(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025157
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】処理操作保証システム、処理操作保証装置および処理操作保証方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20250214BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129677
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 一希
(72)【発明者】
【氏名】島田 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】八木 大介
(72)【発明者】
【氏名】中土 裕樹
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】処理実績までも含めた証跡情報を照合することで、材料への処理操作を保証する処理操作保証システム、装置及び方法を提供する。
【解決手段】処理操作保証システム1であって、アセット管理システムは、製品の材料の取引情報を含む取引情報記憶部を備える。保証システムは、材料に対する1つ以上の処理操作の情報を含む処理操作記憶部と、処理操作に係る実行パラメータの設定入力情報を処理操作記憶部に記録させる実行パラメータ認証部と、材料に対して処理操作を実行した装置から処理実績を取得して処理操作記憶部に記録させる処理実績取得部と、材料について、少なくとも、取引情報と、実行パラメータと、処理実績と、が整合する関係にある場合に、材料に行われた処理操作を保証する情報を出力する処理操作保証部と、を備える
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の材料の取引情報を含む取引情報記憶部と、
前記材料に対する1つ以上の処理操作の情報を含む処理操作記憶部と、を備え、
前記処理操作に係る実行パラメータの設定入力情報を前記処理操作記憶部に記録させる実行パラメータ認証部と、
前記材料に対して前記処理操作を実行した装置から処理実績を取得して前記処理操作記憶部に記録させる処理実績取得部と、
前記材料について、少なくとも、前記取引情報と、前記実行パラメータと、前記処理実績と、が整合する関係にある場合に、前記材料に行われた処理操作を保証する情報を出力する処理操作保証部と、
を備えることを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項2】
請求項1に記載の処理操作保証システムであって、
前記材料は、前記取引情報と紐づけられた固有の材料識別子を有し、
前記実行パラメータ認証部および前記処理実績取得部は、前記材料識別子に関連付けて、前記実行パラメータの前記設定入力情報および前記処理実績を前記処理操作記憶部に記録させ、
前記処理操作保証部は、前記材料識別子を用いて前記整合を判定する、
ことを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項3】
請求項2に記載の処理操作保証システムであって、
前記製品に固有の製品識別子を付与する製品識別子付与部を備え、
前記処理操作保証部は、前記製品識別子を受け付けて少なくとも前記材料識別子を特定し、前記製品ごとに、前記取引情報と、前記実行パラメータと、前記処理実績とについての前記整合を判定する、
ことを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項4】
請求項3に記載の処理操作保証システムであって、
前記取引情報には、前記材料の取引量が含まれ、
前記実行パラメータには、前記材料の投入量が含まれ、
前記処理実績には、前記製品の製品重量と前記処理操作における材料ロス量とが含まれ、
前記処理操作保証部は、前記取引量と、前記投入量と、前記製品重量と、前記材料ロス量とが所定の関係を満たす場合に、前記整合する関係にあると判定する、
ことを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項5】
請求項4に記載の処理操作保証システムであって、
前記取引情報には、前記材料の環境負荷情報が含まれ、
前記処理実績には、前記処理操作の資源・エネルギー使用実績が含まれ、
前記処理操作保証部は、前記材料の環境負荷情報と、前記製品重量と、前記資源・エネルギー使用実績とを用いて、前記製品についての環境負荷情報を特定して前記保証する情報を出力する、
ことを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項6】
請求項5に記載の処理操作保証システムであって、
前記材料の環境負荷情報は、前記材料についてのプロダクトカーボンフットプリントであって、
前記資源・エネルギー使用実績には、電力の使用実績が含まれ、
前記処理操作保証部は、前記材料についてのプロダクトカーボンフットプリントと、前記電力の使用実績と、を用いて、前記製品についてのプロダクトカーボンフットプリントを特定して前記保証する情報を出力する、
ことを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項7】
請求項5に記載の処理操作保証システムであって、
前記材料の環境負荷情報は、前記材料についてのプロダクトウォーターフットプリントであって、
前記資源・エネルギー使用実績には、水の使用実績が含まれ、
前記処理操作保証部は、前記材料についてのプロダクトウォーターフットプリントと、前記水の使用実績と、を用いて、前記製品についてのプロダクトウォーターフットプリントを特定して前記保証する情報を出力する、
ことを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項8】
請求項4に記載の処理操作保証システムであって、
前記処理操作は2以上の種類の前記材料を配合して実行されるものであり、
前記取引情報には、前記材料を構成する原料の配合比と、前記材料製造時の原料ロス量とを含む材料マテリアルバランスが含まれ、
前記実行パラメータには、前記材料の配合比が含まれ、
前記処理操作保証部は、前記材料マテリアルバランスと、前記材料の配合比と、前記製品重量と、前記材料ロス量とを用いて、前記製品の製品マテリアルバランスを特定して前記保証する情報を出力する、
ことを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項9】
請求項1に記載の処理操作保証システムであって、
前記材料は再生材である、
ことを特徴とする処理操作保証システム。
【請求項10】
製品の材料の取引情報を含む取引情報記憶部と、
前記材料に対する1つ以上の処理操作の情報を含む処理操作記憶部と、を備え、
前記処理操作に係る実行パラメータの設定入力情報を前記処理操作記憶部に記録させる実行パラメータ認証部と、
前記材料に対して前記処理操作を実行した装置から処理実績を取得して前記処理操作記憶部に記録させる処理実績取得部と、
前記材料について、少なくとも、前記取引情報と、前記実行パラメータと、前記処理実績と、が整合する関係にある場合に、前記材料に行われた処理操作を保証する情報を出力する処理操作保証部と、
を備えることを特徴とする処理操作保証装置。
【請求項11】
情報処理装置を用いて行う材料の処理操作保証方法であって、
前記情報処理装置は、
製品の材料の取引情報を含む取引情報記憶部と、
前記材料に対する1つ以上の処理操作の情報を含む処理操作記憶部と、を備え、
前記処理操作に係る実行パラメータの設定入力情報を前記処理操作記憶部に記録させる実行パラメータ認証ステップと、
前記材料に対して前記処理操作を実行した装置から処理実績を取得して前記処理操作記憶部に記録させる処理実績取得ステップと、
前記材料について、少なくとも、前記取引情報と、前記実行パラメータと、前記処理実績と、が整合する関係にある場合に、前記材料に行われた処理操作を保証する情報を出力する処理操作保証ステップと、
を実施することを特徴とする処理操作保証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理操作保証システム、処理操作保証装置および処理操作保証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の大量消費、大量廃棄のリニアエコノミーから循環型のサーキュラーエコノミーに転換する社会潮流の中、廃棄物から材料を回収してリサイクルした再生材を活用する社会的要求が高まっている。それに伴い、バージン材の価格が下落した際に、材料メーカや製造メーカがバージン材を再生材と偽って使用・販売する問題が生じているとも考えられる。
【0003】
再生材の偽装を防止するには、第三者による監査を行うことが対策として考えられるが、監査だけでは日常業務の細やかな部分についてまでは監視の目が不足するため、材料を使った実績を保証する仕組みが必要である。
【0004】
対象物に対する取引情報や処理操作の実行パラメータを対象物に付与されたマーキングに基づき認証し、偽造防止安全性等を提供する技術は、特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1には、物理的な対象物の認証方法に関し、「物理的な対象物の取引を管理するためのシステムであって、前記システムは、当事者間の1以上の物理的な対象物の取引に関連する対象物取引を記録するように適合された第1の分散台帳に接続でき、前記システムは、1つ以上の前記物理的な対象物に関して実行された対象物処理操作を示すデータを記録するように適合された第2の分散台帳、及び、前記処理操作の実行パラメータを取得し、前記処理操作の実行パラメータを認証し、及び、前記第2の分散台帳に、前記認証された処理操作を記録することを実行することによって、1つ以上の前記物理的な対象物に関して実行される処理操作を認証するように適合された対象処理管理モジュール、を有し、これにより、1つ以上の前記物理的な対象物に関して実行される前記処理操作の実行パラメータが、1つ以上のそれぞれの予め定められた条件を満たすことを認証する際に、1つ以上の前記物理的な対象物に関連する対象物取引を記録できる、システム」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、処理操作の結果として得られた製品に関わる処理実績が考慮されておらず、製品が予定通り得られた保証がない。例えば、製品の不良率が高い場合には、実態としては材料のロス量が基準を超える場合が多くある。しかし、処理実績を考慮しない場合、完成した製品に消費された材料についてのみの処理操作を保証することが可能となってしまう。言い換えると、不良製品に消費された材料のロス量が把握できず、実態と乖離する。本発明の目的は、処理実績までも含めた証跡情報を照合することで、材料への処理操作を保証する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係る処理操作保証システムは、製品の材料の取引情報を含む取引情報記憶部と、材料に対する1つ以上の処理操作の情報を含む処理操作記憶部と、を備え、処理操作に係る実行パラメータの設定入力情報を処理操作記憶部に記録させる実行パラメータ認証部と、材料に対して処理操作を実行した装置から処理実績を取得して処理操作記憶部に記録させる処理実績取得部と、材料について、少なくとも、取引情報と、実行パラメータと、処理実績と、が整合する関係にある場合に、材料に行われた処理操作を保証する情報を出力する処理操作保証部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理実績までも含めた証跡情報を照合することで、材料への処理操作を保証する技術を提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】処理操作保証システムの構成例を示す図である。
【
図2】処理操作記録処理の処理フローの例を示す図である。
【
図3】材料出庫処理の処理フローの例を示す図である。
【
図4】製造実行処理の処理フローの例を示す図である。
【
図6】取引情報記憶部のデータ構造の例を示す図である。
【
図7】処理操作記憶部のデータ構造の例を示す図である。
【
図8】処理操作保証システムの情報処理装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図9】処理操作保証システム(分散)の構成の例を示す図である。
【
図10】処理操作保証システム(データ独立)の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0012】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0013】
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。また、これらの表現で説明される識別情報は、実施例において記号、数値、自然言語、又はそれらの組み合わせ等を用いて表すが、識別情報はこれら以外の形式でもよい。
【0014】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0015】
実施例において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0016】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0017】
また、本発明は典型的には情報処理装置により実現されるものであるが、本発明の機能を有するプラットフォームとして実現されてもよい。
【0018】
図1は、処理操作保証システムの構成例を示す図である。処理操作保証システム1は、処理操作保証装置を含む。
【0019】
例えば、処理操作保証装置は、複数のサブシステムを備える情報処理装置である。例えば、処理操作保証装置には、生産管理システム11と、製造統括システム12と、アセット管理システム13と、保証システム14と、製造実行システム15と、を備える。また、各サブシステムは、相互に連携して各種の処理を実行する。
【0020】
また、処理操作保証装置は、サブシステム以外にも、図示しない機能部を有している。具体的には、処理操作保証装置は、入力装置を介してユーザからの指示や情報の入力を受け付ける入力受付部を有している。また、出力装置(ディスプレイ)に表示される表示情報(画面情報)を生成する出力表示部を有している。
【0021】
また、処理操作保証装置の記憶部は、アセット管理システム13にて用いられる取引情報記憶部131を有している。また、記憶部は、保証システム14に用いられる処理操作記憶部144を有している。
【0022】
また、処理操作保証装置は、外部装置との間で情報通信を行う通信部を有している。具体的には、通信部は、例えばインターネット等の公衆網やLAN(Local Area Network)あるいはWAN(Wide Area Network)、VPN(Virtual Private Network)等を一部または全部に用いた通信網、携帯電話通信網等、のいずれかまたはこれらを複合したネットワークなどの通信経路を介して外部装置と相互通信可能に接続されている。なお、ネットワークは、Wi-Fi(登録商標)や5G(Generation)等の無線による通信網であってもよい。
【0023】
なお、これらの入力受付部、出力表示部、記憶部および通信部は、各サブシステムの機能部と協働して様々な処理を実行する。
【0024】
次に、生産管理システム11の機能構成について説明する。生産管理システム11は、生産計画の管理に関する様々な処理を実行する処理部として機能するシステムである。具体的には、生産管理システム11は、生産計画管理部111を含む。生産計画管理部111は、受注状況および在庫状況に合わせて、生産仕様、数量、および時期などを含む生産計画を生成する。
【0025】
次に、製造統括システム12の機能構成について説明する。製造統括システム12は、製造実行システム15に対して所定の製品の製造指示を行う等、製造に関する統括的な処理を行う処理部である。具体的には、製造統括システム12は、製造条件決定部121と、アセット情報取得部122と、製造実行指示部123と、を有している。
【0026】
製造条件決定部121は、生産計画管理部111により生成された生産計画を用いて製造条件を決定する。なお、製造条件には、例えば製品の製造設備を特定する情報、製造に使用する材料(例えば、再生材を含む)の型番およびロットを特定する情報、生産する製品の数量と生産時期、および材料の保証量(例えば、再生材の最小使用量)が少なくとも含まれる。
【0027】
ここで、材料の保証量とは、処理操作保証システム1のユーザすなわち製造メーカが製品の製造への使用を保証したい材料(再生材またはバージン材を含む)の重量である。例えば、再生材を重量比50%使用していることを保証する製品を製造する場合には、当該再生材の重量の最小値が材料の保証量である。
【0028】
また、製造設備とは、製品の製造に用いる設備である。例えば、加工対象とする材料がプラスチックの場合、製品の製造に使用する材料の乾燥機、混合機、輸送機および、材料の成形に関する射出成形機、押出成形機などが製造設備に含まれる。
【0029】
また、材料の型番とは、材料の特性を識別するために材料メーカが定めている識別情報(例えば、番号)である。また、材料のロットとは、同一の型番の材料に対して材料メーカが定めている生産あるいは納品の最小単位である。ロットは、例えば〇〇年〇〇月に〇〇ラインで加工した材料であること等をトレース可能とするための情報である。同じ製品であっても、材料のロットが異なると、品質等に傾向の違いが出やすいこともあるため、ロットはそのトレーサビリティのために用いる情報であるともいえる。
【0030】
ここで、取引情報とは、材料の取引に付随する情報で、例えば、材料の型番やロットのほか、サプライヤからの材料の入庫量、バックヤードにある材料の在庫量、製造に用いる材料の出庫量、製造設備への材料の投入量などを含む。
【0031】
サプライヤとは、製造する製品に用いる材料を販売するメーカあるいは商社の総称である。
【0032】
製造条件決定部121は、アセット情報取得部122に材料の取引情報の取得要求を出し、アセット情報取得部122から材料の型番、ロットおよび材料の在庫量を含む取引情報を受け取ると、少なくとも製造に使用する材料の型番およびロット、投入量を決定する。また、製造条件決定部121は、決定した製造条件を製造実行指示部123に出力する。
【0033】
アセット情報取得部122は、材料の取引情報をアセット管理システム13から取得する。具体的には、アセット情報取得部122は、製造条件決定部121から材料の取引情報の取得要求を受けると、アセット管理システム13の材料取引情報管理部132から材料の型番およびロットを含む取引情報を取得する。
【0034】
製造実行指示部123は、製造実行システム15に対して製造の実行を指示する。具体的には、製造実行指示部123は、製造条件決定部121からの要求に基づいて、製造指示を製造実行部151に出力する。なお、製造実行指示部123は、かかる製造指示と共に、製造に用いる材料の型番およびロットや、製造条件決定部121により決定された製造条件である投入量、加工温度等も合わせて製造実行部151に出力する。
【0035】
また、製造実行指示部123は、保証システム14の実行パラメータ認証部142から製造条件の取得要求を受けると、製造条件決定部121から取得した製造条件を実行パラメータ認証部142に出力する。
【0036】
次に、アセット管理システム13の機能構成について説明する。アセット管理システム13は、材料の取引に関する様々な処理を行う処理部として機能する。具体的には、アセット管理システム13は、取引情報記憶部131と、材料取引情報管理部132と、を含む。
【0037】
材料取引情報管理部132は、取引情報記憶部131を参照し、材料の取引情報を管理する。具体的には、材料取引情報管理部132は、アセット情報取得部122から材料の型番およびロットを含む取引情報の取得要求を受け付けると、取引情報記憶部131を参照し、かかる材料の型番、ロットおよび在庫量を含む取引情報をアセット情報取得部122に出力する。
【0038】
また、材料取引情報管理部132は、製造実行システム15の出庫工程152における、材料識別子読取部1521から材料識別子に紐づく出庫量の情報を受け付けると、取引情報記憶部131を参照し、かかる材料の出庫量および出庫後の在庫量を取引情報記憶部131に格納する。
【0039】
ここで、材料識別子とは、材料の型番およびロットに紐づく、材料の同定に用いられる名前や数字、符号のことであり、取引情報と紐づけられている情報である。なお、材料識別子の形態はバーコードやQRコード(登録商標)など物理的なものに限らず、蛍光X線や蛍光指紋等の、各種の分析手法により識別可能な化学的なものであってもよい。
【0040】
また、材料取引情報管理部132は、製造実行システム15の処理工程153における、材料識別子読取部1531から材料識別子に紐づく投入量の情報を受け取ると、取引情報記憶部131を参照し、かかる材料の投入量を取引情報記憶部131に格納する。
【0041】
また、材料取引情報管理部132は、保証システム14の取引情報取得部141から材料識別子に紐づく取引情報の取得要求を受け付けると、取引情報記憶部131を参照して、取引情報を取引情報取得部141に出力する。
【0042】
次に、保証システム14の機能構成について説明する。保証システム14は、材料に行われた処理操作の保証や製品識別子(製造設備によって製造された製品に固有の識別子)の発行に関する処理を行う処理部として機能する。具体的には、取引情報取得部141と、実行パラメータ認証部142と、処理実績取得部143と、処理操作記憶部144と、処理操作保証部145と、を含む。
【0043】
取引情報取得部141は、材料識別子に紐づく出庫量と、投入量と、を含む取引情報を材料取引情報管理部132から取得する。具体的には、取引情報取得部141は、処理操作保証部145から材料識別子に紐づく取引情報の取得要求を受け付けると、材料取引情報管理部132に、材料識別子に紐づく取引情報の取得要求を出力する。
【0044】
また、取引情報取得部141は、材料取引情報管理部132から、材料識別子に紐づく材料の取引情報を取得すると、処理操作保証部145に、材料識別子に紐づく材料の取引情報を出力する。
【0045】
実行パラメータ認証部142は、ユーザが製造設備に入力した実行パラメータが、製造条件に適合しているか照合する。具体的には、実行パラメータ認証部142は、ユーザが入力した製造条件を製造実行システム15の処理工程153における処理条件入力部1532から受け付けると、製造条件決定部121が決定した製造条件を製造実行指示部123に要求して取得する。
【0046】
また、実行パラメータ認証部142は、製造条件決定部121で決定した製造条件を製造実行指示部123から受け取り、処理条件入力部1532から受け付けた製造条件(すなわち、ユーザにより入力された実行パラメータ)との適合を判定する。実行パラメータ認証部142は、製造条件が一致あるいは対応している場合、処理条件入力部1532から受け取った製造条件は適合していると判定し、処理条件入力部1532に適合結果を出力し、処理操作記憶部144に実行パラメータを格納する。
【0047】
ここで、実行パラメータとは、製造条件を元にユーザが製造設備に入力設定する値である。すなわち、実行パラメータは、製造条件決定部121によって決められた製造条件と原則的には一致する。例えば、実行パラメータには、投入する材料の型番、ロット、投入量が含まれる。
【0048】
処理実績取得部143は、材料の処理操作を実行した装置(加工装置等)から処理実績を取得する。具体的には、処理実績取得部143は、製造実行システム15の処理工程153の処理実績管理部1534から材料の処理実績を取得し、材料の処理実績を材料識別子に関連付けて処理操作記憶部144に格納する。
【0049】
ここで、処理実績とは、処理工程153における製造設備が材料に施された加工の結果得られる出力値である。例えば、処理実績には、得られた製品重量、材料ロス量等を含む。材料ロス量とは、製造設備に投入した材料が製造設備によって加工されるも、製品そのものではない部分の重量である。例えば、射出成形品のランナー部品等は、材料ロス量とされる。また、基準品質を満たさない部品・製品についても、材料のロス量として計上される。
【0050】
処理操作保証部145は、材料に行われた処理操作の保証(処理操作が製造条件に従って行われたことを客観的に保証する結果を、問い合わせに応じて出力する処理)や製品識別子の発行を行う。具体的には、処理操作保証部145は、製品識別子を受け付けて、材料識別子に紐づいた取引情報を取引情報取得部141に要求し、取引情報取得部141から取引情報を受け取る。また、処理操作保証部145は、取引情報を受け取った後、処理操作記憶部144を参照し、製品に関わる識別子に紐づいた実行パラメータの認証記録と、材料識別子に紐づいた処理実績と、を取得して整合を確認し、整合する関係にある場合に、材料に行われた処理操作を保証する情報(例えば、製品識別子)を出力する。
【0051】
次に、製造実行システム15の機能構成について説明する。製造実行システム15は、製造統括システム12からの指示に基づき、所定の製造プロセスを実行することで製品の製造を行う処理部として機能する。具体的には、製造実行システム15には、製造実行部151と、出庫設備を用いて出庫を行う出庫工程152と、製造設備を用いて製造を行う処理工程153とが含まれる。
【0052】
製造実行部151は、製造統括システム12からの指示に基づく所定の製造プロセスを実行して製品の製造を行う。具体的には、製造実行部151は、製造実行指示部123から製造条件を含む製造実行の指示を受け取り、出庫工程152の、材料識別子読取部1521に材料の出庫指示を出す。
【0053】
出庫工程152では、製造条件に従って材料を出庫する。具体的には、出庫工程152には、材料識別子読取部1521と、出庫実行部1522とが含まれる。
【0054】
材料識別子読取部1521は、製造実行部151から材料の出庫量を含む製造条件を受け付け、出庫する材料の材料識別子を読み取る。具体的には、材料識別子読取部1521は、製造実行部151から製造条件と製造実行指示を受け付けると、製造条件に従って、使用する材料の材料識別子を該材料識別子に応じた読み取り方法で読み取る。例えば、材料識別子読取部1521は、材料識別子がバーコードやQRコード等であれば、光学的に読み取るセンサを用いて、蛍光X線や蛍光指紋などの各種の分析手法により識別可能な化学的なものである場合には、蛍光X線分析装置を用いて、読み取る。
【0055】
また、材料識別子読取部1521は、読み取った材料の出庫量を材料取引情報管理部132に出力する。
【0056】
出庫実行部1522は、材料の出庫を行う。具体的には、出庫実行部1522は、材料識別子を読み取った材料を製造条件に従って出庫し、処理工程153の材料識別子読取部1531へ出庫した材料を搬送する。
【0057】
処理工程153は、出庫した材料に製造条件に従って処理操作を施す。具体的には、処理工程153には、材料識別子読取部1531と、処理条件入力部1532と、処理実行部1533と、処理実績管理部1534と、製品識別子付与部1535と、が含まれる。
【0058】
材料識別子読取部1531は、処理工程153に投入する材料の材料識別子を読み取る。具体的には、材料識別子読取部1531は、製造条件に従って、使用する材料の材料識別子を該材料識別子に応じた読み取り方法で読み取る。材料識別子の読み取り方法は、材料識別子読取部1521と同様である。材料識別子読取部1531は、材料識別子に紐づく取引情報を材料取引情報管理部132に要求し、材料識別子読取部1531が備える画面に材料情報を表示し、投入量を材料取引情報管理部132に出力し、処理条件入力部1532に制御を移す。
【0059】
処理条件入力部1532は、材料の処理条件をユーザから受け付ける。具体的には、処理条件入力部1532は、ユーザから材料に対する製造条件に応じた実行パラメータの入力を受け付け、入力された実行パラメータを実行パラメータ認証部142に出力する。
【0060】
また、処理条件入力部1532は、実行パラメータ認証部142から、実行パラメータの認証結果を受け取ると、次の処理実行部1533に実行パラメータを受け渡す。
【0061】
処理実行部1533は、認証された実行パラメータによる処理操作を材料に実行する。具体的には、処理条件入力部1532から受け取った処理条件に従って、切断、成型、加工、研磨等の各種の加工の処理操作を実行する。
【0062】
処理実績管理部1534は、材料に処理操作を実行した結果得られた処理実績を出力する。具体的には、処理実績管理部1534は、処理実行部1533から材料の処理が完了した出力情報(処理実績、少なくとも得られた製品重量、材料ロス量を含む)を受け取ると、材料識別子に紐づけて処理実績取得部143に受け渡す。
【0063】
製品識別子付与部1535は、材料への処理操作を実行した製品に固有の製品識別子を付与する。具体的には、製品識別子付与部1535は、処理操作保証部145から材料の処理操作が保証された信号および製品識別子を受け取ると、受け取った製品識別子を製品に付与する。例えば、製品識別子付与部1535は、製品識別子を製品に貼り付け、あるいは刻印する。
【0064】
以上、各サブシステムの機能構成について説明した。
【0065】
[動作の説明]
図2は、処理操作記録処理の処理フローの例を示す図である。処理操作記録処理は、例えば入力装置を介して入力受付部が製造処理の実行指示をユーザから受け付けると開始される。
【0066】
材料がサプライヤから入荷されると、材料取引情報管理部132は、材料の入庫処理を行う(ステップS01)。具体的には、材料取引情報管理部132は、材料の型番、ロット、入荷量と、を含む材料の取引情報を受け取り、取引情報記憶部131に格納する。
【0067】
次に、生産計画管理部111は、生産計画を決定する(ステップS02)。具体的には、生産管理システム11の生産計画管理部111は、出力表示部を介して、記憶部から取得した生産情報(例えば、製造する製品の量とその時期)を表示するための画面情報を生成し、これを出力装置(ディスプレイ)に表示する。
【0068】
生産計画の決定にあたって、ユーザ(生産計画担当者)は、表示された受注状況や在庫状況を参照し、入力装置を介して適切な生産仕様、数量および時期を入力する。生産計画管理部111は、入力受付部を介して入力情報を取得すると、所定のアルゴリズムに基づき生産計画を決定する。
【0069】
なお、生産計画管理部111は、ロジスティクス全体を最適化するための数理計画モデルおよびそのアルゴリズムを用いることにより、ユーザからの入力に依らず、自動で生産計画を決定しても良い。なお、かかる数理計画モデルやアルゴリズムは予め記憶部に記憶されていれば良い。
【0070】
次に、製造統括システム12の製造条件決定部121は、製造条件を決定する(ステップS03)。具体的には、製造条件決定部121は、生産計画を記憶部から取得する。また、製造条件決定部121は、出力表示部を介して、記憶部から取得した生産計画を表示し、製造条件の入力を受け付けるための画面情報を生成し、これを出力装置(ディスプレイ)に表示する。
【0071】
なお、製造条件決定部121は、生産効率を最適化するための数理計画モデルおよびそのアルゴリズムを用いることにより、ユーザからの入力に依らず、自動で製造条件を決定しても良い。また、かかる数理計画モデルやアルゴリズムは予め記憶部に記憶されていれば良い。
【0072】
なお、アセット情報取得部122は、製造条件に含まれる材料の取引情報を材料取引情報管理部132に対して要求する。具体的には、アセット情報取得部122は、材料の型番およびロットを含む材料の認証情報(サプライヤが作る出荷情報)の提供要求を材料取引情報管理部132に出力する。アセット情報取得部122は、材料の認証情報を材料取引情報管理部132から受け取ると、製造条件決定部121に受け渡す。製造条件決定部121は、材料の型番およびロット、その在庫量を用いて製造条件を決定する。
【0073】
次に、製造実行システム15の出庫工程152では、後述する材料出庫処理を行う(ステップS04)。材料出庫処理の詳細については後述する。
【0074】
次に、製造実行システム15の処理工程153では、後述する製造実行処理を行う(ステップS05)。製造実行処理の詳細については後述する。
【0075】
以上が、処理操作記録処理の処理フローの例である。処理操作記録処理によれば、材料の入庫から製品の製造まで、材料取引情報管理部132を介して材料識別子を用いて自動的に管理・記録することが可能となるため、客観性を持って公正に処理操作を記録することができる。
【0076】
次に、材料出庫処理(ステップS04)の詳細について説明する。
図3は、材料出庫処理の処理フローの例を示す図である。
【0077】
まず、材料識別子読取部1521は、材料識別子を読み取る(ステップS041)。そして、材料識別子読取部1521は、材料取引情報管理部132に取引情報の取得要求を送り、取引情報記憶部131にある取引情報を取得する。
【0078】
そして、出庫実行部1522は、製造条件に従って材料を特定し、出庫して後工程に送付する。その際、出庫実行部1522は、材料識別子と、出庫量とを取引情報記憶部131に記録する(ステップS042)。
【0079】
以上が、材料出庫処理の処理フローの例である。材料出庫処理によれば、製造条件に応じた材料の出庫を行い、出庫量を取引情報に記録することができる。
【0080】
次に、製造実行処理(ステップS05)の詳細について説明する。
図4は、製造実行処理の処理フローの例を示す図である。
【0081】
まず、材料識別子読取部1531は、前工程(例えば、複数工程からなる場合には直前の工程あるいは出庫工程152)から材料を受け取る(ステップS051)。
【0082】
そして、材料識別子読取部1531は、材料から材料識別子を読み取り、製造設備への材料の投入量を取引情報記憶部131に記録する(ステップS052)。具体的には、材料識別子読取部1531は、材料から材料識別子を読み取り、材料識別子に紐づいた材料の取引情報を材料取引情報管理部132から取得する。あわせて、材料識別子読取部1531は、製造設備への材料の投入量を材料識別子に紐づけて材料取引情報管理部132に受け渡し、記録する。
【0083】
そして、処理条件入力部1532は、処理条件を受け付ける(ステップS053)。具体的には、処理条件入力部1532は、製造設備のインターフェースを通じて、ユーザからの処理条件(製造条件と同様の情報)の入力を実行パラメータとして受け付ける。処理条件入力部1532は、入力された処理条件を実行パラメータ認証部142へ受け渡す。
【0084】
実行パラメータ認証部142は、製造実行指示部123から受け取った製造条件と、処理条件入力部1532から受け取った処理条件が一致あるいは対応するか判定する(ステップS054)。
【0085】
製造条件と、入力された処理条件とが一致も対応もしない場合(ステップS054にて「No」の場合)、実行パラメータ認証部142は、処理条件入力部1532から受け取った処理条件は製造条件に適合していないと判定し、その旨を示すアラートを出力する(ステップS055)。そして、処理条件入力部1532は、製造実行処理を終了させる。
【0086】
製造条件と、入力された処理条件とが一致または対応する場合(ステップS054にて「Yes」の場合)、実行パラメータ認証部142は、処理条件入力部1532から受け取った処理条件は製造条件に適合していると判定し、処理条件入力部1532に適合結果を出力し、入力された処理条件を実行パラメータとして認証する(処理操作記憶部144に格納する)(ステップS056)。
【0087】
そして、処理実行部1533は、材料に処理操作を行って製造を実行する(ステップS057)。
【0088】
処理実績管理部1534は、材料の処理実績を記録する(ステップS058)。具体的には、処理実績管理部1534は、材料の処理実績として、製品重量と、材料ロス量とを含めて処理実績取得部143に出力し、処理実績取得部143は、処理操作記憶部144に処理実績を格納する。
【0089】
そして、製品識別子付与部1535は、製品識別子を付与する(ステップS059)。具体的には、処理操作保証部145は、処理実績が格納された製品に付与する固有の製品識別子を特定し、製品識別子付与部1535に受け渡す。製品識別子付与部1535は、該製品に所定の態様で製品識別子を付与する。そして、製品識別子付与部1535は、後工程に製品を送る(ステップS060)。
【0090】
以上が、製造実行処理の処理フローの例である。製造実行処理によれば、製造条件に適合する場合に限り製品の製造を行い、また証跡としての処理実績を取引情報に記録することができる。
【0091】
次に、保証処理の詳細について説明する。
図5は、保証処理フローの例を示す図である。保証処理は、ユーザから処理開始指示を受け付けると、開始される。
【0092】
まず、処理操作保証部145は、製品識別子を受け付ける(ステップS10)。具体的には、処理操作保証部145は、製品識別子の入力を受け付ける。
【0093】
そして、処理操作保証部145は、製品識別子に関連する材料識別子を特定する(ステップS11)。具体的には、処理操作保証部145は、処理操作記憶部144を参照し、入力を受け付けた製品識別子に関連する識別子(製品識別子、部品識別子、製品・部品に使われた材料識別子(リサイクル材、バージン材、添加剤))を特定する。
【0094】
そして、処理操作保証部145は、材料識別子に関する処理操作と、取引情報を取得する(ステップS12)。具体的には、処理操作保証部145は、特定した材料識別子に関して、処理操作記憶部144の処理操作(実行パラメータ)を取得する。また、処理操作保証部145は、特定した材料識別子に関して、取引情報取得部141を介して、取引情報記憶部131の材料の出庫量と、認証された材料の投入量とを含む取引情報を取得する。
【0095】
そして、処理操作保証部145は、取引情報と、実行パラメータ認証記録と、処理実績との整合を判定する(ステップS13)。具体的には、処理操作保証部145は、取引情報に含まれる出庫量と、材料の投入量と、実行パラメータに応じた製品重量と材料ロス量と、が所定の整合関係にあるか否かを判定する。例えば、出庫量は材料の投入量未満である場合は、整合しないといえる。また例えば、投入量が製品重量と材料ロス量の和未満である場合は、整合しないといえる。整合しない場合(ステップS13にて「No」の場合)には、処理操作保証部145は、制御を後述するステップS15へ進める。
【0096】
整合する場合(ステップS13にて「Yes」の場合)には、処理操作保証部145は、製品重量と材料ロス量の関係が、製造条件決定部121で決定された保証量(最低使用量)をクリアしているか判定する(ステップS14)。クリアしていない場合、例えば製品重量と材料ロス量から計算された量の関係が適切でない場合や、あるいは材料ロス量が多すぎる場合(ステップS14にて「No」の場合)には、処理操作保証部145は、アラートを出力し(ステップS15)、保証内容との差異の情報を提示する(ステップS16)。例えば、処理操作保証部145は、材料ロス量が多すぎることと、その度合いの情報を画面出力する。
【0097】
クリアしている場合、例えば製品重量と材料ロス量から計算された量の関係が適切な場合(ステップS14にて「Yes」の場合)には、処理操作保証部145は、材料の使用を保証する結果を出力する(ステップS17)。例えば、処理操作保証部145は、材料の使用を保証する情報を製品識別子に紐づけて処理操作記憶部144に記憶させる。また例えば、処理操作保証部145は、材料の使用を保証する情報を画面表示するための認証印、認証アイコン等を出力してもよい。
【0098】
以上が、保証処理の処理フローの例である。保証処理によれば、製品識別子を受け付けて、取引情報と、実行パラメータと、処理実績とを用いて、処理操作の保証製造条件に適合する場合に限り製品の製造を行い、また証跡としての処理実績を取引情報に記録することができる。
【0099】
[データの説明]
図6は、取引情報記憶部のデータ構造の例を示す図である。アセット管理システム13で用いられる取引情報記憶部131には、材料識別子と、材料の型番を識別する情報と、ロットを識別する情報と、サプライヤからの入荷量とに紐づけて、在庫の変動情報として変動のあった日時と、出庫量と、出庫量のうち材料として投入された投入量と、バックヤードの現在の在庫量と、が格納される。これにより、入荷された在庫がどのように出庫され、投入され、どの程度残存するのかを管理することができる。
【0100】
図7は、処理操作記憶部のデータ構造の例を示す図である。保証システム14で用いられる処理操作記憶部144には、製品識別子に紐づけて、処理操作ごとに、材料識別子と、実行パラメータと、処理実績のうち製品重量と、処理実績のうち材料ロス量と、が格納される。これにより、製品識別子を用いて、該製品に用いられている材料と、その処理操作における実行パラメータと、処理実績を管理することができる。
【0101】
[ハードウェア構成の説明]
図8は、処理操作保証システムの情報処理装置のハードウェア構成の例を示す図である。情報処理装置900は、プロセッサ901と、RAM(Random Access Memory)等のハードウェアのメモリ902と、ハードディスク装置(Hard Disk Drive:HDD)やSSD(Solid State Drive)などのストレージ903と、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性を有する記憶媒体904に対して情報を読む読取装置905と、キーボードやマウス、バーコードリーダ、タッチパネルなどの入力装置906と、ディスプレイなどの出力装置907と、LANやインターネットなどの通信ネットワークを介して他のコンピュータと通信する通信装置908とを備えた一般的な情報処理装置900、あるいはこの情報処理装置900を複数備えたネットワークシステムで実現できる。なお、読取装置905は、可搬性を有する記憶媒体904の読取だけでなく、書き込みも可能なものであっても良い。
【0102】
プロセッサ901は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、あるいはGPU(Graphics Processing Unit)である。プロセッサ901は、ストレージ903からメモリ902にロードした所定の各種プログラムを実行することにより、各種処理を実行する。該プログラムは、例えば、OS(Operating System)プログラム上で実行可能なアプリケーションプログラムである。該プログラムは、例えば、読取装置905を介して可搬性を有する記憶媒体904から、ストレージ903にインストールされてもよいし、あるいは、通信装置908を介してネットワークからダウンロードされてプロセッサ901により実行されるようにしてもよい。
【0103】
例えば、生産計画管理部111と、製造条件決定部121と、アセット情報取得部122と、製造実行指示部123と、材料取引情報管理部132と、取引情報取得部141と、実行パラメータ認証部142と、処理実績取得部143と、処理操作保証部145と、製造実行部151と、材料識別子読取部1521と、出庫実行部1522と、材料識別子読取部1531と、処理条件入力部1532と、処理実行部1533と、処理実績管理部1534と、製品識別子付与部1535とは、ストレージ903に記憶されているプログラムをメモリ902にロードしてプロセッサ901で実行することで実現可能である。
【0104】
入力受付部は、プロセッサ901が入力装置906と、通信装置908とを利用することで実現可能である。出力表示部は、プロセッサ901が出力装置907と、通信装置908とを利用することで実現可能である。記憶部は、プロセッサ901がメモリ902又はストレージ903を利用することにより実現可能である。通信部は、プロセッサ901が通信装置908を利用することにより実現可能である。
【0105】
以上が、本発明の実施形態に係る情報処理装置の例である。上記の第一の実施形態によれば、人手を介さずに処理実績までも含めた証跡情報を照合することで、材料への処理操作を保証することができるようになる。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、削除をすることも可能である。
【0106】
例えば、処理操作は2以上の種類の材料を配合して実行されるものである場合、取引情報には、材料を構成する原料の配合比と、材料製造時の原料ロス量とを含む材料マテリアルバランスを含むようにする。また、実行パラメータには、材料の配合比を含むようにすることで、処理操作保証部145は、材料マテリアルバランスと、材料の配合比と、製品重量と、材料ロス量とを用いて、製品のマテリアルバランスを特定して保証する情報を出力することが可能となる。
【0107】
また、例えば、上記の第一の実施形態においては、情報処理装置が行う処理は、処理負荷が高く、所定の処理時間で完了するためには高性能なハードウェアリソースを要求される場合がある。処理負荷を軽減する第二実施形態について、以下説明する。なお、第二実施形態に係る処理操作保証システムは、上記の第一実施形態に係る処理操作保証システム1と基本的に同様であり、差異点を中心に説明する。
【0108】
<第二実施形態>
第一実施形態に係る処理操作保証システムでは、製品メーカおよびサプライヤから得られる一次情報(取引情報、材料の投入量、製品の重量など)を用いて、材料の処理操作を保証する。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、製品メーカあるいはサプライヤから得られた一次情報を元に、所定の二次情報を算出することで、一次情報だけでなく二次情報までも保証対象を拡大することが可能である。
【0109】
例えば、取引情報記憶部131に、材料の環境負荷情報(例えば、二酸化炭素排出量等の温室効果ガス排出量等)を含ませ、製品の製品重量と処理操作の資源・エネルギー(例えば、電力、水等)使用実績を含む処理実績を処理操作記憶部144に含ませることで、処理操作保証部145が二次情報として製品の環境負荷情報(プロダクトカーボンフットプリントまたはプロダクトウォーターフットプリント)を計算して保証する機能を持つようにすることができる。
【0110】
<第三実施形態>
図9は、処理操作保証システム(分散)の構成の例を示す図である。第三実施形態では、
図9に示すように、各サブシステム、すなわち、生産管理システム11と、製造統括システム12と、アセット管理システム13と、保証システム14と、製造実行システム15とは、それぞれが独立したハードウェア(情報処理装置)上で実現され、ネットワーク50を介して互いに通信を行う分散モデル1´を構成する。各サブシステムは、処理負荷に応じてスケーラビリティを適切に設定できるため、処理操作保証システム全体として、リソースの無駄を減らすことができる。また、アセット管理システム13の取引情報記憶部131と、保証システム14の処理操作記憶部144との結合を疎にしやすくなるため、データの独立性が確保され、保証内容の透明性・信頼性を高く維持しやすい。
【0111】
<第四実施形態>
第三実施形態では、各サブシステムを実現する情報処理装置が、ネットワーク50により相互通信可能に接続されている構成とした。しかし、これに限られず、取引情報記憶部131を有するアセット管理システム13が他のサブシステム群から独立するようにしてもよい。
【0112】
図10は、処理操作保証システム(データ独立)の構成の例を示す図である。例えば、分散モデル1´´では、アセット管理システム13を実現する情報処理装置が外部にあり、それ以外のサブシステムである生産管理システム11、製造統括システム12および保証システム14および製造実行システム15を実現する情報処理装置とネットワーク50により通信可能に接続する。なお、第一の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0113】
このような構成によれば、例えば、材料の取引情報(取引情報記憶部131)を、外部の組織が保持・管理することができるようになるため、不正を防止しやすい、より強固な保証が可能になる。
【0114】
上記の各部、各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各部、各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0115】
なお、上述した実施形態にかかる制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えても良い。以上、本発明について、実施形態を中心に説明した。
【符号の説明】
【0116】
1:処理操作保証システム、11:生産管理システム、12:製造統括システム、13:アセット管理システム、14:保証システム、15:製造実行システム、111:生産計画管理部、121:製造条件決定部、122:アセット情報取得部、123:製造実行指示部123、132:材料取引情報管理部、141:取引情報取得部、142:実行パラメータ認証部、143:処理実績取得部、145:処理操作保証部、151:製造実行部、1521:材料識別子読取部、1522:出庫実行部、1531:材料識別子読取部、1532:処理条件入力部、1533:処理実行部、1534:処理実績管理部、1535:製品識別子付与部。