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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025151
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】木質架構
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20250214BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/26 E
E04B1/58 505L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129656
(22)【出願日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】相馬 智明
(72)【発明者】
【氏名】野島 僚子
(72)【発明者】
【氏名】関根 夕貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 良
(72)【発明者】
【氏名】谷 翼
(72)【発明者】
【氏名】関山 泰忠
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AA53
2E125AB12
2E125AC23
2E125CA79
2E125CA81
(57)【要約】
【課題】高い剛性を確保しつつ、軽量部材で容易に施工可能な、木質架構を提供すること。
【解決手段】木質架構1は、鉛直方向に延びる少なくとも一対の木質の柱10Aと、一対の柱10A同士を連結する木質の梁20、床梁30、中間梁40、41と、を備える。一対の柱10A同士の間には、パネル材50が設けられ、パネル材50の上下端には、梁20、床梁30、中間梁40、41が設けられる。柱10Aは、鉛直方向に延びる4本の鉛直軸材11と、鉛直軸材11同士の間に介装された鉛直つづり材12と、を備える。梁20、床梁30、中間梁40、41は、水平方向に延びる4本の水平軸材22と、水平軸材22同士の間に介装された水平つづり材23と、を備える。柱10Aとパネル材50、および、梁20、床梁30、中間梁40、41とパネル材50は、ボルト61、ナット62で接合される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる少なくとも一対の木質柱と、前記一対の木質柱同士を連結する木質梁と、を備える木質架構であって、
前記一対の木質柱同士の間には、木質面材が設けられ、
前記木質面材の上下端には、前記木質梁が設けられ、
前記木質柱は、鉛直方向に延びる4本の鉛直軸材と、前記鉛直軸材同士の間に介装されて前記鉛直軸材同士を接合する鉛直つづり材と、を備え、
前記木質梁は、水平方向に延びる4本の水平軸材と、前記水平軸材同士の間に介装されて前記水平軸材同士を接合する水平つづり材と、を備え、
前記木質柱と前記木質面材、および、前記木質梁と前記木質面材は、ほぞ継ぎ、ダボ継ぎ、接着剤、およびつづり材を貫通する連結金物のうちの少なくとも1つで接合されることを特徴とする木質架構。
【請求項2】
前記木質面材は、前記木質柱と前記木質梁で囲まれた、前記木質柱の上端部、中間部、および下端部のうち2つ以上の高さ位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の木質架構。
【請求項3】
前記鉛直つづり材および前記水平つづり材は、前記木質柱と前記木質梁との接合部の内部にも配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の木質架構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質柱と木質梁とを備える木質架構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質の柱と木質の梁とが接合された柱梁接合構造が提案されている(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、柱と梁とが接合された柱梁接合構造が示されている。この柱梁接合構造では、柱は、柱内側木質板材と、柱内側木質板材を両面から挟む一対の柱外側木質板材と、各々の柱外側木質板材を柱内側木質板材と共に各々挟む一対の柱最外側木質板材と、を有する。梁は、梁内側木質板材と、梁内側木質板材を両面から挟む一対の梁外側木質板材と、を有する。
【0003】
特許文献2には、柱集成材と梁集成材とが直交するように固定された木質ラーメンモーメント抵抗部構造体が示されている。柱集成材は、端部において突部と谷部とが幅方向に交互に形成された複数の柱ラミナを貼り合わせ積層してなる。梁集成材は、端部において突部が嵌入する嵌入谷部と前記谷部に嵌め込まれる突出部とが交互に形成された複数の梁ラミナを貼り合わせ積層してなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-79545号公報
【特許文献2】特開2018-159251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高い剛性を確保しつつ、軽量部材で容易に施工可能な、木質架構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来では、木質柱や木質梁として大断面の木材を用いて木質架構を構築したが、本発明者らは、小断面の木質の軸材を4本で1組とし、これら軸材同士をつづり材で接合したものを木質柱や木質梁として用いた木質架構を開発した。さらに、本発明者らは、木質柱と木質梁を組み合わせた柱梁架構内に木質面材(パネル材、平面部を備えた木質系筋交い材)を配置して、木質柱と木質面材、および、木質梁と木質面材を、ほぞ継ぎ、ダボ継ぎ、接着剤、または連結金物で接合して、高剛性の木質架構を実現した。
第1の発明の木質架構(例えば、後述の木質架構1、1A)は、鉛直方向に延びる少なくとも一対の木質柱(例えば、後述の柱10A)と、前記一対の木質柱同士を連結する木質梁(例えば、後述の梁20、床梁30、中間梁40、41)と、を備える木質架構であって、前記一対の木質柱同士の間には、木質面材(例えば、後述のパネル材50、平面部を備えた木質系筋交い材)が設けられ、前記木質面材の上下端には、前記木質梁が設けられ、前記木質柱は、鉛直方向に延びる4本の鉛直軸材(例えば、後述の鉛直軸材11)と、前記鉛直軸材同士の間に介装されて前記鉛直軸材同士を接合する鉛直つづり材(例えば、後述の鉛直つづり材12)と、を備え、前記木質梁は、水平方向に延びる4本の水平軸材(例えば、後述の水平軸材22)と、前記水平軸材同士の間に介装されて前記水平軸材同士を接合する水平つづり材(例えば、後述の水平つづり材23)と、を備え、前記木質柱と前記木質面材、および、前記木質梁と前記木質面材は、ほぞ継ぎ、ダボ継ぎ、接着剤、およびつづり材を貫通する連結金物(例えば、後述のボルト61、ナット62)のうちの少なくとも1つで接合されることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、木質柱や木質梁と木質面材とを、ほぞ継ぎ、ダボ継ぎ、接着剤、および連結金物のうちの少なくとも1つ以上で接合することで、木質面材を強固に木質柱や木質梁に接合できる。
また、これら木質柱および木質梁を組み合わせた柱梁架構内に木質面材を配置することで、高剛性の木質架構を実現できる。
また、軸材およびつづり材は、小断面の木材であるために軽量であり、重機が使用できない屋内であっても、軸材とつづり材とを人力で組み合わせて柱や梁を構築することが可能である。また、軸材およびつづり材は、容易に再利用することが可能であり、容易に施工できる。
【0008】
第2の発明の木質架構では、前記木質面材は、前記木質柱と前記木質梁で囲まれた、前記木質柱の上端部、中間部、および下端部のうち2つ以上の高さ位置に設けられることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、木質柱および木質梁を組み合わせた柱梁架構内の、木質柱の上端部、中間部、および下端部のうち2つ以上の高さ位置に木質面材を設けたので、より高剛性の木質架構を実現できる。
また、屋内空間の利用形態に合わせて、木質面材の設置高さを適宜調整することで、高い剛性を保ちつつ、室内設計の自由度を向上できる。
【0010】
第3の発明の木質架構では、前記鉛直つづり材および前記水平つづり材は、前記木質柱と前記木質梁との接合部の内部にも配置されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、木質柱と木質梁との接合部(柱梁接合部)の内部に、木質柱を補剛する鉛直つづり材および木質梁を補剛する水平つづり材を配置したので、柱梁接合部のせん断強度と剛性を増大でき、高剛性の木質架構を実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い剛性を確保しつつ、軽量部材で容易に施工可能な、木質架構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る木質架構を含む建物構造体の模式的な斜視図である。
図2図1の建物構造体の二点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。
図3図1の建物構造体の二点鎖線Bで囲んだ部分(木質架構)の拡大図である。
図4図2の建物構造体の破線Cで囲んだ部分の斜視図である。
図5図2の建物構造体の破線Dで囲んだ部分および破線Eで囲んだ部分の斜視図である。
図6図3の木質架構のF-F断面図およびG-G断面図である。
図7図3の木質架構のH-H断面図である。
図8】本発明の第1変形例および第2変形例に係る木質面材と木質柱との接合構造を示す図である。
図9】本発明の第3変形例に係る木質面材の構造を示す図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る木質架構を含む移動式建物の斜視図である。
図11】面内せん断試験に用いられる標準タイプの試験体を示す図である。
図12】面内せん断試験に用いられる軽量フレームタイプの試験体を示す図である。
図13】面内せん断試験に用いられる腰壁高タイプの試験体を示す図である。
図14】各試験体の荷重-変位関係(包絡線)を示す図である。
図15】各試験体の特性値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、小断面の木質の軸材を4本で1組とし、これら軸材同士をつづり材で接合したものを木質柱や木質梁として用いた木質架構について、木質柱と木質梁を組み合わせた柱梁架構内に木質面材(パネル材、平面部を備えた木質系筋交い材)を配置して、木質柱と木質面材、および、木質梁と木質面材を接合したものである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る木質架構1を含む建物構造体2の模式的な斜視図である。図2は、図1の建物構造体2の二点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。図3は、図1の建物構造体2の二点鎖線Bで囲んだ部分(木質架構1)の拡大図である。
【0015】
建物構造体2は、床面3上に固定されている。この建物構造体2は、床面3上に設けられた木質の柱10と、柱10の柱頭部同士を連結して桁行方向に延びる木質の梁20と、柱10の柱頭部同士を連結して梁間方向に延びる木質の梁21と、柱10の柱脚部同士を連結して桁行方向に延びる木質の床梁30と、柱10の柱脚部同士を連結して梁間方向に延びる木質の床梁31と、を備える。
具体的には、桁行方向に隣り合う柱10同士は、梁20および床梁30で連結されている。梁間方向に隣り合う柱10同士は、梁21および床梁31で連結されている。
【0016】
また、木質架構1は、建物構造体2の一部であり、隣り合う一対の柱10Aと、この一対の柱10Aの柱頭部および柱脚部同士を連結する梁20および床梁30と、一対の柱10Aの中間高さ同士を連結する上下の木質の中間梁40、41と、柱10A、床梁30、および下側の中間梁40で囲まれた部分に木質面材としてのパネル材50を取り付けて構築された腰壁51と、柱10A、梁20、および上側の中間梁41で囲まれた部分に木質面材としてのパネル材50を取り付けて構築された垂壁52と、を備える。つまり、腰壁51は、柱10Aの下端部の高さ位置に設けられ、垂壁52は、柱10Aの上端部の高さ位置に設けられている。
【0017】
図4は、図2の建物構造体2の破線Cで囲んだ部分の斜視図である。図4では、理解を容易にするため、鉛直つづり材12および水平つづり材23の表示を省略している。図5(a)は、図2の建物構造体2の破線Dで囲んだ部分の斜視図である。図5(b)は、図2の建物構造体2の破線Eで囲んだ部分の斜視図である。図6(a)は、図3の木質架構1のF-F断面図である。図6(b)は、図3の木質架構1のG-G断面図である。図7は、図3の木質架構1のH-H断面図である。
【0018】
図5(a)に示すように、柱10は、鉛直方向に延びる4本の鉛直軸材11と、4本の鉛直軸材11同士の間に介装されて鉛直軸材11同士を接合する鉛直つづり材12と、を含んで構成される。鉛直つづり材12は、柱10の全長に亘って設けられている。
図5(b)に示すように、梁20、21、床梁30、31、および中間梁40、41は、水平方向に延びる4本の水平軸材22と、水平軸材22同士の間に介装されて水平軸材22同士を接合する水平つづり材23と、を含んで構成されている。水平つづり材23は、梁20、21、床梁30、31、および中間梁40、41の全長に亘って設けられている。
【0019】
柱10と梁20、21、床梁30、31、および中間梁40、41との接合部では、柱10の4本の鉛直軸材11は、梁20、21、床梁30、31、および中間梁40、41の4本の水平軸材22のうちの2本を水平方向から挟んで配置されている。また、梁20、21、床梁30、31、および中間梁40、41の4本の水平軸材22は、柱10の4本の鉛直軸材11のうちの2本を水平方向から挟んで配置されている。また、鉛直つづり材12および水平つづり材23は、この柱10と梁20、21、床梁30、31、および中間梁40、41との接合部の内部にも配置されている。
【0020】
具体的には、例えば図4に示すように、柱10と梁20、21との接合部では、柱10の4本の鉛直軸材11は、梁20、21の4本の水平軸材22のうちの2本を水平方向から挟んでいる。また、梁20、21の4本の水平軸材22は、柱10の4本の鉛直軸材11のうちの2本を水平方向から挟んでいる。
【0021】
図6および図7に示すように、パネル材50は、矩形枠状の枠材53と、この枠材53の両面に貼り付けられた一対の板材54と、を備える。図6(a)に示すように、パネル材50と柱10Aとは、ボルト接合されている。すなわち、パネル材50の端部は、柱10Aを構成する鉛直軸材11同士の間に介装されており、柱10Aの鉛直軸材11およびパネル材50を貫通する貫通孔60が形成されている。この貫通孔60に連結金物としてのボルト61を挿通して連結金物としてのナット62を締め付けることにより、パネル材50が柱10Aに固定される。
また、図6(b)に示すように、パネル材50と梁20および床梁30とは、角材55を挟んで接合されている。また、図7に示すように、パネル材50と中間梁40、41とは、角材55を介装することなく、直接接合されている。なお、図示しないが、パネル材50と梁20、床梁30、および中間梁40、41とについても、ボルトで接合されている。
【0022】
なお、本実施形態では、パネル材50と柱10Aとをボルト接合したが、これに限らず、ほぞ継ぎで接合してもよい。すなわち、図8(a)に示すように、すなわち、パネル材50の枠材53には、突起部63が形成され、柱10Aの鉛直軸材11には、この突起部63が嵌合する凹部64が形成されている。枠材53の突起部63が鉛直軸材11の凹部64に嵌合することにより、パネル材50と柱10Aとが接合されている。なお、これに限らず、鉛直軸材11に突起部を設け、枠材53にこの突起部が嵌合する凹部を設けてもよい。
【0023】
また、これに限らず、図8(b)に示すように、パネル材50と柱10Aとを、ダボ継ぎで接合してもよい。すなわち、パネル材50の枠材53には、凹部65が形成され、柱10Aの鉛直軸材11には、この凹部65に対向して凹部66が形成されている。枠材53の凹部65および鉛直軸材11の凹部65にダボ材67を嵌合させることにより、パネル材50と柱10Aとが接合される。
また、パネル材50と梁20、床梁30、および中間梁40、41についても、ボルト接合に限らず、ほぞ継ぎやダボ継ぎで接合してもよい。
【0024】
また、本実施形態では、パネル材50を、枠材53および一対の板材54で構成したが、これに限らず、図9に示すように、一対の矩形枠状の枠材56と、この一対の枠材56同士の間に挟み込まれた一枚の板材57と、で構成してもよい。
また、本実施形態では、鉛直つづり材12を柱10の全長に亘って設けたが、これに限らず、鉛直つづり材12を柱10の所定位置にのみ設けてもよい。
また、本実施形態では、水平つづり材23を、梁20、21、床梁30、31、および中間梁40、41の全長に亘って設けたが、これに限らず、水平つづり材23を、梁20、21、床梁30、31、および中間梁40、41の所定位置にのみ設けてもよい。
【0025】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)柱10Aや梁20、30、40、41とパネル材50とを、ボルト61およびナット62で接合することで、パネル材50を強固に柱10Aや梁20、30、40、41に接合できる。
また、これら柱10Aや梁20、30、40、41を組み合わせた柱梁架構内にパネル材50を配置することで、高剛性の木質架構1を実現できる。
また、軸材11、22およびつづり材12、23は、小断面の木材であるために軽量であり、重機が使用できない屋内であっても、軸材とつづり材とを人力で組み合わせて柱10や梁20、30、40、41を構築することが可能である。また、軸材11、22およびつづり材12、23は、容易に再利用することが可能であり、容易に施工できる。
【0026】
(2)柱10Aおよび木質梁20、30を組み合わせた柱梁架構内の上端部および下端部にパネル材50を設けたので、より高剛性の木質架構1を実現できる。
また、屋内空間の利用形態に合わせて、パネル材50の設置高さを適宜調整することで、高い剛性を保ちつつ、室内設計の自由度を向上できる。
(3)柱10と梁20、21、30、31、40、41との接合部(柱梁接合部)の内部に、柱10を補剛する鉛直つづり材12および梁20、21、30、31、40、41を補剛する水平つづり材23を配置することで、柱梁接合部のせん断強度と剛性を増大でき、高剛性の木質架構1を実現できる。
【0027】
(4)柱10、10Aは、4本の鉛直軸材11同士を鉛直つづり材12で接合して構成した合わせ柱であり、柱の剛性および座屈強度を高めることができる。また、梁20、21、30、31、40、41は、4本の水平軸材22同士を水平つづり材23で接合して構成した重ね透かし梁であり、梁の剛性を高めることができる。
また、梁20、21、30、31、40、41は、中実の製材を使用せず、4本の水平軸材22同士の間に水平つづり材23を介装することで形成したので、梁断面の高さ(梁せい)を大きくでき、梁のスパン長を長くすることができる。
また、鉛直軸材11と鉛直つづり材12との接合部分、水平軸材22と水平つづり材23との接合部分では、小断面の木材である軸材11、22同士が接合されて大断面となることで、剛性および高い接合強度が確保される。これにより、曲げモーメントの抵抗力が高めることができる。
このように、本発明では、4本の鉛直軸材11および鉛直つづり材12からなる木質の柱10、10Aと、4本の水平軸材22および水平つづり材23からなる木質の梁20、21、30、31、40、41を2方向または3方向から交差させて、剛強な嵌合接合することで、木質架構1を構築する。また、木質の柱10、10Aおよび木質の梁20、21、30、31、40、41は、小断面の流通木材である軸材11、22同士をつつり材12、23で接合させることで製造可能であり、高度な製材技術が不要となり、特殊な木材加工機械を持たない製材所でも製造できる。
【0028】
〔第2実施形態〕
図10は、本発明の第2実施形態に係る木質架構1Aを含む移動式建物4の斜視図である。
本実施形態の移動式建物4は、車両で牽引することで移動可能となっており、車輪が設けられた台車5と、この台車の上に構築された木質架構1Aを含む建物部6とを備える。
建物部6は、例えば、幅1510mm×長さ2390mm×高さ2250mmである。建物部6には、内部から座位での視界を確保するため、本発明の木質架構1Aが設けられている。つまり、柱間に耐力要素として垂壁および腰壁を設けて、壁中間部を空けている。
柱および梁は、90mm×90mmの正方形であり、この柱および梁の軸材は、30mm×30mmである。また、パネル材の厚さは30mmであり、枠材は、30mm×24mm、板材の厚さを3mmとし、板材を枠材に接着張りとした。パネル材と柱および張りとは、φ6mmの木ダボで固定した。
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)と同様の効果がある。
【0029】
〔面内せん断試験〕
以下、上述の第1実施形態の木質架構について、面内せん断試験を実施した。面内せん断試験に用いた3種類の試験体を図11図13に示す。図11は、標準タイプの試験体a)であり、図12は、軽量フレームタイプの試験体b)であり、図13は、腰壁高タイプの試験体c)である。
標準タイプの試験体は、柱梁架構の上端部に設けられる垂壁、および柱梁架構の下端部に設けられる腰壁のそれぞれについて、高さ寸法(上下の梁芯間の寸法)を520mmとしたものであり、柱および梁は、全長に亘ってつづり材が設けられた中実断面となっている。つづり材と軸材とは、接着剤を併用した木ダボ接合とした。
軽量フレームタイプの試験体は、HD金物が設けられる柱脚部以外の部分について、つづり材を所定間隔おきに配置することで、軽量化を図ったものである。
腰壁タイプの試験体は、腰壁高さを740mmとすることで、標準タイプの試験体と比べて、開口部高さを200mm縮小したものである。
【0030】
試験方法は、試験体の柱脚部を固定して、柱頭部に面内方向に繰り返し加力した。加力方法は、正負交番で3回繰り返した。繰り返しは、見かけのせん断変形角が1/450、1/300、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50radの正負変形時に行った。
【0031】
面内せん断試験の試験結果を図14および図15に示す。図14は、各試験体の荷重-変位関係(包絡線)を示す図である。軽量フレームタイプは、標準タイプと比べて、初期剛性Kが低く、最大耐力Pmaxも小さくなった。一方、腰壁高タイプは、開口部が小さく柱の曲げ長さが短くなるため、標準タイプと比べて、全体のKは向上したが、破壊箇所が同じであるため、最大耐力Pmaxは、ほぼ同値となった。
図15は、各試験体の特性値を示す図である。いずれの試験体においても、壁倍率は1/120rad時耐力で決まり、標準タイプ、軽量フレームタイプ、腰壁高タイプでそれぞれ1.56倍、0.93倍、2.05倍となった。壁倍率が1/120rad時耐力で決まった理由は、開口部位置の柱の曲げ変形が主体となり壁全体としての剛性が低くなることが原因と考えられる。標準タイプおよび腰壁高タイプについては、目標壁倍率である1.0倍は満足できた。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の実施形態では、柱10Aと梁20、30、40、41で囲まれた部分に、木質面材としてパネル材50(板材54、板材57)を設けたが、これに限らず、木質面材として、平面部を有する木質系筋交い材を用いてもよい。この場合、柱の鉛直軸材同士の間や梁の水平軸材同士の間に、木質系筋交い材の平面部を挿入して接合する。
【符号の説明】
【0033】
1、1A…木質架構 2…建物構造体 3…床面
4…移動式建物 5…台車 6…建物部
10、10A…柱(木質柱) 11…鉛直軸材 12…鉛直つづり材
20、21…梁(木質梁) 22…水平軸材 23…水平つづり材
30、31…床梁(木質梁) 40…下側の中間梁(木質梁)
41…上側の中間梁(木質梁)
50…パネル材(木質面材) 51…腰壁 52…垂壁 53…枠材
54…板材 55…角材 56…枠材 57…板材
60…貫通孔 61…ボルト(連結金物) 62…ナット(連結金物)
63…突起部 64…凹部 65…凹部 66…凹部 67…ダボ材
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