(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024958
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ロードコーン転倒検知システム、及び転倒検知方法
(51)【国際特許分類】
E01F 9/608 20160101AFI20250214BHJP
E01F 9/688 20160101ALI20250214BHJP
E01F 13/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
E01F9/608
E01F9/688
E01F13/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129365
(22)【出願日】2023-08-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】507230382
【氏名又は名称】首都高メンテナンス西東京株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523242745
【氏名又は名称】西尾レントオール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509150950
【氏名又は名称】株式会社アドバンスクリエート
(74)【代理人】
【識別番号】100193116
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】坪山 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】横井 修司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
【テーマコード(参考)】
2D064
2D101
【Fターム(参考)】
2D064AA21
2D064BA03
2D064BA05
2D064JA02
2D101CA11
2D101DA05
2D101EA06
(57)【要約】
【課題】ロードコーンの転倒を検知する新しい転倒検知システムを提供する。
【解決手段】ロードコーン転倒検知システム(100)は、ロードコーン(1)の内部に収容された状態で地面に載置される一又は複数の転倒監視装置(10)と、転倒監視装置(10)に電源ケーブル(21)を介して電力を供給する転倒検知装置(20)と、を備える。転倒監視装置(10)は、ロードコーン(1)の内部を照射する発光部(22)と、受光部(23)と、受光部(23)の受光量の変化に応じて電源ケーブル(21)を流れる電流量を変化させる転倒監視部(241)と、を備える。転倒検知装置(10)は、電源ケーブル(21)を介して供給する電力に基づいてロードコーン(1)の転倒を検知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードコーンの内部に収容された状態で地面に載置される一又は複数の転倒監視装置と、
前記転倒監視装置に電源ケーブルを介して電力を供給する転倒検知装置と、を備えるロードコーン転倒検知システムにおいて、
前記転倒監視装置は、
前記ロードコーンの内部を照射する発光部と、
受光部と、
前記受光部の受光量の変化に応じて前記電源ケーブルを流れる電流量を変化させる転倒監視部と、を備え、
前記転倒検知装置は、前記電源ケーブルを介して供給する電力に基づいて前記ロードコーンの転倒を検知する、
ロードコーン転倒検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載のロードコーン転倒検知システムであって、
微分回路をさらに備え、
前記発光部は、所定の周波数で発光期間と非発光期間とを交互に繰り返すように構成され、
前記受光部は、受光量に応じて生成される転倒監視用電流を前記微分回路に出力し、
前記転倒監視部は、前記微分回路の出力に基づいて前記ロードコーンが転倒したか否かを判定し、前記ロードコーンが転倒したと判定した場合に前記電源ケーブルを流れる電流量を変化させる、
ロードコーン転倒検知システム。
【請求項3】
請求項2に記載のロードコーン転倒検知システムであって、
前記転倒監視部は、前記微分回路の出力に基づいて前記転倒監視用電流の高周波成分を監視し、所定の時間範囲内における前記高周波成分の周波数が所定周波数以下の場合に、前記ロードコーンが転倒したと判定する、
ロードコーン転倒検知システム。
【請求項4】
請求項1に記載のロードコーン転倒検知システムであって、
前記転倒監視部は、前記電源ケーブルの接地側と非接地側とを短絡させることにより前記電源ケーブルを流れる電流量を変化させるように構成され、
前記転倒検知装置は、前記電源ケーブルを流れる電流量が所定値を超えた場合、又は前記電源ケーブルの電圧が所定値未満になった場合に前記ロードコーンの転倒を検知する、
ロードコーン転倒検知システム。
【請求項5】
請求項2に記載のロードコーン転倒検知システムであって、
前記転倒検知装置は、所定の周波数の矩形波を出力することにより前記発光部に電力を供給し、
前記発光部は、前記矩形波に従って前記発光期間と前記非発光期間とを交互に繰り返すように構成される、
ロードコーン転倒検知システム。
【請求項6】
請求項2に記載のロードコーン転倒検知システムであって、
前記所定の周波数は、100ヘルツ以上に設定される、
ロードコーン転倒検知システム。
【請求項7】
請求項1に記載のロードコーン転倒検知システムであって、
前記転倒検知装置は第一報知手段をさらに備え、
前記第一報知手段は、前記ロードコーンの転倒を検知した場合に前記ロードコーンの転倒を音又は光により報知する、
ロードコーン転倒検知システム。
【請求項8】
請求項1に記載のロードコーン転倒検知システムであって、
ユーザが携帯可能に構成された一又は複数の受信機と、
前記転倒検知装置に備わる送信手段と、をさらに備え、
前記受信機は、受信手段と、第二報知手段と、を有し、
前記転倒検知装置は、前記ロードコーンの転倒を検知した場合に前記送信手段を介して所定の信号を送信するように構成され、
前記第二報知手段は、前記所定の信号を前記受信手段が受信した場合に、前記ロードコーンの転倒を音又は振動により前記ユーザに報知する、
ロードコーン転倒検知システム。
【請求項9】
ロードコーンの内部に収容された状態で地面に載置される一又は複数の転倒監視装置と、
前記転倒監視装置に電源ケーブルを介して電力を供給する転倒検知装置と、を用いたロードコーン転倒監視方法において、
前記ロードコーンの内部を照射し、
前記ロードコーンの内部を反射した光を受光し、
受光量の変化に応じて前記電源ケーブルを流れる電流量を変化させ、
前記電源ケーブルを介して供給する電力に基づいて前記ロードコーンの転倒を検知する、
ロードコーン転倒検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードコーン転倒検知システム、及び転倒検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などの道路上で工事を行う場合、工事を行う場所を複数のロードコーン等により区画して明示することが義務付けられている。
【0003】
このような工事現場において、ステレオカメラが取得した映像を監視することによりロードコーンの転倒を検知する監視システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステレオカメラ等の撮像装置を要さずにロードコーンの転倒を検知する新しい転倒検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るロードコーン転倒検知システムは、ロードコーンの内部に収容された状態で地面に載置される一又は複数の転倒監視装置と、転倒監視装置に電源ケーブルを介して電力を供給する転倒検知装置と、を備える。転倒監視装置は、ロードコーンの内部を照射する発光部と、受光部と、受光部の受光量の変化に応じて電源ケーブルを流れる電流量を変化させる転倒監視部と、を備える。転倒検知装置は、電源ケーブルを介して供給する電力に基づいてロードコーンの転倒を検知する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロードコーンの転倒を検知する新しい転倒検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るロードコーン転倒検知システムの側面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るロードコーン転倒検知システムの平面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る転倒検知装置の構成図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る転倒監視装置の構成図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る発光部から出射された光が進む方向を説明するための図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る短絡回路を説明するための図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る携帯受信機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
-実施形態-
図1及び
図2は、一実施形態のロードコーン転倒検知システム100(以下、単に転倒検知システム100と呼ぶ)の構成を説明するための図である。
図1は、実際に路上等に設置した状態の転倒検知システム100を側面から見た図を示す。
図2は、
図1を、ロードコーン1を除いた状態で真上から見た平面図を示す。
【0011】
転倒検知システム100は、転倒検知装置10と、一又は複数の転倒監視装置20と、転倒検知装置10と一又は複数の転倒監視装置20とを電気的に接続する電源ケーブル21と、を含んで構成される。
【0012】
転倒検知システム10が転倒監視装置20を2以上有する場合、電源ケーブル21は、後述する転倒検知装置10の電力出力端子13と接続可能なプラグを一端に備えた幹線21aと、幹線21aから所定の間隔で分岐する複数の支線21bとから構成されるいわゆるスズランケーブルであってよい。この場合、
図2に示すように、各支線21bの先端に転倒監視装置20がそれぞれ接続される。すなわち、本実施形態の転倒検知システム100は、複数の転倒検知装置20が電源ケーブル21を介して一連一体に連接されて構成される。なお、幹線21aの長さ、及び、支線21bの分岐間隔および分岐数は、用途に合わせて適宜設定される。例えば本実施形態では、高速道路での夜間工事時の使用を想定して、幹線21aの長さを100mとし、支線21bに係る分岐点が5m毎に設けられる。これにより、一組のロードコーン1と転倒監視装置20とが一体となって構成される保安灯が100mに亘って5m間隔で複数連なる転倒検知システム100が構成される。転倒検知装置10と転倒監視装置20の各構成の詳細については
図3から
図6を用いて説明する。
【0013】
図3は、一実施形態に係る転倒検知装置10の構成例を示す図である。本実施形態の転倒検知装置10は、マイコン11と、電源回路12と、電力出力端子13と、報知手段14と、通信手段15と、を備える。
【0014】
マイコン11は、プロセッサ(CPU)と、記憶部(記憶媒体)として内蔵あるいは付設されたメモリと、入出力インタフェース(I/Oポート)とを含んで構成される。マイコン11は、出力制御部111と、転倒検知部112と、報知部113と、通信部114とに係る機能部を有し、メモリに格納された制御プログラムに従って各機能部を実行するように構成される。
【0015】
出力制御部111は、電源回路12から電力出力端子13を介して転倒監視装置20に出力される電力を制御する。出力制御部111による電力制御の詳細については後述する。
【0016】
転倒検知部112は、電源回路12から電力出力端子13を介して転倒監視装置20に出力される電力に基づいて、ロードコーン1が転倒したか否かを検知する。転倒検知部112による転倒検知方法の詳細については後述する。
【0017】
報知部113は、転倒検知部112によって少なくとも一つ以上のロードコーン1の転倒が検知された際に、報知手段14を用いて近辺のユーザ或いは作業者などにロードコーン1が転倒したことを報知する。報知手段14は、光又は音等を発して人の注意を引くことができることを前提に、その態様については特に制限されない。本実施形態に係る報知手段14は例えば警告灯であってよい。この場合、報知部113は、転倒検知部112がロードコーン1の転倒を検知した時に警告灯を点灯させる。これにより、作業者等はロードコーン1が転倒したことを知得することができるので、ロードコーン1により区画された領域への車両の突入などを想定して、その場から退避する等の危険回避行動をすばやく実行することが可能となる。
【0018】
また、転倒検知装置10は、通信部114と通信手段15とを備えてもよい。通信部114は、転倒検知部112によってロードコーン1の転倒が検知された際に、転倒が検知されたことを示す所定の信号(転倒検知信号)を後述する携帯受信機30に通信手段15を用いて送信する。これにより、携帯受信機30を所持する所定距離内のユーザにロードコーン1の転倒を報知することが可能になる。通信手段15は、所定距離内へ電波を送信可能であればよく、転倒検知システム100の仕様に応じて公知の無線モジュールが適宜採用されてよい。また、ここでの所定距離は、転倒検知システム100が使用される環境に応じて適宜設定されてよい。転倒検知システム100が高速道路上の工事現場に適用された場合、所定距離は例えば200mに設定されてよい。
【0019】
電源回路12は、転倒検知装置10の電源として構成されるとともに、電源ケーブル21を介して1又は複数の転倒監視装置20に電力を供給する電力供給部としても機能する。本実施形態の電源回路12は、DC/DCコンバータを含んで構成され、転倒検知装置10の外部電源からDC(直流)24Vまたはその他の直流電圧が例えば
図3の左側に示す電源ケーブルを介して入力される。ただし、電源回路12の構成は、外部電源の仕様に応じて適宜変更されてもよく、例えば外部電源が交流電源である場合にはAC/DCコンバータを含んで構成されてもよい。電源回路12は、入力された直流電圧を適切な電圧値に変圧して各構成に供給する。なお、電源回路12が転倒監視装置20に電力を出力するタイミング等は出力制御部111に制御される。
【0020】
図4は、一実施形態に係る転倒監視装置20の構成例を示す図である。本実施形態の転倒監視装置20は、発光部22と、受光部23と、マイコン24と、微分回路25と、短絡回路26と、電源回路27と、電源ケーブル21と、を備える。
【0021】
発光部22は、ロードコーン1の内部を照射するように構成される。発光部22は、例えば少なくとも1以上の高輝度赤色LEDであり、その発光面を上方に向ける等して、出射した光が転倒監視装置20を覆うロードコーン1の内面に照射されるように配置される。なお、本実施形態の発光部22を点灯させるための電力は、転倒検知装置10から電源ケーブル21を介して供給される。
【0022】
受光部23は、例えばフォトトランジスタ等の受光素子を含んで構成され、受けた光の強度(受光量)に応じた電流を出力する。受光部23が受光量に応じて出力する電流を以下では転倒監視用電流と称する。
【0023】
マイコン24は、プロセッサ(CPU)と、記憶部(記憶媒体)として内蔵あるいは付設されたメモリと、入出力インタフェース(I/Oポート)とを含んで構成される。マイコン24は、少なくとも一機能部としての転倒監視部241を有し、メモリに格納された制御プログラムに従って当該機能部の機能を実行するように構成される。
【0024】
転倒監視部241は、受光部23による受光量の変化に応じて電源ケーブル21を流れる電流量を変化させる。具体的には、転倒監視部241は、受光部23が出力する電流(転倒監視用電流)を監視して、ロードコーン1が転倒したと判定できる場合に電源ケーブル21を流れる電流量を変化させる。詳細は
図5、
図6を参照して後述する。
【0025】
また、転倒監視装置20は、微分回路25を備えてもよい。微分回路25は、入力信号の時間に関する微分(時間変化率)を出力する回路である。本実施形態の微分回路25は、転倒監視用電流を入力とし、出力した値をマイコン24に入力するように構成される。なお、ここでいう微分回路とは、微分動作を行う回路であればよく、ハイパスフィルタ、差動オペアンプなど、時間変化率に対応する出力を生成する回路全般を含むものとする。
【0026】
また、転倒監視装置20は、短絡回路26を備えてもよい。短絡回路26の詳細は
図6を用いて後述する。
【0027】
電源回路27は、DC/DCコンバータを含んで構成される。電源回路27には、転倒検知装置10からDC(直流)24Vまたはその他の直流電圧が電源ケーブル21を介して入力される。電源回路27は、入力された直流電圧を適切な電圧値(例えば5V)に変圧してマイコン24等に供給する。
【0028】
次に、
図5、
図6を参照して、本実施形態の転倒検知システム100がロードコーン1の転倒を検知する方法(転倒検知方法A)について説明する。
【0029】
図5は、ロードコーン1の転倒検知方法を説明するための図である。
図5(a)は、ロードコーン1が転倒していない状態(正常時)の図であり、
図5(b)は、ロードコーン1が転倒した状態の図である。
【0030】
図5(a)に示す矢印の方向は、転倒監視装置20に備わる発光部22から出射された光が進む方向の一例を表している。ここで、一般的なロードコーンは、三角錐形状であり、上部へ行くほど狭くなっている。このため、転倒監視装置20から上方に出射された光は傾斜を有するロードコーン1の内壁を乱反射し、その一部は再び転倒監視装置20へ向かう。すなわち、ロードコーン1の内部に収容された転倒監視装置20から出力された光の一部は、ロードコーン1の内面を反射して転倒監視装置20の受光部23に入力される。受光部23は、受光量に応じた電流を生成し、転倒監視用電流としてマイコン24に出力する。マイコン24に入力された転倒監視用電流は、ロードコーン1が転倒したか否かを判定するために転倒監視部251により監視される。
【0031】
他方、
図5(b)に示すように、ロードコーン1が転倒した場合には、転倒監視装置20から上方に出射された光はロードコーン1の内面を反射しないので、転倒監視装置20から上方に出射された光が反射して受光部23に入力されることはない。また、例えば夜間時であれば、ロードコーン1に覆われていない転倒監視装置20が太陽光にさらされることもない。すなわち、ロードコーン1に覆われた状態で受光部23が受けていた光(反射光)は、ロードコーン1の転倒後には入射されなくなる。このような状況下において転倒監視装置20を覆うロードコーン1が転倒した際には、受光部23が出力する転倒監視電流はロードコーン1が転倒する前よりも小さくなる。したがって、転倒監視部241は、転倒監視用電流が所定値以下に低下した場合、若しくは、転倒監視用電流が所定値以上低下した場合(すなわち転倒監視電流が所定の変化率以上に低下した場合)に、ロードコーン1が転倒したと判定することが可能となる。なお、ここでの所定値は、ロードコーン1の転倒を適切に検知できることを前提に、転倒検知システム100の製品仕様等に応じて適宜設定されてよい。
【0032】
そして、転倒監視部241は、転倒監視用電流に基づいてロードコーン1が転倒したと判定できる場合には、電源ケーブル21を流れる電流を変化させる。電源ケーブル21を流れる電流を変化させる方法について
図6を参照して説明する。
【0033】
図6は、短絡回路26を説明するための図である。本実施形態の転倒監視装置20は、電源ケーブル21を流れる電流を変化させる手段として短絡回路26を備える。短絡回路26は、抵抗成分261と、スイッチ回路262と、を有する。転倒監視部241は、ロードコーン1が転倒したと判定した場合には、短絡回路26のスイッチ回路262を導通させ、電源ケーブル21の非接地側と接地側とを短絡させる。これにより、転倒監視部241は、ロードコーン1が転倒したと判定した場合に電源ケーブル21に流れる電流量を増大させることができるとともに、電源ケーブル21の電圧(抵抗成分261の非接地側電圧)を例えば略0Vに低減させることができる。なお、増大させる電流量、すなわち抵抗成分261の抵抗値は製品仕様等に応じて適宜設定されてよい。
【0034】
一方、転倒検知装置10が有する転倒検知部112(
図3参照)は、電源ケーブル21を介して転倒監視装置20に供給する電力に基づいてロードコーン1が転倒したか否かを検知する。
【0035】
具体的には、本実施形態の転倒検知部112は、電源ケーブル21を流れる電流量の変化、すなわち転倒監視装置20に供給する電流量の変化に基づいてロードコーン1の転倒を検知するように構成される。より具体的には、転倒検知部112は、転倒監視装置20に供給する電流量が所定値以上に増大した場合にロードコーン1の転倒を検知するように構成されてよい。
【0036】
また、本実施形態の転倒検知部112は、電源ケーブル21の電圧の変化、すなわち抵抗成分261の非接地側の電圧の変化に基づいてロードコーン1の転倒を検知するように構成されてもよい。より具体的には、転倒検知部112は、電源ケーブル21の電圧が所定値未満になった場合にロードコーン1の転倒を検知するように構成されてよい。
【0037】
このように、転倒検知装置10は、電源ケーブル21を介して転倒監視装置20に供給する電力を監視することによって、ロードコーン1が転倒したことを検知することができる。なおここでの所定値は、好適な検知精度が担保されることを前提に適宜設定されてよい。
【0038】
続いて、転倒監視装置20による上記とは別の転倒検知方法(転倒検知方法B)について説明する。
【0039】
例えば転倒監視装置20が太陽光にさらされ得る環境で使用される場合、ロードコーン1が転倒した場合(
図5(b))には受光部23に太陽光が入射されるので、ロードコーン1が転倒したか否かを転倒検知方法Aのように受光量のみに基づいて判定することは困難である。
【0040】
そこで、本実施形態の転倒監視装置20は、発光部22を所定の周波数で明滅させるように構成される。そうすると、ロードコーン1に覆われた状態における受光部23には、発光部22の明滅に応じた間隔で光(反射光)が入射される。一方、ロードコーン1が転倒した場合(
図5(b))に入射される光(太陽光)は、規則的に明滅することは無く、原則として一定の光量が維持され急変しない(少なくとも急変が繰り返されることはない)。すなわち、
図5(a)の状態において受光される光(反射光)には発光部22の明滅に伴う高周波成分が多く含まれるが、
図5(b)の状態において受光される光(太陽光)には同様の高周波成分は含まれない(或いは反射光に比べて少ない)。このため、転倒監視装置20は、受光部23が受光する光の周波数成分に着目することによって受光部23が受光した光が発光部22から出射された光か否かを判別し、ロードコーン1が転倒したか否かを判定することが可能となる。以下、その具体的方法について説明する。
【0041】
以下に説明する転倒検知方法では、微分回路25が用いられる。微分回路25を用いる場合、発光部22は、所定の周波数で発光期間と非発光期間とを交互に繰り返すように構成される。具体的には、電源回路12が所定の周波数の矩形波を出力して発光部22に電力を供給することにより、発光部22は、供給される矩形波に従って発光期間と前記非発光期間を交互に繰り返すことができる。なお、ここで述べた所定の周波数を以下では発光周波数とも称する。
【0042】
そうすると、ロードコーン1に収容された状態における受光部23には(
図5(a)参照)、上記の発光周波数に応じた間隔で光(反射光)が入射される。その結果、受光部23からは、発光周波数に応じた周波数成分を含む転倒監視用電流が出力され、微分回路25に入力される。
【0043】
微分回路25は、入力された転倒監視用電流の時間変化率(時間に関する微分)を出力するように構成される。そして、当該出力はマイコン24に入力される。これにより、転倒監視部241は、微分回路25の出力に基づいて転倒監視用電流の高周波成分を監視することができる。具体的には、マイコン24は、まず微分回路25の出力(アナログ出力)をデジタル信号に変換する。転倒監視部241は、デジタル化された微分回路25の出力を解析し、当該出力の周波数成分を評価する。
【0044】
より具体的な手法として、転倒監視部241は、デジタル化された微分回路24の出力を解析するために一定期間(所定の時間範囲内)のウインドウを設定し、当該ウインドウ内の信号を抽出してその特徴を評価してもよい。さらに、転倒監視部241は、複数のウインドウを連続して解析することによってウインドウ間における周波数成分の変化を観測することで、微分回路25の出力における高周波成分の増減を監視するように構成されてもよい。そして、微分回路25の出力の高周波成分が所定の閾値以下(所定周波数以下)になった場合に、ロードコーン1が転倒したと判定されてよい。これにより、転倒監視部241は、夜間だけでなく転倒監視装置20が太陽光にさらされる環境においてもロードコーン1が転倒したか否かをより精度よく判定することができる。なお、上記の所定の時間範囲、発光周波数およびそのデューティ比、閾値となる所定周波数等の値は、好適な検知精度が担保されることを前提に、製品仕様等に応じて適宜設定されてよい。
【0045】
ただし、ロードコーン1が夜間時の保安灯として用いられることを考慮して発光周波数を設定する場合は、いわゆるフリッカー融合頻度を考慮して、100ヘルツ以上に設定されるのが好ましい。これにより、発光部22から出射された光によって、ロードコーン1全体をちらつき(フリッカー)を感じさせることなく明るく照らし出すことができる。
【0046】
次に、携帯受信機30(以下単に受信機30と称する)について説明する。本実施形態の転倒検知システム100は、一又は複数の受信機30をさらに備えてもよい。
【0047】
図7は、本実施形態の受信機30の構成例を示す図である。受信機30は、マイコン31と、通信手段32と、報知手段33と、を備える。なお受信機30はユーザが携帯可能に構成される。受信機30を携帯して使用するのに必要なバッテリ等の構成については割愛する。
【0048】
マイコン31は、プロセッサ(CPU)と、記憶部(記憶媒体)として内蔵あるいは付設されたメモリと、入出力インタフェース(I/Oポート)とを含んで構成される。マイコン31は、通信部310と、報知部311とに係る機能部を有し、メモリに格納された制御プログラムに従って各機能部を実行するように構成される。
【0049】
通信部310は、転倒検知装置10から送信される信号(転倒検知信号)が通信手段32を介して受信されるのを待機する。通信手段32は、受信機能を備える公知の無線モジュールであればよく、特に限定されない。
【0050】
報知部311は、転倒検知信号を受信した場合に、報知手段33を用いてロードコーン1が転倒したことをユーザに報知する。報知手段33は、ブザーやモータ等、音又は振動等を利用してユーザに注意を促すことができる手段であればよく、製品仕様に応じて適宜選択されてよい。これにより、ロードコーン転倒検知システム100は、転倒検知装置10から離れた場所にいる関係者に対してロードコーン1が転倒したことを報知することができる。
【0051】
以上、一実施形態に係るロードコーン転倒検知システム100は、ロードコーン1の内部に収容された状態で地面に載置される一又は複数の転倒監視装置10と、転倒監視装置10に電源ケーブル21を介して電力を供給する転倒検知装置20と、を備える。転倒監視装置10は、ロードコーン1の内部を照射する発光部22と、受光部23と、受光部23の受光量の変化に応じて電源ケーブル21を流れる電流量を変化させる転倒監視部241と、を備える。転倒検知装置10は、電源ケーブル21を介して供給する電力に基づいてロードコーン1の転倒を検知する。
【0052】
これにより、カメラ等の撮像素子や振動センサ等のセンサを要さずにロードコーン1の転倒を検知でき、且つ、転倒監視装置20から転倒検知装置10に対して無線モジュールや追加の信号線を要さずに電源ケーブルのみを介してロードコーン1が転倒したことを伝達できるよりシンプルな新しい転倒検知システムを提供することができる。
【0053】
また、一実施形態のロードコーン転倒検知システム100は、微分回路25をさらに備え、発光部22は、所定の周波数で発光期間と非発光期間を交互に繰り返すように構成され、受光部23は、受光量に応じて生成される転倒監視用電流を微分回路25に出力し、転倒監視部241は、微分回路25の出力に基づいてロードコーン1が転倒したか否かを判定し、ロードコーン1が転倒したと判定した場合に電源ケーブル21を流れる電流量を変化させる。
【0054】
これにより、微分回路を用いて転倒監視用電流の高周波成分を抽出したうえでロードコーン1の転倒を監視できるので、転倒監視装置20が太陽光にさらされる環境下においてもロードコーン1の転倒を好適に検知することができる。
【0055】
また、一実施形態のロードコーン転倒検知システム100によれば、転倒監視部241は、微分回路25の出力に基づいて転倒監視用電流の高周波成分を監視し、所定の時間範囲内における高周波成分の周波数が所定周波数以下の場合に、ロードコーン1が転倒したと判定する。これにより、好適な検知精度が担保されたロードコーン転倒検知システム100を実現することができる。
【0056】
また、一実施形態のロードコーン転倒検知システム100によれば、転倒監視部20は、電源ケーブル21の接地側と非接地側を短絡させることにより電源ケーブル21を流れる電流量を変化させるように構成され、転倒検知装置10は、電源ケーブル21を流れる電流量が所定値を超えた場合、又は電源ケーブル21の電圧が所定値未満になった場合にロードコーン1の転倒を検知する。これにより、転倒監視装置20から転倒検知装置10に対してロードコーン1が転倒したことを電源ケーブル21のみを介して伝達することできる。
【0057】
また、一実施形態のロードコーン転倒検知システム100によれば、転倒検知装置10は、所定の周波数の矩形波を出力することにより発光部22に電力を供給し、発光部22は、矩形波に従って発光期間と非発光期間を交互に繰り返すように構成される。これにより、転倒検知装置10に連なる複数の転倒監視装置20に備わる発光部22の明滅を同時に制御することができる。
【0058】
また、一実施形態のロードコーン転倒検知システム100によれば、所定の周波数は、100ヘルツ以上に設定される。これにより、発光部22から出射された光によって、ロードコーン1全体をちらつき(フリッカー)を感じさせることなく明るく照らし出すことができる。結果として、ロードコーン転倒検知システム100は、転倒検知機能に加えて、ロードコーン1に対して内照式保安灯としての照明機能を付加することができる。
【0059】
また、一実施形態のロードコーン転倒検知システム100によれば、転倒検知装置10は第一報知手段14をさらに備え、第一報知手段14は、ロードコーン1の転倒を検知した場合にロードコーン1の転倒を音又は光により報知する。これにより、転倒検知装置10の近辺にいる工事現場の作業者等に対してロードコーン1が転倒したことを警告することができるので、作業者等に対して、その場から退避する等の危険回避行動を促すことができる。
【0060】
また、一実施形態のロードコーン転倒検知システム100は、ユーザが携帯可能に構成された一又は複数の受信機30と、転倒検知装置10に備わる送信手段15と、をさらに備え、受信機30は、受信手段32と、第二報知手段33と、を有し、転倒検知装置10は、ロードコーン1の転倒を検知した場合に送信手段15を介して所定の信号を送信するように構成され、第二報知手段33は、所定の信号を受信手段32が受信した場合に、ロードコーン1の転倒を音又は振動によりユーザに報知する。これにより、転倒検知装置10から離れた位置にいる工事現場の作業者等に対してロードコーン1が転倒したことを警告することができるので、遠方の作業者等に対しても危険回避行動を促すことができる。
【0061】
また、一実施形態のロードコーン転倒検知方法によれば、ロードコーン1の内部に収容された状態で地面に載置される一又は複数の転倒監視装置20と、転倒監視装置20に電源ケーブル21を介して電力を供給する転倒検知装置10と、を用いたロードコーン転倒監視方法において、ロードコーン1の内部を照射し、ロードコーン1の内部を反射した光を受光し、受光量の変化に応じて電源ケーブルを流れる電流量を変化させ、電源ケーブル21を流れる電流量の変化に基づいてロードコーン1の転倒を検知する。これにより、カメラ等の撮像素子を要さずに転倒を検知できるとともに、ロードコーン1が転倒したことを電源ケーブルのみを介して転倒検知装置10に伝達することできる、よりシンプルな新しい転倒検知方法を提供することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0063】
例えば、
図3および
図4で示した構成(マイコン11、24を含む電子回路)は例示であって、本発明は必ずしも図示する構成に限定されるものではない。例えば、発光部22の発光を制御する出力制御部111は、必ずしも発光検知装置10に備わる必要はなく、同様の機能部が発光監視装置20に備わっていてもよい。ロードコーン転倒検知システム100として上述した効果と同様の効果を奏し得る限り、ロードコーン転倒検知システム100の具体的構成については様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…ロードコーン
10…転倒検知装置
12…電源回路
14…報知手段(第一報知手段)
15…通信手段(送信手段)
20…転倒監視装置
21…電源ケーブル
22…発光部
23…受光部
25…微分回路
26…短絡回路
30…携帯受信機(受信機)
32…通信手段(受信機)
33…報知手段(第二報知手段)
100…ロードコーン転倒検知システム
241…転倒監視部