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特開2025-24930避難シミュレーションシステム及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024930
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】避難シミュレーションシステム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20250214BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20250214BHJP
   G06F 3/04815 20220101ALI20250214BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G06T19/00 300A
G06F3/04815
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129321
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊成
(72)【発明者】
【氏名】池畠 由華
(72)【発明者】
【氏名】馬場 重彰
(72)【発明者】
【氏名】道越 真太郎
【テーマコード(参考)】
5B050
5E555
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050CA07
5B050EA07
5B050EA12
5B050EA19
5B050FA05
5B050FA10
5E555AA27
5E555BA02
5E555BA87
5E555BB02
5E555BC21
5E555BD01
5E555BE17
5E555DB32
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】 仮想空間において臨場感のある避難訓練を実現すること。
【解決手段】 避難シミュレーションシステムは、サーバ装置と、前記サーバ装置と通信する通信装置とを有する避難シミュレーションシステムであって、前記サーバ装置は、空間データを用いた空間モデリングにより仮想空間を構築するモデリング部と、避難者データに基づいて避難をする避難者の行動をシミュレートし、前記モデリング部によって構築された仮想空間に前記避難者の画像及び音声を合成する避難シミュレート部と、前記避難シミュレート部によって前記避難者の画像及び音声が合成された仮想空間の画像情報及び音声情報を前記通信装置へ送信する送信部とを有し、前記通信装置は、前記サーバ装置から送信される仮想空間の画像情報及び音声情報を受信する受信部と、前記受信部によって受信される画像情報及び音声情報を出力する出力部とを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ装置と、前記サーバ装置と通信する通信装置とを有する避難シミュレーションシステムであって、
前記サーバ装置は、
空間データを用いた空間モデリングにより仮想空間を構築するモデリング部と、
避難者データに基づいて避難をする避難者の行動をシミュレートし、前記モデリング部によって構築された仮想空間に前記避難者の画像及び音声を合成する避難シミュレート部と、
前記避難シミュレート部によって前記避難者の画像及び音声が合成された仮想空間の画像情報及び音声情報を前記通信装置へ送信する送信部とを有し、
前記通信装置は、
前記サーバ装置から送信される仮想空間の画像情報及び音声情報を受信する受信部と、
前記受信部によって受信される画像情報及び音声情報を出力する出力部とを有する
避難シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、
災害データに基づいて災害をシミュレートし、前記モデリング部によって構築された仮想空間に前記災害の画像及び音声を合成する災害シミュレート部をさらに有する
請求項1に記載の避難シミュレーションシステム。
【請求項3】
前記サーバ装置は、
前記モデリング部によって構築された仮想空間に設置される誘導指示の表示及び非表示を制御する誘導指示制御部をさらに有する
請求項1に記載の避難シミュレーションシステム。
【請求項4】
前記サーバ装置は、
前記モデリング部によって構築された仮想空間内をユーザによる操作に応じて移動するアバターを制御するアバター制御部をさらに有する
請求項1に記載の避難シミュレーションシステム。
【請求項5】
前記アバター制御部は、
ユーザによる選択に従って当該ユーザに対応するアバターの属性を設定し、アバターの行動を属性に応じて制限するように設定する
請求項4に記載の避難シミュレーションシステム。
【請求項6】
前記サーバ装置は、
前記アバターの仮想空間内における移動ログを出力する制御部をさらに有する
請求項4に記載の避難シミュレーションシステム。
【請求項7】
空間データを用いた空間モデリングにより仮想空間を構築するモデリング部と、
避難者データに基づいて避難をする避難者の行動をシミュレートし、前記モデリング部によって構築された仮想空間に前記避難者の画像及び音声を合成する避難シミュレート部と、
前記避難シミュレート部によって前記避難者の画像及び音声が合成された仮想空間の画像情報及び音声情報を送信する送信部と
を有する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難シミュレーションシステム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク上に構築される仮想空間(「メタバース」とも呼ばれる)を用いた様々なサービスが提供されている。例えば、建物や施設などにおいて災害が発生した状況をメタバース上に再現し、ユーザがアバターと呼ばれる自身の分身を遠隔操作することにより、疑似的に避難訓練をすることなどが実現されている。このような避難訓練システムにおいては、複数のユーザがそれぞれ同時にアバターを操作し、ユーザ間で互いの音声が聞こえるようにすることも検討されている。
【0003】
しかしながら、従来の避難訓練システムにおいては、参加するユーザが少ない場合に臨場感のある避難訓練を実行することが困難であるという問題がある。具体的には、例えば商業施設などにおいて実際に避難する場合には、多くの避難者が避難する状況での避難が想定されるが、メタバースを用いた避難訓練では、同時に参加するユーザ数にも限界があり、群衆がいる状況での訓練をすることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-79199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、仮想空間において臨場感のある避難訓練を実現することができる避難シミュレーションシステム及び情報処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、避難シミュレーションシステムは、サーバ装置と、前記サーバ装置と通信する通信装置とを有する避難シミュレーションシステムであって、前記サーバ装置は、空間データを用いた空間モデリングにより仮想空間を構築するモデリング部と、避難者データに基づいて避難をする避難者の行動をシミュレートし、前記モデリング部によって構築された仮想空間に前記避難者の画像及び音声を合成する避難シミュレート部と、前記避難シミュレート部によって前記避難者の画像及び音声が合成された仮想空間の画像情報及び音声情報を前記通信装置へ送信する送信部とを有し、前記通信装置は、前記サーバ装置から送信される仮想空間の画像情報及び音声情報を受信する受信部と、前記受信部によって受信される画像情報及び音声情報を出力する出力部とを有する。
【0007】
この構成によれば、ユーザが操作するアバターとは異なる避難者が多数いる状況を仮想空間に創出することができ、仮想空間において臨場感のある避難訓練を実現することができる。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、前記サーバ装置は、災害データに基づいて災害をシミュレートし、前記モデリング部によって構築された仮想空間に前記災害の画像及び音声を合成する災害シミュレート部をさらに有する。
【0009】
この構成によれば、災害が発生している状況を仮想空間に創出することができ、現実に近い避難訓練を実現することができる。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、前記サーバ装置は、前記モデリング部によって構築された仮想空間に設置される誘導指示の表示及び非表示を制御する誘導指示制御部をさらに有する。
【0011】
この構成によれば、仮想空間での避難訓練により、避難時の誘導指示の効果を確認することができる。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、前記サーバ装置は、前記モデリング部によって構築された仮想空間内をユーザによる操作に応じて移動するアバターを制御するアバター制御部をさらに有する。
【0013】
この構成によれば、仮想空間にアバターを配置して、第三者視点での避難訓練を実現することができる。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、前記アバター制御部は、ユーザによる選択に従って当該ユーザに対応するアバターの属性を設定し、アバターの行動を属性に応じて制限するように設定する。
【0015】
この構成によれば、例えば避難困難者や救助者などの観点で災害発生時の行動を疑似体験することができる。
【0016】
また、本発明の他の一態様によれば、前記サーバ装置は、前記アバターの仮想空間内における移動ログを出力する制御部をさらに有する。
【0017】
この構成によれば、避難訓練における避難時の行動を評価し、現実の避難における問題改善に資することができる。
【0018】
また、本発明の他の一態様によれば、情報処理装置は、空間データを用いた空間モデリングにより仮想空間を構築するモデリング部と、避難者データに基づいて避難をする避難者の行動をシミュレートし、前記モデリング部によって構築された仮想空間に前記避難者の画像及び音声を合成する避難シミュレート部と、前記避難シミュレート部によって前記避難者の画像及び音声が合成された仮想空間の画像情報及び音声情報を送信する送信部とを有する。
【0019】
この構成によれば、ユーザが操作するアバターとは異なる避難者が多数いる状況を仮想空間に創出することができ、仮想空間において臨場感のある避難訓練を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、仮想空間において臨場感のある避難訓練を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、一実施の形態に係る避難シミュレーションシステムの構成を示す図である。
図2図2は、一実施の形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、一実施の形態に係る避難訓練方法を示すシーケンス図である。
図4図4は、表示画面の一例を示す図である。
図5図5は、表示画面の他の一例を示す図である。
図6図6は、表示画面のさらに他の一例を示す図である。
図7図7は、表示画面のさらに他の一例を示す図である。
図8図8は、表示画面のさらに他の一例を示す図である。
図9図9は、表示画面のさらに他の一例を示す図である。
図10図10は、表示画面のさらに他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る一実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は例示であり、この記載によって限定解釈されるものではない。
【0023】
図1は、一実施の形態に係る避難シミュレーションシステムの構成を示す図である。図1に示す避難シミュレーションシステムは、サーバ装置100と、ネットワークを介してサーバ装置100と通信可能に接続される通信端末装置200とを有する。この避難シミュレーションシステムは、サーバ装置100によって構築される仮想空間において、通信端末装置200を操作するユーザが避難訓練を体験することを可能にする。
【0024】
サーバ装置100は、種々のデータに基づく空間モデリングを実行して仮想空間を構築し、仮想空間における災害や避難のシミュレーションを実行する情報処理装置である。サーバ装置100は、ユーザによる入力情報を通信端末装置200から受信し、入力情報に従って災害や避難の条件を設定したり、入力情報に従ってユーザの分身であるアバターを仮想空間内で移動させたりする。また、サーバ装置100は、ユーザのアバターとは異なる避難者を仮想空間内に生成し、避難者の行動に関するデータに基づいて避難者の行動を制御する。サーバ装置100の構成及び動作については、後に詳述する。
【0025】
通信端末装置200は、サーバ装置100と通信可能に接続し、ユーザによる入力情報をサーバ装置100へ送信したり、サーバ装置100によって実行されるシミュレーションに応じた画面を表示したりする通信装置である。通信端末装置200は、無線又は有線によってネットワークに接続するコンピュータ又はスマートフォンなどであってよく、画面を表示するためのディスプレイやヘッドマウントディスプレイ(HMD)などを備えていても良い。
【0026】
図2は、サーバ装置100及び通信端末装置200の構成を示すブロック図である。図2に示すサーバ装置100は、データ記憶部110、動作制御部120、空間モデリング部130、アバター制御部140、誘導指示制御部150、災害シミュレート部160、避難シミュレート部170及び通信部180を有する。
【0027】
データ記憶部110は、仮想空間における避難訓練に用いられる種々のデータを記憶する。具体的には、データ記憶部110は、空間モデリングに用いられる三次元都市データ及び建物データなどの空間データ、避難者の外見や避難時の行動を定義する避難者データ、及び災害の形態や災害発生時の設備又は建物の挙動を定義する災害データなどを記憶する。
【0028】
動作制御部120は、通信端末装置200からユーザの入力情報を取得し、入力情報に従ってサーバ装置100の各処理部の動作を制御する。動作制御部120は、ユーザによる入力情報を記録しておき、例えば避難訓練が終了した際には、ユーザの入力情報から避難訓練時の移動ログを出力する。また、動作制御部120は、サーバ装置100の各処理部の動作によって生成される画像情報及び音声情報を通信部180を介して通信端末装置200へ送信する。
【0029】
空間モデリング部130は、三次元都市データ又は建物データなどの空間データをデータ記憶部110から読み出し、避難訓練を実施する場所の空間モデリングを実行する。すなわち、空間モデリング部130は、空間データに基づいて避難訓練が実施される仮想空間を構築する。
【0030】
アバター制御部140は、避難訓練を体験するユーザによる選択に応じて、このユーザの仮想空間における分身であるアバターを生成し、仮想空間内でのアバターの動作を制御する。具体的には、アバター制御部140は、ユーザの操作に従ってアバターを移動させたり、他の避難者に対する誘導動作をさせたりする。
【0031】
誘導指示制御部150は、避難経路などを表示する誘導指示を仮想空間内に設置し、避難訓練が開始した場合に誘導指示の表示及び非表示を制御する。すなわち、誘導指示制御部150は、例えば非常口のある方向や非常口までの距離などを仮想空間内のモニター等に表示させる。
【0032】
災害シミュレート部160は、災害データをデータ記憶部110から読み出し、仮想空間において災害をシミュレートする。具体的には、災害シミュレート部160は、例えば火災、地震、津波などの中からユーザによって選択された災害のシミュレーションを実行し、仮想空間に災害のグラフィックや音声を合成する。
【0033】
避難シミュレート部170は、避難者データをデータ記憶部110から読み出し、仮想空間において避難者による避難をシミュレートする。具体的には、避難シミュレート部170は、ユーザによって指定された数の避難者による避難のシミュレーションを実行し、仮想空間に避難者のグラフィックや音声を合成する。
【0034】
通信部180は、通信端末装置200との間で有線又は無線により通信可能なインタフェースを備え、種々の情報を送受信する。具体的には、通信部180は、仮想空間を構成する画像情報及び音声情報を動作制御部120から取得し、通信端末装置200へ送信する。また、通信部180は、通信端末装置200のユーザによる入力情報を通信端末装置200から受信し、動作制御部120へ出力する。
【0035】
図2に示す通信端末装置200は、ユーザ入力部210、出力部220、制御部230及び通信部240を有する。
【0036】
ユーザ入力部210は、例えばキーボード、タッチパネル又はマイクなどの入力インタフェースを備え、避難訓練を体験するユーザからの入力を受け付ける。ユーザ入力部210は、例えば避難者や誘導指示に関する設定をするためのユーザの入力や、アバターを操作するためのユーザの入力などを受け付け、受け付けた入力情報を制御部230へ出力する。
【0037】
出力部220は、例えばディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ又はスピーカなどの出力インタフェースを備え、画像情報及び音声情報を避難訓練を体験するユーザへ出力する。出力部220は、例えばユーザが操作するアバターから見える仮想空間の画像情報や、アバターに聞こえる仮想空間の音声情報を出力する。
【0038】
制御部230は、通信端末装置200の各処理部を制御する。すなわち、制御部230は、ユーザ入力部210によってユーザから受け付けられた入力情報を通信部240を介してサーバ装置100へ送信したり、通信部240によって受信された画像情報及び音声情報を出力部220から出力したりする。
【0039】
通信部240は、サーバ装置100との間で有線又は無線により通信可能なインタフェースを備え、種々の情報を送受信する。具体的には、通信部240は、仮想空間を構成する画像情報及び音声情報をサーバ装置100から受信し、制御部230へ出力する。また、通信部240は、ユーザによる入力情報を制御部230から取得し、サーバ装置100へ送信する。
【0040】
次いで、上記のように構成された避難シミュレーションシステムを用いた避難訓練の方法について、図3に示すシーケンス図を参照しながら具体例を挙げて説明する。
【0041】
避難シミュレーションシステムが起動され、通信端末装置200を操作するユーザが避難訓練を開始すると、サーバ装置100の動作制御部120からの指示により、空間モデリング部130によって空間モデリングが実行される(ステップS101)。具体的には、空間モデリング部130によって、避難訓練を実施する場所の空間データがデータ記憶部110から読み出され、空間モデリングによって仮想空間が構築される。避難訓練を実施する場所は、ユーザが選択する場所であってもよく、この場合には、ユーザが選択した場所を通信端末装置200のユーザ入力部210へ入力する。
【0042】
空間モデリングが実行されると、通信端末装置200のユーザ入力部210によって、避難訓練を体験するユーザの人数の入力が受け付けられ(ステップS102)、サーバ装置100の動作制御部120によってユーザの人数が設定される(ステップS103)。そして、通信端末装置200のユーザ入力部210によって、それぞれのユーザによるアバターの選択が受け付けられ(ステップS104)、サーバ装置100のアバター制御部140によって、ユーザごとのアバターが設定される(ステップS105)。
【0043】
体験するユーザの人数及びアバターの選択が受け付けられる際には、通信端末装置200の出力部220によって、例えば図4に示す画面が表示される。図4に示す画面に従って、ユーザは、仮想空間における避難訓練を体験するユーザの人数を入力し、それぞれのユーザのアバターを選択する。図4に示す例では、ユーザはアバターの属性を選択することが可能となっており、健常者のアバター、避難困難者のアバター又は救助者のアバターを選択することが可能となっている。また、これらのアバター以外のアバターを新規作成することも選択可能となっている。健常者のアバターは、仮想空間内を自由に移動できるように設定され、避難困難者のアバターは、仮想空間内の例えば階段や段差を超えられないなどの制限の下で移動できるように設定される。また、救助者のアバターは、仮想空間において他のユーザのアバターや避難者を誘導する動作が可能なように設定される。
【0044】
ユーザの人数及びアバターの設定が完了すると、通信端末装置200のユーザ入力部210によって、ユーザ以外の避難者に関する設定の入力が受け付けられ(ステップS106)、サーバ装置100の避難シミュレート部170によって、ユーザが操作するアバターとは異なる避難者の人数や行動が設定される(ステップS107)。
【0045】
避難者に関する設定が受け付けられる際には、通信端末装置200の出力部220によって、例えば図5に示す画面が表示される。図5に示す画面に従って、ユーザは、避難者の人数、属性及び移動速度などを入力する。図5に示す例では、避難者の属性として、成人、高齢者、子供及び車いすの4種類があり、それぞれの属性について人数の割合と移動速度を設定することが可能となっている。また、これら4種類の属性以外の避難者を新規作成することも選択可能となっている。
【0046】
避難者に関する設定が完了すると、通信端末装置200のユーザ入力部210によって、仮想空間内に設置される誘導指示に関する設定の入力が受け付けられ(ステップS108)、サーバ装置100の誘導指示制御部150によって、誘導指示が設置される場所や表示内容などが設定される(ステップS109)。
【0047】
誘導指示に関する設定が受け付けられる際には、通信端末装置200の出力部220によって、例えば図6に示す画面が表示される。図6に示す画面に従って、ユーザは、仮想空間内において誘導指示を設置する位置、誘導指示の表示タイミング、誘導指示を表示するモニターの形状及び誘導指示として表示する表示内容などを入力する。図6に示す例では、誘導指示を表示する天井モニター及び壁面モニターの設置位置を仮想空間の平面図上で指定することが可能となっている。
【0048】
誘導指示に関する設定が完了すると、通信端末装置200のユーザ入力部210によって、仮想空間内で発生する災害の種別の入力が受け付けられ(ステップS110)、サーバ装置100の災害シミュレート部160によって、仮想空間内に発生させる災害が設定される(ステップS111)。
【0049】
災害種別の設定が受け付けられる際には、通信端末装置200の出力部220によって、例えば図7に示す画面が表示される。図7に示す画面に従って、ユーザは、仮想空間内において発生させる災害の種別を選択する。図7に示す例では、災害種別として地震、津波又は火災を選択することが可能となっている。また、これらの種別以外の災害を新規作成することも選択可能となっている。
【0050】
以上のようにして、仮想空間における避難訓練についての設定が完了すると、避難訓練が開始される。すなわち、災害シミュレート部160によって、設定された種別の災害のシミュレーションが開始され(ステップS112)、災害のグラフィックや音声が仮想空間に合成される。同様に、避難シミュレート部170によって、設定された避難者のシミュレーションが開始され(ステップS113)、避難者のグラフィックや音声が仮想空間に合成される。さらに、誘導指示制御部150によって、仮想空間に設置された誘導指示の表示が制御される(ステップS114)。
【0051】
これらのシミュレーション及び制御によって生成される画像情報及び音声情報は、動作制御部120から通信部180を介して通信端末装置200へ送信される(ステップS115)。そして、画像情報及び音声情報は、通信端末装置200の出力部220によって出力され、ユーザは、災害が発生し避難者が避難している仮想空間を体験する。
【0052】
ユーザは、ユーザ入力部210に操作入力をすることにより、自身のアバターを制御し、仮想空間内を移動したり、他の避難者を誘導したりする。すなわち、ユーザ入力部210によって受け付けられた入力情報が制御部230から通信部240を介してサーバ装置100へ送信され(ステップS115)、サーバ装置100の動作制御部120及びアバター制御部140によって、ユーザの入力情報に応じて仮想空間内でアバターが動作する。アバターの動作によって変化する周囲の画像情報及び音声情報は、リアルタイムで通信部180から通信端末装置200へ送信され(ステップS115)、出力部220によって出力される。
【0053】
図8は、出力部220によって表示される画像情報の一例を示す図である。図8に示すように、仮想空間には、ユーザが操作するアバターとは異なる他の避難者301が存在している。これらの避難者301は、避難シミュレート部170によるシミュレーションによって行動しており、ユーザは、多数の避難者301が避難する状況での臨場感のある避難訓練を体験することができる。
【0054】
図9は、出力部220によって表示される画像情報の他の一例を示す図である。図9に示すように、仮想空間には、ユーザによる設定に応じた誘導指示302が表示されている。ユーザは、設定した誘導指示302が避難に際して適切であるか否かを避難訓練を通じて確認することができる。
【0055】
仮想空間における避難訓練は、例えばすべてのユーザが非常口へ到達すると終了する。避難訓練が終了すると、サーバ装置100の動作制御部120によって、避難訓練中のユーザごとの移動軌跡を示すログデータが出力され(ステップS116)、各ユーザが操作する通信端末装置200の出力部220によって表示される。図10は、出力部220によって表示されるログデータの一例を示す図である。図10に示すように、ログデータには、避難訓練中にユーザが移動した移動軌跡が示されるとともに、避難に要した時間や避難中の移動速度などが示される。ユーザは、ログデータを参照することにより、避難行動を評価することができる。
【0056】
以上のように、本実施の形態によれば、災害及び避難者のシミュレーションを実行して得られる画像及び音声を、空間データから構築される仮想空間に合成し、合成された画像情報及び音声情報をユーザへ出力する。このため、ユーザは、他の避難者が多数いる状況での避難訓練を体験することができる。換言すれば、仮想空間において臨場感のある避難訓練を実現することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 サーバ装置
110 データ記憶部
120 動作制御部
130 空間モデリング部
140 アバター制御部
150 誘導指示制御部
160 災害シミュレート部
170 避難シミュレート部
180、240 通信部
200 通信端末装置
210 ユーザ入力部
220 出力部
230 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10