(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025214
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】煽り構造
(51)【国際特許分類】
B62D 33/027 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B62D33/027 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129792
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 高章
(57)【要約】
【課題】車両の煽りを開放する際に、煽りの過剰な回動を規制し、煽りが車両部品と干渉することを回避することが可能な煽り構造を提供する。
【解決手段】車両の荷台に設けられる煽り構造であって、煽り10は、煽り10に設けられる支持部13と、支持部13に移動可能に設けられる係止部14と、を備え、係止部14は、煽り10が開放される際に、煽り10から突出するとともにこの突出する状態で移動を規制され、車両の当接対象部材に当接し煽り10の回動を規制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台に設けられる煽り構造であって、
前記煽りは、前記煽りに設けられる支持部と、前記支持部に移動可能に設けられる係止部と、を備え、
前記係止部は、前記煽りが開放される際に、前記煽りから突出するとともに当該突出する状態で移動を規制され、前記車両の当接対象部材に当接し前記煽りの回動を規制する
ことを特徴とする、煽り構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷台に設けられる煽り構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されるような荷台を備えた車両(いわゆる、平ボデーのトラック)には、荷台に煽りが設けられている。この煽りは、荷台の車両後方や車両左右に設けられており、下端のヒンジを中心に回動する。荷台への荷物の積み下ろしの際には、煽りを下方に旋回させて開放し、荷台へのアクセスを容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、荷物への荷物の積み下ろしを行う際には、荷台へのアクセスを容易にするために、煽りを下方に旋回させて開放することがある。このとき、作業者によっては、自由落下の状態で煽りを開放する場合がある。この場合、煽りが勢いよく回動するため、煽り用に設けられたストッパでは係止しきれずに車両の車両部品と干渉し、車両部品を損傷させてしまう虞がある。
【0005】
煽りの開放時に、煽りに損傷を与えることなく煽りの回動を止めるためには、ストッパはゴム等の弾性変形し易いものを採用する必要があり、また、ストッパは、車幅ラインを越えて突出させることができない、また、車両部品の中には、荷台の下方のスペース上、車両の車幅ラインぎりぎりに配置せざるを得ないものもある。したがって、車両の種類によっては、現状のストッパでは、煽りが車両部品と干渉してしまうことを回避することが難しい場合があることが考えられる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決すべく創案されたもので、車両の煽りが開放される際に、煽りの過剰な回動を規制し、煽りが車両部品と干渉することを回避することが可能な煽り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係る煽り構造は、車両の荷台に設けられる煽り構造であって、前記煽りは、前記煽りに設けられる支持部と、前記支持部に移動可能に設けられる係止部と、を備え、前記係止部は、前記煽りが開放される際に、前記煽りから突出するとともに当該突出する状態で移動を規制され、前記車両の当接対象部材に当接し前記煽りの回動を規制する。
【0008】
本適用例によれば、煽りに備えられた係止部が、煽りが開放される際に、煽りから突出するとともに当該突出する状態で移動を規制され、車両の当接対象部材に当接し煽りの回動を規制する。
【発明の効果】
【0009】
本件によれば、煽りが開放される際に、係止部が煽りの回動を規制するので、煽りが車両部品と干渉することを回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一実施形態の煽り構造を示す図であり、(a)は煽りの閉鎖状態の水平断面図(
図1(b)のA-A矢視断面図)、(b)は煽りの閉鎖状態の外面図(車両側面の外側から見た図)、(c)は煽りの開放状態の内面図(車両側面の外側から見た図)である。
【
図2】
図1及び
図5に示す煽り構造が適用される車両の側面図であり、(a)は煽りの閉鎖状態の側面図、(b)は煽りの開放状態の側面図である。
【
図3】
図1に示す煽り構造の断面図であり、(a)は煽りの閉鎖状態の鉛直断面図(
図1(b)のB-B矢視断面図)、(b)は煽りの開放状態の鉛直断面図(
図1(c)のC-C矢視断面図)である。
【
図4】
図1に示す煽り構造の回動時の作用を説明する断面図であり、(a)は本実施例の煽り構造の場合を示し、(b)は従来構造の煽り構造の場合を示している。
【
図5】第二実施形態の煽り構造を示す断面図であり、(a)は煽りの閉鎖状態の断面図、(b)は煽りの開放状態の断面図である。
【
図6】
図5に示す煽り構造の回動時の作用を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。この実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
[1.第一実施形態]
[1.1.装置構成]
本実施形態に係る車両は、
図2(a)に示すように、運転室2の後方に荷台3を備えた車両1、いわゆる、平ボデーのトラックである。荷台3は、フレーム4上に搭載され、荷台3の左右両側縁部及び後縁部には、それぞれ煽り10L,10R,10RRが設けられている。荷台3の左右両側縁部の下方には、後輪6と、前輪5及び後輪6間のサイドガード7が設けられ、荷台3の後縁部の下方には、リヤバンパ8が設けられる。なお、
図2、及び、後述の
図1,
図3~6中には、矢印で方向を示しており、符号Fは車両前方を、符号Rは車両後方を、符号UPは上方を、符号DWは下方を、符号INは車両内側を、符号OUTは車両外側を、それぞれ示している。
【0013】
各煽り10L,10R,10RRは、何れも各下端部に装備されるヒンジ16を中心に回動させながら開閉できる。
図2(a)は煽り10L,10R,10RRがいずれも閉鎖されている状態を示し、
図2(b)は煽り10Rのみが開放されている状態を示す。
本実施形態の煽り構造は、荷台3の左右両側縁部の煽り10L,10Rに適用されている。ここでは、荷台3の右側縁部の煽り10Rに着目して説明するが、左右の煽り10L,10Rの構造は、対称で同様に構成されているので、左右の煽り10L,10Rを区別しないで、煽り10と称して説明する。
【0014】
図1(a),(b)及び
図3(a)に示すように、煽り10は、外面パネル11と内面パネル21とを備え、外面パネル11には、凹部12が形成される。本実施形態では、車両1の前方と後方との2箇所に凹部12が形成される。各凹部12は、外面パネル11と平行な底壁部12aと、底壁部12aの車両前後方向両側に底壁部12aと直角に立設した側壁部12b,12cと、底壁部12aの鉛直上方に形成された傾斜壁部12dとを備えている。
【0015】
凹部12内の鉛直上方の傾斜壁部12dの近くには、側壁部12b,12cを貫通して車両前後方向に水平に延びた軸部(支持部)13が固定されている。
また、凹部12内には、その鉛直上方の基端部14aを軸部13に枢支された干渉防止棒(係止部)14が格納されている。
干渉防止棒14は、煽り10の開放動作時に車両部品9(
図4参照)と干渉することを回避するための棒状部材であるが、煽り10の開放動作時に煽り10を係止するものなので、係止部とも呼ぶ。軸部13は、干渉防止棒14を支持するため、支持部とも呼ぶ。
【0016】
干渉防止棒14は、煽り10の開放動作時に車両部品9と干渉することを回避するための棒状部材であり、鉄等の金属材料で形成される。干渉防止棒14には、その鉛直下方の先端部14bにゴムなどの弾性材で形成された緩衝材15が装着されている。
干渉防止棒14の重心は軸部13よりも下方にあるため、煽り10を回動させて開放させる際には、干渉防止棒14は、
図4(a)に示すように、その先端部14bを鉛直下方に保持した姿勢で、煽り10に対して相対回転しながら、凹部12から外方に突出するようになっている。
【0017】
煽り10が、略180°回動する手前で、
図3(b)に示すように、凹部12に形成された傾斜壁部12dに、干渉防止棒14の側縁面14cが当接して煽り10Rに対する干渉防止棒14の相対回転が規制される。この状態で、煽り10に設けた干渉防止棒14の先端部14bが車両側の当接対象部材に当接すると、煽り10の更なる回動が規制される。本実施形態では、車両1の前方の当接対象部材には、サイドガード7が適用され、車両1の後方の当接対象部材には、後輪6が適用される。なお、
図2(a)中に、干渉防止棒14の当接対象箇所を点P1,P2で示している。図示するように、後輪6の当接対象箇所はタイヤになっている。
【0018】
[1.2.作用及び効果]
本実施形態に係る煽り構造は上述のように構成されるので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0019】
煽り10を回動させて開放させる際には、干渉防止棒14は、
図4(a)に示すように、その先端部14bを鉛直下方に保持した姿勢で、煽り10に対して相対回転しながら、凹部12から外方に突出する。煽り10が、略180°回動する手前で、凹部12に形成された傾斜壁部12dに、干渉防止棒14の側縁面14cが当接して煽り10に対する干渉防止棒14の相対回転が規制される。この状態で、干渉防止棒14の先端部14bが車両側の当接対象部材であるサイドガード7又は後輪6に当接すると、煽り10の更なる回動が規制される。
【0020】
当接対象部材であるサイドガード7や後輪6の外方面は、車両1の車幅いっぱいの付近に位置しており、煽り10は、干渉防止棒14の先端部14bよりも車両の幅方向外側に位置する略180°回動する手前で(車幅ラインに到達する手前で)回動を規制される。
したがって、
図4(b)に示すように、車両1の車幅ラインぎりぎりに配置されて、従来の煽り40ではストッパ17で規制されても干渉してしまう車両部品9に対しても、本煽り10では車両部品9と干渉することを回避することができる。したがって、車両部品9の損傷を回避することができる。
【0021】
また、本実施形態では、干渉防止棒14の先端部14bには緩衝材15が装着されているので、干渉防止棒14の先端部14bが車両側の当接対象部材であるサイドガード7又は後輪6に当接する際に、緩衝材15による緩衝作用が得られ。当接対象部材の損傷の虞も回避または低減される効果もある。また、後輪6の当接対象箇所をタイヤにしているので、干渉防止棒14の先端部14bが当接対象箇所によりソフトに当接する。
なお、煽り10を逆に回動させて閉鎖させる際には、煽り10の回動とともに、干渉防止棒14は上記とは逆に煽り10に対して相対回転し、煽り10が閉じられた段階では、凹部12内に収容される。
【0022】
[2.第二実施形態]
[2.1.装置構成]
本実施形態に係る車両は、
図2(a),(b)に示す第一実施形態と同様であるので説明を省略する。
また、本実施形態では、支持部及び係止部の構成が第一実施形態と異なっており、支持部及び係止部の配置箇所は、第一実施形態と同様である。
【0023】
本実施形態では、
図5(a)に示すように、煽り30の上部の外面パネル31と内面パネル22とを備え、外面パネル31には、軸心方向を傾斜させ斜め上方に開口した筒部32が形成される。本実施形態でも、車両1の前方と後方との2箇所に筒部(支持部)32が形成される。各筒部32内には干渉防止棒(当接部)33が出没自在に内装されている。
【0024】
干渉防止棒33は、煽り30の開放動作時に車両部品9と干渉することを回避するための棒状部材であるが、煽り30の開放動作時に煽り30を係止するものなので、係止部とも呼ぶ。筒部32は、干渉防止棒33を支持するため、支持部とも呼ぶ。
なお、筒部32及び干渉防止棒33の横断面形状は、矩形であってもよく円形であってもよい。
【0025】
干渉防止棒33の外径は、筒部32の内径よりも小さいが、筒部32の開口端部32aの近傍には、筒部32よりも内径が小さい縮径部34が設けられ、干渉防止棒33の基端には、干渉防止棒33よりも外径が大きい拡径部35が設けられている。干渉防止棒33の拡径部35の外径は、筒部32の縮径部34の内径よりも大きく、干渉防止棒33の先端が筒部32の開口端部32aから外方に突出しても、拡径部35が縮径部34に係止され、干渉防止棒33が筒部32から離脱しないようになっている。
【0026】
煽り30を回動させて開放させる際には、干渉防止棒33は、
図6に示すように、煽り30の回動角度が90°に近づいた段階で、筒部32の開口端部32aが鉛直下方を向くようになり、干渉防止棒33が自重で筒部32から突出していく。煽り10が、略180°回動するかその手前で、干渉防止棒33の先端部33aが車両側の当接対象部材(サイドガード7又は後輪6)に当接すると、煽り30の更なる回動が規制される。
【0027】
干渉防止棒33の先端部33aが車両側の当接対象部材6,7に当接すると、
図5(b)に示すように、干渉防止棒33は当接対象部材6,7の反力を受けて、干渉防止棒33の軸心が筒部32の軸心に対して軸振れした状態になり、干渉防止棒33と筒部32との接触部分の摩擦力が増大するため、突出状態の干渉防止棒33が筒部32内に没するような動きは発生しない。
【0028】
[2.2.作用及び効果]
本実施形態に係る煽り構造は上述のように構成されるので、第一実施形態と同様に、車両1の車幅ラインぎりぎりに配置された車両部品9に対しても、煽り30が車両部品9と干渉することを回避することが可能になり、煽り30の干渉に起因した車両部品9の損傷を回避することができる。
なお、煽り30を逆に回動させて閉鎖させる際には、煽り30の回動過程で、干渉防止棒33は、自重により上記とは逆に筒32内に戻っていき、煽り30が閉じられた段階では、筒32内に収容される。
【0029】
[3.その他]
上記の各実施形態では、特に設けていないが、煽り10,30を閉鎖し、閉鎖状態にロックしたとき、これに連動して、凹部12内または筒32内での干渉防止棒(当接部)14,33の動きを規制する連動ストッパを装備してもよい。この場合、煽り10,30のロックを解除すると、干渉防止棒14,33の連動ストッパも規制を解除し、干渉防止棒14,33は煽り10,30の開放動作と連動して、凹部12内または筒32内から外方へ突出可能となる。こうした連動ストッパで、走行中の干渉防止棒14,33の不要な動きを回避できる。
【0030】
また、上記の各実施形態では、荷台3の左右両側縁部の煽り10L,10Rに、支持部13,32及び干渉防止棒(係止部)14,33を有する干渉防止構造を適用する例を説明したが、荷台3の後縁部の煽り10RRに干渉防止構造を適用してもよい。この場合、リヤバンパ8を当接対象部材とすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 車両
2 運転室
3 荷台
4 フレーム
5 前輪
6 後輪(当接対象部材)
7 サイドガード(当接対象部材)
8 リヤバンパ
9 車両部品
10,10L,10R,10RR,30,40 煽り
11,31 外面パネル
12 凹部
12a 底壁部
12b,12c 側壁部
12d 傾斜壁部
13 軸部(支持部)
14 干渉防止棒(係止部)
14a 基端部
14b 先端部
14c 側縁面
15 緩衝材
16 ヒンジ
21,22 内面パネル
32 筒部(支持部)
32a 開口端部
33 干渉防止棒(当接部)
33a 先端部
34 縮径部
35 拡径部