(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025054
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】効率が改善されたハンドオーバを実行する基地局装置、端末装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/08 20090101AFI20250214BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20250214BHJP
【FI】
H04W36/08
H04W56/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129494
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高久 淑考
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】李 ヤンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】洪 禎延
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD17
5K067DD30
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】ハンドオーバが行われる際の通信効率を改善すること。
【解決手段】基地局装置は、接続中の端末装置に対して、その端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を通知し、1つ以上の候補セルについてタイミングアドバンス値を取得し、その端末装置に対して、その設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に端末装置が複数のセルに接続する際に、複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を、コマンドに含めて送信する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置であって、
接続中の端末装置に対して、当該端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を通知する通知手段と、
前記1つ以上の候補セルについてタイミングアドバンス値を取得する取得手段と、
前記端末装置に対して、前記設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に前記端末装置が複数のセルに接続する際に、前記複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と前記複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を、前記コマンドに含めて送信する送信手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記端末装置が、前記第1のタイミングアドバンス値と前記第2のタイミングアドバンス値との少なくともいずれかの値を所定の識別情報と関連付けて保持している場合に、前記送信手段は、当該保持されている値を示す情報として、前記所定の識別情報を前記コマンドに含めて送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記端末装置が、前記第1のタイミングアドバンス値と前記第2のタイミングアドバンス値との少なくともいずれかの値を、当該値を示す情報として、前記コマンドに含めて送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記端末装置が、前記第1のタイミングアドバンス値と前記第2のタイミングアドバンス値との少なくともいずれかの値を所定の識別情報と関連付けて保持している場合であって、当該保持されている値が更新されるべき場合に、前記送信手段は、前記第1のタイミングアドバンス値と前記第2のタイミングアドバンス値との少なくともいずれかの前記値を示す情報として、前記所定の識別情報を前記コマンドに含めると共に、更新後の当該値と更新前の当該値の差分値を当該コマンドに含めて送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記送信手段は、前記1つ以上の候補セルであると共に接続先の変更後に前記端末装置が接続する前記複数のセルに含まれないセルについてのタイミングアドバンス値を前記コマンドに含めて送信する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項6】
端末装置であって、
接続中の基地局装置から、前記端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を取得する取得手段と、
前記基地局装置から、前記設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に前記端末装置が複数のセルに接続する際に、前記複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と前記複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を含んだ前記コマンドを受信する受信手段と、
前記コマンドに従って、接続先のセルを変更する変更手段と、
接続先のセルの変更後に、前記第1のセルについて前記第1のタイミングアドバンス値を用いると共に前記第2のセルについて前記第2のタイミングアドバンス値を用いて、上りリンク信号の送信タイミングを調整する調整手段と、
を有することを特徴とする端末装置。
【請求項7】
1つ以上のタイミングアドバンス値と、当該1つ以上のタイミングアドバンス値のそれぞれについて識別情報を関連付けて保持する保持手段をさらに有し、
前記第1のタイミングアドバンス値と前記第2のタイミングアドバンス値との少なくともいずれかの値が所定の識別情報と関連付けられて保持されている場合に、前記受信手段は、当該保持されている値を示す情報として前記所定の識別情報を含んだ前記コマンドを受信し、
前記調整手段は、当該所定の識別情報に対応して保持されている前記値を用いて、前記上りリンク信号の送信タイミングを調整する、ことを特徴とする請求項6に記載の端末装置。
【請求項8】
前記受信手段は、前記第1のタイミングアドバンス値と前記第2のタイミングアドバンス値との少なくともいずれかの値を、当該値を示す情報として含んだ前記コマンドを受信し、
前記調整手段は、当該コマンドに含まれる値を用いて、前記上りリンク信号の送信タイミングを調整する、ことを特徴とする請求項6に記載の端末装置。
【請求項9】
1つ以上のタイミングアドバンス値と、当該1つ以上のタイミングアドバンス値のそれぞれについて識別情報を関連付けて保持する保持手段をさらに有し、
前記第1のタイミングアドバンス値と前記第2のタイミングアドバンス値との少なくともいずれかの値が所定の識別情報と関連付けられて保持されている場合であって、当該保持されている値が更新されるべき場合に、前記受信手段は、当該保持されている値を示す情報として、前記所定の識別情報を含むと共に、更新後の当該値と更新前の当該値の差分値を含んだ当該コマンドを受信し、
前記調整手段は、当該コマンドに含まれる差分値を用いて、当該所定の識別情報に対応して保持されている前記値を更新し、更新した値を用いて前記上りリンク信号の送信タイミングを調整する、ことを特徴とする請求項6に記載の端末装置。
【請求項10】
前記受信手段は、前記1つ以上の候補セルであると共に接続先の変更後に前記端末装置が接続する前記複数のセルに含まれないセルについてのタイミングアドバンス値を含んだ前記コマンドを受信する、ことを特徴とする請求項6に記載の端末装置。
【請求項11】
タイミングアドバンス値を取得した際に起動するタイマをさらに有する、ことを特徴とする請求項6に記載の端末装置。
【請求項12】
基地局装置によって実行される制御方法であって、
接続中の端末装置に対して、当該端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を通知することと、
前記1つ以上の候補セルについてタイミングアドバンス値を取得することと、
前記端末装置に対して、前記設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に前記端末装置が複数のセルに接続する際に、前記複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と前記複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を、前記コマンドに含めて送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
端末装置によって実行される制御方法であって、
接続中の基地局装置から、前記端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を取得することと、
前記基地局装置から、前記設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に前記端末装置が複数のセルに接続する際に、前記複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と前記複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を含んだ前記コマンドを受信することと、
前記コマンドに従って、接続先のセルを変更することと、
接続先のセルの変更後に、前記第1のセルについて前記第1のタイミングアドバンス値を用いると共に前記第2のセルについて前記第2のタイミングアドバンス値を用いて、上りリンク信号の送信タイミングを調整することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
基地局装置に備えられたコンピュータに、
接続中の端末装置に対して、当該端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を通知させ、
前記1つ以上の候補セルについてタイミングアドバンス値を取得させ、
前記端末装置に対して、前記設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に前記端末装置が複数のセルに接続する際に、前記複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と前記複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を、前記コマンドに含めて送信させる、
ためのプログラム。
【請求項15】
端末装置に備えられたコンピュータに、
接続中の基地局装置から、前記端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を取得させ、
前記基地局装置から、前記設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に前記端末装置が複数のセルに接続する際に、前記複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と前記複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を含んだ前記コマンドを受信させ、
前記コマンドに従って、接続先のセルを変更させ、
接続先のセルの変更後に、前記第1のセルについて前記第1のタイミングアドバンス値を用いると共に前記第2のセルについて前記第2のタイミングアドバンス値を用いて、上りリンク信号の送信タイミングを調整させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラ通信システムにおけるハンドオーバ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムでは、端末装置の移動に伴い、その端末装置の接続先のセル(基地局装置)の切り替え(例えばハンドオーバ)が行われる。従来、端末装置は、基地局装置からのハンドオーバの指示を受信した後に、接続の切り替え先のセルにおける同期確立や設定処理を実行して接続を確立する処理が行われる。この接続先の切り替えのための処理には一定の時間がかかり、この処理が行われている期間には端末装置がユーザデータの通信を行うことができない。これに対して、非特許文献1に記載の手法では、ハンドオーバ元の基地局装置が、端末装置に対して、ハンドオーバが実際に行われる前に、ハンドオーバ先の他の基地局装置との接続のための無線リソース制御(RRC)レイヤにおいて通信パラメータを提供しておく。そして、ハンドオーバ元の基地局装置は、ハンドオーバが行われるべきタイミングにおいて、そのセルの切り替えを指示するレイヤ1又はレイヤ2のコマンドを端末装置に送信する。端末装置は、そのコマンドを受信したことに応じて、ハンドオーバ先の基地局装置との間でランダムアクセス手順を実行することにより、その後のRRCレイヤでのせて地処理を行うことなく、ハンドオーバを完了することができる。このような技術により、ハンドオーバに関する通信効率の劣化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP(登録商標)寄書、R2-2209255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ハンドオーバが行われる際の通信効率をさらに改善する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による基地局装置は、接続中の端末装置に対して、当該端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を通知する通知手段と、前記1つ以上の候補セルについてタイミングアドバンス値を取得する取得手段と、前記端末装置に対して、前記設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に前記端末装置が複数のセルに接続する際に、前記複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と前記複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を、前記コマンドに含めて送信する送信手段と、を有する。
【0006】
本発明の一態様による端末装置は、接続中の基地局装置から、前記端末装置が接続中の1つ以上のセルの少なくともいずれかからの接続先の切り替え先である1つ以上の候補セルについての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を取得する取得手段と、前記基地局装置から、前記設定を用いた接続先のセルの変更を指示するコマンドであって、接続先の変更後に前記端末装置が複数のセルに接続する際に、前記複数のセルのうちの第1のセルが使用する第1のタイミングアドバンス値と前記複数のセルのうちの第2のセルが使用する第2のタイミングアドバンス値とを示す情報を含んだ前記コマンドを受信する受信手段と、前記コマンドに従って、接続先のセルを変更する変更手段と、接続先のセルの変更後に、前記第1のセルについて前記第1のタイミングアドバンス値を用いると共に前記第2のセルについて前記第2のタイミングアドバンス値を用いて、上りリンク信号の送信タイミングを調整する調整手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハンドオーバが行われる際の通信効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】無線通信システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。この無線通信システムは、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の第5世代(5G)やその後継規格などの、セルラ通信規格に従って構成されたセルラ通信システムである。無線通信システムは、基地局装置101~基地局装置104と、端末装置111とを含んで構成される。なお、
図1は、説明を簡単にするために4つの基地局装置と1つの端末装置のみを示しているが、多数の基地局装置及び端末装置が当然に存在しうる。
【0011】
図1において、端末装置111は、基地局装置101が形成しているセルの範囲内から、基地局装置102が形成しているセルの範囲内へと移動しようとしている。このとき、端末装置111は、接続先の基地局装置を、基地局装置101から基地局装置102へと切り替えるためのハンドオーバを行うこととなる。
【0012】
本実施形態では、端末装置111がハンドオーバによってユーザデータの通信を行うことができなくなる期間を短縮するためのハンドオーバ手順が実行されるものとする。すなわち、ハンドオーバ元の基地局装置101は、端末装置111を実際にハンドオーバさせる前に、無線リソース制御(RRC)レイヤにおける設定(RRCメッセージを用いた設定)を実行する。すなわち、従来のハンドオーバにおいて、端末装置111がハンドオーバ元の基地局装置101からハンドオーバの指示を受信し、ハンドオーバ処理の際に行われる、ハンドオーバ先の基地局装置102についてのRRCレイヤにおける設定が、実際にハンドオーバ処理が行われるべきタイミングに先立って端末装置111へ通知される。ここでの設定では、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102との接続及び通信において使用される通信パラメータが端末装置111へ通知される。通信パラメータは、例えば、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102における、ビームの設定や、ランダムアクセス手順を実行する際のパラメータや使用すべき無線リソース(周波数および時間リソース)を含む。また、基地局装置102との通信に使用される通信パラメータが複数通知される場合には、通信パラメータにそれぞれ一意に関連付けられた識別子(たとえば、RRC-TransactionIdentifierやCondReconfigIdやその両方)が、端末装置111へ通知されるRRCメッセージやRRCレイヤにおける設定パラメータに含まれうる。この場合、ハンドオーバ先の候補の基地局装置又はその基地局装置の組み合わせごとに、CondReconfigIdが設定される。さらに、基地局装置又は基地局装置の組み合わせごとに、それぞれ複数の通信パラメータが通知される場合に、RRC-TransactionIdentifierが設定されうる。一例として、ハンドオーバ先の候補基地局である基地局装置102にCondReconfigId=0が関連付けられ、さらに、基地局装置102のパラメータが複数通知される場合に、そのパラメータごとにRRC-TransactionIdentifier(例えば0、1、・・・)が設定されうる。また、ハンドオーバ元の基地局装置101は、端末装置111に対して、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102から送信される同期信号(SS)/物理ブロードキャストチャネル(PBCH)ブロック(SSB)の測定指示を送信しうる。なお、SSBは、それぞれ異なる方向に向けられたビームを用いて送信されうる。この場合、端末装置111が、そのSSBのそれぞれを測定するように測定指示が送信されうる。
【0013】
端末装置111は、接続中の基地局装置101からの測定指示に従って、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102から送出されたSSBの測定を行う。そして、端末装置111は、その測定結果を、接続中の基地局装置101へ通知する。ここで、基地局装置101は、その測定結果を、測定対象であったハンドオーバ先の候補の基地局装置102へ通知してもよい。これにより、基地局装置102は、端末装置111が実際にハンドオーバしてきた場合に、端末装置111との間の通信で使用すべきビームの大まかな方向を特定することができる。ここで、基地局装置102は、さらに下りリンク(基地局装置から端末装置へ向かうリンク)において使用すべき詳細なビームを特定するために、チャネル状態情報(CSI)-参照信号(RS)の送信設定を端末装置111へ通知してもよい。なお、この通知は、基地局装置102から基地局装置101へCSI-RSの送信設定が通知され、基地局装置101がその送信設定を接続中の端末装置111へ転送することによって行われる。端末装置111は、その送信設定を受信すると、基地局装置102から送信されるCSI-RSを、その情報に従って測定し、測定結果を接続中の基地局装置101へ通知する。そして、基地局装置101は、その測定結果を基地局装置102へ転送する。このようにして、基地局装置102は、端末装置111におけるCSI-RSの測定結果を取得することができる。この結果、基地局装置102は、端末装置111がハンドオーバしてきた後に下りリンクの通信使用すべき詳細なビームを、実際にそのハンドオーバが行われる前に決定することができる。これによれば、ハンドオーバが行われた後にビームの方向を詳細に決定する処理を省略することが可能となり、端末装置111のユーザデータの通信の効率が低下する期間を短縮することができる。一例として、上述のCSI-RSの送信設定は、端末装置111に通信パラメータとしてハンドオーバ前に事前設定される基地局装置102に関するCSI-RSの無線リソース設定(CSI-RS-Resource)および報告設定(csi-ReportConfig)から構成されるCSI-RS測定設定を用いて、端末装置111へ指示されうる。CSI-RS-ResourceにはCSI-RSが送信される無線リソースブロックの時間位置、周波数位置が含まれる。例えば、特定のCSI-RSの無線リソースを測定することを、媒体アクセス制御・制御エレメント(MAC CE)や下りリンク制御情報(DCI)において、CSI-RS-Resource idを用いてCSI-RS-Resourceを特定することによって、端末装置111に指示しうる。また、csi-ReportConfigにおいて、非周期的(aperiodic)又は周期的(periodic)なCSI reportの報告タイミングが設定される。例えば、CSI-RSの測定結果を特定のタイミングで報告することを、MAC CEやDCIにおいて、csi-ReportConfig idを用いてcsi-ReportConfigを特定することによって、端末装置111に指示しうる。また、基地局装置101は、端末装置111へ上述の測定設定を行う際に、どの基地局装置のCSI-RSの送信設定であるのかを端末装置111が特定するための情報として、例えば、セル識別子などを、MAC CEやDCIに含めて端末装置111へ送信しうる。
【0014】
また、端末装置111は、基地局装置102へのハンドオーバを実行することが決定される前に、ランダムアクセス(RA)手順を実行するようにする。すなわち、端末装置111が、実際にハンドオーバが行われる前に、上りリンク(端末装置から基地局装置へ向かうリンク)の同期確立のための処理を行うようにしうる。例えば、端末装置111が接続中の基地局装置101が、端末装置111に対して、ランダムアクセスプリアンブル(RAプリアンブル)を基地局装置102へ送信させるための指示を送信する。そして、端末装置111は、この指示に従って、基地局装置102におけるRA手順のために用意された無線リソースにおいてRAプリアンブルを送信する。なお、この無線リソースや、RAプリアンブルの生成に使用される系列の情報は、例えば、上述のRRCレイヤの設定処理の際に基地局装置101から端末装置111に通知されうる。また、基地局装置101からのRAプリアンブルの送信指示の際に端末装置111に、これらの情報が通知されてもよい。この手順により、端末装置111から送信されたRAプリアンブルが基地局装置102において受信される。そして、基地局装置102は、端末装置111が基地局装置102へ上りリンクの信号を送信する際に使用すべきタイミングアドバンス値(TA値)を決定することができる。
【0015】
その後、基地局装置101は、例えば、端末装置111における基地局装置101からの無線信号の受信品質が、基地局装置102からの無線信号の受信品質より所定レベルだけ劣化した場合などの所定の契機において、ハンドオーバを実行するように端末装置111へ通知しうる。この通知は、Cell switch commandと呼ばれうるコマンドを用いて行われうる。このコマンドは、媒体アクセス制御・制御エレメント(MAC CE)や下りリンク制御情報(DCI)を用いて送信されうる。なお、このコマンドは、ハンドオーバ先の基地局装置102が形成するセルの識別情報を含む。また、基地局装置102との通信に使用されるRRCレイヤにおける設定が複数設定される場合には、RRCレイヤにおける設定にそれぞれ一意に関連付けられた識別子(たとえば、RRC-TransactionIdentifierやCondReconfigIdやその両方)がこのコマンドに含められてもよい。また、上述のようにして事前にSSBやCSI-RSの測定が行われたことによって基地局装置102において決定されて基地局装置101へ通知されたビームに関する情報が、基地局装置101から端末装置111へ通知されてもよい。端末装置111は、ハンドオーバ先の基地局装置102を指定したコマンドを基地局装置101から受信したことに応じて、接続先を基地局装置101から基地局装置102へと変更する。この場合、上述のように既にRA手順が実行されているため、新たにRA手順を実行する必要がない。また、上述のように、ハンドオーバ前にCSI-RSの測定が行われているため、ハンドオーバ後に下りリンクの通信において使用されるべき精細なビームの決定を改めて行う必要がない。このため、端末装置111は、ハンドオーバ直後から、基地局装置102との間でユーザデータの通信を行うことができる。また、端末装置111は、コマンド受信後ハンドオーバに成功した場合に、基地局装置102に対して、例えば、RRC Reconfiguration CompleteのRRCメッセージやMAC CEなどの上り制御メッセージにおいて、その成功を通知しうる。この場合、端末装置111は、基地局装置102との通信に使用される通信パラメータに関連付けられた識別子(たとえば、RRC-TransactionIdentifierやCondReconfigIdやその両方)を、RRCメッセージに含めてもよい。
【0016】
また、上述のように、基地局装置102は、事前にTA値を決定することができる。このため、基地局装置102は、事前に基地局装置101へTA値を通知して、基地局装置101がそのTA値を上述のコマンドによって端末装置111へ通知することができる。これにより、端末装置111は、基地局装置102へのハンドオーバが基地局装置101から指示された時点において基地局装置102との上りリンクの同期を確立することができているため、RA手順を改めて実行することなく、基地局装置102へ上りリンクのユーザデータを送信することが可能となる。
【0017】
端末装置111は、並行して複数のセルに接続することができる。例えば、端末装置111は、基地局装置101によって提供されるセルと基地局装置103によって提供されるセルとに、並行して接続することができる。ここで、端末装置111がそれぞれ異なる基地局装置によって提供される複数のセルに接続する場合、それぞれのセルのために、別個のTA値が設定される。例えば、端末装置111において、基地局装置101によって提供されるセルのための第1のTA値と基地局装置103によって提供されるセルのための第2のTA値との2つのTA値が設定される。なお、例えば同じ基地局装置又はほぼ同じ位置にある基地局装置によって複数のセルが提供されるなど、使用されるべきTA値が同じである場合、その複数のセルについては同じTA値を使用することができる。このように、同じTA値を使用するセルのグループは、タイミングアドバンスグループ(TAG)と呼ばれる。TA値は、TAGごとに設定される。
【0018】
本実施形態では、上述のCell Switch Commandによって、複数のセルに接続中の端末装置111のハンドオーバが行われるようにするケースについて検討する。端末装置111が複数のセルに接続中であり、ハンドオーバ後も複数のセルと接続する場合、Cell Switch Commandは、そのハンドオーバ後の複数のセルの識別情報を含みうる。例えば、端末装置111が、基地局装置101が形成する第1のセルと基地局装置102が形成する第2のセルに接続している状態から、基地局装置102が形成する第2のセルと基地局装置103が形成する第3のセルに接続する状態へと遷移する場合に、例えば、第2のセルの識別情報と第3のセルの識別情報とを含んだCell Switch Commandが、端末装置111へ送信されうる。なお、この場合、接続先として変更される第3のセルの識別情報が端末装置111へ通知され、第2のセルの識別情報については端末装置111に通知されなくてもよい。ただし、その場合、切り替え元の第1のセルの識別情報が端末装置111へ通知されうる。なお、ここでは2つのセルのうち1つのセルのみが変更される例を示したが、2つ以上のセルが一度に変更されてもよい。また、このコマンドに、RRCレイヤにおける設定に関連付けられた識別子が含められることにより、どのセルへのハンドオーバが行われるかが示されてもよい。例えば、1つのRRCレイヤにおける設定において、複数のセルを並行して使用する設定が含められうる。例えば、端末装置111において、基地局装置102が形成する第2のセルと基地局装置103が形成する第3のセルに接続する場合の設定が事前に行われている場合に、その設定に対応する識別子が端末装置111に通知されうる。例えば、第1のセルと第3のセルを並行して使用する第1の設定と、第2のセルと第3のセルを並行して使用する第2の設定と、第1のセルと基地局装置104が形成する第4のセルを並行して使用する第3の設定が、第1のセル及び第2のセルに接続している端末装置111に通知されたものとする。そして、第1の設定に第1の識別子が、第2の設定に第2の識別子が、第3の設定に第3の識別子が、それぞれ割り当てられたものとする。この場合に、例えば接続先の変更元の第1のセルを形成する基地局装置101から、第2の識別子を指定したCell Switch Commandが端末装置111へ通知されることにより、端末装置111は、接続先のセルを、第2のセルと第3のセルの組み合わせに切り替えることができる。なお、このときのCell Switch Commandは、接続先の変更前から変更後にわたって接続が維持される第2の基地局装置102から端末装置111へ通知されてもよい。また、複数のセルを並行して利用する設定情報が端末装置111に事前に通知される場合、その設定情報は、その複数のセルのそれぞれについてのTAGの設定を含みうる。例えば、第2のセルが第1のTAGに、第3のセルが第2のTAGに、それぞれ属することが、設定情報において通知されうる。
【0019】
このように、複数のセルを一度に切り替えることができることを前提とすると、このコマンドにおいて、切り替え後の複数のセルのそれぞれに適用されるべきTA値が端末装置111へ通知されるようにすることが有用である。すなわち、上述のように、TA値はTAGごとに設定されるため、ハンドオーバ後の複数のセルが、互いに異なるTAGに属する場合に、それらのTAGのそれぞれについてのTA値を示す情報が端末装置111に通知されることにより、端末装置111が、接続先のセルの切り替え後に使用するTA値が改めて通知される必要がなくなる。本実施形態では、このような事情に鑑み、Cell Switch Commandにおいて、複数のTA値を指定することができるようにする。
【0020】
一例において、Cell Switch Commandは、各TAGにおいて使用されるべきTA値そのものの値を含む。また、端末装置111において既に保持しているTA値が使用される場合には、Cell Switch Commandに、TA値そのものではなく、端末装置111において保持されているTA値を指定する情報が含められてもよい。例えば、端末装置111は、基地局装置101が形成する第1のセルと基地局装置102が形成する第2のセルとに接続中の状態から、第2のセルと、基地局装置103が形成する第3のセルとの接続先のセルを切り替えた場合、接続先の切り替え前に使用していたTA値のうち、第2のセルのTA値を再利用することができる。ここで、同じセルが継続して使用される場合であっても、TAGの構成が変化することが想定されうる。このため、接続先の変更後に第2のセルが属するTAGにおいて、接続先のセルの変更前に第2のセルが属するTAGにおいて使用されていたTA値が再利用されることを示す情報が、Cell Switch Commandにおいて通知されうる。
【0021】
なお、端末装置111が接続されていなかった第3のセルについて、上述のような事前のRA手順が実行されることにより、基地局装置103がそのTA値を決定し、その決定したTA値を基地局装置101又は基地局装置102を介して、端末装置111へ事前に通知することも想定されうる。このような場合、第3のセルが属するTAGについて、その事前に通知されたTA値を用いるべきことが、Cell Switch Commandによって、端末装置111に通知されてもよい。なお、事前に端末装置111において保持されているTA値が使用される場合、そのTA値に関連付けられている識別情報によって、そのTA値が指定される。この識別情報は、例えば、接続先のセルの切り替え前の特定のTAGを指定する情報(tag-id)や、TA値が設定されている特定のセルを指定する情報などの情報でありうる。端末装置111と接続している基地局装置101及び基地局装置102は、端末装置111に対して事前にTA値を通知する際に、そのTA値に対して個別に識別情報を付して端末装置111に通知することができる。これにより、基地局装置101及び基地局装置102は、Cell Switch Commandにおいて、接続先の変更後の特定のTAGにおいて、どのTA値を使用するかを、その識別情報を用いて指定することができる。
【0022】
また、上述の実施形態では、1つのTAGが1つのセルに関連付けられる場合について説明したが、1つのTAGに複数のセルが関連付けられ、各TAGに1つのTA値が関連付けられる場合や、同一のセルに属する複数のTRP(Transmission and Reception Point)に対して、それぞれ異なるTAGが関連付けられる場合や、1つのセルが複数のTRPで構成される場合にも、本実施形態に係る説明が適用されうる。1つのセルが複数のTRPで構成される場合には、TRPごとにそれぞれTA値が関連付けられる場合も想定される。その場合、用いるべきTA値を特定するためのTA値に関連付けられている識別情報として、TAGを指定する情報(tag-id)に加えて、TRPを指定するための情報を事前に通知されてもよく、また、Cell Switch Commandで通知されてもよい。
【0023】
また、基地局装置101及び基地局装置102は、事前設定されて端末装置111において保持されているTA値が更新されるべき場合に、その更新後の値Taと更新前の値Tbの差分値Ta-Tbが、Cell Switch Commandに含められてもよい。この場合、事前設定されているTA値のいずれが使用されるかを示す識別情報と、その差分値とを含んだCell Switch Commandが、端末装置111へ通知されうる。端末装置111は、特定のTAGのための識別情報に対応するTA値に、その差分値が加算されることにより、接続先のセルの変更後に、使用すべきTA値を特定することができる。
【0024】
なお、上述のTA値を示す情報の通知の方法は組み合わせて使用されてもよい。すなわち、接続先の変更後において設定される複数のTAGの一部については、TA値そのものが通知され、他の一部について、事前に特定のTA値と関連付けられた識別情報(TAGの識別情報、TA値の識別情報、セル識別情報など)が通知されてもよい。また、一部のTA値についてのみ、更新のための差分値が通知されてもよい。すなわち、上述のTA値を示す情報が任意に組み合わせられて端末装置111へ通知されてもよい。
【0025】
端末装置111は、上述のようにして、Cell Switch Commandを受信すると、そのコマンド内に含まれるTA値を示す情報に基づいて各TAGに対応するTA値を特定することができる。そして、端末装置111は、そのコマンドに従って接続先のセルを変更し、接続先のセルの変更後に、特定したTA値を用いて各TAGに属するセルにおける上りリンクの信号の送信タイミングを調整する。なお、端末装置111は、上述のように、事前に特定のセルについてTA値を取得している場合、そのTA値と特定の識別情報(そのセルの識別情報やTA値のために用意された識別情報)とを関連付けて記憶することができる。そして、端末装置111は、Cell Switch Commandにおいて、特定のTAGについてのTA値を示す情報として、識別情報が含められていた場合には、その識別情報に対応するTA値を、その特定のTAGについてのTA値として特定しうる。また、端末装置111は、Cell Switch Commandにおいて、特定のTAGについてのTA値を示す情報として、TA値そのものが含まれていた場合、その特定のTAGについてのTA値として、コマンド内で指定されている値を使用すると決定しうる。なお、端末装置111は、TA値そのものを受信した場合には、そのTA値の有効期限に関するタイマ(timeAlignmentTimer)を起動しうる。このタイマは、上りリンクの信号送信のタイミング同期が取れていると端末装置111が見なす期間を測定する。端末装置111は、タイマの満了期間として、端末装置111固有の値(timeAlignmentTimerDedicated)又はセル内の端末装置に共通の値(timeAlignmentTimerCommon)を取得し、この値に基づいてTA値の管理を行う。TA値の有効期限に関するタイマ(timeAlignmentTimer)の値は、Cell Switch Commandの通知以前に、端末装置111に事前に設定されるRRCレイヤにおける設定の一部としてTAGとともに通知されてもよく、また、Cell Switch Commandにおいてタイマ値がTAGとともに設定されてもよい。なお、端末装置111が接続先のセルの変更前に事前にRA手順を実行することにより接続先の変更後の候補セルのTA値が端末装置111に通知される場合、端末装置111が接続中の基地局装置から、その通知と共に、それらのタイマの有効期限の情報が通知されうる。なお、端末装置111は、新しいTA値を受信した場合には、そのタイマを再起動する。TAGごとに管理される上述の有効期限に関するタイマが満了した場合、端末装置111はその満了したタイマのTAGに関連付けられて保存されているTA値を保持したままとし、そのTA値を用いた上りリンク信号の送信、例えば、PUCCHやSRSの送信を停止する。その後、端末装置111は、基地局装置からTA値、または、保持しているTA値からの差分値を受信した場合に、TA値を更新する。また、端末装置111は、基地局装置からTA値の削除を指示された場合には、そのTA値を削除する。
【0026】
なお、上述の実施形態では、Cell Switch Commandにおいて、接続の切り替え先のセルについてのTA値の通知について説明したが、このコマンドにおいて、端末装置111が接続しないセルについてのTA値が通知されてもよい。例えば、基地局装置101が形成する第1のセルと基地局装置102が形成する第2のセルに接続中の状態から、第2のセルと基地局装置103が形成する第3のセルに接続する状態となるように端末装置111の接続先のセルを変更することを指示する、Cell Switch Commandにおいて、基地局装置104が形成する第4のセルについてのTA値が含められてもよい。なお、この場合、端末装置111が第4のセルについてのRA手順を事前に実行しており、基地局装置104が決定したTA値が基地局装置101と基地局装置102との少なくともいずれかに通知されており、また、Cell Switch Commandが通知される前のRRCレイヤにおける事前設定において、端末装置111に対して、ハンドオーバ後に端末装置111が接続しないセルとして管理するセルの情報と、そのセルが属するTAGが通知されている必要がある。また、この際にRRCレイヤにおける事前設定ではなく、Cell Switch Commandにおいて端末装置111が接続しないセルとして管理するセルを識別するための情報と、そのセルの属するTAGとが、端末装置111に通知されてもよい。このように、接続先の変更に直接関与しないセルについてのTA値が端末装置111に通知されることにより、端末装置111の接続先のセルがさらに変更されて、第4のセルに接続することとなった場合に、端末装置111が改めてRA手順を実行することなく、第4の基地局装置との上りリンクのタイミング同期を確立することが可能となる。上述の説明は、第4のセルについて説明したが、端末装置111がセル接続先を変更した後に、接続しない第5のセルや第6のセルなどのように、複数のセルについて同様の処理が行われうる。
【0027】
(装置構成)
続いて、装置構成について説明する。
図2は、本実施形態の基地局装置および端末装置のハードウェア構成例を示している。基地局装置および端末装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、基地局装置および端末装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、5Gやその後継規格の無線通信用の回路によって構成される。なお、
図2では、1つの通信回路205が図示されているが、基地局装置および端末装置は、複数の通信回路を有しうる。例えば、基地局装置および端末装置は、5G用、およびその後継規格用のそれぞれのための無線通信回路と、それらの回路に共通のアンテナを有しうる。なお、基地局装置および端末装置は、各規格に適したアンテナを別個に有してもよい。また、基地局装置は、さらに、他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。また、端末装置は、さらに、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)やBluetooth(登録商標)などのセルラ通信規格以外の無線通信規格に準拠した通信回路などを有してもよい。なお、基地局装置および端末装置は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路205を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路205を有してもよい。
【0028】
図3は、基地局装置の機能構成例を示す。基地局装置は、例えば、RRC設定部301、RA指示部302、TA値取得部303、基地局間通信部304、及び、セル切替指示部305を有する。なお、
図3では、主として端末装置111が接続中の基地局装置101又は基地局装置102の機能を示している。接続の変更先の候補セルを形成している基地局装置103及び基地局装置104は、TA値に関する情報を基地局装置101や基地局装置102へ送信することがある点を除いて、従来の基地局装置と同様であるため、ここでは図示を省略している。なお、基地局装置101~基地局装置104は、端末装置111の接続先であるか否かのみによって区分されるものであり、これらの基地局装置の全てが
図3の機能を有しうる。すなわち、例えば基地局装置103や基地局装置104は、図示していない他の端末装置と接続中の場合に、基地局装置101や基地局装置102などを接続の変更先の候補として、
図3の機能を用いて、上述のような処理を実行しうる。なお、
図3は、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、基地局装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、基地局装置は、5Gやその後継規格などに準拠した基地局装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図3の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図3の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0029】
RRC設定部301は、例えば、接続中の端末装置に対してRRCレイヤの設定を行う。例えば、RRC設定部301は、端末装置の接続変更先の候補である隣接セルを提供している他の基地局装置に対してハンドオーバ要求を送信して、その他の基地局装置から通信設定情報を取得し、その通信設定情報をRRCレイヤのメッセージによって、端末装置へ通知する。なお、ここで、RRC設定部301は、例えば端末装置が並行して使用することができる周波数帯の情報などに基づいて、その端末装置が並行して使用することができるセルの組み合わせについての設定情報を、RRCレイヤのメッセージに含めて端末装置へ送信しうる。この設定情報は、例えば、組み合わせられる複数のセルのそれぞれがどのTAGに属するかの情報を含みうる。ここで、端末装置が接続先を変更する場合の接続先の候補には、現在接続中のセルも含みうる。すなわち、端末装置が第1のセルと第2のセルに接続している状態において、その端末装置の接続先の候補のセルの組み合わせとして、第2のセルと第3のセルとの組み合わせが設定される場合、接続先の候補に、接続中の第2のセルを含むこととなる。このため、RRC設定部301は、その第2のセルについての設定情報をも取得して、端末装置に通知しうる。なお、これは一例であり、第2のセル固有の設定情報については、現在の設定情報を再利用すべきこと、及び、第2のセルと第3のセルとを組み合わせて使用する際に必要となる設定情報のみが端末装置に通知されてもよい。なお、接続先のセルの組み合わせの候補が複数存在する場合に、その複数の候補のそれぞれについての設定情報が用意される場合、その複数の設定情報のそれぞれに特定の識別情報が付与されうる。この識別情報は、例えば、RRC-TransactionIdentifierやCondReconfigId又はその両方でありうる。なお、RRCレイヤのメッセージは、RRC Reconfigurationメッセージである。その後、RRC設定部301は、端末装置からRRC-TransactionIdentifierやCondReconfigId又はその両方を含むRRC Reconfiguration Completeメッセージを受信することによって、端末装置と他の基地局装置との間の接続処理設定を行う。
【0030】
RA指示部302は、RRCレイヤの設定が完了した端末装置に対して、接続先の候補のセルのそれぞれのためのRAプリアンブルの送信を指示する。ここで、RAプリアンブルの送信指示には、RAプリアンブルの送信先となる基地局装置又はセルを特定するための情報、端末装置に固有のRAプリアンブル生成用の系列や接続先の候補のセルに接続しようとする他の端末装置も使用可能な一群の系列が含まれ、また、RAプリアンブルの送信に使用される無線リソースの情報をも含みうる。RA指示部302は、例えば、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH) orderによって、接続中の端末装置に、接続先の候補の基地局装置へのRAプリアンブルの送信を指示しうる。また、RA指示部302は、必要に応じて、端末装置に対してRAプリアンブルの再送を指示し、又は、RAプリアンブルが繰り返し送信されるように構成されている場合には、そのRAプリアンブルの送信停止指示を端末装置に送信しうる。RAプリアンブルの送信先となる基地局装置又はセルが複数のTRP(Transmission and Reception Point)で構成される場合、RAプリアンブルの送信先となる基地局装置又はセルを特定するための情報に加えて、送信先のTRPを特定するための情報が送信指示に含まれてもよい。
【0031】
TA値取得部303は、端末装置の接続先の候補のセルのそれぞれについて、例えばRA指示部302によって端末装置にRAプリアンブルを送信させた結果として決定されたTA値を取得する。また、TA値取得部303は、端末装置と現在接続されていない接続先の候補セルについてのTA値のみならず、端末装置と現在接続中のセルのうち、接続先の変更後の候補セルとして含まれるセルについてのTA値をも取得してもよい。なお、TA値取得部303は、候補セルのうち、端末装置が現在接続中のセルについてのTA値については取得しなくてもよい。基地局間通信部304は、接続先の候補セルを形成する基地局装置との間で通信を行う。基地局間通信部304は、例えば、接続中の端末装置にRAプリアンブルを送信させることを、そのRAプリアンブルの送信先の他の基地局装置へ通知しうる。また、基地局間通信部304は、例えば、接続先の候補セルを形成する基地局装置におけるRA手順のための情報を、その基地局装置から受信するのに使用される。なお、TA値取得部303は、例えば、候補セルを形成する基地局装置において算出されたTA値を、基地局間通信部304を介して取得しうる。
【0032】
セル切替指示部305は、例えば端末装置における接続先の候補のセルを形成する他の基地局装置からの無線信号の受信品質が、自装置と端末装置との間の無線品質より所定レベル以上高くなった場合など、端末装置がセルの切り替えを実行すべき状態となったことに応じて、端末装置に対して、セルの切り替えを実行させるための指示を行う。セル切替指示部305は、例えば、接続先のセルを特定可能なセル識別子や、RRC設定部301において通知された設定情報に対応するRRC-TransactionIdentifierやCondReconfigIdなどの識別情報等を含んだCell switch commandを、端末装置へ送信する。なお、端末装置が複数のセルに接続し、その複数のセルに対して複数のTAGが設定される場合に、セル切替指示部305は、複数のTAGのそれぞれについてのTA値を示す情報を含めたコマンドを、端末装置へ送信しうる。すなわち、複数のセルのうちの第1のセルにおいて適用されるべき第1のTA値と第2のセルにおいて適用されるべき第2のTA値とを示す情報が、このコマンドに含められて端末装置へ送信されうる。これによれば、端末装置は、セルの切り替えの直後から、切り替え後の複数のセルにおいて、それらのTA値をそれぞれ用いて上りリンクのユーザデータ信号を送信することが可能となる。なお、ここでのTA値を示す情報は、そのTA値そのものであってもよいし、端末装置において保持されているTA値を特定可能な識別情報(例えばtag-idやセル識別子など)であってもよい。また、複数のTA値のうち、一部のTA値を示す情報がTA値そのものであり、他のTA値を示す情報がそのTA値を特定可能な識別情報であってもよい。また、セル切替指示部305は、端末装置が接続先を切り替えた後の、さらなるセルの切り替え後の候補セルのためのTA値が、このコマンドにおいて端末装置へ通知されてもよい。これによれば、端末装置がさらなる接続先のセルの切り替えを行う場合の候補セルについて、改めてRA手順を実行する必要がなくなる。なお、セル切替指示部305は、TA値そのものを端末装置へ通知する際には、そのTA値に関するtimeAlignmentTimerCommon又はtimeAlignmentTimerDedicatedの値を、Cell Switch Commandにおいて端末装置に通知しうる。
【0033】
図4は、端末装置の機能構成例を示す。端末装置は、例えば、RRC設定部401、RA処理部402、TA値保持部403、セル切替部404、及び、タイミング調整部405を有する。なお、
図4では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、端末装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、端末装置は、5Gやその後続規格などに準拠した端末装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図4の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図4の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0034】
RRC設定部401は、接続先の基地局装置からのRRCレイヤのメッセージを受信することにより、接続先候補となるセルについての接続設定処理を行う。なお、RRC設定部401は、接続中のセルに関する設定と、接続先候補のセルに関する設定とを並行して保持することとなる。また、RRC設定部401は、複数の設定情報を保持する場合、その設定情報と併せて、対応する識別情報(例えば、RRC-TransactionIdentifierやCondReconfigId又はその両方)を保持しうる。なお、複数のセルの組み合わせに関する設定情報は、例えば、その複数のセルのそれぞれが、どのTAGに属するかを示す情報を含みうる。RA処理部402は、接続中の基地局装置からRAプリアンブルの送信指示を受信したことに応じて、接続先候補セルのためのRAプリアンブルを送信する。ここで、RAプリアンブルの生成のための系列や、接続先候補のセルにおけるRAプリアンブルの受信用の無線リソースの情報は、接続中の基地局装置から受信されうる。なお、その系列や無線リソースの情報は、接続先候補のセルを形成している基地局装置が送出しているシステム情報から取得されてもよい。なお、RA処理部402は、例えば、上述のRAプリアンブルを送信後に、その送信先の基地局装置において決定されたTA値を、接続中の基地局装置を介して取得しうる。また、このときに、同一のTA値を使用することができる複数の接続先候補のセルが存在する場合、RA処理部402は、同一のTA値を使用可能なセルを特定するための情報を基地局装置から受信し、そのTA値をtag-idなどのTAGを識別する情報と関連付けて保存してもよい。
【0035】
TA値保持部403は、例えば、接続中の基地局装置への上りリンク信号の送信タイミング調整のためのTA値と、RA処理部402において取得された又は接続中の基地局装置からのCell Switch Commandにおいて通知されたTA値と、を保持する。TA値保持部403は、TA値を、例えば、そのTA値が適用されるTAGの識別情報や、そのTA値が適用されるセル(そのTA値を決定した基地局装置によって形成されているセル)の識別情報と関連付けて保持しうる。なお、TA値保持部403は、特定のTA値の更新のために、更新後のTA値と更新前のTA値との差分値がその特定のTA値と関連付けられた識別情報と共に通知された場合には、その識別情報に対応するTA値を、通知された差分値を用いて更新しうる。また、TA値保持部403は、TA値を取得した際に、タイマ(timeAlignmentTimer)を起動しうる。タイマが満了するまでは、そのTA値が有効であるものとして扱う。
【0036】
セル切替部404は、接続中の基地局装置からのセルの切り替えを指示するコマンド(Cell switch command)を受信したことに応じて、接続先のセルを変更する。そのコマンドには、RRC設定部401において設定した設定情報のいずれを使用すべきかを指定する識別情報が含まれうる。端末装置は、コマンドから識別情報を抽出して、この識別情報に対応する設定情報を特定することにより、いずれのセルに接続するかを特定することができる。なお、これは一例であり、接続先のセルを指定するセルの識別情報がコマンドに含められてもよい。また、コマンドには、使用すべきTA値を示す情報が含まれる。なお、端末装置が複数のセルに接続する場合、コマンドには、その複数のセルに含まれる第1のセルのための第1のTA値を示す情報と、第2のセルのための第2のTA値を示す情報とが含まれうる。すなわち、コマンドは、複数のTA値を示す情報を含みうる。なお、TA値を示す情報は、TA値そのものであってもよいし、TA値を特定可能な識別情報であってもよい。
【0037】
タイミング調整部405は、例えば、TA値保持部403に保持されたTA値を基づいて、上りリンクの信号の送信タイミングを調整する。また、タイミング調整部405は、Cell Switch Commandによって接続先のセルの切り替えが行われる場合に、そのコマンドにおいて通知されたTA値を示す情報に基づいて、セルの切り替え後の上りリンクの信号の送信タイミングを調整する。これによれば、Cell Switch Commandに含まれる情報に基づいて使用されるべきTA値が特定されるため、端末装置は、接続先のセルの切り替え後、すぐに、適切なタイミングで上りリンクの信号を送信することができるようになる。
【0038】
(処理の流れ)
続いて、無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について、
図5を用いて説明する。なお、
図5の処理の流れは、一例であり、各手順において上で説明したような変形を行うことができる。
【0039】
本処理例では、例えば、端末装置は、初期的にセルAを提供する基地局装置及びセルBを提供する基地局装置と接続を確立して、これらのセルにおいて通信を行っているものとする(S501)。ここで、セルAはTAG1に属し、セルBはTAG2に属し、TAG1ではTA値としてT1が使用され、TAG2ではTA値としてT2が使用されるものとする。すなわち、端末装置は、セルAへの上りリンク信号を、その信号が受信されるタイミングよりT1だけ早くなるように送信タイミングを制御し、セルBへの上りリンク信号を、その信号が受信されるタイミングよりT2だけ早くなるように送信タイミングを制御する。その後、例えば、セルAを形成する基地局装置は、まず、端末装置のセルの切り替え後の接続先候補となるセルCを形成している基地局装置及びセルDを形成している基地局装置に対して、HANDOVER REQUESTメッセージを送信する(S502)。セルC又はセルDを形成している基地局装置は、このメッセージを受信すると、端末装置が接続する場合に使用すべき通信パラメータの情報などの設定情報を含んだHANDOVER REQUEST ACKメッセージを、セルAを形成する基地局装置へ返送する(S503)。なお、セルAを形成する基地局装置は、例えば、端末装置が既に接続しているセルBのための設定情報を事前に保持しうる。そして、セルAを形成する基地局装置は、他の基地局装置から通知された通信パラメータなどの設定情報を含んだRRC Reconfigurationメッセージを端末装置へ通知する(S504)。ここで通知される設定情報は、複数のセルを並行して使用するための設定情報を含みうる。また、設定情報には、その設定情報を特定可能な識別情報が関連付けられうる。ここでは、セルBとセルCとを並行して使用するための設定1と、セルAとセルDとを並行して使用するための設定2とが、端末装置へ通知されるものとする。また、設定1では、セルBがTAG1に属し、セルCがTAG2に属すること、設定2では、セルAがTAG1に属し、セルDがTAG2に属すること、などの情報が、端末装置へ通知される。端末装置は、このメッセージを受信すると、RRC Reconfiguration CompleteメッセージをセルAの基地局装置に送信して、RRCレイヤのメッセージを用いた設定処理を完了する(S505)。この処理により、端末装置は、セルの切り替えが指示された後に、RRCレイヤの設定処理を行う必要がなくなる。
【0040】
続いて、セルAの基地局装置は、セルの切り替え後の接続先の候補となる各セルに対してRAプリアンブルを送信するように、端末装置に指示する(S506)。ここで、この指示には、端末装置がRAプリアンブルの生成に使用すべき系列と、そのRAプリアンブルが送信されるべき無線リソースを指定する情報が含まれうる。なお、RAプリアンブルが送信されるべき無線リソースは、例えば接続先の候補のセルにおいて送信されて端末装置によって測定される、そのセルのシステム情報に基づいて特定されてもよい。すなわち、端末装置は、接続中の基地局装置からこの情報を取得しなくてもよい。また、RAプリアンブルを生成する際に使用されるべき系列は事前に特定されていてもよい。一例において、S504において、この系列の情報が端末装置に通知されていてもよい。端末装置は、指示に従って、接続中でないセルC及びセルDへ、RAプリアンブルを送信する(S507)。このとき、セルAの基地局装置は、セルCの基地局装置及びセルDの基地局装置に対して、端末装置がRAプリアンブルを送信する予定であることを通知してもよい。このとき、セルAの基地局装置は、セルCの基地局装置及びセルDの基地局装置に対して、端末装置がそれぞれのセルへ送信するRAプリアンブルの生成に使用する系列の情報を通知しうる。これにより、セルCの基地局装置及びセルDの基地局装置は、端末装置が送信するRAプリアンブルを検出することが可能となる。なお、これは一例であり、例えばS502のHANDOVER REQUESTによって、黙示的に端末装置がRAプリアンブルを送信する予定であることが通知されてもよい。また、この場合に、S503のHANDOVER REQUEST ACKにおいて、端末装置がRAプリアンブルの生成に使用すべき系列が指定されてもよい。なお、これらは一例であり、他のメッセージによって、セルAの基地局装置とセルCの基地局装置及びセルDの基地局装置との間で、端末装置がRAプリアンブルの生成に使用すべき系列の情報などが共有されてもよい。セルCの基地局装置及びセルDの基地局装置は、端末装置から送信されたRAプリアンブルに基づいてTA値を算出し、算出したTA値を、セルAの基地局装置へ通知しうる(S508)。
【0041】
その後、例えば、端末装置において、セルCの基地局装置からの信号の無線品質が、セルAの基地局装置からの信号の無線品質より所定レベル以上高くなった場合などの所定の条件を満たした場合に、セルの切り替えの処理が行われうる。セルAの基地局装置は、端末装置の接続先のセルを、例えばセルAとセルBとの組み合わせから、セルBとセルCとの組み合わせへ変更すべきことを決定したものとする。この場合、セルBとセルCとを組み合わせて使用する設定は、S504において、「設定1」として端末装置へ通知されている。このため、セルAの基地局装置は、「設定1」を用いた接続先のセルの切り替えを指示するCell Switch Commandを、端末装置へ送信する(S509)。なお、これは一例であり、セルBとセルCを組み合わせて使用すべきことを端末装置が特定可能な任意の情報が、このコマンドにおいて端末装置へ通知されうる。なお、このコマンドは、TA値を示す情報を含む。ここで、S504において通知された設定1では、セルBがTAG1に属し、セルCがTAG2に属することが指定されている。このため、コマンドは、それぞれのTAGにおいて使用されるべき複数のTA値を含む。例えば、端末装置は、接続先のセルの切り替え前にもセルBと接続しており、その際には、セルBはTAG2に属していたため、セルの切り替え前のTAG2で使用されていたTA値を、セルの切り替え後のTAG1において使用可能であることが想定される。このため、Cell Switch Commandに、セルBが属するTAG1のTA値を示す情報として、セルの切り替え前のTAG2のTA値を指定する情報(例えばtag-id)が含められうる。また、端末装置は、セルの切り替え前にはセルCと接続されておらず、また、そのセルCについてのTA値が通知されていない。このため、Cell Switch Commandに、セルCが属するTAG2のTA値を示す情報として、そのセルCにおいて使用されるべきTA値である「T3」が含められうる。このTA値は、S508において、セルCの基地局装置からセルAの基地局装置へ通知されているため、セルAの基地局装置は、このTA値(T3)をCell Switch Commandに含めることができる。
【0042】
端末装置は、Cell Switch Commandを受信すると、そのコマンドに従って、接続先のセルをセルB及びセルCの組み合わせに変更する。そして、端末装置は、各セルにおいて使用すべきTA値を、そのコマンドに含まれるTA値を示す情報を用いて特定することができる。このため、端末装置は、改めてセルCの基地局装置などからTA値を通知されることなく、セルの切り替え後すぐに、適切に調整された送信タイミングで上りリンクの信号を送信することができる(S510、S511)。
【0043】
なお、本処理例では、セルAを形成する基地局装置が、セルの切り替えなどの制御を主導する例を示しているが、端末装置が接続されているセルBを形成する基地局装置が、この制御を主導してもよい。また、
図5の例では、Cell Switch Commandにおいて、セルAにおいて既に取得されている、セルDのためのTA値を、端末装置に通知される例を示している。これによれば、端末装置は、セルB及びセルCへの接続先のセルの変更後に、さらにセルDへの接続先のセルの切り替えが行われる場合に、改めてRA手順を実行する必要がなくなる。ただし、これは一例であり、セルDのTA値については、Cell Switch Commandに含められなくてもよい。また、上述の例では、セルCのTA値が、Cell Switch Commandにおいて通知される例を示しているが、例えばS508の後に、セルAの基地局装置から端末装置へ、そのTA値(T3)とセルCの識別情報などの特定の識別情報とが関連付けられて通知されてもよい。この場合、端末装置は、その特定の識別情報と通知されたTA値とを保持する。そして、S509のCell Switch Commandにおいて、TAG2のTA値を示す情報として、その特定の識別情報が含められることにより、端末装置は、そのTAG2において、その特定の識別情報と関連付けられて保持しているTA値(T3)を使用すべきことを特定することができる。なお、上述の説明では、TAG1、TAG2が用いられる場合について説明したが、TAG3、TAG4、TAGnのように2つ以上のTAGが用いられてもよい。
【0044】
このようにして、本実施形態によれば、セルの変更前の接続先の基地局装置が、端末装置の接続先を他のセルへ変更させると決定してから、その端末装置が変更後のセルにおいてユーザデータを含んだ上りリンク信号の送信を開始するまでの時間を大きく短縮することができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0045】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。