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  • 特開-ベルト 図1
  • 特開-ベルト 図2
  • 特開-ベルト 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025183
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/14 20060101AFI20250214BHJP
   F16G 1/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F16G1/14
F16G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129746
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 竜二
(72)【発明者】
【氏名】古木 信次
(72)【発明者】
【氏名】岩切 秀陳
(57)【要約】
【課題】低温環境、特に-30℃以下の冷凍環境に対応可能で、グリップ性を確保できるベルトを提供する。
【解決手段】ベルト1は、少なくとも1層の帆布10を内蔵し、両面が樹脂層11A,11Bで被覆されており、樹脂層11A,11Bの表面SA,SBは、表面粗さRzjisが25μm~180μmである構成である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の帆布を内蔵し、
両面が樹脂層で被覆されており、
前記樹脂層の表面は、表面粗さRzjisが25μm~180μmである
ベルト。
【請求項2】
前記樹脂層の表面は、転写用帆布を押し当てて加熱加圧することで前記転写用帆布の表面形状が転写された面である
請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記樹脂層は熱可塑性樹脂層である
請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記樹脂層は熱可塑性ウレタン樹脂層である
請求項3に記載のベルト。
【請求項5】
多層の前記帆布を内蔵する
請求項1~4のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項6】
多層の前記帆布の間に層間樹脂層を有する
請求項5に記載のベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルト等のベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ローラーコンベヤ駆動用等の用途で用いられる伝動ベルトは、高張力、耐フランジ性(幅方向のベルト剛性)、グリップ性等が求められる。グリップ性確保のために、表面に例えばゴムを用いたベルトが用いられている。
【0003】
また、近年では、特に-30℃以下で用いられる冷凍庫等の低温環境下で使用される場合があり、低温環境への対応も求められている。
【0004】
特許文献1には、熱可塑性ウレタン樹脂を含有する熱可塑性樹脂層と、樹脂層中に埋設されたコードよりなる高張力体を有する平ベルトが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ウレタン系熱可塑性エラストマーを用いたベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-166183号公報
【特許文献2】特開2011-206953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
伝動ベルトは、グリップ性確保のために表面にゴムを用いたベルトが用いられていたが、ゴムのガラス転移温度以下の低温環境下ではゴムにクラックが発生しやすかった。
【0008】
本発明は、低温環境、特に-30℃以下の冷凍環境に対応可能で、グリップ性を確保できるベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のベルトは、少なくとも1層の帆布を内蔵し、両面が樹脂層で被覆されており、前記樹脂層の表面は、表面粗さRzjisが25μm~180μmである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のベルトによれば、少なくとも1層の帆布を内蔵し、両面が樹脂層で被覆されており、表面にゴムが用いられていないので低温環境下でのクラックの発生が抑制されて低温環境に対応可能であり、さらに樹脂層の表面の表面粗さRzjisが25μm~180μmであるので、ゴムを用いなくてもグリップ力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るベルトの断面図である。
図2】本発明の第1実施例に係るベルトの断面図である。
図3】本発明の第2実施例に係るベルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかしながら、以下説明する形態は、あくまで例示であって、当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
【0013】
<実施形態>
(ベルトの構成)
図1は本実施形態に係るベルト1の断面図である。本実施形態のベルト1は、少なくとも1層の帆布10を内蔵し、両面が樹脂層11A,11Bで被覆されている。本実施形態では、樹脂層11A,帆布10、樹脂層11Bが、この順に積層されている。帆布10と樹脂層11A,11Bとは、例えば接着剤を用いて、あるいは加熱圧着等により、接着されている。
【0014】
上記の樹脂層11A,11Bの表面SA,SBは、表面粗さRzjisが25μm~180μmである。
【0015】
樹脂層11A,11Bの表面SA,SBは、例えば、転写用帆布を押し当てて加熱加圧することで転写用帆布の表面形状が転写された面、いわゆる布目付された面である。これにより、表面粗さRzjisが25μm~180μmである表面を実現できる。表面粗さRzjisが25μm~180μmである面は、布目付された面に限らず、機械目付等の他の手段によって所定の表面形状を有するように制御された面であってもよい。
【0016】
上記の表面粗さとは、JIS B 0601:2001に説明された、対象物の表面からランダムに選択した領域における、十点平均粗さ(Rzjis)である。表面粗さは、例えば東京精密社製ハンディサーフ(商品名)により測定可能である。
【0017】
樹脂層11A,11Bは、例えば熱可塑性樹脂層であり、具体的には熱可塑性ウレタン樹脂層である。樹脂層11A,11Bを構成する樹脂のガラス転移温度は、本実施形態のベルトが用いられる環境温度よりも低いことが好ましい。例えば、樹脂層11A,11Bを構成する樹脂は、ガラス転移温度が-30℃のウレタン樹脂である。このような構成の本実施形態のベルト1は、低温環境に対応している。
【0018】
樹脂層11A,11Bは、ガラス転移温度等の樹脂の特徴に基づくベルト1の性能に影響がないあるいは実質的にない範囲で、その他の樹脂を含有してもよい。また、樹脂層11A,11Bは安定剤や滑剤等の添加剤を含有してもよい。また樹脂層11A,11Bを構成する樹脂は、ガラス転移温度が-30℃以下のウレタン樹脂でもよい。
【0019】
樹脂層11A,11Bは、例えば、ウレタン樹脂等の樹脂を押出機でシート状に押出し、一軸方向に延伸あるいは圧延することで得られた基材である。例えばベルトが一方向に長い形状であり、ベルトの長手方向が一軸方向に合致していることが好ましい。
【0020】
帆布10は、例えばポリエステル繊維を織り込んで構成されたものである。あるいはその他の樹脂繊維を織り込んで構成された帆布でもよい。例えばナイロン繊維等を用いることができる。
【0021】
帆布10の厚さは、例えば0.35mm~1.10mmである。また、樹脂層11A,11Bの厚さは、それぞれ、例えば0.20mm~1.2mmである。全体として、0.75mm~3.5mm程度の厚さのベルトである。
【0022】
上記の本実施形態のベルト1は、帆布10と樹脂層11A,11Bとを積層し、例えば接着剤を用いて、あるいは加熱圧着等により接着して製造することができる。
【0023】
上記の製造工程において、樹脂層11A,11Bの表面SA,SBに、転写用帆布を押し当てて加熱加圧し、次に転写用帆布を剥離することで転写用帆布の表面形状を転写する。これにより、布目付された面を形成することができる。
【0024】
図面上1層の帆布を有する構成を示しているが、多層の帆布を内蔵する構成でもよい。この場合、多層の帆布の間に不図示の層間樹脂層を有する。多層の帆布を内蔵する場合、いずれの帆布も上記の帆布と同様の構成とすることができる。層間樹脂層は、上記の樹脂層11A,11Bと同様の構成とすることができる。多層とすることで耐フランジ性を高めることができる。
【0025】
本実施形態のベルト1は、伝動ベルトに好ましく適用できる。
【0026】
(作用・効果)
本実施形態のベルト1によれば、伝動ベルトにおいて、ゴムを用いていないので低温環境、特に-30℃以下の冷凍環境に対応可能で早期クラックを低減し、さらに表面粗さRzjisが25μm~180μmであるのでグリップ性を確保できる。表面に布目付を付したのでグリップ性を確保できる。
【0027】
また、帆布を多層積層した構成では、耐フランジ性が高められている。
【0028】
<第1実施例>
図2は第1実施例に係るベルト1Aの断面図である。樹脂層11A、第1帆布10A、層間樹脂層11C、第2帆布10B、層間樹脂層11D、第3帆布10C、及び樹脂層11Bが、この順に積層されている。樹脂層11A,11Bが積層体の最外層となっている。即ち、4層の樹脂層と3層の帆布の層とが交互に積層した形態である。
【0029】
上記の樹脂層11A,11Bの表面SA,SBは、布目付された面であって、表面粗さRzjisが100μm~150μmである。
【0030】
上記の樹脂層11A、層間樹脂層11C、層間樹脂層11D、及び樹脂層11Bを構成する樹脂は、ガラス転移温度が-30℃である熱可塑性ポリウレタンエラストマー「エラストラン(登録商標)C90A」である。ガラス転移温度が-30℃以下のウレタン樹脂である熱可塑性ポリウレタンエラストマー「エラストラン(登録商標)C85A」(ガラス転移温度が-35℃)の使用も可能である。また、第1帆布10A、第2帆布10B、及び第3帆布10Cはポリエステル帆布である。
【0031】
樹脂層11A、層間樹脂層11C、層間樹脂層11D、及び樹脂層11Bの厚さは、それぞれ0.4mmである。また、第1帆布10A、第2帆布10B、及び第3帆布10Cの厚さは、それぞれ0.5mmであり、全体として、3.1mmの厚さのベルトである。
【0032】
伝動ベルトにおいて、ゴムを用いていないので低温環境に対応可能で早期クラックを低減し、さらに布目付により表面粗さRzjisが25μm~180μmであるのでグリップ性を確保でき、帆布を多層積層した構成であり、耐フランジ性が高められている。
【0033】
<第2実施例>
図3は第2実施例に係るベルト1Bの断面図である。樹脂層11A、第1帆布10A、層間樹脂層11C、第2帆布10B、及び樹脂層11Bが、この順に積層されている。樹脂層11A,11Bが積層体の最外層となっている。即ち、3層の樹脂層と2層の帆布の層とが交互に積層した形態である。
【0034】
上記の樹脂層11A,11Bの表面SA,SBは、布目付された面であって、表面粗さRzjisが25μm~70μmである。
【0035】
上記の樹脂層11A、層間樹脂層11C、及び樹脂層11Bを構成する樹脂は、第1実施例と同様に「エラストラン(登録商標)C90A」である。また、第1帆布10A及び第2帆布10Bはポリエステル帆布である。
【0036】
樹脂層11A、層間樹脂層11C、及び樹脂層11Bの厚さは、それぞれ0.4mmである。また、第1帆布10A、及び第2帆布10Bの厚さは、それぞれ0.4mmであり、全体として、2.0mmの厚さのベルトである。
【0037】
伝動ベルトにおいて、ゴムを用いていないので低温環境に対応可能で早期クラックを低減し、さらに表面粗さRzjisが25μm~180μmであるのでグリップ性を確保でき、帆布を多層積層した構成であり、耐フランジ性が高められている。
【符号の説明】
【0038】
1,1A,1B ベルト
10 帆布
10A 第1帆布
10B 第2帆布
10C 第3帆布
11A,11B 樹脂層
11C,11D 層間樹脂層
SA,SB 表面

図1
図2
図3