(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024861
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】プログラム、音量調整方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H04R25/00 L
H04R25/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129204
(22)【出願日】2023-08-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 彰希
(57)【要約】
【課題】聴力検査と語音明瞭度検査による補聴器のフィッティングを短時間でかつ簡単にできるようにする。
【解決手段】端末装置の制御部は、互いに異なる周波数が割り当てられた複数のスライドバー33が表示されたフィッティング画面30を表示部に表示させる。複数のスライドバー33のそれぞれには、第1スライダー33aと第2スライダー33bとが設けられている。いずれかのスライドバー33における第1スライダー33aがスライド操作されると、制御部は、操作されたスライドバー33に割り当てられた周波数の聴力検査における検査音の音量を第1スライダー33aの位置に応じて調整し、いずれかのスライドバー33における第2スライダー33bが操作されると、操作されたスライドバー33に割り当てられた周波数の語音明瞭度検査における検査音の音量を第2スライダー33bの位置に応じて調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
互いに異なる周波数が割り当てられた複数のスライドバーが表示された画面を表示部に表示させ、
前記複数のスライドバーのそれぞれには、聴力検査における検査音の音量を調整するための第1スライダーと語音明瞭度検査における検査音の音量を調整するための第2スライダーとが設けられ、
いずれかの前記スライドバーにおける前記第1スライダーが操作されると、操作された前記スライドバーに割り当てられた周波数の前記聴力検査における検査音の音量を前記第1スライダーの位置に応じて調整し、
いずれかの前記スライドバーにおける前記第2スライダーが操作されると、操作された前記スライドバーに割り当てられた周波数の前記語音明瞭度検査における検査音の音量を前記第2スライダーの位置に応じて調整し、
前記聴力検査における音量調整結果の情報と及び前記語音明瞭度検査における音量調整結果の情報を取得する、
制御部として機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記第1スライダーは、前記スライドバーにおける前記第2スライダーよりも小さい音量側に位置する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1スライダー又は前記第2スライダーが操作されている間のみ、操作された前記第1スライダー又は前記第2スライダーに応じた検査音を発音させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記画面上に、前記語音明瞭度検査における検査音として発音させる音声のテキストをユーザが任意に入力するための入力欄を表示し、
前記第2スライダーが操作されている間、前記入力欄から入力されたテキストの音声を前記語音明瞭度検査における検査音として発音させる、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記取得した前記聴力検査における音量調整結果の情報と及び前記語音明瞭度検査における音量調整結果の情報を記憶部に記憶させ、
新たに前記複数のスライドバーが表示された画面を前記表示部に表示させる際、前記記憶部に記憶されている前記音量調整結果の情報に基づいて、前記複数のスライドバーのそれぞれにおける前記第1スライダー及び前記第2スライダーの位置を設定する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
コンピュータが、
互いに異なる周波数が割り当てられた複数のスライドバーが表示された画面を表示部に表示させ、
前記複数のスライドバーのそれぞれには、聴力検査における検査音の音量を調整するための第1スライダーと語音明瞭度検査における検査音の音量を調整するための第2スライダーとが設けられ、
いずれかの前記スライドバーにおける前記第1スライダーが操作されると、操作された前記スライドバーに割り当てられた周波数の前記聴力検査における検査音の音量を前記第1スライダーの位置に応じて調整し、
いずれかの前記スライドバーにおける前記第2スライダーが操作されると、操作された前記スライドバーに割り当てられた周波数の前記語音明瞭度検査における検査音の音量を前記第2スライダーの位置に応じて調整し、
前記聴力検査における音量調整結果の情報と及び前記語音明瞭度検査における音量調整結果の情報を取得する、
音量調整方法。
【請求項7】
互いに異なる周波数が割り当てられた複数のスライドバーが表示された画面を表示部に表示させ、
前記複数のスライドバーのそれぞれには、聴力検査における検査音の音量を調整するための第1スライダーと語音明瞭度検査における検査音の音量を調整するための第2スライダーとが設けられ、
いずれかの前記スライドバーにおける前記第1スライダーが操作されると、操作された前記スライドバーに割り当てられた周波数の前記聴力検査における検査音の音量を前記第1スライダーの位置に応じて調整し、
いずれかの前記スライドバーにおける前記第2スライダーが操作されると、操作された前記スライドバーに割り当てられた周波数の前記語音明瞭度検査における検査音の音量を前記第2スライダーの位置に応じて調整し、
前記聴力検査における音量調整結果の情報と及び前記語音明瞭度検査における音量調整結果の情報を取得する、
制御部を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、音量調整方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
聴覚障害を持つユーザに対し、聞こえない音を増幅することによって、ユーザの聞こえをサポートする補聴器がある。補聴器のフィッティング(調整)のための検査としては、例えば、「ピー」といった一定のトーンの音を各周波数に対して鳴らし、各周波数に対して聞こえる最低の音量を記録する聴力検査(純音聴力検査)と、語音を聞かせて聞こえた語音を書かせる語音明瞭度検査とが行われる。
【0003】
フィッティングのための検査の欠点としては補聴器店に行かなくてはいけないことや受動的に音を聞く時間が長いことが挙げられる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、携帯電話での聴力検査を可能とし、簡便に補聴器の設定ができるようにした技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の携帯端末では、複数の周波数帯の複数の出力レベルの検査音を順次出力して聴力検査を行う。そのため、検査に時間を要し、聞こえに違和感があった際に毎度聴力検査を行うことが面倒である。また、特許文献1の携帯端末では、語音明瞭度検査は行っていないが、フィッティングの精度を上げるためには、語音明瞭度検査も必要となる。しかし、聴力検査とは別に語音明瞭度検査を行うとなると、フィッティングに時間と手間がかかり、ユーザが、より一層煩わしさを感じる。
【0007】
本発明の課題は、聴力検査と語音明瞭度検査による補聴器のフィッティングを短時間でかつ簡単にできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のプログラムは、
コンピュータを、
互いに異なる周波数が割り当てられた複数のスライドバーを表示部の同一画面上に表示させ、
前記複数のスライドバーのそれぞれには、聴力検査における検査音の音量を調整するための第1スライダーと語音明瞭度検査における検査音の音量を調整するための第2スライダーとが設けられ、
いずれかの前記スライドバーにおける前記第1スライダーが操作されると、操作された前記スライドバーに割り当てられた周波数の前記聴力検査における検査音の音量を前記第1スライダーの位置に応じて調整し、
いずれかの前記スライドバーにおける前記第2スライダーが操作されると、操作された前記スライドバーに割り当てられた周波数の前記語音明瞭度検査における検査音の音量を前記第2スライダーの位置に応じて調整し、
前記聴力検査における音量調整結果の情報と及び前記語音明瞭度検査における音量調整結果の情報を取得する、
制御部として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、聴力検査と語音明瞭度検査による補聴器のフィッティングを短時間でかつ簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る補聴器フィッティングシステムの全体構成例を示す図である。
【
図2】
図1の端末装置の制御部により実行される補聴器フィッティング処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図2のステップS7において実行される音量調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】検査対象を左耳と右耳との間で切り替えるための切り替えボタンを有するフィッティング画面の一例を示す図である。
【
図6】診断音声テキストボックスに
図5と異なるテキストを入力した場合の音量調整後のフィッティング画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されている。そのため、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0012】
[補聴器フィッティングシステム100の構成]
図1は、本発明に係る補聴器フィッティングシステム100の全体構成例を示す図である。
図1に示すように、補聴器フィッティングシステム100は、補聴器1と、端末装置2(情報処理装置)と、を備えて構成されている。補聴器1と端末装置2とは、無線通信又は有線通信によりデータ送受信可能である。端末装置2は、ユーザが補聴器1のフィッティングを行うためのユーザインターフェースを提供する。
【0013】
[補聴器1の構成]
補聴器1は、
図1に示すように、制御部11、音声入力部12、音処理部13、発音部14、記憶部15、通信部16等を備えて構成され、各部はバス17を介して接続されている。
【0014】
制御部11は、補聴器1の各部を制御するコンピュータである。具体的には、制御部11は、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。制御部11は、記憶部15に記憶されているプログラムの中から指定されたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムとの協働により各種処理を実行する。
【0015】
音声入力部12は、マイクにより構成される。音声入力部12は、外部の音声を取り込んで電気信号に変換し、音処理部13に出力する。
【0016】
音処理部13は、増幅器等を備え、後述するフィッティング情報252に基づいて、音声入力部12により入力された音声の電気信号に対し、ユーザの聴覚特性に合うように増幅したり不要な雑音を抑えて語音を強調したりする処理を行って発音部14に出力する。
また、音処理部13は、端末装置2から送信された発音制御情報に基づいて、指定された音量及び周波数の純音信号又は診断音声信号を生成して発音部14に出力する。
【0017】
発音部14は、音処理部13から入力された音声信号(音信号)に基づいて音声(音)を発音する。
【0018】
記憶部15は、不揮発性の半導体メモリ等により構成されている。記憶部15は、各種プログラム及びプログラムの実行に必要なデータを記憶する。
例えば、記憶部15には、端末装置2から受信したフィッティング情報252が記憶されている。
【0019】
通信部16は、端末装置2等の外部機器と無線通信又は有線通信によりデータ送受信を行うための通信制御を行う。本実施形態では、補聴器1と端末装置2との通信はBLE(Bluetooth Low Energy)等により行うこととするが、通信方式は特に限定されない。
【0020】
[端末装置2の構成]
端末装置2は、例えば、スマートフォン、タブレット端末等により構成される。
図1に示すように、端末装置2は、制御部21、操作部22、表示部23、通信部24、記憶部25等を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0021】
制御部21は、端末装置2の各部を制御するコンピュータである。具体的には、制御部21は、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。制御部21は、記憶部25に記憶されているプログラムの中から指定されたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムとの協働により、後述する補聴器フィッティング処理を始めとする各種処理を実行する。
【0022】
操作部22は、押しボタンスイッチや表示部23に取り付けられたタッチパネル等で構成されている。操作部22は、ユーザによる押しボタンスイッチの操作信号や指等による表示部23の画面上の操作信号を制御部21に出力する。
【0023】
表示部23は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)等の表示デバイスにより構成され、制御部21の制御動作に基づいて表示を行う。
【0024】
通信部24は、補聴器1を始めとする外部機器とデータ送受信を行うための通信制御を行う。
【0025】
記憶部25は、不揮発性の半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。記憶部25は、各種プログラム及び当該プログラムの実行に必要なデータを記憶する。記憶部25は、端末装置2に内蔵されたものに限られず、端末装置2に対して着脱可能な外部記録媒体を含んでもよい。
【0026】
例えば、記憶部25には、補聴器フィッティングアプリ251が記憶されている。補聴器フィッティングアプリ251は、補聴器1のフィッティングを行うためのアプリケーションプログラムである。補聴器フィッティングアプリ251には、後述する補聴器フィッティング処理を実行するためのプログラムが含まれる。
また、記憶部25には、補聴器フィッティング処理により取得されたフィッティング情報252が記憶される。
【0027】
[補聴器フィッティングシステム100の動作]
次に、補聴器フィッティングシステム100における動作について説明する。
【0028】
まず、ユーザは、補聴器1を耳に装着した状態で、端末装置2において、操作部22の操作により補聴器フィッティングアプリ251の起動を指示する。
端末装置2において、操作部22の操作により補聴器フィッティングアプリ251の起動が指示されると、制御部21は、補聴器フィッティングアプリ251を起動させる。そして、制御部21は、通信部24により補聴器1と通信接続を行い、補聴器フィッティングアプリ251との協働により、補聴器フィッティング処理を実行する。
【0029】
図2は、補聴器フィッティング処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図2を参照して補聴器フィッティング処理について説明する。
【0030】
まず、制御部21は、表示部23にフィッティング画面30を表示させる(ステップS1)。
【0031】
図3は、フィッティング画面30の一例を示す図である。フィッティング画面30は、補聴器1のフィッティングのための聴力検査及び語音明瞭度検査を行うためのユーザインターフェースである。ここで、本願で述べる聴力検査はいわゆる純音聴力検査のことをいい、語音明瞭度検査は含まない。また、語音明瞭度検査は、ユーザに語音を聞かせて聞こえた語音を書かせる(選択させる)ことにより正答率を取得する方法が一般的であるが、本実施形態では、ユーザに語音(診断音声と呼ぶ)を聞かせ、診断音声を認識できた(聞き取れた)音量を取得する方法で行う。
【0032】
図3に示すように、フィッティング画面30には、診断音声テキストボックス31及びランダムボタン32が設けられている。
診断音声テキストボックス31は、語音明瞭度検査における検査音として発音させる診断音声のテキスト(文字列)をユーザが任意に入力するための入力欄である。
ランダムボタン32は、語音明瞭度検査で検査音として発音させる診断音声のテキストを制御部21がランダムに入力することを指示するためのボタンである。
【0033】
また、フィッティング画面30には、音量調整用の複数のスライドバー33が並んで表示されている。複数のスライドバー33のそれぞれには、互いに異なる周波数(Hz)が割り当てられている。
図3に示すフィッティング画面30おいては、左側のスライドバー33には低い周波数が割り当てられており、スライドバー33の位置が左から右に行くにつれて高い周波数が割り当てられている。例えば、左のスライドバー33から順に、125Hz、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hz、8000Hzが割り当てられている。各スライドバー33の縦方向における位置は、音量の大きさ(dB)に対応している。例えば、各スライドバー33の最も下の位置は-20dBに対応し、最も上の位置は120dBに対応している。なお、各スライドバー33に割り当てられている周波数や縦方向の音量の大きさの範囲は、補聴器1の性能によって変えることとしてもよく、上記に限定されるものではない。また、
図3においては、各スライドバー33の周波数についての情報が「低⇔高」しか表示されていないが、周波数の値や、周波数に対応する音程を表す絵(例えば、音符など)を表示しても構わない(
図5参照)。
【0034】
各スライドバー33のそれぞれには、聴力検査における検査音(純音)の音量を調整するための第1スライダー33aと、語音明瞭度検査における検査音(診断音声)の音量を調整するための第2スライダー33bと、が表示されている。ここで、本願において、スライドバー33は、第1スライダー33a、第2スライダー33b、及びこれらが移動可能な棒状の領域を含む全体を指す。第1スライダー33a、第2スライダー33bなどのスライダーは、現在位置を表す印を指す。スライダーは、つまみ、ハンドル、thumb、アイコンなどと呼ばれることもある。
【0035】
ユーザによりいずれかのスライドバー33における第1スライダー33aがホールドされると、第1スライダー33aがホールドされているスライドバー33に割り当てられている周波数の純音が、第1スライダー33aの位置に応じた音量で発音される。第1スライダー33aがスライド操作されると、第1スライダー33aの位置の変化に応じて、発音されている純音の音量が変化される。すなわち、第1スライダー33aをスライド操作することで、発音されている純音の音量を調整することができる。ユーザは、第1スライダー33aをスライドさせ、発音されている音がユーザに聞こえる最小の音量となるように調整する。調整が終了して第1スライダー33aから指が離れると、純音の発音は停止され、第1スライダー33aの位置に対応する音量の情報(音量調整結果の情報)が取得される。これにより、操作されたスライドバー33に割り当てられている周波数の音についてのユーザの聴力を示す値を得ることができる。
【0036】
ユーザによりいずれかのスライドバー33における第2スライダー33bがホールドされると、第2スライダー33bがホールドされているスライドバー33に割り当てられている周波数の診断音声が、第2スライダー33bの位置に応じた音量で発音される。第2スライダー33bがスライド操作されると、第2スライダー33bの位置の変化に応じて、発音されている診断音声の音量が変化される。すなわち、第2スライダー33bをスライド操作することで、発音されている診断音声の音量を調整することができる。ユーザは、第2スライダー33bをスライドさせ、発音されている診断音声が、ユーザが認識できる(聞き取れる)最小の音量となるように調整する。調整が終了して第2スライダー33bから指が離れると、診断音声の発音は停止され、第2スライダー33bの位置に対応する音量の情報(音量調整結果の情報)が取得される。これにより、操作されたスライドバー33に割り当てられている周波数の音についてのユーザの語音明瞭度を示す値を得ることができる。
【0037】
ここで、第1スライダー33aは、純音がユーザに聞こえる最小の音量となるように調整するためのものであり、第2スライダー33bは、診断音声がユーザにより認識できる(聞き取れる)最小の音量となるように調整するものであるから、各スライドバー33において、第1スライダー33aは、第2スライダー33bより必ず下(小さい音量側)に位置し、第2スライダー33bと重なったり、第2スライダー33bより上(大きい音量側)に位置したりすることはない。このような聴力検査と語音明瞭度検査の関係から、フィッティング画面30において各スライドバー33に2つのスライダーを設けることが可能となっている。なお、本実施形態では、第1スライダー33aを上にスライドさせることによって第2スライダー33bにぶつかった場合、第2スライダー33bは、第1スライダー33aの上へのスライドに応じて上へスライドする。第2スライダー33bを下にスライドさせることによって第1スライダー33aにぶつかった場合には、第1スライダー33aは動かない。
【0038】
なお、制御部21は、フィッティング画面30を表示する際、記憶部25にフィッティング情報252が記憶されていない場合、各スライドバー33における予め定められた位置に第1スライダー33aと第2スライダー33bの位置を設定する。記憶部25にフィッティング情報252が記憶されている場合、制御部21は、フィッティング情報252に基づいて、各スライドバー33における第1スライダー33aと第2スライダー33bの位置を設定する。また、制御部21は、診断音声テキストボックス31に、直近のフィッティング時に使用された診断音声テキストを表示する。本実施形態におけるフィッティング情報252は、聴力検査及び語音明瞭度検査における音量調整結果の情報であり、各検査において調整された周波数ごとの音量を示す情報である。すなわち、過去に補聴器1のフィッティングを行ったことがある場合、フィッティング画面30の各スライドバー33には、直近のフィッティングで調整された音量に対応する位置に第1スライダー33aと第2スライダー33bが表示される。
よって、初回のフィッティングにおいては各周波数についてのフィッティング(調整)が必要となるが、一度フィッティングを行えば、気になる周波数に対してのみ微調整を行えば、フィッティングを完了させることができる。
【0039】
図2に戻り、制御部11は、診断音声テキストボックス31がタップされたか否かを判断する(ステップS2)。
診断音声テキストボックス31がタップされたと判断した場合(ステップS2;YES)、制御部21は、診断音声テキストボックス31からのテキスト入力を受け付け(ステップS3)、ステップS6に移行する。
【0040】
診断音声テキストボックス31がタップされていないと判断した場合(ステップS2;NO)、制御部21は、ランダムボタン32がタップされたか否かを判断する(ステップS4)。
ランダムボタン32がタップされたと判断した場合(ステップS4;YES)、制御部21は、ランダムなテキストを診断音声テキストボックス31に自動的に入力し(ステップS5)、ステップS6に移行する。
ランダムボタン32がタップされていないと判断した場合(ステップS4;NO)、制御部21は、ステップS6に移行する。
【0041】
ステップS6において、制御部21は、いずれかのスライドバー33のスライダー(第1スライダー33a又は第2スライダー33b)がホールドされたか否かを判断する(ステップS6)。
いずれかのスライドバー33のスライダーがホールドされていないと判断した場合(ステップS6;NO)、制御部21は、ステップS8に移行する。
【0042】
一方、いずれかのスライダーがホールドされたと判断した場合(ステップS6;YES)、制御部21は、音量調整処理を実行する(ステップS7)。
【0043】
図4は、ステップS7において実行される音量調整処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図4を参照して音量調整処理について説明する。
【0044】
まず、制御部21は、診断音声テキストボックス31に入力されているテキストを取得する(ステップS701)。
【0045】
次いで、制御部21は、診断音声テキストボックス31に入力されているテキストが取得できたか否かに基づいて、診断音声テキストボックス31が空欄であるか否かを判断する(ステップS702)。
診断音声テキストボックス31が空欄であると判断した場合(ステップS702;YES)、制御部21は、デフォルトのテキストを診断音声テキストとして取得し(ステップS703)、ステップS704に移行する。デフォルトのテキストは、記憶部25に予め記憶されている。
診断音声テキストボックス31が空欄ではないと判断した場合(ステップS702;NO)、制御部21は、ステップS704に移行する。
【0046】
ステップS704において、制御部21は、スライダー(第1スライダー33a又は第2スライダー33b)がホールドされているスライドバー33に割り当てられている周波数を取得する(ステップS704)。
【0047】
次いで、制御部21は、ホールドされているスライダーが第1スライダー33aであるか否かを判断する(ステップS705)。
ホールドされているスライダーが第1スライダー33aであると判断した場合(ステップS705;YES)、制御部21は、ホールドされている第1スライダー33aの位置に対応する周波数の純音(すなわち、ホールドされているスライドバー33に割り当てられている周波数の純音)を、ホールドされている第1スライダー33aの位置に対応する音量で補聴器1に所定時間発音させ(ステップS706)、ステップS709に移行する。
例えば、制御部21は、補聴器1に発音させる音の種類(純音)、周波数及び音量を示す発音制御情報を通信部24により補聴器1に送信する。補聴器1の制御部11は、通信部16により端末装置2から発音制御情報を受信すると、受信した発音制御情報に基づいて、音処理部13により、指定された周波数及び音量の純音信号を生成させて発音部14により発音させる。
【0048】
一方、ホールドされているスライダーが第1スライダー33aではないと判断した場合(ステップS705;NO)、制御部21は、ホールドされているスライダーが第2スライダー33bであるか否かを判断する(ステップS707)。
ホールドされているスライダーが第2スライダー33bであると判断した場合(ステップS707;YES)、制御部21は、ホールドされている第2スライダー33bの位置に対応する周波数の診断音声(すなわち、ホールドされているスライドバー33に割り当てられている周波数の、診断音声テキストに基づく診断音声)を、ホールドされている第2スライダー33bの位置に対応する音量で補聴器1に発音させ(ステップS708)、ステップS709に移行する。
例えば、制御部21は、補聴器1に発音させる診断音声テキスト、周波数及び音量を示す発音制御情報を通信部24により補聴器1に送信する。補聴器1の制御部11は、通信部16により端末装置2から発音制御情報を受信すると、受信した発音制御情報に基づいて、音処理部13により、指定された周波数及び音量の診断音声の音声信号を生成させて発音部14により発音させる。
【0049】
ホールドされているスライダーが第1スライダー33aでも第2スライダー33bではないと判断した場合(ステップS707;NO)、制御部21は、ステップS709に移行する。
【0050】
ステップS709において、制御部21は、指がスライダーから離れたことが検出されたか否かを判断する(ステップS709)。
指がスライダーから離れたことが検出されていないと判断した場合(ステップS709;NO)、制御部21は、ステップS705に戻る。
指がスライダーから離れたことが検出されたと判断した場合(ステップS710;YES)、制御部21は、
図2のステップS8に移行する。
【0051】
図2のステップS8において、制御部21は、フィッティングの終了が指示されたか否かを判断する(ステップS8)
例えば、制御部21は、終了ボタン34の押下が検出された場合に、フィッティングが終了したと判断する。
【0052】
フィッティングの終了が指示されていないと判断した場合(ステップS8;NO)、制御部21は、ステップS2に戻る。
フィッティングの終了が指示されたと判断した場合(ステップS8;YES)、制御部21は、フィッティング情報252を記憶部25に保存するとともに、通信部24により補聴器1に送信し(ステップS9)、補聴器フィッティング処理を終了する。
フィッティング情報252は、例えば、各周波数ごとの聴力検査における音量調整結果の情報(各第1スライダー33aの現在位置に対応する音量の値)及び各周波数ごとの語音明瞭度検査における音量調整結果の情報(各第2スライダー33bの現在位置に対応する音量の値及び検査に使用された診断音声テキスト)である。
【0053】
補聴器1において、通信部16により端末装置2からフィッティング情報252が受信されると、制御部11は、記憶部15に記憶されているフィッティング情報252を受信されたフィッティング情報252に置き換える。
補聴器1において、音声入力部12により外部の音声が取得され、その電気信号が入力されると、制御部11は、フィッティング情報252に基づいて、音処理部13により、入力された電気信号に対し、ユーザの聴覚特性に合うように増幅したり不要な雑音を抑えて語音を強調したりする処理を行わせ、処理済みの音声を発音部14により発音させる。
【0054】
なお、上記実施形態では、左耳と右耳を区別せずに補聴器1のフィッティングを行ったが、
図5に示すように、フィッティング画面30に左耳と右耳を切り替える切り替えボタン35を設けることとしてもよい。そして、制御部21は、切り替えボタン35による切り替え操作に応じて、左耳又は右耳に対して補聴器1のフィッティングを行うにしてもよい。各耳に対して行う補聴器フィッティング処理は、補聴器1に検査音を発音させる際、フィッティング対象の耳側の発音部14により発音させることと、フィッティング情報252を左右別に記憶部25に記憶させることの他は、上記実施形態で説明したものと同様である。
【0055】
以上説明したように、端末装置2の制御部21は、互いに異なる周波数が割り当てられた複数のスライドバー33が表示されたフィッティング画面30を表示部23に表示させる。複数のスライドバー33のそれぞれには、第1スライダー33aと第2スライダー33bとが設けられている。いずれかのスライドバー33における第1スライダー33aがスライド操作されると、制御部21は、操作されたスライドバー33に割り当てられた周波数の聴力検査における検査音の音量を第1スライダー33aの位置に応じて調整し、いずれかのスライドバー33における第2スライダー33bが操作されると、操作されたスライドバー33に割り当てられた周波数の語音明瞭度検査における検査音の音量を第2スライダー33bの位置に応じて調整する。そして、制御部21は、聴力検査における音量調整結果の情報と及び前記語音明瞭度検査における音量調整結果の情報を取得する。
【0056】
したがって、1つのフィッティング画面30で聴力検査と語音明瞭度検査を一度に行うことができるので、補聴器1のフィッティングを短時間でかつ簡単に行うことができ、従来の補聴器のフィッティングをする際の煩わしさを低減することができる。
【0057】
フィッティング画面30において、第1スライダー33aは、スライドバー33における第2スライダー33bよりも小さい音量側に位置する。よって、一つのスライドバー33上で第1スライダー33a及び第2スライダー33bを操作して、聴力検査における検査音の音量調整と語音明瞭度検査における検査音の音量調整を行うことが可能となる。
【0058】
また、制御部21は、第1スライダー33a又は第2スライダー33bが操作されている間のみ、操作された第1スライダー33a又は第2スライダー33bに応じた音量の検査音を補聴器1に発音させる。したがって、ユーザがスライダーを操作している間だけ検査音が発音されるため、従来のように、長時間にわたって受動的に検査音を聞く必要がなく、快適にフィッティングを行うことができる。
【0059】
また、制御部21は、フィッティング画面30上に、語音明瞭度検査における検査音として発音させる音声のテキストをユーザが任意に入力するための診断音声テキストボックス31を表示し、第2スライダー33bが操作されている間、診断音声テキストボックス31から入力されたテキストの音声を語音明瞭度検査における検査音として発音させる。したがって、ユーザが聞こえにくい語音を用いてフィッティングを行うことができるので、ユーザの聴覚特性に応じて精度よくフィッティングを行うことができる。
【0060】
なお、周波数によって聞こえにくい語音が異なる場合、例えば、高音では「かきく」が聞こえにくいが低音では「あいう」が聞こえにくい場合は、聞こえにくい語音を並べて診断音声テキストボックス31に入力し、診断音声テキストボックス31から入力された複数の語音をつなげた音声を語音明瞭度検査における検査音として発音させることとしてもよい。そして、ユーザに、診断音声が全部認識できた音量の位置に第2スライダー33bをスライドさせるようにすればよい。これにより、周波数によって聞こえにくい語音が異なる場合でも簡単にフィッティングすることができる。
【0061】
また、制御部21は、聴力検査における音量調整結果の情報と語音明瞭度検査における音量調整結果の情報を記憶部25に記憶させ、新たにフィッティング画面30上に複数のスライドバーを表示させる際、記憶部25に記憶されている音量調整結果の情報に基づいて、複数のスライドバー33のそれぞれにおける第1スライダー33a及び第2スライダー33bの位置を設定する。
したがって、一度フィッティングを行えば、その後は気になる周波数に対してのみ微調整を行えばフィッティングを完了させることができる。よって、短時間で簡単にフィッティングを行うことができる。
【0062】
また、調整後のフィッティング画面30は、
図2に示すように、各周波数についての聴力検査における音量調整結果及び語音明瞭度検査における音量調整結果が第1スライダー33a及び第2スライダー33bの位置によってグラフのように表示されるので、ユーザは、各周波数についての聴力検査における音量調整結果及び語音明瞭度検査における音量調整結果を容易に把握することができる。
図5は、診断音声が「おきはむ」の場合の調整後のフィッティング画面30の一例を示す図である。
図6は、診断音声が「さしすせ」の場合の調整後のフィッティング画面30の一例を示す図である。
図5のフィッティング画面30によれば、「おきはむ」は、周波数によって聞き取りにばらつきがあることがわかる。
図6のフィッティング画面30によれば、「さしすせ」は、周波数が高くなるほど認識しづらくなっていくことがわかる。
【0063】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明に係るプログラム、音量調整方法、情報処理装置の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、本願発明を補聴器のフィッティングに適用した場合を一例として説明したが、補聴器に限られず、本願発明は、集音器、音響処理装置、イヤホンを含むイヤーデバイスのフィッティングに適用可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、診断音声テキストを任意に入力できることとし、診断音声を自由に変えられることとしたが、診断音声は固定化しても構わない。
【0066】
また、上記実施形態では、スライドバー33を縦向きに配置することとしたが、横向きに配置することとしてもよい。この場合、スライドバー33における左側が小さい音量側となり、右側が大きい音量側となる。
【0067】
また、上記実施形態では、聴力検査の検査音を純音としたが、聴力検査の検査音を語音明瞭度検査と同様の語音(診断音声)としてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、本願発明が適用されたフィッティング画面30を用いた聴力検査における音量調整及び語音明瞭度検査における音量調整により、補聴器1のフィッティングを行うこととして説明したが、本願発明が適用されたフィッティング画面30を用いた聴力検査における音量調整及び語音明瞭度検査における音量調整は、補聴器1のフィッティングを目的とするものに限られない。また、端末装置2が音処理部や発音部を備え、端末装置2で聴力検査における検査音及び語音明瞭度検査における検査音を発音することとしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてROM等の半導体メモリやハードディスクを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0070】
また、上記実施形態では、ユーザが指で画面上の第1スライダー33a及び第2スライダー33bをスライドさせることで、これらのスライダーを操作することとして説明したが、第1スライダー33a及び第2スライダー33bは、指でスライドさせる以外の手法で操作することとしてもよい。
例えば、各スライドバー33に対応付けられた聴力検査開始のボタン(または操作したい第1スライダー33a)をタッチすると、制御部21は、第1スライダー33aを自動で少しずつ上に移動させる。ユーザは、音が聞こえたタイミングで第1スライダー33aの動きを止める。第1スライダー33aの動きを止める操作は、音声でもタッチでもよい。同様に、例えば、各スライドバー33に対応付けられた語音明瞭検査開始のボタン(または操作したい第2スライダー33b)をタッチすると、制御部21は、第2スライダー33bを自動で少しずつ上に移動させる。ユーザは、語音が認識できたタイミングで第2スライダー33bの動きを止める。第2スライダー33bの動きを止める操作は、音声でもタッチでもよい。このように、タッチや音声などの、スライド操作以外の操作によりスライダーが操作をされる場合も、本願請求項の「スライダーが操作される」に含まれる。
【0071】
その他、補聴器1や端末装置2の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0072】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載に基づいて定められる。更に、特許請求の範囲の記載から本発明の本質とは関係のない変更を加えた均等な範囲も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0073】
100 補聴器フィッティングシステム
1 補聴器
11 制御部
12 音声入力部
13 音処理部
14 発音部
15 記憶部
16 通信部
17 バス
2 端末装置
21 制御部
22 操作部
23 表示部
24 通信部
25 記憶部
251 補聴器フィッティングアプリ
252 フィッティング情報
26 バス
30 フィッティング画面
31 診断音声テキストボックス
32 ランダムボタン
33 スライドバー
33a 第1スライダー
33b 第2スライダー
34 終了ボタン
35 切り替えボタン