(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025235
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】通電ユニット、軸受電食防止構造及び電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129827
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】都 優希
(72)【発明者】
【氏名】田中 唯久
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA12
5H605BB05
5H605DD01
5H605EB10
5H605EB16
5H605FF00
5H605FF13
(57)【要約】
【課題】軸とハウジングとを電気的に接続する通電ユニットの構成を簡素にする。
【解決手段】軸12を取り囲む方向に延びる導電性ブラシ2を備える。導電性ブラシ2は、少なくとも軸12に接触する導電性繊維5と、少なくともハウジング11に接触する導電性繊維5と、これら導電性繊維5を保持する状態に絡められた複数の導電性線部4b、4bと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、当該軸を取り囲むハウジングとを電気的に接続する通電ユニットにおいて、
前記軸を取り囲む方向に延びる導電性ブラシを備え、
前記導電性ブラシが、少なくとも前記軸に接触する導電性繊維と、少なくとも前記ハウジングに接触する導電性繊維と、これら導電性繊維を保持する状態に絡められた複数の導電性線部と、を有することを特徴とする通電ユニット。
【請求項2】
前記導電性繊維が前記軸の半周を超えた範囲を取り囲むように並んでいる請求項1に記載の通電ユニット。
【請求項3】
二つの前記導電性線部同士が、前記軸を取り囲む方向に交互に交差部と非交差部を成すように捩じり合されており、かつ当該各非交差部で二本以上の前記導電性繊維を束ねている請求項1又は2に記載の通電ユニット。
【請求項4】
前記導電性繊維が炭素繊維又は導電性ナイロンからなる請求項1又は2に記載の通電ユニット。
【請求項5】
前記導電性線部が金属線材からなる請求項1又は2に記載の通電ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の通電ユニットと、前記軸を前記ハウジングに対して支持する転がり軸受と、を備え、
前記導電性ブラシのインピーダンスが、前記転がり軸受のインピーダンスよりも低い軸受電食防止構造。
【請求項7】
請求項6に記載の軸受電食防止構造を備える電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸と、この周囲のハウジングを電気的に接続する通電ユニット、並びにこれを用いた軸受電食構造及び電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動機のロータが有する軸は、玉軸受等の転がり軸受によって回転可能に支持されている。近年、電動機は、効率的な運転を行うため、インバータ制御で駆動されている。特に、電動機とインバータと減速機とが一体化されたeアクスルユニットに搭載されている電動機の場合、その搭載性から極力小さな電動機を広範囲に効率よく使用する必要があり、より細やかな制御が行われている。
【0003】
従来、軸に軸電圧や軸電流が発生し、その際、ラジオノイズが発生したり、軸支持用の転がり軸受に備わる転動体と軌道面間で放電が起こって転動体等に電食が発生したりする問題が知られている。これらの発生を防止する対策として、軸支持用の転がり軸受を通らない通電経路で軸をアースすることが行われている。このアースを実現するため、ハウジングがアースと電気的に接続され、ハウジングと軸との間に通電ユニットが組み込まれている。
【0004】
特許文献1に開示された通電ユニットは、軸方向に対向する一対の導電性環状部材と、これら導電性環状部材の外周側を拘束するカップ等と、それら導電性環状部材間に固定された多数の導電性繊維とを有する。各導電性繊維は、それら導電性環状部材間に挟まれた基端部と、それら導電性環状部材間から径方向内方に突出して中空に延びる先端部とを一連に有する。多数の導電性繊維は、周方向に沿って全周に分布している。各導電性繊維の基端部を各導電性環状部材に固定する具体的手段として、導電性接着剤、粘着テープが提案されている。その通電ユニットのカップを電動機のハウジングの内周に嵌合し、多数の導電性繊維の先端部を軸に接触させると、ハウジングと軸を通電ユニットによって電気的に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の通電ユニットのように、一対の導電性円環状部材間に各導電性繊維の前記基端部を固定する手段として接着剤や粘着テープを採用すると、これらの剥離を防ぐために一対の導電性円環状部材の分離を阻止することが重要になる。カップの加締めで一対の導電性円環状部材の外周側を拘束する構造にすると、一対の導電性円環状部材の分離を阻止することは可能だが、その拘束用の部品や加締め工程を要する点で複雑な構成となる問題がある。
【0007】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、軸とハウジングとを電気的に接続する通電ユニットの構成を簡素にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明は、軸と、当該軸を取り囲むハウジングとを電気的に接続する通電ユニットにおいて、前記軸を取り囲む方向に延びる導電性ブラシを備え、前記導電性ブラシが、少なくとも前記軸に接触する導電性繊維と、少なくとも前記ハウジングに接触する導電性繊維と、これら導電性繊維を保持する状態に絡められた複数の導電性線部と、を有することを特徴とする通電ユニット、という構成1を採用した。
【0009】
上記構成1によると、複数の導電性線部を絡めて導電性繊維を保持しているので、これら導電性線部と導電性繊維の分離を防止するための接着や他部材の拘束を不要にすることができる。また、少なくとも軸に接触する導電性繊維と、少なくともハウジングに接触する導電性繊維と、これらを保持する複数の導電性線部とが一連の導電経路になるので、導電性ブラシを介して軸とハウジングとを電気的に接続することができる。このようにして、軸とハウジングとを電気的に接続する通電ユニットの構成を簡素にすることができる。
【0010】
上記構成1において、前記導電性繊維が前記軸の半周を超えた範囲を取り囲むように並んでいる、という構成2を採用することができる。
【0011】
上記構成2によると、導電性ブラシを軸の周囲に簡単に配置することができる。
【0012】
上記構成1又は2において、二つの前記導電性線部同士が、二つの前記導電性線部同士が、前記軸を取り囲む方向に交互に交差部と非交差部を成すように捩じり合されており、かつ当該各非交差部で二本以上の前記導電性繊維を束ねている、という構成3を採用することができる。
【0013】
上記構成3によると、捩じり合わされた二つの導電性線部同士の各非交差部間に導電性繊維を束ねて保持しているので、捩じり合された複数の導電性線部を中心部とした放射方向の様々な向きに導電性繊維が延びつつ軸の半周超の範囲に並んだ導電性ブラシとなる。このため、軸やハウジングに接触する導電性繊維の本数を多くすることができながら、軸やハウジングに対する導電性ブラシの位置決めに圧入嵌合のように厳密な寸法管理が不要になる。
【0014】
上記構成1から3のいずれか1つにおいて、前記導電性繊維が炭素繊維又は導電性ナイロンからなる、という構成4を採用することができる。
【0015】
上記構成1から4のいずれか1つにおいて、前記導電性線部が金属線材からなる、という構成5を採用することができる。
【0016】
上記構成1から5のいずれか1つに係る通電ユニットと、前記軸を前記ハウジングに対して支持する転がり軸受と、を備え、前記導電性ブラシのインピーダンスが、前記転がり軸受のインピーダンスよりも低い軸受電食防止構造、という構成6の採用により、簡素な通電ユニットで軸とハウジングとを電気的に接続し、転がり軸受の電食等を防止することができる。
【0017】
上記構成6に係る軸受電食防止構造を備える電動機、という構成7を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、この発明は、上記構成1の採用により、軸とハウジングとを電気的に接続する通電ユニットの構成を簡素にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施形態に係る通電ユニット及び軸受電食防止構造を備える電動機を示す縦断面図
【
図3】
図1の通電ユニットの導電性ブラシを抜粋して示す部分斜視図
【
図5】実施形態に係る導電性ブラシの変更例を示す部分横断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一例としての第一実施形態に係る通電ユニット及び軸受電食防止構造を備える電動機を添付図面の
図1~
図4に基づいて説明する。
【0021】
図1に示す通電ユニット1は、電動機10のハウジング11に取り付けて、電動機10の軸12とハウジング11とを電気的に接続するように構成されたものである。
【0022】
電動機10は、ハウジング11に収容されたステータ13と、軸12に取り付けられたロータ14と、ハウジング11に対して軸12を支持する転がり軸受15、16と、を備え、インバータ(図示省略、以下、同じ。)によって駆動制御される。電動機10は、例えば、eアクスルユニット等の車両駆動源となる車載用電動機である。
【0023】
以下、軸12の中心軸線(図示省略、以下、同じ。)に沿った方向のことを「軸方向」といい、その中心軸線に直交する方向のことを「径方向」といい、その中心軸線を中心として一周する円周方向のことを「周方向」という。
【0024】
軸12は、ロータ14の回転中心軸となり、かつステータ13とロータ14の協働による電磁的作用で生成されたトルクによってロータ14と一体に回転する。
【0025】
ハウジング11は、軸12を径方向から取り囲む覆いである。ハウジング11は、この電動機のモータケースであるから、軸12、軸支持用の転がり軸受15、16、ステータ13及びロータ14を径方向から取り囲むように覆い、軸支持用の転がり軸受15、16を径方向に支持するように構成されている。
【0026】
軸12及びハウジング11は、それぞれ導電性を有し、一般に、それぞれ一又は複数の金属部材によって構成される。
【0027】
ハウジング11は、軸12における電位に対して基準電位となる部位である。ハウジング11は、一般に、電荷の逃がし先とする機械のボディ、地面等に電気的に接続される。ハウジング11は、転がり軸受15、16、ロータ14及びステータ13に加えて、軸12で駆動される機械要素を更に収容するものであってもよい。例えば、eアクスルの場合、軸に接続される減速機も収容するハウジングに構成し、これを車体(ボディアース回路)に電気的に接続することができる。
【0028】
各転がり軸受15、16は、軸12に嵌合された内輪と、ハウジング11の内周に嵌合された外輪と、これら内外輪の軌道面間に配置された複数の転動体と、これら転動体を保持する保持器と、を備える。各転がり軸受15、16として、一般に、玉軸受が採用される。
【0029】
通電ユニット1は、軸12を取り囲む方向に延びる導電性ブラシ2と、導電性ブラシ2をハウジング11と軸12に対して位置決めするためのケース3とで構成されている。
【0030】
導電性ブラシ2は、
図1~
図3に示すように、軸12の周囲を巡る導電性芯部4と、導電性芯部4に保持された多数の導電性繊維5とで構成されている。
【0031】
導電性芯部4は、一本の金属線材を二つに折り返した導電性折り曲げ線部4aと、その導電性折り曲げ線部4aからそれぞれ延びる共に互いに捩じり合された二つの導電性線部4b、4bと、導電性線部4bから導電性折り曲げ線部4aまで連続する二つの導電性結線部4c、4cとで構成されている。
【0032】
二つの導電性線部4b、4bは、周方向に交互に交差部と非交差部を成すように捩じり合されている。
【0033】
二つの導電性結線部4c、4cが導電性折り曲げ線部4aに結合されていることにより、導電性ブラシ2が軸12の周囲を一周する環状に保たれている。各導電性結線部4c、4cと導電性折り曲げ線部4aの結合は、各導電性結線部4c、4cを導電性折り曲げ線部4aに周方向に引っ掛けるフック状にすることで簡単に実現することができる。
【0034】
二つの導電性線部4b、4bは、軸12を取り囲む方向に延びている。この方向は周方向に設定されており、二つの導電性線部4b、4bは、周方向に180°よりも大きな角度範囲に亘って延びている。これにより、導電性芯部4は、周方向に沿った円弧状に延びており、軸12の周囲を略一周している。
【0035】
導電性繊維5の中間部は、二つの導電性線部4b、4bの非交差部の間に位置する。二つの導電性線部4b、4bの各非交差部は、多数の導電性繊維5を束ねている。導電性繊維5の両端部は、二つの導電性線部4b、4bからなる導電性芯部4の部位を中心部とした放射方向に延びつつ、二つの導電性線部4b、4bと略同じ周方向範囲に亘って軸12を取り囲むように並んでいる。
【0036】
二つの導電性線部4b、4bが周方向に所定ピッチで捩じれていることに伴い、導電性繊維5の束が導電性芯部4から突出する大まかな突出方向は、周方向に隣り合う導電性繊維5の束に対して所定ピッチで変化している。その結果、導電性ブラシ2は、二つの導電性線部4b、4bに対して少なくとも軸方向一方側及びこれとは反対の他方側に突出する多数の導電性繊維5の束と、二つの導電性線部4b、4bに対して少なくとも径方向内側及び外側に突出する多数の導電性繊維5の束とを有する環状体になっている。
【0037】
導電性芯部4、導電性繊維5は、導電性を有する材料であればよい。例えば、導電性線部4b等を形成する金属線材として、鉄系、銅系等の金属によって形成された針金が挙げられる。また、導電性繊維5として、炭素繊維、導電性ナイロンが挙げられる。なお、“導電性を有する”とは体積抵抗率が106Ωcm以下であることをいう。その体積抵抗率の測定はJIS H 0505に規定された平均断面積法に準拠する。
【0038】
上述のような導電性ブラシ2は、例えば、次のような工程で簡単に製造することができる。すなわち、
図4に示すように、金属線材を二つ折りし、その二つの折り片部を折り曲げ端部の近くで一回だけ捩じり合わせてループ部(導電性折り曲げ線部4aとする部位であり、説明の便宜上、同図において符号4aを付す。)と、並行する折り片中間部(二つの導電性線部4bする部位であり、説明の便宜上、同図において符号4bを付す。)と、二つの折り片先端部(二つの導電性結線部4cとする部位であり、説明の便宜上、同図において符号4cを付す。)とを予め形成したワークを用意し、そのループ部4aを回転体のフックRに掛け、その折り片先端部4c、4cを固定チャックCに挟み、折り片中間部4b、4bの間に直線状の導電性繊維5を密に整列させた状態に充填する。これにより、各導電性繊維5は、その繊維長さの中央部で折り片中間部4b、4bに挟持されたセット状態とする。このセット状態で回転体のフックRを一方向に回転させることにより、折り片中間部4b、4bを互いに捩じり合わせていく。これにより、折り片中間部4b、4bが一定ピッチで捩じれ交差部P1、P2を形成していくと共に、隣り合う交差部P1、P2間に非交差部を形成していき、これに伴い導電性繊維5が隣り合う交差部P1、P2間で区画され、束に縛られていく。フックRを所定回数だけ回転させると、導電性折り曲げ線部4aと、導電性繊維5の束を保持する状態に捩じり合うように絡められた二つの導電性線部4b、4bとを有する直線状の導電性ブラシが得られる。その後、図示省略するが、折り片先端部4c、4cをフック状に曲げて二つの導電性結線部4c、4cを作り、直線状の導電性ブラシを円環状に丸めて、二つの導電性結線部4c、4cを導電性折り曲げ線部4aに結合すると、
図1~
図3に示す導電性ブラシ2が完成する。
【0039】
その導電性ブラシ2は、
図1に示すように、その内周を軸12に嵌めて径方向内側に突出する多数の導電性繊維5の端部を軸12に接触させ、その軸方向一方側に突出する多数の導電性繊維5の端部をハウジング11の外側側面に接触させることができる。この際、導電性線部4bが軸12の半周超を取り囲むので、軸12に嵌めれば軸12と所定の同軸度で配置されるようにすることができ、軸12の周囲に簡単に配置することができる。なお、図示例では、導電性ブラシ2を略円環状にしたが、導電性ブラシを周方向の一か所で分断した環状に変更することも可能である。
【0040】
導電性ブラシ2を軸12に嵌めた状態で、軸12に挿通する中空カップ状のケース3をハウジング11の端面に結合すると、ケース3とハウジング11が電気的に接続されると共に、導電性ブラシ2がケース3とハウジング11とで軸方向に加圧された状態に挟まれ、かつ軸12とケース3とで径方向に加圧された状態に挟まれる。これにより、径方向外側に突出する多数の導電性繊維5の端部をケース3の内周で径方向内側へ押して、径方向内側に突出する多数の導電性繊維5の端部を軸12に押し付けた状態を確保することができると共に、軸方向他方側に突出する多数の導電性繊維5の端部をケース3の内側側面で軸方向一方側へ押して、軸方向一方側に突出する多数の導電性繊維5の端部をハウジング11の端面に押し付けた状態を確保することができる。これにより、少なくとも軸12に接触する導電性繊維5と、少なくともハウジング11に接触する導電性繊維5と、これらを保持する二つの導電性線部4b、4bとが一連の導電経路になるので、導電性ブラシ2を介して軸12とハウジング11とを電気的に確実に接続することができる。これにより、転がり軸受15、16の電食を防止可能な軸受電食防止構造を備える電動機10が得られる。
【0041】
なお、軸受15と通電ユニット1の距離は50mm以内が好ましく、さらに好ましくは30mm以内であるとよい。
【0042】
電動機10に備わる前述の軸受電食防止構造において、導電性ブラシ2のインピーダンスは、各転がり軸受15、16のインピーダンスに比して低くなっている。このため、電動機10の運転中に軸12に発生した軸電流は、転がり軸受15、16よりも特に導電性ブラシ2へ流れ易くなり、転がり軸受15、16の電食を効果的に防止することができる。そのインピーダンスは、LCRメータまたはインピーダンスアナライザを用いて、自動平衡ブリッジ法で測定される。導電性ブラシ2のインピーダンスは、軸12に接触する導電性繊維5とハウジング11に接触する導電性繊維5を電極として測定され、転がり軸受15、16のインピーダンスは、転がり軸受単体状態で、構成部品である内輪と外輪のそれぞれを電極端子として測定される。
【0043】
なお、転がり軸受15、16を経由せずに軸12から導電性ブラシ2を経由してハウジング11まで連続する導電経路を多くするため、ケース3も導電性材料で形成することが好ましい。
【0044】
第一実施形態に係る通電ユニット1は、上述のように、軸12と、当該軸12を取り囲むハウジング11とを電気的に接続するものであって、特に、軸12を取り囲む方向に延びる導電性ブラシ2を備え、その導電性ブラシ2が少なくとも軸12に接触する導電性繊維5と、少なくともハウジング11に接触する導電性繊維5と、これら導電性繊維5を保持する状態に絡められた複数の導電性線部4b、4bと、を有することにより、これら導電性線部4b、4bと導電性繊維5の分離を防止するための接着や他部材の拘束を不要にする簡素化を実現することができ、また、少なくとも軸12に接触する導電性繊維5と、少なくともハウジング11に接触する導電性繊維5と、これらを保持する複数の導電性線部4b、4bとが一連の導電経路になるので、導電性ブラシ2を介して軸12とハウジング11とを電気的に接続することができる。このように、通電ユニット1は、軸12とハウジング11とを電気的に接続する通電ユニットの構成を簡素にすることができる。なお、一つの導電性線部でも原理的には導電性繊維を軸及びハウジングに接触するように保持させることは成立するかもしれないが、組立が困難になると考えられる。
【0045】
また、通電ユニット1は、導電性繊維5が軸12の半周を超えた範囲を取り囲むように並んでいることにより、導電性ブラシ2を軸12の周囲に簡単に配置することができる。
【0046】
また、通電ユニット1は、二つの導電性線部4b、4b同士が軸12を取り囲む方向に交互に交差部P1、P2と非交差部を成すように捩じり合されており、かつ当該各非交差部で二本以上の導電性繊維5を束ねていることにより、捩じり合された複数の導電性線部4b、4bを中心部とした放射方向の様々な向きに導電性繊維5が延びつつ軸12の半周超の範囲に並んだ導電性ブラシ2となるため、軸12やハウジング11に接触する導電性繊維5の本数を多くすることができながら、軸12やハウジング11に対する導電性ブラシ2の位置決めに圧入嵌合のように厳密な寸法管理が不要になる。
【0047】
また、通電ユニット1と、軸12をハウジング11に対して支持する転がり軸受15、16と、を備え、導電性ブラシ2のインピーダンスが転がり軸受15、16のインピーダンスよりも低い軸受電食防止構造及び、この軸受電食防止構造を備える電動機10は、簡素な通電ユニット1で軸12とハウジング11とを電気的に接続し、転がり軸受15、16の電食やラジオノイズを防止することができる。
【0048】
図示例では、導電性ブラシ2をケース3とハウジング11で挟むことにより軸方向に位置決めしたが、導電性ブラシ2の軸方向の位置決め構造は特に限定されない。例えば、導電性ブラシ2の導電性折り曲げ線部4aが形成する孔を利用して導電性折り曲げ線部4aをハウジング11に雄ねじ部材で軸方向に締結してもよく、この場合、ケースとハウジングで導電性ブラシを軸方向に挟むことは不要になる。
【0049】
また、導電性ブラシを位置決めするためのケースを省略することも可能である。例えば、電動機のハウジングの内側に導電性ブラシ2の外周を嵌め込んで軸及びハウジングと導電性繊維5の径方向接触を確保すると共に、ハウジングの内側端面に導電性ブラシ2の導電性折り曲げ線部4aをねじ止めして導電性ブラシ2を転がり軸受15、16と非接触の状態に配置したり、ハウジング内に導電性ブラシ2の転がり軸受15、16側への移動を阻止する規制壁部を設けて導電性ブラシ2を転がり軸受15、16と非接触の状態に配置したりすることも可能である。
【0050】
また、図示例では、導電性ブラシ2を円環状にしたが、直線状に延びる部位を有する導電性ブラシに変更することも可能である。例えば、導電性ブラシを径方向に受けるケースやハウジングの内周の横断面形状を円環状にできず、直線辺部を有する部位で径方向に受ける場合がある。この場合、
図5に例示するように、導電性芯部4を四辺の直線状と、四つの角を有する略方形環状に変更し、各直線状辺部の一部において導電性繊維5と軸12とを接触させるようにすることができる。
【0051】
また、図示例では、複数の導電性線部4b、4bの絡め方として、二つの導電性線部4b、4bを捩じり合わせた例を示したが、絡め方はこれに限定されず、例えば、三つの導電性線部を三つ編みし、その各絡み目に一本以上の導電性繊維を保持させた導電性ブラシに変更することも可能であるが、絡め方が複雑になるため、二つの導電性繊維を捩じり合わせることが好ましい。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 通電ユニット
2 導電性ブラシ
4b 導電性線部
5 導電性繊維
10 電動機
11 ハウジング
12 軸
15、16 転がり軸受