(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025118
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 34/37 20160101AFI20250214BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
A61B34/37
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129606
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 薫
【テーマコード(参考)】
4C130
4C160
【Fターム(参考)】
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA13
4C130AA16
4C130AA23
4C130AA34
4C130AA38
4C130AA42
4C130AA44
4C130AA47
4C130AA48
4C130AA49
4C130AB02
4C130AC05
4C130AD09
4C130BA01
4C130BA04
4C130CA01
4C130CA20
4C160KK03
4C160KK04
(57)【要約】
【課題】シャフトを被覆する素材が剥離することを抑制することが可能な手術器具を提供する。
【解決手段】ロボット手術システム100用の手術器具40aは、エンドエフェクタ43と、エンドエフェクタ43に接続されるリストジョイント45と、リストジョイント45に接続されるシャフト42と、シャフト42の近位端を支持し、ロボットアーム21aに取り付けられるハウジング41と、を備える。シャフト42は、中空の金属シャフト42aと、金属シャフト42aの表面を被覆する熱収縮チューブ42bと、を含む。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット手術システム用の手術器具であって、
エンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタに接続される手首関節部と、
前記手首関節部に接続されるシャフトと、
前記シャフトの近位端を支持し、ロボットアームに取り付けられる取付部と、を備え、
前記シャフトは、中空の金属シャフトと、前記金属シャフトの表面を被覆する熱収縮チューブと、を含む、手術器具。
【請求項2】
前記熱収縮チューブは、前記金属シャフトの長手方向において、前記金属シャフトの90%以上100%以下を被覆している、請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記熱収縮チューブは、絶縁性を有する、請求項2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記金属シャフトは、ステンレスパイプであり、
前記熱収縮チューブは、ポリエチレン系熱収縮チューブまたはフッ素樹脂系熱収縮チューブである、請求項2に記載の手術器具。
【請求項5】
前記熱収縮チューブは、一層構造の熱収縮チューブである、請求項1に記載の手術器具。
【請求項6】
前記熱収縮チューブは、前記金属シャフトの色とは異なる有色である、請求項1に記載の手術器具。
【請求項7】
前記手首関節部は、複数の自由度で関節運動するように構成されている、請求項1に記載の手術器具。
【請求項8】
前記手首関節部は、前記シャフトの長手方向と交差する第1回転軸周りに関節運動する第1関節と、
前記長手方向および前記第1回転軸の両方と交差する第2回転軸周りに関節運動する第2関節と、を含む、請求項1に記載の手術器具。
【請求項9】
前記エンドエフェクタは、開位置と閉位置との間で互いに対して相対移動する第1および第2ジョー部材を備え、
前記シャフトの長手方向に移動することによって前記第1および第2ジョー部材を前記相対移動させるように構成された細長部材を備える、請求項1に記載の手術器具。
【請求項10】
前記第1ジョー部材は、第1電極および前記第1電極から絶縁して設けられた第2電極を含み、前記第2ジョー部材は、前記第1および第2電極に対してグラウンド用電極として機能する第3電極を含む、請求項1に記載の手術器具。
【請求項11】
前記細長部材は、前記第1ジョー部材および/または第2ジョー部材に接続される導電性の第1ロッドと、前記第1ロッドの基端に接続される導電性のワイヤと、前記ワイヤの基端に接続される導電性の第2ロッドと、を備え、
前記ワイヤは、可撓性を有しており、前記手首関節部の内部に配置される、請求項9に記載の手術器具。
【請求項12】
前記ワイヤは、トルクコイルである、請求項11に記載の手術器具。
【請求項13】
前記手首関節部の内部に可撓性を有する樹脂ガイドが設けられており、
前記樹脂ガイドは、前記樹脂ガイドの長手方向中心線を通るように形成され、前記細長部材を導く通路を含む、請求項9に記載の手術器具。
【請求項14】
前記シャフトは、前記樹脂ガイドを位置決めする位置決め部材を含む、請求項13に記載の手術器具。
【請求項15】
前記取付部は、前記ロボットアームの器具取付部に取り付けられており、
前記器具取付部は、第1駆動部材および第2駆動部材を備え、
前記取付部は、前記第1駆動部材から前記エンドエフェクタを駆動するための駆動力を受け取る第1受取部材および前記第2駆動部材から前記手首関節部を駆動するための駆動力を受け取る第2受取部材を備える、請求項1に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波鉗子のようなエネルギーデバイス用の絶縁シャフトが知られている。たとえば、特許文献1には、外周層と内周層とが絶縁性のガラス繊維強化プラスチックで構成されており、中間層が炭素繊維強化プラスチックで構成されているエネルギーデバイス用の絶縁シャフトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された絶縁シャフトのように、ガラス繊維強化プラスチックを使用したシャフトはコストが高くなるという不都合がある。一方、コストを下げるためにエポキシ樹脂でコーティングされた金属シャフトを使用した場合、カニューレ(トロッカ)とシャフトとがこすれた場合に摩擦によりコーティングが剥離する場合がある。この問題点は、ロボットアームにカニューレ(トロッカ)を把持する機構を備えていない外科手術ロボットの場合に顕著になる。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、シャフトを被覆する素材が剥離することを抑制することが可能な手術器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による手術器具は、ロボット手術システム用の手術器具であって、エンドエフェクタと、エンドエフェクタに接続される手首関節部と、手首関節部に接続されるシャフトと、シャフトの近位端を支持し、ロボットアームに取り付けられる取付部と、を備え、シャフトは、中空の金属シャフトの表面を熱収縮チューブで被覆することにより構成されている。
【0007】
この発明の一の局面による手術器具では、上記のように、シャフトは、中空の金属シャフトの表面を熱収縮チューブで被覆することにより構成されている。これにより、低摩擦の熱収縮チューブで金属シャフトの表面を被覆することができるので、カニューレ(トロッカ)とシャフトとがこすれた場合にも、摩擦によりシャフトを被覆する素材(熱収縮チューブ)が剥離することを抑制することができる。この効果は、ロボットアームにカニューレ(トロッカ)を把持する機構を備えていない外科手術ロボットの場合に、特に有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シャフトを被覆する素材が剥離することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態によるロボット手術システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態によるロボット手術システムの制御的な構成を示したブロック図である。
【
図3】一実施形態によるロボットアームにアダプタを介して手術器具が取り付けられた状態を示した斜視図である。
【
図4】一実施形態によるロボットアームにアダプタを介して手術器具が取り付けられる状態を示した分解斜視図である。
【
図5】一実施形態による手術器具を下方から見た斜視図である。
【
図6】一実施形態による手術器具を示した平面図である。
【
図7】一実施形態による手術器具の蓋部を取り外した状態を示した斜視図である。
【
図8】一実施形態による手術器具の蓋部を取り外した状態を示した平面図である。
【
図9】一実施形態による手術器具の蓋部を取り外した状態を示した断面図である。
【
図10】一実施形態によるエンドエフェクタ、リストジョイントおよびシャフトを示した側面図である。
【
図11】一実施形態によるエンドエフェクタ、リストジョイントおよびシャフトを示した断面図である。
【
図12】一実施形態による第1電極、第2電極および第3電極の接続を説明するための第1図である。
【
図13】一実施形態による第1電極、第2電極および第3電極の接続を説明するための第2図である。
【
図14】一実施形態によるエンドエフェクタが閉じた状態を示した側面図である。
【
図15】
図10の矢視C1-C1から視た第3のジョイント部品の横断面図である。
【
図16】一実施形態によるエンドエフェクタおよびロッドを示した分解斜視図である。
【
図17】一実施形態によるロッドを示した側面図である。
【
図18】一実施形態によるロッドを示した断面図である。
【
図19】一実施形態による手術器具のリストジョイント内のガイド部を示した斜視図である。
【
図20】一実施形態による手術器具のリストジョイント内のガイド部を示した断面図である。
【
図21】一実施形態によるメモリ基板および固定部を示した斜視図である。
【
図22】一実施形態によるメモリ基板および固定部を示した断面図である。
【
図23】一実施形態による手術器具のリストジョイントを示した斜視図である。
【
図24】一実施形態による手術器具のリストジョイントを示した分解斜視図である。
【
図25】一実施形態による手術器具のリストジョイントの第1および第4の噛合部を示した断面図である。
【
図26】一実施形態による手術器具のリストジョイントの第2および第3の噛合部を示した断面図である。
【
図27】一実施形態による手術器具のリストジョイントの第1および第4の噛合部を示した拡大図である。
【
図28】一実施形態による手術器具のリストジョイントの第2および第3の噛合部を示した拡大図である。
【
図29】一実施形態による手術器具の回動していない状態のリストジョイントを示した図である。
【
図30】一実施形態による手術器具の角度θ1回動した状態のリストジョイントを示した図である。
【
図31】一実施形態による手術器具の角度θ2回動した状態のリストジョイントを示した図である。
【
図32】一実施形態による手術器具の角度θ3回動した状態のリストジョイントを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(ロボット手術システムの構成)
図1および
図2を参照して、一実施形態によるロボット手術システム100の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、ロボット手術システム100は、遠隔操作装置10と、患者側装置20と、を備えている。遠隔操作装置10は、患者側装置20に設けられた医療器具(medical equipment)を遠隔操作するために設けられている。患者側装置20によって実行されるべき動作態様指令が術者(surgeon)である操作者により遠隔操作装置10に入力されると、遠隔操作装置10は、動作態様指令をコントローラ24を介して患者側装置20に送信する。そして、患者側装置20は、遠隔操作装置10から送信された動作態様指令に応答して、ロボットアーム21aに取り付けられた手術器具(surgical instrument)40、および、ロボットアーム21bに取り付けられた内視鏡40b等の医療器具を操作する。これにより、低侵襲手術が行われる。
【0013】
患者側装置20は、患者Pに対して手術を行うインターフェイスを構成する。患者側装置20は、患者Pが横たわる手術台30の傍らに配置される。患者側装置20は、複数のロボットアーム21a、21bを有し、このうち1つのロボットアーム21bに内視鏡40bが取り付けられ、その他のロボットアーム21aに手術器具40aが取り付けられる。各ロボットアーム21a、21bは、アームベース22に共通に支持されている。複数のロボットアーム21a、21bは複数の関節を有し、それぞれの関節には、サーボモータを含む駆動部と、エンコーダ等の位置検出器とが設けられている。ロボットアーム21a、21bは、コントローラ24を介して与えられた駆動信号によりロボットアーム21a、21bに取り付けられた医療器具が所望の動作を行うように制御されるように構成されている。
【0014】
アームベース22は、手術室の床の上に載置されたポジショナ23に支持されている。ポジショナ23は、垂直多関節ロボットを含んでいる。ポジショナ23は、アームベース22の位置を3次元的に移動させるように構成されている。コントローラ24は、CPU等の演算器と、ROMおよびRAM等のメモリとを有する制御回路である。
【0015】
ロボットアーム21aには、先端部に医療器具としての手術器具40aが着脱可能に取り付けられる。手術器具40aは、ハウジング41(
図3参照)と、シャフト42(
図3参照)と、エンドエフェクタ43(
図3参照)とを備えている。エンドエフェクタ43として、たとえば、鉗子が挙げられるがこれに限られるものではなく、各種の処置具を適用することができる。患者側装置20を用いた手術において、ロボットアーム21aは、患者Pの体表に留置したカニューラ(トロッカ)を介して患者Pの体内に手術器具40aを導入する。そして、手術器具40aのエンドエフェクタ43は、手術部位の近傍に配置される。
【0016】
ロボットアーム21bには、先端部に医療器具としての内視鏡40bが着脱可能に取り付けられる。内視鏡40bは、患者Pの体腔内を撮影するものであり、撮影した画像は、遠隔操作装置10に対して出力される。内視鏡40bとして、3次元画像を撮影することができる3D内視鏡または2D内視鏡が用いられる。患者側装置20を用いた手術において、ロボットアーム21bは、患者Pの体表に留置したトロッカを介して患者Pの体内に内視鏡40bを導入する。そして、内視鏡40bが手術部位の近傍に配置される。
【0017】
遠隔操作装置10は、操作者とのインターフェイスを構成する。遠隔操作装置10は、ロボットアーム21a、21bに取り付けられた医療器具を操作者が操作するための装置である。すなわち、遠隔操作装置10は、操作者によって入力された手術器具40aおよび内視鏡40bによって実行されるべき動作態様指令をコントローラ24を介して患者側装置20へ送信可能に構成されている。遠隔操作装置10は、たとえば、マスタの操作をしながらも患者Pの様子がよく見えるように手術台30の傍らに設置される。なお、遠隔操作装置10は、手術台30が設置された手術室とは別室に設置することも可能である。
【0018】
手術器具40aによって実行されるべき動作態様とは、手術器具40aの動作(一連の位置及び姿勢)及び手術器具40a個別の機能によって実現される動作の態様である。たとえば、手術器具40aがベッセルシーラーである場合には、手術器具40aによって実行されるべき動作態様とは、エンドエフェクタ43の手首のピッチ回転動作およびヨー回転動作と、ジョーの開閉を行う動作と、エンドエフェクタ43に凝固電流を供給することにより組織を凝固する動作と、エンドエフェクタ43に切断電流を供給することにより組織を切開する動作である。
【0019】
内視鏡40bによって実行されるべき動作態様とは、たとえば、内視鏡40b先端の位置及び姿勢、又はズーム倍率の設定である。
【0020】
遠隔操作装置10は、
図1および
図2に示すように、操作ハンドル11と、操作ペダル部12と、表示部13と、制御装置14と、を備えている。
【0021】
操作ハンドル11は、ロボットアーム21aに取り付けられた医療器具を遠隔で操作するために設けられている。具体的には、操作ハンドル11は、医療器具(手術器具40a、内視鏡40b)を操作するための操作者による操作を受け付ける。操作ハンドル11は、水平方向に沿って2つ設けられている。つまり、2つの操作ハンドル11のうち一方の操作ハンドル11は、操作者の右手により操作され、2つの操作ハンドル11のうち他方の操作ハンドル11は、操作者の左手により操作される。
【0022】
また、操作ハンドル11は、遠隔操作装置10の後方側から、前方側に向かって延びるように配置されている。操作ハンドル11は、所定の3次元の操作領域内で動かすことができるように構成されている。すなわち、操作ハンドル11は、上下方向、左右方向、前後方向、および回転して動かすことができるように構成されている。
【0023】
遠隔操作装置10と患者側装置20とは、ロボットアーム21a、21bの動作の制御においては、マスタスレーブ型のシステムを構成する。すなわち、操作ハンドル11は、マスタスレーブ型のシステムにおけるマスタ側の操作部を構成し、医療器具が取り付けられたロボットアーム21a、21bはスレーブ側の動作部を構成する。そして、操作ハンドル11を操作者が操作すると、操作ハンドル11の動きをロボットアーム21aの先端部(手術器具40aのエンドエフェクタ43)またはロボットアーム21bの先端部(内視鏡40b)がトレースして移動するようにロボットアーム21aまたはロボットアーム21bの動作が制御される。
【0024】
また、患者側装置20は、設定された動作倍率に応じてロボットアーム21aの動作を制御するよう構成されている。たとえば、動作倍率が1/2倍に設定されている場合、手術器具40aのエンドエフェクタ43は、操作ハンドル11の移動距離の1/2の移動距離を移動するよう制御される。これによって、精細な手術を精確に行うことができる。
【0025】
操作ペダル部12は、医療器具に関する機能を実行するための複数のペダルを含んでいる。複数のペダルは、凝固ペダルと、切断ペダルと、カメラペダルと、クラッチペダルと、を含んでいる。また、複数のペダルは、操作者の足により操作される。
【0026】
凝固ペダルは、手術器具40aを用いて手術部位を凝固させる操作を行うことができる。具体的には、凝固ペダルは、操作されることにより、手術器具40aに凝固用の電流が供給されて、手術部位の凝固が行われる。切断ペダルは、手術器具40aを用いて手術部位を切断させる操作を行うことができる。具体的には、切断ペダルは、操作されることにより、手術器具40aに切断用の電流が供給されて、手術部位の切断が行われる。
【0027】
カメラペダルは、体腔内を撮像する内視鏡40bの位置及び姿勢を操作するために用いられる。具体的には、カメラペダルは、内視鏡40bの操作ハンドル11による操作を有効にする。つまり、カメラペダルが押されている間は、操作ハンドル11により内視鏡40bの位置および姿勢を操作することが可能である。たとえば、内視鏡40bは、左右の操作ハンドル11の両方を用いることにより操作される。具体的には、左右の操作ハンドル11の中間点を中心に左右の操作ハンドル11を回動させることにより、内視鏡40bが回動される。また、左右の操作ハンドル11を共に押し込むことにより、内視鏡40bが奥に進む。また、左右の操作ハンドル11を共に引っ張ることにより、内視鏡40bが手前に戻る。また、左右の操作ハンドル11を共に上下左右に移動させることにより、内視鏡40bが上下左右に移動する。
【0028】
クラッチペダルは、ロボットアーム21aと、操作ハンドル11との操作接続を一時切断し手術器具40aの動作を停止させる場合に用いられる。具体的には、クラッチペダルが操作されている間は、操作ハンドル11を操作しても、患者側装置20のロボットアーム21aが動作しない。たとえば、操作により操作ハンドル11が移動可能な範囲の端部近傍に来た場合に、クラッチペダルが操作されることにより、操作接続を一時切断して、操作ハンドル11を中央位置付近に戻すことができる。そして、クラッチペダルの操作を中止するとロボットアーム21aと操作ハンドル11とが再び接続され、中央付近で操作ハンドル11の操作を再開することができる。
【0029】
表示部13は、内視鏡40bが撮像した画像を表示することができるものである。表示部13は、スコープ型表示部または非スコープ型表示部からなる(
図1では、スコープ型表示部を示す)。スコープ型表示部とは、たとえば、覗き込むタイプの表示部である。また、非スコープ型表示部とは、通常のパーソナルコンピュータのディスプレイのような覗き込むタイプではない平坦な画面を有する開放型の表示部を含む概念である。
【0030】
スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置20のロボットアーム21bに取り付けられた内視鏡40bにより撮像された3D画像が表示される。非スコープ型表示部が取り付けられた場合にも、患者側装置20に設けられた内視鏡40bにより撮像された3D画像が表示される。なお、非スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置20に設けられた内視鏡40bにより撮像された2D画像が表示されてもよい。
【0031】
図2に示すように、制御装置14は、たとえば、CPU等の演算器を有する制御部141と、ROMおよびRAM等のメモリを有する記憶部142と、画像制御部143とを含んでいる。制御装置14は、集中制御する単独の制御装置により構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御装置により構成されてもよい。制御部141は、操作ハンドル11により入力された動作態様指令を、操作ペダル部12の切替状態に応じて、ロボットアーム21aによって実行されるべき動作態様指令であるか、または、内視鏡40bによって実行されるべき動作態様指令であるかを判定する。そして、制御部141は、操作ハンドル11に入力された動作態様指令が手術器具40aによって実行されるべき動作態様指令であると判断すると、コントローラ24を介してロボットアーム21aに対して動作態様指令を送信する。これによって、コントローラ24により、ロボットアーム21aが駆動され、この駆動によってロボットアーム21aに取り付けられた手術器具40aの動作が制御される。
【0032】
また、制御部141は、操作ハンドル11に入力された動作態様指令が内視鏡40bによって実行されるべき動作態様指令であると判定すると、コントローラ24を介してロボットアーム21bに対して動作態様指令を送信する。これによって、ロボットアーム21bが駆動され、この駆動によってロボットアーム21bに取り付けられた内視鏡40bの動作が制御される。
【0033】
記憶部142には、たとえば、手術器具40aの種類に応じた制御プログラムが記憶されていて、取り付けられた手術器具40aの種類に応じて制御部141がこれらの制御プログラムを読み出すことにより、遠隔操作装置10の操作ハンドル11及び/又は操作ペダル部12の動作指令が個別の手術器具40aに適合した動作をさせることができる。
【0034】
画像制御部143は、内視鏡40bが取得した画像を表示部13に伝送する。画像制御部143は、必要に応じて画像の加工修正処理を行う。
【0035】
(手術器具、アダプタ、ドレープおよびロボットアームの構成)
次に、
図3~
図5を参照して、手術器具40a、アダプタ60、ドレープ70およびロボットアーム21aの構成について説明する。
【0036】
ここで、手術器具40aの長手方向(シャフト42の長手方向)をY方向とし、Y方向のうち手術器具40aの先端側方向(エンドエフェクタ43側方向)をY1方向とし、Y1方向の反対側をY2方向とする。手術器具40aとアダプタ60とが隣接する方向をZ方向とし、Z方向のうち手術器具40a側をZ1方向とし、Z1方向の反対側をZ2方向とする。また、Y方向およびZ方向に直交する方向をX方向とし、X方向のうち一方側をX1方向とし、X方向のうち他方側をX2方向とする。
【0037】
図3および
図4に示すように、手術器具40aは、ロボット手術システム100のロボットアーム21aに取り外し可能に取り付けられる。具体的には、手術器具40aは、ロボットアーム21aにアダプタ60を介して取り外し可能に取り付けられる。アダプタ60は、ロボットアーム21aを覆うための滅菌処理されたドレープ70をロボットアーム21aとの間に挟み込むためのドレープアダプタである。
【0038】
手術器具40aは、アダプタ60のZ1方向側に取り付けられる。アダプタ60は、ロボットアーム21aのZ1方向側に取り付けられる。
【0039】
ロボットアーム21aは、清潔区域において使用されるため、ドレープ70により覆われる。ここで、手術室では、手術により切開した部分および医療機器が病原菌や異物などにより汚染されることを防ぐため、清潔操作が行われる。この清潔操作においては、清潔区域および清潔区域以外の区域である汚染区域が設定される。手術部位は、清潔区域に配置される。操作者を含む手術チームのメンバーは、手術中、清潔区域に殺菌されている物体のみが位置するよう配慮し、かつ、汚染区域に位置している物体を清潔区域に移動させるときは、この物体に滅菌処理を施す。同様に、操作者を含む手術チームの補助者がその手を汚染区域に位置させたときは、清潔区域に位置している物体に直接接触する前に、手の滅菌処理を行う。清潔区域において用いられる器具は、滅菌処理が行われる、または、滅菌処理されたドレープ70により覆われる。
【0040】
図4に示すように、ドレープ70は、ロボットアーム21aを覆う本体部71と、ロボットアーム21aとアダプタ60との間に挟み込まれる取付部72とを備えている。本体部71は、フィルム状に形成された可撓性フィルム部材により構成されている。可撓性フィルム部材は、熱可塑性ポリウレタンやポリエチレンなどの樹脂材料からなる。本体部71には、ロボットアーム21aとアダプタ60とが互いに係合可能なように、開口部が設けられている。本体部71の開口部には、取付部72が設けられている。取付部72は、樹脂成形部材により構成されている。樹脂成形部材は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料からなる。取付部72は、本体部71に比べて硬く(撓みにくく)形成されている。取付部72は、ロボットアーム21aとアダプタ60とが互いに係合可能なように、開口部が設けられている。取付部72の開口部は、ロボットアーム21aとアダプタ60との係合する部分に対応するように設けられていてもよい。また、取付部72の開口部は、ロボットアーム21aとアダプタ60との複数の係合する部分に対応するように複数設けられていてもよい。
【0041】
図5および
図7に示すように、手術器具40aは、複数(4個)の駆動軸44a、44b、44cおよび44dを備えている。複数の駆動軸44a~44dは、ハウジング41内に設けられ、Z方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。複数の駆動軸44a~44dは、ロボットアーム21aに設けられた駆動部213のモータからの駆動力により回転駆動する。複数の駆動軸44a~44dは、シャフト42、エンドエフェクタ43および後述するリストジョイント45を操作(駆動)するために設けられている。
【0042】
複数の駆動軸44a~44dの各々は、ロボットアーム21aからの駆動力をシャフト42、エンドエフェクタ43およびリストジョイント45に伝達させるために、アダプタ60の駆動伝達部材61と係合する受取部材442を含んでいる。受取部材442には、駆動伝達部材61に形成された凹部と係合する突起441が設けられており、突起441は、駆動軸44a~44dのZ2方向側の表面からアダプタ60側(Z2方向側)に向かって突出している。また、突起441は、直線状に複数並んでいる。なお、駆動軸44dの受取部材442は、特許請求の範囲の「第1受取部材」の一例である。また、駆動軸44bおよび44cの受取部材442は、特許請求の範囲の「第2受取部材」の一例である。
【0043】
図4に示すように、アダプタ60は、駆動伝達部材61を備えている。駆動伝達部材61は、ロボットアーム21aからの駆動力を手術器具40aの複数の駆動軸44a~44dに伝達するように構成されている。つまり、駆動伝達部材61は、手術器具40aの複数の駆動軸44a~44dに対応するように複数設けられている。駆動伝達部材61は、Z方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に設けられている。
【0044】
複数の駆動伝達部材61は、手術器具40aの複数の駆動軸44a~44dの突起441と係合する係合凹部611を含んでいる。係合凹部611は、駆動伝達部材61の手術器具40a側(Z1方向側)に設けられているとともに、駆動伝達部材61のZ1方向側の表面から手術器具40a側とは反対側(Z2方向側)に向かって窪んでいる。複数の駆動伝達部材61は、Z2方向側の面に、ロボットアーム21aの後述する駆動部材214a~214dの係合凸部と係合する係合凹部を含んでいる。
【0045】
ロボットアーム21aは、フレーム211と、器具取付部212とを備えている。器具取付部212は、駆動部213と、複数の駆動部材214a~214dとを含んでいる。駆動部213は、手術器具40aの複数の駆動軸44a~44dおよびアダプタ60の複数の駆動伝達部材61に対応するように複数(4つ)設けられている。駆動部213は、アブソリュートエンコーダと、サーボモータを含み、対応する駆動部材をZ方向に延びる回転軸線回りに回転駆動するように構成されている。複数の駆動部材214a~214dの各々は、複数の駆動軸44a~44dと対応しておりは、駆動伝達部材61のZ2方向側の面の係合凹部と係合する係合凸部を有している。係合凸部は、ロボットアーム21aのZ1方向側の表面からZ1方向側(アダプタ60側)に向かって突出している。駆動部213は、複数の駆動部材214a~214dと係合したアダプタ60の駆動伝達部材61をZ方向に延びる回転軸線回りに回転駆動させるとともに、駆動伝達部材61と係合した手術器具40aの駆動軸44a~44dをZ方向に延びる回転軸線回りに回転駆動させるように構成されている。駆動部材214dは、特許請求の範囲の「第1駆動部材」の一例である。また、駆動部材214bおよび214cは、特許請求の範囲の「第2駆動部材」の一例である。
【0046】
駆動軸44dは、駆動部材214dからエンドエフェクタ43を駆動するための駆動力を受け取る。また、駆動軸44bおよび44cは、駆動部材214bおよび214cからリストジョイント45を駆動するための駆動力を受け取る。これにより、エンドエフェクタ43およびリストジョイント45を容易に駆動することができる。また、駆動軸44aは、駆動部材214aからシャフト42を駆動するための駆動力を受け取る。
【0047】
(手術器具の詳細な構成)
次に、
図6~
図32を参照して、手術器具40aの詳細な構成について説明する。
【0048】
図6~
図32に示すように、手術器具40aは、ハウジング41と、シャフト42と、エンドエフェクタ43と、複数の駆動軸44a~44dとを備えている。また、手術器具40aは、リストジョイント45と、ワイヤ46と、ロッド47と、レバー48と、駆動力伝達部49と、保持部材50と、ばね部材51と、を備えている。なお、ハウジング41は、特許請求の範囲の「取付部」の一例である。また、リストジョイント45は、特許請求の範囲の「手首関節部」の一例である。また、ロッド47は、特許請求の範囲の「細長部材」の一例である。
【0049】
図6に示すように、ハウジング41は、シャフト42の近位端側(Y2方向側)に配置されている。また、ハウジング41は、ロボットアーム21aの器具取付部212に取り付けられる。
図7に示すように、ハウジング41は、ベース411と、蓋部412(
図4参照)とを有している。ベース411は、アダプタ60を介してロボットアーム21a(
図4参照)に取り付けられる。ベース411には、複数の駆動軸44a~44dが設けられている。蓋部412は、ベース411を覆う。具体的には、蓋部412は、ベース411のロボットアーム21aへの取付面とは反対側(Z1方向側)からベース411を覆う。蓋部412は、ベース411に取り外し可能に取り付けられている。
【0050】
シャフト42は、Y方向に延びるように設けられている。シャフト42の近位端(Y2方向側の端部)は、ベース411に接続されている。シャフト42の遠位端(Y1方向側の端部)には、リストジョイント45が接続されている。
【0051】
図11に示すように、シャフト42は、中空の金属シャフト42aと、金属シャフト42aの表面を被覆する熱収縮チューブ42bとを含んでいる。これにより、低摩擦の熱収縮チューブ42bで金属シャフト42aの表面を被覆することができるので、カニューレ(トロッカ)とシャフト42とがこすれた場合にも、摩擦によりシャフト42を被覆する素材(熱収縮チューブ42b)が剥離することを抑制することができる。この効果は、本実施形態のようにロボットアーム21aにカニューレ(トロッカ)を把持する機構を備えていない外科手術ロボットの場合に、特に有効である。熱収縮チューブ42bは、加熱されて収縮することにより、金属シャフト42aの表面を被覆している。
【0052】
熱収縮チューブ42bは、金属シャフト42aの長手方向(Y方向)において、金属シャフト42aの90%以上100%以下を被覆している。これにより、金属シャフト42aの広範囲を熱収縮チューブ42bにより被覆する場合に、シャフト42を被覆する素材(熱収縮チューブ42b)が剥離することを効果的に抑制することができる。好ましくは、熱収縮チューブ42bは、金属シャフト42aの長手方向において、金属シャフト42aの95%以上99%以下を被覆している。
【0053】
たとえば、
図6に示すように、金属シャフト42aは、Y方向において、長さL1を有している。また、熱収縮チューブ42bは、Y方向において、長さL2を有している。そして、0.90L1≦L2≦L1である。好ましくは、0.95L1≦L2≦0.99L1である。金属シャフト42aの熱収縮チューブ42bに被覆されない部分が存在する場合、金属シャフト42aの熱収縮チューブ42bに被覆されない部分は、金属シャフト42aの遠位端側に設けられている。
【0054】
また、熱収縮チューブ42bは、絶縁性を有している。これにより、金属シャフト42aの表面を絶縁性のコーティング(熱収縮チューブ42b)により被覆することができる。この効果は、本実施形態のように手術器具40aが電気手術器具である場合、金属シャフト42aに絶縁性が求められることから、特に有効である。
【0055】
また、金属シャフト42aは、ステンレスパイプである。熱収縮チューブ42bは、ポリエチレン系熱収縮チューブまたはフッ素樹脂系熱収縮チューブである。これにより、金属シャフト42aが高強度のステンレスパイプであるため、シャフト42に高い強度を確保することができる。また、熱収縮チューブ42bが低摩擦のポリエチレン系熱収縮チューブまたはフッ素樹脂系熱収縮チューブであるため、カニューレ(トロッカ)とシャフト42とのこすれに起因してシャフト42を被覆する素材(熱収縮チューブ42b)が剥離することを抑制することができる。
【0056】
また、熱収縮チューブ42bは、一層構造の熱収縮チューブ42bである。これにより、二層構造の熱収縮チューブ42bを用いる場合に比べて、熱収縮チューブ42bの構造を簡素にすることができる。
【0057】
また、熱収縮チューブ42bは、黒色である。これにより、シャフト42における内視鏡40bの照明光の反射を抑制することができるので、ハレーションの発生を抑制することができる。
【0058】
図7に示すように、エンドエフェクタ43は、リストジョイント45の遠位端に接続されている。エンドエフェクタ43は、開位置と閉位置との間で互いに相対移動する第1ジョー431および第2ジョー432を有している。また、第1ジョー431および第2ジョー432は、各々、導体を含んでいる。たとえば、第1ジョー431および第2ジョー432は、導体であるステンレスにより形成されている。また、第1ジョー431および第2ジョー432は、互いに導通しないように絶縁されている。なお、第1ジョー431および第2ジョー432は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1ジョー部材」および「第2ジョー部材」の一例である。
【0059】
図10、
図11および
図16に示すように、第1ジョー431は、第1電極81および第1電極81から絶縁して設けられた第2電極82を含んでいる。また、第2ジョー432は、第3電極83を含んでいる。たとえば、第3電極83は、第1電極81および第2電極82に対してグラウンド用電極として機能する。これにより、第1ジョー431および第2ジョー432の間で、第1電極81および第3電極83、または、第2電極82および第3電極83により、電気的作用を働かせることができる。たとえば、第1電極81は、凝固電極であり、第2電極82は、切断電極である。これにより、第1電極81および第3電極83により、患者Pの手術部位を凝固することができるとともに、第2電極82および第3電極83により、患者Pの手術部位を切断することができる。
【0060】
第1電極81は、第2電極82を挟み込むように第2電極82の幅方向両側に設けられている。
【0061】
第1ジョー431の第2ジョー432との非対向部の外表面は、電気絶縁性材料で被覆されている。また、第2ジョー432の第1ジョー431との非対向部の外表面は、電気絶縁性材料で被覆されている。また、リストジョイント45の外表面は、電気絶縁性材料で被覆されている。これにより、第1ジョー431および第2ジョー432の非対向部の外表面が外部に露出するのを抑制することができるので、第1ジョー431および第2ジョー432の非対向部の外表面を介して放電されるのを抑制することができる。また、リストジョイント45の外表面が外部に露出するのを抑制することができるので、リストジョイント45の外表面を介して放電されるのを抑制することができる。
【0062】
図7~
図9に示すように、複数の駆動軸44a~44dは、シャフト42をY方向の軸線周りにロール回転させる第1の駆動軸44aと、リストジョイント45をY方向と直交する第1方向(
図7ではX方向)周りにピッチ関節運動させるとともに、リストジョイント45をY方向および第1方向に直交する第2方向(
図7ではZ方向)周りにヨー関節運動させる第2の駆動軸44bおよび第3の駆動軸44cと、ロッド47をY方向に移動させる第4の駆動軸44dとを有している。
【0063】
第1の駆動軸44aは、シャフト42の近位端に接続されるギア422に接続されている。第1の駆動軸44aが回転駆動されることにより、ギア422を介してシャフト42がロール回転される。第2の駆動軸44bおよび第3の駆動軸44cは、リストジョイント45に接続されるワイヤ46に接続されている。第2の駆動軸44bおよび第3の駆動軸44cが回転駆動されることにより、ワイヤ46を介してリストジョイント45がピッチまたはヨー関節運動される。なお、第4の駆動軸44dによるロッド47のY方向への移動については、後述する。
【0064】
図7、
図10および
図11に示すように、リストジョイント45は、シャフト42の遠位端側(Y1方向側)に接続され、関節運動することが可能なように構成されている。また、リストジョイント45は、導体を含んでいる。たとえば、リストジョイント45は、導体であるステンレスにより形成されている。具体的には、リストジョイント45は、第1のジョイント部品451と、第2のジョイント部品452と、第3のジョイント部品453とを有している。第1のジョイント部品451は、シャフト42の遠位端側(Y1方向側)に接続されている。第2のジョイント部品452は、第1のジョイント部品451の遠位端側(Y1方向側)に配置され、ヨー関節運動することが可能なように、第1のジョイント部品451に噛み合っている。第3のジョイント部品453は、第2のジョイント部品452の遠位端側に配置され、ピッチ関節運動することが可能なように、第2のジョイント部品452に噛み合っている。リストジョイント45の噛み合いの詳細については、後述する。
【0065】
リストジョイント45は、複数の自由度で関節運動するように構成されている。これにより、リストジョイント45が複数の自由度で関節運動することができるので、エンドエフェクタをより自由に移動させることができる。具体的には、リストジョイント45は、導体を含む後述する接続部45cを含む第3のジョイント部品453と第2のジョイント部品452との間に第1関節45aを含み、第2のジョイント部品452と第1のジョイント部品451との間に第2関節45bを含んでいる。これにより、第1関節45aと第2関節45bとの2つの関節の各々で関節運動することができるので、1つの関節のみが設けられている場合に比べて、エンドエフェクタ43をより自由に移動させることができる。第1関節45aは、シャフト42の長手方向(Y方向)と交差する回動軸線A2周りに関節運動するように構成されている。第1関節45aは、ピッチ方向の自由度で関節運動するように構成されている。また、第2関節45bは、シャフト42の長手方向(Y方向)および回動軸線A2の両方と交差する回動軸線A1周りに関節運動するように構成されている。第2関節45bは、ヨー方向の自由度で関節運動するように構成されている。また、ピッチ方向の自由度は、シャフト42の長手方向軸線(Y方向軸線)に対して直交する方向の自由度であり、ヨー方向の自由度は、長手方向軸線およびピッチ方向に対して直交する方向の自由度である。これにより、第1関節45aおよび第2関節45bが互いに直交するピッチ方向およびヨー方向の自由度で関節運動することができるので、2つの関節が同じ方向の自由度で関節運動する場合に比べて、エンドエフェクタ43をより自由に移動させることができる。
【0066】
図14に示すように、第1ジョー431および第2ジョー432の回転軸(後述する支持軸431a)が設けられた部分のエンドエフェクタ43の直径D1は、リストジョイント45の長手方向(Y方向)における中央部の直径D2およびシャフト42の中央部の直径D3よりも小さい。これにより、シャフト42の中央部の直径D3を、強度を維持可能な直径にしながら、リストジョイント45以降のエンドエフェクタ43の直径D1を細径化することができるので、エンドエフェクタ43、リストジョイント45およびシャフト42を同じ細い直径とする場合と異なり、強度を維持しながらエンドエフェクタ43を細径化することができる。また、リストジョイント45のない腹腔鏡手術用の手術器具に比べて構造が複雑なリストジョイント45を有するロボット手術システム用の手術器具40aであっても、強度を維持しながらエンドエフェクタ43を細径化することができる。なお、直径D2は、直径D3と略同じである。また、直径D1は、第1ジョー431および第2ジョー432が閉じた状態の直径である。
【0067】
直径D1は、直径D2および直径D3の1/2(4/8)よりも大きく、3/4(6/8)よりも小さい。これにより、直径D1が直径D2および直径D3の1/2よりも大きいため、直径D1が過度に小さくなることを抑制することができる。また、直径D1が直径D2および直径D3の3/4よりも小さいため、直径D1が過度に大きくなることを抑制することができる。その結果、エンドエフェクタ43を適切な直径にすることができる。直径D1は、特に限定されないが、たとえば、直径D2および直径D3の5/8である。
【0068】
また、直径D1は、4mm以上6mm以下である。また、直径D2および直径D3は、7mm以上9mm以下である。これにより、エンドエフェクタ43、リストジョイント45およびシャフト42を適切な直径にすることができる。直径D1は、特に限定されないが、たとえば、5mmである。また、直径D2および直径D3は、特に限定されないが、たとえば、8mmである。
【0069】
また、リストジョイント45のエンドエフェクタ43との接続部45cの遠位端の直径D4は、直径D2およびD3よりも小さい。これにより、リストジョイント45のエンドエフェクタ43との接続部45cの遠位端の直径D4をエンドエフェクタ43の直径D1と合わせることができるので、エンドエフェクタ43とリストジョイント45とを容易に接続することができる。接続部45cは、第3のジョイント部品453に設けられている。
【0070】
リストジョイント45の接続部45cは、遠位端が直径D4を有し、近位端が直径D2を有する。これにより、リストジョイント45の接続部45cにおいて直径D2から直径D4に細径化することができるので、容易に、強度を維持しながらエンドエフェクタ43を細径化することができる。リストジョイント45の接続部45cは、直径D2の近位端から直径D4の遠位端に向かうにつれて徐々に先細る形状を有している。これにより、リストジョイント45の接続部45cにおいて直径D2から直径D4に変化する段差を設ける場合と異なり、リストジョイント45の接続部45cにおいて直径D2から直径D4に滑らかに細径化することができる。また、接続部45cの直径D4は、直径D1と略同じである。これにより、接続部45cの直径D4をエンドエフェクタ43の直径D1と略同じにすることができるので、エンドエフェクタ43とリストジョイント45とをより容易に接続することができる。
【0071】
ワイヤ46は、リストジョイント45を駆動するために設けられている。ワイヤ46は、リストジョイント45をピッチ関節運動とヨー関節運動させる。ワイヤ46は、シャフト42の内部にY方向に延びるように4本設けられている。4本のワイヤ46のうち2本は、リストジョイント45と第2の駆動軸44bとを互いに接続し、他の2本は、リストジョイント45と第3の駆動軸44cとを互いに接続している。
【0072】
たとえば、
図15に示すように、4本のワイヤ46は、ワイヤ46a、46b、46c、および、46dを含んでいる。ワイヤ46aおよび46bは、リストジョイント45に遠位端が接続され、近位端が第2の駆動軸44bに接続されている。そして、ワイヤ46aおよび46bは、第2の駆動軸44bに、互いに反対周りに巻き止められている。つまり、第2の駆動軸44bが一方方向に回動することにより、ワイヤ46aおよび46bのうち一方が近位方向(Y2方向)に引っ張られ、ワイヤ46aおよび46bのうち他方が緩められて遠位方向(Y1方向)に引き出される。また、第2の駆動軸44bが一方方向と反対の他方方向に回動することにより、ワイヤ46aおよび46bのうち他方が近位方向(Y2方向)に引っ張られ、ワイヤ46aおよび46bのうち一方が緩められて遠位方向(Y1方向)に引き出される。
【0073】
また、ワイヤ46cおよび46dは、リストジョイント45に遠位端が接続され、近位端が第3の駆動軸44cに接続されている。ワイヤ46cおよび46dは、第3の駆動軸44cに、互いに反対周りに巻き止められている。つまり、第3の駆動軸44cが一方方向に回動することにより、ワイヤ46cおよび46dのうち一方が近位方向(Y2方向)に引っ張られ、ワイヤ46cおよび46dのうち他方が緩められて遠位方向(Y1方向)に引き出される。また、第3の駆動軸44cが一方方向と反対の他方方向に回動することにより、ワイヤ46cおよび46dのうち他方が近位方向(Y2方向)に引っ張られ、ワイヤ46cおよび46dのうち一方が緩められて遠位方向(Y1方向)に引き出される。
【0074】
リストジョイント45は、
図10に示すように、回動軸線A1周りに回動する第2関節45bと、回動軸線A2周りに回動する第1関節45aと、を含んでいる。ワイヤ46は、第2の駆動軸44bによるワイヤ46aおよび46bの駆動と、第3の駆動軸44cによるワイヤ46cおよび46dの駆動とにより、リストジョイント45をピッチ関節運動とヨー関節運動させる。リストジョイント45は、第2の駆動軸44bおよび第3の駆動軸44cにより、第2関節45bの回動軸線A1周りの回動(ヨー関節運動)および第1関節45aの回動軸線A2周りの回動(ピッチ関節運動)が行われる。具体的には、
図15に示すように、第2関節45bは、第2の駆動軸44bによりワイヤ46aが引っ張られるとともにワイヤ46bが緩められ、第3の駆動軸44cによりワイヤ46dが引っ張られるとともにワイヤ46cが緩められることにより、回動軸線A1周りにA1b方向に回動する。また、第2関節45bは、第2の駆動軸44bによりワイヤ46bが引っ張られるとともにワイヤ46aが緩められ、第3の駆動軸44cによりワイヤ46cが引っ張られるとともにワイヤ46dが緩められることにより、回動軸線A1周りにA1a方向に回動する。
【0075】
また、第1関節45aは、第2の駆動軸44bによりワイヤ46aが引っ張られるとともにワイヤ46bが緩められ、第3の駆動軸44cによりワイヤ46cが引っ張られるとともにワイヤ46dが緩められることにより、回動軸線A2周りにA2a方向に回動する。また、第1関節45aは、第2の駆動軸44bによりワイヤ46bが引っ張られるとともにワイヤ46aが緩められ、第3の駆動軸44cによりワイヤ46dが引っ張られるとともにワイヤ46cが緩められることにより、回動軸線A2周りにA2b方向に回動する。
【0076】
また、4本のワイヤ46a~46dは、各々の端部46e(
図10参照)が、第3のジョイント部品453の近位端近傍に固定されている。
図15は、
図10の矢視C1-C1から視た第3のジョイント部品453の横断面図である。
図15に示すように、シャフト42の長手方向(Y方向)と回動軸線A1の両方に平行な平面B1と、シャフト42の長手方向(Y方向)と回動軸線A2の両方に平行な平面B2と、により第3のジョイント部品453の断面は、第1領域D1~第4領域D4の4つの領域に分割されている。4本のワイヤ46a~46dは、第1領域D1~第4領域D4のそれぞれを通過し、それぞれの端部46eが、第3のジョイント部品453の近位端近傍に固定されている。具体的には、ワイヤ46aは第1領域D1の平面B1と平面B2からオフセットした位置を通過し、ワイヤ46bは第2領域D2の平面B1と平面B2からオフセットした位置を通過し、ワイヤ46cは第3領域D3の平面B1と平面B2からオフセットした位置を通過し、ワイヤ46dは第4領域D4の平面B1と平面B2からオフセットした位置を通過する。
図12において、第1領域D1は第1象限に配置され、第2領域D2は第3象限に配置され、第3領域D3は第2象限に配置され、第4領域D4は第4象限に配置されている。
【0077】
図7~
図9および
図11に示すように、ロッド47は、エンドエフェクタ43を駆動するために設けられている。ロッド47は、リストジョイント45およびシャフト42の内部にY方向に延びるように設けられている。ロッド47の遠位端は、エンドエフェクタ43に接続されている。具体的には、ロッド47の遠位端は、第1ジョー431に接続されている。
【0078】
ロッド47は、リストジョイント45およびシャフト42の内部をシャフト42の長手方向(Y方向)に移動することによって第1ジョー431および第2ジョー432を開位置と閉位置との間で相対移動させるように構成されている。これにより、リストジョイント45およびシャフト42の内部をシャフト42の長手方向に移動するロッド47を用いて、容易に、第1ジョー431および第2ジョー432を互いに対して開位置と閉位置との間で動かすことができる。また、ロッド47は、導体を含んでいる。
【0079】
図11および
図16に示すように、第1ジョー431は、第2ジョー432に回転可能に支持される支持軸431aと、ロッド47の遠位端に接続される接続部431bとを有し、ロッド47のY方向の移動により支持軸431aの軸心周りに回転する。これにより、ロッド47のY方向の移動により支持軸431aの軸心周りに第1ジョー431を回転させ、第2ジョー432に対して第1ジョー431を開閉することができる。エンドエフェクタ43は、第1ジョー431が第2ジョー432に対して開閉する片開きタイプである。
【0080】
支持軸431aは、第1ジョー431の両側に一対設けられている。一対の支持軸431aは、第2ジョー432に設けられた一対の孔部432aに挿入されて回転可能に支持される。接続部431bは、長孔部431cを有している。長孔部431cは、一対設けられている。一対の長孔部431cには、ロッド47の遠位端にY方向に直交する方向に延びるように設けられたピン部47aの一方側および他方側の先端が、長孔部431cに沿ってスライド移動可能に挿入されて支持される。ロッド47がY1方向に移動されると、ピン部47aが長孔部431cに沿ってスライド移動されることにより、第1ジョー431が開く方向の力が加わる。このため、第1ジョー431が支持軸431aの軸心周りに開く方向に回転する。また、ロッド47がY2方向に移動されると、ピン部47aが長孔部431cに沿ってスライド移動されることにより、第1ジョー431が閉じる方向の力が加わる。このため、第1ジョー431が支持軸431aの軸心周りに閉じる方向に回転する。
【0081】
ここで、
図12に示す例では、第1電極81には、ロッド47が接続されている。また、第2電極82は、第2導線84に接続されている。第2導線84は、シャフト42の内部を通ってハウジング41の内部まで延びるように設けられている。第3電極83は、導体で構成された第2ジョー432の筐体と第3のジョイント部品453を介して、第1導線85に接続されている。第1導線85は、リストジョイント45の接続部45cの内面に接続されている。また、第1導線85は、シャフト42の内部を通ってハウジング41の内部まで延びるように設けられている。
【0082】
つまり、第1ジョー431の第1電極81は、ロッド47に導通するように接続されている。また、第1ジョー431の第2電極82は、第2導線84に導通するように接続されている。また、第2ジョー432の第3電極83は、接続部45cを介して第1導線85に導通するように接続されている。これにより、ロッド47、第1導線85および第2導線84を用いて、第1電極81、第2電極82および第3電極83を絶縁した状態で、各々シャフト42側と電気的に接続することができる。また、導体を含むリストジョイント45の接続部45cを介して電極をシャフト42側と電気的に接続することができる。これにより、リストジョイント45が回動する場合でも、リストジョイント45の接続部45cに電気を通すことができるので、電極に対する電気的な接続を安定させることができる。その結果、リストジョイント45を備える手術器具40aのエンドエフェクタ43に設けられた複数の電極に対する電気的な接続が不安定になるのを抑制することができる。
【0083】
また、
図12に示す例では、固定配置された第2ジョー432に対して第1ジョー431が開位置と閉位置との間で移動するように構成されている。そして、第2ジョー432の近位端は、リストジョイント45の接続部45cに導通するように接続されている。これにより、第2ジョー432と接続部45cとを容易に電気的に安定して接続することができる。
【0084】
なお、
図13に示す例のように、固定配置された第1ジョー431に対して第2ジョー432が開位置と閉位置との間で移動するように構成してもよい。この場合、第1ジョー431の第1電極81は、接続部45cを介して第1導線85に導通するように接続されている。また、第1ジョー431の第2電極82は、第2導線84に導通するように接続されている。また、第2ジョー432の第3電極83は、ロッド47に導通するように接続されている。つまり、第1ジョー431の近位端は、リストジョイント45の接続部45cに導通するように接続されている。
【0085】
図11、
図17および
図18に示すように、ロッド47は、第1ジョー431に接続される導電性の第1ロッド47bと、第1ロッド47bの基端に接続される導電性のワイヤ47cと、ワイヤ47cの基端に接続される導電性の第2ロッド47dと、を有している。ワイヤ47cは、可撓性を有しており、リストジョイント45の内部に配置される。これにより、リストジョイント45の関節運動に応じてワイヤ47cを曲げることができるので、リストジョイント45が関節運動した場合にも、容易に、ロッド47により第1ジョー431および第2ジョー432を互いに対して開位置と閉位置との間で動かすことができる。また、ロッド47の全体をワイヤ47cにより構成する場合と異なり、第1ロッド47bおよび第2ロッド47dを設けるため、ロッド47の強度を維持することができる。
【0086】
第1ロッド47bは、先端にピン部47aを有しており、ワイヤ47cおよび第2ロッド47dから伝達される力により、第1ジョー431を動かす。ワイヤ47cは、第2ロッド47dから伝達される力を第1ロッド47bに伝達する。第2ロッド47dは、駆動軸44dから伝達される力をワイヤ47cに伝達する。
【0087】
また、ワイヤ47cは、可撓性を有する樹脂チューブ47eの内部に配置されている。樹脂チューブ47eは、フッ素樹脂系チューブである。樹脂チューブ47eは、第1ロッド47bの直径と略同じ直径を有しており、第1ロッド47bとワイヤ47cとの接続部の段差を無くしている。また、第2ロッド47dの外表面には、絶縁被膜47fが設けられている。
【0088】
また、ワイヤ47cは、トルクコイルである。これにより、シャフト42が回転した場合、シャフト42の回転方向に応じてワイヤ47cが締まったり緩んだりすることを抑制することができる。その結果、ワイヤ47cの締まり度合に応じて第1ジョー431および第2ジョー432の開閉に必要なロッド47の移動距離が異なることを抑制することができる。また、ワイヤ47cがトルクコイルであるため、曲がった状態でも高いトルク伝達性を発揮することができる。トルクコイルとしては、単一方向撚りをフォーミングなどで解けにくくしたもの、または、S撚りやZ撚りを複合させて両回転方向に同等のトルク伝達性を持たせたものなどを用いることが可能である。
【0089】
図11に示すように、リストジョイント45の内部に可撓性を有する樹脂ガイド90が設けられている。樹脂ガイド90は、ポリアミドまたはシリコンで構成されている。
【0090】
図19に示すように、樹脂ガイド90は、樹脂ガイド90の長手方向中心線(Y方向に延びる中心線)を通るように形成され、ロッド47を導く通路91を含んでいる。これにより、樹脂ガイド90の通路91によりロッド47を導くことができるので、第1ジョー431および第2ジョー432の開閉するためのロッド47の移動を容易に行うことができる。また、リストジョイント45の関節運動に応じて樹脂ガイド90を曲げることができるので、リストジョイント45が関節運動した場合にも、容易に、第1ジョー431および第2ジョー432の開閉するためのロッド47の移動を容易に行うことができる。また、樹脂ガイド90は、樹脂ガイド90の長手方向中心線からオフセットされて形成された通路92および93を含んでいる。通路92は、第1導線85を導く。通路93は、第2導線84を導く。
【0091】
また、
図20に示すように、樹脂ガイド90の通路91は、ワイヤ47cを導く内面がフッ素樹脂91aで形成されている。
【0092】
図11に示すように、シャフト42は、樹脂ガイド90を位置決めする位置決め部材421を含んでいる。これにより、位置決め部材421により樹脂ガイド90を位置決めすることができるので、ロッド47の移動により樹脂ガイド90の位置がずれることを抑制することができる。位置決め部材421は、段差部421aを有しており、段差部421aと、第1のジョイント部品451との間に、樹脂ガイド90の突起部94を挟み込むことにより、樹脂ガイド90の長手方向に樹脂ガイド90を位置決めする。突起部94は、樹脂ガイド90の長手方向に直交する方向に突出し、段差部421aと、第1のジョイント部品451とにより、樹脂ガイド90の長手方向に挟み込まれている。
【0093】
図7~
図9に示すように、レバー48は、回転可能に支持される軸部481aを含むアーム481と、アーム481から突出するとともにロッド47に係合する係合部482とを有し、第4の駆動軸44dからの駆動力により軸部481aの軸心周りに回転し、ロッド47をY方向に移動させる。これにより、ロッド47をY方向に移動させるレバー48自身が備える軸部481aをレバー48の回転軸としているため、駆動軸を回転軸として利用する必要がない。その結果、駆動軸(第4の駆動軸44d)を1つのみ用いてロッド47をシャフト42のY方向に移動させ、エンドエフェクタ43を作動することができる。その結果、4つの駆動軸44a~44dで、シャフト42をロール回転、エンドエフェクタ43をピッチ・ヨー関節運動可能で、かつ、エンドエフェクタ43を作動するためのロッド47をシャフト42のY方向に移動させることができる。
【0094】
また、アーム481は、Z方向に対向するように一対設けられている。一対のアーム481の一方の係合部482は、一方側(Z1方向側)からロッド47に係合している。一対のアーム481の他方の係合部482は、他方側(Z2方向側)からロッド47に係合している。これにより、ロッド47の一方側および他方側から係合部482がロッド47に係合することができるので、レバー48を介して第4の駆動軸44dの駆動力をロッド47に確実に伝達することができる。
【0095】
一対のアーム481は、Z方向に互いに離間して設けられ、Z方向に延びる接続部483により互いに接続されている。一対のアーム481の各々は、接続部483からロッド47の位置までX方向に延びるように設けられている。一対のアーム481の各々は、接続部483側の端部とロッド47側の端部との間に、軸部481aを有している。具体的には、一対のアーム481の各々は、接続部483側の端部とロッド47側の端部との間の中央よりも接続部483側に、軸部481aを有している。また、一対のアーム481の各々のロッド47側の端部に、係合部482が設けられている。
【0096】
また、一対のアーム481の一方の係合部482は、Z2方向側に突出し、保持部材50の後述する被係合部501にZ1方向側から係合している。一対のアーム481の他方の係合部482は、Z1方向側に突出し、被係合部501にZ2方向側から係合している。
【0097】
また、一対のアーム481の一方の軸部481aは、Z1方向側に突出している。一対のアーム481の一方の軸部481aは、ハウジング41の内部に設けられるフレーム部材52に回転可能に支持されている。具体的には、一対のアーム481の一方の軸部481aは、フレーム部材52に設けられた孔部を含む被支持部521に挿入されて回転可能に支持されている。また、一対のアーム481の他方の軸部481aは、Z2方向側に突出している。一対のアーム481の他方の軸部481aは、ベース411に回転可能に支持されている。具体的には、一対のアーム481の他方の軸部481aは、ベース411に設けられた凹部を含む被支持部411aに挿入されて回転可能に支持されている。
【0098】
また、軸部481aの軸心は、Y方向と直交するX方向において、係合部482と第4の駆動軸44dとの間に配置されている。これにより、Y方向と直交するX方向において、係合部482と第4の駆動軸44dとの間に軸部481aの軸心を配置することができるので、第4の駆動軸44dよりも外側に軸部481aの軸心を配置する場合に比べて、レバー48をコンパクトにすることができる。軸部481aの軸心は、X方向において、係合部482と第4の駆動軸44dとの間の中央よりも第4の駆動軸44d側に配置されている。
【0099】
また、駆動力伝達部49は、第4の駆動軸44dとレバー48との間に設けられ、第4の駆動軸44dからレバー48に駆動力を伝達する。これにより、駆動力伝達部49により第4の駆動軸44dからレバー48に駆動力を伝達することができるので、レバー48を第4の駆動軸44dから離間して配置することができる。その結果、第4の駆動軸44dの近傍にレバー48を設けるスペースを確保することが困難な場合にも、レバー48を設けるスペースを容易に確保することができる。
【0100】
また、駆動力伝達部49は、スパーギア491aとセクターギア491bとを含むギア列491を有し、ギア列491によって、第4の駆動軸44dからレバー48に駆動力を伝達する。これにより、噛み合いにより駆動力を伝達するギア列491によって、第4の駆動軸44dからレバー48に駆動力を確実に伝達することができる。また、ギア列491がセクターギア491bを含むため、セクターギア491bに代えてスパーギアを設ける場合に比べて、ギア列491をコンパクトにすることができる。
【0101】
また、駆動力伝達部49は、第4の駆動軸44dの回転を減速してレバー48に伝達する。これにより、第4の駆動軸44dの回転の減速に反比例して増加したトルクでレバー48を駆動することができるので、レバー48の駆動によりロッド47を容易にY方向に移動させることができる。なお、第4の駆動軸44dの回転の減速に反比例して増加したトルクでレバー48を駆動することができることは、本実施形態のようにばね部材51を設ける場合、効果的である。
【0102】
セクターギア491bは、第4の駆動軸44dに設けられたスパーギア44d1に噛み合っている。セクターギア491bは、第4の駆動軸44dの回転を減速させる歯数を有している。スパーギア491aは、レバー48の接続部483に設けられたセクターギア483aに噛み合っている。また、スパーギア491aとセクターギア491bは、共通の回転軸491cに支持され、回転軸491cにより一体的に回転する。
【0103】
また、保持部材50は、ロッド47を保持する。ばね部材51は、保持部材50をY方向の遠位端側(Y1方向側)に向かって付勢する。係合部482は、保持部材50を介してロッド47に係合し、係合部482により保持部材50をY方向の近位端側(Y2方向側)に向かって押した際のばね部材51の反力によりエンドエフェクタ43の把持力を印加する。これにより、ばね部材51のばね定数によりエンドエフェクタ43の把持力を決定することができるので、エンドエフェクタ43の把持力を安定して印加することができる。また、リストジョイント45と同様にワイヤを用いてエンドエフェクタ43の把持力を印加する場合と異なり、ワイヤの微量な伸びに把持力が影響されにくい。このため、駆動部213のモータの精緻な締め込み角度の設定が不要となる。
【0104】
保持部材50は、被係合部501と、ばね収容部502と、ロッド保持部503とを有している。被係合部501は、レバー48の係合部482と係合する。被係合部501は、周状に形成された凹部により構成されている。被係合部501のZ1方向側の部分は、Z2方向側に向かって窪んでおり、一対のアーム481の一方の係合部482が係合する。被係合部501のZ2方向側の部分は、Z1方向側に向かって窪んでおり、一対のアーム481の他方の係合部482が係合する。ばね収容部502は、ばね部材51を収容する。ばね収容部502は、Y1方向側に窪む凹部を含む。ばね収容部502は、ばね収容部502のY2方向側に設けられた板状のワッシャ53との間でばね部材51を保持する。ロッド保持部503は、ロッド47に設けられた被保持部47gを保持する。ロッド保持部503は、Y方向に沿って延びる孔部を含む。
【0105】
ばね部材51は、所定のばね定数を有する圧縮コイルばねである。ばね部材51は、レバー48により保持部材50がY2方向に移動されると、ばね収容部502とワッシャ53との間で圧縮される。ばね部材51は、レバー48により保持部材50がY1方向に移動されると、ばね収容部502とワッシャ53との間で伸長される。
【0106】
レバー48によりロッド47をY方向に移動させる動作について説明する。第4の駆動軸44dが回転駆動されると、駆動力伝達部49のギア列491を介して第4の駆動軸44dからの駆動力がレバー48に伝達される。これにより、レバー48が軸部481aの軸心周りに回転される。そして、ロッド47をY1方向に移動させる場合には、レバー48の係合部482のY1方向側の側面が、保持部材50の被係合部501のY2方向側の側面に当接して、保持部材50がY1方向側に押されて移動される。これにより、保持部材50のロッド保持部503に被保持部47gが保持されたロッド47がY1方向に移動される。この場合、第1ジョー431が開く方向に移動される。また、ロッド47をY2方向に移動させる場合には、レバー48の係合部482のY2方向側の側面が、保持部材50の被係合部501のY1方向側の側面に当接して、保持部材50がY2方向側に押されて移動される。これにより、保持部材50のロッド保持部503に被保持部47gが保持されたロッド47がY2方向に移動される。この場合、第1ジョー431が閉じる方向に移動される。
【0107】
(メモリ基板の固定機構の構成)
次に、
図8、
図21および
図22を参照して、回路基板54の固定機構55の構成について説明する。
【0108】
図8、
図21および
図22に示すように、手術器具40aは、回路基板54と、回路基板54の固定機構55とを備えている。回路基板54は、ベース411に設けられている。回路基板54は、メモリ基板である。回路基板54には、たとえば、手術器具40aの種類、手術器具40aの使用回数などの手術器具40aに関する情報が記憶されている。固定機構55は、回路基板54をベース411に固定する。固定機構55は、複数(4個)のスナップフィット部551を有するスナップフィット固定機構である。複数のスナップフィット部551は、回路基板54のY1方向側およびY2方向側に2つずつ設けられ、回路基板54の外周部をZ1方向側から押さえている。また、複数のスナップフィット部551は、Z1方向側からZ2方向側に向かって回路基板54を固定機構55に取り付ける際には、回路基板54により押されて弾性変形する。固定機構55としてスナップフィット固定機構を設けることにより、簡素な構造で、回路基板54をベース411に固定することが可能である。
【0109】
(リストジョイントの構成)
次に、
図23~
図32を参照して、リストジョイント45の構成について説明する。
【0110】
図23および
図24に示すように、リストジョイント45は、第1のジョイント部品451と、第1のジョイント部品451に遠位側(Y1方向側)で隣接し、第1のジョイント部品451に対して回動する第2のジョイント部品452とを含んでいる。また、リストジョイント45は、第2のジョイント部品452に遠位側(Y1方向側)で隣接し、第2のジョイント部品452に対して回動する第3のジョイント部品453を含んでいる。
図10および
図23に示すように、第2のジョイント部品452は、第1のジョイント部品451に対して、回動軸線A1周りに回動可能である。回動軸線A1は、シャフト42の長手方向(Y方向)に直交する方向に延びている。また、第3のジョイント部品453は、第2のジョイント部品452に対して、回動軸線A1と直交する回動軸線A2周りに回動可能である。回動軸線A2は、シャフト42の長手方向(Y方向)に見て回動軸線A1に直交する方向に延びている。また、リストジョイント45は、
図24に示すように、回動軸線A1周りに回動する第1関節45aと、回動軸線A2周りに回動する第2関節45bと、を含んでいる。
【0111】
第1のジョイント部品451は、第1の噛合部454と、第1の噛合部454に対しシャフトの長手方向と直交する径方向(A1方向)に対向するように配置された第2の噛合部455と、第1の噛合部454の径方向外側に隣接する第1の当接部471と、第2の噛合部455の径方向外側に隣接する第2の当接部472とを有している。第1の噛合部454、第2の噛合部455、第1の当接部471および第2の当接部472は、第1のジョイント部品451の遠位側(Y1方向側)の端部に設けられている。
【0112】
第2のジョイント部品452は、第1の噛合部454と噛合する第3の噛合部456と、第3の噛合部456に対し径方向(A1方向)に対向するように配置され、第2の噛合部455と噛合する第4の噛合部457と、第1の当接部471と当接する第3の当接部473と、第2の当接部472と当接する第4の当接部474とを有している。第3の噛合部456、第4の噛合部457、第3の当接部473および第4の当接部474は、第2のジョイント部品452の近位側(Y2方向側)の端部に設けられている。第1の当接部471と第3の当接部473との間の当接により、第1の噛合部454と第3の噛合部456との間の負荷が軽減される。第2の当接部472と第4の当接部474との間の当接により、第2の噛合部455と第4の噛合部457との間の負荷が軽減される。
【0113】
また、第2のジョイント部品452は、第5の噛合部458と、第5の噛合部458に対し径方向(A2方向)に対向するように配置された第6の噛合部459と、第5の噛合部458の径方向外側に隣接する第5の当接部475と、第6の噛合部459の径方向外側に隣接する第6の当接部476とを有している。第5の噛合部458、第6の噛合部459、第5の当接部475および第6の当接部476は、第2のジョイント部品452の遠位側(Y1方向側)の端部に設けられている。
【0114】
第3のジョイント部品453は、第5の噛合部458と噛合する第7の噛合部460と、第7の噛合部460に対し径方向(A2方向)に対向するように配置され、第6の噛合部459と噛合する第8の噛合部461と、第5の当接部475と当接する第7の当接部477と、第6の当接部476と当接する第8の当接部478とを有している。第7の噛合部460、第8の噛合部461、第7の当接部477および第8の当接部478は、第3のジョイント部品453の近位側(Y2方向側)の端部に設けられている。第5の当接部475と第7の当接部477との間の当接により、第5の噛合部458と第7の噛合部460との間の負荷が軽減される。第6の当接部476と第8の当接部478との間の当接により、第6の噛合部459と第8の噛合部461との間の負荷が軽減される。
【0115】
ここで、本実施形態では、
図24に示すように、第1の噛合部454と第2の噛合部455とは互いに異なる形状を有している。また、第3の噛合部456と第4の噛合部457とは互いに異なる形状を有している。これにより、第1のジョイント部品451の第1の噛合部454と第2のジョイント部品452の第4の噛合部457とを、噛み合いにくくすることができるとともに、第1のジョイント部品451の第2の噛合部455と第2のジョイント部品452の第3の噛合部456とを、噛み合いにくくすることができる。これにより、第1のジョイント部品451と第2のジョイント部品452とを組み付ける際に、第1の噛合部454および第3の噛合部456を正しく噛み合わせるとともに、第2の噛合部455および第4の噛合部457を正しく噛み合わせることができる。その結果、ジョイントの組付けを容易に正確に行うことができるとともに、不具合が生じた場合でも原因の特定が容易になり手術器具の品質管理を適切に行うことができる。
【0116】
また、第5の噛合部458と第6の噛合部459とは互いに異なる形状を有している。また、第7の噛合部460と第8の噛合部461とは互いに異なる形状を有している。これによっても、ジョイントの組付けを正確に行うことができるとともに、手術器具の品質管理を適切に行うことができる。
【0117】
また、本実施形態では、第1の噛合部454と第4の噛合部457とは互いに同一の形状を有している。また、第2の噛合部455と第3の噛合部456とは互いに同一の形状を有している。これにより、第1の噛合部454および第3の噛合部456の噛み合わせ構造と、第2の噛合部455および第4の噛合部457の噛み合わせ構造とを同様にすることができるので、リストジョイント45の関節運動を、第1のジョイント部品451および第2のジョイント部品452における2か所の噛み合わせ構造において、バランスよく支持することができる。
【0118】
第5の噛合部458と第8の噛合部461とは互いに同一の形状を有している。また、第6の噛合部459と第7の噛合部460とは互いに同一の形状を有している。これによっても、リストジョイント45の関節運動を、第2のジョイント部品452および第3のジョイント部品453における2か所の噛み合わせ構造において、バランスよく支持することができる。
【0119】
また、第1の噛合部454と第4の噛合部457と第5の噛合部458と第8の噛合部461とは互いに同一の形状を有している。また、第2の噛合部455と第3の噛合部456と第6の噛合部459と第7の噛合部460とは互いに同一の形状を有している。つまり、第1の噛合部454と第5の噛合部458とは、同様の構成であり、第2の噛合部455と第6の噛合部459とは、同様の構成である。また、第3の噛合部456と第7の噛合部460とは、同様の構成であり、第4の噛合部457と第8の噛合部461とは、同様の構成である。そこで、第5の噛合部458、第6の噛合部459、第7の噛合部460および第8の噛合部461については、説明を適宜省略する。
【0120】
図25に示すように、第1の噛合部454は、第2のジョイント部品452の回動方向に沿って配置された一対の第1凸部454aと、一対の第1凸部454aの間に配置された第1凹部454bとを含んでいる。また、同様に、第4の噛合部457は、第2のジョイント部品452の回動方向に沿って配置された一対の第4凸部457aと、一対の第4凸部457aの間に配置された第4凹部457bとを含んでいる。
【0121】
図26に示すように、第2の噛合部455は、第2のジョイント部品452の回動方向に沿って配置された一対の第2凹部455aと、一対の第2凹部455aの間に配置された第2凸部455bとを含んでいる。また、同様に、第3の噛合部456は、第2のジョイント部品452の回動方向に沿って配置された一対の第3凹部456aと、一対の第3凹部456aの間に配置された第3凸部456bとを含んでいる。
【0122】
これにより、第1凹部454bを有する第1の噛合部454と、第4凹部457bを有する第4の噛合部457とを容易に噛み合わせないようにすることができるとともに、第2凸部455bを有する第2の噛合部455と、第3凸部456bを有する第3の噛合部456とを容易に噛み合わせないようにすることができる。その結果、第1のジョイント部品451および第2のジョイント部品452の組付けの方向が誤った方向になるのを効果的に抑制することができる。
【0123】
図27および
図28に示すように、第1の噛合部454、第2の噛合部455、第3の噛合部456および第4の噛合部457は、第2のジョイント部品452の回動軸線方向(A1方向)に見て、円弧が連結された形状、または、円弧および直線が連結された形状を有している。これにより、第1の噛合部454、第2の噛合部455、第3の噛合部456および第4の噛合部457の設計を容易に行うことができる。また、第1の噛合部454、第2の噛合部455、第3の噛合部456および第4の噛合部457の形状の検査を容易に行うことができるので、第1の噛合部454、第2の噛合部455、第3の噛合部456および第4の噛合部457の形状の管理をより適切に行うことができる。
【0124】
具体的には、第1の噛合部454および第4の噛合部457は、
図27に示すように、円弧が連結された形状を有している。第1の噛合部454および第4の噛合部457は、半径R1を有する円弧4541と、円弧4541に連結する半径R2を有する円弧4542と、円弧4542に連結する半径R3を有する円弧4543と、円弧4543に連結する半径R4を有する円弧4544と、円弧4544に連結する半径R3を有する円弧4545と、円弧4545に連結する半径R2を有する円弧4546と、円弧4546に連結する半径R1を有する円弧4547と、を含む線が連結された外形を有している。また、第1の噛合部454および第4の噛合部457は、第2のジョイント部品452の回動軸線方向(A1方向)に見て、線対称形状を有している。
【0125】
また、第2の噛合部455および第3の噛合部456は、
図28に示すように、円弧および直線が連結された形状を有している。第2の噛合部455および第3の噛合部456は、線分4551と、線分4551に連結して半径R5を有する円弧4552と、円弧4552に連結する線分4553と、線分4553に連結する半径R6を有する円弧4554と、円弧4554に連結する線分4555と、線分4555に連結する半径R5を有する円弧4556と、円弧4556に連結する線分4557と、を含む線が連結された外形を有している。また、第2の噛合部455および第3の噛合部456は、第2のジョイント部品452の回動軸線方向(A1方向)に見て、線対称形状を有している。
【0126】
図29~
図32に示すように、リストジョイント45は、ワイヤ46の駆動により、第1のジョイント部品451に対して第2のジョイント部品452を回動させる関節運動が行われる。ワイヤ46は、
図10に示すように、リストジョイント45におけるエンドエフェクタ側(Y1方向側)の第3のジョイント部品453に、端部46eが固定されている。
【0127】
また、
図24に示すように、第1の噛合部454は、径方向(A1方向)においてワイヤ46が通過できる間隔を介して分割して配置された第1部分454cおよび第2部分454dを有している。また、第1部分454cおよび第2部分454dの各々に、第1凸部454aおよび第1凹部454bが形成されている。また、第4の噛合部457は、第1の噛合部454と同様に、径方向(A1方向)においてワイヤ46が通過できる間隔を介して分割して配置された第3部分457cおよび第4部分457dを有している。また、第3部分457cおよび第4部分457dの各々に、第4凸部457aおよび第4凹部457bが形成されている。これにより、
図32に示されるように第1のジョイント部品451に対して第2のジョイント部品452を大きく回動させる関節運動を行った場合に、ワイヤ46が第1部分454cおよび第2部分454dに干渉しないようにすることができる。
【0128】
また、
図24に示すように、第2の噛合部455は、径方向(A1方向)において連続的に形成された第5部分455cを有している。また、第2の噛合部455は、径方向(A1方向)においてワイヤ46が通過できる間隔を介して分割して配置された部分455dおよび部分455eを有している。また、第5部分455cに、第2凸部455bが形成されている。また、部分455dおよび部分454eの各々に、第2凹部455aが形成されている。
【0129】
また、第3の噛合部456は、第2の噛合部455と同様に、径方向(A1方向)において連続的に形成された第6部分456cを有している。また、第3の噛合部456は、径方向(A1方向)においてワイヤ46が通過できる間隔を介して分割して配置された部分456dおよび部分456eを有している。また、第6部分456cに、第3凸部456bが形成されている。また、部分456dおよび部分456eの各々に、第3凹部456aが形成されている。
【0130】
また、
図25に示すように、第1のジョイント部品451は、第1の噛合部454から離間した位置に配置され、ワイヤ46を通す第1貫通穴451aを有している。また、
図26に示すように、第1のジョイント部品451は、第2の噛合部455から離間した位置に配置され、ワイヤ46を通す第2貫通穴451bを有している。また、
図26に示すように、第2のジョイント部品452は、第3の噛合部456から離間した位置に配置され、ワイヤ46を通す第3貫通穴452aを有している。また、
図25に示すように、第2のジョイント部品452は、第4の噛合部457から離間した位置に配置され、ワイヤ46を通す第4貫通穴452bを有している。これにより、ワイヤ46を通す貫通穴を噛合部から離間した位置に配置することができるので、噛合部がワイヤ46に干渉するのを抑制することができる。
【0131】
図29~
図32を参照して、第1のジョイント部品451に対する第2のジョイント部品452の回動を説明する。なお、
図29~
図32の例では、第1のジョイント部品451の第1の噛合部454と、第2のジョイント部品452の第3の噛合部456との噛み合いを示しているが、第1のジョイント部品451の第2の噛合部455と、第2のジョイント部品452の第4の噛合部457との噛み合いについても、凹凸が入れ替わった状態で同様の動作になる。また、第2のジョイント部品452に対する第3のジョイント部品453の回動についても同様の動作になる。
【0132】
図29に示すように、第1のジョイント部品451に対して、第2のジョイント部品452が回動していない場合、第1のジョイント部品451の第1の噛合部454の第1凹部454bに、第2のジョイント部品452の第3の噛合部456の第3凸部456bが入り込んでいる。
【0133】
図30に示すように、ワイヤ46の動作により、第1のジョイント部品451の第1の噛合部454の第1凹部454bに対して、第2のジョイント部品452の第3の噛合部456の第3凸部456bが接触しながら回動して、第1のジョイント部品451に対して、第2のジョイント部品452が角度θ1だけ回動する。
【0134】
図31に示すように、ワイヤ46の動作により、第1のジョイント部品451の第1の噛合部454の第1凸部454aに対して、第2のジョイント部品452の第3の噛合部456の第3凸部456bが接触しながら回動して、第1のジョイント部品451に対して、第2のジョイント部品452が角度θ2だけ回動する。ただし、角度θ2>角度θ1である。
【0135】
図32に示すように、ワイヤ46の動作により、第1のジョイント部品451の第1の噛合部454の第1凸部454aに対して、第2のジョイント部品452の第3の噛合部456の第3凸部456bが接触しながらさらに回動して、第1のジョイント部品451に対して、第2のジョイント部品452が角度θ3だけ回動する。ただし、角度θ3>角度θ2である。
【0136】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0137】
たとえば、上記実施形態では、エンドエフェクタの第1ジョー部材が第2ジョー部材に対して開閉する片開きの構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エンドエフェクタの第1ジョー部材および第2ジョー部材が各々開閉する両開きの構成であってもよい。また、エンドエフェクタは、固定の第1ジョー部材に対して第2ジョー部材を動かして開閉する機構でもよい。その場合に、細長要素のロッドの先端を第2ジョー部材の基端部に接続し、細長要素をシャフトの長手方向に移動させることで第2ジョー部材を移動させて開閉を行うようにしてもよい。また、固定のジョー部材に切断電極と凝固電極とを設け、可動のジョー部材にグランド電極を設けるようにしてもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、直径D1は、直径D2および直径D3の1/2よりも大きく、3/4よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直径D1は、直径D2および直径D3の1/2以下であってもよいし、直径D2および直径D3の3/4以上であってもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、直径D1は、4mm以上6mm以下であり、直径D2および直径D3は、7mm以上9mm以下である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直径D1は、4mmよりも小さくてもよいし、6mmよりも大きくてもよい。また、直径D2および直径D3は、7mmよりも小さくてもよいし、9mmよりも大きくてもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、直径D4は、直径D1と略同じである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、直径D4は、直径D1と異なっていてもよい。
【0141】
また、上記実施形態では、熱収縮チューブは、金属シャフトの長手方向において、金属シャフトの90%以上100%以下を被覆している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱収縮チューブは、金属シャフトの長手方向において、金属シャフトの90%未満を被覆していてもよい。
【0142】
また、上記実施形態では、金属シャフトは、ステンレスパイプである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、金属シャフトは、ステンレス以外の金属パイプであってもよい。
【0143】
また、上記実施形態では、熱収縮チューブは、ポリエチレン系熱収縮チューブまたはフッ素樹脂系熱収縮チューブである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱収縮チューブは、ポリエチレン系熱収縮チューブまたはフッ素樹脂系熱収縮チューブ以外であってもよい。
【0144】
また、上記実施形態では、熱収縮チューブは、一層構造の熱収縮チューブである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱収縮チューブは、二層構造の熱収縮チューブであってもよい。
【0145】
また、上記実施形態では、熱収縮チューブは、有色である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、熱収縮チューブは、無色であってもよい。
【0146】
また、上記実施形態では、リストジョイント(手首関節部)は、複数の自由度で関節運動するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、手首関節部は、1つの自由度で関節運動するように構成されていてもよい。
【0147】
また、上記実施形態では、第1の噛合部と第2の噛合部とが互いに異なる形状を有しており、第3の噛合部と第4の噛合部とが互いに異なる形状を有している構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1の噛合部と第2の噛合部とが互いに同様の形状を有しており、第3の噛合部と第4の噛合部とが互いに同様の形状を有していてもよい。
【0148】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0149】
(項目1)
ロボット手術システム用の手術器具であって、
エンドエフェクタと、
前記エンドエフェクタに接続される手首関節部と、
前記手首関節部に接続されるシャフトと、
前記シャフトの近位端を支持し、ロボットアームに取り付けられる取付部と、を備え、
前記シャフトは、中空の金属シャフトと、前記金属シャフトの表面を被覆する熱収縮チューブと、を含む、手術器具。
【0150】
(項目2)
前記熱収縮チューブは、前記金属シャフトの長手方向において、前記金属シャフトの90%以上100%以下を被覆している、項目1に記載の手術器具。
【0151】
(項目3)
前記熱収縮チューブは、絶縁性を有する、項目2に記載の手術器具。
【0152】
(項目4)
前記金属シャフトは、ステンレスパイプであり、
前記熱収縮チューブは、ポリエチレン系熱収縮チューブまたはフッ素樹脂系熱収縮チューブである、項目2または3に記載の手術器具。
【0153】
(項目5)
前記熱収縮チューブは、一層構造の熱収縮チューブである、項目1~4のいずれか1項に記載の手術器具。
【0154】
(項目6)
前記熱収縮チューブは、前記金属シャフトの色とは異なる有色である、項目1~5のいずれか1項に記載の手術器具。
【0155】
(項目7)
前記手首関節部は、複数の自由度で関節運動するように構成されている、項目1~6のいずれか1項に記載の手術器具。
【0156】
(項目8)
前記手首関節部は、前記シャフトの長手方向と交差する第1回転軸周りに関節運動する第1関節と、前記長手方向および前記第1回転軸の両方と交差する第2回転軸周りに関節運動する第2関節と、を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の手術器具。
【0157】
(項目9)
前記エンドエフェクタは、開位置と閉位置との間で互いに対して相対移動する第1および第2ジョー部材を備え、
前記シャフトの長手方向に移動することによって前記第1および第2ジョー部材を前記相対移動させるように構成された細長部材を備える、項目1~8のいずれか1項に記載の手術器具。
【0158】
(項目10)
前記第1ジョー部材は、第1電極および前記第1電極から絶縁して設けられた第2電極を含み、前記第2ジョー部材は、前記第1および第2電極に対してグラウンド用電極として機能する第3電極を含む、項目1~9のいずれか1項に記載の手術器具。
【0159】
(項目11)
前記細長部材は、前記第1ジョー部材および/または第2ジョー部材に接続される導電性の第1ロッドと、前記第1ロッドの基端に接続される導電性のワイヤと、前記ワイヤの基端に接続される導電性の第2ロッドと、を備え、
前記ワイヤは、可撓性を有しており、前記手首関節部の内部に配置される、項目9に記載の手術器具。
【0160】
(項目12)
前記ワイヤは、トルクコイルである、項目11に記載の手術器具。
【0161】
(項目13)
前記手首関節部の内部に可撓性を有する樹脂ガイドが設けられており、
前記樹脂ガイドは、前記樹脂ガイドの長手方向中心線を通るように形成され、前記細長部材を導く通路を含む、項目9~12のいずれか1項に記載の手術器具。
【0162】
(項目14)
前記シャフトは、前記樹脂ガイドを位置決めする位置決め部材を含む、項目13に記載の手術器具。
【0163】
(項目15)
前記取付部は、前記ロボットアームの器具取付部に取り付けられており、
前記器具取付部は、第1駆動部材および第2駆動部材を備え、
前記取付部は、前記第1駆動部材から前記エンドエフェクタを駆動するための駆動力を受け取る第1受取部材および前記第2駆動部材から前記手首関節部を駆動するための駆動力を受け取る第2受取部材を備える、項目1~14のいずれか1項に記載の手術器具。
【符号の説明】
【0164】
21a:ロボットアーム、40a:手術器具、41:ハウジング(取付部)、42:シャフト、43:エンドエフェクタ、45:リストジョイント(手首関節部)、45a:第1関節、45b:第2関節、47:ロッド(細長部材)、47b:第1ロッド、47c:ワイヤ、47d:第2ロッド、81:第1電極、82:第2電極、83:第3電極、90:樹脂ガイド、91:通路、100:ロボット手術システム、212:器具取付部、214b、214c:駆動部材(第2駆動部材)、214d:駆動部材(第1駆動部材)、421:位置決め部材、442:受取部材(第1受取部材、第2受取部材)