(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024950
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置及び電源用モジュール
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20250214BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
H01F30/10 D
H01F30/10 A
H01F30/10 H
H01F30/10 M
H01F30/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129353
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】青木 卓也
(72)【発明者】
【氏名】平田 哲郎
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730BB21
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】一次側回路と二次側回路との絶縁強度を十分に確保しつつ、外形を従来よりも小型化できるスイッチング電源装置及び電源用モジュールを提供する。
【解決手段】回路基板34は、巻線エリアMAと二次側エリア2Aとが連続し、二次側エリア2Aの一端部に中間エリアTA及び一次側エリア1Aが順に連続し、一次側エリア1Aが、主切り込み58を介して巻線エリアMAの側方に位置する。フェライトコア36は、巻線エリアMAに取り付けられ、外足部42(1)が主切り込み58の中に配置されて二次側部品28mの1つとなる。絶縁キャップ46は、一次側エリア1Aに取り付けられ、一次側エリア1Aの表面及び裏面にある導電部とフェライトコア36との間の絶縁強度が規定値以上になるように、一次側エリア1Aの表面及び裏面、主切り込み58側の端面、主切り込み58に対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の特定領域を覆う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに絶縁された一次側回路及び二次側回路がトランスの一次巻線及び二次巻線を介して接続されたスイッチング電源装置を構成するための電源用モジュールにおいて、
配線パターンを形成するための複数の配線層を有した多層プリント配線板に回路部品が実装された回路基板と、前記トランスの一構成部材であって、組み立て状態で、一対の平板部が中足部及び2つの外足部で相互に連結された形状になるフェライトコアと、有底筒状に形成された絶縁キャップと、前記回路基板の特定の導電部を外部に引き出すための外部接続用端子部とを備え、
前記回路基板は、配線パターンによって前記一次巻線及び前記二次巻線が形成されたエリアであって、前記フェライトコアの前記中足部が挿通される中足孔が設けられ、前記中足孔の周りに前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回されている巻線エリアと、前記一次側回路の一部となる一次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された一次側エリアと、前記二次側回路の一部となる二次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された二次側エリアと、前記一次側部品、前記二次側部品及びそれら配線パターンが表面及び裏面に配置されていない中間エリアとを備え、前記巻線エリアと前記二次側エリアとが連続し、前記二次側エリアの一端部に前記中間エリア及び前記一次側エリアが順に連続し、前記一次側エリアが、所定幅の主切り込みを介して前記巻線エリアの側方に位置しており、
前記フェライトコアは、前記回路基板の前記巻線エリアに取り付けられ、前記中足部が前記巻線エリアの前記中足孔の中に、一方の前記外足部が前記主切り込みの中に、前記一対の平板部が前記多層プリント配線板の表面側及び裏面側に各々配置されて、前記二次側部品の1つとなり、
前記絶縁キャップは、前記回路基板の前記一次側エリアに取り付けられ、前記一次側エリアの表面及び裏面にある導電部と前記フェライトコアとの間の絶縁強度が規定値以上になるように、前記一次側エリアの表面及び裏面、前記主切り込み側の端面、前記主切り込みに対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の全部又は一部の領域を覆うことを特徴とする電源用モジュール。
【請求項2】
互いに絶縁された一次側回路及び二次側回路がトランスの一次巻線及び二次巻線を介して接続されたスイッチング電源装置を構成するための電源用モジュールにおいて、
配線パターンを形成するための複数の配線層を有した多層プリント配線板に回路部品が実装された回路基板と、前記トランスの一構成部材であって、組み立て状態で、一対の平板部が中足部及び2つの外足部で相互に連結された形状になるフェライトコアと、有底筒状に形成された絶縁キャップと、前記回路基板の特定の導電部を外部に引き出すための外部接続用端子部とを備え、
前記回路基板は、前記配線パターンによって前記一次巻線及び前記二次巻線が形成されたエリアであって、前記フェライトコアの前記中足部が挿通される中足孔が設けられ、前記中足孔の周りに前記一次巻線及び前記二次巻線が各々巻回されている巻線エリアと、前記一次側回路の一部となる一次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された一次側エリアと、前記二次側回路の一部となる二次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された二次側エリアと、前記一次側部品、前記二次側部品及びそれらの配線パターンが表面及び裏面に配置されていない中間エリアとを備え、前記巻線エリアと前記一次側エリアとが連続し、前記一次側エリアの一端部に前記中間エリア及び前記二次側エリアが順に連続し、前記二次側エリアが、所定幅の主切り込みを介して前記巻線エリアの側方に位置しており、
前記フェライトコアは、前記回路基板の前記巻線エリアに取り付けられ、前記中足部が前記巻線エリアの前記中足孔の中に、一方の前記外足部が前記主切り込みの中に、前記一対の平板部が前記多層プリント配線板の表面側及び裏面側に各々配置されて、前記一次側部品の1つとなり、
前記絶縁キャップは、前記回路基板の前記二次側エリアに取り付けられ、前記二次側エリアの表面及び裏面にある導電部と前記フェライトコアとの間の絶縁強度が規定値以上になるように、前記二次側エリアの表面及び裏面、前記主切り込み側の端面、前記主切り込みに対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の全部又は一部の領域を覆うことを特徴とする電源用モジュール。
【請求項3】
前記絶縁キャップは、合成樹脂の一体成形品である請求項1又は2記載の電源用モジュール。
【請求項4】
前記外部接続用端子部は、前記多層プリント配線板の配線パターンの一部であるランド、又は前記多層プリント配線板の配線パターンに連続するように形成された端面電極、又はその両方により形成される請求項1又は2記載の電源用モジュール。
【請求項5】
前記外部接続用端子部は、一端部が前記多層プリント配線板の配線パターンに接続された金属製端子である請求項1又は2記載の電源用モジュール。
【請求項6】
請求項1又は2記載の電源用モジュールと、前記電源用モジュールの前記外部接続用端子部を接続するための端子受け部を備えた本体機器とで構成されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項7】
互いに絶縁された一次側回路及び二次側回路がトランスの一次巻線及び二次巻線を介して接続されたスイッチング電源装置において、
配線パターンを形成するための複数の配線層を有した多層プリント配線板に回路部品が実装された回路基板と、前記トランスの一構成部材であって、組み立て状態で、一対の平板部が中足部及び2つの外足部で相互に連結された形状になるフェライトコアと、有底筒状に形成された絶縁キャップと、前記多層プリント配線板の特定の導電部を外部に引き出すための外部接続用端子部とを備え、
前記回路基板は、配線パターンによって前記一次巻線及び前記二次巻線が形成されたエリアであって、前記フェライトコアの前記中足部が挿通される中足孔が設けられ、前記中足孔の周りに前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回されている巻線エリアと、前記一次側回路となる一次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された一次側エリアと、前記二次側回路となる二次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された二次側エリアと、前記一次側部品、前記二次側部品及びそれらの配線パターンが表面及び裏面に配置されていない中間エリアとを備え、前記巻線エリアと前記二次側エリアとが連続し、前記二次側エリアの一端部に前記中間エリア及び前記一次側エリアが順に連続し、前記一次側エリアが、所定幅の主切り込みを介して前記巻線エリアの側方に位置しており、
前記フェライトコアは、前記回路基板の前記巻線エリアに取り付けられ、前記中足部が前記巻線エリアの前記中足孔の中に、一方の前記外足部が前記主切り込みの中に、前記一対の平板部が前記多層プリント配線板の表面側及び裏面側に各々配置されて、前記二次側部品の1つとなり、
前記絶縁キャップは、前記回路基板の前記一次側エリアに取り付けられ、前記一次側エリアの表面及び裏面にある導電部と前記フェライトコアとの間の絶縁強度が規定値以上になるように、前記一次側エリアの表面及び裏面、前記主切り込み側の端面、前記主切り込みに対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の全部又は一部の領域を覆うことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項8】
互いに絶縁された一次側回路及び二次側回路がトランスの一次巻線及び二次巻線を介して接続されたスイッチング電源装置において、
配線パターンを形成するための複数の配線層を有した多層プリント配線板に回路部品が実装された回路基板と、前記トランスの一構成部材であって、組み立て状態で、一対の平板部が中足部及び2つの外足部で相互に連結された形状になるフェライトコアと、有底筒状に形成された絶縁キャップと、前記多層プリント配線板の特定の導電部を外部に引き出すための外部接続用端子部とを備え、
前記回路基板は、配線パターンによって前記一次巻線及び前記二次巻線が形成されたエリアであって、前記フェライトコアの前記中足部が挿通される中足孔が設けられ、前記中足孔の周りに前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回されている巻線エリアと、前記一次側回路となる一次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された一次側エリアと、前記二次側回路となる二次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された二次側エリアと、前記一次側部品、前記二次側部品及びそれらの配線パターンが表面及び裏面に配置されていない中間エリアとを備え、前記巻線エリアと前記一次側エリアとが連続し、前記一次側エリアの一端部に前記中間エリア及び前記二次側エリアが順に連続し、前記二次側エリアが、所定幅の主切り込みを介して前記巻線エリアの側方に位置しており、
前記フェライトコアは、前記回路基板の前記巻線エリアに取り付けられ、前記中足部が前記巻線エリアの前記中足孔の中に、一方の前記外足部が前記主切り込みの中に、前記一対の平板部が前記多層プリント配線板の表面側及び裏面側に各々配置されて、前記一次側部品の1つとなり、
前記絶縁キャップは、前記回路基板の前記二次側エリアに取り付けられ、前記二次側エリアの表面及び裏面にある導電部と前記フェライトコアとの間の絶縁強度が規定値以上になるように、前記二次側エリアの表面及び裏面、前記主切り込み側の端面、前記主切り込みに対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の全部又は一部の領域を覆うことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項9】
前記絶縁キャップは、合成樹脂の一体成形品である請求項7又は8記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスを介して1次側回路と二次側回路とが絶縁されたスイッチング電源装置、及びこのスイッチング電源装置を構成するための電源用モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、本体機器に電源用モジュールを接続して構成される絶縁型のAC-DC変換器があった。本体機器は、電源用モジュールが接続される第1のプリント配線板を備えている。電源用モジュールは、多層のプリント配線板である第2のプリント配線板と、第2のプリント配線板の配線パターンで形成された一次コイル及び二次コイルにコアを組み付けて形成される平面トランスと、第2のプリント配線板に搭載されて一次コイルに接続された一次部材と、第2のプリント配線板に搭載されて二次コイルに接続された二次部材とを備えている。
【0003】
特許文献1の
図6~
図8等に記載された実施形態の場合、第2のプリント配線板(33)は、一次コイル及び二次コイルが設けられた第1板部(34)と、一次コイルが引き出される第2板部(35)と、二次コイルが引き出されて二次部材が搭載される第3板部(36)とを有し、第2板部(35)、第1板部(34)及び第3板部(36)が順に一列に連続している。コア(65)は、素材がフェライトで、幅寸法が第2板部(35)及び第3板部(36)の幅寸法とほぼ同じである。そして、コア(65)が第1板部(34)に取り付けられると、平面視で、第2板部(35)、コア(65)及び第3板部(36)が順に一列に並ぶ。電源用モジュールは、第2のプリント配線板(33)の特定の導電部を外部接続用ピンの一端部に引き出し、外部接続用ピンの他端部を第1のプリント配線板(13)に接続することによって本体機器に組み込まれ、電源用モジュール及び本体機器が一体になって電力変換動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商用交流電圧のような数百ボルトの高電圧を数十ボルト以下の低電圧に変換する電源装置は、感電防止のため、一次側回路と二次側回路との間に高い絶縁強度が求められる。例えば、多くの国際安全規格においても、十分な絶縁強度を確保するための指標として、最小絶縁距離(1次側回路と二次側回路との間に確保すべき沿面距離や空間距離の最小値)等が規定されている。
【0006】
特許文献1のAC-DC変換器及び電源用モジュールの場合、導電物であるコア(65)を一次部材として取り扱っており、二次部材に最も近接する一次側部材がコア(65)となる。そこで、第2板部(36)に搭載する二次部材は、コアからW=4.8~6.9mm以上離れた領域に配置することによって、一次部材と二次部材と間の最小絶縁距離が確保されている。しかし、この絶縁構造は、一次部材及び二次部材が配置できない広い領域(寸法Wで規定される長方形の領域)が表面と裏面の両方に発生するので、外形の小型化を妨げる大きな要因となる。
【0007】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、一次側回路と二次側回路との絶縁強度を十分に確保しつつ、外形を従来よりも小型化できるスイッチング電源装置及び電源用モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、互いに絶縁された一次側回路及び二次側回路がトランスの一次巻線及び二次巻線を介して接続されたスイッチング電源装置を構成するための電源用モジュールであって、
配線パターンを形成するための複数の配線層を有した多層プリント配線板に回路部品が実装された回路基板と、前記トランスの一構成部材であって、組み立て状態で、一対の平板部が中足部及び2つの外足部で相互に連結された形状になるフェライトコアと、有底筒状に形成された絶縁キャップと、前記回路基板の特定の導電部を外部に引き出すための外部接続用端子部とを備え、
前記回路基板は、配線パターンによって前記一次巻線及び前記二次巻線が形成されたエリアであって、前記フェライトコアの前記中足部が挿通される中足孔が設けられ、前記中足孔の周りに前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回されている巻線エリアと、前記一次側回路の一部となる一次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された一次側エリアと、前記二次側回路の一部となる二次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された二次側エリアと、前記一次側部品、前記二次側部品及びそれら配線パターンが表面及び裏面に配置されていない中間エリアとを備え、前記巻線エリアと前記二次側エリアとが連続し、前記二次側エリアの一端部に前記中間エリア及び前記一次側エリアが順に連続し、前記一次側エリアが、所定幅の主切り込みを介して前記巻線エリアの側方に位置しており、
前記フェライトコアは、前記回路基板の前記巻線エリアに取り付けられ、前記中足部が前記巻線エリアの前記中足孔の中に、一方の前記外足部が前記主切り込みの中に、前記一対の平板部が前記多層プリント配線板の表面側及び裏面側に各々配置されて、前記二次側部品の1つとなり、
前記絶縁キャップは、前記回路基板の前記一次側エリアに取り付けられ、前記一次側エリアの表面及び裏面にある導電部と前記フェライトコアとの間の絶縁強度が規定値以上になるように、前記一次側エリアの表面及び裏面、前記主切り込み側の端面、前記主切り込みに対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の全部又は一部の領域を覆う電源用モジュールである。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、互いに絶縁された一次側回路及び二次側回路がトランスの一次巻線及び二次巻線を介して接続されたスイッチング電源装置を構成するための電源用モジュールであって、
配線パターンを形成するための複数の配線層を有した多層プリント配線板に回路部品が実装された回路基板と、前記トランスの一構成部材であって、組み立て状態で、一対の平板部が中足部及び2つの外足部で相互に連結された形状になるフェライトコアと、有底筒状に形成された絶縁キャップと、前記回路基板の特定の導電部を外部に引き出すための外部接続用端子部とを備え、
前記回路基板は、前記配線パターンによって前記一次巻線及び前記二次巻線が形成されたエリアであって、前記フェライトコアの前記中足部が挿通される中足孔が設けられ、前記中足孔の周りに前記一次巻線及び前記二次巻線が各々巻回されている巻線エリアと、前記一次側回路の一部となる一次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された一次側エリアと、前記二次側回路の一部となる二次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された二次側エリアと、前記一次側部品、前記二次側部品及びそれらの配線パターンが表面及び裏面に配置されていない中間エリアとを備え、前記巻線エリアと前記一次側エリアとが連続し、前記一次側エリアの一端部に前記中間エリア及び前記二次側エリアが順に連続し、前記二次側エリアが、所定幅の主切り込みを介して前記巻線エリアの側方に位置しており、
前記フェライトコアは、前記回路基板の前記巻線エリアに取り付けられ、前記中足部が前記巻線エリアの前記中足孔の中に、一方の前記外足部が前記主切り込みの中に、前記一対の平板部が前記多層プリント配線板の表面側及び裏面側に各々配置されて、前記一次側部品の1つとなり、
前記絶縁キャップは、前記回路基板の前記二次側エリアに取り付けられ、前記二次側エリアの表面及び裏面にある導電部と前記フェライトコアとの間の絶縁強度が規定値以上になるように、前記二次側エリアの表面及び裏面、前記主切り込み側の端面、前記主切り込みに対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の全部又は一部の領域を覆う電源用モジュールである。
【0010】
前記外部接続用端子部は、前記多層プリント配線板の配線パターンの一部であるランド、又は、前記多層プリント配線板の配線パターンに連続するように形成された端面電極、又はその両方により形成されたものにすることができる(請求項4記載の発明)。或いは、前記外部接続用端子部は、一端部が前記多層プリント配線板の配線パターンに接続された金属製端子にすることができる(請求項5記載の発明)。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、請求項1又は2記載の電源用モジュールと、前記電源用モジュールの前記外部接続用端子部を接続するための端子受け部を備えた本体機器とで構成されるスイッチング電源装置である。
【0012】
また、請求項7記載の発明は、互いに絶縁された一次側回路及び二次側回路がトランスの一次巻線及び二次巻線を介して接続されたスイッチング電源装置であって、
配線パターンを形成するための複数の配線層を有した多層プリント配線板に回路部品が実装された回路基板と、前記トランスの一構成部材であって、組み立て状態で、一対の平板部が中足部及び2つの外足部で相互に連結された形状になるフェライトコアと、有底筒状に形成された絶縁キャップと、前記多層プリント配線板の特定の導電部を外部に引き出すための外部接続用端子部とを備え、
前記回路基板は、配線パターンによって前記一次巻線及び前記二次巻線が形成されたエリアであって、前記フェライトコアの前記中足部が挿通される中足孔が設けられ、前記中足孔の周りに前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回されている巻線エリアと、前記一次側回路となる一次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された一次側エリアと、前記二次側回路となる二次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された二次側エリアと、前記一次側部品、前記二次側部品及びそれらの配線パターンが表面及び裏面に配置されていない中間エリアとを備え、前記巻線エリアと前記二次側エリアとが連続し、前記二次側エリアの一端部に前記中間エリア及び前記一次側エリアが順に連続し、前記一次側エリアが、所定幅の主切り込みを介して前記巻線エリアの側方に位置しており、
前記フェライトコアは、前記回路基板の前記巻線エリアに取り付けられ、前記中足部が前記巻線エリアの前記中足孔の中に、一方の前記外足部が前記主切り込みの中に、前記一対の平板部が前記多層プリント配線板の表面側及び裏面側に各々配置されて、前記二次側部品の1つとなり、
前記絶縁キャップは、前記回路基板の前記一次側エリアに取り付けられ、前記一次側エリアの表面及び裏面にある導電部と前記フェライトコアとの間の絶縁強度が規定値以上になるように、前記一次側エリアの表面及び裏面、前記主切り込み側の端面、前記主切り込みに対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の全部又は一部の領域を覆うスイッチング電源装置である。
【0013】
また、請求項8記載の発明は、互いに絶縁された一次側回路及び二次側回路がトランスの一次巻線及び二次巻線を介して接続されたスイッチング電源装置であって、
配線パターンを形成するための複数の配線層を有した多層プリント配線板に回路部品が実装された回路基板と、前記トランスの一構成部材であって、組み立て状態で、一対の平板部が中足部及び2つの外足部で相互に連結された形状になるフェライトコアと、有底筒状に形成された絶縁キャップと、前記多層プリント配線板の特定の導電部を外部に引き出すための外部接続用端子部とを備え、
前記回路基板は、配線パターンによって前記一次巻線及び前記二次巻線が形成されたエリアであって、前記フェライトコアの前記中足部が挿通される中足孔が設けられ、前記中足孔の周りに前記一次巻線及び前記二次巻線が巻回されている巻線エリアと、前記一次側回路となる一次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された一次側エリアと、前記二次側回路となる二次側部品及びその配線パターンが表面又は裏面又はその両方に配置された二次側エリアと、前記一次側部品、前記二次側部品及びそれらの配線パターンが表面及び裏面に配置されていない中間エリアとを備え、前記巻線エリアと前記一次側エリアとが連続し、前記一次側エリアの一端部に前記中間エリア及び前記二次側エリアが順に連続し、前記二次側エリアが、所定幅の主切り込みを介して前記巻線エリアの側方に位置しており、
前記フェライトコアは、前記回路基板の前記巻線エリアに取り付けられ、前記中足部が前記巻線エリアの前記中足孔の中に、一方の前記外足部が前記主切り込みの中に、前記一対の平板部が前記多層プリント配線板の表面側及び裏面側に各々配置されて、前記一次側部品の1つとなり、
前記絶縁キャップは、前記回路基板の前記二次側エリアに取り付けられ、前記二次側エリアの表面及び裏面にある導電部と前記フェライトコアとの間の絶縁強度が規定値以上になるように、前記二次側エリアの表面及び裏面、前記主切り込み側の端面、前記主切り込みに対して反対側の端面及び当該2つの端面に連続する端面の全部又は一部の領域を覆うスイッチング電源装置である。
【0014】
前記絶縁キャップは、合成樹脂の一体成形品であることが好ましい(請求項3、請求項9記載の発明)。
【発明の効果】
【0015】
請求項1又は2記載の電源用モジュールは、独特な外形の回路基板にフェライトコア及び絶縁キャップを取り付けたシプルな構造であり、一次側回路と二次側回路との間の絶縁強度を十分に確保しつつ、回路基板に発生する無駄なスペース(回路部品を配置しない中間エリアの面積)を従来よりも小さく抑えることができ、外形を容易に小形化することができる。また、請求項7又は8記載のスイッチング電源装置においても、同様の効果が得られる。請求項6記載のスイッチング電源装置は、上記の電源用モジュールを本体機器に取り付けることによって容易に製作することができ、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態の外観を示す平面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)である。
【
図2】
図1の中の電源用モジュール[本発明の電源用モジュールの一実施形態]の外観を示す正面図(a)、背面図(b)である。
【
図3】
図2の電源用モジュールが有するフェライトコアの組み立て状態を示す平面図(a)、フライトコアを構成するI型コアの構造を示す正面図(b)、E型コアの構造を示す背面図(c)である。
【
図4】
図2の電源用モジュールが有する絶縁キャップの構造を示す平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)、背面図(d)である。
【
図5】
図2の電源用モジュールが有する回路基板の構造を示す正面図(a)、背面図(b)、巻線エリアの内部の構造を示す縦断面図(c)である。
【
図6】
図2の電源用モジュールの第一の変形例の外観を示す正面図(a)、回路基板の構造を示す正面図(b)である。
【
図7】
図2の電源用モジュールの第二の変形例の外観を示す正面図(a)、回路基板の構造を示す正面図(b)である。
【
図8】本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態の外観を示す平面図(a)、底面図(b)、背面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<<第一の実施形態のスイッチング電源装置10及び電源用モジュール14>>
以下、本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態と、本発明の電源用モジュールの一実施形態について、
図1~
図7に基づいて説明する。
<スイッチング電源装置10及び電源用モジュール14の構成>
この実施形態のスイッチング電源装置10は、アルミ電解コンデンサやノイズフィルタ回路等の大型部品を備えたAC-DCコンバータ等であり、
図1に示すように、本体機器12と電源用モジュール14[本発明の電源用モジュールの一実施形態]とで構成される。本体機器12には上記の大型部品と小型部品の一部とが搭載され、電源用モジュール14にはその他の小型部品が搭載され、本体機器12に電源用モジュール14を取り付けることによって1台のスイッチング電源装置10が形成される。
【0018】
スイッチング電源装置10は、互いに絶縁された一次側回路16及び二次側回路18を有し、一次側回路16がトランス20の一次巻線22に、二次側回路18が二次巻線24に各々接続される。以下、一次側回路16の中の、本体機器12に搭載される部分を一次側回路16hと称し、一次側回路16hは、一次側部品26hとその配線パターンとで構成されるものとする。また、一次側回路16の中の、電源用モジュール14に搭載される部分を一次側回路16mと称し、一次側回路16mは、一次側部品26mとその配線パターンとで構成されるものとする。同様に、二次側回路18の中の、本体機器12に搭載される部分を二次側回路18hと称し、二次側回路18hは、二次側部品28hとその配線パターンとで構成されるものとする。また、二次側回路18の中の、電源用モジュール14に搭載される部分を二次側回路18mと称し、二次側回路18mは、二次側部品28mとその配線パターンとで構成されるものとする。
【0019】
本体機器12は、
図1に示すように、本体プリント配線板30aに回路部品等が実装された本体回路基板30を有している。本体プリント配線板30aの上面側には、一次側部品26h、二次側部品28h及び電源用モジュール14が搭載され、導電部が配線パターンに各々接続されている。なお、電源用モジュール14は、後述する外部接続用端子44(1),44(2)を有しており、外部接続用端子44(1),44(2)が本体プリント配線板30aの端子受け部(図示せず)に接続されている。また、本体プリント配線板30aの下面側には、一次側部品26h及び二次側部品28hが搭載され、導電部が配線パターンに各々接続されている。
【0020】
また、本体回路基板30の下面側には、金属製のピン部材で成る一次側の外部接続用端子部32(1)及び二次側の外部接続用端子部32(2)が実装され、ピン部材の基端部が配線パターンに各々はんだ付けされている。外部接続用端子部32(1),(2)は、スイッチング電源装置10の入出力端子部であり、ユーザ装置に実装する際に、ユーザ装置の回路基板に接続される。
【0021】
電源用モジュール14は、本体回路基板30に対して縦置き実装されるモジュールで、
図2に示すように、回路基板34、フェライトコア36、絶縁キャップ46及び外部接続用端子部44(1),44(2)とで構成される。フェライトコア36は、トランス20の一構成部材であり、
図3(a)に示すように、組み立て状態で、一対の平板部38(1),38(2)が中足部40及び2つの外足部42(1),42(2)で相互に連結された形状になる。例えば、
図3(b)に示すI型コア36aと
図3(c)に示すE型コア36bとを組み付けることによって形成される。絶縁キャップ46は、
図4に示すように、順に連続する4つの側板48(1)~48(4)で成る角筒体の一端部を天板50で閉鎖し、反対側に開口部52を設けた構造になっている。また、側板48(3)と側板48(4)との境界部分(開口部52側の端部)を少し切り欠いて逃げ部54が設けてある。絶縁キャップ46は、合成樹脂の一体成形品であることが好ましい。
【0022】
回路基板34は、
図5(a)、(b)に示すように、複数の配線層を有した多層プリント配線板34aに回路部品等が実装された部材で、巻線エリアMA、一次側エリア1A、二次側エリア2A及び中間エリアTAを備える。巻線エリアMAは、配線パターンによって一次巻線22及び二次巻線24が形成されたエリアであり、フェライトコア36の中足部40が挿通される中足孔56が設けられ、中足孔56の周りに一次巻線22及び二次巻線24が巻回されている。
【0023】
図5(c)に示すように、多層プリント配線板34aは8つの配線層を有しており、表面側の表層から順に、二次巻線24(1)、一次巻線22(1)~22(4)、二次巻線24(2),24(3)が形成され、表面側の表層にある二次巻線24(1)は、絶縁膜であるソルダーレジスト34bで覆われている。また、裏面側の表層には巻線及が形成されておらず、ソルダーレジストで覆われてもいない。
【0024】
各巻線の接続方法や用途は特に限定されないが、例えば、一次巻線22(1)~22(4)は、ビアホールを通じて相互に接続されて電力伝送用の一次巻線22として使用され、二次巻線24(1)~24(3)は、ビアホールを通じて相互に接続されて電力伝送用の二次巻線24として使用される。或いは、一次巻線22(1)~22(4)の中の一部が、一次側回路16mへの電源供給用又はトリガ信号出力用の一次巻線22として使用されたり、二次巻線24(1)~24(3)の中の一部が二次側回路18mへの電源供給用又はトリガ信号出力用の二次巻線24として使用されたりする場合もある。
【0025】
なお、一次巻線22(1)~22(4)、一次巻線22(1)~22(4)を接続するビアホール、及び一次巻線22を他のエリアに引き出す配線パターンは、巻線エリアMAの表面及び裏面に表出しないようにしてある。電源用モジュール14に組み立てた状態で、フェライトコア36に対して十分な絶縁強度を確保するためである。
【0026】
一次側エリア1Aは、一次側回路16m(一次側部品26m及びその配線パターン)が表面又は裏面又はその両方に配置されたエリアである。二次側エリア2Aは、二次側回路18m(二次側部品28m及びその配線パターン)が表面又は裏面又はその両方に配置されたエリアである。また、中間エリアTAは、一次側回路16m及び二次側回路18mが表面にも裏面にも配置されていないエリアである。
【0027】
回路基板34は、巻線エリアMAと二次側エリア2Aとが連続し、二次側エリア2Aの一端部に中間エリアTA及び一次側エリア1Aが順に連続し、一次側エリア1Aが、所定幅の主切り込み58を介して巻線エリアMAの側方に配置したレイアウトになっている。
【0028】
図5(b)の中の、中間エリアTAを跨ぐように実装されている回路部品は、高耐圧のコンデンサ素子60である。コンデンサ素子60は、一次側回路16で発生したスイッチングノイズが外部の入力電源に向かって漏洩しないように二次側回路18に還流させる働きや、二次側回路18で発生したスイッチングノイズが外部の負荷に向かって漏洩しないように一次側回路16に還流させる働きをする素子である。コンデンサ素子60の本体部は強固に絶縁されており、一方の端子(導線部)が一次側エリア1Aに接続されて一次側回路16mの一部となり、他方の端子(導線部)が二次側エリア2Aに接続されて二次側回路18mの一部となる。また、高耐圧フォトカプラ等の信号伝達用素子が中間エリアTAを跨ぐように実装された場合も、コンデンサ素子60と同様の扱いになる。
【0029】
外部接続用端子部44(1),44(2)は、回路基板34の特定の導電部を外部に引き出すための端子部で、ここでは回路基板34の一部として設けられている。一次側の外部接続用端子部44(1)は、回路基板34の一次側エリア1Aの下端部の表面及び裏面に設けた複数のランドで成り、一次側回路16mの特定の導電部がこのランドに引き出されている。また、二次側の外部接続用端子部44(2)は、回路基板34の二次エリア2Aの下端部を細長く突出させ、突出部の表面及び裏面にランドを設け、さらに突出部の先端側の端面及び側端面を導電メッキで覆い、二次側回路18mの特定の導電部がランド及び導電メッキに引き出されている。
【0030】
電源用モジュール14の組み立て方法の一例を説明すると、まず、回路基板34にフェライトコア36を取り付ける。具体的には、E型コア36bの平板部38(2)の内面に接着剤を塗布し、中足部40を巻線エリアMAの片方の面から中足孔56の中に差し込み、外足部42(1)を主切り込み54の中に配置させた状態で、平板部38(2)の内面を巻線エリアMAの表面に接着固定する。そして、巻線エリアMAの裏面側に突出する中足部40及び外足部42(1),42(2)の端面に接着剤を薄く塗布し、I型コア36aを片方の面を接着固定する。
【0031】
フェライトコア36は、巻線エリアMAに取り付けると、中足部40が中足孔56の中に配置され、外足部42(1)が主切り込み58の中に配置され、外足部42(2)が巻線エリアMAの外側近傍に配置され、一対の平板部38(1),38(2)が多層プリント配線板34aの表面側及び裏面側に各々配置された状態になる。この状態で、フェライトコア36と一次巻線22及び二次巻線24との関係を見ると、フェライトコア36と一次巻線22との間の絶縁は十分であるが、平板部38(1)は、ソルダーレジスト34bを挟んで二次巻線24(1)に近接する。ソルダーレジスト34bは非常に薄い絶縁膜であり、絶縁強度は高くはないので、フェライトコア36は、二次側部品28mの1つとして取り扱う必要がある。
【0032】
次に、回路基板34の一次側エリア1Aに絶縁キャップ46を取り付ける。まず、絶縁キャップ46の内側に適量の接着剤を充填し、絶縁キャップ46を、回路基板34の一次側エリア1Aの部分に被せるように装着する。そして、一次側エリア1Aの表面及び裏面の広い領域を側板48(1),48(3)で覆い、主切り込み58側の端面を側板48(4)で覆い、主切り込み58に対して反対側の端面の広い領域を側板48(2)で覆い、当該2つの端面に連続する端面を天板50で覆う。そして、絶縁キャップ46の内の接着剤を硬化させると、
図2(a)、(b)に示す電源用モジュール14の組み立て状態となる。なお、主切り込み58の幅は、フェライトコア36の外足部42(1)及び絶縁キャップ46の側板48(4)を無理なく差し込める幅を確保しつつ、できるだけ狭くすることが好ましい。
【0033】
電源用モジュール14は、絶縁キャップ46を取り付けないとすると、二次側回路18m(一次側部品28m及び配線パターン)の中で、フェライトコア36の外足部42(1)の外面が一次側回路16m(一次側部品26m及び配線パターン)に最も近接し、一次側回路16mと二次側回路18mとの間の絶縁強度が十分に確保できない。しかし、絶縁キャップ46で一次側回路16mを適切に覆うことによって、絶縁強度を十分に確保することができる。
【0034】
なお、絶縁キャップ46は、一次側エリア1Aの表面及び裏面、主切り込み58側の端面、主切り込み58に対して反対側の端面、及び当該2つの端面に連続する端面の全部の領域を覆う必要はなく、必要な領域だけ(一部の領域だけ)を覆うに構造にしてもよい。例えば、
図2(b)に示すように、絶縁キャップ46は、コンデンサ素子60の本体部にぶつからないように逃げ部54が設けられ、コンデンサ素子60の一次側の端子(導電部)を完全には覆っていない。しかし、コンデンサ素子60の一次側の端子(導電部)は、フェライトコア36から一定程度離れた位置にあるので、絶縁キャップ46で完全に覆わなくても、絶縁強度を確保することができる。
【0035】
また、絶縁強度だけを考えると、一次側エリア1Aの主切り込み58に対して反対側の端面は絶縁キャップ46で覆う必要はなく、側板48(2)は、絶縁強度に関してはほとんど寄与しない。しかし、側板48(2)は、絶縁キャップ46の形状安定性、取り付け時のハンドリングの容易性、デザイン性等を考慮して設けている。
【0036】
電源用モジュール14を本体機器12に取り付ける時は、外部接続用端子部44(1),44(2)を本体回路基板30に設けたスルーホール等の端子受け部にセットし、ハンダ付けにより接続する。これで、
図1(a)~(c)に示すように、スイッチング電源装置10の組み立て状態となる。
【0037】
<スイッチング電源装置10及び電源用モジュール14の効果>
以上説明したように、電源用モジュール14は、独特な外形の回路基板34にフェライトコア36及び絶縁キャップ46を取り付けたシンプルな構造であり、一次側回路16mと二次側回路18mとの間の絶縁強度を十分に確保しつつ、回路基板34に発生する無駄なスペース(回路部品を配置しない中間エリアTAの面積)を従来よりも小さく抑えることができ、外形を容易に小形化することができる。
また、スイッチング電源装置10は、上記の電源用モジュール14を本体機器12に取り付けることによって容易に製作することができ、同様の効果を得ることができる。
【0038】
<電源用モジュール14の2つの変形例>
次に、電源用モジュール14の2つの変形例を説明する。第一の変形例である電源用モジュール14xは、
図6(a)に示すように、上記の回路基板34を、外形が少し異なる回路基板34xに置き換えたものであり、その他の構成は電源用モジュール14と同様である。
【0039】
回路基板34xは、
図6(b)に示すように、二次側エリア2Aの、中間エリアTAと反対側の端部が延長され、この延長部分が所定幅の切り込み62を介して巻線エリアMAの側方に配置したレイアウトになっている。
【0040】
フェライトコア36は、回路基板34xの巻線エリアMAに取り付けた状態で、中足部40が中足孔56の中に、外足部42(1)が主切り込み58の中に、外足部42(2)が切り込み62の中に各々配置され、一対の平板部38(1),38(2)が多層プリント配線板34aの表面側及び裏面側に各々配置される。また、絶縁キャップ46は、回路基板34の時と同様に、回路基板34xの一次側エリア1Aを覆うように取り付けられる。
【0041】
電源用モジュール14xの場合も、フェライトコア36と一次側回路16m(一次側部品26m及び配線パターン)との絶縁に関しては、電源用モジュール14の場合と同様である。また、二次側回路18m(二次側部品28m及び配線パターン)の延長部分がフェライトコア36の外足部42(2)に近接するが、フェライトコア36は二次側部品28mの1つなので、絶縁強度は問題にならない。
【0042】
電源用モジュール14xによれば、上記の電源用モジュール14と同様の効果を得ることができ、二次側回路18mの実装スペースをさらに広くすることができる。
【0043】
第二の変形例である電源用モジュール14yは、
図7(a)に示すように、電源用モジュール14xの回路基板34xを、外形が少し異なる回路基板34yに置き換えたものであり、その他の構成は電源用モジュール14xと同様である。
【0044】
回路基板34yは、
図7(b)に示すように、二次側エリア2Aの延長部分がさらに延長され、巻線エリアMAの反対側の端部に連続しているという特徴がある。また、これに合わせて、回路基板34yでは、回路基板34xの切り込み62が外足孔64に変更されている。
【0045】
フェライトコア36は、回路基板34yの巻線エリアMAに取り付けた状態で、中足部40が中足孔56の中に、外足部42(1)が主切り込み58の中に、外足部42(2)が外足孔64の中に各々配置され、一対の平板部38(1),38(2)が多層プリント配線板34aの表面側及び裏面側に各々配置される。また、絶縁キャップ46は、回路基板34xの時と同様に、回路基板34xの一次側エリア1Aを覆うように取り付けられる。
【0046】
電源用モジュール14yによれば、上記の電源用モジュール14xと同様の効果を得ることができ、さらに、二次巻線24を、フェライトコア36の反対側の開口部(
図7(a)における上側の開口部)からも引き出すことができるので、パターン設計の自由度が向上する。
【0047】
<<第二の実施形態のスイッチング電源装置66>>
次に、本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態について、
図8に基づいて説明する。この実施形態のスイッチング電源装置66は、上記の電源用モジュール14x(電源用モジュール14の第一の変形例)と類似点が多いので、同様の構成は同一の符号を付して説明を省略し、構成が異なる点を中心に説明する。
<スイッチング電源装置66の構成>
スイッチング電源装置66は、アルミ電解コンデンサやノイズフィルタ回路等の大型の回路部品を有しないDC-DCコンバータ等であり、一次側回路16及び二次側回路18の全部が回路基板68に搭載され、上記の本体機器12に相当する構成は備えていない。そこで、以下の説明では、スイッチング電源装置66の一次側回路16を一次側回路16h(一次側部品26h及びその配線パターン)と称し、二次側回路18を二次側回路18h(二次側部品28h及びその配線パターン)と称する。
【0048】
スイッチング電源装置66は、
図8に示すように、回路基板68、フェライトコア36、絶縁キャップ46x及び外部接続用端子部32(1),32(2)で構成される。
【0049】
回路基板68は、複数の配線層を有した多層プリント配線板68aに回路部品等が実装された部材で、
図6(b)に示す回路基板34xと同様にレイアウトされた巻線エリアMA、一次側エリア1A、二次側エリア2A及び中間エリアTAを備えている。ただし、回路基板68の外部接続用端子部は、上記の外部接続用端子部44(1),44(2)に代えて、基端部が配線パターンに接続された金属製のピン部材で成る外部接続用端子部32(1),32(2)が設けられている。スイッチング電源装置66は、ユーザ装置の回路基板に横置き実装されることが想定されており、各ピン部材の先端部が本体基板の端子受け部(スルーホール)に差し込まれ、ハンダ付けによって接続される。
【0050】
絶縁キャップ46xは、上記の絶縁キャップ46とほぼ同じ構造であるが、異なるのは、側板48(3)に、開口部52側の端縁部から天板50に向かって延びる所定幅の切り込み70が設けてある点である。回路基板68の一次側エリア1Aには外部接続端子32(1)が立設されているので、切り込み70は、絶縁キャップ46を一次側エリア1Aに取り付ける時に、側板48(3)が外部接続端子32(1)にぶつからないようにする働きをする。
【0051】
<スイッチング電源装置66の効果>
以上説明したように、スイッチング電源装置66は、独特な外形の回路基板68にフェライトコア36と絶縁キャップ46xとを装着したシンプルな構造であり、一次側回路16mと二次側回路18mとの間の絶縁強度を十分に確保しつつ、回路基板68に発生する無駄なスペース(回路部品を配置しない中間エリアTAの面積)を小さく抑えることができ、外形を容易に小形化することができる。
【0052】
<<その他の実施形態及び変形例など>>
なお、本発明のスイッチング電源装置及び電源用モジュールは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記のフェライトコア36は、I型コア36aとE型コア36bとを組み合わせたものであるが、組み立て状態で同様の形状になるものであればよく、例えば、2つのE型コアを組み合わせて形成してもよい。また、絶縁キャップは、回路基板に接着固定される構造にしてもよいし、回路基板の適宜の部位に係合して固定される構造にしてもよい。
【0053】
回路基板として使用される多層プリント配線板は、配線層の数が2つ以上であればよく、上記の多層プリント配線板34aのように8つに限定されない。また、外部接続用端子部の形態は、上記の外部接続用端子部32(1),32(2),44(1),44(2)の形態に限定されず、相手方の端子受け部の形態に合わせて自由に変更することができる。例えば、相手方の端子受け部が雄コネクタであれば、外部接続用端子部は雌コネクタにすればよい。
【0054】
スイッチング電源装置を本体機器と電源用モジュールとで構成する場合、一次側回路及び二次側回路の中のどの部分を電源用モジュールに搭載するかは自由に設定することができ、例えば、一次側回路の配線パターンの一部(一次側部品を除く)と二次側回路の一部とを電源用モジュールに搭載する構成にしてもよいし、二次側回路の配線パターンの一部(二次側部品を除く)と一次側回路の一部とを電源用モジュールに搭載する構成にしてもよい。
【0055】
上記の各実施形態は、フェライトコアを二次側部品の1つとし、絶縁キャップを回路基板の一次側エリアに取り付ける構成にしているが、フェライトコアを一次側部品の1つとし、絶縁キャップを回路基板の二次側エリアに取り付ける構成にすることも可能である。この場合の実施形態は、上記の各実施形態の説明中の「一次」を全て「二次」と読み替え、「二次」を全て「一次」と読み替えることによって説明することができ、同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0056】
10,66 スイッチング電源装置
12 本体機器
14,14x,14y 電源用モジュール
16,16h,16m 一次側回路
18、18h,18m 二次側回路
20 トランス
22,22(1)~22(4) 一次巻線
24,24(1)~24(3) 二次巻線
26h,26m 一次側部品
28h,28m 二次側部品
32(1),32(2) 外部接続用端子部(スイッチング電源装置)
34,34x,68 回路基板
34a,68a 多層プリント配線板
36 フェライトコア
38(1),38(2) 平板部
40 中足部
42(1),42(2) 外足部
44(1),44(2) 外部接続用端子部(電源用モジュール)
46,46x 絶縁キャップ
56 中足孔
58 主切り込み
1A 一次側エリア(回路基板)
2A 二次側エリア(回路基板)
MA 巻線エリア(回路基板)
TA 中間エリア(回路基板)