IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルネサスエレクトロニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025025244
(43)【公開日】2025-02-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/08 20060101AFI20250214BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20250214BHJP
   H03M 1/38 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H03M1/08 A
H03M1/12 A
H03M1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129839
(22)【出願日】2023-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】江幡 友彦
(72)【発明者】
【氏名】松井 徹郎
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022AB04
5J022BA01
5J022CA07
5J022CA10
5J022CB01
5J022CB07
5J022CB08
5J022CF01
5J022CF07
5J022CF08
(57)【要約】
【課題】誘電緩和現象によって生じる誤差を抑制して、精度良く動作することが可能な半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置は、第1容量素子と、サンプリング時に、第1入力電圧に対応する第1電圧を生成して第1容量素子の一端に印加し、ホールド時に、生成した第1電圧を保持しつつ第1容量素子の一端に印加する信号キャンセル回路と、サンプリング時に、第1入力電圧をサンプリングし、ホールド時に、サンプリングした第1入力電圧に対応する第2電圧を保持しつつ第1容量素子の他端に印加するサンプリング回路と、ホールド時に、第1容量素子の他端の電圧に応じた出力信号を生成し、且つ、フィードバック信号を第1容量素子の一端に印加する、ネガティブフィードバック回路と、入力電圧のAD変換を行うADコンバータと、ネガティブフィードバック回路の出力信号とADコンバータの出力信号との加減算を行う加減算回路と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1容量素子と、
サンプリングモードにおいて、第1入力電圧に対応する第1電圧を生成して前記第1容量素子の一端に印加し、サンプリングモード後のホールドモードにおいて、生成した前記第1電圧を保持しつつ前記第1容量素子の一端に印加する信号キャンセル回路と、
サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧をサンプリングし、ホールドモードにおいて、サンプリングした前記第1入力電圧に対応する第2電圧を保持しつつ前記第1容量素子の他端に印加するサンプリング回路と、
ホールドモードにおいて、前記第1容量素子の他端の電圧に応じた出力信号を生成するとともに、当該出力信号に対応するフィードバック信号を前記第1容量素子の一端に印加する、ネガティブフィードバック回路と、
前記第1入力電圧に対してAD変換を行う第1ADコンバータと、
前記ネガティブフィードバック回路の出力信号と、前記第1ADコンバータの出力信号と、の加減算を行って、その結果を出力する加減算回路と、
を備えた、半導体装置。
【請求項2】
前記サンプリング回路は、
一端が前記第1容量素子の他端に接続された第2容量素子と、
サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧を前記第2容量素子の他端に印加し、ホールドモードにおいて、前記第1入力電圧を前記第2容量素子において保持させる、第1スイッチと、
ホールドモードにおいて、前記第2容量素子の他端の電圧を基準電圧に遷移させることにより、前記第2容量素子の一端の電圧を前記第2電圧に遷移させる、第2スイッチと、
を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記信号キャンセル回路は、
前記第1入力電圧を反転させた電圧を生成する第1反転回路と、
サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧をサンプリングし、ホールドモードにおいて、サンプリングした前記第1入力電圧を保持しつつデジタル信号に変換するサブADコンバータと、
前記サブADコンバータの出力信号を反転させて出力する第2反転回路と、
前記第2反転回路の出力信号をアナログ電圧に変換するサブDAコンバータと、
サンプリングモードでは、前記第1反転回路によって生成された電圧を選択して前記第1電圧として出力し、ホールドモードでは、前記サブADコンバータから出力されたアナログ電圧を選択して前記第1電圧として出力する、選択回路と、
を備えた、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1ADコンバータは、前記サブADコンバータによって構成されている、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記サブDAコンバータは、
複数のサブ容量素子と、
前記複数のサブ容量素子のそれぞれに対応して設けられた複数のサブスイッチと、
を有し、
前記複数のサブ容量素子は、前記第1容量素子としても用いられる、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記信号キャンセル回路は、サンプリングモードを構成する第1サンプリングモード及び第2サンプリングモードのうち第1サンプリングモードでは、コモン電圧又はその反転電圧を前記第1電圧として前記第1容量素子の一端に印加し、第2サンプリングモードでは、前記第1入力電圧を反転させた電圧を前記第1電圧として前記第1容量素子の一端に印加するように構成され、
前記サンプリング回路は、第1サンプリングモードでは、前記コモン電圧を前記第2容量素子の他端に印加し、第2サンプリングモードでは、前記第1入力電圧を前記第2容量素子の他端に印加するように構成される、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記信号キャンセル回路は、前記第1容量素子及び前記第2容量素子のそれぞれの容量値に応じた振幅の前記第1電圧、を生成する、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ネガティブフィードバック回路は、
前記第1容量素子の他端の電圧が一方の入力端子に供給され、且つ、基準電圧が他方の入力端子に供給された、コンパレータと、
前記コンパレータの比較結果に応じたデジタルの出力信号を生成する逐次比較レジスタ回路と、
前記逐次比較レジスタ回路によって生成された出力信号をアナログ電圧に変換して前記フィードバック信号として出力するDAコンバータと、
を備え、
前記加減算回路は、前記逐次比較レジスタ回路によって生成された出力信号と、前記第1ADコンバータの出力信号と、の加減算を行って、その結果を出力する、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ネガティブフィードバック回路は、
前記第1容量素子の他端の電圧が一方の入力端子に供給され、且つ、基準電圧が他方の入力端子に供給された、コンパレータと、
前記コンパレータの比較結果に応じたデジタルの出力信号を生成する逐次比較レジスタ回路と、
を備え、
前記ネガティブフィードバック回路は、前記サブDAコンバータを用いて、前記逐次比較レジスタ回路によって生成された出力信号をアナログ電圧に変換して前記フィードバック信号として出力し、
前記加減算回路は、前記逐次比較レジスタ回路によって生成された出力信号と、前記第1ADコンバータの出力信号と、の加減算を行って、その結果を出力する、
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ネガティブフィードバック回路の出力信号に対してAD変換を行う第2ADコンバータをさらに備え、
前記ネガティブフィードバック回路は、
前記第1容量素子の他端の電圧と基準電圧との電位差に応じた出力信号及びそれに対応する前記フィードバック信号を生成するオペアンプを備え、
前記加減算回路は、前記第2ADコンバータの出力信号と、前記第1ADコンバータの出力信号と、の加減算を行って、その結果を出力する、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記サンプリング回路は、
サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧をサンプリングし、ホールドモードにおいて、サンプリングした前記第1入力電圧を保持しつつ前記第2電圧として前記第1容量素子の他端に印加する、第1スイッチを有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記信号キャンセル回路は、
サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧をサンプリングし、ホールドモードにおいて、サンプリングした前記第1入力電圧を保持しつつデジタル信号に変換するサブADコンバータと、
前記サブADコンバータの出力信号をアナログ電圧に変換するサブDAコンバータと、
サンプリングモードでは、前記第1入力電圧を選択して前記第1電圧として出力し、ホールドモードでは、前記サブADコンバータから出力されたアナログ電圧を選択して前記第1電圧として出力する、選択回路と、
を備えた、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1ADコンバータは、前記サブADコンバータによって構成されている、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記サブDAコンバータは、
複数のサブ容量素子と、
前記複数のサブ容量素子のそれぞれに対応して設けられた複数のサブスイッチと、
を有し、
前記複数のサブ容量素子は、前記第1容量素子としても用いられる、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記信号キャンセル回路は、サンプリングモードを構成する第1サンプリングモード及び第2サンプリングモードのうち第1サンプリングモードでは、前記第1入力電圧と前記第1入力電圧を反転させた電圧との中間電圧を前記第1電圧として前記第1容量素子の一端に印加し、第2サンプリングモードでは、前記第1入力電圧を前記第1電圧として前記第1容量素子の一端に印加するように構成され、
前記サンプリング回路は、第1サンプリングモードでは、前記中間電圧を前記第1容量素子の他端に印加し、第2サンプリングモードでは、前記第1入力電圧を前記第1容量素子の他端に印加するように構成される、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ネガティブフィードバック回路は、
前記第1容量素子の他端の電圧が一方の入力端子に供給され、且つ、基準電圧が他方の入力端子に供給された、コンパレータと、
前記コンパレータの比較結果に応じたデジタルの出力信号を生成する逐次比較レジスタ回路と、
前記逐次比較レジスタ回路によって生成された出力信号をアナログ電圧に変換して前記フィードバック信号として出力するDAコンバータと、
を備え、
前記加減算回路は、前記逐次比較レジスタ回路によって生成された出力信号と、前記第1ADコンバータの出力信号と、の加減算を行って、その結果を出力する、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記ネガティブフィードバック回路は、
前記第1容量素子の他端の電圧が非反転入力端子に供給され、且つ、基準電圧が反転入力端子に供給された、コンパレータと、
前記コンパレータの比較結果に応じたデジタルの出力信号を生成する逐次比較レジスタ回路と、
を備え、
前記ネガティブフィードバック回路は、前記サブDAコンバータを用いて、前記逐次比較レジスタ回路によって生成された出力信号をアナログ電圧に変換して前記フィードバック信号として出力し、
前記加減算回路は、前記逐次比較レジスタ回路によって生成された出力信号と、前記第1ADコンバータの出力信号と、の加減算を行って、その結果を出力する、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記ネガティブフィードバック回路の出力信号に対してAD変換を行う第2ADコンバータをさらに備え、
前記ネガティブフィードバック回路は、
前記第1容量素子の他端の電圧と基準電圧との電位差に応じた出力信号及びそれに対応する前記フィードバック信号を生成するオペアンプを備え、
前記加減算回路は、前記第2ADコンバータの出力信号と、前記第1ADコンバータの出力信号と、の加減算を行って、その結果を出力する、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項19】
第3容量素子と、
サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧とともに差動入力信号を構成する第2入力電圧、に対応する第3電圧を生成して前記第3容量素子の一端に印加し、ホールドモードにおいて、生成した前記第3電圧を保持しつつ前記第3容量素子の一端に印加する第2の信号キャンセル回路と、
サンプリングモードにおいて、前記第2入力電圧をサンプリングし、ホールドモードにおいて、サンプリングした前記第2入力電圧に対応する第4電圧を保持しつつ前記第3容量素子の他端に印加する第2のサンプリング回路と、
をさらに備え、
前記ネガティブフィードバック回路は、ホールドモードにおいて、前記第1容量素子の他端の電圧と、前記第3容量素子の他端の電圧と、の電位差に応じた出力信号を生成するとともに、当該出力信号に対応する前記フィードバック信号を前記第1容量素子の一端に印加し、当該出力信号に対応する第2のフィードバック信号を前記第3容量素子の一端に印加するように構成されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記サンプリング回路は、
一端が前記第1容量素子の他端に接続された第2容量素子と、
サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧を前記第2容量素子の他端に印加し、ホールドモードにおいて、前記第1入力電圧を前記第2容量素子において保持させる、第1スイッチと、
ホールドモードにおいて、前記第2容量素子の他端の電圧を基準電圧に遷移させることにより、前記第2容量素子の一端の電圧を前記第2電圧に遷移させる、第2スイッチと、
を有し、
前記第2のサンプリング回路は、
一端が前記第3容量素子の他端に接続された第4容量素子と、
サンプリングモードにおいて、前記第2入力電圧を前記第4容量素子の他端に印加し、ホールドモードにおいて、前記第2入力電圧を前記第4容量素子において保持させる、第3スイッチと、
ホールドモードにおいて、前記第4容量素子の他端の電圧を基準電圧に遷移させることにより、前記第4容量素子の一端の電圧を前記第4電圧に遷移させる、第4スイッチと、
を有し、
前記信号キャンセル回路は、
サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧をサンプリングし、ホールドモードにおいて、サンプリングした前記第1入力電圧を保持しつつデジタル信号に変換するサブADコンバータと、
前記サブADコンバータの出力信号を反転させて出力する第1反転回路と、
前記第1反転回路の出力信号をアナログ電圧に変換するサブDAコンバータと、
サンプリングモードでは、前記第2入力電圧を選択して前記第1電圧として出力し、ホールドモードでは、前記サブADコンバータから出力されたアナログ電圧を選択して前記第1電圧として出力する、選択回路と、
を有し、
前記第2の信号キャンセル回路は、
サンプリングモードにおいて、前記第2入力電圧をサンプリングし、ホールドモードにおいて、サンプリングした前記第2入力電圧を保持しつつデジタル信号に変換する第2のサブADコンバータと、
前記第2のサブADコンバータの出力信号を反転させて出力する第2反転回路と、
前記第2反転回路の出力信号をアナログ電圧に変換する第2のサブDAコンバータと、
サンプリングモードでは、前記第1入力電圧を選択して前記第3電圧として出力し、ホールドモードでは、前記第2のサブADコンバータから出力されたアナログ電圧を選択して前記第3電圧として出力する、第2の選択回路と、
を有する、
請求項19に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、例えば、誘電緩和現象によって生じる誤差を抑制して、精度良く動作することが可能な半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、誘電緩和現象によって生じるAD変換の誤差を抑制する、電荷再分配式の逐次比較型のAD変換回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-107985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電荷再分配式の逐次比較型のAD変換回路に限られず、サンプリング用の容量素子とDA変換用の容量素子とが分離したAD変換回路、及び、トッププレートサンプリング型のAD変換回路などにも、誘電緩和現象によって生じる誤差を抑制して、精度良く動作することが求められている。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかる半導体装置は、第1容量素子と、サンプリングモードにおいて、第1入力電圧に対応する第1電圧を生成して前記第1容量素子の一端に印加し、サンプリングモード後のホールドモードにおいて、生成した前記第1電圧を保持しつつ前記第1容量素子の一端に印加する信号キャンセル回路と、サンプリングモードにおいて、前記第1入力電圧をサンプリングし、ホールドモードにおいて、サンプリングした前記第1入力電圧に対応する第2電圧を保持しつつ前記第1容量素子の他端に印加するサンプリング回路と、ホールドモードにおいて、前記第1容量素子の他端の電圧に応じた出力信号を生成するとともに、当該出力信号に対応するフィードバック信号を前記第1容量素子の一端に印加する、ネガティブフィードバック回路と、前記第1入力電圧に対してAD変換を行う第1ADコンバータと、前記ネガティブフィードバック回路の出力信号と、前記第1ADコンバータの出力信号と、の加減算を行って、その結果を出力する加減算回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、誘電緩和現象によって生じる誤差を抑制して、精度良く動作することが可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1に係る半導体装置の構成例を示す回路図である。
図2図2は、図1に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
図3図3は、実施の形態1に係る半導体装置の第1変形例を示す回路図である。
図4図4は、図3に示す半導体装置の具体例を示す回路図である。
図5図5は、実施の形態1に係る半導体装置の第2変形例を示す回路図である。
図6図6は、図5に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
図7図7は、実施の形態1に係る半導体装置の第3変形例を示す回路図である。
図8図8は、実施の形態2に係る半導体装置の構成例を示す回路図である。
図9図9は、図8に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
図10図10は、実施の形態2に係る半導体装置の第1変形例を示す回路図である。
図11図11は、図10に示す半導体装置の具体例を示す回路図である。
図12図12は、実施の形態2に係る半導体装置の第2変形例を示す回路図である。
図13図13は、図12に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
図14図14は、実施の形態3に係る半導体装置の構成例を示す回路図である。
図15図15は、図14に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
図16図16は、実施の形態3に係る半導体装置の第1変形例を示す回路図である。
図17図17は、事前検討された半導体装置の第1の構成例を示す回路図である。
図18図18は、図17に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
図19図19は、誘電緩和現象を持つ容量素子Csの等価回路を示す図である。
図20図20は、事前検討された半導体装置の第2の構成例を示す回路図である。
図21図21は、図20に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
図22図22は、事前検討された半導体装置の第3の構成例を示す回路図である。
図23図23は、図22に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
図24図24は、事前検討された半導体装置の第4の構成例を示す回路図である。
図25図25は、図24に示す半導体装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0011】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0012】
<発明者等による事前検討>
本実施の形態にかかる半導体装置について説明する前に、本発明者等が事前検討した半導体装置について説明する。
【0013】
図17は、事前検討された半導体装置6の構成例を示す回路図である。半導体装置6は、所謂、シングル入力の電荷再分配式の逐次比較型のADコンバータであって、2進探索アルゴリズムを用いてアナログの入力電圧Vinをデジタルの出力信号ADOUTに変換して出力する。
【0014】
具体的には、半導体装置6は、ネガティブフィードバック回路62と、容量素子Csと、スイッチSW61~SW63と、を備える。ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621と、逐次比較レジスタ回路(SAR Logic)622と、DAコンバータ623と、を有する。
【0015】
容量素子Csは、コンパレータ621の非反転入力端子と、ノードNsと、の間に設けられている。スイッチSW61は、半導体装置6の外部から入力電圧Vinが供給される入力端子(以下、入力端子Vinと称す)と、ノードNs(容量素子Csの一端)と、の間に設けられている。スイッチSW63は、コンパレータ621の非反転入力端子(容量素子Csの他端)と、基準電圧Vssが供給される基準電圧端子(以下、基準電圧端子Vssと称す)と、の間に設けられている。コンパレータ621の反転入力端子には、基準電圧Vssが供給されている。
【0016】
逐次比較レジスタ回路622は、コンパレータ621の比較結果に応じたデジタル信号(DAコンバータ623のスイッチを制御する制御信号)を出力するとともに、確定したデジタル値の出力信号ADOUTを出力する。DAコンバータ623は、逐次比較レジスタ回路622から出力されたデジタル信号をアナログ電圧に変換して出力する。スイッチSW62は、DAコンバータ623の出力と、ノードNsと、の間に設けられている。
【0017】
図18は、半導体装置6の動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置6の動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。
【0018】
図18に示すように、まず、サンプリングモードでは、スイッチSW61がオン状態を示し、スイッチSW62がオフ状態を示し、スイッチSW63がオン状態を示す。それにより、入力電圧Vinのサンプリングが行われる。つまり、ノードNs(容量素子Csの一端)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vsは、理想的には入力電圧Vinを示す。その後、ホールドモードでは、スイッチSW61がオンからオフに切り替わり、スイッチSW62がオフからオンに切り替わり、スイッチSW63がオンからオフに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinが容量素子Csにおいてホールドされる。
【0019】
このとき、ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621の非反転入力端子の電圧Vmが基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、即ち、ノードNdacの電圧Vdacが入力電圧Vinを示すようなアナログ電圧、を生成して、ノードNdacに出力する。
【0020】
具体的には、ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621及び逐次比較レジスタ回路622を用いて、DAコンバータ623の出力電圧と、入力電圧Vinと、の逐次比較動作を行う。そして、半導体装置6は、ネガティブフィードバック回路62において確定されたデジタル値の出力信号ADOUTを出力する。
【0021】
しかしながら、半導体装置6では、誘電緩和現象によって発生するAD変換の誤差により、精度良く動作することができない、という課題があった。
【0022】
図19は、誘電緩和現象を持つ容量素子Csの等価回路を示す図である。図19に示すように、容量素子Csには、真性容量Cstdに加えて、寄生抵抗及び寄生容量からなる複数の直列回路が並列に接続されている。これらの複数の直列回路のそれぞれの時定数は、互いに異なり、幅広い周波数帯を持つ分布定数的なモデルであることが知られている。
【0023】
そのため、半導体装置6では、例えば図18に示すように、入力電圧Vinが理想的なレベル(実線)にまで達していない状態(点線)で、動作モードがサンプリングモードからホールドモードに切り替わってしまう可能性がある。それにより、ホールドモードにおいてコンパレータ621の非反転入力端子(容量素子Csの他端)の電圧Vmが変動してしまい、その結果、半導体装置6は、精度良くAD変換処理を行うことができない可能性がある。
【0024】
そこで、発明者らは、次に半導体装置7を検討した。
図20は、事前検討された半導体装置7の構成例を示す回路図である。半導体装置7は、半導体装置6と比較して、サブのADコンバータ712と、サブのDAコンバータ713と、容量素子Cdacと、スイッチSW71~SW73と、さらに備える。
【0025】
容量素子Cdacは、容量素子Csと同じ容量値を示し、コンパレータ621の反転入力端子と、ノードNdacと、の間に設けられている。スイッチSW71は、入力端子Vinと、ノードNdac(容量素子Cdacの一端)と、の間に設けられている。スイッチSW73は、コンパレータ621の反転入力端子(容量素子Cdacの他端)と、基準電圧端子と、の間に設けられている。サブのADコンバータ712及びサブのDAコンバータ713は、入力端子VinとノードNdacとの間に、スイッチSW71と並列に設けられている。ADコンバータ712は、アナログの入力電圧Vinをデジタル信号に変換して出力する。DAコンバータ713は、ADコンバータ712から出力されたデジタル信号をアナログ電圧に変換して出力する。スイッチSW72は、DAコンバータ713の出力と、ノードNdacと、の間に設けられている。
【0026】
図21は、半導体装置7の動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置7の動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。
【0027】
図21に示すように、まず、サンプリングモードでは、スイッチSW61,SW71がオン状態を示し、スイッチSW62,SW72がオフ状態を示し、スイッチSW63,SW73がオン状態を示す。それにより、入力電圧Vinのサンプリングが行われる。つまり、ノードNs(容量素子Csの一端)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。また、ノードNdac(容量素子Cdacの一端)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vsは、理想的には入力電圧Vinを示す。また、ノードNdacの電圧Vdacは、理想的には入力電圧Vinを示す。その後、ホールドモードでは、スイッチSW61,SW71がオンからオフに切り替わり、スイッチSW62,SW72がオフからオンに切り替わり、スイッチSW63,SW73がオンからオフに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinが容量素子Csにおいてホールドされる。また、サンプリングされた入力電圧Vinが容量素子Cdacにおいてホールドされる。なお、厳密には、スイッチSW71がオンからオフに切り替わり、スイッチSW72がオフからオンに切り替わった後、スイッチSW63,SW73がオンからオフに切り替わり、その後、スイッチSW61がオンからオフに切り替わり、スイッチSW62がオフからオンに切り替わるシーケンスが望ましい。これはADコンバータ712、DAコンバータ713の誤差の影響を除去できるためである。ただし、この厳密なタイミング動作は誘電緩和による影響を考慮する際には不要である。
【0028】
このとき、ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621の非反転入力端子が反転有力端子と同じ電圧値を示すようなアナログ電圧、即ち、ノードNdacが入力電圧Vinを示すようなアナログ電圧、を生成して、ノードNdacに出力する。
【0029】
具体的には、ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621及び逐次比較レジスタ回路622を用いて、DAコンバータ623の出力電圧と、入力電圧Vinと、の逐次比較動作を行う。そして、半導体装置7は、ネガティブフィードバック回路62において確定されたデジタル値の出力信号ADOUTを出力する。
【0030】
ここで、半導体装置7では、容量素子Cs,Cdacのそれぞれにおいて、誘電緩和現象による入力電圧Vinの誤差が発生する。そのため、半導体装置7では、コンパレータ621が、これらの誤差成分をキャンセルして比較することができる。つまり、半導体装置7は、誘電緩和現象によって生じるAD変換の誤差を抑制して、精度良く動作することができる。
【0031】
近年では、電荷再分配式の逐次比較型のAD変換回路である半導体装置7に限られず、サンプリング用の容量素子とDA変換用の容量素子とが分離したAD変換回路、及び、トッププレートサンプリング型のAD変換回路などにも、誘電緩和現象によって生じる誤差を抑制して、精度良く動作することが求められている。以下、図22図25を用いて簡単に説明する。
【0032】
図22は、事前検討された半導体装置8の構成例を示す回路図である。半導体装置8は、サンプリング用の容量素子とDA変換用の容量素子とが分離したADコンバータである。
【0033】
具体的には、半導体装置8は、半導体装置6と比較して、容量素子Csに加えて容量素子Cdacをさらに備え、スイッチSW61~SW63の代わりにスイッチSW81,SW81a,SW82,SW82a,SW83を備える。
【0034】
容量素子Csは、コンパレータ621の非反転入力端子と、ノードNsと、の間に設けられている。スイッチSW81は、入力端子Vinと、ノードNs(容量素子Csの一端)と、の間に設けられている。スイッチSW82は、ノードNsと、基準電圧端子Vssと、の間に設けられている。容量素子Cdacは、コンパレータ621の非反転入力端子と、ノードNdacと、の間に設けられている。スイッチSW81aは、基準電圧端子Vssと、ノードNdac(容量素子Cdacの一端)と、の間に設けられている。スイッチSW82aは、DAコンバータ623の出力と、ノードNdacと、の間に設けられている。スイッチSW83は、コンパレータ621の非反転入力端子と、基準電圧端子Vssと、の間に設けられている。
【0035】
半導体装置8のその他の構成については、半導体装置6と同様であるため、その説明を省略する。
【0036】
図23は、半導体装置8の動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置8の動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。
【0037】
図23に示すように、まず、サンプリングモードでは、スイッチSW81,SW81aがオン状態を示し、スイッチSW82,SW82aがオフ状態を示し、スイッチSW83がオン状態を示す。それにより、入力電圧Vinのサンプリングが行われる。つまり、ノードNs(容量素子Csの一端)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vsは、理想的には入力電圧Vinを示す。また、このとき、ノードNdacの電圧Vdacは、基準電圧Vssを示す。
【0038】
その後、ホールドモードでは、スイッチSW81,SW81aがオンからオフに切り替わり、スイッチSW82,SW82aがオフからオンに切り替わり、スイッチSW83がオンからオフに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinが容量素子Csにおいてホールドされる。ここで、スイッチSW82がオンすることによってノードNsの電圧Vsが入力電圧Vinから基準電圧Vssに遷移すると、ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621の非反転入力端子の電圧Vmが基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、即ち、ノードNdacの電圧Vdacが入力電圧Vinを示すようなアナログ電圧、を生成して、ノードNdacに出力する。
【0039】
具体的には、ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621及び逐次比較レジスタ回路622を用いて、DAコンバータ623の出力電圧と、入力電圧Vinと、の逐次比較動作を行う。そして、半導体装置8は、ネガティブフィードバック回路62において確定されたデジタル値の出力信号ADOUTを出力する。
【0040】
図24は、事前検討された半導体装置9の構成例を示す回路図である。半導体装置9は、所謂、トッププレートサンプリング型のADコンバータである。
【0041】
具体的には、半導体装置9は、半導体装置6と比較して、スイッチSW61~SW63の代わりにスイッチSW91,SW91a,SW92を備える。
【0042】
スイッチSW91は、コンパレータ621の非反転入力端子(ノードNs)と、入力端子Vinと、の間に設けられている。容量素子Csは、コンパレータ621の非反転入力端子と、ノードNdacと、の間に設けられている。スイッチSW91aは、ノードNdac(容量素子Csの一端)と、入力端子Vinと、の間に設けられている。スイッチSW92は、DAコンバータ623の出力と、ノードNdacと、の間に設けられている。
【0043】
半導体装置9のその他の構成については、半導体装置6と同様であるため、その説明を省略する。
【0044】
図25は、半導体装置9の動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置9の動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。
【0045】
図25に示すように、まず、サンプリングモードでは、スイッチSW91,SW91aがオン状態を示し、スイッチSW92がオフ状態を示す。それにより、入力電圧Vinのサンプリングが行われる。つまり、コンパレータ621の非反転入力端子には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、コンパレータ621の非反転入力端子の電圧Vsは、理想的には入力電圧Vinを示す。また、このとき、ノードNdacの電圧Vdacは、基準電圧Vssを示す。
【0046】
その後、ホールドモードでは、スイッチSW91,SW91aがオンからオフに切り替わり、スイッチSW92がオフからオンに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinが容量素子Csにおいてホールドされる。このとき、ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621の非反転入力端子が基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、即ち、ノードNdacが-Vinを示すようなアナログ電圧、を生成して、ノードNdacに出力する。
【0047】
具体的には、ネガティブフィードバック回路62は、コンパレータ621及び逐次比較レジスタ回路622を用いて、DAコンバータ623の出力電圧と、入力電圧Vinと、の逐次比較動作を行う。そして、半導体装置9は、ネガティブフィードバック回路62において確定されたデジタル値の出力信号ADOUTを出力する。
【0048】
近年では、電荷再分配式の逐次比較型のAD変換回路である半導体装置7に限られず、サンプリング用の容量素子とDA変換用の容量素子とが分離したAD変換回路である半導体装置8、及び、トッププレートサンプリング型のAD変換回路である半導体装置9などにも、誘電緩和現象によって生じる誤差を抑制して、精度良く動作することが求められている。そこで、誘電緩和現象によって生じる誤差を抑制して、精度良く動作することが可能な半導体装置1が見出された。
【0049】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置1の構成例を示す回路図である。半導体装置1は、サンプリング用の容量素子とDA変換用の容量素子とが分離したADコンバータであって、アナログの入力電圧Vinをデジタルの出力信号ADOUTに変換して出力する。
【0050】
具体的には、半導体装置1は、信号キャンセル回路11と、ネガティブフィードバック回路12と、加算回路13と、容量素子Cs,Cdacと、スイッチSW11~SW13と、を備える。信号キャンセル回路11は、反転回路111と、サブのADコンバータ112と、反転回路113と、サブのDAコンバータ114と、スイッチSW11a,SW11bと、スイッチSW12aと、を有する。ネガティブフィードバック回路12は、コンパレータ121と、逐次比較レジスタ回路122と、DAコンバータ123と、を有する。例えば、スイッチSW11~SW13及び容量素子Csは、サンプリング回路を構成する。
【0051】
容量素子Csは、コンパレータ121の非反転入力端子と、ノードNsと、の間に設けられている。スイッチSW11は、入力端子Vinと、ノードNs(容量素子Csの一端)と、の間に設けられている。スイッチSW12は、ノードNsと、基準電圧端子Vssと、の間に設けられている。スイッチSW13は、コンパレータ121の非反転入力端子と、基準電圧端子Vssと、の間に設けられている。コンパレータ121の反転入力端子には、基準電圧Vssが供給されている。
【0052】
容量素子Cdacは、容量素子Csと同じ容量値を示し、コンパレータ121の非反転入力端子と、ノードNdacと、の間に設けられている。信号キャンセル回路11は、入力端子Vinと、ノードNdac(容量素子Cdacの一端)と、の間に設けられている。
【0053】
信号キャンセル回路11において、反転回路111は、入力電圧Vinを反転させて出力する。ここで、反転回路111の反転では、反転回路111の入力をx、反転回路111の出力をy、反転回路111によって反転させるコモン電位をVcm1とした場合、y=-(x-Vcm1)+Vcm1の関係が成り立つ。以下、各反転回路による電圧の反転は、前記式の関係を意味する。
【0054】
ADコンバータ112、反転回路113、及び、DAコンバータ114は、入力端子VinとノードNdacとの間の経路のうち、反転回路111とは異なる経路上に設けられている。ADコンバータ112は、サンプリングした入力電圧Vinをデジタル信号に変換して出力する。反転回路113は、ADコンバータ112の出力信号を反転させて出力する。DAコンバータ114は、反転回路113の出力信号をアナログ電圧に変換して出力する。
【0055】
本実施の形態では、各反転回路111,113のゲインが-1である場合を例に説明する。但し、容量素子Cdacの容量値をCdac、容量素子Csの容量値をCsとすると、容量素子Cdacが、Cdac=Cs/kが成り立つ容量値を示すように構成されているのであれば、各反転回路111,113のゲインは-kであってもよい。
【0056】
スイッチSW11aは、反転回路111の出力とノードNdacとの間に設けられている。スイッチSW11bは、DAコンバータ114の出力とノードNdacとの間に設けられている。スイッチSW11a,SW11bは、反転回路111の出力、及び、DAコンバータ114の出力、のうちの何れかを選択して出力する選択回路として機能する。
【0057】
逐次比較レジスタ回路122は、コンパレータ121の比較結果に応じたデジタル信号(DAコンバータ123のスイッチを制御する制御信号)を出力するとともに、確定したデジタル値の出力信号を出力する。DAコンバータ123は、逐次比較レジスタ回路122から出力されたデジタル信号をアナログ電圧に変換して出力する。スイッチSW12aは、DAコンバータ123の出力と、ノードNdacと、の間に設けられている。
【0058】
加算回路13は、ADコンバータ112の出力と、逐次比較レジスタ回路122の出力と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号ADOUTとして出力する。
【0059】
図2は、半導体装置1の動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置1の動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。サンプリングモードは、第1サンプリングモードと、第2サンプリングモードと、によって構成されている。
【0060】
まず、第1サンプリングモードでは、スイッチSW11がオン状態を示し、スイッチSW11aがオン状態を示し、スイッチSW11bがオフ状態を示し、スイッチSW12,SW12aがオフ状態を示し、スイッチSW13がオン状態を示す。それにより、入力電圧Vinのサンプリングが行われる。つまり、ノードNs(容量素子Csの一端)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vsは、理想的には入力電圧Vinを示す。また、ノードNdac(容量素子Cdacの一端)には、入力電圧Vinを反転させた電圧に応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNdacの電圧Vdacは、理想的には入力電圧Vinを反転させた電圧Vinxを示す。
【0061】
その後、第2サンプリングモードでは、スイッチSW11aがオンからオフに切り替わり、スイッチSW11bがオフからオンに切り替わる。それにより、ADコンバータ112は、第1サンプリングモードにおいてサンプリングしてホールドした入力電圧Vinをデジタル信号に変換して出力する。反転回路113は、ADコンバータ112の出力信号を反転させて出力する。DAコンバータ114は、反転回路113の出力信号をアナログ電圧に変換して、ノードNdacに出力する。
【0062】
その後、ホールドモードでは、スイッチSW11がオンからオフに切り替わり、スイッチSW11bがオンからオフに切り替わり、スイッチSW12,SW12aがオフからオンに切り替わり、スイッチSW13がオンからオフに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinが容量素子Csにおいてホールドされる。また、サンプリングされたDAコンバータ114の出力電圧(電圧Vinx相当)が容量素子Cdacにおいてホールドされる。
【0063】
ここで、スイッチSW12がオンすることによってノードNsの電圧Vsが入力電圧Vinから基準電圧Vssに遷移すると、ネガティブフィードバック回路12は、コンパレータ121の非反転入力端子の電圧Vmが基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、即ち、ノードNdacの電圧Vdacが電圧Vinxから基準電圧Vssに遷移するようなアナログ電圧、を生成して、ノードNdacに出力する。
【0064】
具体的には、ネガティブフィードバック回路12は、コンパレータ121及び逐次比較レジスタ回路122を用いて、DAコンバータ123の出力電圧と、入力電圧Vinと、の逐次比較動作を行う。
【0065】
ここで、半導体装置1では、誘電緩和現象によって容量素子Csにおいて誤差が発生し、誘電緩和現象によって容量素子Cdacにおいて容量素子Csで生じた誤差と逆極性の誤差が発生する。そのため、容量素子Csの他端及び容量素子Cdacの他端が共通に接続されたコンパレータ121の非反転入力端子の電圧Vmでは、それらの誤差成分がキャンセルされる。但し、コンパレータ121の非反転入力端子の電圧Vmでは、入力電圧Vinの成分(入力信号成分)もキャンセルされる。
【0066】
そこで、半導体装置1は、加算回路13を用いて、ADコンバータ112から出力された入力信号成分(入力電圧VinのAD変換結果)と、逐次比較レジスタ回路122から出力された、信号キャンセル回路11によってキャンセルされなかった信号成分と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号ADOUTとして出力する。それにより、半導体装置1は、誤差のキャンセルされた精度の高いデジタルの出力信号ADOUTを出力することができる。
【0067】
このように、本実施の形態に係る半導体装置1は、入力電圧Vin及びそれを反転させた電圧をサンプリングして、コンパレータ121の非反転入力端子に共通に接続された容量素子Cs,Cdacのそれぞれにホールドさせる。それにより、本実施の形態に係る半導体装置1は、誘電緩和現象によって生じた誤差と、誘電緩和現象によって生じた逆極性の誤差と、をキャンセルすることができるため、精度良く入力電圧Vinを取り込んで、精度良くデジタルの出力信号ADOUTに変換して出力することができる。
【0068】
<半導体装置1の第1変形例>
図3は、半導体装置1の第1変形例を半導体装置1aとして示す回路図である。半導体装置1aは、半導体装置1と比較して、信号キャンセル回路11の代わりに信号キャンセル回路11aを備え、ネガティブフィードバック回路12の代わりにネガティブフィードバック回路12aを備える。
【0069】
ネガティブフィードバック回路12aは、DAコンバータ123を備えず、DAコンバータ114を用いてDAコンバータ123の機能を実現している。換言すると、DAコンバータ114は、DAコンバータ123としても用いられる。信号キャンセル回路11aにおいて、スイッチSW12aは、逐次比較レジスタ回路122の出力と、DAコンバータ114の入力と、の間に設けられている。半導体装置1aのその他の構成については、半導体装置1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0070】
半導体装置1aは、半導体装置1と同等程度の効果を奏することができる。さらに、半導体装置1aは、半導体装置1と比較して、DAコンバータの数を減らすことができるため、回路規模を低減することができる。
【0071】
続いて、図4を用いて、半導体装置1aの具体的な構成例について説明する。図4は、半導体装置1aの具体例を示す回路図である。
【0072】
図4の例では、DAコンバータ114が、最小の容量値2^0・Cを示す容量素子Cu0,Cu1と、容量素子Cu1の容量値に対してバイナリ加重されたn-1(nは2以上の整数)個の容量素子Cu2~Cunと、容量素子Cu0,Cu1~Cunのそれぞれに対応して設けられたスイッチSu0,Su1~Sunと、を備える。ここで、スイッチSu0,Su1~Sunは、DAコンバータ114の一部として用いられるだけでなく、スイッチSW11aとしても用いられる。容量素子Cu0,Cu1~Cunは、DAコンバータ114の一部として用いられるだけでなく、容量素子Cdacとしても用いられる。また、DAコンバータ114は、半導体装置1のネガティブフィードバック回路12に設けられていたDAコンバータ123としても用いられる。
【0073】
<半導体装置1の第2変形例>
図5は、半導体装置1の第2変形例を半導体装置1bとして示す回路図である。半導体装置1bは、半導体装置1aと比較して、信号キャンセル回路11aの代わりに信号キャンセル回路11bを備え、スイッチSW11の代わりにスイッチSW11c,SW11dを備える。
【0074】
信号キャンセル回路11bは、信号キャンセル回路11aと比較して、反転回路111を備えない。そして、スイッチSW11aは、ノードNdacと、コモン電圧Vcmの反転電圧を生成する反転回路INV1と、の間に設けられている。
【0075】
スイッチSW11cは、ノードNsと、コモン電圧Vcmが供給される電圧供給端子(以下、電圧供給端子Vcmと称す)と、の間に設けられている。スイッチSW11dは、入力端子Vinと、ノードNsと、の間に設けられている。つまり、スイッチSW11dは、スイッチSW11が設けられていた箇所に設けられている。
【0076】
半導体装置1bのその他の構成については、半導体装置1aの場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
図6は、半導体装置1bの動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置1bの動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。サンプリングモードは、第1サンプリングモードと、第2サンプリングモードと、によって構成されている。
【0078】
まず、第1サンプリングモードでは、スイッチSW11a,SW11cがオン状態を示し、スイッチSW11b,SW11dがオフ状態を示し、スイッチSW12,SW12aがオフ状態を示し、スイッチSW13がオン状態を示す。それにより、ノードNs(容量素子Csの一端)及びノードNdac(容量素子Cdacの一端)には、それぞれ、コモン電圧Vcm及びコモン電圧Vcmの反転電圧に応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vs及びノードNdacの電圧Vdacは、それぞれ、コモン電圧Vcm及びコモン電圧Vcmの反転電圧を示す。
【0079】
その後、第2サンプリングモードでは、スイッチSW11a,SW11cがオンからオフに切り替わり、スイッチSW11b,SW11dがオフからオンに切り替わる。それにより、入力電圧Vinのサンプリングが行われる。つまり、ノードNs(容量素子Csの一端)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vsは、理想的には、入力電圧Vinを示す。
【0080】
また、第2サンプリングモードにおいて、ADコンバータ112は、第1サンプリングモードにおいてサンプリングしてホールドした入力電圧Vinをデジタル信号に変換して出力する。反転回路113は、ADコンバータ112の出力信号を反転させて出力する。DAコンバータ114は、反転回路113の出力信号をアナログ電圧に変換して、ノードNdacに出力する。それにより、ノードNdacの電圧Vdacは、理想的には、入力電圧Vinを反転させた電圧Vinxを示す。
【0081】
その後、ホールドモードでは、スイッチSW11b,SW11dがオンからオフに切り替わり、スイッチSW12,SW12aがオフからオンに切り替わり、スイッチSW13がオンからオフに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinが容量素子Csにおいてホールドされるとともに、サンプリングされた入力電圧Vinを反転させた電圧Vinxが容量素子Cdacにおいてホールドされる。
【0082】
ここで、スイッチSW12がオンすることによってノードNsの電圧Vsが基準電圧Vssに遷移すると、ネガティブフィードバック回路12は、コンパレータ121の非反転入力端子の電圧Vmが基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、即ち、ノードNdacの電圧VdacがVinxの電圧から基準電圧Vssに遷移するようなアナログ電圧、を生成して、ノードNdacに出力する。
【0083】
具体的には、ネガティブフィードバック回路12は、コンパレータ121及び逐次比較レジスタ回路122を用いて、DAコンバータ123の出力電圧と、入力電圧Vinと、の逐次比較動作を行う。
【0084】
ここで、半導体装置1bでは、誘電緩和現象によって容量素子Csにおいて誤差が発生し、誘電緩和現象によって容量素子Cdacにおいて逆極性の誤差が発生する。そのため、容量素子Csの他端及び容量素子Cdacの他端が共通に接続されたコンパレータ121の非反転入力端子の電圧Vmでは、それらの誤差成分がキャンセルされる。但し、コンパレータ121の非反転入力端子の電圧Vmでは、入力電圧Vinの成分(入力信号成分)もキャンセルされる。
【0085】
そこで、半導体装置1bは、加算回路13を用いて、ADコンバータ112から出力された入力信号成分(入力電圧VinのAD変換結果)と、逐次比較レジスタ回路122から出力された、信号キャンセル回路11bによってキャンセルされなかった信号成分と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号ADOUTとして出力する。それにより、半導体装置1bは、誤差のキャンセルされた精度の高いデジタルの出力信号ADOUTを出力することができる。
【0086】
このように、半導体装置1bは、第1サンプリングモードにおいて入力電圧Vinが供給されない場合に、容量素子Csにコモン電圧Vcmを印加し、且つ、容量素子Cdacにコモン電圧Vcmの反転電圧を印加した状態で待機することにより、半導体装置1aと同程度の効果を奏することができる。また、半導体装置1bは、第2サンプリングモードおいてノードNsに入力電圧Vinを印加し、且つ、ノードNdacに信号キャンセル回路出力から得られる入力電圧Vinと等価な電圧を印加することによっても、半導体装置1aと同程度の効果を奏することができる。但し、第2サンプリングモードにおいては入力電圧Vinが大きく変化しない(つまり、入力電圧VinがDC的な振る舞いをする)と見なせる場合に、より大きな効果が期待できる。
【0087】
<半導体装置1の第3変形例>
図7は、半導体装置1の第3変形例を半導体装置1cとして示す回路図である。半導体装置1cは、半導体装置1と比較して、ネガティブフィードバック回路12の代わりにネガティブフィードバック回路12cを備え、ADコンバータ14をさらに備える。ネガティブフィードバック回路12cは、オペアンプ124を備える。
【0088】
オペアンプ124の反転入力端子には、容量素子Csの他端と、容量素子Cdacの他端と、が共に接続されている。オペアンプ124の非反転入力端子には、基準電圧Vssが供給されている。オペアンプ124の出力と、ノードNdac(容量素子Cdacの一端)と、の間には、スイッチSW12aが設けられている。
【0089】
オペアンプ124は、反転入力端子の電圧Vmと、非反転入力端子の電圧Vssと、の電位差を増幅して出力する。オペアンプ124の出力電圧は、フィードバックされ、スイッチSW12aを介して、ノードNdacに印加される。
【0090】
ADコンバータ14は、オペアンプ124の出力電圧をデジタル信号に変換して出力する。加算回路13は、ADコンバータ112から出力された入力信号成分(入力電圧VinのAD変換結果)と、ADコンバータ14から出力された、信号キャンセル回路11cによってキャンセルされなかった信号成分と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号として出力する。それにより、半導体装置1cは、誤差のキャンセルされた精度の高いデジタルの出力信号ADOUTを出力することができる。
【0091】
それにより、半導体装置1cは、半導体装置1と同等程度の効果を奏することができる。
【0092】
<実施の形態2>
図8は、実施の形態2に係る半導体装置2の構成例を示す回路図である。半導体装置2は、所謂、トッププレートサンプリング型のADコンバータである。
【0093】
具体的には、半導体装置2は、信号キャンセル回路21と、ネガティブフィードバック回路22と、加算回路23と、容量素子Csと、スイッチSW21と、を備える。信号キャンセル回路21は、サブのADコンバータ212と、サブのDAコンバータ214と、スイッチSW21a,SW21bと、スイッチSW22と、を有する。ネガティブフィードバック回路22は、コンパレータ221と、逐次比較レジスタ回路222と、DAコンバータ223と、を有する。例えば、スイッチSW21は、サンプリング回路を構成する。
【0094】
スイッチSW21は、コンパレータ221の非反転入力端子と、入力端子Vinと、の間に設けられている。容量素子Csは、コンパレータ221の非反転入力端子と、ノードNdacと、の間に設けられている。信号キャンセル回路21は、入力端子Vinと、ノードNdac(容量素子Csの一端)と、の間に設けられている。
【0095】
信号キャンセル回路21において、スイッチSW21aは、入力端子Vinと、ノードNdacと、の間の経路上に設けられている。ADコンバータ212、DAコンバータ214及びスイッチSW21bは、入力端子Vinと、ノードNdacと、の間の経路のうち、スイッチSW21aとは異なる経路上に設けられている。ADコンバータ212は、入力電圧Vinをサンプリングしてホールドするとともに、ホールドした入力電圧Vinをデジタル信号に変換して出力する。DAコンバータ214は、ADコンバータ212の出力信号をアナログ電圧に変換して出力する。スイッチSW21a,SW21bは、入力電圧Vin、及び、DAコンバータ214、のうちの何れかを選択して出力する選択回路として機能する。
【0096】
逐次比較レジスタ回路222は、コンパレータ221の比較結果に応じたデジタル信号(DAコンバータ223のスイッチを制御する制御信号)を出力するとともに、確定したデジタル値の出力信号を出力する。DAコンバータ223は、逐次比較レジスタ回路222から出力されたデジタル信号をアナログ電圧に変換して出力する。スイッチSW22は、DAコンバータ223の出力と、ノードNdacと、の間に設けられている。
【0097】
加算回路23は、ADコンバータ212の出力と、逐次比較レジスタ回路122の出力と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号ADOUTとして出力する。
【0098】
図9は、半導体装置2の動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置2の動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。サンプリングモードは、第1サンプリングモードと、第2サンプリングモードと、によって構成されている。
【0099】
まず、第1サンプリングモードでは、スイッチSW21がオン状態を示し、スイッチSW21aがオン状態を示し、スイッチSW21bがオフ状態を示し、スイッチSW22がオフ状態を示す。それにより、入力電圧Vinのサンプリングが行われる。つまり、ノードNs(容量素子Csの他端、且つ、コンパレータ221の非反転入力端子)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vsは、理想的には入力電圧Vinを示す。また、ノードNdac(容量素子Csの一端)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNdacの電圧Vdacは、理想的には入力電圧Vinを示す。
【0100】
その後、第2サンプリングモードでは、スイッチSW21aがオンからオフに切り替わり、スイッチSW21bがオフからオンに切り替わる。それにより、ADコンバータ212は、第1サンプリングモードにおいてサンプリングしてホールドした入力電圧Vinをデジタル信号に変換して出力する。DAコンバータ214は、ADコンバータ212の出力信号をアナログ電圧に変換して、ノードNdacに出力する。
【0101】
その後、ホールドモードでは、スイッチSW21がオンからオフに切り替わり、スイッチSW21bがオンからオフに切り替わり、スイッチSW22がオフからオンに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinと信号キャンセル回路21aの出力電圧との差電位が容量素子Csにおいてホールドされる。このとき、ネガティブフィードバック回路22は、コンパレータ221の非反転入力端子の電圧Vsが基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、即ち、ノードNdacの電圧Vdacが基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、を生成して、ノードNdacに出力する。
【0102】
具体的には、ネガティブフィードバック回路22は、コンパレータ221及び逐次比較レジスタ回路222を用いて、DAコンバータ223の出力電圧と、入力電圧Vinと、の逐次比較動作を行う。
【0103】
ここで、半導体装置2では、容量素子Csの一端であるノードNsの電圧Vsと他端であるノードNdacの電圧Vdacが互いに信号成分をキャンセルするように振る舞う。つまり、半導体装置2は、ノードNsとノードNdacとの間の電位差が常に一定であるように制御することにより、そもそも誘電緩和現象による誤差を生じさせない。但し、コンパレータ221の非反転入力端子の電圧Vmでは、入力電圧Vinの成分(入力信号成分)もキャンセルされる。
【0104】
そこで、半導体装置2は、加算回路23を用いて、ADコンバータ212から出力された入力信号成分(入力電圧VinのAD変換結果)と、逐次比較レジスタ回路222から出力された、信号キャンセル回路21によってキャンセルされなかった信号成分と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号ADOUTとして出力する。それにより、半導体装置2は、誤差のキャンセルされた精度の高いデジタルの出力信号ADOUTを出力することができる。
【0105】
このように、本実施の形態に係る半導体装置2は、入力電圧Vinをサンプリングして、コンパレータ221の非反転入力端子に接続された容量素子Csの一端及び他端のそれぞれにホールドさせる。それにより、本実施の形態に係る半導体装置2は、容量素子Csに印加される信号をキャンセルすることで、そもそも誘電緩和現象により誤差が生じないようにすることができるため、精度良く入力電圧Vinを取り込んで、精度良くデジタルの出力信号ADOUTに変換して出力することができる。
【0106】
なお、半導体装置2は、ネガティブフィードバック回路22の代わりに、オペアンプを有するネガティブフィードバック回路12cの構成を用いてもよい。その場合、半導体装置2は、ネガティブフィードバック回路の出力信号に対してAD変換を行うADコンバータ14の構成をさらに備える。
【0107】
<半導体装置2の第1変形例>
図10は、半導体装置2の第1変形例を半導体装置2aとして示す回路図である。半導体装置2aは、半導体装置2と比較して、信号キャンセル回路21の代わりに信号キャンセル回路21aを備え、ネガティブフィードバック回路22の代わりにネガティブフィードバック回路22aを備える。
【0108】
ネガティブフィードバック回路12aは、DAコンバータ223を備えず、DAコンバータ214を用いてDAコンバータ223の機能を実現している。換言すると、DAコンバータ214は、DAコンバータ223としても用いられる。信号キャンセル回路21aにおいて、スイッチSW22は、逐次比較レジスタ回路222の出力と、DAコンバータ214の入力と、の間に設けられている。半導体装置2aのその他の構成については、半導体装置2の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0109】
半導体装置2aは、半導体装置2と同等程度の効果を奏することができる。さらに、半導体装置2aは、半導体装置2と比較して、DAコンバータの数を減らすことができるため、回路規模を低減することができる。
【0110】
続いて、図11を用いて、半導体装置2aの具体的な構成例について説明する。図11は、半導体装置2aの具体例を示す回路図である。
【0111】
図11の例では、DAコンバータ214が、最小の容量値2^0・Cを示す容量素子Cu0,Cu1と、容量素子Cu1の容量値に対してバイナリ加重されたn-1(nは2以上の整数)個の容量素子Cu2~Cunと、容量素子Cu0,Cu1~Cunのそれぞれに対応して設けられたスイッチSu0,Su1~Sunと、を備える。ここで、スイッチSu0,Su1~Sunは、DAコンバータ214の一部として用いられるだけでなく、スイッチSW21aとしても用いられる。容量素子Cu0,Cu1~Cunは、DAコンバータ214の一部として用いられるだけでなく、容量素子Csとしても用いられる。また、DAコンバータ214は、半導体装置2のネガティブフィードバック回路22に設けられていたDAコンバータ223としても用いられる。
【0112】
<半導体装置2の第2変形例>
図12は、半導体装置2の第2変形例を半導体装置2bとして示す回路図である。半導体装置2bは、半導体装置2aと比較して、信号キャンセル回路21aの代わりに信号キャンセル回路21bを備え、スイッチSW21の代わりにスイッチSW21c,SW21dを備える。
【0113】
信号キャンセル回路21bでは、信号キャンセル回路21aと比較して、スイッチSW21aの経路が異なる。スイッチSW21aは、ノードNdacと、電圧供給端子Vcmと、の間に設けられている。スイッチSW21cは、ノードNsと、電圧供給端子Vcmと、の間に設けられている。スイッチSW21dは、入力端子Vinと、ノードNsと、の間に設けられている。半導体装置2bのその他の構成については、半導体装置2aの場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
図13は、半導体装置2bの動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置2bの動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。サンプリングモードは、第1サンプリングモードと、第2サンプリングモードと、によって構成されている。
【0115】
まず、第1サンプリングモードでは、スイッチSW21a,SW21cがオン状態を示し、スイッチSW21b,SW21dがオフ状態を示し、スイッチSW22がオフ状態を示す。それにより、ノードNs(容量素子Csの他端、且つ、コンパレータ221の非反転入力端子)、及び、ノードNdac(容量素子Csの一端)には、それぞれ、コモン電圧Vcmに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vs及びノードNdacの電圧Vdacは、何れもコモン電圧Vcmを示す。
【0116】
その後、第2サンプリングモードでは、スイッチSW21a,SW21cがオンからオフに切り替わり、スイッチSW21b,SW21dがオフからオンに切り替わる。それにより、入力電圧Vinのサンプリングが行われる。つまり、ノードNs(容量素子Csの他端)には、入力電圧Vinに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNsの電圧Vsは、理想的には、入力電圧Vinを示す。
【0117】
また、第2サンプリングモードにおいて、ADコンバータ212は、第1サンプリングモードにおいてサンプリングしてホールドした入力電圧Vinをデジタル信号に変換して出力する。DAコンバータ214は、ADコンバータ212の出力信号をアナログ電圧に変換して、ノードNdacに出力する。それにより、ノードNdacの電圧Vdacは、理想的には、入力電圧Vinを示す。
【0118】
その後、ホールドモードでは、スイッチSW21b,SW21dがオンからオフに切り替わり、スイッチSW22がオフからオンに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinと信号キャンセル回路21bの出力電圧との差電位が容量素子Csにおいてホールドされる。このとき、ネガティブフィードバック回路22aは、コンパレータ221の非反転入力端子の電圧Vsが基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、即ち、ノードNdacの電圧Vdacが基準電圧Vssを示すようなアナログ電圧、を生成して、ノードNdacに出力する。
【0119】
ここで、半導体装置2bでは、容量素子Csの一端であるノードNsの電圧Vsと他端であるノードNdacの電圧Vdacが互いに信号成分をキャンセルするように振る舞う。つまり、半導体装置2bは、ノードNsとノードNdacとの間の電位差が常に一定であるように制御することにより、そもそも誘電緩和現象による誤差を生じさせない。但し、コンパレータ221の非反転入力端子の電圧Vmでは、入力電圧Vinの成分(入力信号成分)もキャンセルされる。
【0120】
そこで、半導体装置2bは、加算回路23を用いて、ADコンバータ212から出力された入力信号成分(入力電圧VinのAD変換結果)と、逐次比較レジスタ回路222から出力された、信号キャンセル回路21bによってキャンセルされなかった信号成分と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号ADOUTとして出力する。それにより、半導体装置2bは、誤差のキャンセルされた精度の高いデジタルの出力信号ADOUTを出力することができる。
【0121】
このように、半導体装置2bは、第1サンプリングモードにおいて入力電圧Vinが供給されない場合に、容量素子Csにコモン電圧Vcmを印加した状態で待機することにより、半導体装置2aと同程度の効果を奏することができる。また、半導体装置2bは、第2サンプリングモードおいてノードNsに入力電圧Vinを印加し、且つ、ノードNdacに信号キャンセル回路出力から得られる入力電圧Vinと等価な電圧を印加することによっても、半導体装置2aと同程度の効果を奏することができる。但し、第2サンプリングモードにおいては入力電圧Vinが大きく変化しない(つまり、入力電圧VinがDC的な振る舞いをする)と見なせる場合に、より大きな効果が期待できる。
【0122】
<実施の形態3>
図14は、実施の形態3に係る半導体装置3の構成例を示す回路図である。半導体装置1がシングルエンドのADコンバータであったのに対し、半導体装置3は差動入力信号に対してAD変換を行うADコンバータである。
【0123】
具体的には、半導体装置3は、信号キャンセル回路31p,31nと、ネガティブフィードバック回路32と、加減算回路33と、容量素子Csp,Csnと、容量素子Cdacp,Cdacnと、スイッチSW31p,SW31nと、スイッチSW32と、スイッチSW33と、を備える。ネガティブフィードバック回路32は、コンパレータ321と、逐次比較レジスタ回路322と、DAコンバータ323pと、DAコンバータ323nと、を備える。
【0124】
まず、半導体装置3では、一対の差動入力信号の一方であるポジティブ側の入力信号(入力電圧)Vinpを処理する回路として、信号キャンセル回路31pと、コンパレータ321と、逐次比較レジスタ回路322と、DAコンバータ323pと、容量素子Csp,Cdacpと、スイッチSW31p,SW32,SW33と、が主に用いられる。なお、信号キャンセル回路31p、コンパレータ321、逐次比較レジスタ回路322、DAコンバータ323p、容量素子Csp,Cdacp、及び、スイッチSW31p,SW32,SW33は、それぞれ、図1に示す半導体装置1における、信号キャンセル回路11、コンパレータ121、逐次比較レジスタ回路122、DAコンバータ123、容量素子Cs,Cdac、及び、スイッチSW11,SW12,SW13に対応する。
【0125】
また、半導体装置3では、一対の差動入力信号の他方であるネガティブ側の入力信号(入力電圧)Vinnを処理する回路として、信号キャンセル回路31nと、コンパレータ321と、逐次比較レジスタ回路322と、DAコンバータ323nと、容量素子Csn,Cdacnと、スイッチSW31n,SW32,SW33と、が主に用いられる。なお、信号キャンセル回路31n、コンパレータ321、逐次比較レジスタ回路322、DAコンバータ323n、容量素子Csn,Cdacn、及び、スイッチSW31n,SW32,SW33は、それぞれ、図1に示す半導体装置1における、信号キャンセル回路11、コンパレータ121、逐次比較レジスタ回路122、DAコンバータ123、容量素子Cs,Cdac、及び、スイッチSW11,SW12,SW13に対応する。
【0126】
容量素子Cspは、コンパレータ321の非反転入力端子と、ノードNspと、の間に設けられている。スイッチSW31pは、入力端子Vinpと、ノードNsp(容量素子Cspの一端)と、の間に設けられている。容量素子Csnは、コンパレータ321の反転入力端子と、ノードNsnと、の間に設けられている。スイッチSW31nは、入力端子Vinnと、ノードNsn(容量素子Csnの一端)と、の間に設けられている。スイッチSW32は、ノードNspとノードNsnとの間に設けられている。スイッチSW33は、コンパレータ321の非反転入力端子及び反転入力端子の間に設けられている。
【0127】
容量素子Cdacpは、コンパレータ321の非反転入力端子と、ノードNdacpと、の間に設けられている。信号キャンセル回路31pは、入力端子Vinpと、ノードNdacp(容量素子Cdacpの一端)と、の間に設けられている。
【0128】
信号キャンセル回路31pは、サブのADコンバータ312pと、反転回路313pと、サブのDAコンバータ314pと、スイッチSW31apと、スイッチSW31bpと、スイッチSW32apと、を備える。ADコンバータ312p、反転回路313p、DAコンバータ314p、スイッチSW31ap、スイッチSW31bp、及び、スイッチSW32apは、それぞれ、図1に示す信号キャンセル回路11に設けられた、ADコンバータ112、反転回路113、DAコンバータ114、スイッチSW11a、スイッチSW11b、及び、スイッチSW12aに対応する。ここで、信号キャンセル回路31pでは、ネガティブ側の入力電圧Vinn(即ち、入力電圧Vinpを反転させた電圧)を用いることにより、反転回路111に対応する回路が不要である。具体的には、スイッチSW31apは、入力端子Vinnと、ノードNdacpと、の間に設けられている。
【0129】
容量素子Cdacnは、コンパレータ321の反転入力端子と、ノードNdacnと、の間に設けられている。信号キャンセル回路31nは、入力端子Vinnと、ノードNdacn(容量素子Cdacnの一端)と、の間に設けられている。
【0130】
信号キャンセル回路31nは、サブのADコンバータ312nと、反転回路313nと、サブのDAコンバータ314nと、スイッチSW31anと、スイッチSW31bnと、スイッチSW32anと、を備える。ADコンバータ312n、反転回路313n、DAコンバータ314n、スイッチSW31an、スイッチSW31bn、及び、スイッチSW32anは、それぞれ、図1に示す信号キャンセル回路11に設けられた、ADコンバータ112、反転回路113、DAコンバータ114、スイッチSW11a、スイッチSW11b、及び、スイッチSW12aに対応する。ここで、信号キャンセル回路31nでは、ポジティブ側の入力電圧Vinp(即ち、入力電圧Vinnを反転させた電圧)を用いることにより、反転回路111に対応する回路が不要である。具体的には、スイッチSW31anは、入力端子Vinpと、ノードNdacnと、の間に設けられている。
【0131】
逐次比較レジスタ回路322は、コンパレータ321の比較結果に応じたデジタル信号(DAコンバータ123p,123nのそれぞれのスイッチを制御する制御信号)を出力するとともに、確定したデジタル値の出力信号を出力する。DAコンバータ323pは、逐次比較レジスタ回路322から出力されたデジタル信号をアナログ電圧に変換して出力する。スイッチSW32apは、DAコンバータ323pの出力と、ノードNdacpと、の間に設けられている。DAコンバータ323nは、逐次比較レジスタ回路322から出力されたデジタル信号をアナログ電圧に変換して出力する。スイッチSW32anは、DAコンバータ323nの出力と、ノードNdacnと、の間に設けられている。
【0132】
加減算回路33は、ADコンバータ312pの出力とADコンバータ312nの出力との差と、逐次比較レジスタ回路322の出力と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号ADOUTとして出力する。
【0133】
図15は、半導体装置3の動作を示すタイミングチャートである。なお、各スイッチは、ローレベルの制御信号によってオフし、ハイレベルの制御信号によってオンするものとする。また、半導体装置3の動作モードは、少なくとも、サンプリングモード、及び、ホールドモードを含む。サンプリングモードは、第1サンプリングモードと、第2サンプリングモードと、によって構成されている。
【0134】
まず、第1サンプリングモードでは、スイッチSW31p,SW31nがオン状態を示し、スイッチSW31ap,SW31anがオン状態を示し、スイッチSW31bp,SW31bnがオフ状態を示し、スイッチSW32,SW32ap,SW32anがオフ状態を示し、スイッチSW33がオン状態を示す。それにより、入力電圧Vinp,Vinnのサンプリングが行われる。つまり、ノードNsp(容量素子Cspの一端)には、入力電圧Vinpに応じた電荷が蓄積され、ノードNsn(容量素子Csnの一端)には、入力電圧Vinnに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNspの電圧Vspは、理想的には入力電圧Vinpを示し、ノードNsnの電圧Vsnは、理想的には入力電圧Vinnを示す。また、ノードNdacp(容量素子Cdacpの一端)には、入力電圧Vinpを反転させた電圧Vinnに応じた電荷が蓄積され、ノードNdacn(容量素子Cdacnの一端)には、入力電圧Vinnを反転させた電圧Vinpに応じた電荷が蓄積される。それにより、ノードNdacpの電圧Vdacpは、理想的には電圧Vinnを示し、ノードNdacnの電圧Vdacnは、理想的には電圧Vinpを示す。
【0135】
その後、第2サンプリングモードでは、スイッチSW31ap,SW31anがオンからオフに切り替わり、スイッチSW31bp,SW31bnがオフからオンに切り替わる。それにより、ADコンバータ312pは、第1サンプリングモードにおいてサンプリングしてホールドした入力電圧Vinpをデジタル信号に変換して出力する。反転回路313pは、ADコンバータ312pの出力信号を反転させて出力する。DAコンバータ314pは、反転回路313pの出力信号をアナログ電圧に変換して、ノードNdacpに出力する。また、ADコンバータ312nは、第1サンプリングモードにおいてサンプリングしてホールドした入力電圧Vinnをデジタル信号に変換して出力する。反転回路313nは、ADコンバータ312nの出力信号を反転させて出力する。DAコンバータ314nは、反転回路313nの出力信号をアナログ電圧に変換して、ノードNdacnに出力する。
【0136】
その後、ホールドモードでは、スイッチSW31p,SW31nがオンからオフに切り替わり、スイッチSW31bp,SW31bnがオンからオフに切り替わり、スイッチSW32,SW32ap,SW32anがオフからオンに切り替わり、スイッチSW33がオンからオフに切り替わる。それにより、サンプリングされた入力電圧Vinp,Vinnがそれおれ容量素子Csp,Csnにおいてホールドされる。また、サンプリングされたDAコンバータ314pの出力電圧(電圧Vinn相当)、及び、サンプリングされたDAコンバータ314nの出力電圧(電圧Vinp相当)が、それぞれ容量素子Cdacp,Cdacnにおいてホールドされる。
【0137】
ここで、スイッチSW32がオンすることによってノードNsp,Nsnを差動ショートさせ、ネガティブフィードバック回路32は、コンパレータ321の非反転入力端子の電圧Vmpとコンパレータ321の反転入力端子の電圧Vmnが一致するように、ノードNdacpの電圧VdacpとノードNdacnの電圧Vdacnを制御する。
【0138】
ここで、半導体装置3では、誘電緩和現象によって容量素子Csp及び容量素子Csnにおいて誤差が発生し、誘電緩和現象によって容量素子Cdacp及び容量素子Cdacnにおいて逆極性の誤差が発生する。そのため、容量素子Cspの他端及び容量素子Cdacpの他端が共通に接続されたコンパレータ321の非反転入力端子の電圧Vmpと、容量素子Csnの他端及び容量素子Cdacnの他端が共通に接続されたコンパレータ321の反転入力端子の電圧Vmnとの差電圧では、それらの誤差成分がキャンセルされる。但し、コンパレータ321の非反転入力端子の電圧Vmp,Vmnでは、入力電圧Vinの成分(入力信号成分)もキャンセルされる。
【0139】
そこで、半導体装置3は、加減算回路33を用いて、ADコンバータ312pから出力された入力信号成分(入力電圧VinpのAD変換結果)とADコンバータ312nから出力された入力信号成分(入力電圧VinnのAD変換結果)との差と、逐次比較レジスタ回路322から出力された、信号キャンセル回路31p,31nによりキャンセルされなかった信号成分と、を加算し、その加算結果をデジタルの出力信号ADOUTとして出力する。それにより、半導体装置3は、整定誤差のキャンセルされた精度の高いデジタルの出力信号ADOUTを出力することができる。
【0140】
このように、本実施の形態に係る半導体装置3は、半導体装置1と同等程度の効果を奏することができる。
【0141】
<半導体装置3の第1変形例>
図16は、半導体装置3の第1変形例を半導体装置3aとして示す回路図である。半導体装置3aは、半導体装置3と比較して、信号キャンセル回路31p,31nの代わりに信号キャンセル回路41p,42nを備え、加減算回路33の代わりに加算回路33aを備える。信号キャンセル回路41pは、信号キャンセル回路31pと比較して、シングルエンドのADコンバータ312pの代わりに、差動入力信号に対してAD変換を行うADコンバータ412pを備える。信号キャンセル回路41nは、信号キャンセル回路41nと比較して、ADコンバータ312n及び反転回路313nを備えない。信号キャンセル回路41nでは、DAコンバータ314nが、ADコンバータ412pの出力信号をアナログ電圧に変換するように構成されている。半導体装置3aのその他の構成については、半導体装置3の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0142】
半導体装置3aは、半導体装置3と同等程度の効果を奏することができる。さらに、半導体装置3aは、ADコンバータの数を減らすことができるため、回路規模を低減する事ができる。
【0143】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0144】
さらに本開示は、半導体装置1~3の処理の一部又は全部を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0145】
上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、RAM(Random-Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid-State Drive)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0146】
1 半導体装置
1a,1b,1c 半導体装置
2 半導体装置
2a,2b 半導体装置
3 半導体装置
3a 半導体装置
11 信号キャンセル回路
11a,11b 信号キャンセル回路
12 ネガティブフィードバック回路
12a,12c ネガティブフィードバック回路
13 加算回路
14 ADコンバータ
21 信号キャンセル回路
21a,21b 信号キャンセル回路
22 ネガティブフィードバック回路
22a ネガティブフィードバック回路
23 加算回路
31p 信号キャンセル回路
31n 信号キャンセル回路
32 ネガティブフィードバック回路
41p 信号キャンセル回路
41n 信号キャンセル回路
111 反転回路
112 ADコンバータ
113 反転回路
114 DAコンバータ
121 コンパレータ
122 逐次比較レジスタ回路
123 DAコンバータ
124 オペアンプ
212 ADコンバータ
214 DAコンバータ
221 コンパレータ
222 逐次比較レジスタ回路
223 DAコンバータ
Cs 容量素子
Cdac 容量素子
SW11 スイッチ
SW11a,SW11b,SW11c,SW11d スイッチ
SW12 スイッチ
SW12a スイッチ
SW13 スイッチ
SW21 スイッチ
SW21a,SW21b,SW21c,SW21d スイッチ
SW22 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25