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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025018
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】巻線界磁型回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 19/36 20060101AFI20250214BHJP
   H02K 19/28 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H02K19/36 C
H02K19/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129451
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】吉村 雅貴
【テーマコード(参考)】
5H619
【Fターム(参考)】
5H619AA13
5H619BB01
5H619BB06
5H619BB13
5H619BB15
5H619PP13
5H619PP31
(57)【要約】
【課題】界磁電流に応じて生じる磁束を適正に検出し、ひいては界磁電流の推定を可能とする巻線界磁型回転電機を提供する。
【解決手段】巻線界磁型の回転電機40において、ロータ60は、周方向に並ぶ磁極ごとに設けられた主極部62を有するロータコア61と、主極部62に巻回された界磁巻線70とを有する。ロータコア61には回転軸32が一体化されている。回転軸32は、強磁性体材料よりなる。軸巻線151は、回転軸32に巻回され、界磁巻線70に流れる界磁電流により通電される。磁気センサ152は、回転軸32の軸方向端部に設けられ、軸巻線151の通電により生じる磁束を検出する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ巻線(52)を有するステータ(50)と、
周方向に並ぶ磁極ごとに設けられ径方向に突出する主極部(62)を有するロータコア(61)と、前記主極部に巻回された界磁巻線(70)とを有するロータ(60)と、
前記ロータコアに一体化された回転軸(32)と、を備え、
前記界磁巻線に界磁電流を誘起させるための高周波電流が前記ステータ巻線に流れる巻線界磁型回転電機(40)であって、
前記回転軸は、強磁性体材料よりなり、
前記回転軸に巻回され、前記界磁巻線に流れる界磁電流により通電される軸巻線(151)と、
前記回転軸の軸方向端部に設けられ、前記軸巻線の通電により生じる磁束を検出する磁束検出部(152)と、
を備える、巻線界磁型回転電機。
【請求項2】
前記回転軸の軸線が直線状に延びる方向において前記磁束検出部を挟んで前記回転軸の反対側に、前記回転軸の軸方向端面から流出する磁束を集める集磁部材(153)が設けられている、請求項1に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項3】
前記界磁巻線は、第1巻線部(71a)及び第2巻線部(71b)を有し、前記第1巻線部の第1端及び第2端と前記第2巻線部の第1端及び第2端とのうち、前記第1巻線部の第2端と前記第2巻線部の第1端との電気的な接続により前記各巻線部が直列に接続されており、
前記第1巻線部及び前記第2巻線部の直列接続体の両端にダイオード(93)が接続されるとともに、前記第2巻線部に並列にコンデンサ(91)が接続されており、
前記第1巻線部と前記コンデンサと前記ダイオードとを含む直列共振回路において前記第1巻線部の第1端側又は第2端側に、当該第1巻線部に直列に前記軸巻線として第1軸巻線(151A)が接続され、
前記第2巻線部と前記コンデンサとを含む並列共振回路において前記第2巻線部の第1端側又は第2端側に、当該第2巻線部に直列に前記軸巻線として第2軸巻線(151B)が接続されている、請求項1又は2に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項4】
前記第1軸巻線及び前記第2軸巻線の巻き数比は、前記第1巻線部及び前記第2巻線部の巻き数比と等しい、請求項3に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項5】
前記ロータは、前記第1巻線部、前記第2巻線部、前記ダイオード及び前記コンデンサを電気的に接続して前記直列共振回路及び前記並列共振回路を構成する回路モジュール(102)を有し、
前記回路モジュールは、前記第1巻線部の第1端側及び第2端側の導線端部(125)、並びに前記第2巻線部の第1端側及び第2端側の導線端部(126)を保持する導線保持部(132)を有し、
前記導線保持部に保持された前記第1巻線部の第1端側又は第2端側の導線端部に、前記第1軸巻線が接続され、
前記導線保持部に保持された前記第2巻線部の第1端側又は第2端側の導線端部に、前記第2軸巻線が接続されている、請求項3に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項6】
前記界磁巻線は、第1巻線部(71a)及び第2巻線部(71b)を有し、前記第1巻線部の第1端及び第2端と前記第2巻線部の第1端及び第2端とのうち、前記第1巻線部の第2端と前記第2巻線部の第1端との電気的な接続により前記各巻線部が直列に接続されており、
前記第1巻線部の第1端と前記第2巻線部の第2端との間にダイオード(93)が接続されるとともに、前記第2巻線部に並列にコンデンサ(91)が接続されており、
前記第1巻線部と前記コンデンサと前記ダイオードとを含む直列共振回路において前記第1巻線部の第1端側又は第2端側に、当該第1巻線部に直列に前記軸巻線が接続されている、請求項1又は2に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項7】
前記界磁巻線は、第1巻線部(71a)及び第2巻線部(71b)を有し、前記第1巻線部の第1端及び第2端と前記第2巻線部の第1端及び第2端とのうち、前記第1巻線部の第2端と前記第2巻線部の第1端との電気的な接続により前記各巻線部が直列に接続されており、
前記第1巻線部の第1端と前記第2巻線部の第2端との間にダイオード(93)が接続されるとともに、前記第2巻線部に並列にコンデンサ(91)が接続されており、
前記第2巻線部と前記コンデンサとを含む並列共振回路において前記第2巻線部の第1端側又は第2端側に、当該第2巻線部に直列に前記軸巻線が接続されている、請求項1又は2に記載の巻線界磁型回転電機。
【請求項8】
前記回転軸には、前記軸巻線が巻回された状態で当該軸巻線を樹脂封止する樹脂封止部(155)が設けられている、請求項1又は2に記載の巻線界磁型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、巻線界磁型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
巻線界磁型回転電機では、ロータにおいて、ロータコアの各主極部(磁気突極部)に界磁巻線が巻回され、その界磁巻線の通電に伴い主極部ごとに磁極が形成される。また、ブラシレス構造の巻線界磁型回転電機において、ロータの界磁電流を検出する技術が知られている。例えば特許文献1に記載の技術では、交流励磁機における空隙磁束のq軸成分を検出して電圧波形を出力するq軸巻線を備え、交流励磁機の単体試験時に、交流励磁機に流れる直流出力電流と、q軸巻線が出力する電圧波形の電圧レベルとの比例係数を求めて、当該比例係数を基準校正値として保持するとともに、ブラシレス同期機の動作時に、q軸巻線出力電圧が出力する電圧波形の電圧レベルと、基準校正値との積を演算して界磁電流を求めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-309100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術は、界磁電流に対するq軸巻線の電圧波形の直線性を用い、予め抽出しておいた基準校正値と、q軸巻線が出力する電圧波形の電圧レベルとの積を求めることにより界磁電流を推定するものであり、q軸巻線の電圧波形を用いて界磁電流を間接的に求めるものとしている。この場合、上記の推定アルゴリズムは、制御装置(マイコン)の演算負荷の圧迫を招くことが懸念される。なお、上記技術では、サージ電圧に対する処理も必要になることも考えられる。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、界磁電流に応じて生じる磁束を適正に検出し、ひいては界磁電流の推定を可能とする巻線界磁型回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
ステータ巻線を有するステータと、
周方向に並ぶ磁極ごとに設けられ径方向に突出する主極部を有するロータコアと、前記主極部に巻回された界磁巻線とを有するロータと、
前記ロータコアに一体化された回転軸と、を備え、
前記界磁巻線に界磁電流を誘起させるための高周波電流が前記ステータ巻線に流れる巻線界磁型回転電機であって、
前記回転軸は、強磁性体材料よりなり、
前記回転軸に巻回され、前記界磁巻線に流れる界磁電流により通電される軸巻線と、
前記回転軸の軸方向端部に設けられ、前記軸巻線の通電により生じる磁束を検出する磁束検出部と、
を備える。
【0007】
上記構成の巻線界磁型回転電機では、ステータ巻線に高周波電流を流すことに伴い、界磁巻線に界磁電流が誘起される。この場合、強磁性体材料よりなる回転軸に、界磁巻線に流れる界磁電流により通電される軸巻線が巻回されていることで、回転軸の軸線方向に磁束が生じる。そして、回転軸の軸方向端部に設けられた磁束検出部により、軸巻線の通電により生じる磁束が検出される。本構成では、界磁電流により生じる磁束量を直接的に検出することができる。その結果、界磁電流に応じて生じる磁束を適正に検出し、ひいては界磁電流の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】回転電機の制御システムの全体構成図。
図2】インバータ及びその周辺構成を示す図。
図3】ロータ及びステータの横断面図。
図4】ロータが備える電気回路を示す図。
図5】ロータの全体の構成を示す斜視図。
図6】ロータの分解斜視図。
図7】ロータの縦断面図。
図8】ロータ主部において、巻線ユニットを分解して示す斜視図。
図9】ロータ主部の横断面図。
図10】回転電機の構成を簡略化して示す縦断面図。
図11】ロータの共振回路において軸巻線の接続位置を示す電気回路図。
図12】各巻線部におけるコイル体の接続に関する構成を示す斜視図。
図13】第1巻線部及び第2巻線部等と軸巻線との接続に関する構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る回転電機を具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。回転電機は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両において走行動力源として用いられる。
【0010】
まず、図1を用いて、回転電機を備える制御システムについて説明する。制御システムは、直流電源10、インバータ20、制御装置30及び回転電機40を備えている。回転電機40は、巻線界磁型の同期機である。例えば、回転電機40、インバータ20及び制御装置30は機電一体型駆動装置として構成されていてもよいし、回転電機40、インバータ20及び制御装置30それぞれが各コンポーネントで構成されていてもよい。
【0011】
回転電機40は、ハウジング41と、ハウジング41内に収容されるステータ50及びロータ60とを備えている。本実施形態の回転電機40は、ロータ60がステータ50の径方向内側に配置されたインナロータ型の回転電機である。ステータ50は、ステータコア51と、ステータ巻線52とを備えている。ステータ巻線52は、例えば銅線で構成されており、電気角で互いに120°ずれた状態で配置されたU,V,W相巻線52U,52V,52Wを含む。ロータ60は、ロータコア61と、界磁巻線70とを備えている。ロータコア61の中心孔には、回転軸32が組み付けられている。回転軸32は、軸受42,43によりハウジング41に回転可能に支持されている。
【0012】
図2に示すように、インバータ20は、U,V,W相の上アームスイッチSUp,SVp,SWpと、U,V,W相の下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの直列接続体を備えている。各相において上アームスイッチSUp,SVp,SWpと下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの接続点には、U,V,W相巻線52U,52V,52Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線52U,52V,52Wの第2端は、中性点で接続されている。すなわち、本実施形態において、ステータ巻線52は星形結線されている。ただし、ステータ巻線52はΔ結線されていてもよい。本実施形態において、各スイッチSUp~SWnは、IGBTである。各スイッチSUp~SWnには、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
【0013】
各相の上アームスイッチSUp,SVp,SWpのコレクタには、直流電源10の正極端子が接続されている。各相の下アームスイッチSUn,SVn,SWnのエミッタには、直流電源10の負極端子が接続されている。なお、直流電源10には、平滑コンデンサ11が並列接続されている。
【0014】
続いて、図3を用いて、ステータ50及びロータ60について説明する。
【0015】
ステータ50及びロータ60は、いずれも回転軸32と共に同軸上に配置されている。以下の記載では、回転軸32が延びる方向を軸方向とし、回転軸32の中心から放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸32を中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0016】
ステータコア51は、軟磁性体からなる積層鋼板により構成されており、円環状のバックヨーク51aと、バックヨーク51aから径方向内側に向かって突出する複数のティース51bとを有している。隣り合うティース51bの間に、周方向並ぶ複数のスロット54が形成されている。これら各スロット54に各相の相巻線が所定順序で収容されることにより、ステータ巻線52が構成されている。例えば、ステータ50において、複数の導体セグメントを用いたセグメントコイル構造が採用されているとよい。ただし、ステータ巻線52の構造は任意である。
【0017】
ロータコア61は、軟磁性体からなり、例えば積層鋼板により構成されている。ロータコア61は、円筒状の円筒部61aと、円筒部61aから径方向外側に向かって突出する複数の主極部62とを有している。主極部62には集中巻により界磁巻線70が巻回されている。本実施形態において、主極部62は、周方向に等間隔で8個設けられている。
【0018】
界磁巻線70は、第1巻線部71a及び第2巻線部71bを備えている。各主極部62には、径方向外側に第1巻線部71aが巻回され、第1巻線部71aよりも径方向内側に第2巻線部71bが巻回されている。ステータ50との関係で言えば、径方向において第1巻線部71aはステータ50に近い側に、第2巻線部71bはステータ50から遠い側に巻回されている。各主極部62において、第1巻線部71a及び第2巻線部71bの巻方向は互いに同じになっている。また、周方向に隣り合う主極部62のうち、一方に巻回された各巻線部71a,71bの巻方向と、他方に巻回された各巻線部71a,71bの巻方向とは逆になっている。このため、周方向に隣り合う主極部62どうしで互いに磁化方向が逆になる。ロータ60では、ロータコア61における各主極部62と、その各主極部62に巻装された界磁巻線70とにより、周方向に並ぶ複数の磁極(界磁極)が形成されている。
【0019】
図4に、主極部62に巻回された各巻線部71a,71bを備えるロータ60側の電気回路を示す。第1巻線部71a及び第2巻線部71bは直列接続されており、第2巻線部71bには、複数の第1コンデンサ91により構成されるコンデンサ部CCが並列接続されている。コンデンサ部CCは、複数の第1コンデンサ91の並列接続体として構成されている。また、第1巻線部71a及び第2巻線部71bの直列接続体には、第2コンデンサ92が並列接続されている。第2コンデンサ92は、ノイズ抑制用に設けられている。第1コンデンサ91及び第2コンデンサ92は、例えば積層セラミックコンデンサであり、互いに同じ構成のものとしている。
【0020】
各巻線部71a,71bからなる直列接続体の両端間には整流素子としてのダイオード93が接続されている。つまり、ダイオード93のカソードには、第1巻線部71aの第1端が接続され、第1巻線部71aの第2端には、第2巻線部71bの第1端が接続されている。第2巻線部71bの第2端には、ダイオード93のアノードが接続されている。
【0021】
本実施形態では、第1巻線部71a、第1コンデンサ91及びダイオード93により直列共振回路が構成され、第2巻線部71b及び第1コンデンサ91により並列共振回路が構成されている。この場合、第1巻線部71aは第1コンデンサ91に直列接続され、第2巻線部71bは第1コンデンサ91に並列接続されている。直列共振回路の共振周波数である第1共振周波数をf1、並列共振回路の共振周波数である第2共振周波数をf2とすると、これら各共振周波数f1,f2は、下式(1),(2)で表される。L1は第1巻線部71aのインダクタンスであり、L2は第2巻線部71bのインダクタンスであり、Cは第1コンデンサ91の静電容量である。
f1=1/(2π√(L1×C)) …(1)
f2=1/(2π√(L2×C)) …(2)
ステータ巻線52に高周波励磁電流が流れると、ステータコア51及びロータコア61を含む磁気回路に主磁束の高周波成分による変動が発生する。主磁束の変動が起きることにより、各巻線部71a,71bにそれぞれ誘起電圧が発生し、各巻線部71a,71bに電流が誘起される。この際、各巻線部71a,71bにそれぞれ極性の同じ誘起電圧が発生する場合、各巻線部71a,71bの誘起電流が相殺されないため、誘起電流が増加する。ダイオード93により、各巻線部71a,71bに流れる電流が一方向に整流される。これにより、ダイオード93により整流された方向に界磁巻線70に界磁電流が流れ、界磁巻線70が励磁される。
【0022】
図2の説明に戻り、制御装置30は、マイコン(コンピュータに相当)を主体として構成され、マイコンはCPUを備えている。制御装置30は、インバータ20を構成する各スイッチSUp~SWnをオンオフする駆動信号を生成する。詳しくは、制御装置30は、直流電源10から出力された直流電力を交流電力に変換してU,V,W相巻線52U,52V,52Wに供給すべく、各スイッチSUp~SWnをオンオフする駆動信号を生成し、生成した駆動信号を各スイッチSUp~SWnのゲートに供給する。
【0023】
制御装置30は、各相巻線52U,52V,52Wに基本波電流及び高周波励磁電流の合成電流を流すように各スイッチSUp~SWnをオンオフする。基本波電流は、回転電機40にトルクを発生させることを主とする電流である。高周波励磁電流は、基本波電流よりも周波数の高い高周波電流であり、界磁巻線70を励磁することを主とする電流である。高周波電流として高調波電流を用いることも可能である。各相巻線52U,52V,52Wに流れる相電流は、電気角で120°ずつずれている。
【0024】
次に、ロータ60の構成をより詳細に説明する。図5は、ロータ60の全体の構成を示す斜視図であり、図6は、ロータ60の分解斜視図であり、図7は、ロータ60の縦断面図である。
【0025】
ロータ60は大別して、ロータ主部101と、ロータ主部101の軸方向両側のうち一端側に設けられた回路モジュール102と、ロータ主部101の軸方向一端側及び他端側に取り付けられた円環部材としてのコイルエンドカバー103,104とを有している。ロータ主部101は、図3で説明したとおりロータコア61と界磁巻線70とを備えており、ロータコア61の中心孔には回転軸32が組み付けられている。界磁巻線70は、周方向に並べて配置された複数の巻線ユニット110よりなる。
【0026】
回路モジュール102は、中空部に回転軸32が挿通された状態で、回転軸32に固定されている。回路モジュール102は、界磁巻線70のコイルエンド部に軸方向に対向する位置に設けられている。回路モジュール102は、図4で説明した各コンデンサ91,92、ダイオード93や、これら各素子を電気的に接続するバスバー等を備える電気回路部である。
【0027】
図8は、ロータ主部101において、巻線ユニット110を分解して示す斜視図であり、図9は、ロータ主部101の一部について断面構造を示す横断面図である。ロータ主部101は、ロータ60の磁極ごとに設けられた複数の巻線ユニット110を有している。各巻線ユニット110は、軸方向を長手方向とする環状に形成され、その中空部分にロータコア61の主極部62が挿通された状態でロータコア61に組み付けられている。
【0028】
巻線ユニット110は、主極部62への装着状態で径方向外側となる第1コイルモジュール111と、径方向内側となる第2コイルモジュール112とを有している。第1コイルモジュール111は、第1巻線部71aに相当するコイルモジュールであり、第2コイルモジュール112は、第2巻線部71bに相当するコイルモジュールである。
【0029】
第1コイルモジュール111は、平角線からなる導線材がロータ60の周方向及び径方向に多重に巻回されてなる環状のコイル体121と、そのコイル体121に一体に設けられた薄板状の絶縁体122とを有している。絶縁体122は、周方向に延びかつコイル体121の径方向外側及び径方向内側を覆う部分と、径方向に延びかつコイル体121の中空部を覆う部分とを有している。つまり、コイル体121は、径方向内外になる部位と、主極部62に対向する内周側の部位とが絶縁体122により絶縁被覆されている。
【0030】
第2コイルモジュール112は、平角線からなる導線材がロータ60の周方向及び径方向に多重に巻回されてなる環状のコイル体123と、そのコイル体123に一体に設けられた薄板状の絶縁体124とを有している。絶縁体124は、周方向に延びかつコイル体123の径方向外側及び径方向内側を覆う部分と、径方向に延びかつコイル体123の中空部を覆う部分とを有している。つまり、コイル体123は、径方向内外になる部位と、主極部62に対向する内周側の部位とが絶縁体124により絶縁被覆されている。
【0031】
コイル体121,123は、例えばα巻きコイルとして構成され、周回の重なり方向(ロータ周方向)に多重となり、かつ中空部の延びる方向(ロータ径方向)に2層となるように導線材が巻回された空芯コイルである。本実施形態では、コイル体121,123の導線材として、導体断面が長辺及び短辺を有する矩形状の平角導線を用いることとしている。コイル体121,123は、導線材の周回により長辺部が多重に重なる向きで巻回されている。平角線は、アルミニウム等からなる導体と、導体を覆う絶縁層とからなる。
【0032】
第1コイルモジュール111では、1つのコイル体121から軸方向に2本の導線端部125が引き出されている。第2コイルモジュール112では、径方向に並ぶ3つのコイル体123から軸方向に計6本の導線端部126が引き出されている。
【0033】
図9に示すように、第1コイルモジュール111では、導線材が径方向に2層に巻装され、第2コイルモジュール112では、導線材が径方向に6層に巻装されている。コイル体121,123で言えば、第1コイルモジュール111では、コイル体121が径方向に1つ設けられ、第2コイルモジュール112では、コイル体123が径方向に3つ並べて設けられている。この場合、各主極部62における第2巻線部71bの巻き数が、第1巻線部71aの巻き数よりも多くなっている。なお、各コイルモジュール111,112では、周方向の巻き線数(換言すれば周方向の導線材の並び数)が相違しており、径方向外側では径方向内側に比べて巻き線数が多くなっている。これにより、界磁巻線70における占積率の向上が図られている。
【0034】
また、ロータ主部101においてロータコア61の主極部62どうしの間には、各主極部62に第1コイルモジュール111及び第2コイルモジュール112を組み付けた状態で、これら各コイルモジュール111,112の組み付け状態を保持する保持板127,128が設けられている。保持板127は、第1コイルモジュール111の径方向外側に取り付けられ、保持板128は、第1コイルモジュール111と第2コイルモジュール112との間に取り付けられている。
【0035】
なお、図6に示すように、ロータ60は、巻線ユニット110の軸方向端部に組み付けられるコイルエンドリング81を有している。コイルエンドリング81は、図7に示すように、径方向において第1コイルモジュール111のコイルエンド部と第2コイルモジュール112のコイルエンド部との間であって、かつ軸方向において保持板128とコイルエンドカバー103との間に挟まれた状態で設けられている。
【0036】
本実施形態では、巻線界磁型の回転電機40において、界磁巻線70の通電に伴い回転軸32に磁束を生じさせ、その磁束を検出する構成が設けられており、以下にその構成を説明する。図10は、回転電機40の構成を簡略化して示す縦断面図である。
【0037】
図10において、ハウジング41は、円筒部45と、その円筒部45の軸方向両側に設けられた端板部46,47とを有している。円筒部45の内周側にはステータ50が固定されている。軸方向一端側の端板部47には筒状のボス部48が設けられている。端板部46には軸受42が組み付けられ、端板部47のボス部48には軸受43が組み付けられている。軸受42,43により回転軸32が回転可能に支持されている。回転軸32は、鉄等の強磁性体材料よりなり、ロータ60と一体回転可能に設けられている。
【0038】
軸受42,43は非磁性構造を有するものであるとよい。例えば、軸受42,43が転がり軸受である場合において、軌道輪である外輪及び内輪が非磁性ステンレス鋼により構成されるとともに、転動体である玉がセラミックスにより構成されているとよい。又は、軌道輪及び転動体がセラミックスにより構成されていてもよい。その他、樹脂製の軸受を用いることも可能である。
【0039】
回転軸32には、界磁巻線70から延びる軸巻線151が巻回されている。軸巻線151は、界磁巻線70に直列に接続されており、界磁巻線70に流れる界磁電流により通電される。本実施形態では、軸巻線151として、第1巻線部71aを含む直列共振回路に設けられる第1軸巻線151Aと、第2巻線部71bを含む並列共振回路に設けられる第2軸巻線151Bとを有している。ただし、その詳細は後述する。
【0040】
端板部47のボス部48には、回転軸32の軸線が直線状に延びる方向に並べて、磁束検出部としての磁気センサ152と、集磁部材としての集磁板153とが設けられている。磁気センサ152は、回転軸32から離れ、かつ回転軸32の軸方向端面に対向する位置に設けられている。磁気センサ152は、例えばホールセンサである。集磁板153は、磁気センサ152を挟んで回転軸32の反対側に設けられている。回転軸32、磁気センサ152及び集磁板153は、回転軸32の軸線方向に互いに空隙を隔てた位置にそれぞれ設けられている。磁気センサ152及び集磁板153は、ボス部48の内周側に固定されているとよい。
【0041】
回転電機40において、ステータ巻線52の通電に伴い界磁巻線70に界磁電流(誘導電流)が流れる際には、軸巻線151にも界磁電流が流れ、回転軸32に磁束が発生する。そして、回転軸32に生じた磁束が磁気センサ152により検出される。この場合、磁気センサ152を挟んで回転軸32の反対側に集磁板153が設けられていることにより、回転軸32の軸方向端面から流出する磁束が磁気センサ152の付近に集められ、界磁電流により生じる磁束が適正に検出される。
【0042】
磁気センサ152の検出結果は制御装置30に入力される。制御装置30では、磁気センサ152の磁束検出値に所定の比例係数を乗算することにより界磁電流を推定する。この場合、回転電機40において界磁電流と回転軸32に生じる磁束量との関係を適合等により求めておき、その関係に基づいて比例係数を設定しておくとよい。また、界磁電流と磁束量との関係をマップに定義しておき、そのマップを用い、磁気センサ152により検出された磁束量に基づいて界磁電流を推定することも可能である。
【0043】
制御装置30は、例えば、界磁電流の目標値を設定するとともに、その目標値と界磁電流の推定値(実界磁電流)とに基づいてフィードバック制御を実施する。また、制御装置30において、界磁電流の推定値に基づいて、界磁巻線70に適正に界磁電流が流れているか否の異常判定を実施することも可能である。
【0044】
図11は、ロータ60に設けられる共振回路において軸巻線151の接続位置を示す電気回路図である。なお、図11では、第1巻線部71aの一方の端部を第1端A1、他方の端部を第2端A2とし、第2巻線部71bの一方の端部を第1端B1、他方の端部を第2端B2としており、第1巻線部71aの第2端A2と第2巻線部71bの第1端B1とが電気的に接続されることで、これら各巻線部71a,71bが直列に接続されている。
【0045】
図11では、第1巻線部71aと第1コンデンサ91とダイオード93とを含む直列共振回路において第1巻線部71aの第1端A1側の位置P1又は第2端A2側の位置P2に、第1巻線部71aに直列に第1軸巻線151Aが接続されるようになっている。また、第2巻線部71bと第1コンデンサ91とを含む並列共振回路において第2巻線部71bの第1端B1側の位置P3又は第2端B2側の位置P4に、第2巻線部71bに直列に第2軸巻線151Bが接続されるようになっている。
【0046】
第1巻線部71aに直列に第1軸巻線151Aが接続され、かつ第2巻線部71bに直列に第2軸巻線151Bが接続される構成では、図7に示すように、第1軸巻線151A及び第2軸巻線151Bが、回転軸32に軸方向に並べて配置されているとよい。また、第1軸巻線151A及び第2軸巻線151Bの巻き数比は、第1巻線部71a及び第2巻線部71bの巻き数比と等しくなっているとよい。本実施形態では、第2巻線部71bの巻き数が第1巻線部71aの巻き数よりも多くなっていることから、第2軸巻線151Bの巻き数が第1軸巻線151Aの巻き数よりも多くなっている。
【0047】
この場合、第1軸巻線151A及び第2軸巻線151Bにて発生する合計磁束量が、第1巻線部71a及び第2巻線部71bにて発生するトルク寄与分の磁束量(ロータ60の界磁磁束量)と比例関係になる。そのため、各軸巻線151A,151Bの合計磁束量とロータ60の界磁磁束量との比例関係から比例係数を求めておき、制御装置30において、磁気センサ152の磁束検出値に比例係数を乗算して界磁磁束量を算出し、さらにその界磁磁束量からトルクを推定するとよい。
【0048】
ここで、軸巻線151についてロータ60における具体的な接続構造について説明する。図12は、ロータ60において、各巻線部71a,71bにおけるコイル体121,123の接続に関する構成を示す斜視図である。図12には、ロータ主部101の軸方向片側に回路モジュール102が組み付けられた状態が示されている。なお図12では、軸巻線151に関する構成を省略している。
【0049】
回路モジュール102は、上述した各コンデンサ91,92やダイオード93を保持する部品ホルダ130を備えている。部品ホルダ130は、合成樹脂等の電気的絶縁性を有する材料にて構成されている。部品ホルダ130は、円環状をなす本体部131と、本体部131から径方向外側に向けて放射状に延びる複数の導線保持部132とを備えている。図12では樹脂モールド部105により覆われて不図示となっているが、本体部131には、回転軸32を囲む円環状となる位置に、各コンデンサ91,92やダイオード93が並べて設けられている。
【0050】
部品ホルダ130には、主極部62と同数(8つ)の導線保持部132が設けられている。各導線保持部132には、軸方向に貫通する複数の挿通孔133が形成されている。これら各挿通孔133には、各巻線部71a,71bのコイル体121,123から延びる導線端部125,126やバスバーが所定の組み合わせで挿通され、同じ挿通孔133に挿通されたものどうしが溶接等により接合されている。なお、導線端部125,126は、挿通孔133に挿通された状態で導線保持部132に固定されているとよい。
【0051】
8つの導線保持部132のうち、図12に示した3つの導線保持部132A,132B,132Cについて詳しく説明する。
【0052】
導線保持部132Aでは、径方向に4列に並ぶ各コイル体121,123について同列のコイル体どうしが接続されている。具体的には、導線保持部132Aにおいて、接続部X1では、周方向に隣り合う各コイル体121の導線端部125が1つずつ挿通孔133に挿通され、その導線端部125どうしが接続されている。また、接続部X2~X4ではそれぞれ、周方向に隣り合う各コイル体123の導線端部126が1つずつ挿通孔133に挿通され、その導線端部126どうしが接続されている。接続部X5では、第1コンデンサ91との接続のためのバスバー141,142が接続されている。
【0053】
また、導線保持部132Bでは、各列のコイル体121,123において異なる列のものどうしの接続(レーンチェンジ接続)や、バスバーを介しての各コンデンサ91,92やダイオード93との接続が行われている。具体的には、導線保持部132Bにおいて、接続部Y1では、第1巻線部71aのコイル体121の導線端部125と、第2コンデンサ92用のバスバー143の一方の端部と、ダイオード93のカソード接続用のバスバー144の端部とが接続されている。この接続部Y1の接続は、図11の回路図において軸巻線151を非接続とした状態での第1巻線部71aの第1端A1側の接続に相当する。
【0054】
また、接続部Y2では、第1巻線部71aのコイル体121の導線端部125と、第2巻線部71bのコイル体123の導線端部126と、第1コンデンサ91用のバスバー142の端部とが接続されている。この接続部Y2の接続は、図11の回路図において軸巻線151を非接続とした状態での第1巻線部71aの第2端A2と第2巻線部71bの第1端B1との間の接続に相当する。接続部Y3,Y4ではそれぞれ、異なる列の各コイル体123の導線端部126どうしが接続されている。接続部Y5では、第2コンデンサ92との接続のためのバスバー143,145が接続されている。
【0055】
導線保持部132Cにおいて、接続部Z1では、第2巻線部71bのコイル体123の導線端部126と、各コンデンサ91,92共通のバスバー146の端部と、ダイオード93のアノード接続用のバスバー147の端部とが接続されている。この接続部Z1の接続は、図11の回路図において軸巻線151を非接続とした状態での第2巻線部71bの第2端B2側の接続に相当する。
【0056】
各巻線部71a,71bは、主極部62ごとの各コイル体121,123が周方向に接続されることにより構成されている。第1巻線部71aでは、複数のコイル体121からなる直列接続体の両端の導線端部125が第1端A1及び第2端A2となっている。また、第2巻線部71bでは、複数のコイル体123からなる直列接続体の両端の導線端部126が第1端B1及び第2端B2となっている。本実施形態では、第1巻線部71aの第1端A1及び第2端A2である導線端部125と、第2巻線部71bの第1端B1及び第2端B2である導線端部126とを導線保持部132の挿通孔133に挿通させ固定した状態で、それら導線端部125,126のいずれかに軸巻線151A,151Bを電気的に接続させる構成としている。
【0057】
図13は、回路モジュール102の導線保持部132において、第1巻線部71aの両端A1,A2及び第2巻線部71bの両端B1,B2等と軸巻線151A,151Bとの接続に関する構成を説明するための図である。
【0058】
図13(a)は、第1巻線部71aの第1端A1(図11のP1)に第1軸巻線151Aを接続する場合の構成を示す図である。この場合、第1巻線部71aの第1端A1と、第2コンデンサ92用のバスバー143及びダイオード93用のバスバー144との間に、第1軸巻線151Aが接続されている。図12で言えば、接続部Y1において、第1巻線部71aの導線端部125と、バスバー143,144とが導線保持部132の別々の挿通孔133に保持され、それら両者の間に第1軸巻線151Aが接続される構成になっているとよい。
【0059】
図13(b)は、第1巻線部71aの第2端A2(図11のP2)に第1軸巻線151Aを接続する場合の構成を示す図である。この場合、第1巻線部71aの第2端A2と、第2巻線部71bの第1端B1及び第1コンデンサ91用のバスバー142との間に、第1軸巻線151Aが接続されている。図12で言えば、接続部Y2において、第1巻線部71aの導線端部125と、第2巻線部71bの導線端部126及びバスバー142とが導線保持部132の別々の挿通孔133に保持され、それら両者の間に第1軸巻線151Aが接続される構成になっているとよい。
【0060】
図13(c)は、第2巻線部71bの第1端B1(図11のP3)に第2軸巻線151Bを接続する場合の構成を示す図である。この場合、第2巻線部71bの第1端B1と、第1巻線部71aの第2端A2及び第1コンデンサ91用のバスバー142との間に、第2軸巻線151Bが接続されている。図12で言えば、接続部Y2において、第2巻線部71bの導線端部126と、第1巻線部71aの導線端部125及びバスバー142とが導線保持部132の別々の挿通孔133に保持され、それら両者の間に第2軸巻線151Bが接続される構成になっているとよい。
【0061】
図13(d)は、第2巻線部71bの第2端B2(図11のP4)に第2軸巻線151Bを接続する場合の構成を示す図である。この場合、第2巻線部71bの第2端B2と、各コンデンサ91,92共通のバスバー146及びダイオード93用のバスバー147との間に、第2軸巻線151Bが接続されている。図12で言えば、接続部Z1において、第2巻線部71bの導線端部126と、バスバー146,147とが導線保持部132の別々の挿通孔133に保持され、それら両者の間に第2軸巻線151Bが接続される構成になっているとよい。
【0062】
図13(a)~(d)の構成において、軸巻線151A,151Bは、各巻線部71a,71b(コイル体121,123)とは別の導線材により形成されており、各巻線部71a,71bの導線端部125,126に対して溶接やカシメ等により接続されているとよい。
【0063】
図13(a)~(d)の構成によれば、回路モジュール102の導線保持部132に保持された状態の導線端部125,126に対して各軸巻線151A,151Bが接続される。この場合、回路モジュール102の導線保持部132において導線端部125,126の位置決めがなされており、各軸巻線151A,151Bの取り付け作業が簡易なものとなっている。
【0064】
ロータ60では、図13(a),(b)のいずれかの構成により、第1巻線部71aに直列に第1軸巻線151Aが接続されるとともに、図13(c),(d)のいずれかの構成により、第2巻線部71bに直列に第2軸巻線151Bが接続されるとよい。なお、図13(b)及び図13(c)の組み合わせとする場合には、導線保持部132において、第1巻線部71aの導線端部125(第2端A2)と、第2巻線部71bの導線端部126(第1端B1)と、バスバー142とが各々個別に保持されているとよい。
【0065】
第1軸巻線151A及び第2軸巻線151Bは、上記のとおり各巻線部71a,71bの端部やバスバー端部に接続された状態で、回転軸32に軸方向に並べて配置されている(図7参照)。
【0066】
図10に示すように、回転軸32には、軸巻線151が巻回された状態で軸巻線151を樹脂封止する樹脂封止部155が設けられているとよい。回転軸32に軸巻線151が巻回された構成では、回転軸32の回転に伴い軸巻線151が回転する。この場合、回転軸32の回転の加減速に起因して軸巻線151の撓みや位置ずれが生じることが懸念される。この点、軸巻線151が樹脂封止部155により封止されていることにより、軸巻線151の撓みや位置ずれが抑制される。
【0067】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0068】
ロータ60において、強磁性体材料よりなる回転軸32に、界磁巻線70に直列接続された軸巻線151を巻回し、回転軸32の軸方向端部に設けた磁気センサ152により、軸巻線151の通電により生じる磁束を検出するようにした。この場合、界磁電流により生じる磁束量を直接的に検出することができる。その結果、界磁電流に応じて生じる磁束量を適正に検出し、ひいては界磁電流の推定が可能となる。
【0069】
回転軸32の軸線が直線状に延びる方向において、磁気センサ152を挟んで回転軸32の反対側に、回転軸32の軸方向端面から流出する磁束を集める集磁板153を設ける構成とした。これにより、回転軸32の軸方向端部付近に、磁束の偏りを生じさせる強磁性体が存在しても、回転軸32の軸方向端面から流出する磁束を磁気センサ152で適正に検出することができ、ひいては界磁電流の推定精度の向上を図ることができる。
【0070】
なお、仮に回転電機40の周囲に強磁性体で構成された部品が存在していると、回転軸32から流出した磁束がその強磁性体に引き寄せられて、磁気センサ152を通過する磁束量が意図せず変動することが懸念される。磁束量が変動すると、電流推定誤差が生じることが懸念される。この点、集磁板153が設けられていることにより、周囲環境の影響を受けにくくなり、電流推定の精度が向上する。
【0071】
回転電機40において、回転軸32を回転可能に支持する軸受42,43を非磁性構造のものとした。これにより、磁性構造の軸受を用いる場合に比べて、回転軸32の軸方向端面から流出し磁気センサ152により検出される磁束量を大きくすることができ、磁束検出の精度を高めることができる。
【0072】
第1巻線部71aと第1コンデンサ91とダイオード93とを含む直列共振回路において第1巻線部71aの第1端側又は第2端側に、第1巻線部71aに直列に第1軸巻線151Aを接続するとともに、第2巻線部71bと第1コンデンサ91とを含む並列共振回路において第2巻線部71bの第1端側又は第2端側に、第2巻線部71bに直列に第2軸巻線151Bを接続する構成とした。これにより、ステータ巻線52の高周波通電に伴い各巻線部71a,71bに各々界磁電流が流れる場合において、各巻線部71a,71bの界磁電流に応じて生じる磁束を適正に検出することができる。この場合、回転電機40のトルク生成に寄与する界磁電流の大きさを把握可能になり、回転電機40のトルクフィードバック制御等を適正に行わせることができる。
【0073】
第1軸巻線151A及び第2軸巻線151Bの巻き数比が、第1巻線部71a及び第2巻線部71bの巻き数比と等しくなる構成とした。これにより、各軸巻線151A,151Bの発生する合計磁束量が、各巻線部71a,71bが発生するロータ60の界磁磁束量(トルクに寄与する磁束量)と比例関係になり、界磁磁束量やトルクの推定を好適に行わせることができる。
【0074】
回路モジュール102において部品ホルダ130の導線保持部132に各巻線部71a,71bの導線端部125,126を保持するとともに、その導線端部125に第1軸巻線151Aを接続し、かつ導線端部126に第2軸巻線151Bを接続する構成とした。この場合、各軸巻線151A,151Bの接続は、回路モジュール102の導線保持部132に保持された状態の導線端部125,126に対して行われればよい構成となっており、軸巻線151の固定を簡易かつ好適に行わせることができる。
【0075】
回転軸32に巻回された軸巻線151(151A,151B)を樹脂封止する樹脂封止部155を設ける構成とした。これにより、回転軸32の回転の加減速が生じても、軸巻線151の撓みや位置ずれが生じることを抑制できる。
【0076】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、軸巻線151として、第1巻線部71aに直列に接続された第1軸巻線151Aと、第2巻線部71bに直列に接続された第2軸巻線151Bとを設ける構成としたが、これを変更してもよい。例えば、これら第1軸巻線151Aと第2軸巻線151Bとのうち一方のみを設ける構成としてもよい。
【0078】
図11で説明すれば、第1巻線部71aを含む直列共振回路において第1巻線部71aの両端A1,A2のいずれかに軸巻線151を接続し、かつ第2巻線部71bを含む並列共振回路には軸巻線151を接続しない構成とする。この構成では、磁気センサ152により、第1巻線部71aを流れる電流分の磁束が検出される。この場合、磁気センサ152の検出値に基づいて、例えばダイオード93の異常を検出することが可能となる。
【0079】
また、第2巻線部71bを含む並列共振回路において第2巻線部71bの両端B1,B2のいずれかに軸巻線151を接続し、かつ第1巻線部71aを含む直列共振回路には軸巻線151を接続しない構成とする。この構成では、磁気センサ152により、第2巻線部71bを流れる電流分の磁束が検出される。この場合、磁気センサ152の検出値に基づいて、例えば第1コンデンサ91の異常を検出することが可能となる。
【0080】
・上記実施形態では、界磁巻線70の各巻線部71a,71bを、複数のコイル体121,123の直列接続体として構成したが、これを変更してもよい。例えば、各巻線部71a,71bを、各主極部62に対して1本の導線材を連続的に巻回することにより構成してもよい。
【0081】
・軸巻線151A、151Bは、各巻線部71a,71bとして巻回された導線材の一部により構成されていてもよい。なお、各主極部62に対して導線材を連続的に巻回して各巻線部71a,71bを形成する構成では、回路モジュール102の導線保持部132が不要となり、各巻線部71a,71bから連続的に軸巻線151A,151Bが巻回されるとよい。この場合、各巻線部71a,71bと各軸巻線151A、151Bとが直列に接続される構成において、各巻線部71a,71bの導線端部125,126と軸巻線151A,151Bとの溶接やカシメ等の接続作業を省略できる。
【0082】
・ロータ60において、第2巻線部71bが第1巻線部71aよりも径方向外側(ステータ50側)に配置されていてもよい。
【0083】
・ロータ60の界磁巻線70は、第1巻線部71a及び第2巻線部71bに分けられたものでなくてもよい。また、共振回路は、並列共振回路を有さず、界磁巻線70とコンデンサとダイオードとによる直列共振回路として設けられていてもよい。
【0084】
・ステータ50において、ステータコアは、ティースが設けられていないステータコアであってもよい。
【0085】
・回転電機としては、車載主機として用いられる回転電機に限らず、例えば、電動機兼発電機であるISG(Integrated Starter Generator)として用いられる回転電機であってもよい。
【0086】
・回転電機システムが搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、回転電機システムは、移動体に搭載されるシステムに限らず、定置式のシステムであってもよい。
【0087】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
ステータ巻線(52)を有するステータ(50)と、
周方向に並ぶ磁極ごとに設けられ径方向に突出する主極部(62)を有するロータコア(61)と、前記主極部に巻回された界磁巻線(70)とを有するロータ(60)と、
前記ロータコアに一体化された回転軸(32)と、を備え、
前記界磁巻線に界磁電流を誘起させるための高周波電流が前記ステータ巻線に流れる巻線界磁型回転電機(40)であって、
前記回転軸は、強磁性体材料よりなり、
前記回転軸に巻回され、前記界磁巻線に流れる界磁電流により通電される軸巻線(151)と、
前記回転軸の軸方向端部に設けられ、前記軸巻線の通電により生じる磁束を検出する磁束検出部(152)と、
を備える、巻線界磁型回転電機。
[構成2]
前記回転軸の軸線が直線状に延びる方向において前記磁束検出部を挟んで前記回転軸の反対側に、前記回転軸の軸方向端面から流出する磁束を集める集磁部材(153)が設けられている、構成1に記載の巻線界磁型回転電機。
[構成3]
前記界磁巻線は、第1巻線部(71a)及び第2巻線部(71b)を有し、前記第1巻線部の第1端及び第2端と前記第2巻線部の第1端及び第2端とのうち、前記第1巻線部の第2端と前記第2巻線部の第1端との電気的な接続により前記各巻線部が直列に接続されており、
前記第1巻線部及び前記第2巻線部の直列接続体の両端にダイオード(93)が接続されるとともに、前記第2巻線部に並列にコンデンサ(91)が接続されており、
前記第1巻線部と前記コンデンサと前記ダイオードとを含む直列共振回路において前記第1巻線部の第1端側又は第2端側に、当該第1巻線部に直列に前記軸巻線として第1軸巻線(151A)が接続され、
前記第2巻線部と前記コンデンサとを含む並列共振回路において前記第2巻線部の第1端側又は第2端側に、当該第2巻線部に直列に前記軸巻線として第2軸巻線(151B)が接続されている、構成1又は2に記載の巻線界磁型回転電機。
[構成4]
前記第1軸巻線及び前記第2軸巻線の巻き数比は、前記第1巻線部及び前記第2巻線部の巻き数比と等しい、構成3に記載の巻線界磁型回転電機。
[構成5]
前記ロータは、前記第1巻線部、前記第2巻線部、前記ダイオード及び前記コンデンサを電気的に接続して前記直列共振回路及び前記並列共振回路を構成する回路モジュール(102)を有し、
前記回路モジュールは、前記第1巻線部の第1端側及び第2端側の導線端部(125)、並びに前記第2巻線部の第1端側及び第2端側の導線端部(126)を保持する導線保持部(132)を有し、
前記導線保持部に保持された前記第1巻線部の第1端側又は第2端側の導線端部に、前記第1軸巻線が接続され、
前記導線保持部に保持された前記第2巻線部の第1端側又は第2端側の導線端部に、前記第2軸巻線が接続されている、構成3又は4に記載の巻線界磁型回転電機。
[構成6]
前記界磁巻線は、第1巻線部(71a)及び第2巻線部(71b)を有し、前記第1巻線部の第1端及び第2端と前記第2巻線部の第1端及び第2端とのうち、前記第1巻線部の第2端と前記第2巻線部の第1端との電気的な接続により前記各巻線部が直列に接続されており、
前記第1巻線部の第1端と前記第2巻線部の第2端との間にダイオード(93)が接続されるとともに、前記第2巻線部に並列にコンデンサ(91)が接続されており、
前記第1巻線部と前記コンデンサと前記ダイオードとを含む直列共振回路において前記第1巻線部の第1端側又は第2端側に、当該第1巻線部に直列に前記軸巻線が接続されている、構成1又は2に記載の巻線界磁型回転電機。
[構成7]
前記界磁巻線は、第1巻線部(71a)及び第2巻線部(71b)を有し、前記第1巻線部の第1端及び第2端と前記第2巻線部の第1端及び第2端とのうち、前記第1巻線部の第2端と前記第2巻線部の第1端との電気的な接続により前記各巻線部が直列に接続されており、
前記第1巻線部の第1端と前記第2巻線部の第2端との間にダイオード(93)が接続されるとともに、前記第2巻線部に並列にコンデンサ(91)が接続されており、
前記第2巻線部と前記コンデンサとを含む並列共振回路において前記第2巻線部の第1端側又は第2端側に、当該第2巻線部に直列に前記軸巻線が接続されている、構成1又は2に記載の巻線界磁型回転電機。
[構成8]
前記回転軸には、前記軸巻線が巻回された状態で当該軸巻線を樹脂封止する樹脂封止部(155)が設けられている、構成1~7のいずれかに記載の巻線界磁型回転電機。
【符号の説明】
【0088】
32…回転軸、40…回転電機、50…ステータ、52…ステータ巻線、60…ロータ、61…ロータコア、62…主極部、70…界磁巻線、151…軸巻線、152…磁気センサ。
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