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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025042
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/12 20060101AFI20250214BHJP
   D06F 37/26 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
D06F39/12 A
D06F37/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129481
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 望
【テーマコード(参考)】
3B165
【Fターム(参考)】
3B165AA05
3B165AE01
3B165AE02
3B165BA08
3B165BA28
3B165CA01
3B165CA04
3B165CA11
3B165CA17
3B165CB01
3B165CB31
3B165CC02
3B165CD01
3B165CD15
(57)【要約】
【課題】回転槽からの衣類飛び出しを防止でき、かつ衣類に対する摩擦を低減できるドラム式洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機1は、前面に開口部111を有する筐体10と、筐体10内に支持された水槽3と、水槽3の前側に固定されて前面が開口部111に向けて開口された水槽開口部31と、水槽3内に回転可能に設けられる回転槽4とを備える。回転槽4は、開口部111に向けて開口する回転槽開口部41を有し、回転槽開口部41が水槽開口部31との間に全周にわたって隙間Gを設けて配置される。水槽開口部31には、隙間Gよりも内周側で背面側に向かって立設される突起部54が設けられる。突起部54の形成箇所は、水槽開口部31の上半分の領域内とされる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部を有する筐体と、
前記筐体内に支持された水槽と、
前記水槽の前側に固定されて前面が前記開口部に向けて開口された水槽開口部と、
前記水槽内に回転可能に設けられる回転槽とを備えるドラム式洗濯機であって、
前記回転槽は、前記開口部に向けて開口する回転槽開口部を有し、前記回転槽開口部が前記水槽開口部との間に全周にわたって隙間を設けて配置され、
前記水槽開口部には、前記隙間よりも内周側で背面側に向かって立設される突起部が設けられており、
前記突起部の形成箇所は、前記水槽開口部の上半分の領域内であることを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載のドラム式洗濯機であって、
前記筐体の前記開口部を開閉するドアの裏面側に略円錐台形状の窓部材が設けられており、
前記窓部材の上部には、前方から後方に向かって下がるように傾斜する略平面の上部斜面が設けられており、
前記突起部は、前記上部斜面よりも上方に設けられていることを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項3】
請求項1に記載のドラム式洗濯機であって、
前記水槽開口部の背面側には、前記回転槽内部の照明となるLED、および、洗濯工程中に循環水を前記回転槽内に排出する循環ノズルが、前記水槽開口部の上半分の領域内に取り付けられており、
前記突起部は、前記水槽開口部の上半分の領域内で、前記LEDおよび前記循環ノズルよりも脱水回転方向の上流側に設けられることを特徴とするドラム式洗濯機。こ
【請求項4】
請求項1に記載のドラム式洗濯機であって、
前記突起部の背面側先端は、前記隙間の全周よりも奥側に位置することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項5】
請求項1に記載のドラム式洗濯機であって、
前記水槽開口部は、前記突起部に対して脱水回転方向の上流側に近接して設けられ、前記水槽開口部に沿って移動する衣類を前記突起部の側面に誘導する突起誘導面を有することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項6】
請求項1に記載のドラム式洗濯機であって、
前記水槽開口部は、前記突起部の外周側に設けられ、前記突起部の外周側に侵入した衣類を内周側に押し戻す誘導部を有することを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項7】
請求項1に記載のドラム式洗濯機であって、
前記水槽開口部の前面側に取り付けられる環状カバー部を有することを特徴とするドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラム(回転槽)の回転軸が水平軸または傾斜軸であるドラム式洗濯機では、ドラム前方の開口部(衣類取り出し口)を大きくすると、衣類がドラムから飛び出しやすくなる。衣類がドラムから飛び出したままで脱水工程を行うと、ドラム外の非回転部と衣類との擦れが発生し、衣類にダメージが与えられる虞がある。
【0003】
特許文献1には、衣類の飛び出し防止のため、ドラム開口部の下方に、飛び出した衣類を槽内に押し戻す突起を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-137641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、突起が下方に設けられることで、脱水工程以外(洗い、濯ぎ、乾燥工程等)でも突起と衣類との接触が発生し、衣類に対して不要な摩擦が発生する。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、回転槽からの衣類飛び出しを防止でき、かつ衣類に対する摩擦を低減できるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示のドラム式洗濯機は、前面に開口部を有する筐体と、前記筐体内に支持された水槽と、前記水槽の前側に固定されて前面が前記開口部に向けて開口された水槽開口部と、前記水槽内に回転可能に設けられる回転槽とを備えるドラム式洗濯機であって、前記回転槽は、前記開口部に向けて開口する回転槽開口部を有し、前記回転槽開口部が前記水槽開口部との間に全周にわたって隙間を設けて配置され、前記水槽開口部には、前記隙間よりも内周側で背面側に向かって立設される突起部が設けられており、前記突起部の形成箇所は、前記水槽開口部の上半分の領域内であることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る洗濯機の外観を、ドアを閉止した状態で示す斜視図である。
図2】洗濯機の外観を、ドアを開放した状態で示す斜視図である。
図3】洗濯機の内部に設けられる水槽を示す正面図である。
図4】水槽および環状カバー部を示す分解斜視図である。
図5】水槽の前面側の要部を拡大して示す部分断面図である。
図6】環状カバー部を背面側から見た斜視図である。
図7】環状カバー部における突起部付近を前面側から見た拡大斜視図である。
図8】環状カバー部における突起部付近の拡大背面図である。
図9】環状カバー部の変形例1を前面側から見た拡大斜視図である。
図10】環状カバー部の変形例1を背面側から見た拡大斜視図である。
図11】環状カバー部の変形例2を前面側から見た拡大斜視図である。
図12】環状カバー部の変形例2を背面側から見た拡大斜視図である。
図13】環状カバー部の変形例3を前面側から見た拡大斜視図である。
図14】環状カバー部の変形例4を前面側から見た拡大斜視図である。
図15】環状カバー部の変形例5-1を前面側から見た拡大斜視図である。
図16】環状カバー部の変形例5-2を前面側から見た拡大斜視図である。
図17】環状カバー部の変形例5-3を前面側から見た拡大斜視図である。
図18】環状カバー部の変形例6-1を前面側から見た拡大斜視図である。
図19】環状カバー部の変形例6-2を前面側から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の実施形態に係るドラム式洗濯機について、図面を参照しつつ説明する。図1および図2は本実施形態に係る洗濯機1の外観を示す斜視図であり、図1はドア2を閉止した状態、図2はドア2を開放した状態を示している。尚、説明の便宜上、洗濯機1においてドア2が設けられた側を前面側F、その反対側を背面側R(もしくは奥側)として以下説明するが、これにより洗濯機1の設置形態や使用形態を限定するものではない。
【0010】
尚、本発明において、「洗濯機」とは、被洗濯物に対して洗濯等の各種処理を行う機器全般を意味する。洗濯機は、被洗濯物の処理としては、例えば、洗いや乾燥、脱臭、除菌等が挙げられる。被洗濯物は、特に限定されない。被洗濯物としては、例えば、布製品が挙げられる。被洗濯物の具体例としては、例えば、衣服、帽子、手袋等の衣類、靴、カバン、ハンカチ、タオル等の持ち物、カーテン、毛布、タオルケット、布団カバー等の寝具、カーペト、ぬいぐるみ等が挙げられる。
【0011】
洗濯機1は筐体10の前面側Fにドア2が備えられており、ドア2を開けると筐体10の開口部111が露出される。
【0012】
図1に示すように、ドア2は、正面視が略矩形状のドア本体部21と、ドア本体部21の上部から後方に傾斜するように設けられた傾斜上部22とを一体に備える。傾斜上部22には、運転動作を選択して指示入力するとともに運転状態を表示する表示操作部等が設けられる。
【0013】
図2に示すように、筐体10の前面には、洗濯物が出し入れされる開口部111が設けられている。ドア2は、筐体10に対してヒンジ結合にて回動可能に設けられ、開口部111を開放および閉止可能とする。開口部111の周縁部には、ゴムや軟質樹脂等の弾性体からなるパッキン112が設けられて、ドア2を閉じると、ドア2の裏面側に設けられた略円錐台形状の窓部材23がパッキン112に密着し、水槽3内が液密かつ気密に保持される。筐体10の内部には、開口部111に向けて開口された後述する水槽3および回転槽4が設けられている。
【0014】
図3は、筐体10の内部に設けられる水槽3を、筐体10およびその周辺部材を省略して示す正面図であり、図4は、水槽3および環状カバー部5を示す分解斜視図である。
【0015】
筐体10内には、水槽3、および有底筒形状の回転ドラムである回転槽4が備えられている。図3に示すように、水槽3は前面側Fに水槽開口部31を有している。水槽開口部31は、筐体10の開口部111に向けて開口されている。水槽3は、複数の図示しないダンパ等によって筐体10内に弾性的に支持される。
【0016】
図4に示すように、水槽開口部31の前面側Fには環状カバー部5が取り付けられている。環状カバー部5は、環状に形成され、前面側Fから背面側Rに向かって内径が漸次縮径する略漏斗形状の曲面壁51を有している。この曲面壁51は、環状カバー部5における内周側に設けられている。曲面壁51の内周側の端部は環状カバー部5の内周縁52とされ、この内周縁52は環状カバー部5の外周縁53よりも小径で構成されている。尚、環状カバー部5は、前述のパッキン112を背面側から覆うように配置され、回転槽4の回転時にパッキン112に衣類が接触することを防止する。尚、本実施形態では、水槽開口部31に環状カバー部5が取り付けられる構成としているが、環状カバー部5が無い構成としてもよい。この場合は、環状カバー5に設けられる構成が水槽開口部31に直接形成されてもよく、水槽開口部31にそれぞれ取り付けられる構成としてもよい。
【0017】
本実施形態の洗濯機1では、回転槽4の回転軸X(図5参照)は、前面側Fが背面側Rよりも高くなるように(前方に向かって斜め上向きとなるように)水平方向に対して例えば傾斜角度θで設けられている。尚、回転槽4は、回転軸Xが水平方向に対して略平行になるように配置されていてもよい。
【0018】
図5は、水槽3の前面側Fの要部を拡大して示す部分断面図であり、図3におけるI-I断面に相当する。図5に示すように、水槽3内の回転槽4は、衣類などの洗濯物を出し入れするために開放された回転槽開口部41を前面側Fに有している。
【0019】
水槽3の前面側Fには、水槽前カバー32が設けられ、この水槽前カバー32を介して環状カバー部5が取り付けられている。すなわち、水槽前カバー32と環状カバー部5とが水槽開口部31を構成している(図4参照)。環状カバー部5は、曲面壁51が内側に張り出すように設けられ、外周側が水槽前カバー32で覆われている。回転槽4は、水槽3よりも若干小径で構成され、水槽3の背面側Rに備えられた図示しないドラムモータによって水槽3内で回転駆動される。
【0020】
図5に示すように、回転槽4の回転槽開口部41は、水槽開口部31との間に、全周にわたって隙間Gを設けて配置されている。より具体的には、回転槽開口部41には、背面側Rから前面側Fに向かって内径が漸次縮径する略漏斗形状の曲面を備える絞り部42が設けられえており、隙間Gは、水槽開口部31に設けられた環状カバー部5の内周縁52と、回転槽開口部41に設けられた絞り部42の内周縁421との間に形成されている。隙間Gは、水槽3および回転槽4の全周にわたって環状をなすように形成されている。
【0021】
洗濯機1において、筐体10に支持されて回転しない水槽3は、回転する回転槽4を内部に支持している。また、水槽3(水槽前カバー32)に取り付けられる環状カバー部5も回転しない部材である。このため、洗濯機1の運転中(回転槽4の回転中)、回転槽4の外部(回転槽開口部41よりも前方)に衣類が飛び出すと、この衣類が環状カバー部5に接触したまま回転を受けることになり、衣類において環状カバー部5との擦れが発生する。また、場合によっては衣類が隙間Gに入り込み、隙間G内での擦れが生じる可能性もある。回転槽4が高速回転する脱水工程では、環状カバー部5との擦れが発生すると、衣類にダメージを与える虞がある。
【0022】
本実施形態の洗濯機1では、脱水工程時に、衣類が回転槽4の外部に飛び出して環状カバー部5に接触した場合、この接触を速やかに解消することができる。以下、この構成について詳細に説明する。
【0023】
図6は、環状カバー部5を背面側Rから見た斜視図である。図5および図6に示すように、環状カバー部5には、背面側Rに向かって(すなわち回転槽開口部41に向かって)立設される突起部54が設けられている。具体的には、環状カバー部5は、内周縁52よりもさらに内周側に張り出したフランジ部55(図3参照)を有しており、突起部54はフランジ部55の背面において立設して設けられている。尚、環状カバー部5は、環状の本体部材50Aと、本体部材50Aの裏面側にネジ締結等によって取り付けられる付属部材50Bとの2パーツで構成され、付属部材50Bにおいて突起部54が設けられていてもよい。
【0024】
洗濯機1の脱水工程において、回転槽4の外部に飛び出して、環状カバー部5に接触したままで回転を受ける衣類は、突起部54によって環状カバー部5から引きはがされ、回転槽4内へ押し戻される。これにより、脱水工程時に回転槽4からの衣類飛び出しを防止でき、衣類と環状カバー部5との擦れを抑制して、衣類におけるダメージを抑制できる。
【0025】
本実施形態では、突起部54の形成箇所は、水槽開口部31の上半分の領域内とされてれる。言い換えれば、突起部54は、図3に示すように、水槽開口部31の中心Oを通る水平線L1よりも上方に設けられる。洗濯機1において、脱水工程以外(洗い、濯ぎ、乾燥工程等)では回転槽4の回転数が低いため、衣類は回転途中で重力によって落下し、回転槽4との一体的な回転とはならない。このため、突起部54を水槽開口部31の上半分において設けることで、脱水工程以外では、衣類と突起部54との摩擦を回避もしくは抑制できる。
【0026】
また、回転槽4が前方に向かって斜め上向きとなるように傾斜している場合、回転槽4の上部で突起部54によって引きはがされた衣類が重力の作用によってほぼ真下に落下するとすれば、この落下によって衣類は回転槽4の奥に誘導されることになる。すなわち、突起部54によって引きはがされた衣類が、再び環状カバー部5に接触することを抑制できる。これにより、突起部54によって衣類が引きはがされた後は、良好な脱水工程を継続することができる。
【0027】
尚、突起部54は、ドア2の窓部材23における上部斜面231よりも上方に設けられていることがより好ましい。ここで図2に示すように、窓部材23の上部には、ドア2が閉められた状態で前方から後方に向かって下がるように傾斜する略平面の上部斜面231が設けられている。突起部54が上部斜面231よりも上方に設けられているとは、突起部54が上部斜面231の上辺に一致する水平線L2よりも上方に設けられることを意味する。
【0028】
突起部54が窓部材23の上部斜面231よりも上方に設けられることで、突起部54と窓部材23との間の距離を大きく取ることができる。これにより、突起部54によって引きはがされた衣類が突起部54と窓部材23との間に挟まりにくくなり、衣類が回転槽4内に戻りやすくなる。
【0029】
さらに、突起部54は、回転槽4の脱水回転に伴って衣類が持ち上げられる位置(上昇側)に配置されることが好ましい。これにより、突起部54は、持ち上げられる途中の衣類に対して環状カバー部5から引きはがす作用を生じさせる。この場合、突起部54によって引きはがされる衣類には、その引きはがし方向に重力も作用するため、衣類の良好な引きはがしが実現できる。尚、洗濯機1において、脱水工程時における回転槽4の回転方向(脱水回転方向)は1方向に固定される。図3,6,8では、脱水回転方向を矢印Aにて示している。
【0030】
また、環状カバー部5の背面側には、回転槽4内部の照明となるLED(図示省略)や、洗濯工程中に循環水を回転槽4内に排出する循環ノズル(図示省略)などが取り付けられる。これらのLEDや循環ノズルは、突起部54と同様に、水槽開口部31の上半分において設けられることが一般的である。突起部54、LEDおよび循環ノズルが水槽開口部31の上半分の領域に設けられる場合、突起部54は、この領域内においてLEDおよび循環ノズルよりも、脱水回転方向における上流側に設けられることが好ましい。尚、図6では、領域BがLEDユニットの配置箇所として例示される。
【0031】
LEDや循環ノズルは脱水工程時に衣類が引っ掛かりやすい形状になりうるが、突起部54がLEDや循環ノズル等より脱水回転方向上流側に設けられることで、LEDや循環ノズルに衣類が引っ掛かるリスクを低減できる。
【0032】
また、図5に示されるように、前後方向(製品奥行方向)における突起部54の先端(背面側先端)は、上述した隙間Gの全周よりもさらに奥側に位置することが好ましい。すなわち、突起部54の先端は、隙間Gの全周の最奥部(回転槽4が斜め上向きに傾斜している場合は隙間Gの上端部)を通る鉛直線L3よりもさらに奥側に位置する。このように、突起部54の先端が隙間Gの全周よりも奥側に位置することで、脱水工程時に回転槽4がある程度高速回転になってから衣類が引きはがされた場合でも、その衣類が回転槽4の槽外に飛び出すリスクを低減できる。
【0033】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、突起部54における衣類の引きはがし作用を向上させる構成について説明する。図7は、環状カバー部5における突起部54付近を前面側から見た拡大斜視図である。図8は、環状カバー部5における突起部54付近の拡大背面図である。
【0034】
図7に示すように、環状カバー部5には、突起部54に対して脱水回転方向の上流側に近接して第1誘導面(突起誘導面)56が設けられている。第1誘導面56は、環状カバー部5に沿って移動する衣類を、突起部54の側面に誘導する面である。尚、本実施形態において、第1誘導面56は、上述した曲面壁51の一部とすることができる。具体的には、曲面壁51が、上述したフランジ部55の側面に連続的に繋がらず、突起部54の上流側手前で曲面壁51がフランジ部55の側面に対して非連続になっていることにより、曲面壁51に沿って移動する衣類は突起部54の上流側側面に当たるように誘導される。すなわち、突起部54の上流側手前における曲面壁51の終端部分を第1誘導面56として利用できる。
【0035】
第1誘導面56は、その内周縁部561が突起部54よりも外周側に位置するように設けられる。すなわち、図8に示すように、第1誘導面56の内周縁部561を延長した円周線(水槽開口部31と同心)をL4とする場合、突起部54は円周線L4の内周側に位置する。
【0036】
このような第1誘導面56を設けることにより、脱水工程時に環状カバー部5に接触したまま回転を受ける衣類が存在する場合、図7中に太線矢印で示すように、この衣類は第1誘導面56に沿って突起部54に誘導され、突起部54の側面に当てられることで確実に環状カバー部5から引きはがされる。また、突起部54が第1誘導面56の内周縁部561よりも内周側に位置することで、環状カバー部5から引きはがされた衣類は、回転槽4の奥側に誘導されやすくなる。
【0037】
また、フランジ部55における回転方向上流側の側面は、第2誘導面57として形成されている。第2誘導面57は、脱水回転方向の上流から下流に向かって内周側に張り出すように緩やかに傾斜している。第2誘導面57は、環状カバー部5に接触したまま回転を受ける衣類の一部を、突起部54の手前で内周側に緩やかに案内することができ、突起部54に対する衣類の衝突を弱めることができる。これにより、突起部54に衣類が衝突することによるダメージを低減することができる。
【0038】
〔第3実施形態〕
本実施形態では、突起部54によって引きはがされた衣類をより確実に回転槽4内に戻すための構成について説明する。
【0039】
図8に示すように、環状カバー部5には、突起部54の外周側に誘導部58が設けられている。より具体的には、誘導部58は、突起部54の外周縁からさらに外周側に離間した位置に配置される。また、誘導部58は隙間Gを形成する環状カバー部5の内周縁52よりも外周側に配置される。誘導部58は、背面側Rに向かって立設されたリブであり、脱水回転方向に上流から下流に向かって内周側に傾斜する傾斜部581を有している。
【0040】
誘導部58は、偶発的に突起部54の外周側に入り込んでしまった衣類を内周側に戻す作用を生じさせる。この作用により、突起部54の上流側側面に当たった衣類が、仮に突起部54の外周側に侵入したとしても、回転槽4内に誘導することができる。
【0041】
〔環状カバー部5の変形例〕
上述した環状カバー部5は、本開示のドラム式洗濯機においては一例であり、環状カバー部5には種々の変形例が考えられる。以下に、環状カバー部5の変形例の一部として、変形例1~6を示す。
【0042】
(変形例1)
図9は、環状カバー部5の変形例1を前面側から見た拡大斜視図である。図10は、環状カバー部5の変形例1を背面側から見た拡大斜視図である。
【0043】
変形例1は、環状カバー部5において突起部54を簡素に形成した例である。変形例1では、環状カバー部5は1パーツで構成されており、突起部54は、フランジ部55の先端(内周側端部)から直接立設するように形成されている。
【0044】
(変形例2)
図11は、環状カバー部5の変形例2を前面側から見た拡大斜視図である。図12は、環状カバー部5の変形例2を背面側から見た拡大斜視図である。
【0045】
変形例2では、突起部54の脱水回転方向上流側で、曲面壁51がフランジ部55の縁部に沿って連続的に形成されている。この構成では、曲面壁51とフランジ部55の側面との連続面は、この面に沿って移動する衣類を突起部54に誘導する機能を持たない。すなわち、変形例2は、衣類を突起部54に誘導する誘導面を持たない構成となる。
【0046】
尚、図12の図示では、環状カバー部5が2パーツで構成されているが、変形例2においても、環状カバー部5は1パーツで構成されていてもよい。同様に、後述する変形例3~6においても、環状カバー部5は1パーツで構成されていてもよい。
【0047】
(変形例3)
図13は、環状カバー部5の変形例3を前面側から見た拡大斜視図である。変形例3でも、突起部54の脱水回転方向上流側で、曲面壁51がフランジ部55の縁部に沿って連続的に形成されている。但し、変形例3では、変形例2に比べて、曲面壁51とフランジ部55の側面との連続面がより滑らかな接続とされている。これにより、突起部54に対する衣類の衝突を弱めることができ、突起部54に衣類が衝突することによるダメージを低減することができる。
【0048】
(変形例4)
図14は、環状カバー部5の変形例4を前面側から見た拡大斜視図である。変形例4は、他の変形例に比べて、フランジ部55がより奥側に配置され、かつフランジ部55の奥行方向の厚みが薄くされた構成である。この構成では、フランジ部55とドア2の窓部材23との間の距離をより大きく取ることができる。
【0049】
(変形例5)
図15は、環状カバー部5の変形例5-1を前面側から見た拡大斜視図である。図16は、環状カバー部5の変形例5-2を前面側から見た拡大斜視図である。図17は、環状カバー部5の変形例5-3を前面側から見た拡大斜視図である。
【0050】
変形例5-1ないし5-3は、フランジ部55の奥行方向の厚みを、上流側から下流側に向けて徐々に薄くなるように形成した構成である。この構成では、フランジ部55と突起部54とを合わせた厚みを確保しつつ、フランジ部55とドア2の窓部材23との間の距離も確保することができる。尚、変形例5-1ないし5-3では、フランジ部55と突起部54とを合わせた厚みを確保することで、突起部54によって引きはがされた衣類を回転槽4側に押し戻す効果が大きくなる。
【0051】
(変形例6)
図18は、環状カバー部5の変形例6-1を前面側から見た拡大斜視図である。図19は、環状カバー部5の変形例6-2を前面側から見た拡大斜視図である。
【0052】
変形例6-1および6-2は、脱水回転方向における突起部54の上流側手前にて、曲面壁51に切欠きを設け、この切欠きによって形成される面を、突起部54に衣類を誘導する第1誘導面56とした構成である。図18および図19に示すように、第1誘導面56を形成する切欠きの形状や大きさを調整することで、突起部54に対する衣類の当たりの強さを調整可能である。
【0053】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0054】
1 洗濯機(ドラム式洗濯機)
10 筐体
111 開口部
2 ドア
23 窓部材
231 上部斜面
3 水槽
31 水槽開口部
4 回転槽
41 回転槽開口部
5 環状カバー部
51 曲面壁
54 突起部
55 フランジ部
56 第1誘導面(突起誘導面)
57 第2誘導面
58 誘導部
581 傾斜部
G 隙間
図1
図2
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図5
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