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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024970
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】風量測定ロボット
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/12 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
G01P5/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129383
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(71)【出願人】
【識別番号】391004791
【氏名又は名称】カジマメカトロエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 太介
(72)【発明者】
【氏名】小内 真
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】高木 良介
(72)【発明者】
【氏名】土岐 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
(72)【発明者】
【氏名】中山 錬
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 亘
(72)【発明者】
【氏名】佐原 真介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亮
(72)【発明者】
【氏名】木▲崎▼ 康弘
(72)【発明者】
【氏名】浦田 達也
(57)【要約】
【課題】制気口に対する風量測定部の位置合わせ精度を向上させる。
【解決手段】風量測定ロボット100は、床面2を移動可能な台車部10と、台車部10上に載置される昇降部17と、昇降部17により昇降される風量測定部20と、風量測定部20の位置を水平面内において変位可能な水平変位部30と、制気口3の設置位置に関連する天井面1aの状態を検知可能な撮像部51と、台車部10、昇降部17及び水平変位部30の作動を制御する制御部50と、を備え、制御部50は、制気口2の設置位置データに基づいて測定対象となる制気口3の下方へと台車部10を移動させた後、撮像部51により検知された天井面1aの状態に基づいて、台車部10及び水平変位部30の少なくとも一方の作動を制御し、制気口3の設置位置に対する風量測定部20の位置を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に設けられた制気口から吹出す風量または前記制気口が吸込む風量を測定する風量測定ロボットであって、
床面を移動可能な台車部と、
前記台車部上に載置される昇降部と、
風量を計測する風量センサ部と、前記風量センサ部に風を導くフードと、を有し、前記昇降部により昇降される風量測定部と、
前記風量測定部の位置を水平面内において変位可能な水平変位部と、
前記制気口の設置位置に関連する前記天井面の状態を検知可能な天井状態検知部と、
前記台車部、前記昇降部及び前記水平変位部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記制気口の設置位置データに基づいて測定対象となる前記制気口の下方へと前記台車部を移動させた後、前記天井状態検知部により検知された前記天井面の状態に基づいて、前記台車部及び前記水平変位部の少なくとも一方の作動を制御し、前記制気口の設置位置に対する前記風量測定部の位置を調整する、
風量測定ロボット。
【請求項2】
前記台車部は、旋回中心を中心として旋回可能な構成を有しており、
前記風量測定部は、水平面内における中心位置が前記旋回中心と一致するように前記昇降部を介して前記台車部に設置される、
請求項1に記載の風量測定ロボット。
【請求項3】
前記水平変位部は、前記風量測定部の位置を、前記台車部の前後進方向に対して直交する方向に変位可能であり、
測定対象となる前記制気口に近接して別の制気口が前記天井面に設置されている場合、前記制御部は、前記制気口と前記別の制気口とが並ぶ方向における前記風量測定部の位置を前記水平変位部によって調整する、
請求項1または2に記載の風量測定ロボット。
【請求項4】
前記制御部は、前記制気口の設置位置に対する前記風量測定部の位置を調整した後、前記昇降部により前記風量測定部を前記天井面に向けて上昇させ、前記フードが前記天井面に当接する前に、前記制気口の設置位置に対する前記風量測定部の位置の調整を再度実行する、
請求項1または2に記載の風量測定ロボット。
【請求項5】
前記制御部は、前記天井状態検知部により検知された前記天井面の状態から前記天井面に格子状に設けられたバー部材を抽出し、抽出された形状に基づいて、測定対象となる前記制気口の設置位置を推定する、
請求項1または2に記載の風量測定ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記天井状態検知部により検知された前記天井面の状態から前記天井面に設けられた前記制気口を抽出し、抽出された形状に基づいて、測定対象となる前記制気口の設置位置を推定する、
請求項1または2に記載の風量測定ロボット。
【請求項7】
前記水平変位部は、前記風量測定部の位置を、水平面内において互いに直交する二軸方向に変位可能であるとともに、水平面内において回転変位可能であり、
前記制御部は、前記制気口の設置位置に対する前記風量測定部の位置を、前記水平変位部の作動を制御することによって調整する、
請求項1に記載の風量測定ロボット。
【請求項8】
前記天井面に対する前記フードの傾きを検出する傾斜検出部と、
前記天井面に対する前記フードの傾きを変更可能な傾斜変更部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記傾斜検出部により検知された前記天井面に対する前記フードの傾きに基づいて、前記傾斜変更部を制御し、前記天井面に対する前記フードの傾きを調整する、
請求項1または2に記載の風量測定ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風量測定ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井面に設けられた制気口から吹出す風量または制気口が吸込む風量を測定する制気口検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-162408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された制気口検査装置は、自動走行可能な台車部を備えており、予め設定された検査位置付近、すなわち、制気口の下方近傍へと移動することが可能な構成となっている。しかしながら、風量センサや風量センサへと風を導くフードが制気口の直下に位置した状態となるように台車部を毎回精度よく停止させることは困難であり、例えば、周囲の環境によっては自己位置の特定にずれが生じ、予め求められたマップ上の所定の位置に台車部を停止させることができず、制気口の位置に対するフードの位置がずれてしまい、結果として、制気口の風量を正確に計測することができなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、制気口に対する風量測定部の位置合わせ精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天井面に設けられた制気口から吹出す風量または制気口が吸込む風量を測定する風量測定ロボットであって、床面を移動可能な台車部と、台車部上に載置される昇降部と、風量を計測する風量センサ部と風量センサ部に風を導くフードとを有し昇降部により昇降される風量測定部と、風量測定部の位置を水平面内において変位可能な水平変位部と、制気口の設置位置に関連する天井面の状態を検知可能な天井状態検知部と、台車部、昇降部及び水平変位部の作動を制御する制御部と、を備え、制御部は、制気口の設置位置データに基づいて測定対象となる制気口の下方へと台車部を移動させた後、天井状態検知部により検知された天井面の状態に基づいて、台車部及び水平変位部の少なくとも一方の作動を制御し、制気口の設置位置に対する風量測定部の位置を調整する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、制気口に対する風量測定部の位置合わせ精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る風量測定ロボットによって行われる風量測定作業のイメージを示したイメージ図である。
図2図1のA-A線に沿う断面を示した図であり、台車部について説明するための図である。
図3図1の矢印Bで示される方向から見た風量測定ロボットの一部を示した図である。
図4図3の矢印Cで示される方向から見た風量測定部を示した図である。
図5図4のD-D線に沿う断面を示した図である。
図6】風量測定ロボットの制御システム構成を示すブロック図である。
図7】風量測定ロボットが行う風量測定作業の手順を示したフローチャートである。
図8】風量測定ロボットによって行われる天井面の状態検知作業のイメージを示したイメージ図である。
図9】制気口の位置に対する風量測定部の位置を調整する方法について説明するための図である。
図10】本発明の実施形態に係る風量測定ロボットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る風量測定ロボットについて説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る風量測定ロボット100は、外部からの操作を必要としない自律型ロボットであり、図1に示すように、システム天井1の天井面1aに設けられた制気口3から吹出す風量または制気口3が吸込む風量を測定する作業を自動的に行うものである。
【0011】
以下では、図1に示される互いに直交するX、Y、Zの三軸を設定し、X軸が略水平方向であって後述の台車部10の前進及び後進方向に沿った方向であり、Y軸が略水平方向であって台車部10の前進及び後進方向に直交する方向であり、Z軸が略鉛直方向であるものとして、風量測定ロボット100の構成及び作動を説明する。なお、図1は、風量測定ロボット100によって行われる風量測定作業をわかりやすく誇張して示したイメージ図であり、実際の大きさや比率とは異なる部分がある。
【0012】
まず、図1~6を参照し、風量測定ロボット100の構成について説明する。図1は、風量測定作業中の風量測定ロボット100の側面図であり、図2は、図1のA-A線に沿う断面を示した図であり、図3は、図1の矢印Bで示される方向から見た風量測定ロボット100の一部、主に風量測定部20及び水平変位部30の部分を示した図であり、図4は、図3の矢印Cで示される方向から見た風量測定部20を示した図であり、図5は、図4のD-D線に沿う断面を示した図であり、図6は、風量測定ロボット100の制御システム構成を示すブロック図である。
【0013】
風量測定ロボット100は、図1及び図2に示すように、床面2を移動可能な台車部10と、台車部10上に載置される昇降部17と、昇降部17により昇降される風量測定部20と、風量測定部20の位置を水平面内において変位可能な水平変位部30と、台車部10、昇降部17及び水平変位部30の作動を制御する制御部50と、を備える。なお、以下では、図1に示されるように、制気口3から空気が吹き出ており、風量測定ロボット100は、制気口3から吹き出る空気の風量を測定する場合について説明する。
【0014】
台車部10は、床面2を自走可能な走行装置であり、本体部11と、本体部11に取り付けられた一対の駆動輪12及び一対の従動輪13と、一対の駆動輪12を別々に駆動可能に設けられた図示しない一対のモータと、一対のモータに電力を供給する図示しないバッテリと、を備える。このように一対の駆動輪12が別々に駆動される構成とすることによって、台車部10は、旋回中心C1を中心に、その場で旋回することが可能である。なお、台車部10に設けられたバッテリは、風量測定ロボット100内の電装品へ電力を供給する電力供給源としても使用される。
【0015】
台車部10を、その場で旋回させる構成としては、一対の駆動輪12を備えた構成に代えて、例えば、3輪のオムニホイールや4輪のメカナムホイールを備えた構成が採用されてもよい。
【0016】
台車部10の本体部11には、図1に示されるように、上下方向(Z軸方向)に伸縮自在な昇降部17が立設される。昇降部17は、多段型テレスコ(登録商標)ピック式電動アクチュエータであり、昇降部17の上端には、有底筒状の取付スリーブ18が、台車部10に対して風量測定部20を取り付けるために設けられている。
【0017】
また、台車部10の本体部11には、台車部10周辺の形状データを取得可能な測域センサ15(情報取得器)が設けられる。測域センサ15は、LiDAR(light detection and ranging)等のレーザレンジスキャナであり、検出データは、後述のように、風量測定ロボット100の自己位置を特定するために用いられる。なお、測域センサ15の検出データは、台車部10の周囲の障害物を検知するためにも用いられる。
【0018】
また、台車部10の本体部11には、加速度センサ、ジャイロセンサ及び地磁気センサが組み合わされた慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)が設けられており、風量測定ロボット100の自己位置を特定するために慣性計測装置を利用した公知の歩行者自律航法(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)が補助的に用いられてもよい。
【0019】
なお、風量測定ロボット100の自己位置の特定精度を向上させるために、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信手段によって受信された複数のBLEビーコン(Bluetooth(登録商標) Low Energy Beacon)のビーコン信号に基づいて、風量測定ロボット100の自己位置を特定するようにしてもよい。なお、ビーコン信号を発信するBLEビーコンは、建築物内の所定の位置に予め設置される。
【0020】
風量測定部20は、風量を計測する風量センサ部21と、風量センサ部21に風を導くフード22と、により構成された測定ユニットであり、水平変位部30を介して取付スリーブ18に取り付けられる。
【0021】
風量センサ部21は、図3及び図4に示されるように、空気が流れる流路が内部に形成された筒状部21aと、筒状部21a内の略中央に配置された検出部21bと、を有する。検出部21bには、風量の計測に用いられる図示しない温度センサや圧力センサが適宜配置される。なお、検出部21bに配置されるセンサは、温度センサや圧力センサに限定されず、空気の流量を計測することが可能なセンサであればどのようなセンサであってもよく、例えば、熱式風速計(アネモマスター風速計)であってもよい。
【0022】
フード22は、空気がほぼ透過しない樹脂によって形成された部材であり、図3及び図4に示されるように、風量センサ部21に接続される下端側は、略円形の開口端を有する形状となっている一方、制気口3に近付けられる上端側は、略矩形状の開口端を有する形状となっている。このようにフード22は、制気口3から吹き出た空気のほぼ全量を風量センサ部21へと導くことが可能な形状となっている。なお、制気口3に空気が吸い込まれる場合、フード22は、風量センサ部21を通過した空気のみを制気口3へと導くことが可能である。
【0023】
フード22の上端部には、図4に示されるように、略矩形状の開口端に沿って、枠体23が略矩形状に設置されており、枠体23の上方には、図5に示されるように、所定の形状の開口部25aが形成された仕切り板25が載置されている。
【0024】
ここで、制気口3の周辺には、システム天井1の天井裏の空間の圧力が僅かに負圧となることによって、空気を吸い込む隙間が形成されることがある。このように空気を吸い込む隙間が、制気口3とともにフード22によって覆われると、制気口3から吹き出した空気が隙間を通じて天井裏の空間に吸い込まれることによって、制気口3から吹き出た空気の全量が風量センサ部21へと導かれず、結果として、制気口3から吹き出した空気の流量を精度良く計測することができなくなるおそれがある。
【0025】
このため、本実施形態では、制気口3の形状に合わせて所定の形状に形成された開口部25aを有する仕切り板25をフード22の上端部に取り付けることによって、制気口3の周辺の隙間を仕切り板25によって閉塞し、フード22内において制気口3のみが開口するようにしている。また、上述のような隙間と制気口3とが連通することを確実に防止するために、仕切り板25の上面には、開口部25aを取り囲むようにスポンジ状またはゴム状の図示しないシール部材が取り付けられている。
【0026】
仕切り板25は、開口部25aの形状が異なるものが予め複数用意されており、風量測定対象となる制気口3の形状に応じて適切な仕切り板25に交換可能である。なお、上述のような隙間が制気口3の周囲にない場合には、枠体23に仕切り板25を取り付けなくてもよい。
【0027】
また、枠体23には、フード22が天井面1aに対して接触した状態となったか否か、すなわち、制気口3から吹き出た空気を、フード22を介して風量センサ部21へと導くことが可能な状態となったか否かを検出するための構造が設けられている。
【0028】
具体的には、図5に示されるように、枠体23の各辺には長手方向に沿って溝部23aが形成されており、溝部23a内には、プッシュスイッチ式の接触センサ52と、スポンジ状またはゴム状のシール部材24が上面に取り付けられた押圧部26と、が底部側から順に収容されている。押圧部26は、溝部23a内において、接触センサ52に内蔵された図示しない弾性部材によって上方へと付勢された状態となっている。
【0029】
つまり、上方への付勢力に抗して押圧部26が下方へと押し込まれると、接触センサ52が作動する構成となっている。なお、押圧部26を上方へと付勢する弾性部材は、接触センサ52に内蔵されたものに限定されず、これとは別に溝部23a内に設けられていてもよい。
【0030】
また、上方へと付勢される押圧部26が溝部23aから外れてしまうこと防止するために、押圧部26は、枠体23に上下方向に沿って形成された長孔23bに挿入されたピン部材26aを介して、枠体23によって上下方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。また、図5に示されるように、シール部材24の上面には、仕切り板25が載置されている。
【0031】
したがって、フード22が天井面1aに接近すると、最初に仕切り板25が天井面1aに接触し、さらに仕切り板25が天井面1aに押し付けられることで押圧部26が下方へと移動すると、接触センサ52が押圧部26に押圧されて作動状態となる。これによりフード22が天井面1aに対して接触した状態となったことが検知される。
【0032】
なお、シール部材24は、フード22が天井面1aに勢いよく衝突することを防止する緩衝材として機能するとともに、仕切り板25の開口部25aを通じて制気口3からフード22内へと導かれた空気が、仕切り板25と枠体23との間の隙間から外部へと漏れ出ることを防止するシール部として機能する。
【0033】
接触センサ52は、制御部50に電気的に接続されており、制御部50は、押圧部26により押圧されることによって接触センサ52の通電状態が切り換わると、フード22が天井面1aに接触したと判定する。なお、接触センサ52は、枠体23の各辺に略等間隔で複数個(例えば、2~3個)設置される。
【0034】
水平変位部30は、風量測定部20を支持する支持枠34と、台車部10の前進及び後進方向に直交する方向(Y軸方向)に沿って支持枠34を変位させることが可能な電動スライダ31と、を有する。
【0035】
電動スライダ31は、取付スリーブ18に固定される駆動部32と、駆動部32によってY軸方向に沿って駆動されるレール部材33と、を有するリニアスライド式の電動アクチュエータである。
【0036】
支持枠34は、環状に形成された部材であり、X軸方向に沿って平行に延びる一対の第1支持部材34aと、一対の第1支持部材34aの一端部からZ軸方向に沿って上方へと延びる一対の第2支持部材34bと、一対の第2支持部材34bの上端を連結する第3支持部材34cと、一対の第1支持部材34aの他端部を連結する第4支持部材34dと、で構成される。各第1支持部材34aには、固定部材38を介して風量測定部20が固定され、各第2支持部材34bには、Y軸方向に沿って延びる電動スライダ31のレール部材33の端部がそれぞれ固定される。
【0037】
また、第3支持部材34cの取付スリーブ18に対向する面には、Y軸方向に沿ってレール部材35が設けられており、取付スリーブ18には、レール部材35の動きをガイドするガイド部36が設けられる。
【0038】
風量測定部20の重量の一部は、第3支持部材34cを介して取付スリーブ18に作用することになるが、第3支持部材34cと取付スリーブ18との間には、レール部材35とガイド部36とにより構成されるリニアガイドが設けられるため、第3支持部材34cと取付スリーブ18との間において大きな摩擦力が生じることが回避される。これにより、支持枠34により支持される風量測定部20のY軸方向における位置を、電動スライダ31によって微調整することが可能となる。
【0039】
このように、水平変位部30は、風量測定部20の位置を、台車部10の前後進方向に対して直交する方向(Y軸方向)に変位可能な構成となっている。
【0040】
上述のような構成の水平変位部30及び昇降部17を介して台車部10に設置される風量測定部20の水平面内における中心位置C2(図4参照)は、風量測定部20が初期位置(基準位置)にあるとき、台車部10の旋回中心C1(図2参照)と一致するようになっている。なお、風量測定部20が初期位置(基準位置)にあるときとは、水平変位部30による風量測定部20のY軸方向における変位量がゼロであるときを意味する。
【0041】
したがって、制気口3の形状に合わせて仕切り板25に形成された開口部25aの向きと制気口3の向きとの間にずれがあった場合、旋回中心C1を中心に台車部10を旋回させることによって、開口部25aの向きを制気口3の向きに合わせることが可能である。
【0042】
風量測定ロボット100は、上記各機構に加えて、制気口3の設置位置(位置及び向き)に関連する天井面1aの状態を検知可能な天井状態検知部としての撮像部51をさらに備える。
【0043】
撮像部51は、天井面1a側を撮像するように設置されたデジタルカメラであり、図3に示されるように、撮像方向が昇降部17の伸縮方向(Z軸方向)に沿った方向となるように、撮像面51aが天井面1a側を向いた状態で取付スリーブ18に固定される。なお、撮像部51を天井面1aに近付けるために、例えば、上下方向に伸縮自在な機構を介して撮像部51を取付スリーブ18に固定してもよい。必要に応じて撮像部51を天井面1aに近付けることで、制気口3の設置位置に関連する天井面1aの状態を撮像部51によって、より正確に把握することができる。
【0044】
撮像部51によって撮像された画像は、制御部50へと送られ、後述のように、主に制気口3の設置位置に対する風量測定部20の位置を調整するために用いられる。なお、撮像部51の設置位置は、図1に示されるように、取付スリーブ18を挟んで風量測定部20とは反対側の位置に限定されず、天井面1aを撮像可能であればどのような位置であってもよく、取付スリーブ18の風量測定部20側であってもよいし、風量測定部20のフード22内や枠体23内であってもよい。また、撮像部51の数は、1つに限定されず、2つ以上設けられていてもよい。
【0045】
制御部50は、図6に示されるように、撮像部51、接触センサ52及び測域センサ15(情報取得器)により取得された種々データと、予め読み込まれたBIM(Building Information Modeling)等の作業エリアに関するデータとに基づいて、台車部10、水平変位部30及び昇降部17の作動を主に制御する。なお、制御部50が行う具体的な制御については、後述される風量測定方法の説明において詳述する。
【0046】
制御部50は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成され、台車部10の本体部11内に設置される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは制御部50に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。制御部50は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよく、例えば、風量測定部20と台車部10とにそれぞれ設けられていてもよい。
【0047】
また、制御部50には、図6に示されるように、風量測定ロボット100に対して作業の指示を行ったり、作業状況を監視したりする外部のサーバSとデータの送受信を行うための通信部50aが設けられる。通信部50aは、インターネット回線を介してデータを送信可能な一般的な無線通信機器であってもよいし、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(登録商標)といった近距離無線通信機器であってもよい。また、風量測定ロボット100が複数配置される場合には、通信部50aは、ロボット同士の通信に用いられてもよい。
【0048】
続いて、図7から図9を参照し、上記構成の風量測定ロボット100によって、制気口3から吹き出る空気の風量を測定する方法について説明する。図7は、風量測定ロボット100が行う作業の手順を示したフロー図であり、図8は、撮像部51により天井面1aの状態を検知する作業について説明するための図であり、図9は、撮像部51により撮像された画像に基づいて制気口3の位置に対する風量測定部20の位置を調整する方法について説明するための図である。
【0049】
まず、ステップS11では、風量測定ロボット100の制御部50において、作業エリアに関するデータが読み込まれ、記憶される。具体的には、制御部50の通信部50aを介してサーバSからBIM等の図面データが取得され、記憶部に記憶される。ここで読み込まれるデータには、BIM等の図面データに加えて、測定対象となる制気口3の位置及び向きを含む設置位置データ、風量の測定を行う巡回順序、巡回ルートなどが含まれる。
【0050】
次に、ステップS12では、制御部50は、台車部10の測域センサ15によって、風量測定ロボット100の周辺の情報、例えば、柱までの距離や柱の配置を取得し、記憶されたBIM等の図面データと取得された情報とを照合することにより、風量測定ロボット100の自己位置、すなわち、図面データ上での座標を認識する。制御部50は、自己位置を特定するために、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能を有していてもよい。
【0051】
続くステップS13では、制御部50は、最初に風量の測定が行われる制気口3の位置座標をステップS11で読み込まれたデータから目標位置座標として抽出し、台車部10を制御することによって風量測定ロボット100を目標位置座標に向けて移動させる。なお、最初に風量の測定が行われる制気口3は、風量測定ロボット100が置かれた場所から最も近くにある制気口3であってもよい。
【0052】
風量測定ロボット100の移動が完了すると、図8に示されるように、制御部50は、撮像部51によって、制気口3の座標位置を含む天井面1aの画像を取得し、取得された画像から制気口3の位置を検出する(ステップS14)。なお、図8に示されるように、風量測定ロボット100が目標位置座標へと移動し、撮像部51により画像が取得されるまで、昇降部17は、収縮した状態とされる。
【0053】
次に図9を参照し、ステップS14で行われる制気口3の位置検出について具体的に説明する。図9の(a)には、撮像部51によって取得された画像データP1が示されており、図9の(b)には、画像データP1を画像処理した後の第1画像処理データAP1が示されており、図9の(c)には、第1画像処理データAP1とは別の画像処理が行われた後の第2画像処理データAP2が示されている。
【0054】
図9の(a)の画像データP1に示されるように、グリッドタイプのシステム天井1は、格子状に結合されたバー部材4と、バー部材4で区切られたフレームに載置される天井ボード5と、制気口3や照明7が組み込まれたユニットパネル6と、で主に構成される。
【0055】
図9の(b)に示される例では、二値化処理等の画像処理により画像データP1から台車部10の前後進方向に延びるバー部材4及び台車部10の幅方向に延びるバー部材4が、第1抽出ラインL1及び第2抽出ラインL2としてそれぞれ抽出される。
【0056】
そして、第1抽出ラインL1及び第2抽出ラインL2によって囲まれたエリアのうち、画像の略中央にあるエリアが、制気口3が設置されたエリアとして推定される推定エリアA1として設定されるとともに、推定エリアA1の中心位置が制気口3の推定中心C3として設定される。このように推定エリアA1と制気口3の推定中心C3とは、バー部材4を抽出することにより得られた抽出ラインL1,L2によって形成された形状に基づいて推定される。
【0057】
推定エリアA1の外形形状と推定中心C3が設定されることによって、水平面内における推定エリアA1に対する風量測定部20の傾斜度合、すなわち、第1抽出ラインL1と台車部10の前後進方向とが成す角度が把握されるとともに、風量測定部20の中心位置C2に対する推定中心C3のずれ、すなわち、台車部10の前後進方向における差分及び幅方向における差分がそれぞれ把握される。
【0058】
一方、図9の(c)に示される例では、予め記憶された制気口3の平面形状と略一致する部分を形成する線が、第3抽出ラインL3(台車部10の前後進方向に延びるライン)及び第4抽出ラインL4(台車部10の幅方向に延びるライン)として、画像データP1からパターン認識等の画像処理によりそれぞれ抽出される。なお、制気口3の平面形状は、測定対象となる制気口3の下方へと移動する際に、BIM等の図面データを介してサーバS等から取得されてもよい。
【0059】
そして、第3抽出ラインL3及び第4抽出ラインL4によって囲まれたエリアが、制気口3が設置されたエリアとして推定される推定エリアA2として設定されるとともに、推定エリアA2の中心位置が制気口3の推定中心C3として設定される。このように推定エリアA2と制気口3の推定中心C3とは、画像データP1から制気口3と同形状の部位を抽出することにより得られた抽出ラインL3,L4によって形成された形状に基づいて推定される。
【0060】
推定エリアA2の外形形状と推定中心C3が設定されることによって、図9の(b)に示される例と同様に、水平面内における推定エリアA2に対する風量測定部20の傾斜度合、すなわち、推定エリアA2の長手方向におけるラインと台車部10の前後進方向とが成す角度が把握されるとともに、風量測定部20の中心位置C2に対する推定中心C3のずれ、すなわち、台車部10の前後進方向における差分及び幅方向における差分がそれぞれ把握される。
【0061】
なお、図9には、風量測定部20のフード22等の写り込みがない場合が示されているが、撮像部51によって取得された画像データP1にはフード22等が写り込んでいてもよく、この場合、制気口3の設置位置の推定に不要な部分は、画像処理により適宜除去される。
【0062】
上述のような画像処理によって、撮像部51により取得された画像データP1から制気口3の設置位置(位置及び向き)が推定されると、ステップS15に進み、制御部50は、台車部10及び水平変位部30の作動を制御し、制気口3に対する風量測定部20の位置を調整する。一方、制気口3の位置及び向きが推定されなかった場合、例えば、制気口3が何らかの障害物によって覆われており、画像データP1から制気口3の位置を検出することができないような場合には、風量測定作業を行うことができないとしてステップS22に進む。
【0063】
ステップS15では、まず、ステップS14で把握された推定エリアA1,A2に対する風量測定部20の傾斜度合を解消するために、制御部50は、旋回中心C1を中心に台車部10を旋回させる。具体的には、図9の(b)に示される例では、第1抽出ラインL1と台車部10の前後進方向とが成す角度(または、第2抽出ラインL2と台車部10の幅方向とが成す角度)だけ台車部10を旋回させることによって、風量測定部20の向きを制気口3の向きに一致させ、図9の(c)に示される例では、第3抽出ラインL3と台車部10の前後進方向とが成す角度(または、第4抽出ラインL4と台車部10の幅方向とが成す角度)だけ台車部10を旋回させることによって、風量測定部20の向きを制気口3の向きに一致させる。
【0064】
続いて、風量測定部20の向きを制気口3の向きに一致させた後の状態(図9の(b)に示される例では、第1抽出ラインL1と台車部10の前後進方向とが略平行となった状態、図9の(c)に示される例では、第3抽出ラインL3と台車部10の前後進方向とが略平行となった状態)において生じると予測される台車部10の前後進方向における風量測定部20の中心位置C2と推定中心C3との差分を解消するために、制御部50は、台車部10を前進または後進させて、風量測定部20を台車部10の前後進方向(X軸方向)に移動させる。
【0065】
これとほぼ同時に、制御部50は、風量測定部20の向きを制気口3の向きに一致させた後の状態において生じると予測される台車部10の幅方向における風量測定部20の中心位置C2と推定中心C3との差分を解消するために、水平変位部30を作動させて、風量測定部20を台車部10の幅方向(Y軸方向)に移動させる。
【0066】
なお、台車部10の旋回により風量測定部20の向きを制気口3の向きに一致させた後、風量測定部20の位置を台車部10の前後進方向及び幅方向に移動させる距離を確認するために、天井面1aの画像を撮像部51により再度取得し、制気口3の位置を再検出するようにしてもよい。
【0067】
ここで、制気口3及び照明7が組み込まれたユニットパネル6には、システム天井1の天井裏の空間の圧力が負圧となることによって空気を吸い込むスリット状の吸込口が照明7に沿って形成されることがある。このように測定対象となる制気口3に近接して、別の制気口として機能する吸込口が天井面1aに設けられている場合、仕切り板25の開口部25a内に吸込口の一部が入ってしまわないようにするために、制気口3と吸込口とが並ぶ方向における風量測定部20の位置の調整を精度よく行う必要がある。
【0068】
電動スライダ31による位置調整精度は、台車部10の走行による位置調整精度よりも高いことから、本実施形態では、制気口3と別の制気口とが並ぶ方向、例えば、ユニットパネル6において、制気口3と照明7とが並ぶ方向における風量測定部20の位置の調整は、水平変位部30によって行っている。これにより、仕切り板25の開口部25a内に制気口3とは別の制気口が入ることが防止され、結果として、制気口3の風量を正確に測定することが可能となる。
【0069】
なお、風量測定部20の位置の調整精度があまり要求されない制気口3と別の制気口とが並ぶ方向に直交する方向、例えば、制気口3の長手方向に関する情報についても、ステップS11において取得されたデータに含まれている。このため、台車部10は、上述のステップS13において、台車部10の前後進方向が制気口3の長手方向に沿うように移動して停止するように制御される。
【0070】
このように、台車部10及び水平変位部30の作動が制御されることによって、風量測定部20の中心位置C2が推定中心C3にほぼ一致した状態になると、ステップS16に進み、制御部50は、昇降部17を伸長させることによって、風量測定部20を天井面1aに向けて上昇させる。
【0071】
なお、フード22が天井面1aに接触する前に、昇降部17が所定量だけ伸長した時点で、再度、ステップS14及びステップS15が行われてもよい。このように風量測定部20を上昇させる途中で、再度、制気口3の設置位置の推定と風量測定部20の位置の調整とを行うことで、制気口3に対する風量測定部20の位置を精度よく合わせることが可能となる。
【0072】
続くステップS17において、制御部50は、風量測定部20のフード22が天井面1aに接触したか否かを判定する。
【0073】
具体的には、枠体23に設置された複数の接触センサ52のすべての通電状態が、接触を示す状態に切り替わった時点で、制御部50は、フード22が仕切り板25を介して天井面1aに対して接触した状態となったと判定する。なお、枠体23に設置された複数の接触センサ52のうちの所定数(例えば、半数)以上の通電状態が、接触を示す状態に切り替わった時点で、フード22が天井面1aに接触したと判定するようにしてもよい。
【0074】
ステップS17において、フード22が天井面1aに接触したと判定されると、ステップS18に進み、制御部50は、風量測定を開始する。一方、ステップS17において、フード22が天井面1aに接触していないと判定されると、ステップS16に戻り、制御部50は、昇降部17の伸長を継続する。
【0075】
なお、予め設定された上限伸長量を超えて昇降部17を伸長させてもフード22が天井面1aに接触したと判定されない場合、接触センサ52の故障やフード22が天井面1aに対して風量測定が困難なほど傾斜していることが推定されることから、このような場合は、風量測定作業を行うことができないとしてステップS22に進むようにしてもよい。
【0076】
フード22が仕切り板25を介して天井面1aに接触した状態となると、ステップS18において、制御部50は、検出部21bによる風量測定を開始する(図1参照)。
【0077】
続くステップS19において、制御部50は、風量測定を開始してからの経過時間が、予め設定された測定時間に達したか否かを判定する。経過時間が測定時間に達した場合、風量測定が完了したとしてステップS20に進み、経過時間が測定時間に達していない場合は、風量の測定を継続する。
【0078】
続くステップS20において、制御部50は、昇降部17を収縮させることによって、風量測定部20を下降させる。また、この際、制御部50は、水平変位部30による風量測定部20のY軸方向における変位量をリセットし、風量測定部20の位置を初期位置(基準位置)へと戻す。
【0079】
風量測定部20が所定の位置まで下降すると、所定の制気口3に対して行われる一連の風量測定作業が終了したとして、制御部50は、風量測定結果とともに風量測定作業の完了を記憶する(ステップS21)。
【0080】
一方、ステップS22では、所定の制気口3に対して風量測定が完了していないとして、制御部50は、制気口3の識別番号や設置場所とともに風量測定作業の未完了を記憶する。
【0081】
ステップS21及びステップS22で制御部50に記憶された風量測定作業に関する情報は、制御部50の通信部50aを介してサーバSへと逐次送信される。このため、サーバSを介して風量測定ロボット100の作業状況を監視するオペレータや現場の作業員は、各制気口3から吹出す風量を容易に把握することができるとともに、風量測定が完了していない制気口3の場所等を把握することができる。
【0082】
なお、制御部50は、ステップS19において風量測定が完了したと判定された時点で測定データをサーバSに送信するようにしてもよい。また、制御部50は、測定データをサーバSへと送信した後、サーバSにおいて測定データが受信されたか否かを確認するが、サーバSから受信確認が送られてこない場合は、サーバSが停止中と判定し、測定データを未送信データとして保存するとともに、次のステップへ進む。また、制御部50は、所定のエリア内の複数の制気口3での風量測定が完了した時点で測定データをまとめてサーバSに送信するようにしてもよい。
【0083】
このようにステップS21及びステップS22において作業状況の記憶が完了すると、ステップS23に進み、制御部50は、予定されている風量測定作業がすべて完了したか否かを確認する。
【0084】
予定されていた作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバSから受信するまで風量測定ロボット100は、待機状態となる。一方、予定されていた作業がまだ完了していない場合、次に風量測定が行われる制気口3の場所へと移動するために、ステップS13に戻る。
【0085】
以上のような工程を経て、各制気口3から吹出す風量は、風量測定ロボット100によって順次測定される。なお、各制気口3が吸込む風量についても、同様の工程を経て測定可能である。
【0086】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0087】
上記構成の風量測定ロボット100によれば、制気口3の設置位置(位置及び向き)に対する風量測定部20の位置の調整は、撮像部51(天井状態検知部)により検知された制気口3の設置位置に関連する天井面1aの状態に基づいて、台車部10及び水平変位部30の少なくとも一方の作動を制御することにより行われる。
【0088】
このように、実際に検知された制気口3の設置位置に関連する状態に応じて、台車部10や水平変位部30を作動させて風量測定部20の位置を調整することにより、制気口3に対する風量測定部20の位置合わせ精度を向上させることが可能となり、結果として、制気口3の風量を正確に測定することができる。
【0089】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0090】
上記実施形態では、風量測定部20の位置を水平面内において変位可能な水平変位部30は、風量測定部20の位置を台車部10の幅方向(Y軸方向)のみに変位可能な構成を有している。これに代えて、水平変位部130は、図10に示される変形例のように、風量測定部20の位置を台車部10の前後進方向(X軸方向)及び台車部10の幅方向(Y軸方向)に変位可能な構成を有していてもよい。
【0091】
図10に示される変形例では、X軸方向及びY軸方向の2軸方向に変位可能なステージ装置が水平変位部130として、風量測定部20と、風量測定部20を支持する支持枠134との間に設置される。この場合、台車部10の前後進方向(X軸方向)における風量測定部20の位置の調整は、台車部10に代えて、水平変位部130によって行われることになるため、風量測定部20の位置をX軸方向及びY軸方向において微調整することが可能となる。
【0092】
なお、図10に示される水平変位部130は、風量測定部20の位置を水平面内において互いに直交する二軸方向(台車部10の前後進方向(X軸方向)及び台車部10の幅方向(Y軸方向))に変位可能な構成を有するとともに、水平面内においてZ軸方向の軸線を中心に回転変位可能な構成を有するアライメントステージ装置であってもよい。
【0093】
この場合、台車部10の前後進方向(X軸方向)における風量測定部20の位置の調整と、中心位置C2を中心とする風量測定部20の向きの調整とは、台車部10に代えて、水平変位部130によって行われることになるため、風量測定部20の位置及び向きを精度よく微調整することが可能となる。また、風量測定部20の位置及び向きの調整は、水平変位部130のみによって行われることになるため、調整制御を簡素化することが可能になるとともに、台車部10の旋回機能が不要となることから、台車部10としては、より安価な一般的な走行装置を採用することが可能となる。
【0094】
また、上記実施形態では、風量測定部20の位置を台車部10の幅方向(Y軸方向)に移動させるために水平変位部30が設けられている。これに代えて、台車部10を、3輪のオムニホイールや4輪のメカナムホイールを備えた全方向に移動可能な走行装置とすることにより、風量測定部20の台車部10の幅方向への移動を、台車部10によって行うようにしてもよい。これにより風量測定部20の位置及び向きの調整は、台車部10のみで行われることになるため、調整制御を簡素化することが可能になるとともに、水平変位部30が不要となることで風量測定ロボット100の製造コストを低減させることが可能となる。
【0095】
また、上記実施形態では、風量測定部20は、天井面1aに対するフード22の傾きに関わらず、台車部10の停車面(床面2)に対して垂直な方向に沿って昇降するように構成されている。これに代えて、図10に示される変形例のように、風量測定部20が昇降する方向を変えることにより、天井面1aに対するフード22の傾きを変更することが可能な傾斜変更部131を備えた構成としてもよい。
【0096】
図10に示される風量測定ロボット200は、天井面1aに対するフード22の傾きを検出する傾斜検出部として機能する撮像部51と、天井面1aに対するフード22の傾きを変更可能な傾斜変更部131と、を備えており、風量測定ロボット200の制御部50は、撮像部51により検知された天井面1aに対するフード22の傾きに基づいて、傾斜変更部131を制御し、天井面1aに対するフード22の傾きを調整している。
【0097】
傾斜変更部131は、台車部10と昇降部17との間に設置された自動スイベルステージであり、台車部10に対する昇降部17の傾きをX軸及びY軸を中心にそれぞれ変化させることが可能な構成を有している。
【0098】
ここで、例えば、撮像部51により撮像された画像の略中央に矩形状の部材がある場合、撮像部51の撮像方向が天井面1aに対して垂直であれば、矩形の向かい合う辺の長さは同じ長さになるが、撮像部51の撮像方向が天井面1aに対して傾いている場合、傾斜度合に応じて向かい合う辺の長さに差が生じる。換言すれば、向かい合う辺の長さの差分から傾斜度合を演算することが可能である。このため、撮像部51は、天井面1aに対するフード22の傾きを検出可能な傾斜検出部として利用される。
【0099】
なお、天井面1aに対するフード22の傾きを検出する傾斜検出部は、撮像部51に限定されず、これに代えて、または、これに加えて、水平面に対する台車部10の傾きを検出可能な慣性計測装置(IMU)であってもよいし、枠体23の各辺に設けられ天井面1aまでの距離を計測する4つのレーザ距離センサの検出値を利用したものであってもよい。
【0100】
このような構成を備えた風量測定ロボット200の制御部50は、撮像部51等の傾斜検出部により天井面1aに対してフード22が傾いていることが検出されると、天井面1aに対してフード22が正対するように、傾斜変更部131を制御し、台車部10に対する昇降部17の傾きを変化させる。
【0101】
したがって、台車部10が停車する床面2が傾斜していたり、床面2に凹凸があったりすることによって、フード22が傾いた状態で天井面1aに接触するおそれがある場合であっても、傾斜変更部131により昇降部17の傾きを調整することで天井面1aに対して仕切り板25を均等に接触させることが可能となる。これにより、制気口3から吹き出る空気が外部へと漏れることが防止され、結果として、制気口3の風量を正確に測定することができる。
【0102】
なお、傾斜変更部131が設置される場所は、台車部10と昇降部17との間に限定されず、風量測定部20の傾きを変更可能な箇所であればどのような場所であってもよく、例えば、風量測定部20と支持枠134との間であってもよい。また、傾斜変更部131は、昇降部17や風量測定部20の傾きを変更するものに限定されず、フード22自体の傾きを変えるものやフード22の上端部に設置された枠体23の傾きを変えるものであってもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、制気口3の設置位置に関連する天井面1aの状態を検知する天井状態検知部として、撮像部51が用いられている。天井状態検知部は、これに代えて、または、これに加えて、天井面1aの凹凸を検知可能なLiDAR等のレーザレンジスキャナが用いられてもよい。この場合、天井面1aにおける凹凸状態から制気口3の設置位置を推定することが可能である。
【0104】
また、上記実施形態では、ステップS13において、制御部50は、測定対象となる制気口3を撮像部51により撮像することができる位置へと台車部10を移動させている。これに代えて、制御部50は、風量測定部20の中心位置C2が測定対象となる制気口3の中心座標とほぼ一致するように、ステップS13において、台車部10を移動させてもよい。このように風量測定部20の中心位置C2を制気口3の中心座標とほぼ一致させた場合、撮像部51によって測定対象となる制気口3を直接的に撮像することは難しくなるものの、制気口3が設置されたエリアに隣接するエリアを撮像することが可能となる。
【0105】
このため、撮像された画像からバー部材4を抽出することによって、制気口3が設置されたエリアに隣接する隣接エリアの形状及び中心位置を推定することが可能であり、推定された隣接エリアの中心位置から制気口3が設置されるエリアの中心位置をさらに推定することにより、上記実施形態と同様に、風量測定部20の中心位置C2に対する制気口3の中心位置のずれを把握することが可能である。したがって、この変形例においても、上記実施形態と同様に、制気口3に対する風量測定部20の位置合わせを精度よく行うことができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0107】
100,200・・・風量測定ロボット
1a・・・天井面
2・・・床面
3・・・制気口
4・・・バー部材
10・・・台車部
15・・・測域センサ(情報取得器)
17・・・昇降部
20・・・風量測定部
21・・・風量センサ部
22・・・フード
30,130・・・水平変位部
50・・・制御部
51・・・撮像部(天井状態検知部)
131・・・傾斜変更部
C1・・・旋回中心
C2・・・中心位置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10