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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024920
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】分割筐体設置方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20250214BHJP
   F16L 41/06 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F16L55/00 Z
F16L41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129302
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】堀川 剛
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 大介
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019AA03
3H019AA04
3H019BA01
3H019BB02
3H019CA01
3H019CB01
(57)【要約】
【課題】施工作業の効率を向上させる分割筐体設置方法を提供する。
【解決手段】分割筐体設置方法は、第1筐体1と第2筐体2とを接合して既設管P1に設置する。分割筐体設置方法は、第1筐体1と第1筐体1に対して分離された第2筐体2とを線状部材Wを介して1つの作業機Sで同時に吊る吊り工程と、第1筐体1と第2筐体2とが既設管P1を挟んで対向する位置まで、1つの作業機Sにより第1方向に沿って第1筐体1及び第2筐体2を移動させる移動工程と、第1筐体1の第1対向面12t、13tと第2筐体2の第2対向面22t、23tとを対向させて、第1筐体1及び第2筐体2を既設管P1の外周に沿うように配置する配置工程と、第1筐体1と第2筐体2とを仮締めする仮締め工程と、第1筐体1と第2筐体2とを本締めする本締め工程とを含む点にある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体とを接合して既設管に設置する分割筐体設置方法において、
前記第1筐体と前記第1筐体に対して分離された前記第2筐体とを線状部材を介して1つの作業機で同時に吊る吊り工程と、
前記第1筐体と前記第2筐体とが前記既設管を挟んで対向する位置まで、1つの前記作業機により第1方向に沿って前記第1筐体及び前記第2筐体を移動させる移動工程と、
前記第1筐体の第1対向面と前記第2筐体の第2対向面とを対向させて、前記第1筐体及び前記第2筐体を前記既設管の外周に沿うように配置する配置工程と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを仮締めする仮締め工程と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを本締めする本締め工程とを含む分割筐体設置方法。
【請求項2】
前記第1対向面と前記第2対向面とが前記第1方向に対して交差するように、前記第1筐体と前記第2筐体とを前記既設管の外周に沿って回転させる回転工程を更に含み、
前記回転工程は、前記仮締め工程と前記本締め工程との間で実行される請求項1に記載の分割筐体設置方法。
【請求項3】
前記移動工程では、前記第1筐体と前記第2筐体とを前記既設管に接触させることにより、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記既設管を通過させる請求項1又は2に記載の分割筐体設置方法。
【請求項4】
前記線状部材は、前記第1筐体に第1吊り具を介して接続される第1ワイヤと、前記第2筐体に第2吊り具を介して接続される第2ワイヤと、一端部が前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとに第3吊り具を介して接続され、他端部が前記作業機に接続される第3ワイヤとを含み、
前記吊り工程では、前記第1筐体と前記第2筐体とが、前記線状部材を挟んで対向する請求項1又は2に記載の分割筐体設置方法。
【請求項5】
前記既設管を流れる流体を分岐させる分岐管を前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成された開口部に挿入する分岐管挿入工程を更に含み、
前記分岐管挿入工程は、前記仮締め工程と前記本締め工程との間で実行される請求項1又は2に記載の分割筐体設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割筐体設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管等の流体管を穿孔し、分岐させる作業に関する様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、2つの分割筐体を環状に接合してなる分岐ケースを水道管の外周に装着する分岐ケースの装着方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-166628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の分岐ケースの装着方法では、2つの分割筐体のうちの一方の分割片と、仕切弁とを仮組みした仮組み体がクレーン等の機材で吊り上げられ、水道管に被せた後、一方の分割片と水道管の下方に配置された他方の分割片とを締結具により締め付ける。上記の装着方法では、一方の分割片と他方の分割片とが別々に機材で吊り上げられて、水道管の周囲に配置されるため、施工作業の効率が低下する。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、施工作業の効率を向上させる分割筐体設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る分割筐体設置方法の特徴は、第1筐体と第2筐体とを接合して既設管に設置する分割筐体設置方法において、前記第1筐体と前記第1筐体に対して分離された前記第2筐体とを線状部材を介して1つの作業機で同時に吊る吊り工程と、前記第1筐体と前記第2筐体とが前記既設管を挟んで対向する位置まで、1つの前記作業機により第1方向に沿って前記第1筐体及び前記第2筐体を移動させる移動工程と、前記第1筐体の第1対向面と前記第2筐体の第2対向面とを対向させて、前記第1筐体及び前記第2筐体を前記既設管の外周に沿うように配置する配置工程と、前記第1筐体と前記第2筐体とを仮締めする仮締め工程と、前記第1筐体と前記第2筐体とを本締めする本締め工程とを含む点にある。
【0007】
この特徴によると、吊り工程、移動工程及び配置工程により第1筐体と第1筐体に対して分離された第2筐体とが線状部材を介して1つの作業機で同時に吊られ、既設管の外周に沿って配置される。そして、第1筐体と第2筐体とを仮締めして位置合わせした後、第1筐体と第2筐体とを本締めして分割筐体を既設管に設置する。つまり、1つの作業機を用いて分割筐体を既設管に設置することができる。したがって、第1筐体と第2筐体とを別々に吊り、既設管の外周に沿って配置する場合と比べて、作業効率が向上する。
【0008】
他の特徴として、前記第1対向面と前記第2対向面とが前記第1方向に対して交差するように、前記第1筐体と前記第2筐体とを前記既設管の外周に沿って回転させる回転工程を更に含み、前記回転工程は、前記仮締め工程と前記本締め工程との間で実行されてもよい。
【0009】
この特徴によると、回転工程が、仮締め工程の後に実行される。この回転工程により分割筐体の割面の位置を自在に変更すること可能となる。このように、仮締めされた第1筐体と第2筐体とを一体に回転させることにより、如何なる割面位置であっても作業効率が向上する。
【0010】
他の特徴として、前記移動工程では、前記第1筐体と前記第2筐体とを前記既設管に接触させることにより、前記第1筐体と前記第2筐体との間に前記既設管を通過させてもよい。
【0011】
この特徴によると、既設管との接触を活用することにより、第1筐体と第2筐体との間に既設管が通過可能な距離を容易に確保することができるため、既設管のサイズに合わせて第1筐体と第2筐体との離間距離を精度よく確保する必要がなく、作業効率が向上する。
【0012】
他の特徴として、前記線状部材は、前記第1筐体に第1吊り具を介して接続される第1ワイヤと、前記第2筐体に第2吊り具を介して接続される第2ワイヤと、一端部が前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとに第3吊り具を介して接続され、他端部が前記作業機に接続される第3ワイヤとを含み、前記吊り工程では、前記第1筐体と前記第2筐体とが、前記線状部材を挟んで対向してもよい。
【0013】
この特徴によると、線状部材(第1ワイヤ、第2ワイヤ及び第3ワイヤ)を介して、第1筐体と第2筐体とを1つの作業機で吊ることができるため、汎用性が高く、あらゆる作業現場で活用することが可能となる。
【0014】
他の特徴として、前記既設管を流れる流体を分岐させる分岐管を前記第1筐体と前記第2筐体との間に形成された開口部に挿入する分岐管挿入工程を更に含み、前記分岐管挿入工程は、前記仮締め工程と前記本締め工程との間で実行されてもよい。
【0015】
この特徴によると、分岐管挿入工程が仮締め工程と本締め工程との間で実行されるため、第1筐体と第2筐体とを仮締めして位置合わせした後、分岐管を開口部に挿入することが可能となる。例えば、第1筐体と第2筐体とが分離された状態で双方の位置合わせを行いながら分岐管を挿入する場合と比べて作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に分割筐体設置方法を示すフロー図である。
図2】実施形態1に係る吊り工程を示す図である。
図3】実施形態1に係る移動工程を示す図である。
図4】実施形態1に係る配置工程を示す図である。
図5】実施形態1に係る仮締め工程を示す図である。
図6】実施形態1に係る取り外し工程を示す図である。
図7】実施形態1に係る回転工程を示す図である。
図8】実施形態1に係る分岐管挿入工程を示す図である。
図9】実施形態1に係る本締め工程を示す図である。
図10】実施形態2に係る分割筐体設置方法を示すフロー図である。
図11】実施形態2に係る吊り工程を示す図である。
図12】実施形態2に係る移動工程を示す図である。
図13】実施形態2に係る配置工程を示す図である。
図14】実施形態2に係る仮締め工程を示す図である。
図15】実施形態2に係る取り外し工程を示す図である。
図16】実施形態2に係る分岐管挿入工程を示す図である。
図17】実施形態2に係る回転工程及び本締め工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る分割筐体設置方法について、流体の分岐に用いられる割T字管としての分割筐体を設置する方法を例に説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。なお、割T字管は、分岐ケースと称される場合もある。
【0018】
〔分割筐体設置方法〕
まず、図1図9を参照して分割筐体設置方法S10について説明する。図1は、分割筐体設置方法S10を示すフロー図であり、図2図9は、分割筐体設置方法S10の各工程を示す図である。分割筐体設置方法S10は、第1筐体1と第2筐体2とを接合して分割筐体10を構成し、分割筐体10を既設管P1に設置する方法である。分割筐体設置方法S10は、既設管P1を流れる流体の流れを維持したままの不断流状態で行われ得る。本実施形態において、流体は、水であり、既設管P1は、地中に埋設された水道管であって、水平方向に沿って延在する。以下、水平方向のうちの既設管P1の延在する方向を「X方向」とし、X方向と直交する方向を「Y方向」とする(図2参照)。また、X方向及びY方向と直交する方向(鉛直方向)を「Z方向」とする。更に、Z方向(鉛直方向)のうちの一方(鉛直方向下側)を「Z1側」とし、他方(鉛直方向上側)を「Z2側」とする。なお、Z2側からZ1側へ向かう方向は、第1方向に相当する。
【0019】
図1に示すように、分割筐体設置方法S10は、吊り工程S1(図2参照)と、移動工程S2(図3参照)と、配置工程S3(図4参照)と、仮締め工程S4(図5参照)と、取り外し工程S5(図6参照)と、回転工程S6(図7参照)と、分岐管挿入工程S7(図8参照)と、本締め工程S8(図9参照)とをこの順で含む。
【0020】
〔吊り工程〕
図2に示すように、吊り工程S1では、第1筐体1と、第1筐体1に対して分離された第2筐体2とを、ワイヤ部W(線状部材の一例)を介して、1つの作業機Sで同時に吊り上げる。作業機Sは、例えば、クレーンである。
【0021】
〔第1筐体〕
第1筐体1は、X方向に延在する半円筒状の第1本体部11と、第1本体部11から径方向の外側へ延在する第1フランジ部12と、第1本体部11から第1フランジ部12とは反対側に延在する第2フランジ部13と、第1本体部11から第2フランジ部13と同じ側に延在する第1分岐管部14と、第1本体部11から第1本体部11及び第1分岐管部14と直交する方向に延在する円筒状の筒状部15とを有する。
【0022】
第1フランジ部12は、第1本体部11の一方の端部から径方向の外側へ突出する第1フランジ12fを含む。第1フランジ12fは、第1筐体1のワイヤ部Wと接続される側とは反対側に配置される。第1フランジ12fには、第1フランジ12fを貫通し、ボルト等の締結部材が挿通可能な第1締結孔12hが形成されている。また、第1フランジ12fは、分割筐体10が構成された状態において、第2筐体2と対向(接触)する第1割面12t(第1対向面の一例)を含む(図9参照)。
【0023】
第2フランジ部13は、第1本体部11の他方の端部から径方向の外側へ突出する第2フランジ13fを含む。第2フランジ13fは、ワイヤ部Wと接続される側に配置される。第2フランジ13fには、第2フランジ13fを貫通する第1金具孔13h及び第2締結孔13jが形成されている。第1金具孔13hには、後述の金具等が挿通可能である。第2締結孔13jには、締結部材が挿通可能である。また、第2フランジ13fは、分割筐体10が構成された状態において、第2筐体2と対向(接触)する第2割面13t(第1対向面の一例)を含む(図9参照)。
【0024】
第1分岐管部14には、半円状の第1開口14hが形成されている。筒状部15には、円形状の筒状開口15hが形成されている。筒状開口15hには、既設管P1を切断(穿孔)するための切断装置(穿孔機)のカッター(不図示)が挿通される。
【0025】
〔第2筐体〕
第2筐体2は、筒状部15を有さない以外、第1筐体1の構成と略同様の構成である。詳しくは、第2筐体2は、X方向に延在する半円筒状の第2本体部21と、第2本体部21から径方向の外側へ延在する第3フランジ部22と、第2本体部21から第3フランジ部22とは反対側に延在する第4フランジ部23と、第2本体部21から第4フランジ部23と同じ側に延在する第2分岐管部24とを有する。
【0026】
第3フランジ部22は、第2本体部21の一方の端部から径方向の外側へ突出する第3フランジ22fを含む。第3フランジ22fは、ワイヤ部Wと接続される側とは反対側に配置される。第3フランジ22fには、第3フランジ22fを貫通し、ボルト等の締結部材が挿通可能な第3締結孔22hが形成されている。また、第3フランジ22fは、分割筐体10が構成された状態において、第1筐体1と対向(接触)する第3割面22t(第2対向面の一例)を含む(図9参照)。
【0027】
第4フランジ部23は、第2本体部21の他方の端部から径方向の外側へ突出する第4フランジ23fを含む。第4フランジ23fは、ワイヤ部Wと接続される側に配置される。第4フランジ23fには、第4フランジ23fを貫通する第2金具孔23h及び第4締結孔23jが形成されている。第2金具孔23hには、金具等が挿通可能である。第4締結孔23jには、締結部材が挿通可能である。また、第4フランジ23fは、分割筐体10が構成された状態において、第1筐体1と対向(接触)する第4割面23t(第2対向面の一例)を含む。
【0028】
第2分岐管部24には、半円状の第2開口24hが形成されている。第2分岐管部24は、分割筐体10が構成された状態において、第1筐体1の第1分岐管部14とともに円形状の開口部1hを形成し、開口部1hには、分岐管P2の一部が挿入される(図9参照)。
【0029】
〔ワイヤ部〕
ワイヤ部Wは、第1ワイヤW1、第2ワイヤW2及び第3ワイヤW3を有する。本実施形態において、第1ワイヤW1は、第1筐体1の第2フランジ部13に接続される。詳しくは、第1ワイヤW1は、第2フランジ13fに形成された第1金具孔13hに係合する第1吊り金具K1(第1吊り具の一例)を介して第1筐体1に接続される。
【0030】
また、本実施形態において、第2ワイヤW2は、第2筐体2の第4フランジ部23に接続される。第2ワイヤW2は、第4フランジ23fに形成された第2金具孔23hに係合する第2吊り金具K2(第2吊り具の一例)を介して第2筐体2に接続される。本実施形態では、第2フランジ部13(第1金具孔13h)及び第4フランジ部23(第2金具孔23h)は、被吊り部10tとして機能する。
【0031】
第3ワイヤW3は、一端部が第1ワイヤW1と第2ワイヤW2とに第3吊り金具K3(第3吊り具の一例)を介して接続され、他端部が作業機S(作業機Sの先端に配置された金具)に接続される。
【0032】
本実施形態では、第1吊り金具K1、第2吊り金具K2、及び第3吊り金具K3の各々は、例えば、シャックル、フック等で構成される。なお、以下では、第1吊り金具K1、第2吊り金具K2、及び第3吊り金具K3を総称して「吊り金具K」と称する場合がある。
【0033】
上記のようにワイヤ部Wと接続される第1筐体1は、第2フランジ部13が第3ワイヤW3に近い側、第1フランジ部12が第3ワイヤW3から遠い側となる姿勢で吊られる。また、上記のようにワイヤ部Wと接続される第2筐体2は、第4フランジ部23が第3ワイヤW3に近い側、第3フランジ部22が第3ワイヤW3から遠い側となる姿勢で吊られる。
【0034】
作業機Sによって吊られた第1筐体1と第2筐体2とは、互いに分離されており、ワイヤ部Wを挟んで対向する。本実施形態では、第2割面13tと第4割面23tとが仮想線Lを対称軸として線対称となり、第1割面12tと第3割面22tとが仮想線Lを対称軸として線対称となる姿勢で、第1筐体1と第2筐体2とが作業機Sに吊られる。なお、仮想線Lは、第3ワイヤW3を延長した仮想線である。図2に示す例では第1筐体1と第2筐体2とがある程度の距離をもって離間しているが、この離間は突っ張り棒や作業員による誘導により実現可能である。なお、第1筐体1と第2筐体2とが接触する程度に吊り下げられていてもよく、後述する移動工程S2において、第1フランジ部12及び第3フランジ部22の少なくとも一方が既設管P1の円弧状上面に接触することにより、第1筐体1と第2筐体2とが自然と離間する。
【0035】
第1筐体1及び第2筐体2がワイヤ部Wを介して作業機Sに吊られると、吊り工程S1が終了し、移動工程S2が実行される。
【0036】
〔移動工程〕
図2及び図3に示すように、移動工程S2では、吊り工程S1で吊られた第1筐体1と第2筐体2とをZ1側へ作業機Sにより移動させる。詳しくは、第1筐体1と第2筐体2とが既設管P1を挟んで対向する位置まで、第1筐体1と第2筐体2とを移動させる。このとき、第1フランジ部12及び第3フランジ部22の少なくとも一方が既設管P1の円弧状上面に接触する。これにより、既設管P1が通過可能な距離だけ第1筐体1と第2筐体2とが離間し、第1筐体1と第2筐体2との間を既設管P1が通過可能になる。第1筐体1と第2筐体2とが既設管P1を挟んで対向する位置まで移動すると、移動工程S2が終了し、配置工程S3が実行される。
【0037】
〔配置工程〕
図3及び図4に示すように、配置工程S3では、移動工程S2で既設管P1を挟んで対向する位置まで移動された第1筐体1(第1本体部11)及び第2筐体2(第2本体部21)を既設管P1の外周に沿って配置する。詳しくは、第1フランジ部12(第1フランジ12f)と第3フランジ部22(第3フランジ22f)とを既設管P1を挟んで対向させ、かつ、第2フランジ部13(第2フランジ13f)と第4フランジ部23(第4フランジ23f)とを既設管P1を挟んで対向させる。これにより、配置工程S3が終了し、仮締め工程S4が実行される。
【0038】
なお、配置工程S3終了時における第1割面12t、第2割面13t、第3割面22t、及び、第4割面23tは、Y方向と交差する平面であり、第1割面12tと第3割面22tとは、Y方向において対向し、第2割面13tと第4割面23tとはY方向において対向する。また、第1筐体1の第2フランジ部13と第2筐体2の第4フランジ部23とは、Z方向において、既設管P1よりもワイヤ部Wに近い位置に配置され、第1筐体1の第1フランジ部12と第2筐体2の第3フランジ部22とは、既設管P1よりもワイヤ部Wから遠い位置に配置される。
【0039】
〔仮締め工程〕
図5に示すように、仮締め工程S4では、配置工程S3で既設管P1の外周に沿って配置された第1筐体1と第2筐体2とを仮締めする。第1筐体1と第2筐体2とは、第1フランジ部12と第3フランジ部22とを締結部材によって仮締結することにより、仮締めする。例えば、第1フランジ部12の第1締結孔12hと第3フランジ部22の第3締結孔22hとに挿通されたボルト(例えば、頭付きボルト(T頭ボルト))にナットを仮締結し、第2フランジ部13の第2締結孔13jと第4フランジ部23の第4締結孔23jとに挿通された全ねじボルトにナットを仮締結する等によって、第1筐体1と第2筐体2とを仮締めする。なお、本実施形態では、第1フランジ部12(第1締結孔12h)と第3フランジ部22(第3締結孔22h)と第2フランジ部13(第2締結孔13j)と第4フランジ部23(第4締結孔23j)とが被仮止め部として機能する。
【0040】
第1筐体1と第2筐体2とは、後述の回転工程S6において、管軸心PXを中心として回転させても分離しないように仮締めされる。また、第1筐体1と第2筐体2とは、第2フランジ部13と第4フランジ部23とが可動可能(接近可能又は離間可能)に仮締めされる。
【0041】
第1筐体1と第2筐体2とが仮締めされると、仮締め工程S4が終了し、取り外し工程S5が実行される。
【0042】
〔取り外し工程〕
図5及び図6に示すように、取り外し工程S5では、仮締め工程S4で仮締めされた第1筐体1及び第2筐体2からワイヤ部Wを撤去する。詳しくは、第1筐体1から第1吊り金具K1及び第1ワイヤW1が、第2筐体2から第2吊り金具K2及び第2ワイヤW2が取り外される。これにより、取り外し工程S5が終了し、回転工程S6が実行される。
【0043】
〔回転工程〕
次いで、図6及び図7に示すように、回転工程S6では、取り外し工程S5でワイヤ部Wが撤去された第1筐体1及び第2筐体2を既設管P1の外周に沿って回転させる。詳しくは、第1筐体1と第2筐体2とを既設管P1の管軸心PXを回転軸として、一体に回転させる。図6に示す例では、反時計周りに90程度度回転させて、第1割面12t、第2割面13t、第3割面22t、及び第4割面23tが、Z方向に交差(例えば、直交)するように、第1筐体1と第2筐体2とを回転させる。この回転工程S6は、既設管P1に分割筐体10の重量が支持されていることから、作業員により容易に実行できる。これにより、回転工程S6が終了し、分岐管挿入工程S7が実行される。
【0044】
〔分岐管挿入工程〕
次いで、図8に示すように、分岐管挿入工程S7では、回転工程S6で回転された第1筐体1及び第2筐体2に、既設管P1を流れる流体を分岐させる分岐管P2を挿入する。詳しくは、仮締め工程S4で、仮締結された締結部材(全ねじボルトとナットと)のゆるみ(間隔)に応じた距離だけ、第1筐体1の第2フランジ部13と、第2筐体2の第4フランジ部23とを互いに離間させる。その後、第1筐体1と第2筐体2との間に形成された開口部1hを介して分岐管P2の一部を第1筐体1と第2筐体2との間に挿入する。これにより、分岐管挿入工程S7が終了し、本締め工程S8が実行される。
【0045】
〔本締め工程〕
次いで、図9に示すように、本締め工程S8では、分岐管挿入工程S7で分岐管P2が挿入された第1筐体1と第2筐体2とを、ラチェット等を用いて締結部材を本締めする。詳しくは、第1筐体1の第2フランジ部13と第2筐体2の第4フランジ部23とに仮締結された仮固定用全ねじボルトをボルト(頭部付きボルト)に付け替えて本締めし、第1フランジ部12と第3フランジ部22とに仮締結されたボルトを本締めする。第1筐体1と第2筐体2とが本締めされると、分割筐体10が構成され、既設管P1への分割筐体10の装着が完了する。これにより、本締め工程S8が終了し、分割筐体設置作業(分割筐体設置方法S10)が終了する。なお、分割筐体10では、流体(例えば、既設管P1から分岐管P2へ分岐する流体)が漏れ出さないように分岐管P2が固定されている。
【0046】
本実施形態に係る分割筐体10は、ハーフカット工法に用いられるものであり、既設管P1に分割筐体10が設置された状態において、筒状部15が有する筒状開口15hの開口軸心H1が既設管P1の管軸心PXに対して分岐管P2へオフセットしている。つまり、ハーフカット工法では、筒状開口15hを通過するカッターが既設管P1の管軸心PXに対してオフセットする。すなわち、既設管P1は、管軸心PXに対して分岐管P2側にオフセットした位置が切断される。なお、ハーフカット工法では、既設管P1が完全に分離されず、既設管P1の一部が接続されたままとなる。
【0047】
〔実施形態2〕
続いて、図10図16を参照して、実施形態2に係る分割筐体設置方法S20について説明する。実施形態2では、分岐管挿入工程S7を実行するタイミングが実施形態1と異なる。なお、以下では、実施形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明し、実施形態1と同一の構成についての詳細な説明は省略する。
【0048】
図10に示すように、本実施形態では、分岐管挿入工程S7は、回転工程S6の後ではなく、回転工程S6の前に実行される。
【0049】
すなわち、実施形態2では、分割筐体設置方法S10は、吊り工程S1(図11参照)と、移動工程S2(図12参照)と、配置工程S3(図13参照)と、仮締め工程S4(図14参照)と、取り外し工程S5(図15参照)と、分岐管挿入工程S7(図16参照)と、回転工程S6(図17参照)と、本締め工程S8(図17参照)とをこの順で含む。各工程の内容は、実施形態1と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0050】
なお、本実施形態では、分割筐体10は、フルカット工法に用いられるものであり、実施形態1で説明した分割筐体10とは構成が異なる。詳しくは、図17に示すように、筒状部15の筒状開口15hの開口軸心H1は、ハーフカット工法で用いられる分割筐体10と異なり、既設管P1の管軸心PXに対してオフセットしない。つまり、フルカット工法では、カッターが既設管P1の管軸心PXに対してオフセットすることなく既設管P1を切断し、既設管P1が切断箇所を介して完全に分離される。
【0051】
また、本実施形態では、図12に示すように、被吊り部10tは、第1分岐管部14に形成された第1係合孔14tと、及び第2分岐管部24に形成された第2係合孔24tとによって構成される。第1係合孔14t及び第2係合孔24tの各々に係合されたシャックル等がワイヤ部Wの先端部に接続されたフック等に係止されることによって、第1筐体1及び第2筐体2がワイヤ部Wと接続される。
【0052】
〔実施形態の作用効果〕
(1)以上説明したように、上記の実施形態によれば、第1筐体1と第1筐体1に対して離間する第2筐体2とがワイヤ部Wを介して1つの作業機S(クレーン)で同時に吊られ、既設管P1の外周に沿って配置される。したがって、第1筐体1と第2筐体2とを別々に吊り、既設管P1の外周に沿って配置する場合と比べて、作業効率が向上する。
【0053】
(2)上記実施形態では、回転工程S6において、仮締めされた第1筐体1と第2筐体2とを一体に回転することができるため、作業効率が向上する。
【0054】
(3)また、上記実施形態では、ワイヤ部W(第1ワイヤW1、第2ワイヤW2及び第3ワイヤW3)を介して、第1筐体1と第2筐体2とを1つの作業機Sで吊ることができるため、作業効率が向上する。
【0055】
(4)また、上記実施形態では、分岐管挿入工程S7が仮締め工程S4と本締め工程S8との間で実行されるため、例えば、第1筐体1と第2筐体2とが分離された状態で分岐管を挿入する場合と比べて作業効率が向上する。
【0056】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成してもよい(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0057】
(1)実施形態1で説明した分割筐体設置方法S10(分岐管挿入工程S7が回転工程S6と本締め工程S8との間で実行される方法)は、実施形態2で説明したフルカット工法に用いられる分割筐体10にも適用可能である。また、実施形態2で説明した分割筐体設置方法S20(分岐管挿入工程S7が取り外し工程S5と回転工程S6との間で実行される方法)は、実施形態1で説明したハーフカット工法に用いられる分割筐体10にも適用可能である。
【0058】
(2)上記実施形態では、分割筐体設置方法S10、S20は、回転工程S6を含んだが、例えば、鉛直方向を割面とする分割筐体を設置する場合、回転工程S6は省略される。
【0059】
(3)上記実施形態では、分割筐体設置方法S10、S20は、分岐管挿入工程S7を含んだが、例えば、既設管P1に弁(遮蔽弁)等を設置する場合(第1筐体1が第1分岐管部14を第2筐体2が第2分岐管部24を備えない分割筐体の場合)、分岐管挿入工程S7は省略される。
【0060】
(4)第1筐体1と第2筐体2との間に離間工具等を着脱可能に装着することにより、第1筐体1と第2筐体2との間を既設管P1が通過可能な程度に離間させてもよい。この場合、移動工程S2で第1筐体1と第2筐体2とを既設管P1に接触させなくてもよい。
【0061】
(5)上記実施形態の仮締め工程S4では、第1フランジ部12の第1締結孔12hと第3フランジ部22の第3締結孔22hとに挿通されたボルト(例えば、T頭ボルト)にナットを仮締結し、第2フランジ部13の第2締結孔13jと第4フランジ部23の第4締結孔23jとに挿通された全ねじボルトにナットを仮締結することにより、第1筐体1と第2筐体2とを仮締めしたが、第1フランジ部12(第1締結孔12h)と第3フランジ部22(第3締結孔22h)とのみを締結部材によって仮締結することにより、第1筐体1と第2筐体2とを仮締めしてもよい。あるいは、第2フランジ部13(第2締結孔13j)と第4フランジ部23(第4締結孔23j)とを締結部材によって仮締結することにより、第1筐体1と第2筐体2とを仮締めしてもよい。また、仮締結に用いる締結部材の種類は、適宜変更可能である。
【0062】
(6)分割筐体10をワイヤ部Wで吊る際に用いる吊り金具Kの数量は、適宜変更され得る。
【0063】
(7)上記実施形態では、第2割面13tと第4割面23tとが第3ワイヤW3を延長した仮想線Lを対称軸として線対称となる姿勢で、第1筐体1と第2筐体2とが作業機Sに吊られる場合を説明したが、第2割面13tと第4割面23tとは、第3ワイヤW3を延長した仮想線Lを対称軸とした線対称でなくてもよく、例えば、Z方向における互いの位置が異なってもよい。第1割面12tと第3割面22tとについても同様である。
【0064】
(8)上記実施形態では、線状部材の一例としてワイヤ部Wを例に説明したが、線状部材は、ワイヤ以外のロープ、チェーン等であってもよい。また、吊り金具Kもシャックル、フック以外であって、ワイヤ部Wと第1筐体1及び第2筐体2とを連結可能な連結具であってもよい。
【0065】
(9)上記実施形態では、流体として水、既設管P1として水道管の例を示したが、その他の流体が流通する流体管に適用してもよい。
【0066】
(10)上記実施形態では、分岐管挿入工程S7が取り外し工程S5の後に実行されたが、分岐管挿入工程S7は、取り外し工程S5の前に実行されてもよい。
【0067】
(11)なお、上記実施形態で説明した分割筐体設置方法S10、S20は、吊り工程S1において、第1筐体1と、分岐管P2とを一体とした仮組み体のみを吊ってもよい。この場合、仮締め工程S4、回転工程S6及び分岐管挿入工程S7は省略され、第2筐体2は、既設管P1のZ1側にあらかじめ配置される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、分割筐体設置方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 :第1筐体
1h :開口部
2 :第2筐体
10 :分割筐体
12t :第1割面(第1対向面)
13t :第2割面(第1対向面)
22t :第3割面(第2対向面)
23t :第4割面(第2対向面)
K :吊り金具
K1 :第1吊り金具
K2 :第2吊り金具
K3 :第3吊り金具
P1 :既設管
P2 :分岐管
S :作業機
S1 :吊り工程
S2 :移動工程
S3 :配置工程
S4 :仮締め工程
S6 :回転工程
S7 :分岐管挿入工程
S8 :本締め工程
K1 :第1吊り金具(第1吊り具)
K2 :第2吊り金具(第2吊り具)
K3 :第3吊り金具(第3吊り具)
W :ワイヤ部(線状部材)
W1 :第1ワイヤ
W2 :第2ワイヤ
W3 :第3ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17