問題があった。
【0006】
また、インタラップタップは、1切れ刃当たりの被削材に対する切り込み量が大きくなるために、一般的な管用テーパタップに比べて切れ刃の数が少ないので、ストップマークによる段差が大きくなり、被削材テーパねじ部のシール性が損なわれやすいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明では食付き部の切れ刃の摩耗を低減しながら、被削材テーパねじ部のシール性能を確保して、加工面のムシレを抑制するインタラップタップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するために、本発明は食付き部および完全山テーパ部を有するらせん状のねじ部と、このねじ部を分断するように形成された3条の溝(ねじれ溝)を備えており、各ランドのねじ山を1山とびに取り除いたインタラップタップにおいて、食付き部の切れ刃の刃先に丸み処理を行う。このとき、完全山テーパ部における一部の切れ刃の刃先も合わせて丸み処理しても構わない。
【0009】
また、インタラップタップの長手方向(軸方向)に平行な断面視にて、食付き部の切れ刃の刃先の曲率半径を完全山テーパ部における一部の切れ刃の刃先の曲率半径よりも大きくできる。例えば、食付き部の切れ刃の刃先の曲率半径は20μm以上として、かつ完全山テーパ部における一部の切れ刃の刃先の曲率半径は10μm以上とすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインタラップタップにより、食付き部の切れ刃の摩耗を低減し、被削材テーパねじ部のシール性能を確保して、加工面のムシレを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示すインタラップタップ50の正面図である。
図2】本発明の一実施形態を示すインタラップタップ50の右側面図である。
図3図2に示すインタラップタップ50のA-A線位置での断面図である。
図4図2に示すインタラップタップ50のB-B線位置での断面図である。
図5図2に示すインタラップタップ50のC-C線位置での断面図である。
図6図3に示すインタラップタップ50の切れ刃11先端の模式拡大図である。
図7図4に示すインタラップタップ50の切れ刃11先端の模式拡大図である。
図8図5に示すインタラップタップ50の切れ刃11先端の模式拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明であるタップの形態について図面を用いて説明する。本発明の一実施形態であるタップ50の正面図を図1、右側面図を図2に示す。インタラップタップ50は、図1に示すように被削材に対してねじ加工を行うねじ部10およびこのねじ部10を分断するように形成された3条の溝(ねじれ溝)21,22,23から形成されている。ねじ部10によって切削加工された被削材の切りくずは、3条の溝21~23を通してインタラップタップ50の外部へ排出される。また、ねじ部10は図1に示す様に食付き部1と完全山テーパ部2から形成されており、各溝21~23の回転方向RT前方側に形成される各切れ刃は、食付き部1から完全山テーパ部2まで1枚の切れ刃として連続して形成されている。
【0013】
図2に示すインタラップタップ50のA-A線位置での断面図(回転軸Oに垂直な断面視)を図3、同B-B線位置での断面図(回転軸Oに垂直な断面視)を図4、同C-C線位置での断面図(回転軸Oに垂直な断面視)を図5にそれぞれ示す。また、図3に示す切れ刃11先端の模式拡大図を図6図4に示す切れ刃11先端の模式拡大図を図7図5に示す切れ刃11先端の模式拡大図を図8にそれぞれ示す。
【0014】
食付き部1の切れ刃11の先端は、図6に示す様に丸め加工処理(曲率半径:約20μm)が行われている。また、完全山テーパ部2の切れ刃11の先端は、食付き部の切れ刃に近い側の切れ刃では、図7に示す様に丸め加工処理(曲率半径:約10μm)が行われている。この場合、食付き部の切れ刃11先端の丸め処理加工による曲率半径は、完全山テーパ部の切れ刃11先端の丸め処理加工による曲率半径よりも大きくする。これに対して、インタラップタップ50のシャンク側に近い完全山テーパ部の切れ刃11の先端は、図8に示す様に丸め処理加工を行わない。
【0015】
これは、食付き部の切れ刃先端を丸め処理加工によって被削材に対する耐チッピング性能と耐摩耗性を向上する役割を果たすのに対して、完全山テーパ部の切れ刃には被削材に対する切削性能(被削材への切れ味)を維持することで、食付き部の切れ刃によって切削加工された被削材の加工面のムシレ発生を抑制するためである。
【符号の説明】
【0016】
1 食付き部
2 完全山テーパ部
10 ねじ部
11 切れ刃
21,22,23 溝(ねじれ溝)
50 インタラップタップ
O インタラップタップの中心軸
RT インタラップタップの回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8