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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025164
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20250214BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20250214BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20250214BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H03H9/145 C
H03H9/17 F
H03H9/25 A
H03H9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129697
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】松森 仁明
(72)【発明者】
【氏名】森原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】倉田 浩平
【テーマコード(参考)】
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
5J097AA24
5J097BB11
5J097CC05
5J097DD19
5J097FF03
5J097KK09
5J097KK10
5J108AA07
5J108BB07
5J108BB08
5J108CC04
5J108EE03
5J108EE07
(57)【要約】
【課題】ビア導体の接合強度が向上した弾性波装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置1は、主面10aおよび10bを有する基板10と、主面10aと対面する主面20aを有する基板20と、主面20aに配置された機能電極34と、主面10aと主面20aとの間に配置された支持部と、主面10aから主面10bに向けて基板10に配置されたビア導体11と、を備え、支持部は、主面10aに配置され、ビア導体11と接する金属膜31と、金属膜31を挟んでビア導体11と反対側に配置された金属膜32と、を有し、主面10aの平面視において、金属膜31の領域はビア導体11の領域を含み、かつ、金属膜31の面積はビア導体11の面積よりも大きく、金属膜32の領域はビア導体11の領域を含み、かつ、金属膜32の面積はビア導体11の面積よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面および第2主面を有する第1基板と、
前記第1主面と対面する第3主面を有する第2基板と、
前記第3主面に配置された機能電極と、
前記第1主面と前記第3主面との間に配置され、前記第1主面と前記第3主面との間に空間が設けられるよう構成された支持部と、
前記第1主面から前記第2主面に向けて前記第1基板に配置されたビア導体と、を備え、
前記支持部は、
前記第1主面に配置され、前記ビア導体と接する第1金属膜と、
前記第1金属膜を挟んで前記ビア導体と反対側に配置され、前記第1金属膜と接する第2金属膜と、を有し、
前記第1主面の平面視において、
前記第1金属膜の領域は前記ビア導体の領域を含み、かつ、前記第1金属膜の面積は前記ビア導体の面積よりも大きく、
前記第2金属膜の領域は前記ビア導体の領域を含み、かつ、前記第2金属膜の面積は前記ビア導体の面積よりも大きい、
弾性波装置。
【請求項2】
前記第1主面の平面視において、
前記第1金属膜の領域は前記第2金属膜の領域を含み、かつ、前記第1金属膜の面積は前記第2金属膜の面積よりも大きい、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記第1金属膜は、
前記第1主面側から順に、第1主電極層、第1拡散防止層、および第1接合層を有し、
前記第2金属膜は、
前記第1主面側から順に、第2接合層、第2拡散防止層、および第2主電極層を有する、
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記支持部は、さらに、
前記第3主面に配置され、前記機能電極と接続され、前記第2金属膜と接する第3金属膜を有し、
前記第3主面の平面視において、
前記第3金属膜の領域は前記第2金属膜の領域を含み、かつ、前記第3金属膜の面積は前記第2金属膜の面積よりも大きい、
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第2基板は圧電性を有し、
前記第3主面上にはIDT電極が配置され、
前記IDT電極は、
互いに平行に配置された複数の第1電極指および複数の第2電極指と、
前記複数の第1電極指の一方端同士を接続するよう構成された第1バスバー電極と、
前記複数の第2電極指の一方端同士を接続するよう構成され、前記複数の第1電極指および前記複数の第2電極指を挟んで前記第1バスバー電極と対向配置された第2バスバー電極と、を有し、
前記機能電極は、前記複数の第1電極指および前記複数の第2電極指を含む、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記支持部は、さらに、
前記第3主面に配置され、前記機能電極と接続され、前記第2金属膜と接する第3金属膜を有し、
前記第3金属膜は、前記第1バスバー電極および前記第2バスバー電極を含み、
前記第3主面の平面視において、
前記第3金属膜の領域は前記第2金属膜の領域を含み、かつ、前記第3金属膜の面積は前記第2金属膜の面積よりも大きい、
請求項5に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記機能電極は、前記第3主面から順に、第1平面電極、圧電薄膜、第2平面電極を有する、
請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記第1基板は、シリコンを含む、
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項9】
さらに、
前記第1基板と前記ビア導体との間に配置された金属層を備え、
前記ビア導体は、銅を含み、
前記金属層は、銅の線膨張係数とシリコンの線膨張係数との間の線膨張係数を有する、
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項10】
さらに、
前記第2主面に配置された絶縁膜を備え、
前記第2主面に垂直かつ前記ビア導体の中心軸を通る切断面において、前記第2主面に平行な方向に対向する前記ビア導体の両端部のうちの前記絶縁膜と接している両端部の長さは、前記第2主面に平行な方向に対向する前記ビア導体の両端部のうちの前記第1基板と接している両端部の長さよりも小さい、
請求項1または2に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧電薄膜共振器と、圧電薄膜共振器が配置された第1基板(圧電性基板)と、第1基板とで圧電薄膜共振器を挟むように配置された第2基板(蓋基板)と、第2基板に形成された高抵抗率材料の薄膜と、第1基板に設けられたビア導体と、を備える電子デバイスが開示されている。これによれば、圧電薄膜共振器の信号が第2基板に結合することを抑制しつつ当該信号を第1基板側から入出力できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-137742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電薄膜共振器(弾性波共振器)の信号を入出力させる構造として、圧電材料で構成された基板を加工してビア導体を形成すると、弾性波共振器の信号劣化が懸念される。
【0005】
これに対して、蓋基板にビア導体を形成して弾性波共振器の信号を入出力させる構造が挙げられる。ただし本構造の場合、弾性波共振器の信号劣化を抑制するには、蓋基板に形成されるビア導体の接合強度を向上させる必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、ビア導体の接合強度が向上した弾性波装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る弾性波装置は、互いに対向する第1主面および第2主面を有する第1基板と、第1主面と対面する第3主面を有する第2基板と、第3主面に配置された機能電極と、第1主面と第3主面との間に配置され、第1主面と第3主面との間に空間が設けられるよう構成された支持部と、第1主面から第2主面に向けて第1基板に配置されたビア導体と、を備え、支持部は、第1主面に配置され、ビア導体と接する第1金属膜と、第1金属膜を挟んでビア導体と反対側に配置され、第1金属膜と接する第2金属膜と、を有し、第1主面の平面視において、第1金属膜の領域はビア導体の領域を含み、かつ、第1金属膜の面積はビア導体の面積よりも大きく、第2金属膜の領域はビア導体の領域を含み、かつ、第2金属膜の面積はビア導体の面積よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビア導体の接合強度が向上した弾性波装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る弾性波装置の断面図である。
図2A】実施の形態に係る弾性波装置の第1平面図である。
図2B】実施の形態に係る弾性波装置の第2平面図である。
図2C】実施の形態に係る弾性波装置の第3平面図である。
図3A】実施の形態に係る弾性波装置を構成する弾性波共振子の第1例を模式的に表す平面図および断面図である。
図3B】実施の形態に係る弾性波装置を構成する弾性波共振子の第2例を模式的に表す断面図である。
図3C】実施の形態に係る弾性波装置を構成する弾性波共振子の第3例を模式的に表す断面図である。
図4】実施の形態に係る弾性波装置のビア導体およびその周辺を拡大した断面図である。
図5】実施の形態に係る弾性波装置を構成する金属膜の積層構造の一例を示す断面図である。
図6】実施の形態に係る弾性波装置のビア導体と第1基板との界面を示す断面図である。
図7】比較例に係る弾性波装置のビア導体と第1基板との界面を示す断面図である。
図8】実施の形態に係る弾性波装置のビア導体開口部の断面図である。
図9】実施の形態の変形例に係る弾性波装置の断面図である。
図10】実施の形態の変形例に係る弾性波装置の第1平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面に示される構成要素の大きさまたは大きさの比は、必ずしも厳密ではない。
【0011】
なお、各図は、本発明を示すために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡素化される場合がある。
【0012】
本開示の回路構成において、「接続される」とは、電極および/または配線導体で直接接続される場合だけでなく、インダクタおよびキャパシタなどの整合素子、ならびにスイッチ回路を介して電気的に接続される場合も含む。「AおよびBの間に接続される」とは、AおよびBの間でAおよびBの両方に接続されることを意味する。
【0013】
また、「平行」および「垂直」などの要素間の関係性を示す用語、「矩形」などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の誤差をも含むことを意味する。
【0014】
(実施の形態)
[1 弾性波装置1の構造]
図1は、実施の形態に係る弾性波装置1の断面図である。図2Aは、実施の形態に係る弾性波装置1の第1平面図である。図2Bは、実施の形態に係る弾性波装置1の第2平面図である。図2Cは、実施の形態に係る弾性波装置1の第3平面図である。図2Aは、z軸正側から基板20の主面20aを平面視(透視)した図であり、図2Bは、z軸正側から基板10の主面10aを平面視(透視)した図であり、図2Cは、z軸正側から基板10の主面10bを平面視した図である。図1は、図2A図2Bおよび図2CのI-I線における断面図である。
【0015】
図1図2Cに示すように、弾性波装置1は、基板10および20と、金属膜31、32および33と、機能電極34と、ビア導体11と、絶縁膜13および23と、平面電極12と、バンプ電極40と、を備える。
【0016】
基板10は、第1基板の一例であり、互いに対向する主面10a(第1主面)および10b(第2主面)を有する。本実施の形態において、基板10はシリコンを含む。
【0017】
基板20は、第2基板の一例であり、互いに対向する主面20a(第3主面)および20bを有する。主面10aと主面20aとは対面している。本実施の形態において、基板20は圧電性を有する。
【0018】
ビア導体11は、図1に示すように、主面10aから主面10bに向けて基板10に配置された電極である。本実施の形態では、ビア導体11は、主面10aと主面10bとの間で基板10を貫通する空洞に充填された貫通電極である。ビア導体11は、例えば、Cu(銅)を主成分とする金属部材で構成される。
【0019】
なお、ビア導体11は、主面10aから主面10bまで延びた一本のビア導体でなくてもよく、複数のビア導体が基板10内に形成された平面電極を介して接続された構成を有してもよい。
【0020】
金属膜31は、第1金属膜の一例であり、図1および図2Bに示すように、主面10aに配置され、ビア導体11と接する平面電極である。金属膜31は、例えば、複数の金属層の積層体である。なお、金属膜31の具体的な積層構造例については、図5にて説明する。
【0021】
金属膜32は、第2金属膜の一例であり、図1および図2Bに示すように、金属膜31を挟んでビア導体11と反対側に配置され、金属膜31と接する平面電極である。金属膜32は、例えば、複数の金属層の積層体である。なお、金属膜32の具体的な積層構造例については、図5にて説明する。
【0022】
金属膜33は、第3金属膜の一例であり、図1および図2Aに示すように、主面20aに配置され、機能電極34と接続され、金属膜32と接する平面電極である。金属膜33は、例えば、複数の金属層の積層体である。なお、金属膜33の具体的な積層構造例については、図5にて説明する。
【0023】
機能電極34は、主面20a上に配置され、基板20とで電気機械変換を行う。機能電極34および金属膜33の構造例については、図3A図3Cにて説明する。
【0024】
図1に示すように、金属膜31、32および33は、支持部を構成し、主面10aと主面20aとの間にこの順で積層配置されており、主面10aと主面20aとの間に空間が設けられるよう構成される。
【0025】
絶縁膜13は、主面10bに配置され、例えばシリコン酸化膜である。絶縁膜23は、主面20aに配置され、例えばシリコン酸化膜である。なお、絶縁膜13および23の少なくとも一方は、無くてもよい。
【0026】
[2 基板20、機能電極34および金属膜33の構造]
次に、基板20、機能電極34および金属膜33の構造例について説明する。図3Aは、実施の形態に係る弾性波装置1を構成する弾性波共振子60の第1例を模式的に表す平面図および断面図である。同図には、弾性波装置1を構成する弾性波共振子60の基本構造が例示されている。なお、図3Aに示された弾性波共振子60は、弾性波装置1を構成する弾性波共振子の典型的な構造を説明するためのものであって、電極を構成する電極指の本数および長さなどは、これに限定されない。
【0027】
弾性波共振子60は、基板20と、櫛形電極60aおよび60bとで構成されている。
【0028】
図3Aの(a)に示すように、基板20の上には、互いに対向する一対の櫛形電極60aおよび60bが形成されている。櫛形電極60aは、互いに平行な複数の電極指61a(第1電極指)と、複数の電極指61aの一方端同士を接続するバスバー電極62a(第1バスバー電極)とで構成されている。また、櫛形電極60bは、互いに平行な複数の電極指61b(第2電極指)と、複数の電極指61bの一方端同士を接続するバスバー電極62b(第2バスバー電極)とで構成されている。複数の電極指61aおよび61bは、弾性波伝搬方向(X軸方向)と直交する方向に沿って形成されている。バスバー電極62aとバスバー電極62bとは、電極指61aおよび61bを挟んで対向配置されている。櫛形電極60aおよび60bは、IDT(InterDigital Transducer)電極54を構成している。
【0029】
ここで、本実施の形態に係る弾性波装置1が弾性表面波を利用して電気機械変換を行う場合、図1および図2Aに示された機能電極34は、複数の電極指61aおよび複数の電極指61bを含む。また、図1および図2Aに示された金属膜33は、バスバー電極62aおよび62bを含む。
【0030】
なお、弾性波共振子60は、弾性波伝搬方向(X軸方向)におけるIDT電極54の両端に反射器を有してもよい。
【0031】
図3Aの(b)に示すように、IDT電極54は、例えば、密着層540と主電極層542との積層構造となっている。
【0032】
密着層540は、基板20と主電極層542との密着性を向上させるための層であり、材料として、例えば、Tiが用いられる。主電極層542は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。保護層55は、櫛形電極60aおよび60bを覆うように形成されている。保護層55は、主電極層542を外部環境から保護する、周波数温度特性を調整する、および、耐湿性を高めるなどを目的とする層であり、例えば、二酸化ケイ素を主成分とする誘電体膜である。
【0033】
なお、密着層540、主電極層542および保護層55を構成する材料は、上述した材料に限定されない。さらに、IDT電極54は、上記積層構造でなくてもよい。IDT電極54は、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属または合金から構成されてもよく、また、上記の金属または合金から構成される複数の積層体から構成されてもよい。また、保護層55は、形成されていなくてもよい。
【0034】
次に、基板20の積層構造について説明する。
【0035】
図3Aの(c)に示すように、基板20は、高音速支持基板51と、低音速膜52と、圧電膜53とを備え、高音速支持基板51、低音速膜52および圧電膜53がこの順で積層された構造を有している。
【0036】
圧電膜53は、例えばθ°YカットX伝搬LiTaO圧電単結晶または圧電セラミックス(X軸を中心軸としてY軸からθ°回転した軸を法線とする面で切断したリチウムタンタレート単結晶、またはセラミックスであって、X軸方向に弾性表面波が伝搬する単結晶またはセラミックス)からなる。なお、各フィルタの要求仕様により、圧電膜53として使用される圧電単結晶の材料およびカット角θが適宜選択される。
【0037】
高音速支持基板51は、低音速膜52、圧電膜53ならびにIDT電極54を支持する基板である。高音速支持基板51は、さらに、圧電膜53を伝搬する表面波および境界波などの弾性波よりも、高音速支持基板51中のバルク波の音速が高速となる基板であり、弾性表面波を圧電膜53および低音速膜52が積層されている部分に閉じ込め、高音速支持基板51より下方に漏れないように機能する。高音速支持基板51の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、スピネル、サイアロンなどのセラミック、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンドなどの誘電体、もしくはシリコンなどの半導体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。なお、上記スピネルには、Mg、Fe、Zn、Mnなどから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有するアルミニウム化合物が含まれる。上記スピネルの例としては、MgAl、FeAl、ZnAl、MnAlを挙げることができる。
【0038】
低音速膜52は、圧電膜53を伝搬するバルク波よりも、低音速膜52中のバルク波の音速が低速となる膜であり、圧電膜53と高音速支持基板51との間に配置される。この構造と、弾性波が本質的に低音速な媒質にエネルギーが集中するという性質とにより、弾性表面波エネルギーのIDT電極外への漏れが抑制される。低音速膜52の材料としては、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、酸化タンタル、もしくは酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物などの誘電体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0039】
なお、基板20の上記積層構造によれば、圧電基板を単層で使用している従来の構造と比較して、共振周波数および反共振周波数におけるQ値を大幅に高めることが可能となる。すなわち、Q値が高い弾性波共振子を構成し得るので、当該弾性波共振子を用いて、挿入損失が小さいフィルタを構成することが可能となる。
【0040】
なお、高音速支持基板51は、支持基板と、圧電膜53を伝搬する表面波および境界波などの弾性波よりも、伝搬するバルク波の音速が高速となる高音速膜とが積層された構造を有していてもよい。この場合、高音速膜の材料としては、高音速支持基板51の材料と同じ材料を用いることができる。また、支持基板の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライトなどのセラミック、ダイヤモンド、ガラスなどの誘電体、シリコン、窒化ガリウムなどの半導体、もしくは樹脂、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0041】
なお、本明細書において、「材料の主成分」とは、当該材料に占める割合が50重量%を超える成分をいう。上記主成分は、単結晶、多結晶およびアモルファスのうちいずれかの状態、もしくは、これらが混在した状態で存在していてもよい。
【0042】
図3Bは、実施の形態に係る弾性波装置1を構成する弾性波共振子60の第2例を模式的に表す断面図である。図3Aに示した弾性波共振子60では、IDT電極54が、圧電膜53を有する基板20上に形成された例を示したが、当該IDT電極54が形成される基板は、図3Bに示すように、圧電体層の単層からなる圧電単結晶基板57であってもよい。
【0043】
圧電単結晶基板57は、例えば、LiNbOの圧電単結晶で構成されている。本例に係る弾性波共振子は、LiNbOの圧電単結晶基板57と、IDT電極54と、圧電単結晶基板57上およびIDT電極54上に形成された保護層58と、で構成されている。
【0044】
上述した圧電膜53および圧電単結晶基板57は、弾性波装置1の要求通過特性などに応じて、適宜、積層構造、材料、カット角、および、厚みを変更してもよい。上述したカット角以外のカット角を有するLiTaO圧電基板などを用いた弾性波共振子であっても、上述した圧電膜53を用いた弾性波共振子60と同様の効果を奏することができる。
【0045】
また、IDT電極54が形成される圧電性基板は、支持基板と、エネルギー閉じ込め層と、圧電膜とが、この順で積層された構造を有していてもよい。圧電膜上にIDT電極54が形成される。圧電膜は、例えば、LiTaO圧電単結晶または圧電セラミックスが用いられる。支持基板は、圧電膜、エネルギー閉じ込め層、およびIDT電極54を支持する基板である。
【0046】
エネルギー閉じ込め層は1層または複数の層からなり、その少なくとも1つの層を伝搬するバルク弾性波の速度は、圧電膜近傍を伝搬する弾性波の速度よりも大きい。例えば、エネルギー閉じ込め層は、低音速層と、高音速層との積層構造となっていてもよい。低音速層は、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、低音速層中のバルク波の音速が低速となる膜である。高音速層は、圧電膜を伝搬する弾性波の音速よりも、高音速層中のバルク波の音速が高速となる膜である。なお、支持基板を高音速層としてもよい。
【0047】
また、エネルギー閉じ込め層は、音響インピーダンスが相対的に低い低音響インピーダンス層と、音響インピーダンスが相対的に高い高音響インピーダンス層とが、交互に積層された構成を有する音響インピーダンス層であってもよい。
【0048】
また、図3Cは、実施の形態に係る弾性波装置1を構成する弾性波共振子60の第3例を模式的に表す断面図である。図3Cには、弾性波装置1の弾性波共振子として、バルク弾性波共振子が示されている。同図に示すように、バルク弾性波共振子は、例えば、支持基板65と、下部電極66と、圧電体層67と、上部電極68と、を有しており、支持基板65、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68がこの順で積層された構成となっている。
【0049】
支持基板65は、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68を支持するための基板であり、例えば、シリコン基板である。なお、支持基板65は、下部電極66と接触する領域に、空洞が設けられている。これにより、圧電体層67を自由に振動させることが可能となる。
【0050】
下部電極66は、第1平面電極の一例であり、支持基板65の一方面上に形成されている。上部電極68は、第2平面電極の一例であり、支持基板65の一方面上に形成されている。下部電極66および上部電極68は、材料として、例えば、Cuを1%含有したAlが用いられる。
【0051】
圧電体層67は、圧電薄膜の一例であり、下部電極66と上部電極68との間に形成されている。圧電体層67は、例えば、ZnO(酸化亜鉛)、AlN(窒化アルミニウム)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、KN(ニオブ酸カリウム)、LN(リチウムニオベイト)、LT(リチウムタンタレート)、水晶、およびLiBO(ホウ酸リチウム)の少なくとも1つを主成分とする。
【0052】
上記積層構成を有するバルク弾性波共振子は、下部電極66と上部電極68との間に電気的なエネルギーを印加することで圧電体層67内にてバルク弾性波を誘発して共振を発生させるものである。このバルク弾性波共振子により生成されるバルク弾性波は、下部電極66と上部電極68との間を、圧電体層67の膜面に垂直な方向に伝搬する。つまり、バルク弾性波共振子は、バルク弾性波を利用した共振子である。
【0053】
ここで、本実施の形態に係る弾性波装置1がバルク弾性波を利用して電気機械変換を行う場合、図1および図2Aに示された機能電極34は、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68を含む。また、図1および図2Aに示された基板20は、圧電性を有さず、支持基板65を含んでもよい。
【0054】
[3 基板10、ビア導体11および金属膜31~33の接合構造]
次に、基板10、ビア導体11および金属膜31~33の接合構造について説明する。図4は、実施の形態に係る弾性波装置1のビア導体11およびその周辺を拡大した断面図である。同図は、図1の領域IVにおける顕微鏡像である。同図に示すように、基板10の内部にビア導体11が形成され、ビア導体11の上側(z軸正方向)開口部には平面電極12が接合され、ビア導体11の下側(z軸負方向)開口部には金属膜31が接合されている。また、金属膜31のz軸負方向側に金属膜32、金属膜33、および基板20がこの順で接合されている。
【0055】
ここで、図2Bに示すように、主面10aの平面視において、(図2Bの右上方の)金属膜31の領域は(図2Bの右上方の)ビア導体11の領域を含み、かつ、(図2Bの右上方の)金属膜31の面積は(図2Bの右上方の)ビア導体11の面積よりも大きい。また、主面10aの平面視において、(図2Bの右上方の)金属膜32の領域は(図2Bの右上方の)ビア導体11の領域を含み、かつ、(図2Bの右上方の)金属膜32の面積は(図2Bの右上方の)ビア導体11の面積よりも大きい。
【0056】
言い換えると、図4に示すように、主面10aに垂直な方向(z軸方向)かつビア導体11を通る切断面(図2A図2CのI-I切断面)において、金属膜31の長さL31はビア導体11の長さD11(直径)よりも大きく、かつ、金属膜32の長さL32はビア導体11の長さD11(直径)よりも大きい。
【0057】
主面10aの平面視において、金属膜31および32の各領域がビア導体11の領域に含まれる場合、金属膜31および32の圧縮応力の全てがビア導体11にかかってしまい、ビア導体11が変形したり、ビア導体11が基板10から剥がれたりする可能性がある。これに対して、本実施の形態に係る弾性波装置1の上記構成によれば、主面10aの平面視において、ビア導体11の領域が金属膜31および32の各領域に含まれ、金属膜31の面積がビア導体11の面積よりも大きく、かつ、金属膜32の面積がビア導体11の面積よりも大きい。これにより、ビア導体11のx軸方向に隣接する基板10が金属膜31と接合されるため、金属膜31と接合される基板10が金属膜31および32の圧縮応力を吸収してビア導体11の変形および剥がれを抑制できる。言い換えると、ビア導体11の固定化を促進できる。さらに、金属膜32は金属膜33と接合され、金属膜33は基板20と接合されるので、金属膜31および32で発生する圧縮応力を基板20側にも分散できる。よって、ビア導体11の接合強度が向上した弾性波装置1を提供することが可能となる。
【0058】
なお、本明細書において、領域Aが領域Bを含むとは、領域Bの全域が領域A内に配置されていると定義される。
【0059】
次に、金属膜31~33の積層構造について説明する。図5は、実施の形態に係る弾性波装置1を構成する金属膜31~33の積層構造の一例を示す断面図である。同図は、図4の領域Vを模式的に拡大した断面図である。
【0060】
図5に示すように、金属膜31は、主面10a側から、中間層316、中間層315、主電極層314、中間層313、中間層312および接合層311を有する。
【0061】
中間層313(第1中間層)および中間層316は、例えばTi(チタン)を主成分とする金属層であり、拡散防止層として機能する。
【0062】
中間層312および中間層315は、例えばPt(白金)を主成分とする金属層であり、中間層313および316とともに、拡散防止層として機能する。
【0063】
主電極層314は、第1主電極層の一例であり、例えばAl(アルミニウム)およびCu(銅)を主成分とする金属層であり、金属膜31のうちで高周波信号を伝送する主媒体として機能する。
【0064】
接合層311は、第1接合層の一例であり、例えばAu(金)を主成分とする金属層であり、金属膜32と電気的および機械的に良好な接合をする機能を有する。
【0065】
なお、本実施の形態に係る金属膜31において、中間層312および315は無くてもよい。さらに、金属膜31は、主電極層314のみで構成されていてもよい。
【0066】
また、図5に示すように、金属膜32は、主面10a側から、接合層321、中間層322、中間層323、主電極層324、および中間層325を有する。
【0067】
接合層321は、第2接合層の一例であり、例えばAu(金)を主成分とする金属層であり、金属膜31と電気的および機械的に良好な接合をする機能を有する。
【0068】
中間層322は、例えばPt(白金)を主成分とする金属層であり、中間層323とともに、拡散防止層として機能する。
【0069】
中間層323(第2中間層)および中間層325は、例えばTi(チタン)を主成分とする金属層であり、拡散防止層として機能する。
【0070】
主電極層324は、第2主電極層の一例であり、例えばAl(アルミニウム)およびCu(銅)を主成分とする金属層であり、金属膜32のうちで高周波信号を伝送する主媒体として機能する。
【0071】
なお、本実施の形態に係る金属膜32において、中間層322は無くてもよい。さらに、金属膜32は、主電極層324のみで構成されていてもよい。
【0072】
また、図5に示すように、金属膜33は、主面10a側から、中間層331、主電極層332、および中間層333を有する。
【0073】
中間層331および333は、例えばTi(チタン)を主成分とする金属層であり、拡散防止層として機能する。
【0074】
主電極層332は、例えばAl(アルミニウム)およびCu(銅)を主成分とする金属層であり、金属膜33のうちで高周波信号を伝送する主媒体として機能する。
【0075】
なお、本実施の形態に係る金属膜33において、中間層331および333は無くてもよく、金属膜33は主電極層332のみで構成されていてもよい。
【0076】
図5における主電極層332は、例えば、図3Aにおける主電極層542に相当し、図5における中間層333は、例えば、図3Aにおける密着層540に相当する。
【0077】
また、図2Bに示すように、主面10aの平面視において、(図2Bの右上方の)金属膜31の領域は(図2Bの右上方の)金属膜32の領域を含み、かつ、(図2Bの右上方の)金属膜31の面積は(図2Bの右上方の)金属膜32の面積よりも大きい。
【0078】
言い換えると、図4に示すように、主面10aに垂直な方向(z軸方向)かつビア導体11を通る切断面(図2A図2CのI-I切断面)において、金属膜31の長さL31は金属膜32の長さL32よりも大きい。
【0079】
これによれば、金属膜32の接合により金属膜31の端部形状を変形させることがないので、基板10と金属膜31との接合により、ビア導体11にかかる圧縮応力の低減を促進できる。
【0080】
また、図2Aおよび図2Bに示すように、主面20aの平面視において、金属膜33の領域は金属膜32の領域を含み、かつ、金属膜33の面積は金属膜32の面積よりも大きい。
【0081】
言い換えると、図4に示すように、主面20aに垂直な方向(z軸方向)かつビア導体11を通る切断面(図2A図2CのI-I切断面)において、金属膜33の長さL33は金属膜32の長さL32よりも大きい。
【0082】
これによれば、金属膜32が、主面20a上における機能電極34および金属膜33の配置領域を制限することなく、機能電極34および金属膜33の配置レイアウトを優先できる。
【0083】
次に、ビア導体11と基板10との接合状態について説明する。図6は、実施の形態に係る弾性波装置1のビア導体11と基板10との界面を示す断面図である。同図は、図4の領域VIを模式的に拡大した断面図である。
【0084】
図6に示すように、弾性波装置1は、基板10とビア導体11との間に配置された金属層14を有する。金属層14は、例えばTiを主成分とする。金属層14は、ビア導体11の主成分であるCuの線膨張係数と、基板10を構成するSiの線膨張係数との間の線膨張係数を有する。
【0085】
これによれば、金属層14は、熱履歴によりビア導体11に応力がかかりビア導体11が基板10から剥がれることを抑制する緩衝材として機能できる。また、金属層14は、CuおよびSiの拡散防止膜として機能できる。
【0086】
また、Siで構成される基板10にビア導体11を充填するための円筒状空洞を基板10に形成する工程に起因して、基板10の円筒状空洞の内壁には、スキャロップと呼ばれる貝殻状の凹凸構造が発生する。図7は、比較例に係る弾性波装置のビア導体11と基板10との界面を示す断面図である。比較例に係る弾性波装置は、本実施の形態に係る弾性波装置1と比較して、ビア導体11と基板10との界面形状のみが異なる。
【0087】
図7に示された比較例に係る弾性波装置では、ビア導体11と基板10との界面形状は、スキャロップの凹凸構造が見られ、凸部の先端が先鋭となった形状となっている。このため、上記凹凸構造の先端では、電気抵抗が高くなり発熱し易くなり、ビア導体11の接合強度が低下する。また、上記凹凸構造によりビア導体11と基板10との界面にボイドが発生し易くなり、ビア導体11の接合強度が低下する。
【0088】
これに対して、本実施の形態に係る弾性波装置1では、図6に示すように、スキャロップの凹凸構造の凸部先端が平坦化されている。これによれば、上記凹凸構造の先端での電気抵抗を低減して発熱を抑制でき、また、ビア導体11と基板10との界面でのボイド発生を抑制できるので、ビア導体11の接合強度を向上できる。
【0089】
次に、ビア導体11の形状について説明する。図8は、実施の形態に係る弾性波装置1のビア導体11の開口部付近の断面図である。同図は、図4の領域VIIIを拡大した顕微鏡像である。
【0090】
本実施の形態に係る弾性波装置1は、図1に示すように、主面10bに配置された絶縁膜13を備える。絶縁膜13は、例えばシリコン酸化膜であり、主面10bにおいて隣接する平面電極12間で高周波信号が漏洩することを抑制する機能を有する。
【0091】
ここで、図4および図8に示すように、主面10bに垂直(z軸方向)かつビア導体11の中心軸を通る切断面(図2A図2CのI-I切断面)において、主面10bに平行な方向に対向するビア導体11の両端部のうちの絶縁膜13と接している両端部の長さD13は、主面10bに平行な方向に対向するビア導体11の両端部のうちの基板10と接している両端部の長さD11よりも小さい。
【0092】
これによれば、主面10b付近のビア導体11の端部が、絶縁膜13に覆われるので、熱履歴によりビア導体11が上記開口部にて基板10から剥がれることを抑制できる。
【0093】
[4 変形例に係る弾性波装置1Aの構造]
図9は、実施の形態の変形例に係る弾性波装置1Aの断面図である。図10は、実施の形態の変形例に係る弾性波装置1Aの第1平面図である。図10は、z軸正側から基板20の主面20aを平面視(透視)した図である。なお、弾性波装置1Aにおいて、z軸正側から基板10の主面10aを平面視(透視)した図は、図2Bの第2平面図と同じであり、z軸正側から基板10の主面10bを平面視した図は、図2Cの第3平面図と同じである。図9は、図10のIX-IX線における断面図である。
【0094】
図9および図10に示すように、弾性波装置1Aは、基板10および20と、金属膜31、32および33と、機能電極34と、ビア導体11と、絶縁膜13および23と、平面電極12と、バンプ電極40と、を備える。本変形例に係る弾性波装置1Aは、実施の形態に係る弾性波装置1と比較して、ビア導体11、金属膜31、32および33の配置関係が異なる。以下、本変形例に係る弾性波装置1Aについて、実施の形態に係る弾性波装置1と同じ構成については説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0095】
金属膜31は、第1金属膜の一例であり、図9に示すように、主面10aに配置され、ビア導体11と接する平面電極である。金属膜31は、例えば、複数の金属層の積層体である。
【0096】
金属膜32は、第2金属膜の一例であり、図9に示すように、金属膜31と接する平面電極である。金属膜32は、例えば、複数の金属層の積層体である。
【0097】
金属膜33は、第3金属膜の一例であり、図9および図10に示すように、主面20aに配置され、機能電極34と接続され、金属膜32と接する平面電極である。金属膜33は、例えば、複数の金属層の積層体である。
【0098】
機能電極34は、主面20a上に配置され、基板20とで電気機械変換を行う。
【0099】
図9に示すように、金属膜31、32および33は、支持部を構成し、主面10aと主面20aとの間にこの順で積層配置されており、主面10aと主面20aとの間に空間が設けられるよう構成される。
【0100】
図9において、2つのビア導体11のうちの右方のビア導体11は、主面10aおよび20aを平面視した場合、機能電極34と重なっていない。
【0101】
[5 効果など]
以上のように、本実施の形態に係る弾性波装置1は、互いに対向する主面10aおよび10bを有する基板10と、主面10aと対面する主面20aを有する基板20と、主面20aに配置された機能電極34と、主面10aと主面20aとの間に配置され、主面10aと主面20aとの間に空間が設けられるよう構成された支持部と、主面10aから主面10bに向けて基板10に配置されたビア導体11と、を備え、支持部は、主面10aに配置され、ビア導体11と接する金属膜31と、金属膜31を挟んでビア導体11と反対側に配置され、金属膜31と接する金属膜32と、を有し、主面10aの平面視において、金属膜31の領域はビア導体11の領域を含み、かつ、金属膜31の面積はビア導体11の面積よりも大きく、金属膜32の領域はビア導体11の領域を含み、かつ、金属膜32の面積はビア導体11の面積よりも大きい。
【0102】
これによれば、ビア導体11のx軸方向に隣接する基板10が金属膜31と接合されるため、金属膜31と接合される基板10が金属膜31および32の圧縮応力を吸収できるのでビア導体11の変形および剥がれを抑制できる。
【0103】
また例えば、弾性波装置1において、主面10aを平面視した場合、金属膜31の領域は金属膜32の領域を含み、かつ、金属膜31の面積は金属膜32の面積よりも大きい。
【0104】
これによれば、金属膜32の接合により金属膜31の端部形状を変形させることがないので、基板10と金属膜31との接合により、ビア導体11にかかる圧縮応力の低減を促進できる。
【0105】
また例えば、弾性波装置1において、金属膜31は、主面10a側から順に、主電極層314、中間層313、および接合層311を有し、金属膜32は、主面10a側から順に、接合層321、中間層323、および主電極層324を有する。
【0106】
これによれば、金属膜31および32のそれぞれが、異なる機能を有する複数の金属層で構成されているので、金属膜31および32の良好な接合を実現できる。
【0107】
また例えば、弾性波装置1において、支持部は、さらに、主面20aに配置され、機能電極34と接続され、金属膜32と接する金属膜33を有し、主面20aの平面視において、金属膜33の領域は金属膜32の領域を含み、かつ、金属膜33の面積は金属膜32の面積よりも大きい。
【0108】
これによれば、金属膜32が、主面20a上における機能電極34および金属膜33の配置領域を制限することなく、機能電極34および金属膜33の配置レイアウトを優先できる。
【0109】
また例えば、弾性波装置1において、基板20は圧電性を有し、主面20a上にはIDT電極54が配置され、IDT電極54は、互いに平行に配置された複数の電極指61aおよび複数の電極指61bと、複数の電極指61aの一方端同士を接続するよう構成されたバスバー電極62aと、複数の電極指61bの一方端同士を接続するよう構成され、複数の電極指61aおよび複数の電極指61bを挟んでバスバー電極62aと対向配置されたバスバー電極62bと、を有し、機能電極34は、複数の電極指61aおよび複数の電極指61bを含む。
【0110】
これによれば、ビア導体11の接合強度が向上した弾性表面波デバイスを提供できる。
【0111】
また例えば、弾性波装置1において、支持部は、さらに、主面20aに配置され、機能電極34と接続され、金属膜32と接する金属膜33を有し、金属膜33は、バスバー電極62aおよび62bを含み、主面20aの平面視において、金属膜33の領域は金属膜32の領域を含み、かつ、金属膜33の面積は金属膜32の面積よりも大きい。
【0112】
これによれば、金属膜32が、主面20a上における機能電極34および金属膜33の配置領域を制限することなく、機能電極34および金属膜33の配置レイアウトを優先できる。
【0113】
また例えば、弾性波装置1において、機能電極34は、主面20aから順に、下部電極66、圧電体層67、および上部電極68を有する。
【0114】
これによれば、ビア導体11の接合強度が向上したバルク弾性波デバイスを提供できる。
【0115】
また例えば、弾性波装置1において、基板10は、シリコンを含む。
【0116】
これによれば、基板10の加工精度が向上する。
【0117】
また例えば、弾性波装置1は、さらに、基板10とビア導体11との間に配置された金属層14を備え、ビア導体11はCuを含み、金属層14は、銅の線膨張係数とSiの線膨張係数との間の線膨張係数を有する。
【0118】
これによれば、金属層14は、熱履歴によりビア導体11に応力がかかりビア導体11が基板10から剥がれることを抑制する緩衝材として機能できる。また、金属層14は、CuおよびSiの拡散防止膜として機能できる。
【0119】
また例えば、弾性波装置1は、さらに、主面10bに配置された絶縁膜13を備え、主面10bに垂直かつビア導体11の中心軸を通る第5切断面において、主面10bに平行な方向に対向するビア導体11の両端部のうちの絶縁膜13と接している両端部の長さD13は、主面10bに平行な方向に対向するビア導体11の両端部のうちの基板10と接している両端部の長さD11よりも小さい。
【0120】
これによれば、主面10b付近のビア導体11の端部が絶縁膜13に覆われるので、熱履歴によりビア導体11が主面10bの開口部にて基板10から剥がれることを抑制できる。
【0121】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る弾性波装置について、実施の形態を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る弾性波装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0122】
以下に、上記実施の形態に基づいて説明した弾性波装置の特徴を示す。
【0123】
<1>
互いに対向する第1主面および第2主面を有する第1基板と、
前記第1主面と対面する第3主面を有する第2基板と、
前記第3主面に配置された機能電極と、
前記第1主面と前記第3主面との間に配置され、前記第1主面と前記第3主面との間に空間が設けられるよう構成された支持部と、
前記第1主面から前記第2主面に向けて前記第1基板に配置されたビア導体と、を備え、
前記支持部は、
前記第1主面に配置され、前記ビア導体と接する第1金属膜と、
前記第1金属膜を挟んで前記ビア導体と反対側に配置され、前記第1金属膜と接する第2金属膜と、を有し、
前記第1主面の平面視において、
前記第1金属膜の領域は前記ビア導体の領域を含み、かつ、前記第1金属膜の面積は前記ビア導体の面積よりも大きく、
前記第2金属膜の領域は前記ビア導体の領域を含み、かつ、前記第2金属膜の面積は前記ビア導体の面積よりも大きい、弾性波装置。
【0124】
<2>
前記第1主面の平面視において、
前記第1金属膜の領域は前記第2金属膜の領域を含み、かつ、前記第1金属膜の面積は前記第2金属膜の面積よりも大きい、<1>に記載の弾性波装置。
【0125】
<3>
前記第1金属膜は、
前記第1主面側から順に、第1主電極層、第1拡散防止層、および第1接合層を有し、
前記第2金属膜は、
前記第1主面側から順に、第2接合層、第2拡散防止層、および第2主電極層を有する、<1>または<2>に記載の弾性波装置。
【0126】
<4>
前記支持部は、さらに、
前記第3主面に配置され、前記機能電極と接続され、前記第2金属膜と接する第3金属膜を有し、
前記第3主面の平面視において、
前記第3金属膜の領域は前記第2金属膜の領域を含み、かつ、前記第3金属膜の面積は前記第2金属膜の面積よりも大きい、<1>~<3>のいずれかに記載の弾性波装置。
【0127】
<5>
前記第2基板は圧電性を有し、
前記第3主面上にはIDT電極が配置され、
前記IDT電極は、
互いに平行に配置された複数の第1電極指および複数の第2電極指と、
前記複数の第1電極指の一方端同士を接続するよう構成された第1バスバー電極と、
前記複数の第2電極指の一方端同士を接続するよう構成され、前記複数の第1電極指および前記複数の第2電極指を挟んで前記第1バスバー電極と対向配置された第2バスバー電極と、を有し、
前記機能電極は、前記複数の第1電極指および前記複数の第2電極指を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の弾性波装置。
【0128】
<6>
前記支持部は、さらに、
前記第3主面に配置され、前記機能電極と接続され、前記第2金属膜と接する第3金属膜を有し、
前記第3金属膜は、前記第1バスバー電極および前記第2バスバー電極を含み、
前記第3主面の平面視において、
前記第3金属膜の領域は前記第2金属膜の領域を含み、かつ、前記第3金属膜の面積は前記第2金属膜の面積よりも大きい、<5>に記載の弾性波装置。
【0129】
<7>
前記機能電極は、前記第3主面から順に、第1平面電極、圧電薄膜、第2平面電極を有する、<1>~<4>のいずれかに記載の弾性波装置。
【0130】
<8>
前記第1基板は、シリコンを含む、<1>~<7>のいずれかに記載の弾性波装置。
【0131】
<9>
さらに、
前記第1基板と前記ビア導体との間に配置された金属層を備え、
前記ビア導体は、銅を含み、
前記金属層は、銅の線膨張係数とシリコンの線膨張係数との間の線膨張係数を有する、<1>~<8>のいずれかに記載の弾性波装置。
【0132】
<10>
さらに、
前記第2主面に配置された絶縁膜を備え、
前記第2主面に垂直かつ前記ビア導体の中心軸を通る第5切断面において、前記第2主面に平行な方向に対向する前記ビア導体の両端部のうちの前記絶縁膜と接している両端部の長さは、前記第2主面に平行な方向に対向する前記ビア導体の両端部のうちの前記第1基板と接している両端部の長さよりも小さい、<1>~<9>のいずれかに記載の弾性波装置。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、小型の弾性波装置として、携帯電話機などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0134】
1、1A 弾性波装置
10、20 基板
10a、10b、20a、20b 主面
11 ビア導体
12 平面電極
13、23 絶縁膜
14 金属層
31、32、33 金属膜
34 機能電極
40 バンプ電極
51 高音速支持基板
52 低音速膜
53 圧電膜
54 IDT電極
55、58 保護層
57 圧電単結晶基板
60 弾性波共振子
60a、60b 櫛形電極
61a、61b 電極指
62a、62b バスバー電極
65 支持基板
66 下部電極
67 圧電体層
68 上部電極
314、324、332、542 主電極層
312、313、315、316、322、323、325、331、333 中間層
311、321 接合層
540 密着層
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10