(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002524
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】凍結乾燥食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23B 2/92 20250101AFI20241226BHJP
A23L 5/43 20160101ALI20241226BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241226BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20241226BHJP
A23L 29/256 20160101ALN20241226BHJP
A23L 29/269 20160101ALN20241226BHJP
【FI】
A23L3/44
A23L5/43
A23L5/00 M
A23L19/00 A
A23L29/256
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102757
(22)【出願日】2023-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】390000664
【氏名又は名称】日本ジフィー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 瑞稀
【テーマコード(参考)】
4B016
4B018
4B022
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B016LC03
4B016LE03
4B016LG01
4B016LG05
4B016LK01
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(57)【要約】
【課題】表面に加飾層を有する凍結乾燥食品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】表面の少なくとも一部に食用色素を含む加飾層11が形成され、前記食用色素がタンパク質と結合した状態で存在する凍結乾燥食品10。原料および水を混合して混合液を作製する調合工程と、前記混合液を成形して成形体を作製する成形工程と、前記成形体を加熱して、前記成形体の表面に食用色素を含む加飾層を形成する加飾工程と、加飾された前記成形体を凍結乾燥させる凍結乾燥工程とを有する凍結乾燥食品の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部に食用色素を含む加飾層が形成され、
前記食用色素がタンパク質と結合した状態で存在する、
凍結乾燥食品。
【請求項2】
前記タンパク質が、添加剤として配合されたタンパク質である、
請求項1に記載の凍結乾燥食品。
【請求項3】
前記凍結乾燥食品は、野菜様または果物様食品である、
請求項1または2に記載の凍結乾燥食品。
【請求項4】
原料および水を混合して混合液を作製する調合工程と、
前記混合液を成形して成形体を作製する成形工程と、
前記成形体を加熱して、前記成形体の表面に食用色素を含む加飾層を形成する加飾工程と、
加飾された前記成形体を凍結乾燥させる凍結乾燥工程と、
を有する凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程の前に、前記混合液を転写シートに担持された前記食用色素と接触させる工程を有し、
前記成形工程が、前記混合液を冷却によりゲル化する工程であり、
前記加飾工程が、前記食用色素と前記成形体に含まれるタンパク質とを加熱により結合させて、前記食用色素を前記転写シートから前記成形体の表面に転写する工程である、
請求項4に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程が、前記混合液を冷却によりゲル化する工程であり、
前記加飾工程が、前記成形体の表面に前記食用色素を含むインクで印刷した後、前記食用色素と前記成形体に含まれるタンパク質とを加熱により結合させる工程である、
請求項4に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項7】
前記調合工程において、前記原料のうち主原料が野菜または果物に由来し、前記タンパク質が添加剤として配合されたものである、
請求項5または6に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や湯を注ぐことにより復元して食される凍結乾燥食品に関し、より詳細には、表面に加飾層を有する凍結乾燥食品に関する。
【背景技術】
【0002】
常温での長期保存が可能で、食材の風味、食感などが復元されやすく、栄養価が損なわれにくい凍結乾燥食品の利用が広がっている。一方で、様々な加工食品の表面に絵柄や色彩などの加飾層を設けることが行われている。例えば、特許文献1には、魚介類のすり身を含む成形体の表面に、可食インクを含む着色剤を含む印刷層を有する、湯戻しにより喫食するための乾燥練り製品が記載されている。また、特許文献2には、ハム、ソーセージなどの食品表面に調味剤、風味剤、色素などを転写するための食品素材転写シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-083420号公報
【特許文献2】特開2007-189997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、凍結乾燥食品の表面に加飾層を設けたものは従来なかった。このことの一つの理由として、加飾層が湯戻し時に流れ出してしまい、凍結乾燥食品の表面に形成された絵柄や色彩が消失するという問題があった。特許文献1に記載された乾燥練り製品は凍結乾燥食品ではなく、また、2段階の乾燥処理のうち一次乾燥の方法として真空凍結乾燥が例示されているものの、好ましい方法は熱風乾燥であるとされ、実施例では一次乾燥、二次乾燥の両方が熱風乾燥によって実施されている。また、特許文献2には、転写の対象となる食品として、ハム、ソーセージなどの加工肉製品、かまぼこなどの水産練り製品、チーズなどの乳製品が例示されているものの、乾燥食品を対象とすることは記載されていない。
【0005】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、表面に加飾層を有する凍結乾燥食品、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の凍結乾燥食品は、表面の少なくとも一部に食用色素を含む加飾層が形成され、前記食用色素がタンパク質と結合した状態で存在する。これにより、湯戻し時に食用色素が流れ出しにくく、加飾された絵柄や色彩を復元後にも保持することができる。
【0007】
好ましくは、上記凍結乾燥食品において、前記タンパク質が、添加剤として配合されたタンパク質である。これにより、主原料となる食材のタンパク質含有量が少ない場合でも、加飾層を有する凍結乾燥食品とすることができる。
【0008】
好ましくは、上記いずれかの凍結乾燥食品は、野菜様または果物様食品である。野菜様凍結乾燥食品や果物様凍結乾燥食品では、その鮮やかな色彩を加飾層によって視覚的に再現することで、消費者に対してより大きな訴求効果が得られる。
【0009】
本発明の凍結乾燥食品の製造方法は、原料および水を混合して混合液を作製する調合工程と、前記混合液を成形して成形体を作製する成形工程と、前記成形体を加熱して、前記成形体の表面に食用色素を含む加飾層を形成する加飾工程と、加飾された前記成形体を凍結乾燥させる凍結乾燥工程とを有する。
【0010】
好ましくは、上記凍結乾燥食品の製造方法は、前記成形工程の前に、前記混合液を転写シートに担持された前記食用色素と接触させる工程を有し、前記成形工程が、前記混合液を冷却によりゲル化する工程であり、前記加飾工程が、前記食用色素と前記成形体に含まれるタンパク質とを加熱により結合させて、前記食用色素を前記転写シートから前記成形体の表面に転写する工程である。
【0011】
あるいは、上記凍結乾燥食品の製造方法は、前記成形工程が、前記混合液を冷却によりゲル化する工程であり、前記加飾工程が、前記成形体の表面に前記食用色素を含むインクで印刷した後、前記食用色素と前記成形体に含まれるタンパク質とを加熱により結合させる工程である。
【0012】
好ましくは、上記いずれかの凍結乾燥食品の製造方法は、前記調合工程において、前記原料のうち主原料が野菜または果物に由来し、前記タンパク質が添加剤として配合されたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の凍結乾燥食品またはその製造方法によれば、加飾層に含まれる食用色素がタンパク質と結合しているため、湯戻し時に流れ出しにくく、加飾された絵柄や色彩を復元後にも保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態の凍結乾燥食品の構造を示す図である。
【
図2】一実施形態の凍結乾燥食品の製造方法の概略を示すフロー図である。A:一般、B:転写シートを用いる方法、C:印刷を用いる方法。
【
図3】実施例1のかぼちゃ様凍結乾燥食品の製造方法の工程フロー図である。
【
図4】実施例2の桃様凍結乾燥食品の製造方法の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、本実施形態の凍結乾燥食品10は、その表面の少なくとも一部に加飾層11が形成されている。凍結乾燥食品10の種類は特に限定されず、肉様、魚介様、チーズ様、野菜様、果物様等の食品であってよい。好ましくは、凍結乾燥食品10は、野菜様または果物様食品である。野菜様凍結乾燥食品や果物様凍結乾燥食品では、その鮮やかな色彩を加飾層によって視覚的に再現することで、消費者に対してより大きな訴求効果が得られるからである。野菜様および果物様食品としては、皮付きかぼちゃ、角切り桃、皮付きリンゴ、角切りイチゴ、皮付きさつまいもなどを模した食品が挙げられる。
【0016】
凍結乾燥食品10の形状は特に限定されず、再現しようとする食材やそれをカットしたものと似た形状とすることができる。また、凍結乾燥食品10の大きさは特に限定されず、実用的な時間で湯戻しが可能な大きさであればよい。
【0017】
凍結乾燥食品10は、主原料および添加剤を含む。本明細書において、主原料とは、再現しようとする食材に由来する原料で、凍結乾燥食品の種類と基本的な風味を決定づける原料をいう。主原料は、必ずしも全体の50%以上の割合を占めていなくてもよいし、全原料中で最も多く含まれるものでなくてもよい。また、添加剤とは、主原料以外のすべての原料をいう。
【0018】
主原料としては、再現しようとする食材に応じて、各種畜肉、魚介肉、乳製品、野菜、果物や、これらのペースト、粉末、エキスなどを用いることができる。
【0019】
添加剤は、凍結乾燥食品10の食感や風味の調整、製造時の保形性など様々な目的で配合される。なお、一つの添加剤が同時に複数の機能を発揮することが多いので、添加剤の機能の区別は排他的なものではない。
【0020】
凍結乾燥食品10は、添加剤として、ゲル化剤を含む。ゲル化剤は、製造工程において、原料を含む液を乳化させ、ゲル化させて成形するために添加される。ゲル化剤は、後述するように、食用色素とタンパク質を結合させるための加熱時にゲルが流動化しないよう、ゲル融解温度がある程度高いことを要する。ゲル化剤は、例えば、寒天、脱アシル型ジェランガム、アルギン酸ナトリウムである。
【0021】
凍結乾燥食品10は、後述するように、加飾層11において食用色素と結合するタンパク質を含む必要があり、主原料の種類によって、添加剤としてタンパク質を含む。主原料が畜肉、魚介肉など、タンパク質を豊富に含む場合は、このタンパク質が食用色素と結合することができる。主原料が野菜、果物のペーストや粉末である場合、含まれるタンパク質の量が少ないので、添加物としてタンパク質を配合するのが好ましい。特に、主原料がタンパク質をほとんど含まず、例えば、主原料100g中のタンパク質含有量が10g未満であるような場合は、添加物としてタンパク質を配合する。タンパク質の種類は特に限定されない。
【0022】
凍結乾燥食品10は、好ましくは、添加剤として油脂類および乳化剤を含む。原料に油脂類と乳化剤を添加することで、製造工程で内容物を乳化させやすいからである。油脂には食感を滑らかにする効果もある。油脂は、食用油脂であれば良く特に限定されず、例えば、ラード、ヘット、バター等の動物油や、パーム油、コーン油、ごま油、菜種油、綿実油等の植物油、またはこれらの二種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤は、食用乳化剤であれば特に限定されず、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等、またはこれらの二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
凍結乾燥食品10は、添加剤として、製造時や製品の粘度を調整するための増粘剤、食感を調整するための加工でん粉や食物繊維、製品のボリュームを増やすための増量剤、製品の風味付けのための糖類、香料、着味料、その他着色料、酸化防止剤、調味料などを必要に応じて含むことができる。なお、ここでの着色料は、凍結乾燥食品全体の地色を着けるための着色料を意味し、後述する加飾層の着色に用いられる食用色素とは別に、原料に配合されるものである。
【0024】
加飾層11は、凍結乾燥食品10の表面の少なくとも一部に形成されている。加飾層11は食用色素を含み、食用色素はタンパク質と結合している。加飾層11は、絵柄があってもよいし、無地であってもよい。
【0025】
食用色素としては、アナトー、コウリャン、シアナット、ウコン、モナスカス、カカオ、ベニバナ、クチナシ(赤、青、黄)、コチニール、クロレラ、スピルリナ、カラメル、シソ、タマネギなどの天然色素、食用赤色2号、3号、102号、106号、同黄色4号、5号、同青色1号などの合成色素が挙げられる。これらの食用色素は、タンパク質のアミノ酸残基のアミノ基と結合する。
【0026】
次に、本実施形態の凍結乾燥食品10の製造方法の概要を説明する。
【0027】
図2Aを参照して、本実施形態の凍結乾燥食品の製造方法は、原料と水を混合して混合液を作製する調合工程と、混合液を成形して成形体を作製する成形工程と、成形体の表面に加飾層を形成する加飾工程と、予備凍結と真空乾燥からなる凍結乾燥工程とを有する。加飾層を設けるには、転写シートを用いる方法と、いわゆるフードプリンタ等を用いて印刷する方法がある。
【0028】
図2Bを参照して、転写シートを使用する方法では、調合により作製した調理済みの混合液を転写シートと接触させる。転写シートは、基材シート上に食用色素を担持したもので、例えば、特許文献2に記載された構造のものを用いることができる。この転写シートを、食用色素が担持された面を混合液の表面に接触させる。例えば、混合液を容器に入れて、その表面に転写シートを被せる。次いで、混合液をゲル化温度以下にまで冷却し、混合液をゲル化させて成形体を作製する。ゲル化前に、液体状態の混合液に転写シートを接触させるのは、混合液の表面全体を食用色素と接触させるためである。
【0029】
次いで、成形体を加熱して食用色素と成形体に含まれるタンパク質を結合させる。この加熱は、使用したゲル化剤のゲル融解温度と同じかそれより低い温度で行う。より正確には、転写シートとの接触面のごく近傍を除いて、成形体の温度がゲル融解温度以下であるように行う。加熱温度は、高いほど食用色素とタンパク質の結合反応の速度を大きくできる点で好ましいが、加熱温度が高すぎて成形体のゲルが融解して流動性を回復すると、食用色素が成形体の表面に留まらないからである。成形体の転写シートとの接触面のごく近傍のゲルだけが融解しても、食用色素は成形体の表面近傍に留まる。この加熱後に成形体を再度冷却し、転写シートを剥離して、凍結乾燥を行う。タンパク質と結合しなかった食用色素は、転写シートを剥離したときに、転写シートとともに除去される。
【0030】
図2Cを参照して、プリンタを使用する方法では、調合により作製した調理済みの混合液を容器に入れるなどして、ゲル化温度以下にまで冷却して、混合液をゲル化させて成形体を作製する。次いで、フードプリンタ等を用いて、成形体上に食用色素を含む可食インクで印刷を行い、加熱して食用色素と成形体に含まれるタンパク質を結合させる。この加熱は、使用したゲル化剤のゲル融解温度以下で行う。より正確には、可食インクとの接触面のごく近傍を除いて、成形体の温度がゲル融解温度以下であるように行う。この加熱後に成形体を再度冷却し、転写シートを剥離して、凍結乾燥を行う。
【0031】
凍結乾燥食品の製造方法は好ましくは転写シートを用いて行う。転写シートを用いる方法では、タンパク質と結合した食用色素だけが成形体に転写され、タンパク質と結合した食用色素は湯戻し時に流れ出すことが少ない。これに対して、プリンタを用いる方法では、タンパク質と結合しなかった食用色素が成形体上に残り、このような食用色素は湯戻し時に流れ出しやすい。
【実施例0032】
以下に、実施例によって、本実施形態の凍結乾燥食品およびその製造方法をさらに詳細に説明する。
【0033】
(実施例1)
実施例1として、転写シートを用いてかぼちゃ様凍結乾燥食品を作製した。主原料にはかぼちゃペーストを使用した。使用した主な添加剤は次のとおりである。
・粉末セルロース:独レッテンマイヤー社、ビタセルL600
・加工でん粉:松谷化学工業株式会社、スタビローズS
・寒天:伊那食品株式会社、伊那寒天S-7
・ショ糖脂肪酸エステル:第一工業製薬株式会社、DKエステルF-110
・カゼインカルシウム:蘭DMV社、EM9N
【0034】
図3に工程フロー図、表1に使用した原料の配合割合をかぼちゃペースト1000g当たりに換算して示す。
【0035】
【0036】
乳糖、粉末セルロース、クエン酸ナトリウム、加工でん粉、上白糖、寒天を水と混合し、水に分散した脱アシル型ジェランガムを加え、かぼちゃペーストを熱湯で溶いたものを加えて、得られた仮混合液を90~95℃に加熱して、寒天を溶かして全部の原料をなじませるとともに殺菌を行った。なお、寒天と脱アシル型ジェランガムはいずれも増粘剤およびゲル化剤としての機能を有するが、本実施例では、寒天は増粘剤として、脱アシル型ジェランガムはカルシウム反応性ゲル化剤として用いた。熱湯に、水に分散した乳化剤を加え、パーム油と酸化防止剤を加えて撹拌し、カゼインカルシウムを加えて乳化油脂液を作製した。約80℃まで冷却した仮混合液に乳化油脂液を加え、さらに約70℃まで冷却して、クチナシ色素(黄)およびカボチャフレーバーを加えて、調理済みの混合液を作製した。この混合液はO/W型(水中油滴型)の乳液である。
【0037】
750×500mmのトレーにプラスチックフィルムを敷いて調理済みの混合液を深さ10mmで充填して、食用色素であるクチナシ色素(青・黄)を担持した転写シートを、色素が担持された面が混合液の表面に接触するようにして混合液に被せた後、全体を50℃以下に冷却してゲル化した成形体を作製した。成形体と転写シートの全体をスチームで約70℃、10分間加熱して、クチナシ色素(青・黄)とカゼインカルシウムを結合させた後、再度50℃以下に冷却した。
【0038】
成形体を冷凍庫にいれて-30℃で一次凍結した後、トレーから取り出し、転写シートを剥がして、9×8mmにカットした。カットしたものを再度トレーに載せて、-30℃で二次凍結した。カットされ、予備凍結された成形体を、真空凍結乾燥機で真空度80~106Pa、最終到達温度70℃で、24時間凍結乾燥した。
【0039】
以上により、全体が橙がかった黄色で、1つの面に緑色の加飾層が形成された、略立方体状のかぼちゃ様凍結乾燥食品が得られた。この凍結乾燥食品を湯戻ししたところ、かぼちゃの風味が良好に再現されていた。また、湯戻し時にカットされた形状が崩れることはなく、加飾層からの色素の流れ出しも少なくカットされたかぼちゃ様の外観は保持されていた。
【0040】
(実施例2)
実施例2として、転写シートを用いて桃様凍結乾燥食品を作製した。主原料には桃ピューレを使用した。使用した主な添加剤は実施例1と同じである。
【0041】
図4に工程フロー図、表2に使用した原料の配合割合を桃ペースト1000g当たりに換算して示す。
【0042】
【0043】
桃ピューレを水に溶き、上白糖、乳糖、粉末セルロース、クエン酸ナトリウム、寒天を水と混合したものを加えて、得られた仮混合液を90~95℃に加熱して、寒天を溶かして全部の原料をなじませるとともに殺菌を行った。本実施例では、寒天をゲル化剤として用いた。熱湯に、水に分散した乳化剤を加え、パーム油と酸化防止剤を加えて撹拌し、カゼインカルシウムを加えて乳化油脂液を作製した。約80℃まで冷却した仮混合液に乳化油脂液を加え、さらに約65℃まで冷却し、ベニコウジ色素製剤および白桃フレーバーを加えて、調理済みの混合液を作製し、さらに約55℃まで冷却した。この混合液はO/W型(水中油滴型)の乳液である。
【0044】
得られた混合液を実施例1と同様にトレーに充填して、食用色素であるクチナシ色素(赤)を担持した転写シートを、色素が担持された面が混合液の表面に接触するようにして混合液に被せた後、全体を0~10℃に冷却してゲル化した成形体を作製した。混合液と転写シートの全体をスチームで約75℃、15分間加熱して、クチナシ色素(赤)とカゼインカルシウムを結合させた後、再度約40℃まで冷却した。
【0045】
成形体を冷凍庫にいれて-30℃で一次凍結した後、トレーから取り出し、転写シートを剥がして、9×8mmにカットした。カットしたものを再度トレーに載せて、-30℃で二次凍結した。カットされ、予備凍結された成形体を、真空凍結乾燥機で真空度80~106Pa、最終到達温度60℃で、24時間凍結乾燥した。
【0046】
以上により、全体が白桃色で、1つの面にピンク色の加飾層が形成された、略立方体状の桃様凍結乾燥食品が得られた。実施例1と比較して、加飾層は桃様凍結乾燥食品の表面からより深く、約3mmまで浸透しており、ピンク色はわずかに滲んだような色彩を有していた。加飾層のピンク色が滲んでいるのは、食用色素とタンパク質を結合されるための加熱処理をゲル融解温度とほぼ同じ温度で実施し、成形体がゆるいゲル状態であったためである。これは加飾層を桃の外観により近づける目的で意図したものである。この凍結乾燥食品を湯戻ししたところ、桃の風味が良好に再現されていた。また、湯戻し時にカットされた形状が崩れることはなく、加飾層からの色素の流れ出しも少なくカットされた桃様の外観は保持されていた。
【0047】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想の範囲内で、その他種々の態様で実施可能である。