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  • 特開-弾性ローラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024941
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】弾性ローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20250214BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G03G15/00 551
G03G15/08 221
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129335
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004576
【氏名又は名称】ミレニア弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 雄作
【テーマコード(参考)】
2H077
2H171
【Fターム(参考)】
2H077AD02
2H077AD06
2H077FA12
2H077FA13
2H077FA22
2H171FA26
2H171FA27
2H171FA30
2H171GA01
2H171UA03
2H171UA06
2H171UA08
2H171UA10
2H171UA22
2H171VA02
2H171VA06
2H171XA02
(57)【要約】
【課題】画像のカブリ及びガサツキを抑制できる弾性ローラを提供する。
【解決手段】本発明は、軸体2と、軸体2の外周に設けられる弾性層3と、弾性層3の外周に設けられる被覆層4とを備え、被覆層4の表面の展開面積比Sdrが、0.2以上1.2以下である弾性ローラ1である。被覆層4は、粗さ材を含有し、粗さ材は、シリコーンゴム粒子又はウレタン樹脂粒子の少なくとも一方であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、該軸体の外周に設けられる弾性層と、該弾性層の外周に設けられる被覆層とを備え、
前記被覆層の表面の展開面積比Sdrが、0.2以上1.2以下である弾性ローラ。
【請求項2】
前記表面の算術平均高さSaが、0.80μm以上2.50μm以下である請求項1記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記表面のクルトシスSkuが、3以上である請求項1記載の弾性ローラ。
【請求項4】
前記被覆層が、ウレタン樹脂を含む請求項1記載の弾性ローラ。
【請求項5】
前記被覆層が、粗さ材を含有し、
前記粗さ材が、シリコーンゴム粒子又はウレタン樹脂粒子の少なくとも一方である請求項1記載の弾性ローラ。
【請求項6】
前記弾性ローラが、現像ローラである請求項1記載の弾性ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像ローラは、トナーに均一な摩擦電荷を付与し、かつ、所定量のトナーを現像領域に安定して搬送する機能を有する。近年、電子写真方式の複写機における消費電力の抑制や高速印刷等を目的とし、その印刷に用いられるトナーの低融点化が進められている。
【0003】
低融点トナーは、現像ローラ、他の規制部材の押圧による摩擦熱で融解しやすく、融解したトナーが現像ローラへ固着するという問題がある。さらに、高温高湿環境では、水分の影響により、トナー自体の帯電性が落ちる傾向があるため、耐久末期において、画像の白地部(背景部)に不良帯電トナーが付着する、いわゆるカブリと言われる現象が発生する。
【0004】
また、トナーの粒度分布は、ブロードであるため、小粒径トナーと大粒径トナーとが混在する形となっている。この粉砕トナーが摩擦及び接触帯電により帯電するとき、帯電しやすい小粒径トナーがより優先的にローラ表面に付着して消費されるため、印字が進行した時に、大粒径トナーが多く残り、画質のガサツキが発生し、画像品質が低下するという問題がある。
【0005】
トナーの付着及び蓄積とそれによる種々の問題を解決するため、例えば、特許文献1には、弾性層にレーザーで凹部を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-107147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像形成装置の高速化等の要望に対応すべく、特許文献1に記載の発明よりも高いレベルでの画像のカブリ及びガサツキの改善が望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、画像のカブリ及びガサツキを抑制できる弾性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ローラの表面に尖度の大きい凹凸を形成し、展開面積比を大きくすることにより、小粒径トナーと大粒径トナーのローラ表面に対する接触頻度の差がなくなり、大粒径トナーも帯電するようになることを見出した。また、このことにより、トナーがローラ表面に均一に付着して消費されるため、印字が進行しても画像品質が低下しないことを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、軸体と、軸体の外周に設けられる弾性層と、弾性層の外周に設けられる被覆層とを備え、被覆層の表面の展開面積比Sdrが、0.2以上1.2以下である弾性ローラである。
【0010】
表面の算術平均高さSaは、0.80μm以上2.50μm以下であることが好ましい。
【0011】
表面のクルトシスSkuは、3以上であることが好ましい。
【0012】
被覆層は、ウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
被覆層は、粗さ材を含有し、粗さ材は、シリコーンゴム粒子又はウレタン樹脂粒子の少なくとも一方であることが好ましい。
【0014】
弾性ローラは、現像ローラであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像のカブリ及びガサツキを抑制できる弾性ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の弾性ローラの一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[弾性ローラ]
図1に示すように、本発明の弾性ローラ1は、軸体2と、軸体2の外側に設けられる弾性層3と、弾性層3の外側に設けられる被覆層4とを備える。以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0018】
<軸体>
軸体2は、好ましくは、導電特性を有する、従来公知の弾性ローラに用いられる軸体を用いることができる。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、及び真鍮からなる群より選択される少なくとも1種の金属で構成されていることが好ましい。なお、このような軸体2は、一般に、「芯金」の名称でも知られている。
【0019】
軸体2は、絶縁性樹脂を含むものであってもよい。絶縁性樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体と、この芯体上に設けられたメッキ層と、を備えるものであってよい。このような軸体2は、例えば、絶縁性樹脂からなる芯体にメッキを施して導電化することにより得ることができる。
軸体2は、良好な導電特性を得るために、芯金であることが好ましい。
【0020】
軸体2の形状は、例えば、棒状、管状等であることが好ましい。軸体2の断面形状は、例えば、円形、楕円形であってもよく、多角形等の非円形であってもよい。軸体2の外周面には、洗浄処理、脱脂処理、プライマー処理等の処理が施されていてもよい。
【0021】
軸体2の軸方向の長さは特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整してもよい。また、軸体2の直径(外接円の直径)も特に限定されず、設置される画像形成装置の形態に応じて適宜調整すればよい。
【0022】
<弾性層>
弾性層3は、軸体2の外周に設けられる。例えば弾性ローラ1が現像ローラである場合、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧可能な硬度や弾性を現像ローラに付与するために設けられる。
弾性層3は種々のゴム材を用いることができる。ゴム材に使用するゴムとしては、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム以下が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、トナーダメージの軽減、及び押圧による圧縮応力歪みを小さくする観点から、シリコーンゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらのシロキサンの共重合体が挙げられる。
弾性層3がシリコーンゴムからなる場合は、以下に示すゴム組成物の硬化物であってもよい。
【0023】
(ゴム組成物)
ゴム組成物としては、架橋によりシリコーンゴムを構成するゴム成分を含有することが好ましい。このようなゴム成分としては、例えば、オルガノポリシロキサン等のシリコーン生ゴムが挙げられる。
【0024】
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式で表されるオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
RnSiO(4-n)/2
[Rは、置換されていてもよい一価の炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素数は、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましい。複数のRは同一でも異なっていてもよい。nは1.95以上2.05以下の数を示す。]
【0025】
上記式中のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等、上記の基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換された有機基を挙げることができる。
【0026】
オルガノポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。例えば、上記式中、少なくとも2個のRが上記アルケニル基を有することが好ましい。オルガノポリシロキサンは、ビニル基を有することが更に好ましい。
【0027】
オルガノポリシロキサンの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。
【0028】
ゴム組成物は、各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、導電性付与剤、鎖延長剤、及び架橋剤等の助剤、付加反応触媒等の触媒、反応制御剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤などを挙げることができる。
【0029】
ゴム組成物は、液状のゴム組成物であってよく、ミラブル型のゴム組成物であってもよい。
【0030】
弾性層形成用のゴム組成物は、各種の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、導電性付与剤、鎖延長剤、及び架橋剤等の助剤、付加反応触媒等の触媒、反応制御剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤などを挙げることができる。
【0031】
シリコーンゴムからなる弾性層3を形成する場合、液状シリコーンゴム組成物を用いて、LIMS(Liquid Injection Molding System)方式で形成してもよく、ミラブル型シリコーンゴム組成物を用いた射出成形で形成してもよい。ミラブル型シリコーンゴム組成物を用いた場合は、弾性層の表面は研磨されることが好ましい。
【0032】
弾性層3は、中実な層が好ましく、層の内部に中空を有していないことが好ましい。本明細書において「中実」とは、層の内部に0.1mm/個以上の中空を有しないことを意味する。
【0033】
弾性層3のJIS A硬度(JIS K 6301)は、20以上55以下であることが好ましい。弾性層3のJIS A硬度が、上記範囲内であることにより、弾性ローラ1と被当接体(例えば、感光体等の像担持体)との接触面積(ニップ幅)が大きくなるため、転写効率、帯電効率、及び現像効率等の性能が一層向上する傾向にある。また、被当接体に機械的ダメージを与える可能性が低減される。
【0034】
弾性層3の厚さは、被当接体との当接状態において被当接体との均一なニップ幅を確保することができる等の観点から、0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましい。
なお、本発明における「厚さ」とは、弾性ローラ1の軸方向に垂直な方向の厚さを意味する。
弾性層3の外径は、特に限定されない。外径は、例えば、5mm以上20mm以下であってもよい。なお、本明細書において、「外径」とは、弾性ローラ1の軸方向に垂直な断面における外径を意味する。
弾性層3の厚さ及び外径は、弾性層3を形成する際に用いるゴム組成物の量を調整する、弾性層3の形成後に弾性層3の外周面を研磨又は研削する、等の方法により調整することができる。
【0035】
弾性層3の外周面には、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理、イトロ処理、フレーム処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0036】
(弾性層の抵抗値)
弾性層3の抵抗値は、1×10Ω以上1×10Ω以下である。弾性層3の抵抗値を当該範囲に調整することにより、特に初期段階(例えば1枚から500枚程度)における現像剤の帯電性を安定させ、印字濃度の低下を抑制することができる。弾性層3の抵抗値は、1×10Ω以上1×10Ω以下であることが好ましく、1×10Ω以上5×10Ω以下であることがより好ましい。
弾性層の抵抗値は、後述の実施例における測定方法で測定する。
【0037】
<被覆層>
被覆層4は、下記(A)ポリオール、(B)イソシアネート化合物、(C)粗さ材、及び(D)希釈溶剤を含有する被覆層形成用樹脂組成物を塗布して硬化したものとすることができる。
【0038】
(A)ポリオール
ポリオールとしては、アクリル系ポリオール、シリコーン系ポリオール等を用いることができる。
カーボネートポリオール、フッ素ポリオール、水添ブタジエンポリオールは、上述の第一のイソシアネート化合物や後述する第二のイソシアネート化合物と反応して、ポリウレタンを形成するものである。本発明おいて、これらのポリオールを単独で用いてもよいし、複数のポリオールを組み合わせて用いることもできる。用いるポリオールとしては、カーボネートポリオール、フッ素ポリオールを単独で用いるか、組み合わせて用いることが好ましい。
【0039】
カーボネートポリオール及び/又はフッ素ポリオールは、両末端変性シリコーンオイル100質量部に対して5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。これらのポリオールとしては、市販のものを使用することができる。
【0040】
(B)イソシアネート化合物
被覆層形成用樹脂組成物に用いる(B)イソシアネート化合物としては、ポリウレタンの調製に通常使用される各種イソシアネート化合物(例えば、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物)を用いることができる。芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート等を挙げることができる。また、脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアナートメチル(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等を挙げることができる。さらに、脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、4,4’-ジシクロへキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0041】
本発明において、被覆層4を形成するために使用する混合液における(B)イソシアネート化合物の使用量は、イソシアネート化合物の反応率が80%以上126%以下、好ましくは95%以上112%以下となるように使用されることが好ましい。
【0042】
(C)粗さ材
被覆層形成用樹脂組成物は、(C)粗さ材を含有する。粗さ材としては、シリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子を含有する。このシリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の粒子径は、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、0.8μm以上5μm以下であることがより好ましい。シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の粒子径を上記の範囲内のものとすることにより、弾性ローラ1の表面粗さが適切に維持され、現像剤搬送性が良好に保たれる一方で、解像度を高い水準に維持して、画質の悪化を防止することができる。シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の粒径は、弾性ローラ1を切断処理した後に、顕微鏡により断面を観察することにより測定することができる。
【0043】
本発明において使用する粗さ材は、シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子は、100℃以上の温度でも変形又は溶融等しない耐熱性を有することが好ましく、130℃から180℃での耐熱性を有することがより好ましい。これにより、被覆層4の架橋温度においても、これらのシリコーンゴム粒子及びアクリル粒子が、変形することを防止することができる。シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子の耐熱性は、メルトフローインデクサーにおいて、圧力と熱を与えてもシリコーンゴム粒子やアクリル粒子が溶けて流れ出すことがないことを確認することにより、評価することができる。
【0044】
シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子は、被覆層4中に存在(埋没)していてもよく、その一部が被覆層4の表面に突出していてもよい。また、被覆層4において不均一に分散していてもよく、被覆層4の表面側に偏在していてもよい。
【0045】
シリコーンゴム粒子及びアクリル粒子のうち、シリコーンゴム粒子については、ジメチルポリシロキサン等、オルガノポリシロキサン、ポリオルガノシルセスオキサンを架橋した構造が好ましく、アクリル粒子としては、市販のアクリル粒子を使用することができる。
【0046】
なお、シリコーンゴム粒子については、有機基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;β-フェニルエチル基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の1価ハロゲン化炭化水素基;エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等の反応性基含有有機基から選択される1種又は2種以上の炭素数1以上20以下の1価の有機基から選択される基を有するオルガノポリシロキサン又はオルガノポリシルセスキオキサンから調製することが好ましく、これら、オルガノポリシロキサン又はオルガノポリシルセスキオキサンから調製される粒子を、オルガノアルコキシシランで表面処理した粒子であってもよい。このようなシリコーンゴム粒子としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KMP-597」や、東レ・ダウコーニング株式会社製の「EP-5500」、「EP-2600」、「EP-2601」、「E-2720」、「DY 33-430M」、「EP-2720」、「EP-9215Cosmetic Powder」、「9701Cosmetic Powder」等を使用することができる。
【0047】
シリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子の使用量は、被覆層形成用樹脂組成物100質量部に対して、15質量部以上40質量部以下であることが好ましく、20質量部以上35質量部以下であることがより好ましい。シリコーンゴム粒子及び/又はアクリル粒子の使用量を、上記使用量の範囲内のものとすることにより、弾性ローラ1の表面粗さが適切に維持され、現像剤搬送性が良好に保たれる一方で、解像度を高い水準に維持して、画質の悪化を防止することができる。
【0048】
(D)希釈溶剤
希釈溶剤としては、水系溶剤、及び有機系溶剤を使用することができ、求められる乾燥速度に応じて、低沸点溶剤、高沸点溶剤等を組み合わせて使用することができる。
【0049】
本発明において、被覆層形成用樹脂組成物中の固形分濃度は、被覆層形成用樹脂組成物全量に対し、10質量%以上50質量%以下の範囲内であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下の範囲内であることがより好ましい。固形分濃度が低いと、塗布時に液ダレが起こり易く、乾燥に時間がかかるとともに、固形分濃度が高いと、塗布表面のザラツキを生じたり、厚み制御が難しくなったりする。
【0050】
本発明において、希釈溶剤としては、上述のシリコーンゴム粒子又はアクリル粒子を膨潤させる希釈溶剤を使うことが好ましい。これにより、混合液中でシリコーンゴム粒子やアクリル粒子が膨潤し、被覆層4を、はじきや凹みのないものとすることができるとともに、混合液中でのシリコーンゴム粒子やアクリル粒子の沈降を抑制することができる。
【0051】
このような希釈溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ヘプタン、シクロヘキサノン、イソホロン等の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0052】
(Sdr:展開面積比)
被覆層4の表面の展開面積比Sdrは、0.2以上1.2以下である。展開面積比Sdrが、0.2以上1.2以下であることにより、大粒径トナーとの接触頻度を向上することができ、小粒径トナーと同等の接触頻度が得られる。Sdrは、0.4以上1.0以下であることがより好ましい。
展開面積比Sdrは、以下の方法により測定することができる。
<測定方法>
各サンプルのローラ長手方向中央部の被覆層4を株式会社キーエンス製の非接触式のレーザー顕微鏡「VK-X1000」を用いて撮影した。その時の倍率は1200倍であった。次に、株式会社キーエンス製のマルチファイル解析アプリケーション「VK-H1XA」のVersion3.8.0.0で、撮影で得られた幾何学データの2次曲面補正を行い、得られたデータに基づき、撮影された視野において、表面性状の展開面積比Sdrの計算を行った。また、カットオフ値λs、λcの設定は「なし」で計算を行った。
【0053】
(Sa:算術平均粗さ)
被覆層4の表面の算術平均粗さSaは、0.80μm以上2.50μm以下であることが好ましく、1.00μm以上2.20μm以下であることがより好ましい。算術平均粗さSaが、0.80μm以上2.50μm以下であることにより、トナーの搬送量が適正値である0.45mg/cm以上0.60mg/cm以下となる。
算術平均粗さSaは、以下の方法により測定することができる。
<測定方法>
各サンプルのローラ長手方向中央部の被覆層4を株式会社キーエンス製の非接触式のレーザー顕微鏡「VK-X1000」を用いて撮影した。その時の倍率は1200倍であった。次に、株式会社キーエンス製のマルチファイル解析アプリケーション「VK-H1XA」のVersion3.8.0.0で、撮影で得られた幾何学データの2次曲面補正を行い、得られたデータに基づき、撮影された視野において、面粗さパラメータの表面粗さSaの計算を行った。また、カットオフ値λs、λcの設定は「なし」で計算を行った。
【0054】
(Sku:クルトシス)
表面のクルトシスSkuが、3以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましい。クルトシスSkuが、3以上であることにより、尖度が大きい凹凸が形成されるため、小粒径トナー及び大粒径トナーに対する接触が良好となる。このため、トナーがローラ表面に均一に付着させることができ、品質の高い画像を得ることができる。
クルトシスSkuは、以下の方法により測定することができる。
<測定方法>
各サンプルのローラ長手方向中央部の被覆層4を株式会社キーエンス製の非接触式のレーザー顕微鏡「VK-X1000」を用いて撮影した。その時の倍率は1200倍であった。次に、株式会社キーエンス製のマルチファイル解析アプリケーション「VK-H1XA」のVersion3.8.0.0で、撮影で得られた幾何学データの2次曲面補正を行い、得られたデータに基づき、撮影された視野において、面粗さパラメータのクルトシスSkuの計算を行った。また、カットオフ値λs、λcの設定は「なし」で計算を行った。
【0055】
本発明の弾性ローラは、表面の展開面積比Sdrが、0.2以上1.2以下であることにより、小粒径トナーと大粒径トナーのローラ表面に対する接触頻度の差がなくなり、大粒径トナーも小粒径トナー同様に良好に帯電するため、トナーがローラ表面に均一に付着して消費されるため、印字が進行しても、かぶり及びガサツキの無い良好な画像を得ることができる。
【実施例0056】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
[実施例1~12及び比較例1~6]
以下の手順により、弾性ローラの一例として現像ローラを作製した。
【0058】
(プライマー層の形成)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径7.5mm、長さ274.1mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の外周面にプライマー層を形成した。
【0059】
(弾性層の形成)
シリコーンゴムから形成されたゴム組成物を用いた押出成形により、軸体の外周面上にゴム材料からなる弾性体を成形した。なお、押出成形では、シリコーンゴムから形成されたゴム組成物を、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて360℃で5分間加熱し、さらに、ギヤオーブンを用いて200℃で4時間加熱して硬化させた。これにより、プライマー処理された軸体の外周面上にゴム組成物の硬化物からなる弾性層を形成した。
弾性層は中実な層であり、弾性層の厚さは4.25mmであった。
【0060】
(被覆層の形成)
-被覆層形成用樹脂組成物の調製-
(A)ポリオール:商品名「クラレポリオール P-2010」(株式会社クラレ製)
(B)イソシアヌレート:商品名「デュラネート TPA-100」(旭化成株式会社製)
(C)粗さ材:シリコーンゴム粒子(DOWSIL EP-2601TM Powder、平均粒子径2μm、ダウ・東レ株式会社製)
(D)n-酢酸ブチル
【0061】
上記被覆層用樹脂組成物を弾性層の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、170℃で20分間加熱して、層厚10μmの被覆層を形成した。このようにして、軸体、弾性層、及び被覆層を備えた現像ローラを製造した。
【0062】
[評価]
上記実施例及び比較例について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0063】
(Sdr,Sa,Skuの測定)
上記実施例及び比較例で作製した現像ローラを、ローラ長手方向中央部の被覆層4を株式会社キーエンス製の非接触式のレーザー顕微鏡「VK-X1000」を用い、1200倍の倍率で撮影した。次に、株式会社キーエンス製のマルチファイル解析アプリケーション「VK-H1XA」のVersion3.8.0.0で、撮影で得られた幾何学データの2次曲面補正を行い、得られたデータに基づき、撮影された視野において、カットオフ値λs、λcの設定は「なし」とし、展開面積比Sdr、表面粗さSa、クルトシスSkuの計算を行った。
【0064】
(印字ガサツキ)
上記実施例及び比較例で作製した現像ローラを、画像形成装置「HL-L2360DN(ブラザー工業株式会社製)」に装着して、低温低湿度環境(10℃20%RH)の条件で、1.0%dutyで4000枚印刷後に黒ベタ印刷を行い、印字濃度を確認した。濃度測定にはX-Rite社製のX-Rite504分光濃度計を使用した。
ガサツキの評価として、印字濃度1.44以下をAとし、1.45以上1.48以下をBとし、1.49以上をCとし、評価A以上を合格とした。
A:1.44以下
B:1.45以上1.48以下
C:1.49以上
【0065】
(カブリの評価方法)
上記実施例及び比較例で作製した現像ローラを、画像形成装置「HL-2360DN(ブラザー工業株式会社製」に装着して、高温高湿環境(32℃、80%RH)で、白ベタ印字を行い、白ベタ印刷を瞬断で止めて、感光ドラムにテープ貼り付け白い紙上に転写した。基準の紙にテープを貼り、基準値と転写した部分の色差ΔEを測定した。
A:ΔEが1.0未満
B:ΔEが1.0以上1.5未満
C:ΔEが1.5以上
【0066】
【表1】




【0067】
【表2】




【0068】
表1及び表2に示すように、被覆層の表面の展開面積比Sdrが、0.2以上1.2以下である実施例は、印字ガサツキ及びかぶりの評価が良好であった。
【符号の説明】
【0069】
1 弾性ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 被覆層
図1