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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025024975
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/16 20190101AFI20250214BHJP
   G07D 11/40 20190101ALI20250214BHJP
   B65H 5/38 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G07D11/16
G07D11/40
B65H5/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129389
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 聖史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 准司
(72)【発明者】
【氏名】名倉 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】北川 直史
(72)【発明者】
【氏名】青地 宏和
【テーマコード(参考)】
3E141
3F101
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA06
3E141FG01
3E141FG11
3E141FL01
3F101FA01
3F101FC16
3F101FE04
3F101FE08
3F101LA08
3F101LB04
(57)【要約】
【課題】
紙幣の破断を起こさず、搭載されるATMの設置環境等に応じて柔軟かつ低コストにて実現可能な受渡部を有する紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】
紙幣入出金口と紙幣鑑別部と一時保管部とを備える上部ユニットと複数の紙幣収納庫を備える下部ユニットとからなり、下部ユニットを引き出し可能に構成された紙幣処理装置であって、上部ユニットと下部ユニットとの間で紙幣の受け渡しを行う受渡部が下部ユニットが引き出される側の端部に設けられ、記受渡部は、上部ユニットと下部ユニットとを連通し下部ユニットの引出側に位置する第1のガイド部材と、第1のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第2のガイド部材とその直下の第3のガイド部材とからなり、第1のガイド部材と第3のガイド部材とは下部ユニットに形成され、第2のガイド部材は上部ユニットに形成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣入出金口と紙幣鑑別部と一時保管部とを備える上部ユニットと、複数の紙幣収納庫を備える下部ユニットとからなり、前記下部ユニットを引き出し可能に構成された紙幣処理装置であって、
前記上部ユニットと前記下部ユニットとの間で紙幣の受け渡しを行う受渡部が、前記下部ユニットが引き出される側の端部に設けられ、
前記受渡部は、
前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し前記下部ユニットの引出側に位置する第1のガイド部材と、
前記第1のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第2のガイド部材とその直下の第3のガイド部材とからなり、
前記第1のガイド部材と前記第3のガイド部材とは前記下部ユニットに形成され、前記第2のガイド部材は前記上部ユニットに形成されることを特徴とする、紙幣処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙幣処理装置であって、
前記下部ユニットが引き出される側と反対側に第2の受渡部を有し、
前記第2の受渡部は、
前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し、前記下部ユニットの引出側と反対側に位置する第4のガイド部材と、
前記第4のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第5のガイド部材とその直下の第6のガイド部材とからなり、
前記第4のガイド部材と前記第5のガイド部材とは前記上部ユニットに形成され、前記第6のガイド部材は前記下部ユニットに形成されることを特徴とする、紙幣処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の紙幣処理装置であって、
前記第2のガイド部材と前記第3のガイド部材とが係合する部分は、それぞれが櫛歯形状となっており、互いにオーバーラップしており、
前記第5のガイド部材と前記第6のガイド部材とが係合する部分は、それぞれが櫛歯形状となっており、互いにオーバーラップしていることを特徴とする、紙幣処理装置。
【請求項4】
紙幣入出金口と紙幣鑑別部と一時保管部とが前側からこの順に配置された上部ユニットと、複数の紙幣収納庫を備える下部ユニットとからなり、前記下部ユニットを前側もしくはその反対側の後側へ引き出し可能に構成された紙幣処理装置であって、
前記上部ユニットの搬送路と前記下部ユニットの搬送路との間で紙幣の受け渡しを行う第1の受渡部と第2の受渡部とが、それぞれ前記紙幣処理装置の前側と後側とに設けられ、
前記第1の受渡部は、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し前側に位置する第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第2のガイド部材とその直下の第3のガイド部材とからなり、
前記第1のガイド部材は前記上部ユニットもしくは前記下部ユニットに着脱可能に構成され、前記第2のガイド部材は着脱可能で前記上部ユニットに装着され、前記第3のガイド部材は着脱可能で前記下部ユニットに装着され、
前記第2の受渡部は、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し後側に位置する第4のガイド部材と、前記第4のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第5のガイド部材とその直下の第6のガイド部材とからなり、
前記第4のガイド部材は前記上部ユニットもしくは前記下部ユニットに着脱可能に構成され、前記第5のガイド部材は着脱可能で前記上部ユニットに固定され、前記第6のガイド部材は着脱可能で前記下部ユニットに固定され、
前記下部ユニットを前側へ引き出して使用する場合は、前記第1のガイド部材を前記下部ユニットに装着し、前記第4のガイド部材を前記上部ユニットに装着し、
前記下部ユニットを後側へ引き出して使用する場合は、前記第1のガイド部材を前記上部ユニットに装着し、前記第4のガイド部材を前記下部ユニットに装着する、
ことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の紙幣処理装置であって、
前記第2のガイド部材と前記第3のガイド部材とが係合する部分は、それぞれが櫛歯形状となっており、互いにオーバーラップしており、
前記第5のガイド部材と前記第6のガイド部材とが係合する部分は、それぞれが櫛歯形状となっており、互いにオーバーラップしていることを特徴とする、紙幣処理装置。
【請求項6】
紙幣入出金口と紙幣鑑別部と一時保管部とが前側からこの順に配置された上部ユニットと、複数の紙幣収納庫を備える下部ユニットとからなり、前記下部ユニットを前側へ引き出し可能に構成された紙幣処理装置であって、
前記上部ユニットの搬送路と前記下部ユニットの搬送路との間で紙幣の受け渡しを行う第1の受渡部と第2の受渡部が、それぞれ前側と後側とに設けられ、
前記第1の受渡部は、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し前側に位置する第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第2のガイド部材とからなり、前記第1のガイド部材は前記下部ユニットに形成され、前記第2のガイド部材は前記上部ユニットに形成され、
前記第2の受渡部は、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し後側に位置する第3のガイド部材と、前記第3のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第4のガイド部材とその直下の第5のガイド部材とからなり、前記第3のガイド部材と前記第4のガイド部材とは前記上部ユニットに形成され、前記第5のガイド部材は前記下部ユニットに形成されることを特徴とする、紙幣処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の紙幣処理装置であって、
前記第4のガイド部材と前記第5のガイド部材とが係合する部分は、それぞれ櫛歯形状となっており、互いにオーバーラップしていることを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項8】
紙幣入出金口と紙幣鑑別部と一時保管部とが前側からこの順に配置された上部ユニットと、複数の紙幣収納庫を備える下部ユニットとからなり、前記下部ユニットを後側へ引き出し可能に構成された紙幣処理装置であって、
前記上部ユニットの搬送路と前記下部ユニットの搬送路との間で紙幣の受け渡しを行う第1の受渡部と第2の受渡部が、それぞれ前側と後側とに設けられ、
前記第1の受渡部は、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し前側に位置する第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第2のガイド部材とからなり、前記第1のガイド部材は前記上部ユニットに形成され、前記第2のガイド部材は前記上部ユニットに形成され、その下端側が前記下部ユニットの引出方向に回動し、
前記第2の受渡部は、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し後側に位置する第3のガイド部材と、前記第3のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第4のガイド部材とその直下の第5のガイド部材とからなり、前記第3のガイド部材と前記第5のガイド部材は前記下部ユニットに形成され、前記第4のガイド部材は前記上部ユニットに形成され、その下端側が前記下部ユニットの引出方向に回動することを特徴とする、紙幣処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の紙幣処理装置であって、
前記第4のガイド部材と前記第5のガイド部材とが係合する部分は、それぞれ櫛歯形状となっており、互いにオーバーラップしていることを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項10】
紙幣入出金口と紙幣鑑別部と一時保管部とが前側からこの順に配置された上部ユニットと、複数の紙幣収納庫を備える下部ユニットとからなり、前記下部ユニットを前側もしくは後側へ引き出し可能に構成された紙幣処理装置であって、
前記上部ユニットの搬送路と前記下部ユニットの搬送路との間で紙幣の受け渡しを行う第1の受渡部と第2の受渡部が、それぞれ前側と後側とに設けられ、
前記第1の受渡部は、前記上部ユニットと前記下部ユニットとを連通し前側に位置する第1のガイド部材と、前記第1のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第2のガイド部材とからなり、前記第1のガイド部材は前記上部ユニットもしくは前記下部ユニットに着脱可能に構成され、前記第2のガイド部材は前記上部ユニットに着脱可能に構成され、
前記第2の受渡部は、上部ユニットと下部ユニットとを連通し外側に位置する第3のガイド部材と、前記第3のガイド部材と対向する上側の第4のガイド部材とその直下の第5のガイド部材とからなり、前記第3のガイド部材は前記上部ユニットもしくは下部ユニットに着脱可能に構成され、前記第4のガイド部材は上部ユニットに着脱可能に構成され、前記第5のガイド部材は着脱可能で下部ユニットに装着され、
前記下部ユニットを前側へ引き出して使用する場合は、前記第1のガイド部材を前記下部ユニットに装着し、前記第2のガイド部材を前記上部ユニットに装着し、前記第3のガイド部材を前記上部ユニットに装着し、前記第4のガイド部材を前記上部ユニットに装着し、
前記下部ユニットを後側へ引き出して使用する場合は、前記第1のガイド部材を前記上部ユニットに装着し、前記第2のガイド部材をその上部を支点に後側に回動するように前記上部ユニットに装着し、前記第3のガイド部材を前記下部ユニットに装着し、前記第4のガイド部材をその上部を支点に後側に回動するように前記上部ユニットに装着することを特徴とする、紙幣処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の紙幣処理装置であって、
前記第4のガイド部材と前記第5のガイド部材とが係合する部分は、それぞれ櫛歯形状となっており、互いにオーバーラップしていることを特徴とする紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理装置に関し、特に、上部ユニットと下部ユニットとの間の紙幣受渡部に関する。
【背景技術】
【0002】
自動取引装置(ATM)には紙幣の入金や出金といった処理を行う紙幣処理装置が搭載されている。紙幣処理装置は、紙幣を顧客へ受け渡す入出金口や紙幣の鑑別を行う紙幣鑑別部等を備えた上部ユニットと、紙幣を金種別に保管する複数の紙幣収納庫等を備えた下部ユニットとから構成されている。
【0003】
このような紙幣処理装置では、係員等によって紙幣収納庫へ紙幣を補充したり、あるいは、紙幣収納庫自体を取り出して保守作業等を行う場合は、下部ユニットを引き出すことによって、係員は紙幣収納庫へアクセスできるようになっている。また、このような紙幣処理装置では、上部ユニットと下部ユニットの間で紙幣を受け渡すための連通搬送路等によって構成されている受渡部が設けられている。
【0004】
一方、上部ユニットと下部ユニットの間で紙幣を搬送中に紙幣ジャムが発生すると、この受渡部に紙幣が残存してしまうことがあり、このような状態で下部ユニットを引き出そうとすると、残存した紙幣が破断するおそれがある。
【0005】
そのため、下部ユニットの引き出し時等には、受渡部の連通搬送路を構成するガイド部材が引き出し方向に可動するような構造を採用する等によって、紙幣の破断を防止することが行われている。
【0006】
従来、この種の発明としては、特許文献1に示すものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-163704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ATMはその設置される環境や条件等によって、保守作業時に装置の前面側から紙幣処理装置の下部ユニットを引き出さざるを得ないケースと、逆に、装置の後面側から引き出さざるを得ないケースとがあり、それらのいずれにも適応可能でかつ、引き出し時の残存紙幣の破断を防止するような構造を採用しようとすると、受渡部の構造が複雑化もしくは大型化し、それに伴い、製造コストも増加することとなる。また、紙幣処理装置の搬送路の構成によっては、受渡部は一か所とは限らず、例えば、装置の前側及び後側の両方に必要となる場合もある。
【0009】
一方、ATMの設置環境や搬送路構成に応じて、受渡部の構成をカスタマイズして設計することによって、受渡部を小型化できる可能性はあるものの、却って設計・製造コストがかさむ可能性もある。
【0010】
したがって、受渡部の構成としては、極力、共通的な構成・部品を採用しつつ、ATMの設置環境等に応じて取り付け部品を調整する等の対処案が望ましい。
【0011】
本発明は、上述したような上部ユニットと下部ユニットとからなる紙幣処理装置において、紙幣の破断を起こさず、搭載されるATMの設置環境等に応じて柔軟かつ低コストにて実現可能な受渡部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の紙幣処理装置は、紙幣入出金口と紙幣鑑別部と一時保管部とを備える上部ユニットと複数の紙幣収納庫を備える下部ユニットとからなり、下部ユニットを引き出し可能に構成された紙幣処理装置であって、上部ユニットと下部ユニットとの間で紙幣の受け渡しを行う受渡部が下部ユニットが引き出される側の端部に設けられ、記受渡部は、上部ユニットと下部ユニットとを連通し下部ユニットの引出側に位置する第1のガイド部材と、第1のガイド部材と対向する位置に設けられた上側の第2のガイド部材とその直下の第3のガイド部材とからなり、第1のガイド部材と第3のガイド部材とは下部ユニットに形成され、第2のガイド部材は上部ユニットに形成される。
【発明の効果】
【0013】
紙幣の破断を起こさず、搭載されるATMの設置環境等に応じて柔軟かつ低コストにて実現可能な受渡部を有する紙幣処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における紙幣処理装置の側面図である。
図2】本発明の実施形態における下部ユニットを装置の前面もしくは後面に引き出した状態を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態における受渡部周辺の詳細構造を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態における受渡ガイドの櫛歯構造を示す正面図である。
図5】本発明の実施形態における受渡部周辺に残留紙幣がある状態を示す側面図である。
図6】本発明の実施形態における残留紙幣が破断する状態を示す側面図の時系列である。
図7】本発明の実施形態における紙幣処理装置の基本構成を示す側面図である。
図8】本発明の実施形態における紙幣処理装置を前面機として使用する構成を示す側面図である。
図9】本発明の実施形態における受渡ガイドの櫛歯構造を示す正面図である。
図10】本発明の実施形態における受渡ガイドの櫛歯構造を示す正面図である。
図11A】本発明の実施形態における受渡部周辺に残留紙幣がある状態を示す側面図である。
図11B】本発明の実施形態における下部ユニットを引き出す状態を示す側面図の時系列である。
図12A】本発明の実施形態における受渡部周辺に残留紙幣がある状態を示す側面図である。
図12B】本発明の実施形態における下部ユニットを引き出す状態を示す側面図の時系列である。
図13】本発明の実施形態における紙幣処理装置を後面機として使用する構成を示す側面図である。
図14A】本発明の実施形態における受渡部周辺に残留紙幣がある状態を示す側面図である。
図14B】本発明の実施形態における下部ユニットを引き出す状態を示す側面図の時系列である。
図15A】本発明の実施形態における受渡部周辺に残留紙幣がある状態を示す側面図である。
図15B】本発明の実施形態における下部ユニットを引き出す状態を示す側面図の時系列である。
図16】本発明の実施形態における紙幣処理装置の基本構成を示す側面図である。
図17】本発明の実施形態における紙幣処理装置を前面機として使用する構成を示す側面図である。
図18A】本発明の実施形態における受渡部周辺に残留紙幣がある状態を示す側面図である。
図18B】本発明の実施形態における下部ユニットを引き出す状態を示す側面図の時系列である。
図18C】本発明の実施形態における下部ユニットを引き出す状態を示す側面図の時系列である。
図19A】本発明の実施形態における紙幣処理装置を後面機として使用する構成を示す側面図である。
図19B】本発明の実施形態における可倒式のガイド部材の動作を説明する側面図である。
図19C】本発明の実施形態における可倒式のガイド部材の機構を説明する正面図である。
図20A】本発明の実施形態における受渡部周辺に残留紙幣がある状態を示す側面図である。
図20B】本発明の実施形態における下部ユニットを引き出す状態を示す側面図の時系列である。
図20C】本発明の実施形態における下部ユニットを引き出す状態を示す側面図の時系列である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【実施例0016】
(1)紙幣処理装置の全体構成
図1は紙幣処理装置100の側面図であり、紙幣処理装置100は上部ユニット110と下部ユニット120とから構成されている。
【0017】
上部ユニット110は、利用者が紙幣の入出金を行う紙幣入出金口111と、紙幣の金種や真偽を判定する紙幣鑑別部112と、各種紙幣処理の途中や搬送途中の紙幣を一時的に保管する一時保管部113と、これら各部の間で紙幣の搬送を行う上部搬送機構115と、を有する。
【0018】
下部ユニット120は、紙幣を例えば金種別に保管する複数の紙幣収納庫121と、入金された紙幣を紙幣収納庫121へ収納するように搬送したり、あるいは、紙幣収納庫121から繰り出された紙幣を上部ユニット110へ向けて搬送する下部搬送機構125と、を有する。
【0019】
上部搬送機構115と下部搬送機構125とは、対向する板状の部材によってその間を紙幣が通る紙幣搬送路を形成し、紙幣搬送路の所定の箇所に駆動力を有する搬送ローラ対が配置され、紙幣は回転する搬送ローラ対によって挟持されて紙幣搬送路内を移動する。
【0020】
また、上部搬送機構115と下部搬送機構125との間で紙幣の受け渡しを行う受渡部131と受渡部132が、上部ユニット110と下部ユニット120の間で、それぞれ紙幣入出金口111側と一時保管部113側との両側(両端部)に設けられており、それらは前側接続搬送路141、及び後側接続搬送路142を有している。
【0021】
なお、本実施例において、紙幣入出金口111側を紙幣処理装置100の前面側とし、その反対側(一時保管部113側)を後面側とし、今後、特に断りがなければ、紙幣処理装置100の側面図において向かって右側を前面側もしくは前側と称し、左側を後面側もしくは後側と称する。
【0022】
また、下部ユニット120は、前面側もしくは後面側に引き出すことによって、紙幣収納庫121を外部へ取り出すことができる。
【0023】
図2は下部ユニット120を装置の前面もしくは後面に引き出した場合の状態を示しており、図2の上段は装置前面へ引き出した状態である。図示の通り下部ユニット120を右側(前面側)に引き出した状態において、下部搬送機構125を矢印126のように回動させることによって、紙幣収納庫121の上部の空間が開放され、矢印127のように上部に向かって取り出すことが可能となる。
【0024】
図2の下段は下部ユニット120を装置後面に引き出した場合の状態を示すものであり、前面引き出し時と同様にして紙幣収納庫121を取り出すことができる。
【0025】
(2)紙幣受渡部の詳細構造
図3は上部ユニット110と下部ユニット120における受渡部131、132の周辺にフォーカスした詳細構造を示す側面図である。なお、本図においても図の右側を前面側、左側を後面側とする。
【0026】
上部搬送機構115側の搬送路(の一部)を形成する上部搬送ガイド対115aと下部搬送機構125の搬送路を形成する下部搬送ガイド対125aとの間には、前側の受渡部131が設けられている。上部搬送ガイド対115aと下部搬送ガイド対125aは、装置の前面側(図の右側)と後面側(図の左側)で対向する2つのガイド部材からなり、板金や樹脂等で形成されている。
【0027】
また、上部搬送ガイド対115a及び下部搬送ガイド対125aには、上部搬送ローラ対115b及び下部搬送ローラ対125bが設けられている。上部搬送ローラ対115bと下部搬送ローラ対125bは、装置の前面側(図の右側)と後面側(図の左側)で対向する2つのローラからなり、紙幣を挟持して回転することにより、矢印131cに示すように上部搬送ガイド対115a及び下部搬送ガイド対125aの内側で紙幣を搬送させる。
【0028】
前側の受渡部131は、上側受渡ガイド対131aと下側受渡ガイド対131bとから構成されており、上側受渡ガイド対131aは上部搬送ガイド対115aに接続され、下側受渡ガイド対131bは下部搬送ガイド対125aに接続されている。すなわち、上部搬送ガイド対115aと、上側受渡ガイド対131aと、下側受渡ガイド対131bと、下部搬送ガイド対125aとによって、前側接続搬送路141が構成されている。
【0029】
ここで、下部ユニット120を引き出し可能とするためには、上側受渡ガイド対131aと下側受渡ガイド対131bとの間に若干の空隙を設ける必要があるが、先端の折れ曲がった紙幣等は搬送中にその先端がこの空隙からはみ出してしまうことがあり、その結果、紙幣が搬送路外へ放出されてしまったり、空隙部分でジャムを起こしてしまう可能性がある。
【0030】
そこで、その空隙から紙幣がはみ出すことがないよう、上側受渡ガイド対131aと下側受渡ガイド対131bとが係合する部分は、それぞれ櫛歯形状で互いに所定の間隔を空けてオーバーラップするように構成されている。図4は上側受渡ガイド対131aと下側受渡ガイド対131bとのオーバーラップ部分を正面から見た図であり、図中、点線で囲んだ部分は、図3の点線で囲んだ部分に相当する。
【0031】
また、後側の受渡部132についても同様である。すなわち、上側受渡ガイド対132a、及び下側受渡ガイド対132bとから構成されており、上側受渡ガイド対132aは、上部搬送ガイド対115cに接続され、下側受渡ガイド対132bは下部搬送ガイド対125cに接続されている。すなわち、上部搬送ガイド対115cと、上側受渡ガイド対132aと、下側受渡ガイド対132bと、下部搬送ガイド対125cとによって、後側接続搬送路142が構成されている。
【0032】
上部搬送ガイド対115c及び下部搬送ガイド対125cには、上部搬送ローラ対115d及び下部搬送ローラ対125dが設けられており、矢印132cに示すように紙幣を搬送させる。上側受渡ガイド対132aと下側受渡ガイド対132bとは、図4に示すように、それぞれ櫛歯形状で互いにオーバーラップするように構成されている。
【0033】
ここで、前側の受渡部131と後側の受渡部132における受渡ガイド対のオーバーラップ部分の高さ方向の位置は、破線140に示すように略同一の高さであって、かつ、横方向の櫛歯の位置も略同一になるように配置されている。
【0034】
したがって、下部ユニット120を前側に引き出す際に、前側の受渡部131の上側受渡ガイド対131aと下側受渡ガイド対131bとが、互いに櫛歯部分がすり抜けることによって干渉することなく下部ユニット120を引き出すことができるとともに、下部ユニット120を完全に外部へ引き出す際には、前側の受渡部131の上側受渡ガイド対131aと後側の受渡部132の下側受渡ガイド対132bとが干渉することもない。下部ユニット120を後側に引き出す場合も同様である。
【0035】
さらに、図3において、上側受渡ガイド対131aと上側受渡ガイド対132aの下端部側は、破線140に示すように下部ユニット120内にせり出しており、下部ユニットを前側もしくは後側に引き出す場合は、これらのせり出し部分が下部ユニット120の筐体の前側の壁面150もしくは後側の壁面151と衝突しないように、壁面150(151)の一部が開放されるようになっている。また、下側受渡ガイド対131bと上側受渡ガイド対132bの上端部側が上部ユニット110側にせり出すように配置されている場合は、上部ユニット110の筐体の前側及び後側の壁面に同様の開放機構が備えられることになる。なお、これらの開放機構は、本発明の他の実施例においても同様である。
【0036】
(3)下部ユニットの引き出し時における残留紙幣の挙動
上述のように、上側受渡ガイド対131a(132a)と下側受渡ガイド対131b(132b)とが櫛歯形状で互いにオーバーラップするように構成されていることによって、紙幣搬送時にその境界部の隙間に紙幣がはみ出すことを防止しているが、紙幣ジャム等によって受渡部に紙幣が残留した状態で下部ユニットを引き出そうとすると、この櫛歯のオーバーラップ部分によって残留紙幣が破断してしまうことがある。以下、その状況を説明する。
【0037】
図5は、図3に示す紙幣処理装置において、前側の下部搬送ローラ対125bに残留紙幣151が挟持されて前側受渡部131周辺に残存している状態と、後側の上部搬送ローラ対115dに残留紙幣152が挟持されて後側受渡部132周辺に残存している状態を示している。
【0038】
図6は、この状態から下部ユニット120を前面側(図の右側)に引き出していった場合の時系列の変遷を上から(a)→(b)→(c)として示したものである。
【0039】
(a)下部ユニット120を前面側に引き出すべく移動させると、下側受渡ガイド対131bと下部搬送ローラ対125bは残留紙幣151を抱えた状態で前側に移動する。残留紙幣151の上部は上側搬送ガイド対131aの間で保持されている。
【0040】
また、後側の下側受渡ガイド対132bは、残留紙幣152を保持した状態で前側に移動する。残留紙幣152の上部は上部搬送ローラ対115dに挟持されると共に上側搬送ガイド対132aの間で保持されている。
【0041】
(b)下部ユニット120をさらに前面側に移動させると、上側受渡ガイド対131aと下側受渡ガイド対131bの櫛歯オーバーラップ部分の対抗する内面同士が接近し、両者で残留紙幣151を挟みつけた状態となる。
【0042】
同様に、後側の上側受渡ガイド対132aと下側受渡ガイド対132bの櫛歯オーバーラップ部分の対抗する内面同士が接近し、両者で残留紙幣152を挟みつけた状態となる。
【0043】
(c)下部ユニット120をさらに前面側に移動させると、下側受渡ガイド対131bの櫛歯オーバーラップ部分が上側受渡ガイド対131aのオーバーラップ部分をすり抜け、その際に挟みつけていた残留紙幣151を破断させる。
【0044】
同様に、下側受渡ガイド対132bの櫛歯オーバーラップ部分が上側受渡ガイド対132aのオーバーラップ部分をすり抜け、その際に残留紙幣152を破断させる。
【0045】
なお、下部ユニット120を後側(図の左側)に引き出そうとした場合も同様に、残留紙幣151、152は破断する。
【0046】
以上、説明したように本実施例によれば、上部ユニットと下部ユニットとからなり、上部ユニットと下部ユニット間同士で紙幣搬送を行う受渡部を装置の前側と後側の両端に有する紙幣処理装置において、受渡部を櫛歯形状で互いにオーバーラップする上下の受渡ガイドを設け、前側と後側の受渡部の高さ方向の位置を揃えることによって、受渡部における折れ紙幣等の搬送異常を防止すると共に、装置の前側にも後側にも下部ユニットを引き出すことが可能である。
【0047】
ただし、受渡部に残留紙幣が残った状態で下部ユニットを引き出そうとすると、その残留紙幣が破断を起こす場合があり、第2実施例以降でそれに考慮した機構を説明する。
【実施例0048】
(1)基本構成
図7は本発明の第2の実施例における紙幣処理装置200の側面図であり、上部ユニット210と下部ユニット220とから構成されている。全体構成は図1に示した紙幣処理装置100と同一であり、第1実施例と同様に、図の右側を装置前面(前側)、左側を装置後面(後側)とする。
【0049】
図7において、上部搬送機構115(図1参照)の搬送路(の一部)を形成する上部搬送ガイド対215aと下部搬送機構125(図1参照)の搬送路を形成する下部搬送ガイド対225aとの間には、前側の受渡部231が設けられている。また、上部搬送ガイド対215a及び下部搬送ガイド対225aには、上部搬送ローラ対215b及び下部搬送ローラ対225bが設けられている。
【0050】
後側についても同様に、上部搬送ガイド対215cと下部搬送ガイド対225cとの間には、後側の受渡部232が設けられており、上部搬送ガイド対215c及び下部搬送ガイド対225cには、上部搬送ローラ対215d及び下部搬送ローラ対225dが設けられている。
【0051】
本実施例の紙幣処理装置200は、下部ユニット220を前面から引き出して使用する場合(前面機と称する)と、あるいは後面から引き出して使用する場合(後面機と称する)との、それらの使用形態に応じて、受渡部231、232を構成する着脱可能な部材を取捨選択することができる。
【0052】
図7はその構成部材を取り付ける前の状態(基本構成)であり、受渡部231及び232には何らの構成部材も装着されていない。また、上側の各搬送ガイド対215aと215cの下端部、及び、下側の各搬送ガイド対225aと225cの上端部における、点線で囲んだ部分(それぞれが係合する部分)は櫛歯形状となっており、図4で示した点線で囲んだ部分と同様に、後述の構成部材を装着した際にそれらとオーバーラップするようになっている。
【0053】
以下、紙幣処理装置200を前面機として使用する場合と、後面機として使用する場合とに分けて、受渡部231、232の構成を説明する。
【0054】
(2)前面機として使用する場合
(2-1)構成
図8は紙幣処理装置200を前面機として使用する場合における、受渡部231、232の構成を示す図である。なお、見やすくするため、図7に示した搬送ローラ対215b、225b、215d、225dは省略している。
【0055】
前側の受渡部231は、搬送ガイド対215a及び225aと共に前側接続搬送路141を構成するガイド部材231aと、ガイド部材231bと、ガイド部材231cとが選択された上で装着されている。
【0056】
ガイド部材231aは搬送ガイド対215aの前面側(215a1)と搬送ガイド対225aの前面側(225a1)との間に設けられ、上部ユニット210と下部ユニット220とを連通し、図示しない治具等によって下部ユニット220の所定の位置に固定されている。したがって、下部ユニット220を前面側に引き出した場合、ガイド部材231aもそれに合わせて移動する。
【0057】
また、ガイド部材231aと搬送ガイド対215aの前面側との係合部分と、ガイド部材231aと搬送ガイド対225aの前面側との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図9に示す正面図のように互いに櫛歯形状となっており、オーバーラップしている。この櫛歯オーバーラップ部によって、第1実施例と同様に下部ユニット220の引き出し時に、ガイド部材231aと搬送ガイド対215aとの干渉を無くしつつ、搬送中の紙幣の搬送路外への逸脱を防止できる。
【0058】
ガイド部材231bとガイド部材231cは、搬送ガイド対215aの後面側(215a2)と搬送ガイド対225aの後面側(225a2)との間で、かつ、ガイド部材231aと対向する位置に、上側がガイド部材231b、その下側直下がガイド部材231cとなるように設けられている。両者の上下方向の寸法は略同一の長さであり、ガイド部材231bの下側の一部は、下部ユニット220内にせり出している。
【0059】
そして、ガイド部材231bは上部ユニット210に固定され、ガイド部材231cは下部ユニット220に固定されている。したがって、下部ユニット220を前面側に引き出した場合、ガイド部材231cもそれに合わせて移動するが、ガイド部材231bは上部ユニット210と共にその場に留まる。
【0060】
また、ガイド部材231bと搬送ガイド対215aの後面側(215a2)との係合部分、ガイド部材231bとガイド部材231cとの係合部分、ガイド部材231cと搬送ガイド対225aの後面側(225a2)との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図10に示す正面図のように互いに櫛歯形状となっており、オーバーラップしている。
【0061】
また、ガイド部材231aと搬送ガイド対215a(215a1)の櫛歯オーバーラップ部とガイド部材231bと搬送ガイド対215a(215a2)の櫛歯オーバーラップ部との高さ方向の位置は略同一で、櫛歯同士がすり抜けられるような櫛歯形状・位置関係となっている。ガイド部材231aと搬送ガイド対225a(225a1)の櫛歯オーバーラップ部とガイド部材231cと搬送ガイド対225a(225a2)の櫛歯オーバーラップ部についても同様である。
【0062】
一方、後側の受渡部232は、搬送ガイド対215c及び225cと共に後側接続搬送路142を構成するガイド部材232aと、ガイド部材232bと、ガイド部材232cとが選択され装着されている。
【0063】
ガイド部材232aは搬送ガイド対215cの後面側(215c1)と搬送ガイド対225cの後面側(225c1)との間に設けられ、上部ユニット210と下部ユニット220とを連通し、図示しない治具等によって上部ユニット210の所定の位置に固定されている。したがって、下部ユニット220を前面側に引き出した場合においても、ガイド部材232aは上部ユニット210と共にその位置に留まる。
【0064】
また、ガイド部材232aと搬送ガイド対215c(2156c1)との係合部分と、ガイド部材232aと搬送ガイド対225c(225c1)との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図9に示すように互いに櫛歯形状でオーバーラップしている。
【0065】
ガイド部材232bとガイド部材232cは、搬送ガイド対215cの前面側(215c2)と搬送ガイド対225cの前面側(225c2)との間で、かつ、ガイド部材232aと対向する位置に、上側がガイド部材232b、その下側直下ガイド部材232cとなるように設けられている。両者の上下方向の寸法は略同一の長さであり、ガイド部材232bの下側の一部は、下部ユニット220内にせり出している。
【0066】
そして、ガイド部材232bは上部ユニット210に固定され、ガイド部材232cは下部ユニット220に固定されている。したがって、下部ユニット220を前面側に引き出した場合、ガイド部材232cもそれに合わせて移動するが、ガイド部材232bは上部ユニット210と共にその場に留まる。
【0067】
また、ガイド部材232bと搬送ガイド対215c(215c2)との係合部分、ガイド部材232bとガイド部材232c(232c2)との係合部分、ガイド部材232cと搬送ガイド対225c(225c2)との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図10に示す正面図のように互いに櫛歯形状でオーバーラップしている。
【0068】
また、ガイド部材232aと搬送ガイド対215c(215c1)の櫛歯オーバーラップ部と、ガイド部材232bと搬送ガイド対215c(215c2)の櫛歯オーバーラップ部との高さ方向の位置は略同一で、櫛歯同士がすり抜けられるような櫛歯形状・位置関係となっている。ガイド部材232aと搬送ガイド対225c(225c1)の櫛歯オーバーラップ部と、ガイド部材232cと搬送ガイド対225c(225c2)の櫛歯オーバーラップ部についても同様である。
【0069】
以上のように、前側の受渡部231と後側の受渡部232を構成する各ガイド部材は、対称的な配置・構成となっており、さらに、各々の対応する櫛歯オーバーラップ部分は、図8の補助線4B1に示すように略同一の高さ方向位置に配置され、それぞれの櫛歯部分が互いに通過できるようになっている。
【0070】
なお、上述の構成では、ガイド部材231bとガイド部材232bとは、その下端側が下部ユニット220内へせり出しているが、補助線4B1のように櫛歯オーバーラップ部の高さ方向の位置が揃うようにすれば、ガイド部材231cとガイド部材232cの上端側が上部ユニット210内へせり出すように配置してもよい。後述の後面機として使用する構成においても同様である。
【0071】
(2-2)下部ユニット引き出し時の動作説明
次に、上述の構成において、受渡部231、232に紙幣が残留した状態で下部ユニット220を前面側に引き出したとしても、その残留紙幣が破断されないことを説明する。
【0072】
(2-2-1)残留紙幣が下部ユニット側に拘束された場合
図11Aは、図8に示した紙幣処理装置200の構成において、前側の下部搬送ローラ対225bに残留紙幣251が挟持されて残留していると共に、後側の下部搬送ローラ対225dに残留紙幣252が挟持されて残留している状態を示している。また、以下の説明に直接関係のない部位については図面上から省略している。
【0073】
図11Bは、図11Aの状態から下部ユニット220を前面側(図の右側)に引き出していった状態を上から時系列(a)→(b)→(c)の順に示したものである。
【0074】
(a)下部ユニット220の引き出しを開始すると、前側の残留紙幣251はその下側を下部搬送ローラ対225bに挟持されると共に、ガイド部材231aとガイド部材231cによって支えられた状態で下部ユニット220と共に移動する。残留紙幣251の上端部付近は櫛歯オーバーラップ部の間に保持されている。
【0075】
また、後側の残留紙幣252は、搬送ローラ対225dに挟持された状態で、その挟持部分付近は下部ユニット220と共に移動するが、上側部分はガイド部材232aと232bの間に保持されている。
【0076】
(b)さらに下部ユニット220を引き出していくと、前側の残留紙幣251の上端部付近は櫛歯オーバーラップ部の間から下方向にすり抜けて、破断することなく上部ユニット210よりも外側(図の右側)に位置するようになる。
【0077】
また、後側の残留紙幣252は、上側部分がガイド部材232aと232bとの間から下方向にすり抜けていく。
【0078】
(c)完全に下部ユニット220を引き出していくと、後側の残留紙幣252の上端側は前側のガイド部材231bの下端側を折れ曲がることによってくぐり抜けて、上部ユニット210よりも外側(図の右側)に位置するようになる。
【0079】
以上のようにして、残留紙幣251及び252がいずれも破断することなく、下部ユニット220を引き出すことができる。
【0080】
(2-2-2)残留紙幣が上部ユニット側に拘束された場合
図12Aは、図8に示した紙幣処理装置200の構成において、前側の上部搬送ローラ対215bに残留紙幣253が挟持されて残留していると共に、後側の上部搬送ローラ対215dに残留紙幣254が挟持されて残留している状態を示している。
【0081】
図12Bは、図12Aの状態から下部ユニット220を前面側に引き出していった状態を上から時系列(a)→(b)→(c)の順に示したものである。
【0082】
(a)下部ユニット220の引き出しを開始すると、前側の残留紙幣253は上部搬送ローラ対215bにその上端側を挟持されてその状態を維持するが、下側はガイド部材231aとガイド部材231cによって保持されているため、下部ユニット220の移動と共に移動して(折れ曲がって)いく。
【0083】
また、後側の残留紙幣254は、その上端側を搬送ローラ対215dに挟持され、中程をガイド部材232aとガイド部材232cとで保持されているため、その状態を維持する。残留紙幣254の下端側は、搬送ガイド対225cとのオーバーラップ部240付近で保持され、下部ユニット220の移動と共に前側に折れ曲がる。
【0084】
(b)さらに下部ユニット220を引き出していくと、前側の残留紙幣253の下側はガイド部材231aとガイド部材231cの間から折れ曲がりながら上方向にすり抜けていく。
【0085】
また、後側の残留紙幣254は、下端部が搬送ガイド対225cとのオーバーラップ部から上方向にすり抜けて、全体が下部ユニット220側よりも後側(図の左側)に位置するようになって、下部ユニット220の拘束から外れる。
【0086】
(c)さらに下部ユニット220を引き出していくと、下部ユニット220と共に移動してきた後側のガイド部材232cは、前側の残留紙幣253の下端部側が折れ曲がることによってくぐり抜けて、下部ユニット220は残留紙幣253、254の両者よりも外側(図の右側)に位置するようになる。
【0087】
以上のようにして、残留紙幣253及び254がいずれも破断することなく、下部ユニット220を引き出すことができる。
【0088】
(3)後面機として使用する場合
(3-1)構成
図13は紙幣処理装置200を後面機として使用する場合における、受渡部231、232の構成を示す図である。図8に示した前面機として使用する場合の構成では、前側のガイド部材231aは下部ユニット220側に装着され、後側のガイド部材232aは上部ユニット210側に装着されていたところ、図13に示す後面機として使用場合では、前側のガイド部材231a’は上部ユニット210側に装着され、後側のガイド部材232a’は下部ユニット220側に装着される点が異なる。
【0089】
すなわち、下部ユニット220を後側(図の左側)へ引き出すと、後側のガイド部材232a’も下部ユニット220と共に後側へ移動していくが、前側のガイド部材231a’は上部ユニット210と共にその場に留まることになる。
【0090】
その他の部品構成、配置等については、図8の前面機として使用する場合の構成と同一であるため、説明は省略する。
【0091】
(3-2)下部ユニット引き出し時の動作説明
次に、上述の構成において、受渡部231、232に紙幣が残留した状態で下部ユニット220を後面側に引き出したとしても、その残留紙幣が破断されないことを説明する。
【0092】
(3-2-1)残留紙幣が下部ユニット側に拘束された場合
図14Aは、図13に示した紙幣処理装置200の構成において、前側の下部搬送ローラ対225bに残留紙幣255が挟持されて残留していると共に、後側の下部搬送ローラ対225dに残留紙幣256が挟持されて残留している状態を示している。
【0093】
図14Bは、図14Aの状態から下部ユニット220を後面側に引き出していった状態を上から時系列(a)→(b)→(c)の順に示したものである。
【0094】
(a)下部ユニット220の後側(図の左側)への引き出しを開始すると、後側の残留紙幣256は下部搬送ローラ対225dに挟持されると共に、ガイド部材232a’とガイド部材232cによって支えられた状態で下部ユニット220と共に移動する。残留紙幣256の上端部付近は櫛歯オーバーラップ部241の間に保持されている。
【0095】
また、前側の残留紙幣255は、搬送ローラ対225bに挟持された状態で、その挟持部分付近は下部ユニット220と共に移動するが、上側部分はガイド部材231a’と231bの間に保持されて(支えられて)いる。
(b)さらに下部ユニット220を引き出していくと、後側の残留紙幣256の上端部付近は櫛歯オーバーラップ部241の間から下方向にすり抜けて、上部ユニット210よりも後側(図の左側)に位置するようになる。
【0096】
また、前側の残留紙幣255は、上側部分がガイド部材231a’と231bとの間から下方向にすり抜けていく。
【0097】
(c)さらに下部ユニット220を引き出していくと、前側の残留紙幣255は後側のガイド部材232bを折れ曲がることによってくぐり抜けて、上部ユニット210よりも後側(図の左側)に位置するようになっていく。
【0098】
以上のようにして、残留紙幣257及び258がいずれも破断することなく、下部ユニット220を引き出すことができる。
【0099】
(3-2-2)残留紙幣が上部ユニット側に拘束された場合
図15Aは、図13に示した紙幣処理装置200の構成において、前側の上部搬送ローラ対215bに残留紙幣257が挟持されて残留していると共に、後側の上部搬送ローラ対215dに残留紙幣258が挟持されて残留している状態を示している。
【0100】
図15Bは、図15Aの状態から下部ユニット220を後面側に引き出していった状態を上から時系列(a)→(b)→(c)の順に示したものである。
【0101】
(a)下部ユニット220の引き出しを開始すると、後側の残留紙幣258は上部搬送ローラ対215dにその上端側を挟持されてその状態を維持するが、下側はガイド部材232a’とガイド部材232cによって支えられ(保持され)ているため、下部ユニット220の移動と共に移動して(折れ曲がって)いく。
【0102】
また、前側の残留紙幣257は、その上端側を搬送ローラ対215bに挟持され、中程をガイド部材231a’とガイド部材231bとで保持されているため、その状態を維持する。残留紙幣257の下端側は、搬送ガイド対225aとの櫛歯オーバーラップ部242付近で保持され、下部ユニット220の移動と共に後側に移動する(折れ曲がる)。
【0103】
(b)さらに下部ユニット220を引き出していくと、後側の残留紙幣258の下側はガイド部材232a’とガイド部材232cの間から折れ曲がりながら上方向にすり抜けていく。
【0104】
また、前面側の残留紙幣257は、下端部が搬送ガイド対225aとの櫛歯オーバーラップ部242付近から上方向にすり抜けて、全体が下部ユニット220よりも前側に位置し、下部ユニット220側の拘束から外れる。
【0105】
(c)さらに下部ユニット220を引き出していくと、前側のガイド部材231cはそれと共に後側へ移動していき、後側の残留紙幣258の下側が折れ曲がることによってくぐり抜ける。この結果、下部ユニット220は残留紙幣257、258の両者よりも後側(図の右側)に位置するようになる。
【0106】
以上のようにして、残留紙幣257及び258がいずれも破断することなく、下部ユニット220を引き出すことができる。
【0107】
以上、説明したように本実施例によれば、前面機もしくは後面機との適用状況に応じて、受渡部に所定のガイド部材を適宜組み合わせて装着することによって、残留紙幣を破断させることなく、下部ユニットを引き出すことが可能である。
【0108】
また、ガイド部材以外を共通化することができるので、適用状況に応じて全く異なる構成の紙幣処理装置を開発する必要がなく、設計開発・製造コストの削減を図ることが可能となる。例えば、ある銀行等で後面機として使用していた紙幣処理装置が不要になった際に、それを回収して別の商業店舗等で前面機としてリサイクル使用するような状況下において、ガイド部材を前面機用に装着し直すことによって対応可能であるため、資源の有効活用とコスト削減が可能である。
【実施例0109】
(1)基本構成
図16は本発明の第3の実施例における紙幣処理装置300の側面図であり、上部ユニット310と下部ユニット320とから構成されている。全体構成は図1に示した紙幣処理装置100と同一であり、第1実施例と同様に、図の右側を装置前面(前側)、左側を装置後面(後側)とする。
【0110】
図16において、上部搬送機構115(図1参照)の搬送路を形成する上部搬送ガイド対315aと下部搬送機構125(図1参照)の搬送路を形成する下部搬送ガイド対325aとの間には、前側の受渡部331が設けられている。また、上部搬送ガイド対315a及び下部搬送ガイド対325aには、上部搬送ローラ対315b及び下部搬送ローラ対325bが設けられている。
【0111】
後側についても同様に、上部搬送ガイド対315cと下部搬送ガイド対325dとの間には、後側の受渡部332が設けられており、上部搬送ガイド対315c及び下部搬送ガイド対325dには、上部搬送ローラ対315d及び下部搬送ローラ対325dが設けられている。
【0112】
本実施例の紙幣処理装置300も第2実施例と同様に前面機、もしくは後面機として使用可能であり、その使用形態に応じて受渡部331、332を構成する着脱可能な部材を取捨選択する。図16はその構成部材を取り付ける前の状態(基本構成)である。また、各搬送ガイド対315aと315cの下端部、及び325aと325cの上端部の点線で囲んだ部分は前述の実施例と同様に櫛歯オーバーラップ構造となっている。
【0113】
本実施例と図7に示した第2実施例との違いは、前側の下部搬送ローラ対325bの高さ方向の位置が、第2実施例と比較して高い位置にあり、それによって前側受渡部331の高さ方向のスペースも第2実施例の前側受渡部231よりも小さくなっている。従って、前側受渡部331では第2実施例の前側受渡部231のように、異なるガイド部材を上下方向に2個組み合わせて装着するほどのスペースが確保できない構造となっている。なお、後側受渡部332については、第2実施例の前側受渡部232と同様である。
【0114】
以下、紙幣処理装置300を前面機として使用する場合と、後面機として使用する場合とに分けて、受渡部331、332の構成を説明する。
【0115】
(2)前面機として使用する場合
(2-1)構成
図17は紙幣処理装置300を前面機として使用する場合における、受渡部331、332の構成を示す図である。
【0116】
前側の受渡部331は、搬送ガイド対315a及び325aと共に前側接続搬送路141を構成するガイド部材331aとガイド部材331bとが選択された上で装着されている。
【0117】
ガイド部材331aは搬送ガイド対315aの前面側(図の右側)と搬送ガイド対325aの前面側(図の右側)との間に設けられ、上部ユニット310と下部ユニット320とを連通し、図示しない治具等によって下部ユニット320の所定の位置に固定されている。したがって、下部ユニット320を前面側に引き出した場合、ガイド部材231aもそれに合わせて移動する。
【0118】
また、ガイド部材331aと搬送ガイド対315aの前面側との係合部分と、ガイド部材331aと搬送ガイド対325aの前面側との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図9に示す正面図のように互いに櫛歯形状となっており、オーバーラップしている。この櫛歯オーバーラップ部によって、第2実施例と同様に下部ユニット320の引き出し時にガイド部材同士の干渉を無くしつつ、搬送中の紙幣の搬送路外への逸脱を防止できる。
【0119】
ガイド部材331bは、搬送ガイド対315aの後面側と、搬送ガイド対325aの後面側との間で、かつ、ガイド部材331aと対向する位置に設けられている。ガイド部材331bとガイド部材331aの高さ方向(上下方向)の寸法は略同一の長さであり、上部ユニット310と下部ユニット320とを連通し、図示しない治具等によって上部ユニット310の所定の位置に固定されている。したがって、下部ユニット320を前面側に引き出した場合、ガイド部材331bはその場に留まる。
【0120】
また、ガイド部材331bと搬送ガイド対315aの前面側との係合部分、ガイド部材331bと搬送ガイド対325aの後面側との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)も、図9に示すように櫛歯オーバーラップ部を形成している。
【0121】
一方、後側の受渡部332は、図8に示した第2実施例の受渡部232と同様である。すなわち、受渡部332は、搬送ガイド対315c及び325cと共に後側接続搬送路142を構成するガイド部材332aと、ガイド部材332bと、ガイド部材332cとが選択され装着されている。
【0122】
ガイド部材332aは搬送ガイド対315cの後面側と搬送ガイド対325cの後面側との間に設けられ、上部ユニット310と下部ユニット320とを連通し、図示しない治具等によって上部ユニット310の所定の位置に固定されている。したがって、下部ユニット320を前面側に引き出した場合においても、ガイド部材332aはその位置に留まる。
【0123】
また、ガイド部材332aと搬送ガイド対315cの後面側との係合部分と、ガイド部材332aと搬送ガイド対325cの後面側との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図9に示すように互いに櫛歯形状でオーバーラップしている。
【0124】
ガイド部材332bとガイド部材332cは、搬送ガイド対315cの前面側と搬送ガイド対325cの前面側との間で、かつ、ガイド部材332aと対向する位置に、上側がガイド部材332b、その直下の下側がガイド部材332cとなるように設けられている。両者の上下方向の寸法は略同一の長さであり、ガイド部材332bの下側の一部は、下部ユニット320内にせり出している。また、ガイド部材332bとガイド部材332cの高さ方向の寸法は、ガイド部材331a及びガイド部材331bと略同一の長さである。
【0125】
そして、ガイド部材332bは上部ユニット310に固定され、ガイド部材332cは下部ユニット320に固定されている。したがって、下部ユニット320を前面側に引き出した場合、ガイド部材332cもそれに合わせて移動するが、ガイド部材332bはその場に留まる。
【0126】
また、ガイド部材332bと搬送ガイド対315cの前面側との係合部分、ガイド部材332bとガイド部材332cとの係合部分、ガイド部材332cと搬送ガイド対325c前面側との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図10に示すように互いに櫛歯形状でオーバーラップしている。
【0127】
さらに、ガイド部材331bと搬送ガイド対325aとの櫛歯オーバーラップ部と、ガイド部材332bとガイド部材332cとの櫛歯オーバーラップ部とは、図17の補助線17A1に示すように略同一の高さ方向位置に配置され、下部ユニット320を前面側に目一杯引き出した際に、ガイド部材332cの上側の櫛歯部分がガイド部材331bの下側の櫛歯部分を通過できるようになっている。
【0128】
(2-2)下部ユニット引き出し時の動作説明
次に、上述の構成において、受渡部331、332に紙幣が残留した状態で下部ユニット320を前面側に引き出したとしても、その残留紙幣が破断されないことを説明する。
【0129】
(2-2-1)残留紙幣が下部ユニット側に拘束された場合
図18Aは、図17に示した紙幣処理装置300の構成において、前側の下部搬送ローラ対325bに残留紙幣350が挟持されて残留していると共に、後側の下部搬送ローラ対325dに残留紙幣351が挟持されて残留している状態を示している。また、図17における上部搬送ローラ対315b、315d等、以下の説明に直接関係のない部位については図18Aでは省略している。
【0130】
図18Bは、図18Aの状態から下部ユニット320を前面側(図の右側)に引き出していった状態を上から時系列で(a)→(b)→(c)の順に示したものである。
【0131】
(a)下部ユニット320の引き出しを開始すると、前側の残留紙幣350の下側は搬送ローラ対325bに挟持されているため、下部ユニット320と共に前側へ移動するが、残留紙幣259の上側は搬送ガイド対315aの間に保持された状態を維持する。
【0132】
また、後側の残留紙幣351の下側も、搬送ローラ対325dに挟持されているため、下部ユニット320と共に前側移動するが、残留紙幣260の上側はガイド部材332aとガイド部材332bの間に保持された状態を維持する。
【0133】
(b)さらに下部ユニット320を引き出していくと、前側の残留紙幣350の上端部付近は搬送ガイド対315aの間から下方向にすり抜けて、破断することなく上部ユニット310よりも前側(図の右側)に位置するようになる。
【0134】
また、後側の残留紙幣351も、上側部分がガイド部材332aと332bとの間から下方向にすり抜けていく。
【0135】
(c)さらに下部ユニット320を引き出していくと、後側の残留紙幣351はその上部が折れ曲がることによって、前側のガイド部材331bの下端部をくぐり抜けて、上部ユニット310よりも前側(図の右側)に位置するようになる。
【0136】
以上のようにして、残留紙幣350及び351がいずれも破断することなく、下部ユニット320を引き出すことができる。
【0137】
(2-2-2)残留紙幣が上部ユニット側に拘束された場合
図18Cは、図17に示した紙幣処理装置300の構成において、前側の上部搬送ローラ対315bに残留紙幣352が挟持されて残留していると共に、後側の上部搬送ローラ対315dに残留紙幣353が挟持されて残留している状態を示しており、図18Bと同様に、下部ユニット320を前面側(図の右側)に引き出していった状態を上から時系列で(a)→(b)→(c)の順に示したものである。
【0138】
(a)下部ユニット320の引き出しを開始すると、前側の残留紙幣352は上部搬送ローラ対315bにその上端側を挟持されてその状態を維持するが、下端側は搬送ガイド対325aの上端側によって支持されているため、下部ユニット320の移動と共に下端側も移動していく(折れ曲がっていく)。
【0139】
また、後側の残留紙幣353は、その上端側は搬送ローラ対315dに挟持され、中程はガイド部材332aとガイド部材332bとで保持されているため、それぞれその状態(位置)を維持する。残留紙幣353の下端側は、搬送ガイド対325cの間で保持されているため、下部ユニット320の移動と共に前側(図の右側)に移動していく(折れ曲がっていく)。
【0140】
(b)さらに下部ユニット320を引き出していくと、前側の残留紙幣352の下側は搬送ガイド対325aの間から、折れ曲がりながら上方向にすり抜けていく。
【0141】
また、後側の残留紙幣353は、下端部が搬送ガイド対325cの間から上方向にすり抜けて、全体が下部ユニット320よりも後側に位置し、下部ユニット320側の拘束から外れる。
【0142】
(c)さらに下部ユニット320を引き出していくと、前側の残留紙幣352は、下部ユニットと共に移動してきた後側のガイド部材332cと搬送ガイド対325aとを折れ曲がることでくぐり抜けて、下部ユニット320は残留紙幣352および353の両者よりも前側(図の右側)に位置するようになる。
【0143】
以上のようにして、残留紙幣352及び353がいずれも破断することなく、下部ユニット320を引き出すことができる。
【0144】
(3)後面機として使用する場合
(3-1)構成
図19Aは紙幣処理装置300を後面機として使用する場合における、受渡部331、332の構成を示す図である。
【0145】
前側の受渡部331は、搬送ガイド対315a及び325aと共に前側接続搬送路141を構成するガイド部材331a’とガイド部材331cとが選択された上で装着されている。
【0146】
ガイド部材331a’は搬送ガイド対315aの前面側(図の右側)と搬送ガイド対325aの前面側(図の右側)との間に設けられ、上部ユニット310と下部ユニット320とを連通し、図示しない治具等によって上部ユニット310の所定の位置に固定されている。したがって、下部ユニット320を後面側に引き出した場合、ガイド部材331a’は上部ユニット310と共にその位置に留まる。
【0147】
また、ガイド部材331a’と搬送ガイド対315aの前面側との係合部分と、ガイド部材331a’と搬送ガイド対325aの前面側との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図9に示すように櫛歯オーバーラップ部となっている。
【0148】
ガイド部材331cは、搬送ガイド対315aの後面側と、搬送ガイド対325aの後面側との間で、かつ、ガイド部材331a’と対向する位置に設けられている。ガイド部材331a’とガイド部材331cの高さ方向(上下方向)の寸法は略同一の長さであり、上部ユニット310と下部ユニット320とを連通する。
【0149】
さらに、ガイド部材331cは、上側の櫛歯オーバーラップ部付近に設けた支点を中心に、下側が後面側に回動するように、上部ユニット310に装着されている。
【0150】
図19Bはその様子を示すための図19Aを簡略化した図であって、ガイド部材331cは、上側の櫛歯オーバーラップ部付近に設けた支点軸361を中心に、矢印360方向に回動するように装着される。
【0151】
図19Cはその回動機構の一構成例を示す、ガイド部材331cの正面図であって、上部ユニット310に設けた支点軸361を囲むように取り付けられている中空ローラ363に対して、取付用治具362を用いて装着されている。
【0152】
さらに、ガイド部材331cは、図示しないバネ等によって、長手方向が上下方向(鉛直方向)となるように付勢されており、図19Bに示すように通常時は上部搬送ガイド対315aと一直線状になっているが、残留紙幣等によって後面側(図の左側)に押されると、矢印360の方向に回動する。
【0153】
一方、後側の受渡部332は、搬送ガイド対315c及び325cと共に後側接続搬送路142を構成するガイド部材332a’と、ガイド部材332dと、ガイド部材332cとが選択され装着されている。
【0154】
ガイド部材332a’は搬送ガイド対315cの後面側と搬送ガイド対325cの後面側との間に設けられ、上部ユニット310と下部ユニット320とを連通し、図示しない治具等によって下部ユニット320の所定の位置に固定されている。したがって、下部ユニット320を後面側に引き出した場合、ガイド部材332a’は下部ユニット320と共に移動する。
【0155】
また、ガイド部材332a’と搬送ガイド対315cの後面側との係合部分と、ガイド部材332a’と搬送ガイド対325cの後面側との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図9に示すように互いに櫛歯形状でオーバーラップしている。
【0156】
ガイド部材332dとガイド部材332cは、搬送ガイド対315cの前面側と搬送ガイド対325cの前面側との間で、かつ、ガイド部材332a’と対向する位置に、上側がガイド部材332d、その下側直下がガイド部材332cとなるように設けられている。両者の上下方向の寸法は略同一の長さであり、ガイド部材332dの下側の一部は、下部ユニット320内にせり出している。
【0157】
ガイド部材332dは、前側のガイド部材331cと同一の構成を有している。すなわち、ガイド部材332dは、上側の櫛歯オーバーラップ部付近に設けた支点を中心に、下側が後面側に回動するように、上部ユニット310に装着されており、図19Bに示すように、ガイド部材332dは、上側の櫛歯オーバーラップ部付近に設けた支点軸381を中心に、矢印380方向に回動するように装着される。
【0158】
図19Cはその回動機構の一例であって、ガイド部材331c、に示すように、上部ユニット310に設けた支点軸361を囲むように取り付けられている中空ローラ363に対して、取付用治具362を用いて装着されている。
【0159】
さらに、ガイド部材332dは、図示しないバネ等によって、長手方向が上下方向(鉛直方向)となるように付勢されており、図19Bに示すように通常時は上部搬送ガイド対315cと一直線状になっているが、残留紙幣等によって後面側(図の左側)に押されると、矢印380の方向に回動する。
【0160】
なお、ガイド部材332cは下部ユニット320に装着されているため、下部ユニット320引き出し時にはそれと共に移動する。
【0161】
また、ガイド部材332dと搬送ガイド対315cの前面側(図19A上の右側)との係合部分、ガイド部材332dとガイド部材332cとの係合部分、ガイド部材332cと搬送ガイド対325c前面側との係合部分(図中、破線の四角で囲んだ部分)は、図19Cに示すように互いに櫛歯形状でオーバーラップしている(図19Cでは、ガイド部材332cと搬送ガイド対325c前面側との櫛歯オーバーラップ部は不図示)。
【0162】
さらに、ガイド部材331cと搬送ガイド対325aとの櫛歯オーバーラップ部と、ガイド部材332dとガイド部材332cとの櫛歯オーバーラップ部とは、図19Aの補助線19A1に示すように略同一の高さ方向位置に配置され、下部ユニット320を後面側に目一杯引き出した際に、搬送ガイド対325aの櫛歯部分がガイド部材331dの下側の櫛歯部分を通過できるようになっている。
【0163】
(3-2)下部ユニット引き出し時の動作説明
次に、上述の構成において、受渡部331、332に紙幣が残留した状態で下部ユニット320を後面側に引き出したとしても、その残留紙幣が破断されないことを説明する。
【0164】
(3-2-1)残留紙幣が下部ユニット側に拘束された場合
図20Aは、図19Aに示した紙幣処理装置300の構成において、前側の下部搬送ローラ対325bに残留紙幣352が挟持されて残留していると共に、後側の下部搬送ローラ対325dに残留紙幣353が挟持されて残留している状態を示している。また、図19Aにおける上部搬送ローラ対315b、315d等、以下の説明に直接関係のない部位については図20Aでは省略している。
【0165】
図20Bは、図20Aの状態から下部ユニット320を後面側(図の左側)に引き出していった状態を上から時系列で(a)→(b)→(c)の順に示したものである。
【0166】
(a)下部ユニット320の引き出しを開始すると、前側の残留紙幣352の下側は搬送ローラ対325bに挟持されているため、下部ユニット320と共に後側へ移動する。残留紙幣352の上側は、可倒式のガイド部材331cを移動方向(後面側;図の左側)に押圧し、ガイド部材331cはその下端側が後側に回動する。
【0167】
また、後側の残留紙幣353の下側も、搬送ローラ対325dに挟持されているため、下部ユニット320と共に移動するが、残留紙幣353の上端側は搬送ガイド対315cの下端側の間に保持された状態を維持する。
【0168】
(b)さらに下部ユニット320を引き出していくと、前側の残留紙幣352の上側は回動したガイド部材331cの下方向にすり抜け、また、ガイド部材331cは元の直立の状態に戻る。
【0169】
また、後側の残留紙幣260も、上端側が搬送ガイド対315cの下端側の間から下方向にすり抜け、上部ユニット310よりも装置の後側に位置するようになる。
【0170】
(c)さらに下部ユニット320を引き出していくと、前側の残留紙幣352はそれに伴って後側に移動し、その上側部分が後側のガイド部材332dの下側を移動方向(図の左側)に押圧する。それによって、可倒式のガイド部材332dはその下端側が後面側に回動し、残留紙幣352の上側を後面側へ逃がす。
【0171】
以上のようにして、残留紙幣352及び353がいずれも破断することなく、下部ユニット320を引き出すことができる。
(3-2-2)残留紙幣が上部ユニット側に拘束された場合
図20Cは、図19Aに示した紙幣処理装置300の構成において、前側の上部搬送ローラ対315bに残留紙幣354が挟持されて残留していると共に、後側の上部搬送ローラ対315dに残留紙幣355が挟持されて残留している状態を示しており、図20Bと同様に、下部ユニット320を後側(図の左側)に引き出していった状態を上から時系列で(a)→(b)→(c)の順に示したものである。
【0172】
(a)下部ユニット320の引き出しを開始すると、後側の残留紙幣355は上部搬送ローラ対315dにその上端側を挟持されてその状態を維持するが、下側はガイド部材332aとガイド部材332cによって保持されているため、下部ユニット320の移動と共に後側へ移動して(折れ曲がって)いく。
【0173】
また、前側の残留紙幣354は、その上端側を搬送ローラ対315bに挟持され、中程をガイド部材331a’とガイド部材331cとで保持され、下側を搬送ガイド対325aの間で保持されているため、残留紙幣354の下側は下部ユニット320の移動と共に後側(図の左側)に移動して折れ曲がっていき、それに合わせて可倒式のガイド部材331cも、残留紙幣354の剛性や折れ曲がり程度に基づく応力に応じて、その下端側が後側に回動する。
【0174】
(b)さらに下部ユニット320を引き出していくと、後側の残留紙幣355の下側はガイド部材332aとガイド部材332cとの間から折れ曲がりながら上方向にすり抜けていく。
【0175】
また、前側の残留紙幣354は、下端部が搬送ガイド対325aの間から上方向に折れ曲がりながらすり抜けて、全体が下部ユニット320よりも前側に位置し、下部ユニット320の拘束から外れる。
【0176】
(c)さらに下部ユニット320を引き出していくと、前側の搬送ガイド対325aがそれに伴って後側へ移動していき、後側の残留紙幣355の下側に接触するが、その後、残留紙幣355は折れ曲がることによって、搬送ガイド対325aを後方側へ逃がし、最終的に下部ユニット320は残留紙幣354、355の両者よりも後側(図の左側)に位置するようになる。
【0177】
上述のようにして、残留紙幣354及び355がいずれも破断することなく、下部ユニット320を引き出すことができる。
【0178】
以上、説明したように本実施例によれば、受渡部周辺の部品配置等によって、受渡部を構成するガイド部材の配置スペース等に制約がある場合においても、残留紙幣を破断させることなく、前側及び後側のいずれにも下部ユニットを引き出すことを可能とする紙幣処理装置を提供することが可能となる。
【実施例0179】
上述した実施例2及び実施例3では、紙幣処理装置の適用形態に応じて、着脱可能なガイド部材を取捨選択して取り付けることによって、前面機としても後面機としても、いずれにも対応可能としていたが、例えば、特定の国、もしくは特定の地域においては前面機のみ、もしくは後面機のみといったように、適用形態が限定されている場合も考えられる。そして、そのような国・地域向けに紙幣処理装置を所定の台数で一括して製造する場合には、前面機専用、もしくは、後面機専用として製造した方が、ガイド部材を着脱可能構造とするための部品や治具等が不要となって、より効率的である。
【0180】
このような専用機として構成する場合、上述した実施例2及び3において、各ガイド部材と各搬送ガイド対とを一体成型すること等によって実現可能である。
【0181】
例えば、図8における実施例2(前面機)のケースでは、ガイド部材231aと搬送ガイド対225aとを一体成型するか、もしくは一体構造の部品を採用することによって実現できる。なお、この場合、当然にガイド部材231aと搬送ガイド対225aとの間の櫛歯オーバーラップ構造は不要である。
【0182】
以上、説明したように本実施例によれば、実施例2及び実施例3の構成を、前面機もしくは後面機の専用機として構成することによって、その適用形態によっては、より製造コストを下げることが可能となる。
【符号の説明】
【0183】
100:紙幣処理装置
110:上部ユニット
111:紙幣入出金口
112:紙幣鑑別部
113:一時保管庫
115:上部搬送機構
120:下部ユニット
121:紙幣収納庫
125:下部搬送機構
131、132:受渡部
141:前側接続搬送路
142:後側接続搬送路
200:紙幣処理装置
210:上部ユニット
220:下部ユニット
231、232:受渡部
300:紙幣処理装置
310:上部ユニット
320:下部ユニット
331、332:受渡部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C