IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -電動工具 図1
  • -電動工具 図2
  • -電動工具 図3
  • -電動工具 図4
  • -電動工具 図5
  • -電動工具 図6
  • -電動工具 図7
  • -電動工具 図8
  • -電動工具 図9
  • -電動工具 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025056
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20250214BHJP
   B25D 16/00 20060101ALI20250214BHJP
   B25D 11/00 20060101ALI20250214BHJP
   B25F 5/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 G
B25D16/00
B25D11/00
B25F5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129496
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小野田 真司
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴大
【テーマコード(参考)】
2D058
3C064
【Fターム(参考)】
2D058AA14
2D058CA05
2D058CB06
2D058CB14
3C064AA04
3C064AB01
3C064AB02
3C064AC03
3C064AC09
3C064AC10
3C064BA06
3C064BB01
3C064BB07
3C064BB42
3C064BB43
3C064BB44
3C064BB79
3C064CA03
3C064CA06
3C064CB05
3C064CB08
3C064CB14
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB32
3C064CB35
3C064CB37
3C064CB39
3C064CB62
3C064CB69
3C064CB72
3C064CB75
3C064CB77
(57)【要約】
【課題】吸気口と付勢部材との絶縁距離を確保しつつ、モータ及びブラシを効率的に冷却可能とする。
【解決手段】前側ハウジング2内に、モータ4と出力部とが収容され、整流子15に当接するカーボンブラシ76と、カーボンブラシ76を整流子15側へ付勢する導電性のゼンマイバネ77とを有するブラシベース67が設けられる。後側ハウジング3には、ファンの回転に伴って外部の空気を吸い込む後吸気口44と、吸い込まれた空気を排出する排気口とがそれぞれ形成されて、後吸気口44と排気口との間を流れる空気流Rの途中にモータ4が配置されて、空気流Rにおける後吸気口44の下流側にブラシベース67が配置される。前側ハウジング2に、ゼンマイバネ77と後吸気口44との間に配置されてゼンマイバネ77を覆う非導電性のカバー部105が、リード線ホルダ85と共に着脱可能に設けられている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、固定子と回転子とを含むモータと、前記モータの駆動により作動する出力部とが収容されると共に、前記回転子に備えられた整流子に当接するブラシと、前記ブラシを前記整流子側へ付勢する導電性の付勢部材とを有するブラシ保持部材が設けられる一方、
前記回転子が有する回転軸には、ファンが設けられ、前記ハウジングには、前記ファンの回転に伴って外部の空気を吸い込む吸気口と、吸い込まれた空気を排出する排気口とがそれぞれ形成されて、前記吸気口と前記排気口との間を流れる空気流の途中に前記モータが配置されて、前記空気流における前記吸気口の下流側に前記ブラシ保持部材が配置される電動工具であって、
前記ハウジングに、前記付勢部材と前記吸気口との間に配置されて前記付勢部材を覆う非導電性のカバー部材が着脱可能に設けられていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記ハウジングは、第1ハウジングと、前記第1ハウジングに組み付けられる第2ハウジングとからなり、前記カバー部材が前記第1ハウジングに設けられて、前記吸気口は、前記第2ハウジングに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記第1ハウジングが前記モータ及び前記出力部を収容し、前記第2ハウジングがハンドル部を有することを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記ブラシ保持部材は、前記整流子を中心とした回転操作により、前記整流子に対する前記ブラシの位置を、前記回転子の正回転位置と逆回転位置とに切替可能であり、
前記カバー部材は、前記ブラシ保持部材の回転に伴う前記付勢部材の移動範囲を覆うことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電動工具。
【請求項5】
前記出力部は、前記ハウジングの前部に設けられ、前記モータは、前記出力部の後方で前記回転軸を前後方向に向けた姿勢で収容されて、前記ブラシは、前記ブラシ保持部材へ左右に一対配置されて、前記吸気口は、前記ハウジングの左右に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電動工具。
【請求項6】
前記ハウジングに、前記モータから引き出される配線を保持するための配線保持部材が着脱可能に設けられており、前記カバー部材は、前記配線保持部材に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電動工具。
【請求項7】
前記配線保持部材に、保持された前記配線と前記ブラシ及び前記付勢部材との干渉を防止する保護部が設けられており、前記カバー部材は、前記保護部に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記付勢部材は、ゼンマイバネであることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の電動工具。
【請求項9】
前記ハウジングの上面に、第2の吸気口が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電動工具。
【請求項10】
前記出力部は、前記回転軸の回転に伴い、先端工具を保持する最終出力軸を回転させる回転機構と、前記回転軸の回転に伴い、前記先端工具を打撃する打撃機構とを有することを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンマドリル等の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマドリル等の電動工具には、ブラシ付きモータを備えたAC機が知られている。ブラシは、回転子が貫通するリング状のブラシホルダに保持されて、ゼンマイバネ等の金属製の付勢部材によって整流子へ押圧される。
一方、回転子の前部には、ファンが設けられている。回転子の回転に伴いファンが回転すると、ハウジングに設けた吸気口から外気が吸い込まれ、ファンの径方向外側に設けた排気口から排出される空気流が生じる。この空気流によりモータ及びブラシが冷却される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-124291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータ及びブラシの冷却効果を高めるため、吸気口はブラシホルダに近い位置に設けるのが望ましい。しかし、ブラシを付勢する付勢部材が導電性を有していると、吸気口と付勢部材との絶縁距離を確保するために吸気口の位置をブラシホルダの近くから離す必要が生じる。よって、効率的な冷却が行えないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、吸気口と付勢部材との絶縁距離を確保しつつ、モータ及びブラシを効率的に冷却できる電動工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、ハウジング内に、固定子と回転子とを含むモータと、モータの駆動により作動する出力部とが収容されると共に、回転子に備えられた整流子に当接するブラシと、ブラシを整流子側へ付勢する導電性の付勢部材とを有するブラシ保持部材が設けられる一方、
回転子が有する回転軸には、ファンが設けられ、ハウジングには、ファンの回転に伴って外部の空気を吸い込む吸気口と、吸い込まれた空気を排出する排気口とがそれぞれ形成されて、吸気口と排気口との間を流れる空気流の途中にモータが配置されて、空気流における吸気口の下流側にブラシ保持部材が配置される電動工具である。
そして、本開示は、ハウジングに、付勢部材と吸気口との間に配置されて付勢部材を覆う非導電性のカバー部材が着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、カバー部材の採用により、ブラシを付勢する付勢部材が導電性を有していても、吸気口と付勢部材との絶縁距離を確保するために吸気口の位置をずらす必要がなくなる。すなわち、吸気口と付勢部材との絶縁距離を確保しつつ、モータ及びブラシを効率的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ハンマドリルの後方からの斜視図である。
図2】ハンマドリルの背面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB-B線一部断面図である。
図5】後側ハウジングを省略したハンマドリルの一部拡大背面図である(正回転位置)。
図6】後側ハウジングを省略したハンマドリルの斜視図である。
図7】正逆切替ユニット及びリード線ホルダの分解斜視図である。
図8図2のC-C線一部拡大断面図である。
図9】後側ハウジングを省略したハンマドリルの一部拡大背面図である(逆回転位置)。
図10】逆回転位置での図2のC-C線相当の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、ハウジングは、第1ハウジングと、第1ハウジングに組み付けられる第2ハウジングとからなり、カバー部材が第1ハウジングに設けられて、吸気口は、第2ハウジングに設けられているものであってもよい。
この構成によれば、第2ハウジングの組み付け前に第1ハウジングへのカバー部材の組み付けが容易に行える。
本開示の一実施形態において、第1ハウジングがモータ及び出力部を収容し、第2ハウジングがハンドル部を有するものであってもよい。
この構成によれば、出力部の作動で生じる粉塵等がハンドル部側の吸気口から吸い込まれるおそれが低減される。
本開示の一実施形態において、ブラシ保持部材は、整流子を中心とした回転操作により、整流子に対するブラシの位置を、回転子の正回転位置と逆回転位置とに切替可能であり、カバー部材は、ブラシ保持部材の回転に伴う付勢部材の移動範囲を覆うものであってもよい。
この構成によれば、ブラシ保持部材が正逆切替操作されるものであっても、常に吸気口と付勢部材との絶縁距離を確保できる。
【0010】
本開示の一実施形態において、出力部は、ハウジングの前部に設けられ、モータは、出力部の後方で回転軸を前後方向に向けた姿勢で収容されて、ブラシは、ブラシ保持部材へ左右に一対配置されて、吸気口は、ハウジングの左右に設けられているものであってもよい。
この構成によれば、左右のブラシを左右の吸気口から吸い込まれる空気によって効率よく冷却することができる。
本開示の一実施形態において、ハウジングに、モータから引き出される配線を保持するための配線保持部材が着脱可能に設けられており、カバー部材は、配線保持部材に設けられているものであってもよい。
この構成によれば、配線保持部材を利用してハウジングへのカバー部材の着脱が容易に行える。
本開示の一実施形態において、配線保持部材に、保持された配線とブラシ及び付勢部材との干渉を防止する保護部が設けられており、カバー部材は、保護部に設けられているものであってもよい。
この構成によれば、保護部を利用してカバー部材を容易に設けることができる。
【0011】
本開示の一実施形態において、付勢部材は、ゼンマイバネであってもよい。
この構成によれば、常に一定の張力でブラシを整流子に付勢することができる。
本開示の一実施形態において、ハウジングの上面に、第2の吸気口が設けられていてもよい。
この構成によれば、空気流の風量を稼ぐことができる。
本開示の一実施形態において、出力部は、回転軸の回転に伴い、先端工具を保持する最終出力軸を回転させる回転機構と、回転軸の回転に伴い、先端工具を打撃する打撃機構とを有するものであってもよい。
この構成によれば、回転機構と打撃機構とを備えるハンマドリルにおいて、吸気口と付勢部材との絶縁距離を確保しつつ、モータ及びブラシを効率的に冷却できる。
【実施例0012】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、電動工具の一例であるハンマドリルの後方からの斜視図、図2はハンマドリルの背面図、図3はA-A線断面図である。
ハンマドリル1は、ハウジングとして、前側ハウジング2と後側ハウジング3とを有している。前側ハウジング2には、モータ4と、出力部5とが設けられている。後側ハウジング3には、スイッチ6が設けられている。
前側ハウジング2と後側ハウジング3とは、互いに前後方向へ相対移動可能となっている。前側ハウジング2と後側ハウジング3との間には、後述する防振機構7が設けられている。
前側ハウジング2は、本開示の第1ハウジングの一例である。後側ハウジング3は、本開示の第2ハウジングの一例である。
【0013】
前側ハウジング2は、モータハウジング8と、アウタハウジング9と、インナハウジング10とを備えている。モータハウジング8は、樹脂製で、前側の連結部11と、後側のモータ収容部12とを備えている。連結部11は、四角筒状で、アウタハウジング9にネジ止めされている。モータ収容部12は、連結部11よりも小径となる円筒状で、内部にモータ4が収容されている。
モータ4は、固定子13と回転子14とを有している。回転子14は、整流子15と回転軸16とを備えている。モータ4は、回転軸16を前後方向に向けた姿勢でモータ収容部12に収容されている。回転軸16は、連結部11を貫通してインナハウジング10内に突出している。
【0014】
アウタハウジング9は、樹脂製で、前筒部17と後筒部18とを有している。前筒部17は、前方へ延びる横断面円形の筒状である。後筒部18は、前筒部17より大径の筒状である。モータハウジング8の連結部11は、後筒部18に連結される。前筒部17は、後筒部18の上側の偏心位置に配置されている。前筒部17には、サイドハンドル19が取付可能となっている。
出力部5は、ツールホルダ20と、ピストンシリンダ21と、ストライカ22と、インパクトボルト23とを有している。ツールホルダ20は、筒状で、前筒部17内に同軸で収容されて、前筒部17とインナハウジング10とで回転可能に保持されている。ツールホルダ20の前端は、前筒部17から前方へ突出している。ツールホルダ20の前端には、操作スリーブ24が設けられている。操作スリーブ24は、ツールホルダ20の前端でビットBを着脱操作するために設けられる。後筒部18内でツールホルダ20には、ギヤ25が外装されている。
ツールホルダ20は、本開示の最終出力軸の一例である。ビットBは、本開示の先端工具の一例である。
【0015】
ピストンシリンダ21は、前端を開口し、ツールホルダ20の後部で前後移動可能に収容されている。ストライカ22は、ピストンシリンダ21内に空気室26を介して前後移動可能に収容されている。インパクトボルト23は、ストライカ22の前方でツールホルダ20内へ前後移動可能に収容されている。
出力部5において、ツールホルダ20の下方には、ツールホルダ20と平行な中間軸27が回転可能に設けられている。モータ4の回転軸16は、前端に形成したピニオン28を中間軸27の上側に突出させている。
中間軸27は、後部に、ピニオン28と噛合する第1ギヤ29を一体回転可能に備えている。中間軸27は、前部に、第2ギヤ30を別体で回転可能に備えている。第2ギヤ30は、ツールホルダ20のギヤ25と噛合している。第1ギヤ29の前方で中間軸27には、ボススリーブ31が別体で回転可能に外装されている。ボススリーブ31には、軸線を傾けたスワッシュベアリング32を介してアーム33が上向きに保持されている。アーム33の先端は、ピストンシリンダ21の後端に連結されている。
【0016】
ボススリーブ31と第2ギヤ30との間には、2つの第1、第2クラッチ34,35がスプライン結合されている。第1クラッチ34は、後退位置でボススリーブ31に係合する。よって、中間軸27の回転は第1クラッチ34を介してボススリーブ31に伝達される。第1クラッチ34が前進してボススリーブ31から離間すると、中間軸27の回転はボススリーブ31に伝達されなくなる。
第2クラッチ35は、前進位置で第2ギヤ30に係合する。よって、中間軸27の回転は第2クラッチ35を介して第2ギヤ30に伝達され、さらにギヤ25及びツールホルダ20に伝達される。第2クラッチ35が後退して第2ギヤ30から離間すると、中間軸27の回転は第2ギヤ30及びツールホルダ20に伝達されなくなる。
【0017】
中間軸27の下方には、両クラッチ34,35に係止する2枚のプレート36,36が前後移動可能に設けられている。各プレート36の位置は、切替ツマミ37によって変更可能である。切替ツマミ37は、後筒部18の下面へ回転操作可能に設けられている。切替ツマミ37は、上方へ突出する偏心ピン38を備えている。偏心ピン38は、各プレート36に係合している。切替ツマミ37には、第2ギヤ30に係脱可能なロックプレート39が係合している。
よって、切替ツマミ37を回転操作することで偏心ピン38を介して各プレート36の前後位置を切り替えることができる。すなわち、第1、第2クラッチ34,35の前後位置を切り替えることで、ドリルモード、ハンマドリルモード、ニュートラル、ハンマモードを選択することができる。各動作モードについては後述する。
【0018】
後側ハウジング3は、樹脂製で、左右一対の半割ハウジング3a,3bからなる。半割ハウジング3a,3bは、右側からねじ込まれる複数のネジによって組み付けられる。後側ハウジング3は、前側に、モータ収容部12を後方から覆う外筒部40を備えている。外筒部40の前端は、モータハウジング8の連結部11と同じ外形となっている。外筒部40の後部には、下方に延びるハンドル部41が一体に形成されている。スイッチ6は、ハンドル部41内の上部に収容されて、トリガ42を前方へ突出させている。
スイッチ6には、電源コード43が接続されている。電源コード43は、ハンドル部41の下端から引き出されている。
外筒部40の後面左右には、複数の後吸気口44,44・・が形成されている。外筒部40の後部上面には、複数の上吸気口45,45・・が形成されている。連結部11内で回転軸16には、遠心ファンであるファン46が取り付けられている。連結部11の下面及び右側面には、複数の排気口47,47・・がそれぞれ形成されている。
後吸気口44は、本開示の吸気口の一例である。上吸気口45は、本開示の第2の吸気口の一例である。
【0019】
防振機構7は、ゴムスリーブ50とコイルバネ51とを含んでなる。
ゴムスリーブ50は、モータハウジング8の連結部11と、後側ハウジング3の外筒部40との間に介在されている。ゴムスリーブ50は、蛇腹形状の四角筒体で、前端が連結部11の後端面に係合し、後端が外筒部40の前端面に係合している。
ゴムスリーブ50は、前側ハウジング2と後側ハウジング3との間を全周に亘って閉塞し、両ハウジング2,3の前後への相対移動に伴って軸方向に伸縮する。
コイルバネ51は、後側ハウジング3の内部でモータ収容部12と外筒部40との間に介在されている。コイルバネ51は、モータ収容部12の上側に1つ、モータ収容部12の下側で左右に2つ配置されている。モータ収容部12の上面には、左右方向に延びる前受け板52が立設されている。前受け板52の後方で外筒部40の内面には、左右方向に延びる後受け板53が設けられている。上側のコイルバネ51は、前受け板52と後受け板53との間で前後方向に配置されている。
【0020】
モータ収容部12の下側で連結部11の後面には、左右一対の前バネ受け54,54(図5)が設けられている。各前バネ受け54の後方で外筒部40の内面には、左右一対の後バネ受け55,55が形成されている。下側の2つのコイルバネ51,51は、前バネ受け54,54と後バネ受け55,55との間で前後方向に配置されている。
よって、前側ハウジング2と後側ハウジング3とは、ゴムスリーブ50と3つのコイルバネ51とにより、互いに前後へ離反する方向へ付勢されることになる。但し、前側ハウジング2から後側ハウジング3が離れる後退位置では、図3に示すように、前受け板52から前方へ突出する上ストッパ56と、左側の半割ハウジング3aから右側へ突出するネジボス57とが当接する。また、モータ収容部12の下側では、モータ収容部12から下方へ突出する左右方向の後リブ58と、後リブ58の前方で外筒部40の内面から上方へ突出する左右方向の前リブ59とが当接する。よって、後側ハウジング3は、常態では、上ストッパ56とネジボス57とが当接し、後リブ58と前リブ59とが当接する図3の後退位置に付勢される。
【0021】
図4図7にも示すように、モータ収容部12の後側には、軸受保持部60が設けられている。軸受保持部60は、モータ収容部12よりも小径で、前方を開口するキャップ状である。軸受保持部60は、前後方向に延びる上下の腕部61,61によってモータ収容部12の後面と同軸で繋がっている。軸受保持部60は、後側内面で軸受62を保持して回転軸16の後端を支持している。腕部61,61は、回転軸16の軸線を中心とした同心円弧状に形成されている。回転子14の整流子15は、腕部61,61の間で左右に露出している。腕部61,61の後端には、軸受保持部60の後面よりも前側へ凹む一対の段部63,63がそれぞれ形成されている。
【0022】
モータ収容部12の後面には、正逆切替ユニット65が組み付けられている。正逆切替ユニット65は、ユニットベース66とブラシベース67とを備えている。
ユニットベース66は、円盤状で、左右2箇所が後方からモータ収容部12に同軸でネジ止めされている。ユニットベース66は、図7及び図8にも示すように、一対の固定接点68,68を備えている。固定接点68,68は、背面視が円弧状で、ユニットベース66の軸心を中心とした点対称位置に配置されている。
モータ4の固定子13の後部に設けた絶縁体には、背面視で四角形の頂点に位置する4つの端子保持部70,70・・(図8)が形成されている。各端子保持部70には、ターミナル端子71がそれぞれ設けられている。ユニットベース66には、図5,6,7,10に示すように、4つのターミナル端子71と電気的に接続される4つの接続端子72,72・・が設けられている。4つの接続端子72の内、背面視で対角線上に位置する左上と右下との一対の接続端子72,72は、固定接点68,68と一体に形成されている。他の対角線上に位置する左下と右上との一対の接続端子72,72には、後述するリード線81,82がそれぞれ接続されている。
【0023】
ブラシベース67は、ユニットベース66の後面に同軸で回転可能に組み付けられている。ブラシベース67は、短筒状で、点対称位置で直径方向に、一対のブラシホルダ75,75を備えている。各ブラシホルダ75は、カーボンブラシ76をそれぞれ収容している。カーボンブラシ76は、ブラシホルダ75に設けられたゼンマイバネ77によってブラシベース67の軸心側へ付勢されて、腕部61,61の間から整流子15を押圧している。
ブラシベース67は、本開示のブラシ保持部材の一例である。カーボンブラシ76は、本開示のブラシの一例である。ゼンマイバネ77は、本開示の付勢部材の一例である。
ブラシベース67には、一対の可動接点78,78が設けられている。可動接点78,78は、図7に示すように、ブラシベース67に取り付けられる一対の保持ブロック73,73を介してブラシベース67へ一体に保持されて、カーボンブラシ76,76と電気的に接続されている。可動接点78,78は、ユニットベース66の固定接点68,68の同心円上に位置して、ブラシベース67の回転に伴って固定接点68,68に接離可能となっている。
ブラシベース67の上側の周面には、操作突起79が設けられている。操作突起79は、ブラシベース67の外周面でブラシベース67の径方向外側へ突出し、図1に示すように、後側ハウジング3の上面に設けた窓80を貫通して上方へ露出している。
【0024】
よって、正逆切替ユニット65では、操作突起79を介して外部からブラシベース67を回転操作することができる。ブラシベース67の回転により、可動接点78,78を、固定接点68,68に対して接離させて電流が流れる方向を切り替えることで、回転子14の回転方向を切り替えることができる。すなわち、ブラシベース67は、可動接点78,78が固定接点68,68に対して正回転方向で接触する正回転位置と、逆回転方向で接触する逆回転位置と、両回転位置の中間で固定接点68,68に接触しない中立位置とに切替操作可能となっている。図1~6は、操作突起79が窓80の左端に位置する正回転位置を示している。操作突起79を窓80の右端へ倒伏操作すると逆回転位置となり、左右方向の中央に操作すると中立位置となる。
【0025】
図5,6に示すように、固定子13とスイッチ6とは、3本のリード線81,82,83によって電気的に接続されている。このうち2本のリード線81,82は、固定接点68,68が形成されない他の一対の接続端子72,72に接続されてユニットベース66から引き出される。他の1本のリード線83は、固定接点68,68が形成される一方の接続端子(図5での左上の接続端子)72に接続されてモータ収容部12から引き出される。各リード線81~83は、軸受保持部60に組み付けられるリード線ホルダ85を介してモータ収容部12の後側で保持されている。
リード線81~83は、本開示の配線の一例である。
リード線ホルダ85は、樹脂製で、図7に示すように、リング部86と、支持板部87とを有している。
リード線ホルダ85は、本開示の配線保持部材の一例である。
【0026】
リング部86は、軸受保持部60よりも内径が大きいリング状である。リング部86の内周には、腕部61,61の上下の段部63,63にそれぞれ係合する一対の係合片88,88が上下に形成されている。リング部86の左右には、軸受保持部60に嵌合する一対の嵌合片89,89が形成されている。嵌合片89,89は、軸受保持部60に嵌合する前端から後方へ向かうに従って径方向外側へ拡開する円弧板状である。各嵌合片89の前端には、内側へ突出するフック90が全長に亘って形成されている。但し、各嵌合片89の周方向の中央には、前端から後端近くまで切欠形成される通気部89aがそれぞれ設けられている。
フック90は、図4,8に示すように軸受保持部60の前端に前方から係止してリング部86の後方への移動を規制する。嵌合片89,89の下側でリング部86の前面には、後方へ突出する一対の挟持爪91,91が形成されている。
リング部86の上面には、第1保持部92と第2保持部93とが左右に並べて設けられている。第1保持部92は、前後方向に延びて且つ上方に突出する板状である。第1保持部92の上端には、左側へ突出する平面視L字状の第1係止片94が横向きに一体形成されている。
第2保持部93は、第1保持部92の右側で前後方向に延びて且つ上方に突出する板状である。第2保持部93の前端には、上下方向の中央部が前方へ開口する切欠となる側面視倒U字状の第2係止片95が、前向きに一体形成されている。
【0027】
支持板部87は、縦板96と横板97とを有している。縦板96は、第1、第2保持部92,93の前方でリング部86の上部後端から上方へ立ち上がっている。横板97は、縦板96の上端から前方へ延びている。第1保持部92の前方で縦板96には、背面視が四角形状の第1開口部98が形成されている。第2保持部93の前方で縦板96には、背面視が逆L字状の第2開口部99が形成されている。
縦板96の左右には、一対の係止溝100,100が形成されている。係止溝100,100は、縦板96の側縁から左右の中央側へ向かうに従って上向きとなる傾斜状に切り込まれた後、真上方向へ切り込まれている。
横板97の左右方向の中央には、後方へ突出する庇部101が形成されている。庇部101は、第1保持部92及び第2保持部93の上方に非接触で位置している。横板97の前部で左右方向の中央には、前方へ開放する切欠部102が形成されている。
【0028】
リード線ホルダ85の組み付けは、段部63,63に係合片88,88の位置を合わせて、リング部86を後方から軸受保持部60に嵌合させる。すると、嵌合片89,89の間に軸受保持部60が嵌合してフック90,90が軸受保持部60の前端に係止して後方へ抜け止めされる。
このとき横板97は、ブラシベース67よりも上方に位置している。モータ収容部12の上面には、後方へ突出する突部103が形成されている。リード線ホルダ85の組み付け状態で突部103は、横板97の切欠部102の前部に嵌合して切欠部102の前方を閉塞する。ブラシベース67に設けた操作突起79は、突部103の後方で切欠部102を貫通して上方へ突出する。
【0029】
図5,6に示すように、3本のリード線81~83のうち、一点鎖線で示すリード線81は、始端部81aがブラシベース67の外側でユニットベース66から後方へ引き出される。その後、リード線81は、リード線ホルダ85の挟持爪91,91に挟持される。挟持爪91,91に挟持されたリード線81は、弛みを持たせた状態で軸受保持部60の後方を上方へ延びて、中間部81bが第1保持部92の第1係止片94に下方から係止される。第1係止片94に係止した中間部81bは、第1保持部92から右側へ引き出されて第2保持部93の第2係止片95に左側から係止される。第1、第2係止片94,95の前方には縦板96が位置しているが、第1、第2開口部98,99が形成されているため、リード線81の係止は支障なく行える。引き回し後は縦板96によって中間部81bの前方への移動が規制される。
第2係止片95から右側へ引き出されたリード線81は、軸受保持部60の後方を下方へ引き回される。そして、終端部81cがスイッチ6に接続される。すなわち、リード線81は、モータ収容部12の軸線より下方から引き出されて当該軸線より上方で中間部81bがリード線ホルダ85によって左右方向に保持される。その後、リード線81は、再び軸線より下方へ引き回されてスイッチ6に接続されることになる。
【0030】
二点鎖線で示すリード線82は、始端部82aがブラシベース67の外側でユニットベース66から後方へ引き出される。その後、リード線82は、リード線ホルダ85の縦板96の右側の係止溝100に前方から係止される。係止溝100に係止したリード線82は、後方へ引き出された後、中間部82bが弛みを持たせた状態で左側へ引き回される。そして、中間部82bは、第2保持部93の第2係止片95に右側から係止されて第2係止片95の左側へ引き出される。この中間部82bの係止も第2開口部99によって支障なく行え、縦板96によって前方への移動が規制される。
第2係止片95から引き出されたリード線82は、軸受保持部60の後方で下方へ引き回される。そして、終端部82cがスイッチ6に接続される。すなわち、リード線82は、モータ収容部12の軸線より上方で中間部82bがリード線ホルダ85によって左右方向に保持される。その後、リード線82は、軸線より下方へ引き回されてスイッチ6に接続されることになる。
【0031】
三点鎖線で示すリード線83は、始端部83aがユニットベース66の外側でモータ収容部12から後方へ引き出される。その後、リード線83は、縦板96の左側の係止溝100に前方から係止される。係止溝100に係止したリード線83は、後方へ引き出された後、中間部83bが弛みを持たせた状態で右側へ引き回される。そして、中間部83bは、第2保持部93の第2係止片95に左側から係止されて第2係止片95の右側へ引き出される。この中間部83bの係止も第2開口部99によって支障なく行え、縦板96によって前方への移動が規制される。
第2係止片95から右側へ引き出されたリード線83は、軸受保持部60の後方で下方へ引き回される。そして、終端部83cがスイッチ6に接続される。すなわち、リード線83は、モータ収容部12の軸線より上方で中間部83bがリード線ホルダ85によって左右方向に保持される。その後、リード線83は、軸線より下方へ引き回されてスイッチ6に接続されることになる。
【0032】
リング部86の嵌合片89,89には、カバー部105,105がそれぞれ形成されている。各カバー部105は、嵌合片89の後端部から周方向にやや小さい幅で連続形成され、径方向外側へ向かうに従って前方へ延びる横断面円弧板状となっている。
よって、各カバー部105は、図5,6及び図8に示すように、各ゼンマイバネ77を後方及び径方向外側から覆うことになる。
このとき各カバー部105は、左右の後吸気口44とゼンマイバネ77との間に位置して、後吸気口44からゼンマイバネ77が視認できないようになっている。これは、図9及び図10に示すように、正逆切替ユニット65においてブラシベース67が逆回転位置に切り替えられた場合でも同じである。すなわち、各カバー部105は、正回転位置と逆回転位置とに亘るゼンマイバネ77の移動範囲(約45°)全体を後方及び径方向外側から覆うことになる。
カバー部105は、本開示のカバー部材の一例である。
【0033】
以上の如く構成されたハンマドリル1の作動について説明する。
まず、切替ツマミ37をドリルモードに切り替える。すると、第1クラッチ34が前進位置となってボススリーブ31から離れ、第2クラッチ35が前進位置となって第2ギヤ30と係合する。よって、中間軸27の回転は、ボススリーブ31に伝わらない状態となり、第2ギヤ30に伝わる状態となる。
ここでトリガ42を押し込み操作してスイッチ6をONさせると、モータ4が駆動して回転軸16が回転する。すると、第1ギヤ29を介してツールホルダ20が回転し、先端のビットBを回転させる。ボススリーブ31は回転しないため、打撃作動は生じない。
中間軸27、第2クラッチ35、第2ギヤ30、ギヤ25、ツールホルダ20は、本開示の回転機構の一例である。
【0034】
次に、切替ツマミ37をハンマドリルモードに切り替える。すると、第1クラッチ34が後退位置となってボススリーブ31と係合し、第2クラッチ35は前進位置のままとなる。よって、中間軸27の回転は、第1クラッチ34を介してボススリーブ31に伝わる状態となる。
従って、トリガ42を押し込み操作してモータ4が駆動すると、中間軸27を介してツールホルダ20が回転し、先端のビットBを回転させる。これと同時に、ボススリーブ31が回転してアーム33が前後に揺動するため、ピストンシリンダ21が往復動する。よって、ストライカ22が往復動してインパクトボルト23を介してビットBを打撃する。
中間軸27、第1クラッチ34、ボススリーブ31、スワッシュベアリング32、アーム33、ピストンシリンダ21、ストライカ22、インパクトボルト23は、本開示の打撃機構の一例である。
【0035】
次に、切替ツマミ37をハンマモードに切り替える。すると、第1クラッチ34は後退位置のままで、第2クラッチ35が後退位置となって第2ギヤ30から離れる。よって、中間軸27の回転は、ボススリーブ31にのみ伝わる状態となる。
従って、トリガ42を押し込み操作してモータ4が駆動すると、ピストンシリンダ21が往復動し、インパクトボルト23を介してビットBがストライカ22に打撃される。ツールホルダ20は回転しない。
なお、切替ツマミ37をニュートラルに切り替えると、ハンマモードで第2ギヤ30に係合していたロックプレート39が第2ギヤ30から離間する。よって、第2ギヤ30と共にツールホルダ20は回転フリーとなり、ビットBを軸線周りで任意の角度に調整できる。
【0036】
こうして、ハンマドリル1を使用する際、ハンドル部41を把持する作業者の手で後側ハウジング3が前方へ押圧される。すると、後側ハウジング3が防振機構7の各コイルバネ51の付勢に抗して前進する。よって、ネジボス57が上ストッパ56から離間し、前リブ59が後リブ58から離間する。結果、前側ハウジング2の出力部5やモータ収容部12で振動が発生しても、各コイルバネ51によって減衰され、後側ハウジング3へ伝わりにくくなる。このためハンドル部41を保持する作業者の手に伝わる振動が低減され、不快感が生じにくくなる。
このとき、前側ハウジング2の軸受保持部60と、後側ハウジング3のハンドル部41とが相対的に接近することになる。しかし、リード線81~83は、軸受保持部60の後方でリード線ホルダ85によって左右及び上下方向に保持されるため、ハンドル部41と干渉することはない。
【0037】
そして、リード線81~83は、振動発生側のモータ収容部12と、後側ハウジング3内のスイッチ6との間に接続されるため、モータ収容部12からの振動が伝わる。しかし、リード線81~83は、リード線ホルダ85によって中間部81b、82b、83bがそれぞれ左右方向に引き回されて弛みがある状態で保持されている。よって、振動によってリード線81~83が屈曲しにくくなり、損傷や劣化が効果的に抑制される。
また、リード線81~83は、ハンドル部41の左右の内面から離れて軸受保持部60の後面側に保持されているので、リード線ホルダ85とハンドル部41との間でのリード線81~83の挟み込みも防止できる。特に、軸受保持部60の後面側を通るリード線81~83の左右には、嵌合片89,89が位置しているので、リード線81~83が左右に拡がりにくなってブラシホルダ75やゼンマイバネ77等との干渉が防止される。よって、リード線81~83の保護に繋がる。
嵌合片89は、本開示の保護部の一例である。
【0038】
一方、回転軸16と共にファン46が回転すると、図8に点線で示すように、後吸気口44及び上吸気口45から吸い込まれた外気が、外筒部40及びモータ収容部12を通って各排気口47から排出される空気流Rが生じる。よって、空気流Rの途中に位置する正逆切替ユニット65及びモータ4が冷却される。
ここで、左右の後吸気口44の前方に導電性を有するゼンマイバネ77がそれぞれ位置しても、後吸気口44とゼンマイバネ77との間には、リード線ホルダ85に設けたカバー部105が配置されている。よって、後吸気口44とゼンマイバネ77との絶縁距離が確保され、後吸気口44から異物が侵入することがあっても短絡が起こりにくくなる。
なお、こうしてカバー部105,105を設けても、各嵌合片89には通気部89aがそれぞれ形成されているので、後吸気口44から吸い込まれる空気の殆どは、点線矢印aのように通気部89aを通ってモータ4側へ流れ、空気の一部が点線矢印bのようにカバー部105の外側を回り込んでモータ4側へ流れる。よって、整流子15及びカーボンブラシ76へ空気流Rを確実に接触させることができる。これは、図10に示すように、正逆切替ユニット65においてブラシベース67が逆回転位置に切り替えられた場合でも同じである。
【0039】
このように、上記実施例のハンマドリル1は、前側ハウジング2内に、固定子13と回転子14とを含むモータ4と、モータ4の駆動により作動する出力部5とが収容されると共に、回転子14に備えられた整流子15に当接するカーボンブラシ76と、カーボンブラシ76を整流子15側へ付勢する導電性のゼンマイバネ77とを有するブラシベース67が設けられる。
また、回転子14が有する回転軸16には、ファン46が設けられ、後側ハウジング3には、ファン46の回転に伴って外部の空気を吸い込む後吸気口44と、吸い込まれた空気を排出する排気口47とがそれぞれ形成されて、後吸気口44と排気口47との間を流れる空気流Rの途中にモータ4が配置されて、空気流Rにおける後吸気口44の下流側にブラシベース67が配置される。
そして、前側ハウジング2に、ゼンマイバネ77と後吸気口44との間に配置されてゼンマイバネ77を覆う非導電性(ここでは樹脂製)のカバー部105が、リード線ホルダ85と共に着脱可能に設けられている。
この構成によれば、カーボンブラシ76を付勢するゼンマイバネ77が導電性を有していても、後吸気口44とゼンマイバネ77との絶縁距離を確保するために後吸気口44の位置をずらす必要がなくなる。すなわち、後吸気口44とゼンマイバネ77との絶縁距離を確保しつつ、モータ4及びカーボンブラシ76を効率的に冷却できる。
【0040】
ハウジングは、前側ハウジング2と、前側ハウジング2に組み付けられる後側ハウジング3とからなり、カバー部105が前側ハウジング2のモータ収容部12に設けられて、後吸気口44は、後側ハウジング3に設けられている。
よって、後側ハウジング3の組み付け前にモータ収容部12へのカバー部105の組み付けが容易に行える。
前側ハウジング2がモータ4及び出力部5を収容し、後側ハウジング3がハンドル部41を有する。
よって、出力部5の作動で生じる粉塵等がハンドル部41側の後吸気口44から吸い込まれるおそれが低減される。
ブラシベース67は、整流子15を中心とした回転操作により、整流子15に対するカーボンブラシ76の位置を、回転子14の正回転位置と逆回転位置とに切替可能であり、カバー部105は、ブラシベース67の回転に伴うゼンマイバネ77の移動範囲を覆う。
よって、ブラシベース67が正逆切替操作されるものであっても、常に後吸気口44とゼンマイバネ77との絶縁距離を確保できる。
【0041】
出力部5は、前側ハウジング2に設けられ、モータ4は、出力部5の後方で回転軸16を前後方向に向けた姿勢で収容されて、カーボンブラシ76は、ブラシベース67へ左右に一対配置されて、後吸気口44は、後側ハウジング3の左右に設けられている。
よって、左右のカーボンブラシ76を左右の後吸気口44から吸い込まれる空気によって効率よく冷却することができる。
前側ハウジング2に、モータ4から引き出されるリード線81~83を保持するためのリード線ホルダ85が着脱可能に設けられており、カバー部105は、リード線ホルダ85に設けられている。
よって、リード線ホルダ85を利用して前側ハウジング2へのカバー部105の着脱が容易に行える。
リード線ホルダ85に、保持されたリード線81~83とカーボンブラシ76及びゼンマイバネ77との干渉を防止する嵌合片89が設けられており、カバー部105は、嵌合片89に設けられている。
よって、嵌合片89を利用してカバー部105を容易に設けることができる。
【0042】
付勢部材は、ゼンマイバネ77である。
よって、常に一定の張力でカーボンブラシ76を整流子15に付勢することができる。
後側ハウジング3の上面に、上吸気口45が設けられている。
よって、空気流Rの風量を稼ぐことができる。
出力部5は、回転軸16の回転に伴い、ビットBを保持するツールホルダ20を回転させる回転機構と、回転軸16の回転に伴い、ビットBを打撃する打撃機構とを有する。
よって、回転機構と打撃機構とを備えるハンマドリル1において、後吸気口44とゼンマイバネ77との絶縁距離を確保しつつ、モータ4及びカーボンブラシ76を効率的に冷却できる。
【0043】
以下、本開示の変更例について説明する。
カバー部は、上記実施例の形状に限定しない。カバー部は、例えば横断面が円弧状でなくL字状であってもよい。カバー部は、別体の部材として嵌合片に取り付けてもよい。
カバー部は、正回転位置と逆回転位置とのゼンマイバネの移動範囲全体を覆う大きさでなく、正回転位置のゼンマイバネと逆回転位置のゼンマイバネとをそれぞれ覆う位置へ複数設けてもよい。
カバー部は、リード線ホルダの嵌合片に連続形成しなくてもよい。カバー部は、リード線ホルダのリング部に連続形成してもよい。
リード線ホルダの形状も適宜変更できる。例えば、嵌合片の通気部は、形状や大きさを変えてもよい。通気部は、なくてもよい。軸受保持部へのリング部の着脱構造も変更できる。リード線の保持部や係止片の形状も変更できる。リード線で接続される2つの電材は、モータとスイッチとに限らない。2つの電材は、例えばモータとコントローラであってもよい。
カバー部材は、リード線ホルダに設けなくてもよい。カバー部材は、単独で軸受保持部又はモータ収容部に対して着脱可能に設けてもよい。
ブラシベースの形状も適宜変更できる。例えば、操作突起は上側でなく左右何れか横側に設けて、ハウジングの側面に設けた窓から突出させてもよい。
付勢部材は、ゼンマイバネに限らず、板バネやコイルバネも採用できる。
【0044】
ハンマドリルの形態も上記実施例に限定しない。
例えば、防振機構において、コイルバネの数や位置は適宜変更できる。コイルバネ以外の弾性部材も採用できる。但し、防振機構はなくてもよい。よって、ハウジングは、前後に分割されない構造であってもよい。
選択できる動作モードは、3つに限らない。切替ツマミの位置も適宜変更できる。
打撃作動は、ピストンシリンダでなく、固定されたシリンダ内でピストンが往復動する構造であってもよい。インパクトボルトがなく、ストライカが直接ビットを打撃する構造であってもよい。打撃作動は、ボススリーブでなくクランク機構を用いた構造であってもよい。クラッチが1つのみであってもよい。
電動工具は、上記実施例のハンマドリルに限らない。本開示は、電動ハンマ、電動ドリル等の他の電動工具にも採用できる。
【符号の説明】
【0045】
1・・ハンマドリル、2・・前側ハウジング、3・・後側ハウジング、4・・モータ、5・・出力部、6・・スイッチ、7・・防振機構、8・・モータハウジング、9・・アウタハウジング、10・・インナハウジング、11・・連結部、12・・モータ収容部、13・・固定子、14・・回転子、16・・回転軸、17・・前筒部、18・・後筒部、20・・ツールホルダ、40・・外筒部、41・・ハンドル部、44・・後吸気口、45・・上吸気口、46・・ファン、47・・排気口、50・・ゴムスリーブ、51・・コイルバネ、60・・軸受保持部、61・・腕部、65・・正逆切替ユニット、66・・ユニットベース、67・・ブラシベース、75・・ブラシホルダ、76・・カーボンブラシ、77・・ゼンマイバネ、81~83・・リード線、85・・リード線ホルダ、86・・リング部、87・・支持板部、89・・嵌合片、89a・・通気部、105・・カバー部、B・・ビット、R・・空気流。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10