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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024923
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/18 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
G01R15/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129308
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】野口 真伍
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】被測定電流の検出精度の低下を抑制する電流検出装置を提供する。
【解決手段】被測定電流を流す電流バーと、前記電流バーの周囲に設けられ、ギャップ部を備える磁性コアと、前記磁性コアの前記ギャップ部に設けられるとともに、互いに直列に接続される、複数のコイル部材を備える検出部と、前記検出部から出力される前記被測定電流の検出信号を処理する信号処理回路と、前記検出部において、前記信号処理回路に接続される前記コイル部材の数を切り替える切替回路と、を備える、電流検出装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流を流す電流バーと、
前記電流バーの周囲に設けられ、ギャップ部を備える磁性コアと、
前記磁性コアの前記ギャップ部に設けられるとともに、互いに直列に接続される、複数のコイル部材を備える検出部と、
前記検出部から出力される前記被測定電流の検出信号を処理する信号処理回路と、
前記検出部において、前記信号処理回路に接続される前記コイル部材の数を切り替える切替回路と、
を備える、電流検出装置。
【請求項2】
前記切替回路は、前記コイル部材の数を切り替えることで、前記検出部の有効巻数を切り替える、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記切替回路は、前記被測定電流が大きくなるにしたがい、前記信号処理回路に接続される前記コイル部材の数を段階的に減らす、請求項1又は請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記切替回路は、複数のアナログスイッチを含み、
前記複数のアナログスイッチのそれぞれのスイッチ動作に応じて、前記信号処理回路に接続される前記コイル部材の数が、切り替わる、請求項1又は請求項2に記載の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流バーを囲む集磁コアを備え、電流バーに流れる被測定電流を検出する電流センサ等の電流検出装置が、知られている。特許文献1には、電流バーを囲む集磁コアに設けられたギャップ部に、第1コイルパターン及び第2コイルパターン等のコイル部材をそれぞれ設けた主基板と補助基板とを有する電流検出装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-48755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流バーに被測定電流が流れると、理論上、被測定電流の電流値及びコイル部材の巻数に比例する誘導電圧が、コイル部材に生じる。コイル部材に誘導電圧が生じることで、被測定電流が検出される。しかしながら、電流バーに流れる被測定電流が低い場合等では、被測定電流の測定精度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、被測定電流の測定精度の低下を抑制する電流検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様では、被測定電流を流す電流バーと、前記電流バーの周囲に設けられ、ギャップ部を備える磁性コアと、前記磁性コアの前記ギャップ部に設けられるとともに、互いに直列に接続される、複数のコイル部材を備える検出部と、前記検出部から出力される前記被測定電流の検出信号を処理する信号処理回路と、前記検出部において、前記信号処理回路に接続される前記コイル部材の数を切り替える切替回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、被測定電流の測定精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電流検出装置の全体構成の一例を示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る電流検出装置の回路構成の一例を示す模式図である。
図3】第1実施形態に係る電流検出装置において、電流バーに流れた被測定電流の電流値と、A/D変換回路に入力される電圧信号の電圧値との関係を示すグラフである。
図4】第2実施形態に係る電流検出装置の回路構成の一例を示す模式図である。
図5】第2実施形態に係る電流検出装置における切替回路の動作の一例を示す模式図である。
図6】第2実施形態に係る電流検出装置における切替回路の動作の他の例を示す模式図である。
図7】第2実施形態に係る電流検出装置における切替回路の動作のさらに他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態に係る電流検出装置1について説明する。なお、「接続」とは、物理的な接続に限られず、電気的な接続の意味を含んでよい。例えば、物体Aが物体Bに接続されるとは、物体Aが物体Bに導電的に(例えば、同電位に)接続される場合に限られず、物体Aが物体Cを介して物体Bに導電的に接続される場合を含んでよい。
【0010】
ここで、各図面において、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示される。X軸に平行な方向をX方向という。本実施形態において、X方向は、電流検出装置1の幅方向に対応する。X方向において、矢印が向いている方向を+X方向といい、+X方向の反対方向を-X方向という。Y軸に平行な方向をY方向という。本実施形態において、Y方向は、電流検出装置1の前後方向に対応する。Y方向において、矢印が向いている方向を+Y方向といい、+Y方向の反対方向を-Y方向という。Z軸に平行な方向をZ方向という。本実施形態において、Z方向は、電流検出装置1の高さ方向に対応する。Z方向において、矢印が向いている方向を+Z方向といい、+Z方向の反対方向を-Z方向という。
【0011】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る電流検出装置1の全体構成の一例を示す。図1は、第1実施形態に係る電流検出装置1の全体構成の一例を示す模式図である。図2は、第1実施形態に係る電流検出装置1の回路構成の一例を示す模式図である。
【0012】
電流検出装置1は、商用の電力系統等の交流電源と、モータ等の負荷との間に配置される。電流検出装置1は、電源から電流検出装置1を通じて負荷へ流れる交流電流を検出する。また、電流検出装置1は、交流電流の検出信号に基づき、交流電流の実効値等の電流値を測定する。なお、以下の説明において、電源から電流検出装置1を通じて負荷へ流れる交流電流を「被測定電流I」という。
【0013】
図1に示すように、電流検出装置1は、電流バー10と、磁性コア20と、検出部30と、信号処理回路60と、切替回路70と、を備える。電流検出装置1は、必要に応じて、他の構成部を備えていてもよい。
【0014】
電流バー10は、被測定電流Iを流す。電流バー10は、電源及び負荷のそれぞれに接続される。図1に示すように、電流バー10は、Y方向に沿って延びる長尺な板状の導体部である。電流バー10の例として、バスバーが挙げられる。ただし、電流バー10の外形は、図1に示すものに限定されない。
【0015】
図1に示すように、磁性コア20は、電流バー10の周囲に設けられる。具体的には、磁性コア20は、電流バー10と非接触な状態で、電流バー10を囲む略環状の外形を有する。磁性コア20の内側には、中空領域が形成される。電流バー10は、磁性コア20の中空領域に挿通される。本実施形態の磁性コア20は、略四角環状の外形を有する。ただし、磁性コア20の外形は、円環状や楕円環状等の他の外形を有してもよい。
【0016】
磁性コア20は、電流バー10に被測定電流Iが流れたことに応じて、電流バー10の周囲に生じた磁束を内部に通す。磁性コア20を構成する物質の例として、集磁作用が大きいFe-Ni系の磁性合金が挙げられる。ただし、磁性コア20を構成する物質は、これに限定されない。
【0017】
磁性コア20は、空間的に不連続なギャップ部21を備える。図1に示すように、本実施形態のギャップ部21は、電流バー10の+Z方向側の面と向き合った位置に設けられている。ただし、ギャップ部21の位置は、これに限定されない。
【0018】
磁性コア20において、ギャップ部21を除く、空間的に連続な領域を、「本体部22」という。本体部22は、ギャップ部21との境界である2つの端面22a,22bのそれぞれを備える。端面22a,22bは、所定の距離を隔てて互いに対向する。端面22aは、ギャップ部21の-X方向側の端部に対応する。端面22bは、ギャップ部21のX方向側の端部に対応する。本実施形態の端面22a,22bのそれぞれは、YZ平面に平行な平面である。ただし、端面22a,22bのそれぞれは、YZ平面に対して傾く斜面や、曲面等、他の外形を有していてもよい。
【0019】
ギャップ部21内の物質は、空気である。したがって、ギャップ部21の透磁率は、空気の透磁率に相当する。空気の透磁率は、真空の透磁率に概ね対応する。すなわち、ギャップ部21の透磁率は、本体部22を構成する磁性体の透磁率に比べて低い。
【0020】
磁性コア20の一部に、本体部22に比べて透磁率の低い空間(ギャップ部21)を設けることで、ギャップ部21及び本体部22を合わせた磁性コア20内の磁気抵抗が、完全に環状な磁性コアの磁気抵抗に比べて高まる。一般に、磁性体内を通過する磁束(磁束密度)は、磁性体内の磁気抵抗に反比例する。したがって、磁性コア20のギャップ部21及び本体部22を通過する磁束密度は、完全に環状な磁性コアを通過する磁束密度に比べて低下する。その結果、電流バー10に流れる被測定電流Iの電流値Ivが大きくても、ギャップ部21及び本体部22を通過する磁束密度が飽和しないため、測定可能な被測定電流Iの電流値Ivが、磁束密度の飽和によって制限される事態を抑制できる。
【0021】
検出部30は、磁性コア20のギャップ部21に設けられる。検出部30は、電流バー10に被測定電流Iが流れたことに応じて、ギャップ部21に生じた磁束密度の変化から、被測定電流Iを検出する。
【0022】
図1に示すように、検出部30は、互いに直列に接続される、複数のコイル部材31を備える。本実施形態の検出部30は、3つのコイル部材31(31a,31b,31c)を備える。ただし、コイル部材31の数は、3つに限定されない。コイル部材31の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0023】
本実施形態において、複数のコイル部材31のそれぞれは、エナメル線等の導線が複数回巻回された空芯の巻線コイルである。ただし、複数のコイル部材31のそれぞれは、例えば、環状の導体パターンを複数含むパターンコイルであってもよい。また、複数のコイル部材31は、巻線コイルとパターンコイルの組み合わせであってもよい。
【0024】
複数のコイル部材31のそれぞれは、物理的に複数の巻数を有することが好ましい。理論上、電流バー10に被測定電流Iが流れたことで、コイル部材31のそれぞれに生じる誘導電圧は、各コイル部材31の巻数に比例する。すなわち、各コイル部材31の巻数を複数とすることで、各コイル部材31における被測定電流Iの検出信号の値を高めることができる。これにより、被測定電流Iの検出精度を高めることができる。各コイル部材31の巻数は、互いに同じであることが好ましい。本実施形態の各コイル部材31は、物理的に複数の巻数Nを有する。ただし、各コイル部材31の巻数は、互いに異なっていてもよい。
【0025】
3つのコイル部材31のそれぞれは、本体部22の端面22a及び端面22bに挟まれた空間内に、X方向に沿って一列に並べられる。図1に示すように、第1コイル部材31aは、検出部30の一端30a側(-X方向側の端部)に配置される。第2コイル部材31bは、第1コイル部材31aの隣に配置される。第3コイル部材31cは、第2コイル部材31bの隣に配置される。本実施形態において、第3コイル部材31cは、検出部30の他端30b側(+X方向側)に配置される。
【0026】
第1コイル部材31a、第2コイル部材31b、及び第3コイル部材31cのそれぞれを構成する巻線は、X方向に沿う軸を中心に、巻回されている。本実施形態の複数のコイル部材31のそれぞれは、本体部22の端面22aから端面22bに架け渡されたボビン等の筒状部材に支持されていてもよい。ボビン等の筒状部材は、複数のコイル部材31の空芯領域に配置される。複数のコイル部材31のそれぞれは、筒状部材を軸に、X方向に沿って連結される。
【0027】
電流バー10に被測定電流Iが流れたことで、電流バー10の周囲に生じた磁束は、磁性コア20のギャップ部21及び本体部22のそれぞれを通過する。また、ギャップ部21を通過した磁束の変化に応じて、複数のコイル部材31のそれぞれに誘導電圧が生じる。検出部30は、コイル部材31に生じた誘導電圧を通じて、電流バー10に流れた被測定電流Iを検出する。
【0028】
別途図2を参照して説明するように、信号処理回路60に接続されるコイル部材31の数は、切替回路70によって切り替えられる。それに伴い、被測定電流Iを検出するために用いられるコイル部材31の数は、切り替わる。検出部30は、被測定電流Iを検出するために用いられるコイル部材31の数に応じた誘導電圧に対応する電圧信号S1を出力する。なお、電圧信号S1は、「検出部30から出力される被測定電流Iの検出信号」の一例である。
【0029】
ここで、「信号処理回路60に接続されるコイル部材31の数」とは、信号処理回路60及び切替回路70とともに、閉路を構成するコイル部材31の数をいう。本実施形態の場合、積分回路61は、信号処理回路60の中で、回路構成上、検出部30に最も近い回路である。そのため、「積分回路61に接続されるコイル部材31の数」と記載する事項は、「信号処理回路60に接続されるコイル部材31の数」と同義の事項である。
【0030】
被測定電流Iを検出するために、第1コイル部材31a、第2コイル部材31b、及び第3コイル部材31cの3つのコイル部材31が用いられる場合、検出部30は、3つのコイル部材31のそれぞれに生じた誘導電圧の和に対応する電圧信号S1を出力する。すなわち、検出部30は、3つのコイル部材31の合計巻数「3N」に概ね比例した誘導電圧に対応する電圧信号S1を出力する。
【0031】
被測定電流Iを検出するために、第1コイル部材31a、及び第2コイル部材31bの2つのコイル部材31が用いられる場合、検出部30は、2つのコイル部材31のそれぞれに生じた誘導電圧の和に対応する電圧信号S1を出力する。すなわち、検出部30は、2つのコイル部材31の合計巻数「2N」に概ね比例した誘導電圧に対応する電圧信号S1を出力する。
【0032】
被測定電流Iを検出するために、第1コイル部材31a(単一のコイル部材31)が用いられる場合、検出部30は、単一のコイル部材31に生じた誘導電圧に対応する電圧信号S1を出力する。すなわち、検出部30は、単一のコイル部材31の巻数「N」に概ね比例した誘導電圧に対応する電圧信号S1を出力する。
【0033】
検出部30において、信号処理回路60(積分回路61)に接続されるコイル部材31の数に応じた巻数を、以下「有効巻数」という。例えば、第1コイル部材31a、第2コイル部材31b、及び第3コイル部材31cの3つのコイル部材31が、積分回路61に接続される場合、検出部30の有効巻数は、「3N」である。また、第1コイル部材31a及び第2コイル部材31bの2つのコイル部材31が、積分回路61に接続される場合、検出部30の有効巻数は、「2N」である。また、第1コイル部材31aが、積分回路61に接続される場合、検出部30の有効巻数は、「N」である。
【0034】
信号処理回路60は、検出部30から出力された電圧信号S1を処理する回路である。図2に示すように、本実施形態の信号処理回路60は、積分回路61と、増幅回路62と、A/D変換回路63と、演算処理回路64と、を備える。信号処理回路60は、必要に応じて、他の回路を備えてもよい。
【0035】
積分回路61は、第1入力端子61aと、第2入力端子61bと、出力端子61cと、を備える。積分回路61の第1入力端子61aは、「信号処理回路60の第1入力端子」に対応する。積分回路61の第2入力端子61bは、「信号処理回路60の第2入力端子」に対応する。
【0036】
積分回路61の第1入力端子61aは、第1コイル部材31aの一端31a1(-X方向側の端部)に直接接続される。第1コイル部材31aの一端31a1は、検出部30の一端30aに対応する。
【0037】
積分回路61の第2入力端子61bは、第1コイル部材31aの他端31a2(+X方向側の端部)、第2コイル部材31bの他端31b2(+X方向側の端部)、又は、第3コイル部材31cの他端31c2(+X方向側の端部)のいずれか1箇所に接続される。積分回路61の第2入力端子61bに接続されるコイル部材31は、切替回路70によって、切り替えられる。
【0038】
積分回路61の第1入力端子61aが、第1コイル部材31aの一端31a1に接続され、積分回路61の第2入力端子61bが、第3コイル部材31cの他端31c2に接続される場合、積分回路61及び切替回路70とともに、閉路を構成するコイル部材31の数は、第1コイル部材31a、第2コイル部材31b、及び第3コイル部材31cの3つである。
【0039】
積分回路61の第1入力端子61aが、第1コイル部材31aの一端31a1に接続され、積分回路61の第2入力端子61bが、第2コイル部材31bの他端31b2に接続される場合、積分回路61及び切替回路70とともに、閉路を構成するコイル部材31の数は、第1コイル部材31a及び第2コイル部材31bの2つである。
【0040】
積分回路61の第1入力端子61aが、第1コイル部材31aの一端31a1に接続され、積分回路61の第2入力端子61bが、第1コイル部材31aの他端31a2に接続される場合、積分回路61及び切替回路70とともに、閉路を構成するコイル部材31の数は、第1コイル部材31aの1つである。
【0041】
積分回路61は、検出部30から出力された電圧信号S1を積分する。例えば、積分回路61の第1入力端子61aが、第1コイル部材31aの一端31a1に接続され、積分回路61の第2入力端子61bが、第3コイル部材31cの他端31c2に接続される場合、積分回路61は、検出部30の有効巻数「3N」に比例した誘導電圧に対応する電圧信号S1を積分する。
【0042】
また、積分回路61の第1入力端子61aが、第1コイル部材31aの一端31a1に接続され、積分回路61の第2入力端子61bが、第2コイル部材31bの他端31b2に接続される場合、積分回路61は、検出部30の有効巻数「2N」に比例した誘導電圧に対応する電圧信号S1を積分する。
【0043】
また、積分回路61の第1入力端子61aが、第1コイル部材31aの一端31a1に接続され、積分回路61の第2入力端子61bが、第1コイル部材31aの他端31a2に接続される場合、積分回路61は、検出部30の有効巻数「N」に比例した誘導電圧に対応する電圧信号S1を積分する。
【0044】
積分回路61は、検出部30から出力された各種の電圧信号S1を積分した結果、電流バー10に流れた被測定電流Iに対応する波形の電圧信号S2を生成する。積分回路61は、出力端子61cを通じて、増幅回路62に接続される。積分回路61は、電圧信号S2を増幅回路62に出力する。
【0045】
増幅回路62は、積分回路61から出力された電圧信号S2を増幅する。本実施形態の増幅回路62は、一定の増幅率Gを用いて、積分回路61から出力された電圧信号S2を増幅する。これにより、増幅回路62は、電圧信号S3を生成する。増幅回路62は、電圧信号S3を、A/D変換回路63に出力する。
【0046】
ところで、電流検出装置1には、測定結果の信頼性を保証する、被測定電流Iの測定許容範囲Raが設定される場合がある。被測定電流Iの電流値Ivが、測定許容範囲Raの上限値Imaxであるとき、積分回路61は、電圧値Vmaxに対応する電圧信号S2を、増幅回路62に出力する。また、増幅回路62は、増幅率Gに基づき、電圧信号S2を増幅する。すなわち、増幅回路62は、「Vmax×G」の電圧信号S3を生成し、A/D変換回路63に出力する。ここで、A/D変換回路63には、入力電圧に関する最大電圧が設定されている。したがって、増幅回路62の増幅率Gは、A/D変換回路63に出力される電圧信号S3の電圧値「Vmax×G」が、A/D変換回路63への入力が許容される最大電圧を超えないように、調整される。
【0047】
A/D変換回路63は、増幅回路62から出力された電圧信号S3のサンプリング、量子化、及び符号化のそれぞれの処理を実行する。これにより、A/D変換回路63は、増幅回路62から出力された電圧信号をデジタル信号S4に変換する。A/D変換回路63は、デジタル信号S4を演算処理回路64に出力する。
【0048】
演算処理回路64は、各種の演算処理を実行する。本実施形態の演算処理回路64は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUで実行されるプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等を含む。なお、演算処理回路64は、CPUと同様の機能を有する他の電子回路であってもよい。
【0049】
演算処理回路64は、A/D変換回路63から出力されたデジタル信号S4に基づき、電流バー10に流れた被測定電流Iの電流実効値を演算する。これにより、演算処理回路64は、被測定電流Iの電流値Ivを測定する。ただし、演算処理回路64は、A/D変換回路63から出力されたデジタル信号S4に基づき、電流バー10に流れた被測定電流Iの最大値や平均値を演算してもよい。
【0050】
演算処理回路64は、被測定電流Iの電流値Ivに応じて、複数のコイル部材31のうち、積分回路61の第2入力端子61bに接続されるコイル部材31を切り替える制御信号CKを、切替回路70に出力する。
【0051】
例えば、被測定電流Iが、測定許容範囲Raの下限値Iminや、下限値Iminの近傍の、相対的に小さな電流である場合、演算処理回路64は、第3コイル部材31cの他端31c2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続するための制御信号CKを、切替回路70に出力する。切替回路70は、第3コイル部材31cの他端31c2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続する。これにより、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、3つとなり、検出部30の有効巻数が、「3N」となる。その結果、検出部30は、有効巻数3N(最も多い有効巻数)に応じた高い誘導電圧を反映した電圧信号S1を出力することができる。すなわち、積分回路61、増幅回路62、A/D変換回路63、及び演算処理回路64は、高い誘導電圧を反映した電圧信号S1に由来する各種電圧信号S2,S3,S4を処理することができる。したがって、信号処理回路60(演算処理回路64)における被測定電流Iの測定精度を高めることができる。
【0052】
これに対して、例えば、被測定電流Iが、測定許容範囲Raの上限値Imaxや、上限値Imaxの近傍の、相対的に大きな電流である場合、演算処理回路64は、第1コイル部材31aの他端31a2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続するための制御信号CKを、切替回路70に出力する。切替回路70は、第1コイル部材31aの他端31a2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続する。これにより、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、1つとなり、検出部30の有効巻数が、「N」となる。その結果、検出部30は、有効巻数「N」(最も少ない有効巻数)に応じた誘導電圧を反映した電圧信号S1を出力することができる。すなわち、検出部30から出力される電圧信号S1が過度に高まることが抑制される。その結果、例えば、積分回路61、増幅回路62、A/D変換回路63、及び演算処理回路64の少なくとも1つの回路に、入力電圧等の制限が設けられていても、電圧信号S1に由来する各種電圧信号S2,S3,S4が、入力電圧等の制限を超えることなく、適切に処理される。
【0053】
また、例えば、被測定電流Iが、測定許容範囲Raの中間的な電流である場合、演算処理回路64は、第2コイル部材31bの他端31b2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続するための制御信号CKを、切替回路70に出力する。切替回路70は、第2コイル部材31bの他端31b2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続する。これにより、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、2つとなり、検出部30の有効巻数が、「2N」となる。その結果、検出部30は、有効巻数2N(中間的な有効巻数)に応じた比較的高い誘導電圧を反映した電圧信号S1を出力することができる。これにより、検出部30は、有効巻数2Nに応じた比較的高い誘導電圧を反映した電圧信号S1を出力することができる。それに加えて、検出部30から出力される電圧信号S1が過度に高まることを抑制することができる。
【0054】
切替回路70は、信号処理回路60に接続されるコイル部材31の数を切り替える。本実施形態の切替回路70は、複数のコイル部材31のうち、積分回路61の第2入力端子61bに接続されるコイル部材31を切り替えることで、積分回路61に接続されるコイル部材31の数を切り替える。
【0055】
本実施形態の切替回路70は、マルチプレクサ等のセレクタ回路である。ただし、切替回路70は、積分回路61の第2入力端子61bに接続される、検出部30の接続箇所を切り替え可能な回路であれば、マルチプレクサに限定されない。
【0056】
図2に示すように、本実施形態の切替回路70は、第1コイル部材31aの他端31a2、第2コイル部材31bの他端31b2、及び第3コイル部材31cの他端31c2に、それぞれ接続される複数の入力端子71(71a,71b,71c)と、積分回路61の第2入力端子61bに接続される出力端子72と、を備える。入力端子71aは、第3コイル部材31cの他端31c2に接続される。入力端子71bは、第2コイル部材31bの他端31b2に接続される。入力端子71cは、第1コイル部材31aの他端31a2に接続される。入力端子71の数は、コイル部材31の数に応じて、増減する。
【0057】
切替回路70は、出力端子72に接続される入力端子71を選択するセレクタ73(制御端子)をさらに備える。本実施形態のセレクタ73は、信号処理回路60の演算処理回路64から出力される制御信号CKに応じて、出力端子72へ電圧信号S1を伝送する入力端子71を選択する。言い換えれば、セレクタ73は、第1コイル部材31aの他端31a2、第2コイル部材31bの他端31b2、及び第3コイル部材31cの他端31c2のうち、積分回路61の第2入力端子61bに接続される検出部30の接続箇所を切り替える。ただし、セレクタ73を制御する構成部は、演算処理回路64に限定されない。
【0058】
<動作>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る電流検出装置1の動作を説明する。図3は、電流バー10に流れた被測定電流Iの電流値Ivと、A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値との関係を示すグラフである。A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値は、増幅回路62からA/D変換回路63に出力される電圧信号S3と言い換えてもよい。
【0059】
図3に示す実線は、本実施形態において、被測定電流Iの電流値Ivと、A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値との関係を示す。説明の便宜上、図3に示す例では、各コイル部材31の物理的な巻数Nを「1」としている。すなわち、検出部30の物理的な巻数を「3」とする。これに対して、図3に示す破線は、検出部が単一のコイル部材31を備える比較例に関する、被測定電流Iの電流値Ivと、A/D変換回路63に入力される電圧信号の電圧値との関係を示す。比較例における検出部の物理的な巻数を「1」とする。
【0060】
図3の横軸は、電流バー10に流れた被測定電流Iの電流値Ivを示す。なお、「電流バー10に流れた被測定電流Iの電流値Iv」を、以下、「被測定電流I」という。また、図3の横軸に示される「Imin」は、電流検出装置1に設定された、被測定電流Iの測定許容範囲Raにおける電流の下限値である。以下、被測定電流Iの測定許容範囲Raにおける電流の下限値を、「下限値Imin」、又は「Imin」という。図3の横軸に示される「Imax」は、被測定電流Iの測定許容範囲Raにおける電流の上限値である。以下、被測定電流Iの測定許容範囲Raにおける電流の上限値を、「上限値Imax」、又は「Imax」という。
【0061】
図3の縦軸に示される「Vmax×G」は、電圧信号S3において、A/D変換回路63への入力が許容される最大の電圧値である。ここで、「Vmax」は、積分回路61から増幅回路62に出力された電圧信号S2の最大の電圧値を示す。「G」は、増幅回路62の増幅率を示す。
【0062】
被測定電流Iが、測定許容範囲Raのうちの下限値Iminを含む第1範囲Ra1にある場合、演算処理回路64は、第3コイル部材31cの他端31c2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続するための制御信号CKを、切替回路70に出力する。切替回路70は、演算処理回路64から出力された制御信号CKに応じて、第3コイル部材31cの他端31c2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続する。これにより、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、3つとなり、検出部30の有効巻数は、「3」となる。積分回路61は、有効巻数「3」の検出部30から出力された電圧信号S1を処理する。なお、第1範囲Ra1の一例として、被測定電流Iが、「I=0」~「I=(Imax/3)」の電流範囲が挙げられる。
【0063】
第1範囲Ra1において、検出部30の有効巻数は、「3」であるため、検出部30に生じる誘導電圧は、有効巻数が「1」の比較例の検出部に生じる誘導電圧に比べて、約3倍高い。すなわち、検出部30から出力される電圧信号S1の電圧値は、比較例の検出部から生じる電圧信号の電圧値に比べて、約3倍高い。
【0064】
本実施形態の検出部30から出力された電圧信号と、比較例の検出部から出力された電圧信号とは、それぞれ、積分回路61及び増幅回路62を通じて、A/D変換回路63に入力される。すなわち、本実施形態では、第1範囲Ra1において、A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値を、比較例に比べて、約3倍高められる。その結果、高い電圧値を反映した電圧信号を、A/D変換回路63及び演算処理回路64に入力することができる。これにより、A/D変換回路63における分解能やS/N比を高められ、演算処理回路64における被測定電流Iの測定精度を高められる。
【0065】
これに対して、被測定電流Iが、例えば、「I=(Imax/3)」を超える場合、A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値は、「Vmax×G」を超える。すなわち、検出部30の有効巻数を「3」とすると、「I=(Imax/3)」を超えた被測定電流Iに基づく電圧信号S3を、A/D変換回路63に入力することができない。このとき、演算処理回路64は、被測定電流Iの測定値が、第1切替値SV1(例えば、I=(Imax/3))を超えたと判定し、検出部30の有効巻数を「3」から「2」に切り替えるための制御信号CKを、切替回路70に出力する。すなわち、演算処理回路64は、第2コイル部材31bの他端31b2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続するための制御信号CKを、切替回路70に出力する。なお、検出部30の有効巻数を「2」に切り替えて、測定される被測定電流Iの範囲を、第2範囲Ra2とする。第2範囲Ra2の一例として、被測定電流Iが、「I=(Imax/3)」~「I=(Imax/2)」の電流範囲が挙げられる。なお、「第2範囲Ra2」は、「被測定電流Iが、測定許容範囲Raのうち、下限値Iminを含む電流範囲と、上限値Imaxを含む電流範囲との間の電流範囲」の一例である。
【0066】
切替回路70は、演算処理回路64から出力された制御信号CKに応じて、第2コイル部材31bの他端31b2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続する。これにより、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、3つから2つに減少する。それに伴い、検出部30の有効巻数が、「3」から「2」へ減少する。その結果、A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値は、「Vmax×G」より低い値となる。したがって、A/D変換回路63は、電圧信号S3を処理することできる。また、演算処理回路64は、A/D変換回路63から出力される電圧信号S4に基づき、被測定電流Iを測定することができる。
【0067】
第2範囲Ra2において、検出部30の有効巻数は、「2」であるため、検出部30に生じる誘導電圧は、有効巻数が「1」の比較例の検出部に生じる誘導電圧に比べて、約2倍高い。すなわち、第2範囲Ra2において、検出部30から出力される電圧信号S1の電圧値は、比較例の検出部から生じる電圧信号の電圧値に比べて、約2倍高い。すなわち、第2範囲Ra2において、A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値は、比較例に比べて、約2倍高い。その結果、第2範囲Ra2においても、高い電圧値を反映した電圧信号を、A/D変換回路63及び演算処理回路64に入力することができる。これにより、A/D変換回路63における分解能やS/N比を高められ、演算処理回路64における被測定電流Iの測定精度を高められる。
【0068】
これに対して、被測定電流Iが、例えば、「I=(Imax/2)」を超える場合、A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値は、「Vmax×G」を超える。すなわち、検出部30の有効巻数を「2」とすると、「I=(Imax/2)」を超えた被測定電流Iに基づく電圧信号S3を、A/D変換回路63に入力することができない。このとき、演算処理回路64は、被測定電流Iの測定値が、第2切替値SV2(例えば、I=(Imax/2))を超えたと判定し、検出部30の有効巻数を「2」から、「1」に切り替えるための制御信号CKを、切替回路70に出力する。すなわち、演算処理回路64は、第1コイル部材31aの他端31a2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続するための制御信号CKを、切替回路70に出力する。なお、検出部30の有効巻数を「1」に切り替えて、測定される被測定電流Iの範囲を、第3範囲Ra3とする。第3範囲Ra3は、測定許容範囲Raの上限値Imaxを含む。第3範囲Ra3の一例として、被測定電流Iが、「I=(Imax/2)」~「I=Imax」の電流範囲が挙げられる。「第3範囲Ra3」は、「被測定電流Iが、測定許容範囲Raのうちの上限値Imaxを含む電流範囲」の一例である。
【0069】
切替回路70は、演算処理回路64から出力された制御信号CKに応じて、第1コイル部材31aの他端31a2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続する。これにより、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、3つから2つに減少する。それに伴い、検出部30の有効巻数が、「2」から「1」へ減少する。その結果、A/D変換回路63に入力される電圧信号S3の電圧値は、「Vmax×G」より低い値となる。したがって、A/D変換回路63は、電圧信号S3を処理することでき、演算処理回路64は、被測定電流Iが、「I=(Imax/2)」を超えた場合であっても、被測定電流Iを継続して測定することができる。
【0070】
第3範囲Ra3において、検出部30の有効巻数と、比較例の検出部の有効巻数は、ともに「1」である。したがって、本実施形態のA/D変換回路63に入力される電圧信号S3は、比較例において、A/D変換回路63に入力される電圧信号とほぼ同様となる。第3範囲Ra3の被測定電流Iは、測定許容範囲Raの中で、最も高い。すなわち、第3範囲Ra3においても、高い電圧値を反映した電圧信号を、A/D変換回路63及び演算処理回路64に入力することができる。これにより、A/D変換回路63における分解能やS/N比を高められ、演算処理回路64における被測定電流Iの測定精度を高められる。なお、第1切替値SV1は、「Imax/3」に限定されない。また、第2切替値SV2は、「Imax/2」に限定されない。
【0071】
検出部30において、コイル部材31の数が4つ以上の場合も、同様の説明が成り立つ。この場合に関しても、切替回路70は、被測定電流Iが大きくなるにしたがい、積分回路61に接続されるコイル部材31の数を段階的に減らす。切替回路70におけるこれらのスイッチ動作は、演算処理回路64から出力された制御信号CKに基づくものであってもよい。
【0072】
<作用効果>
本実施形態によれば、切替回路70が、信号処理回路60に接続されるコイル部材の数を切り替える。例えば、被測定電流Iの電流値Ivが相対的に小さい場合、切替回路70は、信号処理回路60に接続されるコイル部材31の数を多くする。これにより、検出部30は、有効巻数の多い状態で、被測定電流Iを検出することができる。その結果、被測定電流Iの電流値Ivが相対的に小さくても、高い電圧値を反映した電圧信号を、信号処理回路60のA/D変換回路63及び演算処理回路64に入力することができる。したがって、信号処理回路60における被測定電流Iの測定精度を高められる。
【0073】
一方、被測定電流Iの電流値Ivが相対的に大きい場合、検出部30には、有効巻数によらず、比較的高い誘導電圧が生じる。すなわち、信号処理回路60に接続されるコイル部材31の数が少なくても、高い電圧値を反映した電圧信号を、信号処理回路60のA/D変換回路63及び演算処理回路64に入力することができる。したがって、信号処理回路60における被測定電流Iの測定精度を高められる。被測定電流Iの電流値Ivが中間的な場合に関しても同様である。これらのことから、本実施形態によれば、被測定電流Iの電流値に関わらず、被測定電流Iの測定精度を高められる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、図4を参照して、第2実施形態に係る電流検出装置1Aの回路構成の一例を示す。図4は、第2実施形態に係る電流検出装置1Aの回路構成の一例を示す模式図である。ただし、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成部に関しては、適宜説明を省略する。
【0075】
第2実施形態に係る電流検出装置1Aは、電流バー10と、磁性コア20と、検出部30と、信号処理回路60と、切替回路80と、を備える。本実施形態において、切替回路80の構成が、第1実施形態の切替回路70の構成と異なる。
【0076】
本実施形態の切替回路80は、複数のアナログスイッチ81を備える。複数のアナログスイッチ81のそれぞれのスイッチ動作に応じて、信号処理回路60に接続されるコイル部材31の数が、切り替わる。
【0077】
図4に示すように、切替回路80は、コイル部材31の数を「m」(ただし、「m」は、2以上の正の整数)とする場合に、(2m-1)個のアナログスイッチ81を備える。また、切替回路80は、(2m-1)個の入力端子82と、(2m-1)個の出力端子83と、複数のアナログスイッチ81の動作を制御する制御部(制御端子)89と、をさらに備える。制御部89は、演算処理回路64から出力される制御信号CKを通じて、複数のアナログスイッチ81を制御してもよい。
【0078】
本実施形態のコイル部材31の数は、「3」であるため、切替回路80は、5個のアナログスイッチ81a,81b,81c,81d,81eと、5個の入力端子82a,82b,82c、82d,82eと、5個の出力端子83a,83b,83c、83d,83eと、をそれぞれ備える。
【0079】
入力端子82aは、配線85aを通じて、第1コイル部材31aの他端31a2に接続される。入力端子82bは、配線85bを通じて、第1コイル部材31aの他端31a2に接続される。入力端子82cは、配線85cを通じて、第2コイル部材31bの他端31b2に接続される。入力端子82dは、配線85dを通じて、第2コイル部材31bの他端31b2に接続される。入力端子82eは、配線85eを通じて、第3コイル部材31cの他端31c2に接続される。
【0080】
出力端子83aは、配線86aを通じて、第2コイル部材31bの一端31b1に接続される。出力端子83bは、配線86bを通じて、積分回路61の第2入力端子61bに接続される。出力端子83cは、配線86cを通じて、第3コイル部材31cの一端31c1に接続される。出力端子83dは、配線86dを通じて、積分回路61の第2入力端子61bに接続される。出力端子83eは、配線86eを通じて、積分回路61の第2入力端子61bに接続される。なお、第1コイル部材31aの一端31a1は、積分回路61の第1入力端子61aに接続される。
【0081】
アナログスイッチ81aの開閉に応じて、入力端子82aと出力端子83aとの接続/非接続が切り替わる。アナログスイッチ81bの開閉に応じて、入力端子82bと出力端子83bとの接続/非接続が切り替わる。アナログスイッチ81cの開閉に応じて、入力端子82cと出力端子83cとの接続/非接続が切り替わる。アナログスイッチ81dの開閉に応じて、入力端子82dと出力端子83dとの接続/非接続が切り替わる。アナログスイッチ81eの開閉に応じて、入力端子82eと出力端子83eとの接続/非接続が切り替わる。
【0082】
<動作>
次に、図5図7を参照して、本実施形態に係る電流検出装置1Aにおける切替回路80の動作を説明する。
【0083】
まず、図5を参照して、切替回路80が、第3コイル部材31cの他端31c2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続し、3つのコイル部材31を積分回路61に接続する動作について説明する。ここで、図5に示される2点鎖線は、検出部30から積分回路61に出力される電圧信号S1の信号経路を示す。
【0084】
図5に示すように、切替回路80は、演算処理回路64から出力された制御信号CKに基づき、アナログスイッチ81a,81c、81eのそれぞれを閉じる。アナログスイッチ81aは、入力端子82aと出力端子83aとを接続する。アナログスイッチ81cは、入力端子82cと出力端子83cとを接続する。アナログスイッチ81eは、入力端子82eと出力端子83eとを接続する。これにより、第1コイル部材31a、第2コイル部材31b、第3コイル部材31c、切替回路80及び積分回路61を含む閉路が形成される。その結果、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、3つになる。
【0085】
次に、図6を参照して、切替回路80が、第2コイル部材31bの他端31b2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続し、2つのコイル部材31を積分回路61に接続する動作について説明する。ここで、図6に示される2点鎖線は、検出部30から積分回路61に出力される電圧信号S1の信号経路を示す。
【0086】
図6に示すように、切替回路80は、演算処理回路64から出力された制御信号CKに基づき、アナログスイッチ81a,81dのそれぞれを閉じる。アナログスイッチ81aは、入力端子82aと出力端子83aとを接続する。アナログスイッチ81dは、入力端子82dと出力端子83dとを接続する。これにより、第1コイル部材31a、第2コイル部材31b、切替回路80及び積分回路61を含む閉路が形成される。その結果、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、2つになる。
【0087】
次に、図7を参照して、切替回路80が、第1コイル部材31aの他端31a2と積分回路61の第2入力端子61bとを接続し、単一のコイル部材31を積分回路61に接続する動作について説明する。ここで、図7に示される2点鎖線は、検出部30から積分回路61に出力される電圧信号S1の信号経路を示す。
【0088】
図7に示すように、切替回路80は、演算処理回路64から出力された制御信号CKに基づき、アナログスイッチ81bを閉じる。アナログスイッチ81bは、入力端子82bと出力端子83bとを接続する。これにより、第1コイル部材31a、切替回路80及び積分回路61を含む閉路が形成される。その結果、積分回路61に接続されるコイル部材31の数が、1つになる。
【0089】
<作用効果>
本実施形態の切替回路80によれば、複数の入力端子82のそれぞれに入力される入力信号が、異なるアナログスイッチ81を通じて、異なる出力端子83から出力される。これにより、任意の入力端子82に入力された電圧信号S1が、本来の経路とは異なる経路に混信するクロストーク等の不具合を抑制できる。その結果、電圧信号S1のノイズを抑制できる。また、第2コイル部材31bは、開状態にある複数のアナログスイッチ81によって、信号処理回路60から遮断される。同様に、第3コイル部材31cは、開状態にある複数のアナログスイッチ81によって、信号処理回路60から遮断される。これにより、第2コイル部材31b及び第3コイル部材31cに関しては、さらに、オフアイソレーションを向上させることができる。本実施形態における他の作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0090】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、信号処理回路に接続されるコイル部材の数を切り替える切替回路は、マルチプレクサやアナログスイッチとは異なる構成を備える回路であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 電流検出装置
10 電流バー
20 磁性コア
21 ギャップ部
22 本体部
30 検出部
31 コイル部材
31a 第1コイル部材
31b 第2コイル部材
31c 第3コイル部材
60 信号処理回路
61 積分回路
62 増幅回路
63 A/D変換回路
64 演算処理回路
70,80 切替回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7