(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025185
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】後退支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129749
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水瀬 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】赤対 真行
(72)【発明者】
【氏名】下村 一哉
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】後退支援制御の実行機会を逸失する可能性を低減できる後退支援装置を提供する。
【解決手段】後退支援装置は、車両の前進時に車両が通過した前進経路を記憶する記憶装置と、前進経路に沿って車両を後退させる後退支援制御を実行可能な制御ユニットと、を備える。制御ユニットは、車両の周囲の状況、又は、車両の後退時に車両が通過した後退経路、に基いて、所定の提案条件が成立すると判定した場合、後退支援制御の実行を車両の運転者に提案し、後退支援制御の実行に運転者が同意した場合、後退支援制御を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前進時に前記車両が通過した前進経路を記憶する記憶装置と、
前記前進経路に沿って前記車両を後退させる後退支援制御を実行可能な制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、
前記車両の周囲の状況、又は、前記車両の後退時に前記車両が通過した後退経路、に基いて、所定の提案条件が成立すると判定した場合、前記後退支援制御の実行を前記車両の運転者に提案し、
前記後退支援制御の実行に前記運転者が同意した場合、前記後退支援制御を実行する、
ように構成された、後退支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の後退支援装置において、
前記制御ユニットは、前記後退支援制御が実行されていない場合において、前記後退経路が前記前進経路に沿って前記車両が後退している時間が所定の閾値時間以上であるか、又は、前記後退経路が前記前進経路に沿って前記車両が後退している距離が所定の閾値距離以上である場合、前記提案条件が成立したと判定するように構成された、
後退支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の後退支援装置において、
前記制御ユニットは、前記車両が走行している道路幅が所定の閾値幅以下であって且つ前記車両に向かってくる対向車が存在すると前記周囲の状況に基いて判定した場合、又は、前記車両が走行する道路が行き止まりであるか若しくは前記道路の幅が前記車両が走行できない程の幅であると前記周囲の状況に基いて判定した場合、前記提案条件が成立したと判定するように構成された、
後退支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の後退支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記周囲の状況に基いて前記提案条件が成立したか否かを判定するとともに、前記後退経路に基いて前記提案条件が成立したか否かを判定し、
前記周囲の状況に基く前記提案条件が成立したことに起因して前記後退支援制御の実行を提案したときに前記運転者が前記後退支援制御の実行を拒否した場合、前記後退経路に基く前記提案条件が成立しても前記後退支援制御の実行を提案しない、
ように構成された、後退支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の後退支援装置において、
前記制御ユニットは、前記運転者が前記後退支援制御の実行に同意した同意回数が多いほど前記提案条件を成立し易くし、前記運転者が前記後退支援制御の実行を拒否した拒否回数が多いほど前記提案条件を成立に難くするように構成された、
後退支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が前進しているときの前進経路に沿って車両を後退させる後退支援制御を実行する後退支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、前進経路に沿って車両を後退させる後退支援制御を実行可能な後退支援装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の後退支援装置(以下、「従来装置」と称呼する。)は、車両が走行制限エリアに進入した場合、運転者によって後退走行要求信号が入力されたか否かを判定する。従来装置は、後退走行要求信号が入力された場合、後退支援制御を実行する。
【0003】
上記走行制限エリアは、走行がもともと制限されているエリア(例えば、行き止まり、及び一方通行の道路)、及び、他の障害物により走行が一時的に制限されるエリアを含む。後退走行要求信号は、運転者が後退支援制御の実行に同意した場合に入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
従来装置は、後退走行要求信号が入力されなければ、後退支援制御を実行しない。運転者は、後退支援制御の実行を望む場合、「後退信号要求信号を発生させるための同意操作」を自発的に行う必要がある。後退支援制御が利用できる状況であっても、運転者がその旨を認識していない場合には、当然ながら運転者は同意操作を行わない。このため、後退支援制御の実行機会を逸失する可能性がある。
【0006】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、後退支援制御の実行機会を逸失する可能性を低減できる後退支援装置を提供することにある。
【0007】
本発明の後退支援装置(以下、「本発明装置」と称呼する。)は、
車両の前進時に前記車両が通過した前進経路を記憶する記憶装置(38)と、
前記前進経路に沿って前記車両を後退させる後退支援制御を実行可能な制御ユニット(20)と、を備え、
前記制御ユニットは、
前記車両の周囲の状況、又は、前記車両の後退時に前記車両が通過した後退経路、に基いて、所定の提案条件が成立すると判定した場合(ステップ310「Yes」且つステップ315「Yes」、ステップ510「Yes」、ステップ605「Yes」)、前記後退支援制御の実行を前記車両の運転者に提案し(ステップ320)、
前記後退支援制御の実行に前記運転者が同意した場合(ステップ325「Yes」)、前記後退支援制御を実行する(ステップ330、ステップ400乃至ステップ495)、
ように構成された、後退支援装置。
【0008】
本発明装置によれば、提案条件が成立すると判定した場合、後退支援制御の実行を提案する。これにより、後退支援制御が利用できる状況できる旨を運転者が認識していない場合であっても、後退支援制御が実行可能である旨を運転者に気付かせることができる。よって、後退支援制御の実行機会が逸失することを防止できる。
【0009】
更に、本発明装置によれば、車両の周囲の状況又は後退経路に基いて提案条件が成立したか否かを判定する。このため、運転者が後退支援制御の実行を必要とする可能性が高いときに提案条件が成立したと判定することができ、運転者が後退支援制御の実行の提案を煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る後退支援装置の概略システム構成図である。
【
図2】実施例1に係る後退支援装置のECUのCPUが実行するルーチンのフローチャートである。
【
図3】実施例1に係る後退支援装置のECUのCPUが実行するルーチンのフローチャートである。
【
図4】実施例1に係る後退支援装置のECUのCPUが実行するルーチンのフローチャートである。
【
図5】実施例2に係る後退支援装置のECUのCPUが実行するルーチンのフローチャートである。
【
図6】実施例3に係る後退支援装置のECUのCPUが実行するルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示したように、本実施形態に係る後退支援装置10(以下、「本装置10」と称呼する。)は、車両VAに適用され、
図1に示した構成要素を備える。
【0012】
制御ECU20は自動運転の一種である後退支援制御を実行するECUである。後退支援制御は、車両VAが前進しているときに通過した前進経路に沿って車両VAを後退させる制御である。
【0013】
本明細書において、「ECU」はマイクロコンピュータを主要部として備える電子式制御装置である。ECUは、制御ユニット、コントローラ及びコンピュータとも称呼される。マイクロコンピュータは、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM及びインタフェース等を含む。ECU20が実現する機能は、複数のECUによって実現されてもよい。
【0014】
複数のカメラ22A乃至22Dは、それぞれ、前方カメラ、左方カメラ、右方カメラ及び後方カメラである。前方カメラ、左方カメラ、右方カメラ及び後方カメラは、それぞれ、車両VAの前方、左方、右方及び後方を撮影して前方画像データ、左方画像データ、右方画像データ及び後方画像データを取得する。なお、各カメラ22A乃至22Dを区別する必要がない場合には、これらを「カメラ22」と称呼する。前方画像データ、左方画像データ、右方画像データ及び後方画像データを区別する必要がない場合、これらを「画像データ」と称呼する。
【0015】
本装置10が備える各ソナーを以下に説明する。ソナーは、超音波を送信し、物体により反射されたその超音波を受信する。ソナーは、超音波の送信から受信までの時間に基いて物体までの距離を特定し、その距離を含むソナー物体情報をECU20に送信する。
【0016】
前ソナー24A乃至24Dは車両VAのフロントバンパー(不図示)に配設され、後ソナー26A乃至26Dは車両VAのリアバンパー(不図示)に配設され、左サイドソナー28A及び28は車両VAの左側面に配設され、右サイドソナー30A及び30Bは車両VAの右側面に配設される。
【0017】
前ソナー24A乃至24Dは車両VAの前方の物体までの距離を取得し、後ソナー26A乃至26Dは車両VAの後方の物体までの距離を取得し、左サイドソナー28A及び28Bは車両VAの左側方の物体までの距離を取得し、右サイドソナー30A及び30Bは車両VAの右側方の物体までの距離を取得する。
【0018】
車速センサ32は、車両VAの速度(車速Vs)を検出する。加速度センサ33は、車両VAの前後軸方向の加速度Gを検出する。操舵角センサ34は、ステアリングホイール(不図示)の操舵角θを検出する。シフトポジションセンサ35は、車両VAのシフトレバー(不図示)の位置(シフトポジション)を検出する。ECU20は、これらのセンサの検出値を取得する。なお、シフトポジションには、Nレンジ(中立位置)、Pレンジ(駐車位置)、Dレンジ(前進位置)及びRレンジ(後進位置)等がある。GNSS受信機36は、複数の人工衛星からの信号を受信し、受信した信号に基いて車両VAの現在位置(緯度及び経路)を特定する。
【0019】
記憶装置38は経路記憶部38aを有する。経路記憶部38aには、車両VAが前進している間に車両VAが走行した前進経路に関する前進経路情報が記憶される。
【0020】
パワートレーンアクチュエータ42は、車両VAの駆動装置(例えば、内燃機関及び/又は電動機)が発生する駆動力を変更する。ブレーキアクチュエータ44は、車両VAに付与される制動力を制御する。操舵モータ46は操舵機構48に組み込まれている。操舵機構48は、ステアリングホイールの操作に応じて操舵輪を転舵するための機構である。操舵モータ46は、ECU20からの指示に応じて、操舵輪の舵角を変化させるための自動操舵トルクを操舵機構48に発生させる。変速機50の変速比及びシフトレンジは、シフトポジションに基いて制御される。なお、変速機50は、歯車式変速機及び無断変速機の何れであってもよい。ディスプレイ52は、タッチパネル式のディスプレイであり、車室の運転者が視認可能な位置に配設されている。ディスプレイ52には、後述する提案画面60が表示される。スピーカ54は車室に配設されている。スピーカ54は、後述する提案音声メッセージを発音する。
【0021】
<後退支援制御>
本装置10は、車速Vsが所定の閾値車速Vsth以下であって且つシフトポジションがDレンジである場合、車両VAが走行した前進経路に関する前進経路情報を取得し、その前進経路情報を経路記憶部38aに記憶する。前進経路情報は、推定位置、路面画像及びGNSS位置を含む。
【0022】
推定位置は、前回の推定位置を基準として推定された現在の車両VAの位置である。本装置10は、車速Vs、及び、操舵角θに基いて現在の車両VAの位置を推定する。路面画像は、例えば、カメラ22が取得した画像データに基いて生成された俯瞰画像から取得される。GNSS位置は、GNSS受信機36が特定した車両VAの現在位置である。
【0023】
本装置10は、運転者が所定の同意操作を行ったことを検出すると後退支援制御を開始する。後退支援制御においては、本装置10は、現時点にて取得したGNSS位置及び現時点にて取得した路面画像と、経路記憶部38aに記憶された前進経路情報のGNSS位置及び路面画像と、を比較して、前進経路を基準にした-車両VAの現在位置を特定する。そして、本装置10は、特定した車両VAの現在位置と前進経路とに基いて、車両VAが前進経路に沿って後退するための目標操舵角θtgtを取得する。本装置10は、操舵角θが目標操舵角θtgtと一致するように操舵モータ46を制御する。
【0024】
なお、後退支援制御においては、本装置10は、車速Vsが所定の後退速度Vre以下となるための目標加速度Gtgtを取得する。本装置10は、加速度Gが目標加速度Gtgtと一致するようにパワートレーンアクチュエータ42及びブレーキアクチュエータ44を制御する。
【0025】
(作動の概要)
本装置10は、車両VAの周囲の状況、又は、車両VAの後退時に車両VAが通過した後退経路に基いて、提案条件が成立するか否かを判定する。提案条件が成立した場合、本装置10は、後退支援制御の実行を提案するための提案画面60をディスプレイ52に表示する。
【0026】
本装置10は、車両VAの周囲の状況に基いて車両VAが前進できないと判定した場合、提案条件が成立したと判定する。具体的には、本装置10は、車両VAの、車両VAの周囲の状況に基いて以下の条件A又は条件Bが成立したと判定した場合、提案条件が成立したと判定する。
条件A:車両VAが走行している道路の幅を表す道路幅Wが所定の閾値幅Wth以下であり、且つ、車両VAから所定距離以内に対向車を検知しているとの条件。
条件B:車両VAが走行する道路が行き止まりであるか又は当該道路の幅が車両VAが走行できない程の幅である狭所に車両VAが位置しているとの条件。
【0027】
本装置10は、後退経路に基いて後退支援制御が実行できると判定した場合、提案条件が成立したと判定する。具体的には、本装置10は、後退経路に基いて以下の条件C1及び条件C2の何れかが成立したと判定した場合、提案条件が成立したと判定する。
条件C1:後退経路が前進経路に沿って車両VAが後退している後退時間は所定の閾値時間以上であるとの条件。
条件C2:後退経路が前進経路に沿って車両VAが後退している後退距離が所定の閾値距離以上であるとの条件。
【0028】
なお、上記条件Aは実施例1で説明し、上記条件Bは実施例3で説明し、上記条件C1及び条件C2は実施例2で説明する。
【0029】
提案画面60は、提案メッセージ62、同意ボタン64及び拒否ボタン66を含む。提案メッセージ62には、後退支援制御の実行を運転者に提案するメッセージが表示される。具体的には、
図1に示したように、提案メッセージ62には「後退支援を開始?」とのメッセージが表示される。運転者は、後退支援制御の実行に同意する場合には同意ボタン64をタッチ操作し、後退支援制御の実行を拒否する場合には拒否ボタン66をタッチ操作する。同意ボタン64がタッチ操作された場合、同意信号がECU20に入力される。拒否ボタン66がタッチ操作された場合、拒否信号がECU20に入力される。
【0030】
上記提案条件は、後退支援制御が実行される可能性が高い場合に成立する。提案条件が成立した場合に提案画面60が表示される。これにより、後退支援制御が利用可能な状況を運転者が認識していない場合であっても、提案画面60が表示されるため、後退支援制御の実行機会が逸失する可能性を低減できる。
後退支援制御が利用できない状況であるにもかかわらず、提案画面60が表示される可能性を低減できる。これにより、運転者が提案画面60を煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【0031】
(具体的作動)
<実施例1>
ECU20のCPUは、
図2乃至
図4にフローチャートにより示したルーチンを所定時間が経過する毎に実行する。
【0032】
<前進経路記憶ルーチン>
適当な時点が到来すると、CPUは、
図2のステップ200から処理を開始する。処理はステップ205に進み、ステップ205にて、CPUは、車速Vsが閾値車速Vsth以下であるか否かを判定する。
【0033】
車速Vsが閾値車速Vsth以下である場合、CPUはステップ205にて「Yes」と判定し、処理はステップ210に進む。ステップ210にて、CPUは、シフトポジションがDレンジであるか否かを判定する。
【0034】
シフトポジションがDレンジである場合、CPUは、ステップ210にて「Yes」と判定し、処理はステップ215に進む。ステップ215にて、CPUは、前進経路情報を経路記憶部38aに記憶する。その後、処理はステップ295に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。
【0035】
処理がステップ205に進んだときに車速Vsが閾値車速Vsthよりも大きい場合、CPUは、ステップ205にて「No」と判定する。その後、処理はステップ295に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。
【0036】
処理がステップ210に進んだときにシフトポジションがDレンジでない場合、CPUは、ステップ210にて「No」と判定する。その後、処理はステップ295に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。
【0037】
<後退支援提案ルーチン>
適当な時点が到来すると、CPUは、
図3のステップ300から処理を開始する。処理はステップ305に進み、ステップ305にて、CPUは、実行フラグXexeの値が「0」であるか否かを判定する。
【0038】
実行フラグXexeの値は、CPUが後退支援制御を開始する場合に「1」に設定され、CPUが後退支援制御を終了する場合に「0」に設定される。なお、実行フラグXexeの値は、イニシャルルーチンにて「0」に設定される。イニシャルルーチンは、車両VAの図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUによって実行されるルーチンである。
【0039】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ305にて「Yes」と判定する。この場合、処理はステップ310に進み、CPUは、前方画像データに基いて道路幅Wを特定し、道路幅Wが閾値幅Wth以下であるか否かを判定する。閾値幅Wthは、車両VAが対向車とすれ違うことができない程度の幅(例えば、車両VAの車幅の2倍程度の幅)を表す値に予め設定されている。
【0040】
道路幅Wが閾値幅Wth以下である場合、CPUはステップ310にて「Yes」と判定し、処理はステップ315に進む。ステップ315にて、CPUは、前方画像データに基いて対向車が存在するか否かを判定する。
【0041】
対向車が存在する場合、CPUはステップ315にて「Yes」と判定し、ステップ320及びステップ325を実行する。
ステップ320:CPUは、提案画面60をディスプレイ52に表示する。
ステップ325:CPUは、提案画面60を表示してから所定時間が経過する前に同意信号が入力されたか否かを判定する。
【0042】
所定時間が経過する前に同意信号が入力された場合、CPUは、ステップ325にて「Yes」と判定し、ステップ330及びステップ335を実行する。
ステップ330:CPUは、実行フラグXexeの値を「1」に設定する。
ステップ335:CPUは、シフトポジションがRレンジであるか否かを判定する。
【0043】
シフトポジションがRレンジでない場合、CPUはステップ335にて「No」と判定し、処理はステップ340に進む。ステップ340にて、CPUは、シフトポジションがRレンジとなるように変速機50を制御する。その後、処理はステップ395に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。
【0044】
一方、シフトポジションがRレンジである場合、CPUはステップ335にて「Yes」と判定する。この場合、処理はステップ395に進み、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。
【0045】
処理がステップ305に進んだときに実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ305にて「No」と判定する。この場合、処理はステップ395に進み、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。
【0046】
処理がステップ310に進んだときに道路幅Wが閾値幅Wthよりも大きい場合、CPUは、ステップ310にて「No」と判定する。この場合、処理はステップ395に進み、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。
【0047】
処理がステップ315に進んだときに対向車が存在しない場合、CPUは、ステップ315にて「No」と判定する。この場合、処理はステップ395に進み、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。
【0048】
処理がステップ325に進んだときに所定時間が経過する前に同意信号が入力されない場合、CPUは、ステップ325にて「No」と判定する。この場合、処理はステップ395に進み、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。なお、
図3に示したステップ345及びステップ350は後述する。
【0049】
<後退支援制御ルーチン>
適当な時点が到来すると、CPUは、
図4のステップ400から処理を開始する。処理はステップ405に進み、ステップ405にて、CPUは、実行フラグXexeの値が「1」であるか否かを判定する。
【0050】
実行フラグXexeの値が「0」である場合、CPUは、ステップ405にて「No」と判定する。この場合、処理はステップ495に進み、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。
【0051】
実行フラグXexeの値が「1」である場合、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定し、ステップ410乃至ステップ435を実行する。
【0052】
ステップ410:CPUは、GNSS位置及び路面画像に基いて前進経路を基準にした車両VAの現在位置を特定する。
ステップ415:CPUは、特定した車両VAの現在位置に基いて車両VAが前進経路に沿って走行するための目標操舵角θtgtを取得する。
ステップ420:CPUは、車速Vsが後退速度Vre以下で走行するための目標加速度Gtgtを取得する。
ステップ425:CPUは、操舵角θが目標操舵角θtgtと一致するように操舵モータ46を制御する操舵制御を行う。
ステップ430:CPUは、加速度Gが目標加速度Gtgtと一致するようにパワートレーンアクチュエータ42及びブレーキアクチュエータ44を制御する加減速制御を行う。
ステップ435:CPUは、所定の終了条件が成立したか否かを判定する。
【0053】
CPUは、以下の条件D乃至条件Fの何れかが成立した場合、終了条件が成立したと判定する。
条件D:経路記憶部38aに記憶された前進経路情報が示す総ての前進経路を車両VAが後退したとの条件。
条件E:ステアリングホイールが操作されたとの条件。
条件F:図示しない終了ボタンが操作されたとの条件。
【0054】
終了条件が成立していない場合、CPUは、ステップ435にて「No」と判定する。この場合、処理はステップ495に進み、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。
【0055】
終了条件が成立した場合、CPUは、ステップ435にて「Yes」と判定する。この場合、処理はステップ440に進み、CPUは、実行フラグXexeの値を「0」に設定する。その後、処理はステップ495に進み、CPUは、本ルーチンを一旦終了する。
【0056】
本実施例によれば、車両VAの周囲の状況に基いて、対向車とすれ違うことができないと判定した場合、提案条件が成立したと判定する。この場合に提案画面60が表示される。これにより、後退支援制御の実行機会を逸失することを防止でき、且つ、運転者が後退支援制御の実行の提案を煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【0057】
<実施例2>
本実施例に係るCPUは、
図3に示したルーチンの代わりに、
図5に示したルーチンを実行する。なお、
図5に示した処理で
図3及び
図4に示した処理と同じ処理は、
図3及び
図4に示した処理と同じ符号を付与し、説明を省略する。
【0058】
適当な時点が到来すると、CPUは、
図5のステップ500から処理を開始する。実行フラグXexeの値が「0」である場合(
図5に示したステップ305「Yes」)、処理はステップ505に進む。ステップ505にて、CPUは、シフトポジションがRレンジであるか否かを判定する。
【0059】
シフトポジションがRレンジである場合、CPUは、ステップ505にて「Yes」と判定し、
図5に示したステップ410にて、前進経路を基準にした車両VAの現在位置を特定する。
【0060】
その後、処理はステップ510に進み、CPUは、上記条件C1及び上記条件C2の何れかが成立するか否かを判定する。なお、CPUは、
図5に示したステップ410にて特定した車両VAの現在位置と前進経路までの距離が所定距離以下である場合、車両VAは前進経路に沿って後退していると判定する。
【0061】
条件C1及び条件C2の何れかが成立する場合、CPUはステップ510にて「Yes」と判定する。この場合、処理は
図5に点線で示したステップ515に進まずに
図5に示したステップ320に進み、CPUは提案画面60をディスプレイ52に表示する。
図5に点線で示したステップ515については後述する。所定時間以内に同意信号が入力された場合(
図5に示したステップ325「Yes」)、
図5に示したステップ330にて、CPUは、実行フラグXexeの値を「1」に設定する。その後、処理はステップ595に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。所定時間以内に同意信号が入力されなかった場合(
図5に示したステップ325「No」)、処理はステップ595に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。
【0062】
処理が
図5に示したステップ305に進んだときに実行フラグXexeの値が「1」である場合(
図5に示したステップ305「No」)、処理はステップ595に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。処理がステップ510に進んだときに条件C1及び条件C2の何れも成立しない場合(ステップ510「No」)、処理はステップ595に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。
【0063】
本実施例によれば、車両VAが前進経路に沿って後退している時間が閾値時間以上となった場合、又は、車両VAが前進経路に沿って後退している距離が閾値距離以上となった場合、提案画面60が表示される。これにより、後退支援制御の実行機会を逸失することを防止でき、且つ、運転者が後退支援制御の実行の提案を煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【0064】
<実施例3>
本実施例に係るCPUは、
図3に示したルーチンの代わりに、
図6に示したルーチンを実行する。なお、
図6に示した処理で
図3及び
図5に示した処理と同じ処理は、
図3及び
図5に示した処理と同じ符号を付与し、説明を省略する。
【0065】
適当な時点が到来すると、CPUは、
図6のステップ600から処理を開始する。実行フラグXexeの値が「0」であり(
図6に示したステップ305「Yes」)、シフトポジションがRレンジである場合(
図6に示したステップ505「Yes」)、処理はステップ605に進む。
【0066】
ステップ605にて、CPUは、画像データ及びソナー物体情報に基いて、車両VAが走行する道路が行き止まりであるか又は車両VAが上記狭所に位置しているか否かを判定する。
【0067】
詳細には、CPUは、車両VAの前端から所定距離以内に「所定の長さを有し且つ車両、歩行者及び二輪車等でない構造物(例えば、ガードレール及び壁等)」が存在すると判定した場合、車両VAが走行する道路が行き止まりであると判定する。なお、CPUは、前方画像データ及び前ソナー24A乃至24Dから送信されたソナー物体情報に基いて、車両VAの前端から所定距離以内に存在する物体が上記構造物であるか否かを判定する。
【0068】
更に、CPUは、車両VAの左側面から所定距離以内に上記構造物が存在し、且つ、車両VAの右側面から所定距離以内に上記構造物が存在すると判定した場合、車両VAが狭所に位置すると判定する。なお、CPUは、左画像データ及び左サイドソナー28A及び28Bから送信されたソナー物体情報に基いて、車両VAの左側面から所定距離以内に存在する物体が上記構造物であるか否かを判定する。同様に、CPUは、右画像データ及び右サイドソナー30A及び30Bから送信されたソナー物体情報に基いて、車両VAの右側面から所定距離以内に存在する物体が上記構造物であるか否かを判定する。
【0069】
車両VAが走行する道路が行き止まりである場合又は車両VAが狭所に位置する場合、CPUは、ステップ605にて「Yes」と判定し、
図6に示したステップ320に進む。
図6に示したステップ320以降の処理は
図3で説明したので説明を省略する。
【0070】
本実施例によれば、車両VAの周囲の状況に基いて、車両VAが行き止まり又は狭所に進入したと判定した場合、提案条件が成立したと判定する。この場合に提案画面60が表示される。これにより、後退支援制御の実行機会を逸失することを防止でき、且つ、運転者が後退支援制御の実行の提案を煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【0071】
<実施例の組み合わせ>
上記実施例1乃至実施例3を組み合わせることも可能である。上記実施例1乃至実施例3を組み合わせた場合、例えば、実施例2の提案条件は、実施例1の提案条件又は実施例3の提案条件の成立後に成立する可能性がある。この場合においては、運転者は、先に成立した提案条件に起因して表示された提案画面60で拒否ボタン66を操作する可能性がある。運転者が拒否ボタン66を操作した後に実施例2の提案条件が成立すると、提案画面60が再び表示される。運転者は後退支援制御の実行を拒否したにもかかわらず提案画面60が再び表示されると、運転者はその提案画面60を煩わしいと感じる可能性がある。
【0072】
このため、処理が
図3に示したステップ325に進んだときに所定時間が経過する前に同意信号が入力されていない場合(
図3に示したステップ325「No」)、処理はステップ345に進む。ステップ345にて、CPUは、提案画面60を表示してから所定時間が経過する前に拒否信号が入力されたか否かを判定する。
【0073】
所定時間が経過する前に拒否信号が入力された場合、CPUは、ステップ345にて「Yes」と判定し、ステップ350を実行する。ステップ350にて、CPUは、拒否フラグXrejの値を「1」に設定する。その後、処理はステップ335に進む。
【0074】
拒否フラグXrejの値は、提案画面60を表示してから所定時間が経過する前に拒否信号が入力された場合に「1」に設定され、拒否信号が入力されてから所定の無効時間が経過したときに「0」に設定される。なお、無効時間は上記所定時間よりも長くなるように設定されることが望ましい。拒否フラグXrejの値は、イニシャルルーチンにても「0」に設定される。
【0075】
所定時間が経過する前に拒否信号が入力されない場合、CPUは、ステップ345にて「No」と判定する。その後、処理はステップ395に進み、CPUは本ルーチンを一旦終了する。
【0076】
更に、CPUが
図5に示したステップ510にて「Yes」と判定した場合、処理はステップ515に進む。ステップ515にて、CPUは、拒否フラグXrejの値が「0」であるか否かを判定する。
【0077】
拒否フラグXrejの値が「0」である場合、CPUはステップ515にて「Yes」と判定し、処理は
図5に示したステップ320に進んで提案画面60が表示される。一方、拒否フラグXrejの値が「1」である場合、CPUはステップ515にて「No」と判定し、処理はステップ595に進んでCPUは本ルーチンを一旦終了する。この結果、拒否フラグXrejの値が「1」である場合には、実施例2の提案条件が成立しても、提案画面60が表示されなくなる。このため、運転者は後退支援制御の実行を拒否した後に提案画面60が再び表示される可能性を低減でき、運転者が提案画面60を煩わしいと感じる可能性を低減できる。
【0078】
なお、CPUは、
図6に示したステップ325にて「No」と判定した場合、上記ステップ345の判定を行う。
【0079】
実施例1及び実施例3においても、提案条件が成立しても拒否フラグXrejの値が「1」である場合には、CPUは提案画面60を表示しなくてもよい。
【0080】
<変形例>
本変形例に係るECU20は、運転者が後退支援制御の実行に同意したか拒否したかの同意拒否履歴に基いて、提案条件に用いる閾値を変更してもよい。具体的には、ECU20は、同意回数が多いほど提案条件が成立し易くなるように閾値を変更し、拒否回数が多いほど提案条件が成立し難くなるように閾値を変更する。
【0081】
実施例1の提案条件(条件A)では、閾値幅Wthが上記閾値である。同意回数が多いほど閾値幅Wthが大きく設定され、拒否回数が多いほど閾値幅Wthが小さく設定される。
【0082】
実施例2の提案条件(条件C)では閾値時間及び閾値距離が上記閾値である。同意回数が多いほど閾値時間及び閾値距離は小さく設定され、拒否回数が多いほど閾値時間及び閾値距離は大きく設定される。
【0083】
実施例3の提案条件(条件B)では、構造物が車両VAから所定距離以内に存在することが条件となるが、この所定距離が上記閾値である。同意回数が多いほど所定距離は大きく設定され、拒否回数が多いほど所定距離は小さく設定される。
【0084】
例えば、ECU20は、提案画面60が表示されてから所定時間が経過する前に同意ボタン64が操作された場合、提案指標値に所定の第1値を加算する。ECU20は、提案画面60が表示されてから所定時間が経過する前に拒否ボタン66が操作された場合、提案指標値から所定の第2値を減算する。そして、ECU20は、提案指標値が大きいほど、提案条件が成立し易くなるように閾値を変更する。
【0085】
以上により、運転者が後退支援制御の実行を好むか否かに応じて提案画面60の表示頻度を調節することができる。
【0086】
上記実施形態では、ECU20は、提案画面60をディスプレイ52に表示することにより、後退支援制御を提案したが、これに限定されない。例えば、ECU20は、スピーカ54から「後退支援制御を提案するための提案音声メッセージ」を発音してもよい。更に、ECU20は、音声認識により運転者が後退支援制御に同意したか拒否したかを判定してもよい。
【0087】
上記実施形態では、物体を検出するためのセンサとして、超音波を用いて物体を検出するソナーを例示したが、波動(例えば電磁波、音波等)を用いて物体を検出するセンサであればよい。
【0088】
本装置10は、エンジン自動車、ハイブリッド車、プラグインハブリッド車、燃料電池車及び電気自動車等の車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10…後退支援装置、20…ECU、38…記憶装置、38a…経路記憶部、42…パワートレーンアクチュエータ、44…ブレーキアクチュエータ、46…操舵モータ、60…提案画面。